特許拒絶査定不服審判
2022-009111
パノラマ走査範囲付きカメラ
- 審判番号
- 2022-009111
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-549573
- 請求日
- 2022年06月14日
- 審決日
- 2024年01月22日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コアフォトニクス リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P18 .121-WZ (G03B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-549573「パノラマ走査範囲付きカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日国際公開、WO2018/167581、令和 2年 4月23日国内公表、特表2020-512581〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)2月13日(パリ条約による優先権主張2017年3月15日、米国、2017年9月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 元年11月11日 :手続補正書の提出
令和 2年12月21日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 6月 4日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月18日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
令和 4年 1月26日 :意見書、手続補正書の提出
同年 2月 7日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
( 同月15日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 8月 7日付け:拒絶理由通知書
(以下「当審拒絶理由通知書」という。)
同年11月 8日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年11月8日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は、次のとおりのものである。
<本願発明>
「第1の視野(field of view,FOV)を有する第1の屈曲式デジタルカメラと、
第2の視野(field of view,FOV)を有する第2の屈曲式デジタルカメラと、
を備えたスマートフォンであって、
前記第1の屈曲式デジタルカメラは、
第1のレンズ光軸を有する第1のレンズと、
第1の画像センサと、
物体または景色からの第1の光路を第2の光路に屈曲させる第1の光路屈曲素子(optical path folding element,OPFE)と、を含み、
当該スマートフォンの第1のエッジに近い側に配置され、
前記第1のレンズ全体は、前記第1のOPFEと、前記第1の画像センサとの間に配置され、
前記第1のレンズは、前記第1のOPFEに固定して取り付けられ、
前記第2の光路は、前記第1のレンズ光軸と実質的に平行であり、
前記第1のレンズおよび前記第1のOPFEは、第1のパノラマスキャン範囲において、前記第1の画像センサに対して前記第1のレンズ光軸の周りで回転可能であり、
前記第2の屈曲式デジタルカメラは、
第2のレンズ光軸を有する第2のレンズと、
第2の画像センサと、
物体または景色からの第3の光路を第4の光路に屈曲させる第2の光路屈曲素子(optical path folding element,OPFE)と、を含み、
当該スマートフォンの第1のエッジに対向する第2のエッジに近い側に配置され、
前記第2のレンズ全体は、前記第2のOPFEと、前記第2の画像センサとの間に配置され、
前記第2のレンズは、前記第2のOPFEに固定して取り付けられ、
前記第4の光路は、前記第2のレンズ光軸と実質的に平行であり、
前記第2のレンズおよび前記第2のOPFEは、第2のパノラマスキャン範囲において、前記第2の画像センサに対して前記第2のレンズ光軸の周りで回転可能であり、
前記屈曲式デジタルカメラの少なくとも1つは、前記第1のOPFEまたは前記第2のOPFEを自律的に回転させて前記第1のFOVまたは前記第2のFOVをそれぞれ変更することによって物体を追跡するように動作可能である、スマートフォン。」
第3 当審拒絶理由通知書における拒絶の理由
本願発明は本件補正前の請求項1に係る発明を補正したものであるところ、当審拒絶理由通知書で本件補正前の請求項1に係る発明に対して通知した拒絶の理由の概要は、以下の理由を含むものである。
(進歩性)本件補正前の本願の請求項1に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に例示される周知技術に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.中国実用新案第203406908号明細書
2.特開2003-309748号公報
3.国際公開第2004/084542号(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由通知書で引用された引用文献1(中国実用新案第203406908号明細書)には、次の事項が記載されている(下線は、当合議体が付した。翻訳は、当合議体が作成した。以下同じ。)。
ア [0001]及び[0002]
「
[図:0001411665000001.jpg]
」
(訳:技術分野
[0001]
本考案は携帯電話用の回転式カメラに関し、通信製品の技術分野に属する。
背景技術
[0002]
現在、スマートフォンがかなり普及しており、スマートフォンを用いての写真撮影が人気となっている。代表的なスマートフォンにはその前面及び背面にカメラが備えられており、フロントカメラは自分撮り用に用いられ、リアカメラは風景写真等の画像やビデオを撮影するために用いられる。スマートフォンの発展に伴い、3Dカメラや広画角のカメラも新製品に適用されるようになっている。しかしながら、3D撮影では、一定の距離を維持しながら人間の両眼による立体撮像の原理をシミュレートするために2つのカメラが必要とされるため、3Dでの写真撮影を実現するにはカメラを追加しなくてはならない。また、広角撮影の角度には制限がある。時には、より大きな撮影画角度、さらには360°のパノラマ写真が求められることがあり、一般的な携帯電話のカメラでは実現することができない。)
イ [0004]
「
[図:0001411665000002.jpg]
」
(訳:[0004]
本考案は、次の手段によって実現される。携帯電話の左右両側に2つの回転体がそれぞれ設置され、各回転体はいずれも個別に回転機構に接続され、回転を実現する。回転機構とは直流モータであり、位置センサを含んでなり、携帯電話から送信された信号はモータに送られ、位置センサは位置信号を携帯電話にフィードバックし、携帯電話のプロセッサーは回転体が必要な位置まで回転して停止したことを検知する。こうすることで2つのカメラの撮影方向をそれぞれ制御できるようになり、2つのカメラが同時に前面を向いているときは、立体的な自分撮りを実現できる。同時に背面を向いているときは、携帯電話で立体的な風景を撮影することができる。2つのカメラのうち、1つが前面を向き1つが背面を向いているときは、一般的なスマートフォンのカメラの配置と同じになる。2つのカメラによって、携帯電話は360度全方位の撮影を実現することができ、プログラムで制御しながら複数の角度の写真を一回で撮影し、例えばphoto shopのような画像処理ソフトウェアに入力して合成することでパノラマ写真にすることができる。または、内蔵のアプリケーションソフトウェアでパノラマ写真の繋ぎ合わせを自動で完了することができ、このような携帯電話のアプリケーションソフトウェアは既に広く利用されている。)
ウ [0012]―[0014]
「
[図:0001411665000003.jpg]
[図:0001411665000004.jpg]
」
(訳:[0012]
図1における携帯電話の筐体1は、一般的な携帯電話の外形及びサイズと略同じであり、正面がディスプレイ4であり、筐体1の左右両側に2つの切り欠き凹部が備えられ、切り欠き凹部内に回転体2が一つずつ備えられ、回転体2は円筒形であり、各回転体2上にカメラ3が備えられている。回転体2は切り欠き凹部内で回転することができ、その自由度は180度である。各カメラ3はいずれも前面に向けてまたは背面に向けて撮影することができ、180度の範囲内における任意の所定の角度で止めて撮影することもできる。2つのカメラ3がすべて前面を向いている、またはすべて背面を向いているとき、2つのカメラが交差して撮影するようになり、これによって例えば人間の2つの目のように、立体的な画面を撮影することができる。現在、3D撮影を行う一般的な携帯電話は、その前面に2つのカメラがあるか、背面に2つのカメラがあり、カメラの前面及び背面のどちらでも3D撮影を行う場合には、合計4つのカメラが必要となるため、コストが上がり乱雑した配置となる。回転可能な2つのカメラを使用することで、撮影のニーズに応じて2つのカメラの撮影方向を決定することができる。
[0013]
図2は図1の斜視図であり、筐体1上における2つの回転体2の位置及び取り付け状態をより直接的に見て取ることができる。
[0014]
図3においては、図1中の領域Aを部分的に拡大しており、点線の箇所は筐体1内に隠れている物品を示す。回転体2の上下に回転軸5が接続されており、この回転軸5を軸として回転する。回転軸5の下端はモータ6に接続され、モータ6は回転体2を回転させ、そしてモータ6は携帯電話のハードウェアに制御され、携帯電話のプログラムの関連するコマンドに基づき動作する。回転軸5の上端は位置センサ7に接続される。位置センサ7は回転角度を測定するためのセンサであり、例えば光電の原理を利用した回転位置センサ、ホール効果の原理を利用した回転位置センサなどであるが、回転体2の回転角度を電気信号として出力して携帯電話のハードウェアにフィードバックすることで、回転体2の角度や位置を検知できるため、ハードウェアが回転体2の撮影角度を制御しやすくなっている。前記回転体2、モータ6、位置センサ7は次のように配置されている。モータ6及び位置センサ7が筐体1の内部にあり、回転体2が筐体1上の切り欠き凹部の位置にある。本考案は主に回転式のカメラに関し、携帯電話アクセサリーの構造設計である。関連するアプリケーションの制御プログラム、モータの制御技術、センサの信号処理はいずれも成熟した技術であり、関連する携帯電話のハードウェア内に統合されているため、ここでは述べない。2つのカメラ3は、プログラムによって制御して自由に回転させることができるため、短い時間内で複数の角度の画像を自動で撮影することができ、関連する画像処理ソフトウェアによってパノラマ画像に自由に合成することができる。前記画像処理ソフトウェアも成熟した技術であり、例えばphoto shop等である。)
エ 図1、図2及び図3
「
[図:0001411665000005.jpg]
」
(2) 引用文献1の記載事項から読み取れる事項の認定
上記[0001]、[0002]、[0004]、図1、図2及び図3の記載から、引用文献1においては、携帯電話としてスマートフォンが想定されていることは明らかである。
(3) 引用発明の認定
前記(1)で摘記した引用文献1の記載事項及び前記(2)で認定した事項から、引用文献1には、図1、図2及び図3のスマートフォンについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明等の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
<引用発明>
「スマートフォンの筐体1の左右両側に2つの切り欠き凹部が備えられ、切り欠き凹部内に回転体2が一つずつ備えられ、回転体2は円筒形であり、各回転体2上にカメラ3が備えられ、([0012]、上記(2))
回転体2は切り欠き凹部内で回転することができ、その自由度は180度であり、([0012])
2つのカメラ3は、プログラムによって制御して自由に回転させることができるため、短い時間内で複数の角度の画像を自動で撮影することができ、関連する画像処理ソフトウェアによってパノラマ画像に自由に合成することができる、([0014])
スマートフォン(上記(2))。」
2 引用文献2について
(1) 引用文献2の記載事項
当審拒絶理由通知書で引用された引用文献2(特開2003-309748号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 【0021】
「【0021】
【実施例の説明】図1(A)および(B)は,この発明の実施例を示すもので,ディジタル・カメラ付き携帯電話1(以下,携帯電話1という)の斜視図である。(A)は携帯電話1を開いた状態で正面から見た斜視図,(B)は携帯電話1を開いた状態で背面から見た斜視図である。」
イ 【0025】
「【0025】第1の半体30の右上には,切り欠き30Aが形成されている。この切り欠き30Aに,第1の半体30の長手方向と同じ方向の中心軸をもつ回転体(柱体)10が設けられている。回転体10の内部にはディジタル・カメラの撮像光学系が設けられている。回転体10は360度の角度を超えて回転自在である。」
ウ 【0032】―【0035】
「【0032】回転体10の内部には,レンズ保持体20が設けられている。レンズ保持体20は,高さの低い第1の円管部21と高さの高い第2の円管部25とを有している。第1の円管部21の中心軸と第2の円管部25の中心軸とは90度交差している。第1の円管部21の外周と回転体10の入射開口11の内周とはほぼ一致しており,第1の円管部21が入射開口11にはめ込められている。第2の円管部25の外周と回転体10の出射開口18の内周とはほぼ一致しており,第2の円管部25が出射開口18にはめ込められている。第1の円管部21は,中央部分が開口されているレンズ・バリア12とレンズ13とを固定するものである。第2の円管部25は,3枚のレンズ14,15および16を固定するものである。
【0033】レンズ保持体20の第1の円管部21には,第1の円管部21の外周面と同一面をもつ第1のレンズ・バリア保持壁23とこの第1のレンズ・バリア保持壁23よりも高さが低い第2のレンズ・バリア保持壁22とが形成されている。第1のレンズ・バリア保持壁23の内壁にレンズ・バリア12の外周面が固定され,第2のレンズ・バリア保持壁22の上面にレンズ・バリア12の内側の面が固定されている。第1の円管部21の内周面にレンズ13が固定されている。
【0034】レンズ保持体20の第2の円管部25には,その内周面にレンズ14,15および16が所定の間隔をあけて固定されている。また,レンズ保持体20の第2の円管部25の下端部には,外側に張り出した羽根26が形成されている。
【0035】第1の円管部21の下端面24の上部と第2の円管部22の上端面29の左側の部分に第1のミラー(第1の偏向器)17が渡され,かつ固定されている。すなわち,回転体10の入射開口11から入射した光Lが,90度の角度偏向させられ回転体10の出射開口18から出射するように,第1のミラー17の角度が決定されている。」
エ 【0039】―【0040】
「【0039】回転体10の入射開口11から入射した光Lは,レンズ13によって集光され,第1のミラー17によって下方向に偏向させられる。偏向した光は,レンズ14,15および16を介して第2のミラー43によって,C-MOSセンサ44の受光面上に導かれる。C-MOSセンサ44の受光面上に被写体像が結像する。
【0040】C-MOSセンサ44は,回転体10内部にあるのではなく,第1の半体30内にある。回転体10が360度を超えて回転してもC-MOSセンサ44と接続されているコードによって回転体10の回転が規制されることはない。」
オ 【0043】―【0050】
「【0043】図4(A)および(B)から図6(A)および(B)は,回転体10の回転角とC-MOSセンサ44の受光面上に結像する被写体像との関係を示している。いずれも(A)は入射光Lと回転体10との関係を示し,(B)は被写体と被写体像との関係を示している。
【0044】図4(A)および(B)は,回転体10の回転角が0度の場合である。
【0045】回転角が0度の場合,第1のミラー17による反射および第2のミラー43による反射により正立の被写体の被写体像は,倒立となる。この実施例においては,倒立像がC-MOSセンサ44の受光面上に結像した場合にC-MOSセンサ44から出力される映像信号によって表わされる画像が正立するようにC-MOSセンサ44からの映像信号の読みだしが制御される。
【0046】図5(A)および(B)は,回転体10の回転角が90度の場合である。(B)には被写体の背景が見えている。
【0047】回転角が90度の場合,レンズ13等の結像,第1のミラー17による反射および第2のミラー43による反射により正立の被写体の被写体像は被写体を90度時計方向に回転したものとなる。このために,C-MOSセンサ44から出力された映像信号によって表わされる画像がさらに90度時計方向に回転するように画像の回転処理が行われる。回転処理後の画像(正面像)は,正立像となる。
【0048】図6(A)および(B)は,回転体10の回転角が180度の場合である。(B)には被写体の正面が見えている。
【0049】回転角が180度の場合,第1のミラー17による反射および第2のミラー43による反射により正立の被写体の被写体像は被写体を鏡像反転したものとなる。このために,C-MOSセンサ44から出力された映像信号によって表わされる画像さらに鏡像反転するように画像処理が行われる。画像処理後の画像(正面像)は,正立像となる。
【0050】この実施例による携帯電話1においては,回転体10の回転角が検出され,検出した回転角に応じて上述した画像処理がそれぞれ行われる。」
カ 図1、2、4、5及び6
「
[図:0001411665000006.jpg]
[図:0001411665000007.jpg]
[図:0001411665000008.jpg]
[図:0001411665000009.jpg]
」
(2) 引用文献2に記載された技術的事項の認定
前記(1)で摘記した引用文献2の記載事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
<引用文献2に記載された技術的事項>
「ディジタル・カメラ付き携帯電話1であって、(【0021】)
360度の角度を超えて回転自在である回転体10が設けられており、(【0025】)
回転体10の内部には、レンズ保持体20が設けられており、レンズ保持体20は、高さの低い第1の円管部21と高さの高い第2の円管部22とを有しており、(【0032】)
レンズ保持体20の第2の円管部22には、その内周面にレンズ14、15および16が所定の間隔をあけて固定されており、(【0034】)
第1の円管部21の下端面24の上部と第2の円管部22の上端面29の左側の部分に第1のミラー(第1の偏向器)17が渡され、かつ固定されており、回転体10の入射開口11から入射した光Lが、90度の角度偏向させられ回転体10の出射開口18から出射するように、第1のミラー17の角度が決定されており、(【0035】)
回転体10の入射開口11から入射した光Lは、レンズ13によって集光され、第1のミラー17によって下方向に偏向させられ、偏向した光は、レンズ14、15および16を介して第2のミラー43によって、C-MOSセンサ44の受光面上に導かれ、(【0039】)
C-MOSセンサ44は、回転体10内部にあるのではなく、回転体10が360度を超えて回転してもC-MOSセンサ44と接続されているコードによって回転体10の回転が規制されることはなく、(【0040】)
回転体10の回転角が検出され、検出した回転角に応じて正立像となる画像処理が行われる、(【0044】―【0050】)。
ディジタル・カメラ付き携帯電話。」
第5 本願発明と引用発明との対比・判断
1 対比分析
(1) 本願発明の「第1の視野(field of view,FOV)を有する第1の屈曲式デジタルカメラと、第2の視野(field of view,FOV)を有する第2の屈曲式デジタルカメラと、を備えたスマートフォン」の発明特定事項について
ア 引用発明の「スマートフォン」は、本願発明の「スマートフォン」に相当する。
イ 引用発明の「2つのカメラ3」の1つは、「スマートフォンの筐体1」の左側に備えられた切り欠き凹部内に備えられた回転体2上に備えられ、「2つのカメラ3」の他の1つは、「スマートフォンの筐体1」の右側に備えられた切り欠き凹部内に備えられた回転体2上に備えられ、「回転体2は切り欠き凹部内で回転することができ、その自由度は180度」であるから、「2つのカメラ3」の1つは、「スマートフォン」の左側において180度の視野を有し、「2つのカメラ3」の他の1つは、「スマートフォン」の右側において180度の視野を有しているといえる。そして、引用発明のスマートフォンの左側における180度の視野及びスマートフォンの右側における180度の視野はそれぞれ、本願発明の「第1の視野(field of view,FOV)」及び「第2の視野(field of view,FOV)」に相当する。
ウ 引用発明は、「関連する画像処理ソフトウェアによってパノラマ画像に自由に合成することができる」ものであるから、引用発明の「2つのカメラ」がデジタルカメラであることは自明である。
エ したがって、本願発明と、引用発明は、「第1の視野(field of view,FOV)を有する第1の」「デジタルカメラと、第2の視野(field of view,FOV)を有する第2の」「デジタルカメラと、を備えたスマートフォン」である点で共通する。
(2) 本願発明の「前記第1の屈曲式デジタルカメラは、第1のレンズ光軸を有する第1のレンズと、第1の画像センサと、物体または景色からの第1の光路を第2の光路に屈曲させる第1の光路屈曲素子(optical path folding element,OPFE)と、を含み、当該スマートフォンの第1のエッジに近い側に配置され、前記第1のレンズ全体は、前記第1のOPFEと、前記第1の画像センサとの間に配置され、前記第1のレンズは、前記第1のOPFEに固定して取り付けられ、前記第2の光路は、前記第1のレンズ光軸と実質的に平行であり、前記第1のレンズおよび前記第1のOPFEは、第1のパノラマスキャン範囲において、前記第1の画像センサに対して前記第1のレンズ光軸の周りで回転可能であり、前記第2の屈曲式デジタルカメラは、第2のレンズ光軸を有する第2のレンズと、第2の画像センサと、物体または景色からの第3の光路を第4の光路に屈曲させる第2の光路屈曲素子(optical path folding element,OPFE)と、を含み、当該スマートフォンの第1のエッジに対向する第2のエッジに近い側に配置され」の発明特定事項について
ア 引用発明の「2つのカメラ3」は、上記(1)ウで検討したとおりデジタルカメラであることは明らかであるところ、デジタルカメラが所定のレンズ光軸を有するレンズと画像センサを含むことは、本願の最先の優先日時点の技術常識を考慮すれば、引用文献1に記載されているに等しい事項である
イ 引用発明の「2つのカメラ3」の1つは、「スマートフォンの筐体1」の左側に備えられた切り欠き凹部内に備えられた回転体2上に備えられていることから、スマートフォンの第1のエッジに近い側に配置されているといえ、「2つのカメラ3」の他の1つは、「スマートフォンの筐体1」の右側に備えられた切り欠き凹部内に備えられた回転体2上に備えられていることから、スマートフォンの第1のエッジに対向する第2のエッジに近い側に配置されているといえる。
ウ したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1の」「デジタルカメラは、第1のレンズ光軸を有する第1のレンズと、第1の画像センサと、」「を含み、当該スマートフォンの第1のエッジに近い側に配置され」、「前記第2の」「デジタルカメラは、第2のレンズ光軸を有する第2のレンズと、第2の画像センサと、」「を含み、当該スマートフォンの第1のエッジに対向する第2のエッジに近い側に配置される」点で共通する。
2 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(1) 一致点
「第1の視野(field of view,FOV)を有する第1のデジタルカメラと、
第2の視野(field of view,FOV)を有する第2のデジタルカメラと、
を備えたスマートフォンであって、
前記第1のデジタルカメラは、
第1のレンズ光軸を有する第1のレンズと、
第1の画像センサと、を含み、
当該スマートフォンの第1のエッジに近い側に配置され、
前記第2のデジタルカメラは、
第2のレンズ光軸を有する第2のレンズと、
第2の画像センサと、を含み、
当該スマートフォンの第1のエッジに対向する第2のエッジに近い側に配置される、スマートフォン。」
(2) 相違点
【相違点1】
2つのデジタルカメラについて、本願発明は、物体または景色からの光路を他の光路に屈曲させる光路屈曲素子(OPFE)を含んだ屈曲式であり、レンズ全体は、前記OPFEと、画像センサとの間に配置され、前記レンズは、前記OPFEに固定して取り付けられ、前記他の光路は、前記レンズ光軸と実質的に平行であり、前記レンズおよび前記OPFEは、パノラマスキャン範囲において、前記画像センサに対して前記レンズ光軸の周りで回転可能であるに対し、引用発明は、回転体2上に備えられた2つのカメラ3は、プログラムによって制御して自由に回転させることができるものの、当該光路屈曲素子(OPFE)を含む屈曲式ではない点。
【相違点2】
デジタルカメラの少なくとも1つについて、本願発明は、第1の光路屈曲素子または前記第2の光路屈曲素子を自律的に回転させて前記第1の視野または前記第2の視野をそれぞれ変更することによって物体を追跡するように動作可能であるのに対し、引用発明のカメラ3は、そのようなものか明らかでない点。
3 相違点に対する判断
以下、上記相違点について検討する。
(1) 相違点1について
ア 引用文献2に記載された技術的事項は、回転体10の内部に、第1のミラー(第1の偏向器)17とレンズ14、15および16及び第2の円管部22を有し、第1のミラー(第1の偏向器)17とレンズ14、15および16とは、第2の円管部22に固定されており、C-MOSセンサ44は、回転体10内部にはないので回転しないことにより、C-MOSセンサ44と接続されているコードによって回転体10の回転が規制されることがないものである。
イ そして、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項は、いずれも回転体を回転させ任意の角度で撮像ができるデジタルカメラを備えた携帯電話に関する技術であり、デジタルカメラであることが自明である引用発明の「2つのカメラ3」にコードが接続されていることも明らかであるから、引用文献2に記載された技術的事項に接した当業者であれば、引用発明においても、画像センサを回転させると、画像センサに接続されるコードも回転して、コードにより回転が規制されてしまうという課題を有することを把握でき、当該課題に対応するために、引用発明に、上記引用文献2に記載された技術的事項を採用する動機があるといえる。したがって、回転体2をコードによって規制されることなく回転させるために、引用発明の「2つのカメラ」において引用文献2に記載された技術的事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
ウ(ア) このとき、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を採用した構成(以下「容易想到構成」という。)における、2つのカメラ3の「第1のミラー(第1の偏向器)17」が相違点1に係る本願発明の「第1の光路屈曲素子(OPFE)」及び「第2の光路屈曲素子(OPFE)」に相当する。
また、容易想到構成における、2つのカメラ3の「回転体10の入射開口11から入射した光L」の光路が、相違点1に係る本願発明の「物体または景色からの第1の光路」及び「物体または景色からの第2の光路」に相当し、同2つのカメラ3の「第1のミラー17によって下方向に偏向させられ[た]」光の光路が、相違点1に係る本願発明の「第2の光路」及び「第4の光路」に相当することとなる。
したがって、容易想到構成においては、2つのカメラ3は、「物体または景色からの第1の光路を第2の光路に屈曲させる第1の光路屈曲素子」を含んだ「第1の屈曲式のデジタルカメラ」及び「物体または景色からの第3の光路を第4の光路に屈曲させる第2の光路屈曲素子」を含んだ「第2の屈曲式のデジタルカメラ」となる。
(イ) 容易想到構成においては、2つのカメラ3の「レンズ14、15および16」は、相違点1に係る本願発明の「第1のレンズ」及び「第2のレンズ」に相当する。
また、レンズ14、15および16は第1のミラー17とC-MOSセンサ44の間に配置されるから、このことは、相違点1に係る本願発明の「前記第1のレンズ全体は、前記第1のOPFEと、前記第1の画像センサとの間に配置され[る]」こと及び「前記第2のレンズ全体は、前記第2のOPFEと、前記第2の画像センサとの間に配置され[る]」ることに相当する。
(ウ) 容易想到構成において、2つのカメラ3が「レンズ保持体20の第2の円管部22には、その内周面にレンズ14、15および16が所定の間隔をあけて固定されており、」「第2の円管部22の上端面29の左側の部分に第1のミラー(第1の偏向器)17が渡され、かつ固定されて」いることは、第2の円管部22を介してレンズ14、15および16と第1のミラー(第1の偏向器)17が固定されていることを意味するから、相違点1に係る本願発明の「前記第1のレンズは、前記第1のOPFEに固定して取り付けられ」ていること及び「前記第2のレンズは、前記第2のOPFEに固定して取り付けられ」ていることに相当する。
(エ) 容易想到構成においては、2つのカメラ3において、第1のミラー17によって下方向に偏向させられた光が、レンズ14、15および16に入射するから、相違点1に係る本願発明の「前記第2の光路は、前記第1のレンズ光軸と実質的に平行であり」、「前記第2の光路は、前記第1のレンズ光軸と実質的に平行であ[る]」よう構成されることは自明のことである。
(オ) 容易想到構成においては、2つのカメラ3において、「レンズ14、15および16」並びに「第1のミラー17」が固定された「第2円筒部22」を有する「回転体10」が「回転自在である」ものとなり、C-MOSセンサ44は、回転体10の内部にあるのではなく、回転しないのであるから、回転体10とともに回転するレンズ14、15および16並びに第1のミラー17の回転が、C-MOSセンサ44に対してレンズ14、15および16のレンズの光軸の周りの回転となることは自明である。
また、容易想到構成は、「2つのカメラ3は、プログラムによって制御して自由に回転させることができるため、短い時間内で複数の角度の画像を自動で撮影することができ、関連する画像処理ソフトウェアによってパノラマ画像に自由に合成することができる」ものであることを併せて考慮すると、容易想到構成の2つのカメラ3は、相違点1に係る本願発明の「前記第1のレンズおよび前記第1のOPFEは、第1のパノラマスキャン範囲において、前記第1の画像センサに対して前記第1のレンズ光軸の周りで回転可能であり」、「前記第2のレンズおよび前記第2のOPFEは、第2のパノラマスキャン範囲において、前記第2の画像センサに対して前記第2のレンズ光軸の周りで回転可能であ[る]」ものとなる。
エ したがって、引用発明において引用文献2に記載された技術的事項を採用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2) 相違点2について
カメラに関する技術において、目標物を自動的に追尾することは、周知技術(必要ならば、引用文献3(国際公開第2004/084542号、特に、11頁16-22行)を参照されたい。)である。
そして、引用発明の「2つのカメラ3は、プログラムによって制御して自由に回転させることができる」ものであるから、上記周知技術を適用して、当該制御として、目標物を自動的に追尾する機能を持たせることは当業者が適宜なし得た事項である。
その際には、容易想到構成における第1のミラー(第1の偏向器)17を自律的に回転させることとなり、2つのカメラ3のそれぞれの視野である第1のFOV、第2のFOVを変更することによって、目標物、すなわち物体を追跡するように動作可能となる。
したがって、引用発明に周知技術を適用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
(3) 総合検討
そして、上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明の作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(4) 審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張内容
審判請求人は、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することには、次の(ア)の阻害要因があり、引用文献2に記載された技術的事項に引用発明を適用することには次の(イ)の阻害要因がある旨を主張している。
(ア) 引用発明のモータ6はカメラ3の下部に位置しているため、もし引用発明のスマートフォンに引用文献2に記載された技術的事項のディジタル・カメラを導入しようとするのであれば、引用発明のモータ6の位置あるいは引用文献2に記載された技術的事項のディジタル・カメラの配置を再設計する必要が生じる。
(イ) 引用文献2に記載された技術的事項は、ユーザの指による回転体10の手動回転という主要ポイントがあるため、もし引用発明のモータ6を引用文献2に記載された技術的事項のディジタル・カメラに導入しようとするのであれば、引用文献2に記載された技術的事項の当該手動回転に代えて、回転体10をモータ駆動で回転させるためのソフトウエアおよびハードウエアを適用する必要がある。
イ 審判請求人の主張についての検討
上記主張について検討する。
上記(ア)について、引用文献2に記載された技術的事項を引用発明に適用するにあたって、モータの位置は、当業者であれば適宜変更可能な設計事項にすぎず、モータの位置を再設計する必要があることが引用発明に引用文献2に記載された技術的事項に適用することの阻害要因と解すべき特段の事情は存在しない。
上記(イ)について、本審決で示した理由は、引用文献2に記載された技術的事項に引用発明を適用するものではないから、請求人の主張は上記(1)の結論には影響しない。
以上のとおり、審判請求人の上記主張は、上記(1)の判断を左右するものではない。
(5) 小括
以上によれば、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-009111