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特許拒絶査定不服審判

2022-008498

プリンタと携帯端末を含むシステムとその制御方法、携帯端末とその制御方法、及びプログラム

審判番号
2022-008498
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-194580外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月03日
審決日
2023年02月07日
公報発行日
2023年03月31日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G06F) / P18 .55 -WY (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第44条、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-194580「プリンタと携帯端末を含むシステムとその制御方法、携帯端末とその制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月13日出願公開、特開2021- 73538、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 20項目
理 由

第1 手続の経緯等

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1 出願分割の経緯の概略

本願は,令和2年11月24日にされた特許法44条1項の規定による特許出願であって,平成26年9月24日を出願日とする特願2014-194300号を最先の出願とする,いわゆる第4世代の分割出願であるところ,出願の分割の経緯は,次のとおりである。なお,括弧内は当該出願の提出日を示す。

最先の出願:特願2014-194300号(平成26年 9月24日)
第1世代 :特願2017-207368号(平成29年10月26日)
第2世代 :特願2018-176146号(平成30年 9月20日)
第3世代 :特願2018-230284号(平成30年12月 7日)

本 願 :特願2020-194580号(令和 2年11月24日)

2 手続の経緯の概略

本願の手続の経緯は,概略,以下のとおりである。

令和2年12月17日 :手続補正書の提出
令和3年 3月 3日付け:拒絶理由通知
令和3年 5月 6日 :意見書,手続補正書の提出
令和3年 8月 6日付け:拒絶理由通知
令和3年10月12日 :意見書,手続補正書の提出
令和3年11月12日付け:拒絶理由通知(最後)
令和4年 1月17日 :意見書,手続補正書の提出
令和4年 2月25日付け:令和4年1月17日の手続補正についての

補正の却下の決定,拒絶査定(原査定)

令和4年 6月 3日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和4年2月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規事項)令和 3年10月12日付け手続補正書でした補正は,補正後の請求項1に係る発明が「前記所定の強度は前記携帯端末上で設定される」という補正事項を含むところ,携帯端末上で,プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の受信信号強度の所定値を設定することについては,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)には記載されていないため,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

また,請求項1を引用する請求項2-13,および,請求項1-12とカテゴリーが異なるものである請求項14-48についても同様な点が指摘される。

よって,請求項1-48に係る発明は,当初明細書等に記載した事項の範囲内において補正したものでない。

2.(進歩性)この出願の請求項1-3,5-7,9-12,14,15,17-19,21-26,28-37,39-44,46-48に係る発明は,以下の引用文献1-3,6に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,

この出願の請求項4,16,27に係る発明は,以下の引用文献1-4,6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,

この出願の請求項8,20,38,45に係る発明は,以下の引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,

この出願の請求項13に係る発明は,以下の引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

引用文献1:特開2007-181154号公報
引用文献2:特開2008- 17381号公報
引用文献3:特開2011- 65369号公報
引用文献4:特開2010-219680号公報
引用文献5:特開2014-175882号公報
引用文献6:特開2014-110638号公報
引用文献7:特開2014- 68304号公報

第3 本願発明

本願の請求項1ないし23に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明23」という。)は,令和4年6月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項23に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
Bluetooth(登録商標)Low Energy信号を受信することが可能な携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラムであって,
前記制御方法は,プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能とし,前記所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定されることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
続きを表示(全52行)
前記制御方法は,前記受信信号強度が前記所定の距離に対応する強度以上となると前記要求の送信を行うことを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記制御方法は,前記プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号に基づいてユーザが前記プリンタにログイン中であると判断すると,前記要求を前記プリンタに送信させないことを特徴とする請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記制御方法は,更に,前記携帯端末が受信したBluetooth Low Energy信号が,所定のプリンタから送信された信号である場合は,前記要求を送信可能とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記要求は,ユーザ識別情報とパスワードとを少なくとも含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記制御方法は,前記受信信号強度を基に前記プリンタとの距離を算出し,当該距離が所定の条件を満たすと前記プリンタに前記要求を送信可能とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記要求は前記プリンタを,前記プリンタの操作部から機能を利用することが可能な状態にするためのローカルログイン要求であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記プログラムは,前記携帯端末の操作部を介してユーザにプリント指示を実行させることが可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記制御方法は,前記プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の受信信号強度が信号に含まれる情報を識別可能となる受信レベルより高い所定の強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能であると判断することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記プリンタは複数ユーザに使用されるプリンタであり,前記所定の距離は,携帯端末毎に可変に設定可能であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記制御方法は,プリンタから送信されたBluetooth Low Energyのアドバタイズパケット信号の受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,GATT(Generic Attribute)通信によって前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能とすることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記制御方法は,前記要求をBluetooth Low Energy通信で前記プリンタに送信し,無線LAN(Local Area Network)通信で前記プリンタに画像データを送信することが可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
Bluetooth Low Energy信号を受信することが可能な携帯端末であって,
プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号を受信し,当該信号の受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能とし,前記所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定されることを特徴とする携帯端末。
【請求項14】
前記受信信号強度が前記所定の距離に対応する強度以上となると前記要求の送信を行う送信手段を,更に有することを特徴とする請求項13に記載の携帯端末。
【請求項15】
前記プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の受信信号強度が信号に含まれる情報を識別可能となる受信レベルより高い所定の強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能であると判断する判断手段を,更に有することを特徴とする請求項13又は14に記載の携帯端末。
【請求項16】
Bluetooth Low Energy信号を受信することが可能な携帯端末を制御する制御方法であって,
プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能とし,前記所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定されることを特徴とする制御方法。
【請求項17】
前記制御方法は,前記受信信号強度が前記所定の距離に対応する強度以上となると前記要求の送信を行うことを特徴とする請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
更に,前記携帯端末が受信したBluetooth Low Energyの信号が,所定のプリンタから送信された信号である場合は,前記要求を送信可能と判定する判定工程を有することを特徴とする請求項16又は17に記載の制御方法。
【請求項19】
前記プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の受信信号強度が信号に含まれる情報を識別可能となる受信レベルより高い所定の強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能であると前記携帯端末で判断されることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項20】
プリンタと,前記プリンタからBluetooth Low Energy信号を受信することが可能な携帯端末と,を含むシステムであって,
前記プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の前記携帯端末での受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記携帯端末から前記プリンタに送信可能とし,前記所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定されることを特徴とするシステム。
【請求項21】
前記プリンタは,前記要求に基づいて認証を行うと,表示画面を前記プリンタが有する複数の機能それぞれに対応するアイコンを一覧表示するホーム画面に遷移させることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記携帯端末は,前記プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の受信信号強度が信号に含まれる情報を識別可能となる受信レベルより高い所定の強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能であると判断する判断
手段を,更に有することを特徴とする請求項20又は21に記載のシステム。
【請求項23】
プリンタと,前記プリンタからBluetooth Low Energy信号を受信することが可能な携帯端末と,を含むシステムの制御方法であって,
前記プリンタから送信されたBluetooth Low Energy信号の前記携帯端末での受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記携帯端末から前記プリンタに送信可能とし,前記所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定されることを特徴とする制御方法。」

第4 引用文献

1 引用文献1および引用発明

(1)引用文献1の記載事項

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原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,複写機,プリンタ,スキャナ,ファクシミリ等の画像処理装置及びこの画像処理装置を備えた画像処理システムに関する。
【背景技術】
続きを表示(全36行)
【0002】
従来,上記のような画像処理装置として,装置の使用時に,使用するユーザを特定するためのユーザ情報の入力を要求し,特定されたユーザに応じて装置の使用を許可する,いわゆるユーザ認証が可能なものがある。この場合,ユーザ情報の入力には例えば以下のような方式が用いられる。
a)例えば特許文献1,特許文献2に開示されているように,画像処理装置と無線通信可能な無線端末が装置に近づくと,無線端末が保持しているユーザ情報を画像処理装置に送信する自動入力方式
b)操作パネルからの数値入力や文字入力等による入力方式
c)指紋,静脈等の生体情報をユーザ情報とし,この生体情報を検出装置により検出することによる入力方式
d)ユーザ情報が記録されたたカード,USB(Universal Serial Bus)等の物理キーを画像処理装置に接続してユーザ情報を読み取らせることによる入力方式。
【0003】
このような入力方式により入力されたユーザ情報を用いて認証を行うことにより,複数のユーザが同じ画像処理装置を共有するような使用環境において,あるユーザの画像データを他のユーザが操作できてしまう不都合を防止したり,ユーザ毎に使用した機能の種類や頻度を管理して,各ユーザに費用請求するための課金情報を生成したり,管理者が装置の使用状況を管理すること等を可能としている。
【0004】
更にこのような画像処理装置の中には,1つの装置で複数のユーザ情報入力を可能とすることにより,ユーザの利便性を高めたものが存在する。
【特許文献1】 特開平11-149233号公報
【特許文献2】 特開平10-16355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが,上述したような各種のユーザ情報入力方式には,不正認証を防ぐという意味での安全性の面でそれぞれ以下に示すような欠点がある。
a)画像処理装置に接近した無線端末からの自動送信によるユーザ情報入力方式
装置に接近しただけで認証がなされるため,無線端末を所持するユーザが画像処理装置を使用する意図なく装置に接近しただけでも認証がなされた状態となってしまい,他のユーザがそのまま装置を使用できてしまう可能性がある。
b)操作パネルからの数値入力や文字入力等によるユーザ情報入力方式
パスワードを他人に知られた場合,他人が認証できてしまう。
c)指紋,静脈等の生体情報の検出によるユーザ情報入力方式
認証装置の性能によっては,別人であっても誤って認証成功となる場合がある。
d)ユーザ情報が記録されたカード,USBメモリ等の物理キーによるユーザ情報入力方式
物理キーの保管状況によっては,他人にキーを使われ認証されてしまう。
【0006】
このように,ユーザ情報の入力方式に応じてそれぞれ欠点があり,この為,不正な認証により画像処理装置が不正使用される可能性は否めない。特に複数のユーザ情報入力方式による認証が可能な装置においては,安全性の高いユーザ情報入力方式が用いられていたとしても,他に安全性の低いユーザ情報入力方式も用いられている場合,安全性の低いユーザ情報入力方式により画像処理装置が不正使用されてしまい被害を被るという不具合があった。
【0007】
また,上記a)の無線端末からの自動送信によるユーザ情報入力方式では,自動ログインしたユーザが,装置の使用中に何らかの都合により短時間装置を離れるだけでログイン状態の解除,すなわちログアウトされてしまい,継続的な作業ができないという不都合もあった。
【0008】
この発明は,このような技術的背景に鑑みてなされたものであって,複数の異なる方式によるユーザ情報入力が可能な画像処理装置において,安全性の低いユーザ情報入力方式が用いられている場合に画像処理装置が不正使用されることによる被害を未然に防止することができる画像処理装置の提供を課題とする。
【0009】
この発明の他の目的は,無線端末からの自動送信によるユーザ情報入力方式が用いられる画像処理装置において,自動ログインしたユーザが装置の使用中に短時間装置を離れたような場合に,ログイン状態が解除されて継続的な作業ができないという不都合を解消した画像処理装置システム及び画像処理装置の提供を課題とする。」

イ 図1

[図:0001395043000001.jpg]

ウ 「【0086】
図1はこの発明の一実施形態に係る画像処理システムの構成図である。
【0087】
この画像処理システムは,画像処理装置の一例としての多機能複合機であるMFP(Multi Function Peripheral)1と,複数の無線端末2(2-1,2-2・・・,2-x)とによって構成されている。
続きを表示(全58行)
【0088】
前記MFP1は,操作パネル部11と,無線受信部12と,指紋検出部13と,USB(Universal Serial Bus)インターフェース部14と,ユーザ情報格納部15と,ユーザ情報照合部16と,チョイス情報記憶部17と,画像処理制御部18と,画像処理部10を備えている。
【0089】
前記操作パネル部11は,ユーザ情報入力手段の一つとして機能するものであり,各種情報を表示するLCD画面,LCD上に設けられると共に英数字文字列や各種情報の設定が可能なタッチパネル,ジョブ実行を指示するスタートキー,ログアウトを指示するログアウトキーなどを備えている。
【0090】
そして,ユーザまたは管理者(装置を管理する権限を持った特定のユーザ)のタッチパネル等からの入力により,ジョブ種類情報11a,カラーモード情報11b,ジョブ開始要求情報11c,スキャン送信先情報11d,ファクシミリ(以下,FAXという)送信先情報11e,チョイス設定情報11f,ユーザ登録情報11g,パネルユーザ情報11h,ログアウト要求情報11i,パネル操作情報11j等の情報を生成し,図1に示すように各部へ送信する。
【0091】
前記ジョブ種類情報11aは,コピージョブ,スキャンジョブ,FAX送信ジョブ,PC蓄積プリントジョブ,FAX蓄積プリントジョブ等のように,ジョブの種類を示す情報であり,ユーザがスタートキーを押下してジョブを実行する前にジョブの種類を入力する。
【0092】
カラーモード情報11bは,カラーかモノクロかを示す情報であり,ユーザがスタートキー押下してジョブを実行する前に入力する。なお,ジョブ種類情報が「FAX送信」または「FAX蓄積プリント」の場合は,「カラー」は選択できない。
【0093】
ジョブ開始要求情報11cは,ジョブの開始要求の有無を示す情報である。
【0094】
スキャン送信先情報11dはスキャナ部101(図2に示す)により原稿をスキャンして得られた画像データの送信先を示す情報であり,スキャンジョブ実行前に入力される。
【0095】
FAX送信先情報11eは,FAX送信先を示す情報であり,FAX送信ジョブ実行前に入力される。
【0096】
チョイス設定情報11fは,管理者のみが入力可能な装置の設定情報であり,各ユーザが装置を使用する前に予め管理者が入力しておくものである。チョイス設定情報11fとしては,例えば,ユーザ情報入力安全性設定情報,ジョブセキュリティレベル設定情報,カラーセキュリティレベル設定情報,上限管理設定情報,無線ログアウト設定情報等がある。
【0097】
ユーザ情報入力安全性設定情報は,各ユーザ情報入力方式ごとに安全性について「高(High)」または「低(Low)」を設定するものであり,ユーザ情報入力方式に応じて,パネル入力安全性設定情報,無線入力安全性設定情報,指紋入力安全性設定情報,USB入力安全性設定情報等からなる。
【0098】
ジョブセキュリティレベル設定情報は,ジョブごとにセキュリティの高低を設定するものであり,コピーセキュリティレベル設定情報,スキャンセキュリティレベル設定情報,パソコン(PC)プリントセキュリティレベル設定情報,FAX送信セキュリティレベル設定情報,FAX受信プリントセキュリティレベル設定情報等からなる。
【0099】
カラーセキュリティレベル設定情報は,カラープリント及びカラースキャンに対するセキュリティの高低を設定するものである。
【0100】
上限管理設定情報は,ユーザが可能なプリント枚数などのジョブ実行回数の上限値を設定するものであり,高セキュリティ上限値情報と低セキュリティ上限値情報からなり,低セキュリティ上限値情報は高セキュリティ上限値情報よりも小さい値のみ設定が可能となっている。
【0101】
無線ログアウト設定情報は,ユーザのログインを継続するための条件を設定したログイン継続条件情報からなる。ログイン継続条件情報として,「継続せず」「パネル操作」「モード設定」「ジョブ実行開始」「ジョブ実行開始後所定時間」「ジョブ実行中」「ジョブ終了後所定時間」等を設定可能となっている。「パネル操作」はパネル操作があったときに,「モード設定」はモード設定がなされたときに,「ジョブ実行開始」はジョブの実行が開始されたときに,「ジョブ実行開始後所定時間」はジョブ実行開始後所定時間,「ジョブ実行中」はジョブ実行中であれば,「ジョブ終了後所定時間」はジョブ終了後所定時間,それぞれログインが継続される設定である。
【0102】
前記ユーザ登録情報11gは,管理者が各ユーザに関して予め入力しておく情報であり,ユーザ名やパスワードからなる。
【0103】
パネルユーザ情報11hは,各ユーザがMFP1を使用するためにログインするときに入力されるものであり,パネルログイン要求情報,パネル入力ユーザ名,パネル入力パスワード等からなる。
【0104】
また,ログアウトキーを押下されたとき,操作パネル部11はログアウト要求情報11iとして「要求あり」,押下されていないときは「要求なし」をそれぞれセットし,ユーザ情報照合部16へ送る。また,カラーモード選択,ジョブ種類選択等,ジョブを実行する為のモード設定の操作がなされたときには,操作パネル部11は,パネル操作情報11jとして「モード設定操作あり」をセットし,さらに,何らかのタッチパネル操作又はキー入力がなされているとき,パネル操作情報11jとして「操作あり」をセットし,それ以外の場合はパネル操作情報として「操作なし」をセットし,それぞれユーザ情報照合部16へ送る。
【0105】
また,スタートキーが押下されたとき,以下の条件1及び条件2の両方が成り立っていれば,ジョブ開始要求情報11cとして「要求あり」をセットし,画像処理部10及び画像処理制御部18へ送信する。
(条件1)
ジョブ種類情報=「コピー」の場合で,コピー許可情報=「許可」
ジョブ種類情報=「スキャン」の場合で,スキャン許可情報=「許可」
ジョブ種類情報=「FAX送信」の場合で,FAX送信許可情報=「許可」
ジョブ種類情報=「PC蓄積プリント」の場合で,PCプリント許可情報=「許可」
ジョブ種類情報=「FAX蓄積プリント」の場合で,FAX受信プリント許可情報=「許可」
(条件2)
カラーモード情報=「モノクロ」,又はカラーモード情報=「カラー」かつカラー許可
情報=「許可」
前記無線受信部12は,ユーザ情報入力手段の一つとして機能するものであり,無線端末2との間で無線通信を行う。なお,無線端末2はユーザ情報を記録した記録媒体,好ましくは携帯型記録媒体と,無線通信手段とを少なくとも有し,無線受信部12とは非接触であっても,ユーザ情報などの情報を授受することが可能なものである。具体的には,無線端末2-1,2-2・・・2-xのいずれかがMFP1の無線受信部12から所定距離(例えば3m)内に進入すると,当該無線端末と無線通信が可能となり,無線端末が保持しているユーザ情報(ユーザ名,パスワード)を受信するものとなされている。そして,ユーザ情報を受信すると,無線ログイン情報=「要求あり」,受信したユーザ名,パスワードの各情報を,無線端末ユーザ情報12aとしてユーザ情報照合部16へ送信する。
【0106】
また,無線受信部12は無線端末2と定期的に通信を行うとともに,通信が確立されている間は無線ログイン要求情報に「要求あり」をセットして,ユーザ情報照合部16へ送信する。無線ログイン要求情報が「要求あり」の間は,他の無線端末2からのユーザ情報の受信があってもこれを無視する。なお,無線通信が所定時間(例えば1分)以上途絶えると,無線ログイン要求情報を「要求なし」にセットしてユーザ情報照合部16へ送信する。
(中略)
[無線部12からのログインの場合]
無線ログイン要求情報=「要求あり」を受信すると,ユーザ登録情報に登録されている各ユーザのユーザ名とパスワードを検索し,無線入力ユーザ名,及び無線入力パスワードと一致するユーザが存在した場合,当該ユーザのログイン状態であるとする。そして,ログイン状態情報16aに「無線ログイン」をセットし,ログインユーザ名16cを上記ログインしたユーザ名とし,ユーザカウント情報の各ユーザのユーザカウンタ値のうち,ログインしたユーザのカウンタ値をログインユーザカウンタ情報16bとして,画像処理制御部18に送信する。
(中略)
【0143】
前記無線端末2は,対応するユーザにより携帯されており,対応するユーザの情報を保持している。無線端末2は,所定周期(例えば10秒)でユーザ情報(ユーザ名とパスワード)を無線発信している。なお,本実施の形態のように,無線端末2が所定の周期でユーザ情報を発信するのではなく,MFP1から所定の周期で問い合わせを受け,この問い合わせに応じてユーザ情報を返信するように構成しても良い。」

(2)引用発明

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「画像処理システムは,多機能複合機であるMFP(Multi Function Peripheral)1と,複数の無線端末2(2-1,2-2・・・,2-x)とによって構成されており,
前記MFP1は,操作パネル部11と,無線受信部12と,指紋検出部13と,USB(Universal Serial Bus)インターフェース部14と,ユーザ情報格納部15と,ユーザ情報照合部16と,チョイス情報記憶部17と,画像処理制御部18と,画像処理部10を備えており,
前記操作パネル部11は,ユーザ情報入力手段の一つとして機能するものであり,各種情報を表示するLCD画面,LCD上に設けられると共に英数字文字列や各種情報の設定が可能なタッチパネルなどを備えており,ユーザまたは管理者(装置を管理する権限を持った特定のユーザ)のタッチパネル等からの入力により,ジョブ種類情報11a等の情報を生成し,各部へ送信しており,
前記ジョブ種類情報11aは,コピージョブ,スキャンジョブ,FAX送信ジョブ,PC蓄積プリントジョブ,FAX蓄積プリントジョブ等のように,ジョブの種類を示す情報であり,
前記無線受信部12は,ユーザ情報入力手段の一つとして機能するものであり,無線端末2との間で無線通信を行っており,無線端末2はユーザ情報を記録した記録媒体,好ましくは携帯型記録媒体と,無線通信手段とを少なくとも有し,無線受信部12とは非接触であっても,ユーザ情報などの情報を授受することが可能なものであり,
無線端末2-1,2-2・・・2-xのいずれかがMFP1の無線受信部12から所定距離(例えば3m)内に進入すると,当該無線端末と無線通信が可能となり,無線端末が保持しているユーザ情報(ユーザ名,パスワード)を受信しており,
無線受信部12は無線端末2と定期的に通信を行うとともに,通信が確立されている間は無線ログイン要求情報に「要求あり」をセットして,ユーザ情報照合部16へ送信しており,
無線ログイン要求情報=「要求あり」を受信すると,ユーザ登録情報に登録されている各ユーザのユーザ名とパスワードを検索し,無線入力ユーザ名,及び無線入力パスワードと一致するユーザが存在した場合,当該ユーザのログイン状態であるとするものであり,
前記無線端末2は,対応するユーザにより携帯されており,対応するユーザの情報を保持しており,MFP1から所定の周期で問い合わせを受け,この問い合わせに応じてユーザ情報を返信する
画像処理システム。」

2 引用文献2ないし7

(1)引用文献2

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関し,特に,プリントデータに基づいて画像形成する画像形成装置に関する。」
イ 「【0023】
携帯通信端末250は,メモリと,MFP100,100A,100B,100Cそれぞれとの間で近距離の無線通信をするデータ通信部とを少なくとも備える。ここでは,携帯通信端末250は,RFID(Radio Frequency Identification)タグである。携帯通信端末250は,例えば,ユーザが身に付ける名札やカードなどに取り付けられる。なお,携帯通信端末250とMFP100,100A,100B,100Cそれぞれとの間の無線通信は,Bluetooth規格等の通信媒体に電波や電磁波を用いた通信であってもよいし,IrDA(Infrared Data Association)規格等の通信媒体に赤外線を用いた通信であってもよい。また,携帯通信端末250は,データ通信部を備えたPDA(Personal Digital Assistants)や携帯電話機等であってもよい。」
ウ 「【0035】
無線通信部108は,Bluetooth規格のGAP(Generic Access Profile)等に基づき,携帯通信端末250と無線により通信を行う。また,無線通信部108は,受信した電波の電波強度をCPU101に出力する。CPU101は,無線通信部206から入力される電波強度に基づいて,携帯通信端末250までの距離を計測する。」
エ 「【0049】
通信制御部155は,無線通信部108を制御し,無線通信部108に携帯通信端末250と通信させる。具体的には,通信制御部155は,無線通信部108に定期的に端末識別情報の送信要求を出力させ,送信要求を受信した携帯通信端末250が送信する端末識別情報を無線通信部108が受信すると,無線通信部108から端末識別情報を受け付ける。また,無線通信部108は,携帯通信端末250が出力する電波の強度を計測しており,通信制御部155は無線通信部108から端末識別情報とともに電波強度を受け付ける。
【0050】
通信制御部155は,距離計測部156を含む。距離計測部156は,携帯通信端末250が送信する電波の強度から携帯通信端末250までの距離を計測する。具体的には,無線通信部108が受信した電波の強度(電界強度)から携帯通信端末250がMFP100からどれだけ離れているかを計測する。また,携帯通信端末250に対し,その携帯通信端末250が受信した電波の強度の値を示すデータの送信を要求し,その携帯通信端末250から送られてくる電波強度の値と,無線通信部108がその携帯通信端末250に送信した電波の強度の値との差分を計算し,その差分から距離を求めるようにしてもよい。
【0051】
無線通信部108は,距離計測部156が計測した距離を,予め定められた第1の距離および第2の距離と比較する。第1の距離は,第2の距離よりも長く,ここでは第1の距離は10mであり,第2の距離は2mである。無線通信部108は,距離計測部156が計測した距離が,第1の距離以下で,かつ第2の距離より上であれば,携帯通信端末250がMFP100を基準にした第1の範囲に位置することを示す第1の信号をプリントジョブ制御部151に出力する。また,無線通信部108は,距離計測部156が計測した距離が,第2の距離以下であれば,携帯通信端末250がMFP100を基準にした第2の範囲に位置することを示す第2の信号をプリントジョブ制御部151に出力する。
【0052】
ここでは,距離計測部156が携帯通信端末250の出力する電波の強度から携帯通信端末250までの距離を計測するようにしたが,無線通信部108が強さの異なる2つの電波強度で端末識別情報の送信要求を送信し,携帯通信端末250がMFP100を基準にした第1の範囲または第2の範囲に位置するか否かを検出するようにしてもよい。例えば,第1の距離まで通信が可能な強い電波強度と,第2の距離まで通信が可能な弱い電波強度とで端末識別情報送信要求を送信する。そして,強い電波強度で端末識別情報の送信要求をした場合に端末識別情報を受信できるが,弱い電波強度で端末識別情報の送信要求を送信した場合に端末識別情報を受信できない場合は,携帯通信端末250が第1の範囲に位置すると判断し,強い電波強度で端末識別情報の送信要求をした場合と弱い電波強度で端末識別情報の送信要求を送信した場合のいずれでも端末識別情報を受信できる場合は,携帯通信端末250が第2の範囲に位置すると判断し,強い電波強度で端末識別情報の送信要求をした場合と弱い電波強度で端末識別情報の送信要求を送信した場合のいずれでも端末識別情報を受信できない場合は,携帯通信端末250が第1の範囲および第2の範囲のいずれにも位置しないと判断する。
【0053】
また,携帯通信端末250が,通信可能距離の異なる2種類のデータ通信部を備えるようにし,2種類のデータ通信部それぞれに異なる端末識別情報を与えることで,携帯通信端末250が,MFP100を基準にした第1の範囲または第2の範囲に位置するか否かを検出するようにしてもよい。例えば,通信可能距離の長いデータ通信部の通信可能距離を第1の距離とし,通信可能距離の短いデータ通信部の通信可能距離を第2の距離とする。そして,通信可能距離の長いデータ通信部に与えた端末識別情報を受信できるが,通信可能距離の短いデータ通信部に与えた端末識別情報を受信できない場合は,携帯通信端末250が第1の範囲に位置すると判断し,通信可能距離の長いデータ通信部に与えた端末識別情報と通信可能距離の短いデータ通信部に与えた端末識別情報とをともに受信できる場合は,携帯通信端末250が第2の範囲に位置すると判断し,通信可能距離の長いデータ通信部に与えた端末識別情報と通信可能距離の短いデータ通信部に与えた端末識別情報とをともに受信できない場合は,携帯通信端末250が第1の範囲および第2の範囲のいずれにも位置しないと判断する。」

(2)引用文献3

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は,無線認証による画像形成装置へログイン距離の切換を行うプリントシステムとその処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
続きを表示(全22行)
従来,画像形成装置として,装置の使用時に,使用するユーザを特定するためのユーザ情報の入力を要求し,特定されたユーザに応じて装置の使用を許可する,いわゆるユーザ認証可能なものがある。そして,このユーザ認証方式には,様々な方式が提案されている。
【0003】
ユーザ認証方式の一つとして,特許文献1や特許文献2に開示されているように,画像処理装置と無線通信可能な無線端末が装置に近づくと,無線端末が保持しているユーザ情報を画像処理装置に送信する自動入力方式がある。また,この方式では,自動ログインしたユーザが画像形成装置から離れると自動ログアウトする方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特許第4232778号公報
【特許文献2】 特開2008-200898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上述したような無線端末認証方式では,以下に示すような問題がある。
【0006】
第一に,無線端末を所持したユーザが認証するつもりがなくても画像形成装置の近くを通りかかっただけでログインしてしまうので,セキュリティが低下する。
【0007】
第二に,無線端末を所持したユーザが認証するつもりがなくても画像形成装置の近くを通りかかっただけでログインしてしまうので,人通りが多い場所にある画像形成装置は頻繁にログインが行われ,未使用時の省電力効果が低下する。
【0008】
そこで本発明は,画像形成装置へのログインの際の距離をユーザの印刷ジョブによって切り替えることで,無線認証によるログインのセキュリティを高める仕組みを提供することを目的とする。」
イ 「【0076】
ログイン距離264は,ユーザが複合機にログインでき最大距離を定義した情報であり,ログイン距離X10ないしはログイン距離Y11のどちらかが,設定される。なお,実施例ではジョブの有無に応じてXとYの二つの距離を用いる方法を記しているが,ジョブ数に応じて複数の距離を使い分ける方法であってもよい。
【0077】
図5に示すように,ログイン距離X10は,ログイン距離Y11よりも広い範囲となっている。またログイン距離X10はログイン距離Y11と排他ではなく,ログイン距離Y11を包含している。ログイン距離Y11はログイン距離X10よりも短い範囲となっている。複合機100は,ユーザの印刷ジョブの有無に応じて,認証DB260に格納されているユーザ毎のログイン距離264をログイン距離X10やログイン距離Y11に切り換える。
【0078】
ログイン距離は自由に設定することができ,例えば,ログイン距離X10は2mで,ログイン距離Y11は20cmとする。この場合,印刷ジョブがあるユーザは半径2mの距離に近づくと認証することができる。一方,印刷ジョブがないユーザは,20cmまで近づかないと認証できない。20cmまで近づくとは,ICカード認証などの近接認証に近いイメージである。」

ウ 図5

[図:0001395043000002.jpg]

(3)引用文献4

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は,通信装置と,該通信装置との通信を行う情報処理装置とを備える情報処理システム及び画像形成装置と,該画像形成装置を備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
続きを表示(全26行)
【0002】
最近,カメラ機能が搭載された携帯電話機が普及されており,何時でも,何処でも,手軽にデジタル写真の撮影ができる。また,携帯電話機に装着されたメモリが大容量化しており,デジタル写真,ビジネス文書等のデータを保存する,パーソナルな記憶デバイスとしての利用例も増えている。
【0003】
特許文献1では,ユーザが自分の非接触IDカード(又は該非接触IDカードを内蔵し
た無線通信機器)を画像処理装置のカードリーダライタ部に近づけた場合,前記非接触IDカードのICチップが,前記カードリーダライタ部から常に出されている,前記画像処理装置のIDを示す端末IDを含んだ微弱な電波を受信して,前記端末IDを取得し,該端末IDを用いて非接触IDカードのユーザIDを画像処理装置へ送信する無線通信方法が開示されている。
【0004】
一方,特許文献2では,パーソナルコンピュータのリーダライタと電磁波により通信する非接触ICカードが設けられている携帯電話機を,ユーザが前記パーソナルコンピュータに近接させることにより,前記リーダライタから輻射される電磁波が前記非接触ICカードにおいて受信されたとき,前記携帯電話機は,前記非接触ICカードに設定されているカードIDを前記パーソナルコンピュータに通知し,該パーソナルコンピュータは,通知されたカードIDに基づいて,前記携帯電話機を識別し,通信相手として特定する通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2007-267370号公報
【特許文献2】 特開2003-32176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方,ユーザが前記携帯電話機のメモリ内に保存したデジタル写真,ビジネス文書等のデータを印刷する方法の一つとしては,前記携帯電話機と無線のデータ送受信可能な画像形成装置に,印刷すべきデータ(以下,印刷データ)を無線で送信して印刷を行う方法等がある。
【0007】
このような,画像形成装置に無線で印刷データを送信して印刷を行う方法としては,例えば,ブルートゥース(登録商標)通信方式による無線通信を行う場合,RFIDシステムを用いた無線通信を行う場合,又は前記携帯電話機及び画像形成装置の間で赤外線通信が行われる場合等がある。
【0008】
その中,ブルートゥース通信方式による無線通信を行う場合においては,双方の機器間を通信可能な状態に設定(認証)を行う操作が必要である。例えば,前記携帯電話機及び画像形成装置が,共にブルートゥース対応可能であって,互いにブルートゥース通信方式による無線通信を行う場合,通称ペアリング(又はボンディング)と呼ばれる設定操作によって相手を特定し,双方を通信可能な状態に設定する必要がある。
【0009】
しかしながら,前記ペアリングには複雑で面倒な操作が必要である。詳しくは,ユーザが前記携帯電話機のメモリ内の画像データを,所定の画像形成装置に送信して印刷する場合,ユーザは前記携帯電話機を用いて,所定半径範囲(例えば,100m)に在って,該携帯電話とブルートゥース通信方式による無線通信が可能な画像形成装置を検索し,該検索の結果として前記携帯電話機の表示部に表示される複数の画像形成装置のブルートゥースアドレスの中から,前記所定の画像形成装置のブルートゥースアドレスを判別することを必要とするが,前記判別は非常に煩わしい作業である。なお,前記判別が正常的に行われたとしても,その後,双方を通信可能な状態に設定するための細かい操作が更に必要である。なお,前記画像形成装置が,コンビニエンスストアに設置された貸し出し用の画像形成装置である場合は,新規のユーザが多いので,はじめてのブルートゥース機器に対する無線通信が多く,その都度前記ペアリングの操作を行う必要もある。」

(4)引用文献5

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
画像処理の設定値を変更するための画像処理システムとその処理方法及びプログラム」
イ 「【0061】
次に,各装置が行う制御について,図6から図9を用いて,詳細に説明する。なお,図6A,図6Bは,詳細な処理を説明するフローチャートである。図7は,携帯端末100で表示する画面の一例であり,図8は,MFP110で表示する画面の一例である。また,図9は,各装置で記憶管理するデータ構成図である。
図6Aを用いて,携帯端末100におけるユーザからの操作時の処理について説明する。図6Aは,携帯端末100の操作処理のフローチャートである。
【0062】
続きを表示(全27行)
S601では,携帯端末100のCPU201が,ユーザによる利用開始時に必ず,ユーザに認証を促す内容を表示する。認証の方式がパスワード認証によるものであった場合,図7の701に示すような内容を表示する。なお,この認証機能は,携帯端末100の本体機能の認証であっても,MFP110と連携するアプリケーションの認証機能であってもよい。
S602では,携帯端末100のCPU201が,ユーザから入力された認証情報を取得する。
【0063】
S603では,携帯端末100のCPU201は,取得した認証情報と,携帯端末100の外部メモリ211に記録された認証情報との照合を実施する。図9の901では,外部メモリ211に記録された認証情報の一例を示している。
【0064】
S604では,携帯端末100のCPU201が,S603の照合の結果,取得した認証情報と外部メモリ211に記録された認証情報が一致するかどうかを判定する。両者の認証情報が一致すると判定された場合には,S606に処理を進め,そうでない場合には,S605に処理を進める。すなわち,入力されたユーザ情報に従って,ログインする処理である。
【0065】
S605では,携帯端末100のCPU201が,認証に失敗した旨の内容を一定時間表示する。一例として,図7の702に示すような内容を表示する。携帯端末100のCPU201は,一定時間経過後には,再度S601に処理を進める。
【0066】
S606では,携帯端末100のCPU201が,携帯端末のRAM203に,ログイン情報を記憶させる。より具体的には,携帯端末のRAM203には,図9の911に示すようなテーブルを記憶しており,その中の「ログイン情報」項目の値を「FALSE」から「TRUE」に変更することによって,ログイン情報を記憶させる。
【0067】
S607では,携帯端末100のCPU201が,携帯端末本体のメニュー画面を表示する。一例として,図7の703に示すような内容を表示する。携帯端末100では,ユーザが利用できる機能ごとにアプリケーションという単位でまとめられており,メニュー画面は,ユーザが選択可能なアプリケーションが選択可能に表示される。なお,上述したように,アプリケーションの認証の場合には,S608でMFP連携アプリケーションが選択され,ユーザ認証されると,S610からの処理がスタートするものとする。
【0068】
S608では,携帯端末100のCPU201が,ユーザによるMFP連携アプリケーションの選択要求を受け付ける。なお,MFP連携アプリケーションは印刷指示などのMFP110の動作実行指示は,カードリーダ319にかざすまで指示できないようになっている。
【0069】
S609では,携帯端末100のCPU201は,MFP連携アプリケーションのメニュー画面を表示する。一例として,図7の704に示すような内容を表示する。このように,ユーザに使用したいMFPの機能を選択できるように表示されている。なお,ここで表示される機能には,それぞれ機能IDと呼ぶ機能ごとに固有のIDが紐づけられている。また,機能ごとの固有のIDは,MFP110の各機能と対応付いて管理されており,機能IDによってMFP110の機能が特定される。
【0070】
S610では,携帯端末100のCPU201が,ユーザの操作によって,特定(所望)の機能の選択要求を受け付ける。すなわち,画像処理にかかる設定を選択する選択処理である。
【0071】
S611では,携帯端末100のCPU201が,携帯端末のRAM203に,選択された機能の機能IDを記憶させる。より具体的には,図9の911に示す携帯端末のRAM203に記憶されたテーブルにおいて,「選択済機能ID」項目の値を「NONE」から特定の機能に紐づいた機能IDに変更することによって,機能IDを記憶させる。例えば,「PRINT」に変更する。すなわち,選択した設定の設定情報を記憶制御する処理である。
【0072】
S612では,携帯端末100のCPU201が,選択された機能の設定画面を表示する。一例として,図7の705に示すような内容を表示する。このようにMFPの機種に依存しない項目について,設定を変更できる内容となっているが,事前に,MFP110の機種を選択して,その機種に依存する設定を変更できるように構成することも可能である。
S613では,携帯端末100のCPU201が,ユーザの操作により,各設定情報の変更要求を受け付ける。」

ウ 図7

[図:0001395043000003.jpg]

(5)引用文献6

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,画面ロックを制御する方法及び携帯端末に係り,さらに詳細には,携帯端末とは別の無線デバイスを利用して,携帯端末の画面ロックを制御する方法及び携帯端末に関する。」
イ 「【0068】
また,前記一定条件で,携帯端末100周辺の一定距離以内で,無線デバイスが探索されるのは,既設定距離に対応する受信信号強度と同じであるか,あるいはそれより大きい受信信号強度で受信される信号を伝送する無線デバイスが探索されるということでもある。例えば,図8で,携帯端末100とBLEデバイス200との距離810は,携帯端末100で受信されるBLEデバイス200の信号強度を基に推定されもする。既設定距離は,携帯端末100のユーザ・インターフェース(一例として,図16の1625)を介して受信されたユーザ入力によって指定されたものでもある。一例として,既設定距離は,スライドバー形態のユーザ・インターフェース1625,距離値をボタンまたはキー入力操作によって入力される形態のユーザ・インターフェースなどを介して指定されもする。携帯端末100は,ユーザ・インターフェースを介して指定された無線デバイスと,携帯端末100との距離を保存し,保存距離に対応する受信信号強度と同じであるか,あるいはそれより大きい受信信号強度の信号を伝送する無線デバイスを探索することができる。また,既設定距離は,携帯端末100が製造されるとき,あるいは第1画面ロック解除モードの制御命令語,または画面ロック解除設定アプリケーションがメモリに保存されるとき,共に携帯端末100に既保存のデフォルト値(一例として,2m)でもある。また,無線デバイスの通信半径が十分に短い場合(一例として,2~5m),既設定距離は,別途設定なしに,当該無線デバイスが探索される通信半径を示すものでもある。
【0069】
また,既設定距離は,携帯端末100で測定されるBLEデバイス200が伝送する信号の特定強度で表現されもする。そのとき,信号強度は,受信電界強度(electric field strength)(一例として,v/mまたはdB単位),RSSI(received signal strength indicator),SNR(signal to noise ratio)などで示すことができる。また,携帯端末100は,既設定の距離として,信号強度を指定させるユーザ・インターフェースを提供することもできる。」

(6)引用文献7

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
複数の通信装置間で無線通信を行うための技術に関する。
【背景技術】
続きを表示(全16行)
【0002】
従来から,データを送信する側の無線通信装置であるイニシエータと,データを受信する側の無線通信装置であるターゲットとから構成される無線通信システムがある(特許文献1参照)。この無線通信システムでは,イニシエータは,送信予定のデータのサイズが閾値以下である場合,通信方式としてNFC(Near Field Communication 近接無線通信や近距離無線通信と呼ばれる)を選択して,データをターゲットに送信する。一方,イニシエータは,送信予定のデータのサイズが閾値以上である場合,通信方式をNFCから,当該NFCよりも通信可能距離が遠いBluetooth(登録商標)に切り替えて,データをターゲットに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2010-178002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,上記したように,Bluetooth(登録商標)等の通信方式は,通信可能距離がNFCよりも遠いため,Bluetooth等の通信方式を利用する場合,NFCを利用する場合に比べて,イニシエータのユーザは,ターゲットから比較的に遠く離れた場所に移動してしまう場合がある。この場合,例えば,ユーザがターゲット側で発生したエラー等に直ぐに対処できない等,比較的遠い距離間で無線通信がされることによる様々な不都合が生じ得る。
【0005】
本明細書では,比較的遠い距離で無線通信がされることによる不都合が生じることを抑制することが可能な技術を開示する。」
イ 「【0031】
(携帯端末処理)
携帯端末10のユーザは,操作部14により,アプリケーションプログラムを起動させ,MFP20に印刷機能又はスキャン機能を実行させるための指示を入力することができる。以下,印刷機能の実行指示が入力された場合を例に挙げて説明する。なお,MFP20が電源ONにされている間,NFCI/F23は,検出電波を発することでNFC方式の無線通信を実行可能なデバイスを検出する状態となっている。
【0032】
ユーザが,上記印刷機能の実行指示を入力した後,携帯端末10をMFP20に近づけて,携帯端末10とMFP20との間の距離が,互いに電波が届く距離(例えば10cm)より短くなると,NFCインターフェース13は,MFP20から検出電波を受信して,応答電波をMFP20に送信する。その後,端末制御部11は,携帯端末10とMFP20との間にNFC通信接続(NFC通信セッション)が確立させるための通信を,NFCインターフェース13,23を介して,MFP20のMFP制御部21との間で実行する。
【0033】
端末制御部11は,NFC通信接続が確立されると,図2に示す携帯端末処理を開始し,MFP20との間でNFC通信を開始する(S1)。端末制御部11は,NFC通信により,Wi-Fi接続要求をMFP20に送信する(S2)。S2の処理は通信確立処理の一例であり,このとき端末制御部11は通信確立部として機能する。なお,このWi-Fi接続要求には,Wi-Fi通信接続(Wi-Fi通信セッション)を確立するためのWi-Fi接続情報(設定情報の一例)が含まれる。このWi-Fi接続情報には,例えば通信方式,認証方式,暗号化方式,無線ネットワークを識別するための識別子であるSSID(Service Set Identifier)や,無線ネットワークを構築するアクセス先の固有の識別子であるBSSID(Basic Service Set Identifier)等が含まれる。
【0034】
端末制御部11は,上記Wi-Fi接続要求を送信後,それに対するWi-Fi接続応答を,MFP20から受信したかどうかを判断し(S3),当該Wi-Fi接続応答を受信しないと判断した場合(S3:NO),待機し,Wi-Fi接続応答を受信したと判断した場合(S3:YES),携帯端末10とMFP20との間でWi-Fi通信接続が確立する。これにより,ユーザ自身が上記Wi-Fi接続情報をMFP20に手入力する構成に比べて,Wi-Fi通信接続を効率良く確立させることができる。そして,端末制御部11は,Wi-Fi通信により,上記印刷機能の実行指示に基づき印刷ジョブをMFP20に送信するデータ送信処理を開始する(S4)。このS4の処理は機能実行処理の一例であり,このとき端末制御部11は機能実行部として機能する。」
ウ 「【0059】
上記無線LANインターフェース12,22は,Wi-Fi Directの方式(以下,WFD方式)に従った無線通信および通常Wi-Fiに従った無線通信のいずれか一方だけ実行可能な構成でもよい。また,「第1インターフェース,第2インターフェース」は,NFC方式の無線通信やWi-Fi方式の無線通信以外に,NFC方式の無線通信,赤外線通信,Bluetooth(登録商標),Transfer Jetなどを実行するためのインターフェースでもよい。
【0060】
「短距離無線通信」は,NFC方式の無線通信以外に,赤外線通信,Bluetooth(登録商標),Transfer Jetなどでもよい。また,「長距離無線通信」は,Wi-Fi方式の無線通信以外に,NFC方式の無線通信,赤外線通信,Bluetooth(登録商標),Transfer Jetなどを実行するためのインターフェースでもよい。「短距離無線通信」および「長距離無線通信」は,それぞれの通信可能距離が具体的にどれ程長いかどうかは関係なく,後者の方が,前者よりも通信可能距離が長い関係であればよい。」

第5 対比・判断

1 本願発明1

(1)対比

本願発明1は,携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラムであるから,引用発明の画像処理システムを構成する無線端末2と対比すると,次のことが認められる。

ア 引用発明の「無線端末2」は,「MFP1」の「無線受信部12」「との間で無線通信を行っており,」「無線端末2-1,2-2・・・2-xのいずれかがMFP1の無線受信部12から所定距離(例えば3m)内に進入すると,当該無線端末と無線通信が可能となり,無線端末が保持しているユーザ情報(ユーザ名,パスワード)を受信して」おり,「無線端末2は,対応するユーザにより携帯されており,対応するユーザの情報を保持しており,MFP1から所定の周期で問い合わせを受け,この問い合わせに応じてユーザ情報を返信する」とされている。

ここで,引用発明の「無線端末2」は,「対応するユーザにより携帯されて」いるから,本願発明1の「携帯端末」に相当するといえる。

また,引用発明の「無線端末2」は,「ユーザの情報を保持しており,MFP1から所定の周期で問い合わせを受け,この問い合わせに応じてユーザ情報を返信する」ものであり,「問い合わせに応じてユーザ情報を返信する」といった制御を実行する際には,記憶手段に記憶されたプログラムを実行することが一般的であるから,本願発明1の「携帯端末」と同様に,「制御方法を実行させるためのプログラム」を備えているといえる。

さらに,引用発明の「無線端末2」は,「MFP1」の「無線受信部12」「との間で無線通信を行っており,」「MFP1から所定の周期で問い合わせを受け」ており,「Bluetooth(登録商標)Low Energy信号」も無線信号の一種であるから,本願発明1の「携帯端末」が,「Bluetooth(登録商標)Low Energy信号を受信」していることに対応する何らかの無線信号を受信しているといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,無線「信号を受信することが可能な携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラム」を備えている点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1の「携帯端末」が受信している無線信号が「Bluetooth(登録商標)Low Energy信号」であるのに対して,引用発明の「無線端末2」が受信している無線信号がどのような無線信号か明らかでない点で相違している。

イ 引用発明において,「MFP1から所定の周期で問い合わせを受け,この問い合わせに応じてユーザ情報を返信する」際に,「無線端末2-1,2-2・・・2-xのいずれかがMFP1の無線受信部12から所定距離(例えば3m)内に進入すると,当該無線端末と無線通信が可能となり,無線端末が保持しているユーザ情報(ユーザ名,パスワード)を受信して」いるとされている。

ここで,引用発明の「MFP1」は,「PC蓄積プリントジョブ」が実行可能な「多機能複合機である」から,本願発明1の「プリンタ」に相当するといえる。

また,引用発明において,「無線端末2-1,2-2・・・2-xのいずれかがMFP1の無線受信部12から所定距離(例えば3m)内に進入すると,当該無線端末と無線通信が可能とな」ることは,距離に応じて減衰する無線信号の信号強度が所定距離に対応する強度以上であると無線通信が可能となることを意味しているといえるから,引用発明において,「無線端末2-1,2-2・・・2-xのいずれかがMFP1の無線受信部12から所定距離(例えば3m)内に進入すると,当該無線端末と無線通信が可能とな」ることは,本願発明1の「プリンタから送信された」無線「信号の受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上である」であることに対応するといえる。

さらに,引用発明の「MFP1」の「無線受信部12は無線端末2と定期的に通信を行うとともに,通信が確立されている間は無線ログイン要求情報に「要求あり」をセットして,ユーザ情報照合部16へ送信しており,無線ログイン要求情報=「要求あり」を受信すると,ユーザ登録情報に登録されている各ユーザのユーザ名とパスワードを検索し,無線入力ユーザ名,及び無線入力パスワードと一致するユーザが存在した場合,当該ユーザのログイン状態であるとするものであ」るから,引用発明において「無線端末が保持しているユーザ情報(ユーザ名,パスワード)」を「MFP1」に送信することは,本願発明1の「プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信」することに相当するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記制御方法は,プリンタから送信された」無線「信号の受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能とし」ている点で共通しているといえる。

しかし,上記アで述べたように,本願発明1の「携帯端末」が受信している無線信号が「Bluetooth(登録商標)Low Energy信号」であるのに対して,引用発明の「無線端末2」が受信している無線信号がどのような無線信号か明らかでない点で相違している。

また,本願発明1の「携帯端末」の「プログラム」は,プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能となる「所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定される」よう制御しているのに対して,引用発明の「無線端末2」では,そのように制御されていない点で相違している。

(2)一致点・相違点

本願発明1と,引用発明の無線端末2が備えるプログラムとは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。

ア 一致点

「無線信号を受信することが可能な携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラムであって,
前記制御方法は,プリンタから送信された無線信号の受信信号強度が所定の距離に対応する強度以上であると,前記プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能とするプログラム。」

イ 相違点

(ア)<相違点1>

本願発明1の「携帯端末」が受信している無線信号が「Bluetooth(登録商標)Low Energy信号」であるのに対して,引用発明の「無線端末2」が受信している無線信号がどのような無線信号か明らかでない点。

(イ)<相違点2>

本願発明1の「携帯端末」の「プログラム」は,プリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能となる「所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定される」よう制御しているのに対して,引用発明の「無線端末2」では,そのように制御されていない点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,先ず,<相違点2>について判断する。

本願発明1の,<相違点2>に係る構成のプリンタにログインするための要求を前記プリンタに送信可能となる「所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定される」よう制御している構成について,引用文献1ないし7には,記載も示唆も無く,当該構成が周知であったとも認められない。

したがって,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者は本願発明1の<相違点2>に係る構成を容易に想到することができない。

引用文献3には,「無線端末を所持したユーザが認証するつもりがなくても画像形成装置の近くを通りかかっただけでログインしてしまうので,セキュリティが低下する」(段落0006)という課題を解決するために,画像形成装置(プリンタ)側で,「ログイン距離は自由に設定することができ,例えば,ログイン距離X10は2mで,ログイン距離Y11は20cmとする。この場合,印刷ジョブがあるユーザは半径2mの距離に近づくと認証することができる。一方,印刷ジョブがないユーザは,20cmまで近づかないと認証できない。」(段落0078)という制御を行っていることが記載されている。

しかし,引用文献3には,「ログイン距離」を「無線端末」において設定可能とする構成は記載されていないから,引用発明に,引用文献3記載事項を適用しても,「所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定される」よう制御する<相違点2>の構成には至らない。

また,そのように構成しなくても,引用文献3の上記課題は解決できているから,プリンタ側でなく,携帯端末側で所定の距離を可変とするように構成を変更する動機付けも見当たらない。

さらに,引用文献6には,「携帯端末100は,ユーザ・インターフェースを介して指定された無線デバイスと,携帯端末100との距離を保存し,保存距離に対応する受信信号強度と同じであるか,あるいはそれより大きい受信信号強度の信号を伝送する無線デバイスを探索することができる」(段落0068)という技術が開示されているものであり,仮に,引用発明に引用文献6記載の技術を適用したとしても,ロックを解除される対象である「携帯端末100」が,本願発明1においてログイン対象となる「プリンタ」に対応づけられるから,本願発明1のように,「所定の距離は前記携帯端末上で可変に設定される」<相違点2>の構成には至らない。

以上から,本願発明1は,<相違点1>について検討するまでもなく,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2~12

本願発明2ないし本願発明12は,いずれも,本願発明1を減縮したものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明13ないし本願発明15

本願発明13は,本願発明1のカテゴリを,単に,携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラムの発明から,携帯端末の発明へと変更したものであって,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

また,本願発明14および本願発明15は,いずれも,本願発明13を減縮したものであって,本願発明13と同一の構成を備えるものであるから,本願発明13と同じく,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明16ないし本願発明19

本願発明16は,本願発明1のカテゴリを,単に,携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラムの発明から,携帯端末を制御する制御方法の発明へと変更したものであって,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

また,本願発明17ないし本願発明19は,いずれも,本願発明16を減縮したものであって,本願発明16と同一の構成を備えるものであるから,本願発明16と同じく,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

5 本願発明20ないし本願発明22

本願発明20は,本願発明1のカテゴリを,単に,携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラムの発明から,携帯端末を含むシステムの発明へと変更したものであって,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

また,本願発明21および本願発明22は,いずれも,本願発明20を減縮したものであって,本願発明20と同一の構成を備えるものであるから,本願発明20と同じく,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

6 本願発明23

本願発明23は,本願発明1のカテゴリを,単に,携帯端末に制御方法を実行させるためのプログラムの発明から,携帯端末を含むシステムの制御方法の発明へと変更したものであって,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし7の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

1 (新規事項)について

原査定において,新規事項を導入するものとされた「前記所定の強度は前記携帯端末上で設定される」という補正事項は,令和4年6月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項23に記載された事項には含まれていないから,新規事項を導入する旨の拒絶の理由は解消した。

2 (進歩性)について

上記第5で述べたように,本願発明1ないし本願発明23は,いずれも,原査定において引用された引用文献1ないし7に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえないから,進歩性を有しない旨の拒絶の理由は解消した。

3 小括

以上から,原査定の理由は,維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

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2022-008498

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