特許拒絶査定不服審判
2022-009928
装飾部材およびその製造方法
- 審判番号
- 2022-009928
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-535590
- 請求日
- 2022年06月28日
- 審決日
- 2025年05月20日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー・ケム・リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 木原 裕二
- 分類
- P18 .537-WZ (B32B) / P18 .536-WZ (B32B) / P18 .113-WZ (B32B) / P18 .121-WZ (B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-535590号「装飾部材およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月11日国際公開、WO2019/135667、令和3年4月30日国内公表、特表2021-510641号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)1月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年1月8日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和3年 8月13日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和4年 3月 1日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 6月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 9月28日 :上申書の提出
令和5年 9月29日付け:拒絶理由通知書
令和5年12月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 6月19日付け:拒絶理由通知書
令和6年10月24日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年10月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
基材と、前記基材上に備えられた装飾層と、を含む装飾部材であって、
前記装飾層の面に垂直な方向をx軸、前記装飾層の面上の何れか一方向をy軸とし、380nm≦λ≦780nmの波長のD65標準光源の条件下で探知手段(detector)を用いて前記装飾層上のy軸の幅の中心点を探知する時に、前記探知手段の中心と、前記装飾層上のy軸の幅の中心点とを連結した線がx軸-y軸の平面でx軸と成す中心視野角を
[図:0001427058000001.jpg]
とし、前記探知手段の中心から前記装飾層上のy軸方向の幅の中心点までの距離をDvとし、Dvを500mmとしたときに、前記中心視野角φv=0°において、下記式1で表される奥行き感パラメータ値δ1mが0.15以上であり、
前記装飾層は、非対称プリズムフィルムであり、
前記装飾層は、前記基材上に備えられた光反射層を含むか、前記基材上に備えられた光吸収層を含むか、前記基材上に備えられた光反射層および前記光反射層上に備えられた光吸収層を含むか、前記基材上に備えられた光吸収層および前記光吸収層上に備えられた光反射層を含み、
前記光反射層は、チタン(Ti)、シリコン(Si)とアルミニウム(Al)から選択される1種または2種以上の材料、その酸化物、窒化物、または酸窒化物、炭素および炭素複合体のうち1種または2種以上の材料を含む単一層または多層であり、
前記光吸収層は、チタン(Ti)、シリコン(Si)とアルミニウム(Al)から選択される1種または2種以上の材料、またがその酸化物、窒化物、または酸窒化物を含む単一層または多層である、
装飾部材。
[式1]
δ1m=|Δh|max/Dv
(前記式1中、|Δh|maxは、下記式2で表されるΔhの最大値であり、
[式2]
【数1】
[図:0001427058000002.jpg]
前記式2中、Δdは、下記式3で表され、
[式3]
[図:0001427058000003.jpg]
前記式3中、
[図:0001427058000004.jpg]
は、前記探知手段の中心と、前記探知手段により探知される前記装飾層上のy軸上の一地点とを連結した線がx軸-y軸の平面でx軸と成す視野角であり、
[図:0001427058000005.jpg]
は、それぞれ下記式4および式5で表され、
[式4]
【数2】
[図:0001427058000006.jpg]
[式5]
【数3】
[図:0001427058000007.jpg]
前記式4および式5中、
[図:0001427058000008.jpg]
は、それぞれ視野角
[図:0001427058000009.jpg]
での角輝度であり、
前記式2中、
[図:0001427058000010.jpg]
は、下記式6の範囲を満たし、
[式6]
[図:0001427058000011.jpg]
前記式6中、
[図:0001427058000012.jpg]
は、それぞれ
[図:0001427058000013.jpg]
の最小値と最大値である。)」
第3 当審拒絶理由の概要
令和6年6月19日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりのものである。
1.(明確性要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1、5、6の「角輝度」は一般的な技術用語ではないため、その定義や「f(φe)」などで表されるパラメータが不明確である。
(2)請求項1の[式4]、[式5]について、導出過程が不明であり、当該[式4]、[式5]の持つ技術上の意義も不明である。
(3)請求項1の「δ1m」、「Δh」及び[式2]について、[式2]が持つ技術的な意味が不明であり、その「式2]から算出された「Δh」や「δ1m」がどのような技術的意味を持つ値も不明確である。
(4)請求項1、5、6の「非プリズムパターンフィルム」は一般的な技術用語ではないため、不明確である。
(5)請求項1の奥行き感パラメータ値δ1mの閾値を「0.15」とする技術上の意義が不明確である。
(6)請求項2の「δ1b」、「Δh’」及び[式12]について、[式12]が持つ技術的な意味が不明であり、その「式12]から算出された「Δh’」や「δ1b」がどのような技術的意味を持つ値も不明確である。
(7)請求項2、3、5の[式14]、[式15]について、導出過程が不明であり、当該[式14]、[式15]の持つ技術上の意義も不明である。
(8)請求項2の奥行き感パラメータ値δ1bの閾値を「3」とする技術上の意義が不明確である。
(9)請求項3、5の奥行き感パラメータ値δ2の閾値を「0.3」とする技術上の意義が不明確である。
(10)請求項4、6の「角輝度グラフの勾配」の意味が不明確である。
(11)請求項4、6の「角輝度グラフの勾配を角輝度で除した値の絶対値」の技術的な意義が不明である。
(12)請求項4、6の角輝度グラフの勾配を角輝度で除した値の絶対値の閾値を「0.025」とする技術上の意義が不明確である。
(13)請求項6には「φv=0°・・・において角輝度グラフの勾配を角輝度で除した値の絶対値」が一義的に定まらず、不明確である。
(14)奥行き感パラメータ値δ1m、奥行き感パラメータ値δ1b、奥行き感パラメータ値δ2、及び、角輝度グラフの勾配を角輝度で除した値の絶対値の各閾値について比較すると、請求項1の奥行き感パラメータ値δ1mの閾値、請求項2の奥行き感パラメータ値δ1bの閾値、請求項3、5の奥行き感パラメータ値δ2の閾値、又は請求項4、6の角輝度グラフの勾配を角輝度で除した値の絶対値の閾値の技術的な意義が不明である。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1には、「下記式1で表される奥行き感パラメータ値δ1mが0.15以上であ」ることが記載されているものの、閾値を「0.15」とした客観的な根拠や閾値「0.15」の臨界的意義について、本件発明が解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。
(2)請求項2には、「下記式11で表される奥行き感パラメータ値δ1bが3以上であ」ることが記載されているものの、閾値を「3」とした客観的な根拠や閾値「3」の臨界的意義について、本件発明が解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。
(3)請求項3、5には、「下記式21で表される奥行き感パラメータ値δ2が0.3以上であ」ることが記載されているものの、閾値を「0.3」とした客観的な根拠や閾値「0.3」の臨界的意義について、本件発明が解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。
(4)請求項4、6には、「角輝度グラフの勾配を角輝度で除した値の絶対値が0.025以上であ」ることが記載されているものの、閾値を「0.025」とした客観的な根拠や閾値「0.025」の臨界的意義について、本件発明が解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1、5、6には、「装飾層は、非プリズムパターンフィルム・・・である」と記載されているが、発明の詳細な説明には、本願発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(2)請求項1、5、6には、「装飾層は、・・・非対称プリズムフィルムである」と記載されていが、発明の詳細な説明には、本願発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(3)請求項1には、非プリズムパターンフィルム又は非対象プリズムフィルムである装飾層を、「Dvを500mmとしたときに、前記中心視野角φv=0°において、下記式1で表される奥行き感パラメータ値δ1mが0.15以上」にすることが記載され、請求項5には、前記装飾層を、「距離をDvとしたときに、前記中心視野角φv=0°において、下記式21で表される奥行き感パラメータ値δ2が0.3以上」(Dvは500mm)にすることが記載され、請求項6についても、前記装飾層を、「中心視野角φv=0°かつDv=500mmにおいて角輝度グラフの勾配を角輝度で除した値の絶対値が0.025以上」にすることが記載されているが、発明の詳細な説明には、本願発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
4.(新規性)この出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
5.(進歩性)この出願の請求項1~15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2008-96820号公報
第4 当審の判断
当審は、以下に示すとおり、令和6年10月24日提出の手続補正書による補正及び意見書の内容を考慮しても、上記第3に記載した当審拒絶理由のうち、少なくとも拒絶理由1(明確性要件)及び拒絶理由3(実施可能要件)は解消していないと判断する。
1 拒絶理由1(明確性要件)について
明確性要件は、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである(例えば、知財高裁平成26年(行ケ)10254号判決参照。)。より具体的には、「物」の発明にあっては、明確性要件を満たすためには、ある具体的な「物」が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要であり、また、その前提として、発明特定事項の記載が明確である必要がある。特に、パラメータ発明の場合には、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮して、物性値や数式の定義、測定方法や測定条件を当業者が理解できるように記載されていることを要し、また、少なくとも明細書において、パラメータの技術的意味を理解できる程度にその数式を誘導した過程及びその数式の数値範囲を定めた理由等を記載することにより技術的意味が理解できることを要するところ、検討するに、本願発明の「装飾部材」は、少なくとも以下の点において、明確であるとはいえない。
(1)「角輝度」の定義について
請求項1には、「角輝度」について「f(φe)」などで表されるパラメータであることが記載されているが、当該用語は、一般的な技術用語ではないため、特許請求の範囲の記載は明確であるといえない。
また、【0035】の「・・・探知手段から距離Dvだけ離れている装飾部材の装飾層の表面の座標(0、y、z)地点から放出される波長がλである光の(θ、φ)方向の角輝度(angular luminance)をf(Dv、y、z;θ、φ、λ)としたとき・・・」との記載を踏まえると、「角輝度」とは、角度を変数とした輝度を意味すると一応理解できるが、装飾面の形状や材質から、角輝度を示す関数f(φe)をどのように導出するかについて、本願明細書等には記載されていないし、技術常識でもない。
してみれば、本願明細書等の記載を参酌しても、請求項1の「装飾部材」は不明確である。
(2)審判請求人の主張
審判請求人は、「拒絶理由通知が指摘する図4の「a.u.」とは「arbitrary unit(すなわち、任意単位)」を意味する。これは輝度の絶対量ではなく、各輝度の分布を表現するために相対的な量(すなわち比)を示したものである。
本願における角輝度は、拒絶理由通知の認定する通り、角度を変数とした輝度を意味することは当業者にとって明らかであり、輝度の具体的な単位として「cd/m2」が用いられることも当業者に広く知られている。上記の通り「a.u.」は「cd/m2」と異なる単位を示したものではないので、係る記載により本願が不明確となることはない。
なお、奥行き感を評価する上では式1に示されるように微小角度差において生じる画像の点の明るさの差が重要なのであり、輝度の単位として何を用いるかは発明の本質的な観点から重要ではないことも付言する。」(審判請求書の「3.(1)A.」)と主張している。
しかしながら、上記主張は、輝度の単位として何を用いるかは重要ではないこと、及び角輝度が角度を変数とした輝度を意味することの説明に留まり、「角輝度」の定義や、これを示す関数f(φe)をどのように導出するのかについて説明しておらず不明であるから、上記主張は採用できないし、採用したとしても依然として不明確である。
そうすると、請求項1の角輝度の定義は依然として不明であるし、角輝度の関数を示す「f(φe)」を特定することもできないから、請求項1には、具体的な「物」が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていない。
2 拒絶理由3(実施可能要件)について
物の発明について実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用できる程度の記載があることを要する(知財高裁平成31年(行ケ)第10064号判決)ところ、検討するに、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
(1)請求項1には、非対象プリズムフィルムである装飾層を、「Dvを500mmとしたときに、前記中心視野角φv=0°において、下記式1で表される奥行き感パラメータ値δ1mが0.15以上」にすることが記載されている。また、[式1]~[式6]をみるに、「奥行き感パラメータ値δ1mが0.15以上」という条件を満たすためには、前記装飾層の角輝度f(φe)、f(φe+0.15°)、f(φe-0.15°)を設計することが必須であることが理解できる。そうすると、請求項1に係る発明を実施するためには、奥行き感パラメータ値δ1mを所望の値にするために、前記装飾層の角輝度を設計する必要があるといえる。
しかしながら、上記1で述べたとおり、本件明細書等全体を参酌しても「角輝度」の定義は不明であり、角輝度f(φe)、f(φe+0.15°)、f(φe-0.15°)が、どのような関数であるか不明である。
したがって、当業者が本願発明を実施することができる程度に、発明の詳細な説明において、「角輝度」の定義を明確にした上で、装飾層の材料や構造と装飾層の角輝度の関係について明確かつ十分に説明されているとはいえない。
(2)装飾層の材料や構造と装飾層の角輝度の関係について
まず、本願発明の装飾部材を構成する装飾層として、どのような材料や構造を備えるものがよいのかということについて、発明の詳細な説明にて合理的な記載があるか検討してみても、例えば、【0013】において、装飾層として、光反射層や光吸収層を含むことができることや、【0164】~【0179】において、光反射層や光吸収層としてどのような材料が利用できるかが一応列記されていたり、また、装飾層の形状として、【0054】、【0094】、実施例、及び、図面の記載において、所定の形状のプリズムやレンチキュラパターンが採用できることが一応列記されているものの、これらの列記されている装飾層の態様が請求項1に記載された各数式の条件をどのような論理に基づいて満たし得るのかまでは、何ら合理的に説明されていない。
次に、発明の詳細な説明(【0186】~【0197】)の実施例2~4(装飾層としてファイル#4~#6を使用)に着目すると、実施例2~4の装飾層は、ピッチ、高さ、底角というプリズムフィルムの形状とプリズムフィルムの材料について一応特定されているものの、プリズムフィルムの表面粗さといった表面特性についてはなんら特定されていない。そして、光学特性として、物体の表面特性により、光の反射、吸収、透過等の光学特性が大きく異なることは技術常識であるから、実施例2~4の装飾層について、どのような光学特性を持つかが一義的に定められていないと認められる。
図9(a)には、フィルム♯4~♯6の角輝度のグラフについて一応開示されているが、中心視野角φvの特定や波長λの特定がなく、上述したとおり、フィルム♯4~♯6についてどのような表面特性のものを用いるかも不明であり、フィルム♯4~♯6の角輝度がなぜこのようなグラフになるかの技術的な説明もない。
そうすると、本件明細書等全体を参酌しても、装飾層の材料や構造と装飾層の角輝度の関係について明確かつ十分に説明されているとはいえない。
(3)したがって、技術常識を考慮しても、「角輝度」の定義は依然として不明であるし、装飾層の材料や構造と装飾層の角輝度の関係が十分に理解できず、装飾層の角輝度f(φe)、f(φe+0.15°)、f(φe-0.15°)をどのように設計するかが不明であるから、本願発明において、装飾層の角輝度に基づいて算出される、奥行き感パラメータ値δ1mについて閾値以上に設定することは、当業者に過度の試行錯誤を求めるものである。
なお、発明の詳細な説明の表2(【0187】)、表4(【0193】)、図9(b)には、実施例2~4における、中心視野角φv毎の、奥行き感パラメータ値δ1mが一応記載されているが、この結果をもって、本願発明を、当業者が実施できるともいえない。
(4)審判請求人の主張
審判請求人は、「C.装飾層と角輝度の関係について
本願段落0041には角輝度がシミュレーションにより計算されることが記載され、段落0155にはシミュ―ションを行って光吸収層の厚さおよび上面の傾斜角から、色相を確認することが記載されている。従って、具体的な材料が明細書に記載されていなくても、既存のシミュレーションソフトを利用すれば式1等の光学的条件を満たす材料や形状を、当業者が特定することは可能であり、そのような試行はシミュレーション上で可能であることから当業者に過度な試行錯誤を求めるものとはいえない。」(審判請求書の「3.(3)C.」)と主張している。
しかしながら、【0041】には、角輝度は光学シミュレーションにより計算される旨が記載されているものの、具体的にどのような光学シミュレーションにより角輝度を計算するかは記載されていないし、技術常識でもない。
また、【0155】には、シミュレーション結果から、光吸収層の厚さおよび上面の傾斜角を調整することで様々な色相を実現することができる旨が記載されているものの、角輝度と色相の関係について開示されていないから、様々な色相を実現できることを根拠に、角輝度を計算できるともいえない。
したがって、上記主張は採用できない。
第5 むすび
上記の通り、本願発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない。
また、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の拒絶理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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