特許拒絶査定不服審判
2023-004204
クッション構造
- 審判番号
- 2023-004204
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-561869
- 請求日
- 2023年03月13日
- 審決日
- 2025年07月03日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フロイデンベルク パフォーマンス マテリアルズ ベー.フェー.
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人】フロイデンベルク パフォーマンス マテリアルズ エルピー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 審判長/審判官
- 審判長 草野 顕子
- 審判官 高橋 学
- 審判官 稲垣 彰彦
- 分類
- P18 .113-WZ (A47C) / P18 .121-WZ (A47C) / P18 .537-WZ (A47C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-561869号「クッション構造」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日国際公開、WO2018/206568、令和2年7月2日国内公表、特表2020-519363号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)5月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年5月9日、EP(欧州特許庁))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年12月 4日提出:翻訳文
令和4年 5月26日付け:拒絶理由通知書
同年 8月26日提出:意見書、手続補正書
同年10月31日付け:拒絶査定
令和5年 3月13日提出:審判請求書、手続補正書
令和6年 6月24日付け:当審における拒絶理由通知書
同年 9月20日提出:意見書、手続補正書
同年12月16日付け:当審における拒絶理由(最後の拒絶理由)通
知書
令和7年 4月21日提出:意見書、手続補正書
第2 令和7年4月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年4月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第1の層と、絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間の中間層とを備え、
前記絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットは、輪郭付けられた表面への押し出しによって形成され、前記絡み合ったフィラメントは、それらの絡み合いにおいて部分的に浸透し合う溶融した結合を形成するために、前記輪郭付けられた表面に収集されたときにはまだ溶融状態にあり、
当該クッション構造の前記第1の層と前記第2の層を構成する前記絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットは、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の山および谷、または特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の半球において成形されているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置されたポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフルを有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された一連のピラミッドを有しているか、または、縦方向および/または幅方向に延びる、U字形および/またはV字形の溝を有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された、半球によってキャップされた一連の円筒を有しているか、または、山および谷、半球、ポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフル、ピラミッド、円錐、半球によってキャップされた円筒、U字形溝および/またはV字形溝の任意の組合せを有している、
クッション構造。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年9月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第1の層と、絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間の中間層とを備え、
当該クッション構造の前記第1の層と前記第2の層を構成する前記絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットは、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の山および谷、または特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の半球において成形されているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置されたポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフルを有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された一連のピラミッドを有しているか、または、縦方向および/または幅方向に延びる、U字形および/またはV字形の溝を有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された、半球によってキャップされた一連の円筒を有しているか、または、山および谷、半球、ポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフル、ピラミッド、円錐、半球によってキャップされた円筒、U字形溝および/またはV字形溝の任意の組合せを有している、
クッション構造。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマット」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1について
ア 記載事項
当審における最後の拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2015/125497号(平成27年8月27日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「[0001]
本発明は、立体網状構造体を使用したクッション用中材並びに該中材を各種カバーで覆って得られるクッション及び医療介護用クッションに関するものである。」
(イ)「[0019]
・・・また、本発明による立体網状構造体は、ヒステリシスロスが小さく柔らかな高反発特性を有し、人体の特性に適合する弾性特性を提供できる優れた立体網状構造体である。この優れた性質により、人体の特性に適合することで、製品への弾性特性の要求の多様化、製品への品質要求の高度化に対応でき、医療介護品、寝具、家具、若しくは、乗物の座席等に用いられるクッション材または表皮材に好適な立体網状構造体を提供することが可能となった。例えば、医療・介護用マットレスの応用例では、適切な立体網状構造体の弾性特性を実現し、睡眠中の人体の自然調整機能等に対応できるので、褥瘡等に適切に対応でき、患者は起き上がりがしやすい。・・・」
(ウ)「[0022]
ポリオレフィン系樹脂を含む層の厚さは、8mm以上250mm未満であり、ポリエステル系エラストマー及び/若しくはポリウレタン系エラストマーを含む層の厚さは、3mm~160mmであることが好ましい。上記厚み範囲とすることにより、ポリエステル系若しくはポリウレタン系とポリエチレン系という2つの材料の特徴が最大限に引き出され、寝返りや体位変換したとき等に生じる音を低減することができる。」
(エ)「[0029]
立体網状構造体は、定荷重繰返し試験後の反発弾性変化率が20%以下であることが好ましい。」
(オ)「[0040]
さらに、本発明によれば、適切な厚みで一定水準以上の反発力と体型保持性を有しながらも軽く、通気性に優れ、水洗い可能で衛生的なクッションを提供でき、各種産業に与える工業的利用価値は極めて大である。」
(カ)「[0042]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
まず第1実施形態~第9実施形態のクッション用中材を説明する。
第1実施形態のクッション用中材1は、図1及び図2(a)の通り、熱可塑性樹脂を原料又は主原料とし、複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着した板状の立体網状構造体41からなるものである。立体網状構造体41は、芯材またはベース材となるポリオレフィン系樹脂を含む層43の一面にポリエステル系エラストマー及び/若しくはポリウレタン系エラストマーを含む層45を積層したものである。」
(キ)「[0049]
本発明の層43,45は、線条の線径(直径)が0.3mm~1.5mmの熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーからなる連続線条なランダムなループを互いに溶融状態で溶着させた立体スプリング構造体である。・・・」
(ク)「[0051]
層43,45のそれぞれの厚みは柔らかさや高反発性に大きく関わってくるため、5mm~500mm、より好ましくは、10~150mm、さらには30~110mmが一層好ましい。5mm未満では高反発性が低くなるため好ましくなく、500mm以上では反発性が高くなりすぎるため好ましくない。」
(ケ)「[0052]
層43,45の縦横寸法は、例えば、マットレス、クッション等の場合、幅300~2000mm、長さ300~2500mm、高さ2~120mmである。」
(コ)「[0059]
ポリエステル系エラストマー及び/若しくはポリウレタン系エラストマーを含む層45は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが好ましく、主として、結晶性芳香族熱可塑性ポリエステル・エラストマー単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族熱可塑性ポリエステル・エラストマー単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とする熱可塑性ポリエステル・エラストマーブロック共重合体(A)であることが好ましい。」
(サ)「[0063]
・・・
本発明に用いられるポリエステル系熱可塑性エラストマーにおける低融点重合体セグメント(a2)の共重合量としては特に制限がないが、10~90重量%程度が好ましく、30~85重量%程度がより好ましく、50~80重量%程度が特に好ましい。低融点重合体セグメント(a2)の共重合量が10重量%未満であると、柔軟性、屈曲疲労性が悪くなる。一方、低融点重合体セグメント(a2)の共重合量が90重量%を超えると、機械的物性、高温特性、耐油性、耐薬品性が十分に発現しない。」
(シ)「[0067]
ポリウレタン系エラストマーは、主鎖にウレタン結合を含む弾性高分子であれば特に限定されないが、例えば、ジイソシアネート及びグリコールから構成されるハードセグメントと、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート若しくは脂肪族系ポリオールに所望によりジイソシアネートを作用させて構成されるソフトセグメントとのブロック共重合体等が挙げられ、これらを1種または2種以上混合して用いることができる。さらに、原料のポリウレタン系エラストマーに抗菌剤や不燃材、難燃剤を混合し、ポリウレタン系エラストマーを含む層がこれらの機能を備えるようにしてもよい。」
(ス)「[0080]
第2実施形態のクッション用中材2(図2(b)参照)が第1実施形態のクッション用中材1と異なるのは、芯材またはベース材となるポリオレフィン系樹脂を含む層43の両面にポリエステル系及び/若しくはポリウレタン系エラストマーを含む層45を積層した点にある。各層は四面成形で全ての面が平坦に均されており、第1実施形態のクッション用中材1の左右側面から内部に向かって所定間隔の領域は密度が高く成形されたものであり、中央部内部の領域の密度はそれよりも低く設定されている。即ち、上面及び底面を除き、全ての面から内部に向かって所定の深さまでは密度が高く成形されたものである。」
(セ)「[0081]
第3実施形態のクッション用中材3は、各層又は少なくとも一方の層の表面を異形若しくは多面形態とするものである。例えば、凸面を備えたもの3A(図4(a)参照)、凹面を備えたもの3B(図4(b)参照)、複数の連続的に形成された凹凸面を備えたもの3C(図4(c)参照)、複数の鋸歯面を備えたもの3D(図4(d)参照)、複数の波面を備えたもの3E(図4(e)参照)、隅が曲面(アール)形状のもの3F(図4(f)参照)、角が所定角度(ここでは45度)にカットされたもの3G(図4(g)参照)、或いはそれらの適宜の組合せ等が挙げられる。仰臥面を有する層について仰臥面にのみ凹凸面を備えたものであってもよいし、各層に凹凸面を形成し凹凸面同士を向かい合わせて積層してもよい。後者の場合、一方の層の凹面と他方の層の凸面とが嵌合するように形成してもよいし、凸面同士が接するようにしてもよい。」
(ソ)「[0084]
(クッション用中材製造装置)
次に、第1実施形態~第9実施形態のクッション用中材の製造装置10を説明する。
この製造装置10は、図5の通り、押出成形機11、無端ベルト12,13を備えた一対の無端コンベア14,15(図7参照)、無端ベルト12,13を駆動する駆動モータ16、チェーン及び歯車から構成され無端ベルト12,13の移動速度を変速させる変速機17、一対の無端コンベア14,15を一部水没させる水槽18、制御装置19、その他計器類等から構成されている。」
(タ)「[0085]
無端ベルト12,13は複数の金属製(ここではステンレス等)の板材20が所定の隙間22(図8(a)参照)を設けて複数(ここでは各2本)の無端チェーン12a,13a(図7(a),(b)参照)にねじ(図示略)で連結されたものである。・・・また、板材20の断面は長方形であるが、凸形のもの24(図8(c)参照)、凹形のもの25(図8(d)参照)、鋸歯形のもの26(図8(e)参照)、連続的に形成された凹凸形のもの27(図8(f)参照)等様々な変更形態が考えられる。」
(チ)「[0094]
(クッション用中材の製造方法)
本実施形態のクッション用中材1の製法の一例を述べるが、この製法に限定されるわけではない。特開2001-328153号公報等に記載された通り、ポリエチレンまたは熱可塑性エラストマーを主原料とした原料をそれらの融点より10℃~20℃高い溶融温度で溶融し、溶融された原料は、ダイス33内部へと送られ、圧力を加えられて、下部の口金34の押出口から吐出されたそれぞれの線条は、押出孔の複数個の配列により、複数本の線条からなる線条集合体21となり、自然降下する。クッション用中材1は、ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系及び/若しくはポリウレタン系エラストマーとの間で溶融温度が著しく異なる場合や冷却過程での物性変化が大きく異なる場合は、各層を別々の水槽18または別工程で個別に製造して積層することが一般的である。各層は次のように製造される。まず各層原料となる熱可塑性樹脂を加水分解等の防止のため加熱し乾燥させ、原料供給口32からコンテナ31に投入し、所望により適宜仕上がりを良好にする薬剤、抗菌剤、難燃剤等を添加する。なお、本明細書において溶融温度は、示差走査熱量測定によって得られた値である。」
(ツ)「[0100]
線条集合体のうち、シュートの傾斜面のいずれにも接触せずに降下した線条は、成形開口部を通過する。このとき、成形開口部を通過する線条のうち、傾斜面37a,37bの下辺近くを通過するものは、傾斜面37a,37bを滑り降りてくる線条と接触し、ループ状に絡まり合い、その接触絡合による降下軌道の撹乱が隣り合う中心方向の線条に若干の範囲で伝播しつつ降下する。成形開口部を通過する線条のうち、成形開口部の中央付近を通過するものは、水面に着水し、無端コンベア14,15による引取速度は線条集合体の降下速度よりも遅いため、着水したそれぞれの線条は撓み、水面付近で略ループ状に絡まり合う。無端コンベア14,15の速度は5~40m/時間が好ましい。」
(テ)「[0101]
そして、一部水没した1対の無端コンベア14,15の間に自然降下させ、上記の降下速度より遅く引き取る。この際に、押出された溶融樹脂の集合体の幅より1対の無端コンベア14,15の間隔を狭く設定しておき、かつ無端コンベア14,15が水没する前後に上記溶融樹脂の集合体の両面あるいは片面が無端コンベア14,15に接触するようにする。溶融した熱可塑性樹脂の集合体の両面部分は、無端コンベア14,15上に落下し、溶融した熱可塑性樹脂の集合体の内側へ移動し密な状態となるため、水中にそのまま落下した中央部分より空隙率が小さくなり、空隙率が高い中央部分より交点の数が多くなり、引張り強度が著しく強くなる。空隙率が低い表面部分は空隙部の面積が小さくなり、衝撃吸収層となる。」
(ト)「[0126]
クッション用中材においては、ポリオレフィン系樹脂を含む層とポリエステル系及び/若しくはポリウレタン系エラストマーを含む層とを接着接合してもよいし、縫合してもよいが、接着または縫合せず単に積層したものであってもよい。
ここで、積層には、平坦な層を積み重ねることのみならず、内層の上に外層を設けることも含まれる。・・・。」
(ナ)[図2](a)~(b)には以下の内容が示されている。
「
[図:0001429235000001.jpg]
」
(ニ)[図4]には以下の内容が示されている。
「
[図:0001429235000002.jpg]
」
(ヌ)[図6]には以下の内容が示されている。
「
[図:0001429235000003.jpg]
」
(ネ)[図8]には以下の内容が示されている。
「
[図:0001429235000004.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)上記ア(カ)の記載から、層43、45は、複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着し溶融状態で溶着させた板状の立体スプリング構造体であると認められる。
そして、上記ア(ソ)、(タ)、(ツ)、(テ)、(ニ)、(ヌ)及び(ネ)の記載、並びに[図4](a)~(d)に記載されたクッション用中材の各層の表面形状と[図7](c)~(f)に記載された無端ベルト12,13の板材20の断面が符合することを考慮すると、表面に凹凸面を備えた各層の形状は、断面が、凸形のもの24、凹形のもの25、鋸歯形のもの26、連続的に形成された凹凸形のもの27等である無端ベルト12,13の板材20の間で成形されるものと認められる。
以上から、複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着し溶融状態で溶着させた板状の立体スプリング構造体である層43,45の各層は、断面が、凸形のもの24、凹形のもの25、鋸歯形のもの26、連続的に形成された凹凸形のもの27等である無端ベルト12,13の板材20の間で成形されるものと認められる。
(イ)上記ア(キ)、(ツ)、(テ)及び(ヌ)の記載から、無端コンベア14,15が水没する前後で、無端コンベア14、15の間に押し出され、無端コンベア14、15に接触する線条は、溶融状態であり、複数の線条は撓み、水面付近で略ループ状に絡まり合い、溶着すると認められる。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着し溶融状態で溶着させた板状の立体スプリング構造体である層43,45の各層は、断面が、凸形のもの24、凹形のもの25、鋸歯形のもの26、連続的に形成された凹凸形のもの27等である無端ベルト12,13の板材20の間への複数本の線条の押し出しによって成形されるものであり、複数本の線条は、無端コンベア14、15に接触するときには、溶融状態にあり、それぞれが撓み、略ループ状に絡まり合い溶着すると認められる。
ウ 引用発明
上記「ア 記載事項」及び「イ 認定事項」を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着し溶融状態で溶着させた板状の立体スプリング構造体である層43,45であって、
芯材またはベース材となるポリオレフィン系樹脂を含む層43の両面にポリエステル系及び/若しくはポリウレタン系エラストマーを含む層45を積層し、
各層の表面は、複数の連続的に形成された凹凸面を備えたもの、複数の鋸歯面を備えたもの、複数の波面を備えたもの、或いはそれらの適宜の組合せ等からなり、各層に凹凸面を形成し、
各層は、断面が、凸形のもの24、凹形のもの25、鋸歯形のもの26、連続的に形成された凹凸形のもの27等である無端ベルト12,13の板材20の間への複数本の線条の押し出しによって成形されるものであり、複数本の線条は、無端コンベア14、15に接触するときには、溶融状態にあり、それぞれが撓み、略ループ状に絡まり合い溶着する
クッション用中材。」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「線条」は本件補正発明の「フィラメント」に相当し、以下同様に、「層43」は「中間層」に、「層45」は「第1の層」及び「第2の層」に、「クッション用中材」は「クッション構造」に、それぞれ相当する。
そして、上記相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
イ 引用発明の「螺旋状に無秩序に絡まり合」う「複数本の線条」は、本件補正発明の「絡み合ったフィラメント」に相当する。
引用発明の「板状の立体スプリング構造体」は、立体構造体、すなわち、三次元の構造体であることから、「三次元の構造化された」ものといえ、さらに、板状であることから厚みを有すること、スプリング構造体であることから柔らかいものであることも踏まえると、本件補正発明の「三次元の構造化されたマット」に相当する。
したがって、引用発明の「複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合」う「板状の立体スプリング構造体である層43,45であって、芯材またはベース材となる」「層43の両面に」「層45を積層し」た構成は、本件補正発明の「絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第1の層と、絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間の中間層とを備え」る構成に相当する。
ウ 引用発明の「複数の連続的に形成された凹凸面を備えたもの、複数の鋸歯面を備えたもの、複数の波面を備えたもの」は、その凹凸、鋸歯の頂部と底部、波面の頂部と底部が繰り返し連続しているものといえるから、本件補正発明の「特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の山および谷」に相当する。
したがって、引用発明の「各層の表面は、複数の連続的に形成された凹凸面を備えたもの、複数の鋸歯面を備えたもの、複数の波面を備えたもの、或いはそれらの適宜の組合せ等からなり、各層に凹凸面を形成した」構成は、凹凸面等は層45の表面に形成されているといえるから、本件補正発明の「当該クッション構造の前記第1の層と前記第2の層を構成する」「マットは、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の山および谷」「において成形されている」構成に相当する。
さらに、「または」で接続された他の選択肢の記載も踏まえると、引用発明の「各層の表面は、複数の連続的に形成された凹凸面を備えたもの、複数の鋸歯面を備えたもの、複数の波面を備えたもの、或いはそれらの適宜の組合せ等からなり、各層に凹凸面を形成した」構成は、本件補正発明の「当該クッション構造の前記第1の層と前記第2の層を構成する」「マットは、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の山および谷、または特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の半球において成形されているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置されたポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフルを有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された一連のピラミッドを有しているか、または、縦方向および/または幅方向に延びる、U字形および/またはV字形の溝を有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された、半球によってキャップされた一連の円筒を有しているか、または、山および谷、半球、ポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフル、ピラミッド、円錐、半球によってキャップされた円筒、U字形溝および/またはV字形溝の任意の組合せを有している」構成に相当するといえる。
エ 引用発明における無端コンベア14,15が備える無端ベルト12,13の板材20の断面が、「凸形のもの24、凹形のもの25、鋸歯形のもの26、連続的に形成された凹凸形のもの27等であること」は、本件補正発明における「表面」が「輪郭付けられた」ことに相当するから、引用発明における「複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着し溶融状態で溶着させた板状の立体スプリング構造体である」「各層は、断面が、凸形のもの24、凹形のもの25、鋸歯形のもの26、連続的に形成された凹凸形のもの27等である無端ベルト12,13の板材20の間への複数本の線条の押し出しによって成形される」態様は、本件補正発明における「前記絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットは、輪郭付けられた表面への押し出しによって形成され」る態様に相当する。
また、引用発明における「それぞれが撓み、略ループ状に絡まり合」う「複数本の線条」も本件補正発明の「前記絡み合ったフィラメント」に相当するから、引用発明の「それぞれが撓み、略ループ状に絡まり合」う「複数本の線条は、無端コンベア14、15に接触するときには、溶融状態にあ」ることは、本件補正発明の「前記絡み合ったフィラメントは、」「前記輪郭付けられた表面に収集されたときにはまだ溶融状態にあ」ることに相当する。
そして、引用発明の「それぞれが撓み、略ループ状に絡まり合」う「複数本の線条」が「溶着する」ことにおいて、「溶着」が本件補正発明の「浸透し合う溶融した結合」に相当する。
ここで、引用発明において、「複数本の線条」の「溶着」が、それらの線条が互いに接する領域の近傍のみで行われ得る、すなわち部分的に行われることは明らかであるとともに、「複数本の線条」が「溶着する」ためには、「複数本の線条」が「溶融状態」である必要があることも明らかである。
そうすると、引用発明の「複数本の線条は、無端コンベア14、15に接触するときには、溶融状態にあり、それぞれが撓み、略ループ状に絡まり合い溶着する」態様は、本件補正発明の「前記絡み合ったフィラメントは、それらの絡み合いにおいて部分的に浸透し合う溶融した結合を形成するために、輪郭付けられた表面に収集されたときにはまだ溶融状態にあ」る態様に相当する。
オ 以上を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、
「絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第1の層と、絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットである第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との間の中間層とを備え、
前記絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットは、輪郭付けられた表面への押し出しによって形成され、前記絡み合ったフィラメントは、それらの絡み合いにおいて部分的に浸透し合う溶融した結合を形成するために、前記輪郭付けられた表面に収集されたときにはまだ溶融状態にあり、
当該クッション構造の前記第1の層と前記第2の層を構成する前記絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマットは、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の山および谷、または特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列にまたは互い違いに配置された一連の半球において成形されているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置されたポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフルを有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された一連のピラミッドを有しているか、または、縦方向および/または幅方向に延びる、U字形および/またはV字形の溝を有しているか、または、特定の距離によって離隔したまたは互いに当接しかつ並列または互い違いに配置された、半球によってキャップされた一連の円筒を有しているか、または、山および谷、半球、ポジティブおよび/またはネガティブなカスプ、カップまたはワッフル、ピラミッド、円錐、半球によってキャップされた円筒、U字形溝および/またはV字形溝の任意の組合せを有している、
クッション構造。」
において一致し、相違点はない。
(4)判断
したがって、本件補正発明は、引用発明である。
仮に、相違点があるとしても、微差であるから、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)効果についての検討
本件補正発明が奏する作用効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとは認められない。
(6)審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張
審判請求人は令和7年4月21日に提出した意見書において、以下の旨を主張する。
「しかしながら、引用文献1では、板状の立体網状構造体の表面が、輪郭付けされた形状に成形される前に、水槽で冷却されます。」
イ 当審の判断
上記(2)イ(ウ)で示したように、引用発明における、複数本の線条が螺旋状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着し溶融状態で溶着させた板状の立体スプリング構造体である層43,45の各層は、断面が、凸形のもの24、凹形のもの25、鋸歯形のもの26、連続的に形成された凹凸形のもの27等である無端ベルト12,13の板材20の間への複数本の線条の押し出しによって輪郭づけられるものであり、複数本の線条は、無端コンベア14、15に接触するときには、溶融状態にあり、それぞれが撓み、略ループ状に絡まり合い溶着すると認められるから、審判請求人の当該主張は認められない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年4月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年9月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 令和6年12月16日付けの当審における拒絶の理由
令和6年12月16日付けの当審における拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、又は引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2015/125497号
3 引用文献1
令和6年12月16日付けの当審における拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「絡み合ったフィラメントの三次元の構造化されたマット」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるか、又は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であるか、又は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-004204