特許拒絶査定不服審判
2022-010845
エアマットレス
- 審判番号
- 2022-010845
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-229942外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月12日
- 審決日
- 2023年11月09日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パラマウントベッド株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人iX
- 分類
- P18 .121-WZ (A47C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-229942号「エアマットレス」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月13日出願公開、特開2020- 22720号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月7日(優先権主張 平成30年7月30日)の出願であって、令和4年1月27日付けの拒絶理由の通知に対し、同年4月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年4月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年7月12日に審判の請求がなされ、令和5年7月6日付けで当審により拒絶理由が通知され、同年8月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年8月10日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
複数のセルと、
前記複数のセルを一体に保持する第1部材と、
前記複数のセル及び前記第1部材を覆い、使用者の背中部及び臀部を支持する部分が前記セルよりも通気性が高い第1カバーと、
を備え、
前記セルは、
角筒状の可撓筒と、
前記可撓筒の端部を閉塞する閉塞部と、
を含み、
前記第1部材は、
前記閉塞部に固定され、隣接する前記セルを固定する一対の第1ベルトと、
前記可撓筒に固定され、隣接する前記セルを固定する一対の第2ベルトと、
を含み、
前記一対の第1ベルトと、前記一対の第2ベルトと、は、それぞれ嵌合により互いに固定される、エアマットレス。」
第3 拒絶の理由
令和5年7月6日付けで当審が通知した拒絶理由のうち請求項1に関する拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1、2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<<引用文献一覧>>
引用文献1:特開2018-51108号公報
引用文献2:特開2009-125255号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項、引用発明
(1)引用文献1
ア 記載事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、流体セル、マット装置、および流体セルの製造方法に関する。」
(イ)「【0024】
(第1実施形態)
以下、図1から図6を参照し、本発明の第1実施形態に係るマット装置10を説明する。
マット装置10としては、使用者が横たわるベッド装置や使用者が着座するクッション装置が挙げられ、本実施形態では、マット装置10の一例として、ベッド装置を採用している。以下、マット装置10における前後方向X、左右方向Y、上下方向Zを用いて各部の構成を説明する。
【0025】
図1に示すように、マット装置10は、使用者が横たわるマット部11と、マット部11への給気および排気を行う給排気部12と、給排気部12の制御を行う制御部13と、を備えている。
マット部11は、複数の流体セル15を有していて、これらの流体セル15の内部に給気することで空気を充填し、マット部11上に横たわる使用者の荷重を支える。流体セル15の内圧は、マット部11の硬さに対応しており、流体セル15の内圧を使用者の体重に応じて設定することで、マット部11の硬さを使用者にとって最適な硬さにすることができる。
【0026】
流体セル15は、マット部11において、左右方向Yに延びる棒状のセルであり、図示の例では、複数の流体セル15が、前後方向Xに連ねられて配設されることにより、マット部11を構成している。流体セル15は、例えば塩化ビニルフィルム又はウレタンフィルム等のフィルム材で形成され、中心軸線O1回りに丸められ、その両周端部同士が例えば溶着等されることで接続される。前記フィルム材の溶着部分には、左右方向Yに延びる周端線15fが形成されている。この流体セル15では、周端線15fが下端部に位置し、前記フィルム材のうち、周端線15fよりも上方に位置する部分が、後述する可撓筒15aを形成している。
互いに隣接して配置された流体セル15同士は、互いに固定されていても固定されていなくてもよい。流体セル15は、複数の流体セル15を一体に覆う図示しないカバーに、例えば後述する取付部材19としてのボタンや紐などを介して取付けること等もできる。
【0027】
図2に示すように、流体セル15は、内部に流体を充填可能な可撓筒15aと、可撓筒15aが径方向に挟み込まれた状態で可撓筒15aの内周面同士が固着されてなり、可撓筒15aの両端開口を各別に閉塞した閉塞部15bと、を備えている。可撓筒15aの中心軸線O1は、左右方向Yに沿って延びている。可撓筒15aを左右方向Yから見た平面視において、中心軸線O1と直交する径方向のうちの一方向が、上下方向Zに沿って延びている。可撓筒15aは、前後方向Xおよび左右方向Yから見て、それぞれ矩形状を呈している。なお可撓筒15aは、複数のフィルム材で形成されてもよい。」
(ウ)「【0032】
また本実施形態では、閉塞部15bは、可撓筒15aの両端縁よりも可撓筒15aにおける左右方向Yの内側に配置され、可撓筒15aには、閉塞部15bから左右方向Yの外側に向けて突出する耳部18が形成されている。耳部18は、可撓筒15aの左右方向Yにおける両端部に各別に形成されている。耳部18は、前後方向Xから見て上下方向Zに長い矩形状を呈している。」
(エ)「【0047】
(第2実施形態)
次に、図8および図9を参照し、本発明に係る第2実施形態の流体セル45を説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図8および図9に示すように、流体セル45は、前後方向Xに複数の流体セル45が互いに連結され、流体セルユニット50をなしている。図示の例では、3つの流体セル45が互いに連結されている。なお、連結される流体セル45の数量としては2つ又は4つ以上であってもよい。
【0048】
流体セル45の下部には、外周面から左右方向Yの全域にわたって前後方向Xに向けて延び、互いに隣接する流体セル15(審決注:「流体セル45」の誤記と認める。)同士を連結する連結片40が配設されている。連結片40は、各流体セル45における可撓筒45aの外壁と一体に形成されている。このように、連結片40により複数の流体セル45を連結し、流体セルユニット50を形成することで、マット装置10において、流体セル45の取扱性を確保することができる。
【0049】
また本実施形態では、流体セル45の耳部48に、隣接する他の流体セル45に連結され、互いの相対変位を規制する規制部49が形成されている。規制部49は耳部48の左右方向Yの端部から、前後方向Xに向けて延びている。規制部49は左右方向Yから見て前後方向Xに長い矩形帯状に形成されている。
互いに隣接する流体セル15(審決注:「流体セル45」の誤記と認める。)の耳部48に形成された規制部49同士が、互いに接続されている。図示の例では、耳部48には、上下方向Zの位置を異ならせて2つの規制部49が各別に形成されている。規制部49のうち、上方に位置するものは、耳部48の上端部に形成され、下方に位置するものは、上下方向Zの中央部に形成されている。規制部49同士は、図示しない係止部同士が係止し合うことで互いに接続される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る流体セル45によれば、耳部48に形成された規制部49により、隣接する複数の流体セル45同士の相対変位が規制され、流体セル45の自立性を高めることができる。」
(オ)図1には以下の内容が示されている。
[図:0001405304000001.jpg]
(カ)図8には以下の内容が示されている。
[図:0001405304000002.jpg]
(キ)図9には以下の内容が示されている。
[図:0001405304000003.jpg]
イ 認定事項
上記「ア 記載事項」の(ア)~(キ)より、以下の事項が認定できる。
(ア)段落【0048】の「互いに隣接する流体セル15(審決注:「流体セル45」の誤記と認める。)同士を連結する連結片40」という記載と段落【0049】の「流体セル45の耳部48に、隣接する他の流体セル45に連結され、互いの相対変位を規制する規制部49が形成され」という記載から、「規制部49及び連結片40」が「複数の流体セル45同士を連結する」ことは明らかである。
(イ)段落【0047】の「図8および図9を参照し、本発明に係る第2実施形態の流体セル45を説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。」という記載からみて、第1実施形態に記載された段落【0026】の「複数の流体セル15を一体に覆う図示しないカバー」は第2実施形態には説明されていないが、第2実施形態においても、「複数の流体セル45を一体に覆うカバー」を認定できる。
また、同様の理由により、第1実施形態の段落【0027】の「可撓筒15aの両端開口を各別に閉塞した閉塞部15b」という記載と、同じく第1実施形態の段落【0032】の「閉塞部15bから左右方向Yの外側に向けて突出する耳部18」という記載と、第2実施形態の図8の図示内容からみて、第2実施形態においても、「流体セル45は、矩形状を呈している可撓筒45aと、前記可撓筒45aの両端開口を各別に閉塞した閉塞部から左右方向Yの外側に向けて突出する耳部48と、を含」むことを認定できる。
さらに、同様の理由により、第1実施形態の段落【0025】の「流体セル15の内部に給気することで空気を充填し、マット部11上に横たわる使用者の荷重を支える」という記載により、第2実施形態においても、「流体セル45の内部に給気することで空気を充填し、マット部上に横たわる使用者の荷重を支える」ことを認定できる。
(ウ)段落【0049】の「流体セル45の耳部48に、隣接する他の流体セル45に連結され、互いの相対変位を規制する規制部49が形成され」という記載及び段落【0050】の「耳部48に形成された規制部49により、隣接する複数の流体セル45同士の相対変位が規制され」という記載からみて、「一対の規制部49」は、「耳部48に形成され、互いに隣接する前記流体セル45の互いの相対変位を規制する」ものであることは明らかである。
(エ)段落【0049】の「互いに隣接する流体セル15(審決注:「流体セル45」の誤記と認める)の耳部48に形成された規制部49同士が、互いに接続され」、「規制部49同士は、図示しない係止部同士が係止し合うことで互いに接続され」という記載からみて、「一対の規制部49は、係止部同士が係止し合うことで互いに接続され」ていることは明らかである。
ウ 引用発明
以上より、第2実施形態に着目し、本願発明に倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の流体セル45と、
前記複数の流体セル45同士を連結する規制部49及び連結片40と、
前記複数の流体セル45を一体に覆うカバーと、
を備え、
前記流体セル45は、
矩形状を呈している可撓筒45aと、
前記可撓筒45aの両端開口を各別に閉塞した閉塞部から左右方向Yの外側に向けて突出する耳部48と、
を含み、
前記規制部49及び連結片40は、
前記耳部48に形成され、互いに隣接する前記流体セル45の互いの相対変位を規制する一対の規制部49と、
前記可撓筒45aの外壁と一体に形成され、互いに隣接する前記流体セル45同士を連結する連結片40と、
を含み、
前記一対の規制部49は、係止部同士が係止し合うことで互いに接続され、
流体セル45の内部に給気することで空気を充填し、マット部上に横たわる使用者の荷重を支える、マット装置10。」
(2)引用文献2
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性に優れ、理想の寝床内気候を実現することのできるマットレスに関する。」
(イ)「【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、人体側となる一方の表面の所定位置に複数の噴気孔が形成されたエアマットと、前記噴気孔が形成された側のエアマット上に配置されたシート状弾性部材と、これらエアマットおよびシート状弾性部材を被覆するボックス状カバーとからなり、外部に設置したポンプから前記エアマットに供給した加圧空気により、該エアマットを膨張させて人の体重を支持するとともに、前記噴気孔から人体側に向かって空気を噴出させることを特徴とするマットレスである。
【0012】
本発明は、寝具等に使用するマットレスにおいて、人体に向けてエアを噴気するエアマットと、通気性および体圧分散に優れるシート状弾性部材とを組み合わせることにより、所期の目的を達成しようとするものである。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、人体側の一面に噴気孔を有するエアマットと、通気性に優れるシート状弾性部材とを、ボックス状カバー内に収納し、加圧空気によりエアマットを膨張させつつ、前記噴気孔から人体側に向かって空気を噴出させることにより、高価で複雑な設備を要することなく、発汗等による湿気に起因する「蒸れ」を防止することができる。」
(ウ)「【0025】
以下、図面を参照しつつこの発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるマットレスの構成を示す斜視図である。
【0026】
本実施形態におけるマットレスは、エアマット1と、シート状弾性部材(シート状ポリウレタンフォーム2)と、ボックス(袋)状のカバー3とを主体として構成されている。また、このマットレスの外部には、前記エアマット1に圧縮空気を供給するエアポンプ(ダイヤフラム式ポンプ)10と、エアホース11とからなるポンプユニットが配設されている。
【0027】
エアマット1は、従来公知のエアマット(医療用あるいは介護用)と同様の構造であり、長手方向にセル毎に区画されたその表面には、膨張した状態で、該長手方向に波打つ数ミリ?数十ミリの凹凸が発現するように構成されている。
【0028】
なお、このエアマット1は、カバーに収納する時の表裏と長手方向の方向性があらかじめ決められており、図1のように、人体側となる表面(シート状ポリウレタンフォーム2側表面)における人体上半身側の所定位置、すなわち仰臥する人の腹部から胸部付近に相当すると思われる位置に、複数の噴気孔1a,1a,・・・が設けられている。また、エアマット1の別の所定位置には、このエアマット1に圧縮空気を供給するエアホース11を接続するためのプラグ(図示省略)が設けられている。
【0029】
ボックス(袋)状のカバー3は、従来のマットレスに使用されるカバーと同等であり、一次発汗を吸収するために、例えば綿等を用いて構成されており、内部に収納するエアマット1とシート状ポリウレタンフォーム2が一体となりずれないように安定させる機能を有する。なお、このカバー3は、側面のファスナーにより取り外しや洗濯が可能となっている。」
(エ)図1には、以下の内容が示されている。
[図:0001405304000004.jpg]
2 発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、以下の相当関係が認められる。
(1)後者の「複数の流体セル45」は、前者の「複数のセル」に相当する。以下同様に、後者の「前記複数の流体セル45同士を連結する規制部49及び連結片40」は、前者の「前記複数のセルを一体に保持する第1部材」に相当する。
(2)後者の「前記複数の流体セル45を一体に覆うカバー」と、前者の「前記複数のセル及び前記第1部材を覆い、使用者の背中部及び臀部を支持する部分が前記セルよりも通気性が高い第1カバー」とは、「前記複数のセルを覆う第1カバー」の点で共通する。
(3)後者の「矩形状を呈している可撓筒45a」は、前者の「角筒状の可撓筒」に相当し、後者の「前記可撓筒45aの両端開口を各別に閉塞した閉塞部から左右方向Yの外側に向けて突出する耳部48」の「閉塞部」と「耳部48」を合わせたものは、前者の「前記可撓筒の端部を閉塞する閉塞部」に相当する。
(4)後者の「前記耳部48に形成され、互いに隣接する前記流体セル45の互いの相対変位を規制する一対の規制部49」は、前者の「前記閉塞部に固定され、隣接する前記セルを固定する一対の第1ベルト」に相当する。
(5)後者の「前記可撓筒45aの外壁と一体に形成され、互いに隣接する前記流体セル45同士を連結する連結片40」と、前者の「前記可撓筒に固定され、隣接する前記セルを固定する一対の第2ベルト」とは、「前記可撓筒に固定され、隣接する前記セルを固定する第2ベルト」の点で共通する。
(6)後者の「前記一対の規制部49は、係止部同士が係止し合うことで互いに接続される」構成と、前者の「前記一対の第1ベルト」が「嵌合により互いに固定される」構成とは、「前記一対の第1ベルトは、係合により互いに固定される」構成において共通する。
(7)後者の「マット装置10」は、「流体セル45の内部に給気することで空気を充填し、マット部上に横たわる使用者の荷重を支える」ものであるから、前者の「エアマットレス」に相当する。
そうすると、両者は、次の点で一致すると認められる。
<一致点>
「複数のセルと、
前記複数のセルを一体に保持する第1部材と、
前記複数のセルを覆う第1カバーと、
を備え、
前記セルは、
角筒状の可撓筒と、
前記可撓筒の端部を閉塞する閉塞部と、
を含み、
前記第1部材は、
前記閉塞部に固定され、隣接する前記セルを固定する一対の第1ベルトと、
前記可撓筒に固定され、隣接する前記セルを固定する第2ベルトと、
を含み、
前記一対の第1ベルトは、係合により互いに固定される、エアマットレス。」
そして、両者は次の点で相違すると認められる。
<相違点1>
「第1カバー」に関し、本願発明では、「第1部材」を覆うものであり、「使用者の背中部及び臀部を支持する部分が前記セルよりも通気性が高い」ものであるのに対して、引用発明では、「規制部49及び連結片40」を覆うものであることが明らかでなく、「使用者の背中部及び臀部を支持する部分」が「流体セル45」よりも通気性が高いものであることも特定されていない点。
<相違点2>
「一対の第1ベルト」に関し、本願発明では、「嵌合により互いに固定される」のに対して、引用発明では、「係止部同士が係止し合うことで互いに接続され」る点。
<相違点3>
「第2ベルト」に関し、本願発明では、「一対」であり、「嵌合により互いに固定される」ものであるのに対して、引用発明では、「一対」であることが明らかでなく、「嵌合により互いに固定される」ものであることも特定されていない点。
3 相違点の判断
(1)<相違点1>について検討する。
上記2に示したように、引用文献2には、「ボックス(袋)状のカバー3は、従来のマットレスに使用されるカバーと同等であり、一次発汗を吸収するために、例えば綿等を用いて構成されており、内部に収納するエアマット1とシート状ポリウレタンフォーム2が一体となりずれないように安定させる機能を有する。」(段落【0029】)と記載されており、また、「ボックス(袋)状のカバー3」が、「エアマット1」全体を覆うことも示されている(図1)。
ここで、「ボックス(袋)状のカバー3」は、「エアマット1」全体を覆うから、「使用者の背中部及び臀部を支持する部分」を含むことも明らかであり、「綿」を用いて構成した場合は、「エアマット1」よりも通気性が高いこともまた明らかである。
そうすると、引用文献2の「ボックス(袋)状のカバー3」には、相違点1に係る本願発明の「第1カバー」の構成が開示されているといえる。
そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、内部に空気をためるエアマット及びエアマットを覆うカバーを備えたマット装置(マットレス)に関するものであることで共通しているから、引用発明の「カバー」を、引用文献2の「ボックス(袋)状のカバー3」を参考にして、「規制部49及び連結片40」を覆うものとし、「使用者の背中部及び臀部を支持する部分」が流体セル45よりも通気性を高くなるものとして、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)<相違点2>、<相違点3>について検討する。
引用発明には、「連結片40」に係る具体的な開示はないが、「連結片40」と「規制部49」とはともに「複数の流体セル45同士を連結する」ものであるところ、「連結片40」を「規制部49」と同様の構成、すなわち、「連結片40」を「一対」とし、「係止部同士が係止し合うことで互いに接続される」ものとすることは、当業者であれば自然に想起し得たことである。
そして、機械設計上一般に、「係止部同士が係止し合う」具体的な態様として、「嵌合」は慣用の手段であり、また、引用発明において、「連結片40」や「規制部49」の係止の態様として「嵌合」を採用できない理由も見当たらない。
したがって、引用発明において、上記相違点2及び相違点3に係る本願発明の構成とすることは、設計的事項にすぎない。
そして、本願発明の奏する作用効果を検討しても、引用発明、引用文献2に記載された事項から予測し得る範囲内のものであって、格別でない。
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、上記相違点2及び3に関し、審判請求書の(3)(b)において、「嵌合を外して簡単にばらすことが可能になります。」旨主張をしている。
しかしながら、本件明細書には、固定方式が嵌合の場合、これが着脱可能であることは記載されていないし、また、一般に、「嵌合」とは、「軸が穴にかたくはまり合ったり、滑り動くようにゆるくはまり合ったりする関係をいう語。」(広辞苑第6版)であり、かたくはまり合うことも含むため、「嵌合」が直ちに「簡単にばらすことが可能」という効果を奏するものとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(2)請求人は、令和5年8月10日付け意見書において、補正後の請求項1は、第1カバーの使用者の背中部及び臀部を支持する部分がセルよりも通気性が高いことを規定しており、これに対して、引用文献1~3には第1カバーの使用者の背中部及び臀部を支持する部分がセルよりも通気性が高いことは開示されていない旨主張する。
しかしながら、上記3(1)で述べたように、引用文献2には、本願発明の「第1カバー」に対応する「ボックス(袋)状のカバー3」が、本願発明の「複数のセル」に対応する「エアマット1」全体を覆うことが示されている。また、「綿」からなる「ボックス(袋)状のカバー3」は、空気をためる「エアマット1」よりも通気性が高いことは明らかであり、そして、「エアマット1」の全体を覆うから、「使用者の背中部及び臀部を支持する部分」を含むことも明らかである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(3)請求人は、同意見書において、補正後の請求項1に係る発明は、第1カバーにおいて、使用者の背中部を支持する部分及び使用者の臀部を支持する部分の2つの部分の通気性をそれぞれ向上させることができ、このように、異なる2つの部分の通気性をそれぞれ向上させることは、快適性の観点からみても当業者で有れば当然考慮すべきことではない旨主張する。
しかしながら、請求項1の記載では、「使用者の背中部及び臀部を支持する部分が前記セルよりも通気性が高い第1のカバー」と特定しているのにすぎず、第1カバーの使用者の背中部及び臀部を支持する部分の通気性がセルよりも高ければよいのであって、異なる2つの部分(背中部と臀部)の通気性を(他の部分よりも)それぞれを向上させることについては、何ら特定されていない。
したがって、請求人の上記主張は、請求項1の記載に基づくものではなく、採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-010845