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特許拒絶査定不服審判

2022-008391

静的データ及び動的ルックアップデータ光学要素セットを含む多次元光コード

審判番号
2022-008391
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-516673外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月02日
審決日
2022年11月24日
公報発行日
2023年05月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G06K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-516673「静的データ及び動的ルックアップデータ光学要素セットを含む多次元光コード」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日国際公開、WO2018/064212、令和 1年11月28日国内公表、特表2019-534507〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2017年09月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年9月28日(以下、「優先日」という。) 米国 2017年4月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月21日付けで拒絶理由が通知され、これに対して令和3年12月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和4年2月16日付けで拒絶査定がなされた(以下、「原査定」という。)。これに対して、令和4年6月2日に審判請求がなされたものである。

第2 本願発明

1 令和3年12月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14のうち、請求項1には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審による。)。

「【請求項1】
物理的表面を含む基板と、
前記物理的表面上に具現化される多次元機械可読コードと、を備え、前記多次元機械可読光コードが、符号化された値の組において符号化された値をそれぞれ表す光学要素を有し、前記多次元機械可読光コードの前記光学要素は、静的データ(SD)光学要素の組及びルックアップデータ(LD)光学要素の組を含み、各組が前記物理的表面上で具現化され、前記LD光学要素の組は、動的に可変のデータを参照するルックアップ値を符号化し、前記SD光学要素の組は、他のデータを参照しない静的データを符号化し、前記LD光学要素の組は、閾値距離より大きい距離において復号可能でなく、前記SD光学要素の組は、前記閾値距離以上の距離において復号可能であり、前記SD光学要素の組は、それぞれが第1の大きさである第1の複数の光学要素を含み、前記LD光学要素の組は、それぞれが前記第1の大きさより小さい第2の大きさである第2の複数の光学要素を含む、物品。」

2 ここで、請求項1には「前記多次元機械可読光コード」と記載されているが、この記載より前に「コード」に関しては、「多次元機械可読コード」との記載はあるものの、「多次元機械可読光コード」との記載はない。

してみると、請求項1の「多次元機械可読コード」が「多次元機械可読光コード」の誤記であるか、あるいは、「前記多次元機械可読光コード」が「前記多次元機械可読コード」の誤記のいずれかであると考えられるが、請求項1の「コード」は「光学要素を有」するものであることから、請求項1の「多次元機械可読コード」が「多次元機械可読光コード」の誤記であると認められる。

3 よって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
物理的表面を含む基板と、
前記物理的表面上に具現化される多次元機械可読光コードと、を備え、前記多次元機械可読光コードが、符号化された値の組において符号化された値をそれぞれ表す光学要素を有し、前記多次元機械可読光コードの前記光学要素は、静的データ(SD)光学要素の組及びルックアップデータ(LD)光学要素の組を含み、各組が前記物理的表面上で具現化され、前記LD光学要素の組は、動的に可変のデータを参照するルックアップ値を符号化し、前記SD光学要素の組は、他のデータを参照しない静的データを符号化し、前記LD光学要素の組は、閾値距離より大きい距離において復号可能でなく、前記SD光学要素の組は、前記閾値距離以上の距離において復号可能であり、前記SD光学要素の組は、それぞれが第1の大きさである第1の複数の光学要素を含み、前記LD光学要素の組は、それぞれが前記第1の大きさより小さい第2の大きさである第2の複数の光学要素を含む、物品。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし14に係る発明は,本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2007-207221号公報

2.特開平10-177532号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

(1)本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において引用された、特開2007-207221号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

A 「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、オンラインで表示される対象および項目に関連した情報は非常に簡単にブラウジングできるが、現実世界(インターネット上等の仮想世界に対する意味での世界)に存在する対象に関連した情報については、必ずしも常に簡単に情報がブラウジングできるとはいえない。ユーザは世界のどこからでもウェブページにアクセスできるが、アクセスには、少なくともインターネット接続と入力装置と出力装置とが必要である。また、ユーザは、関心のある主題をユニフォーム・リソース・ロケータ(URL)等の情報識別子と関連づけ、関連情報を検索するために何等かの方法でこの識別子を通信装置に入力しなければならない。これはコンピュータシステムに簡単にアクセスできないユーザには不都合である。」
B 「【0016】
本発明の実施形態は、現実の構造物に、またはその近傍に配置されて関連情報をエンコードしたタグを用いる。例えばタグは、標識、バナー、または任意の視認可能なマークでもよい。エンコードされる情報は、テキスト、ディジット、およびグラフィックスを含み、現実の構造物と関連づけることができる。ユーザはデコード装置を用いてタグを検知し、タグ上のコードをデコードする。このデコード装置はさらに、デコードした情報をユーザに提示し、ユーザが情報を用いてどのようにナビゲートするかを決定できるようにする。
【0017】
一実施形態では、タグは情報をエンコードした多解像度の視覚コードを含む。異なるレベルの解像度で異なるレベルの情報の詳細または局面をエンコードする。例えば、ある多解像度タグは、25フィート(約7.62m)の距離から見ると、表示されたタグの一般的な種類、例えばイベント、移動体、または人物等を記載する4ビットコードに見える。より近づいて、例えば10フィート(約3.05m)の距離では、このコードはより高解像度にデコードされ、ユーザはカメラベースのデコード装置を用いてより特定の情報を入手できる。ユーザは、デコード装置とタグとの距離をさらに縮めて、コードのさらなる詳細を見出し、より多くの情報を得ることができる。
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【0018】
本発明の一実施形態では、多解像度の視覚コードをもつタグは、建物、店先、または壁面等の現実の構造物に、またはその近傍に設置できる。ユーザは、ビューイングかつデコードィング装置で、このタグを観察できる。図1は、本発明の一実施形態に従って、多解像度の視覚コードにエンコードされた実体的対象に関する情報を、ユーザがデコーダを用いて入手する様子を示す。本例では、現実の構造物102は、その正面にタグ104を備える。タグ104は、遠くから見える多解像度レベルのコードを表す。一次元コード、例えばバーコード、および二次元コードを含む任意のタイプの視覚コードを、複数の解像度レベルを示すように用いてもよい。
【0019】
現実の構造物102の近傍にいるユーザは、デコード装置106を用いてタグを検知できる。一実施形態では、デコード装置106は、ユーザインターフェース110と、好適にはズーム機能を備えたレンズ108とを含む。ユーザがレンズ108をタグ104に向けると、デコード装置106は多解像度の視覚コードを最低の解像度レベルで捕捉かつデコードできる。図1は二次元の多解像度視覚コードを示す。デコードされた情報に基づいて、デコード装置106はユーザインターフェース110をユーザに示して、コードに基づいて関連情報を提示し、ユーザがこの情報を用いてナビゲートする支援をする。
【0020】
一般に、低解像度のコードは多数の高解像度コード部分を含む場合があり、コードの各高解像度部分は、タグ上の異なる領域に含まれる。低解像度コードは、タグ上のどの領域に特定の情報があるかを示す情報を提供できる。図示する実施例では、タグ104上の低解像度レベルのコードは、タグ上に9つの領域があり、各領域は異なるタイプの情報をエンコードする高解像度コードを含むことを示している。一実施形態では、ユーザインターフェース110は各領域の位置と、各領域内の高解像度コードが持つ情報の種類とを表示する。次いで、ユーザは、デコード装置106を対応する領域にフォーカスして対象物の1つを選択し、これによりデコード装置106が対応領域中の高解像度コードをデコードできるようにする。一実施形態では、ユーザは「ズームイン」動作を行って、デコード装置106を希望領域にフォーカスする。他の実施形態では、ユーザはタグ104に物理的により近づくことができる。どちらのアプローチでも効果は同じで、デコード装置106は希望の解像度レベルでコードをデコードできる。
【0021】
本発明の一実施形態では、各解像度レベルのコードは、現在の情報レベルに関する情報もエンコードする。この「レベル情報」により、デコード装置106が情報階層中の現在レベルを識別し、ユーザが情報をより簡単にナビゲートをできるようにする。他の変形例では、デコード装置は以前に見たレベルをローカルメモリに記憶できるため、ユーザはより低い解像度に対応するレベルに戻ることができる。
【0022】
タグ104上の多解像度の視覚コードは、多くのタイプの情報を含むことができる。例えば、現実の構造物102がオペラハウスならば、タグ104上の最低解像度のコードは、オペラハウスに関する各種情報を提供できる。かかる情報はコードに直接エンコードできる。他の実施形態では、コードはURLリンクを提供でき、もしデコード装置106にインターネットアクセスがあれば、ユーザはデコード装置106をURLリンクに対応する領域にフォーカスして、そのURLリンクへナビゲートできる。
【0023】
タグは建物の外側に設置可能なので、時には磨耗したり汚れたりする。この結果、デコーディングエラーが発生する場合がある。本発明の一実施形態では、高解像度コードが低解像度コードのエラー補正情報を含む。さらにシステムは、現在の解像度レベルにおいて特定の領域、例えば右下隅等を、補正コードをもつ領域として指定できる。レベル間またはレベル内での他のエラー検査構成またはエラー補正構成、もしくはこの両方の構成も可能である。
【0024】
他の実施形態では、デコード装置106は、多解像度の視覚コードに加えて、追加の環境ヒントを用いて、エンコードされた情報をデコードできる。例えば、デコード装置106は、建物のどの側(すなわち東西南北のいずれの側)にタグが設置されているかを検知できる。その後、デコード装置106は、かかる環境ヒントに基づいて多解像度の視覚コードをデコードし、これは結果として、コードの各レベルの情報収容能力を向上させることになる。他の実施形態では、デコード装置106は、デコードを支援するために全地球位置把握システム(GPS)等の位置検知メカニズムを含んでもよい。
【0025】
本発明の実施形態の利点の一つは、ユーザからの必要な手動入力が最小限ですむことである。ユーザは、異なる領域にフォーカスして高解像度コードをデコードすることによって情報をナビゲートできる。ナビゲーション中には、ユーザが観察している対象のURLを手動で入力する必要はない。さらに、本質的な情報をタグ中に直接エンコードできるため、ユーザはインターネットにアクセスすることなく情報を入手できる。」
C 「【0026】
本発明の実施形態は、各種の多解像度の視覚コードを使用できる。図2は、二次元の多解像度視覚コードの一例を示し、これは本発明の一実施形態に従って現実の構造物に設置されるタグ上に情報をエンコードするのに使用できる。本例は3つの解像度レベルを含む。最低解像度コード202は一般情報をエンコードする。かかる情報には、対象の種類(建物等)、イベント、組織、および人物が含まれうる。図2に示すように、コード202は16個の正方形を含み、各正方形は1ビットを表す。例えば、薄い色の正方形は「0」を表し、濃い色の正方形は「1」を表す。したがって、コード202は理論上は64Kの値をエンコード可能である。一実施形態では、コード202はタグ中の高解像度コードに関する情報をエンコードしている。ユーザのデコード装置がこの情報をうまくデコードすると、デコード装置は対応領域に関連した高解像度コードの各部分の主題をユーザインターフェースに表示してユーザに提示できる。その後、ユーザはこれら領域からフォーカスする一領域を選択できる。
【0027】
図2に示すように、コード202は16個の正方形に分割され、各正方形はコード204等の高解像度コード部分を含む。他の実施形態では、コード202中の複数の正方形によって高解像度コード用の領域を構成してもよい。例えば、コード202を4つの領域に分割し、各領域が4つの正方形を含むようにしてもよい。これ以外の領域分割アプローチを用いることも可能である。
【0028】
コード204はコード202と同様のパターンをもち、より特定的で詳細な情報をエンコードできる。本例では、コード204は81個の正方形からなるので、理論上は281個の値をエンコード可能である。一実施形態では、コード204はコード202用のエラー検査またはエラー補正コードを含みうる。コード204はまた、次の解像度レベルの異なるコード部分に含まれる主題、およびこれらの部分に対応する領域についての情報をエンコードできる。
【0029】
さらに、コード204中の各正方形はより高解像度のコード、例えばコード206等を含む。コード206はさらに詳細な情報、すなわち情報階層のもっとも詳細なレベルの情報をエンコードできる。さらに、コード206はコード204用のエラー検査またはエラー補正情報も含みうる。」
D 「【0033】
本発明の実施形態では、タグは複数レベルの情報をエンコードできる。かかる情報階層を用いれば、ユーザが現実世界で情報をナビゲートするのと、インターネットをブラウジングする経験とが似通ったものになり、非常に直感的なものとなりうる。情報階層は多くの方法で実現でき、異なる形式で提示できる。例えば、情報カテゴリを記載したユーザインターフェースは、テキスト、グラフィックス、サウンド、アニメーション、または異なるマルチメディア形式の組み合わせを利用できる。かかる柔軟性のため、情報提供者は情報を非常に効果的に伝達できる。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に従ってユーザがナビゲートできる情報階層を示す。本例では、タグはオペラハウスに関する情報を含むものとする。最低解像度のコードでエンコードされたトップレベルカテゴリ402は、「歴史」「道案内」「セール」「チケット」「イベント」「ショップ」「ウェブ」「近隣情報」「寄付」等、オペラハウスに関する一般情報を含みうる。各カテゴリはタグ上の一領域に対応し、ここに高解像度コードがそのカテゴリについての情報を保持する。
【0035】
例えば、ユーザが、デコード装置を「イベント」にフォーカスすることを選択すると、次レベルのユーザインターフェースは、「コンサート」「オペラ」および「バレエ」を含む対応するサブカテゴリのセットを表示する。同様に、ユーザは高解像度のコードでエンコードされたさらに他のレベル406にナビゲートでき、このレベルは「過去のイベント」「現在のイベント」および「今後のイベント」を含む。もしユーザが「現在のイベント」を選択すれば、デコード装置は対応領域にフォーカスして、現在のイベントの詳細情報408を取り出す。」
E 「【図1】
[図:0001396978000001.jpg]
」
F 「【図2】
[図:0001396978000002.jpg]
」
G 「【図4】
[図:0001396978000003.jpg]
」

(2)上記AないしGの記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

ア 上記(1)のBの段落【0016】には、“現実の構造物に配置されて関連情報をエンコードしたタグ”、及び、“エンコードされる情報が、現実の構造物と関連づけられる”ことが記載されており、また、段落【0017】には、「タグは情報をエンコードした多解像度の視覚コードを含む」ことが記載されており、引用文献1には、“現実の構造物に配置され、現実の構造物と関連づけられた情報をエンコードした多解像度の視覚コードを含むタグ”が記載されているといえる。

さらに、段落【0018】には図1の実施形態として、“現実の構造物102にタグ104が備えられる”こと、さらに、“視覚コードが二次元コードを含む”ことが記載されている。

してみると、引用文献1には、“現実の構造物102に備えられ、現実の構造物と関連づけられた情報をエンコードした二次元の多解像度の視覚コードを含むタグ104”が記載されているといえる。

イ 上記(1)のBの段落【0020】には、“タグ104上の低解像度レベルのコードは、タグ上に9つの領域があり、各領域は異なるタイプの情報をエンコードした高解像度コードを含むことを示すものであ”ることが記載されている。

ウ 上記(1)のBの段落【0019】には、“ユーザインターフェース110と、好適にはズーム機能を備えたレンズ108とを含むデコード装置106”、が記載され、さらに、【0019】には、“ユーザが、デコード装置106のレンズ108をタグ104に向けると、デコード装置106は多解像度の視覚コードを最低の解像度レベルで捕捉かつデコードし、デコードされた情報に基づいて、デコード装置106はユーザインターフェース110をユーザに示”すことが記載されている。

してみると、引用文献1には、“ユーザが、ユーザインターフェース110と、好適にはズーム機能を備えたレンズ108とを含むデコード装置106のレンズ108をタグ104に向けると、デコード装置106は多解像度の視覚コードを最低の解像度レベルで捕捉かつデコードし、デコードされた情報に基づいて、デコード装置106はユーザインターフェース110をユーザに示”すことが記載されているといえる。

エ さらに、上記(1)のBの段落【0020】には、“ユーザインターフェース110は各領域の位置と、各領域内の高解像度コードが持つ情報の種類とを表示するものであ”ることが記載されている。

オ 上記(1)のBの段落【0020】には、“次いで、ユーザは、デコード装置106を対応する領域にフォーカスして対象物の1つを選択すると、デコード装置106が対応領域中の高解像度コードをデコードできるものであ”ること、さらに、“フォーカスすることは、ユーザが「ズームイン」動作を行って、デコード装置106を希望領域にフォーカスするか、あるいは、ユーザがタグ104に物理的により近づくことであ”ることが記載されている。

してみると、引用文献1には、“次いで、ユーザは、デコード装置106を対応する領域にフォーカスして対象物の1つを選択すると、デコード装置106が対応領域中の高解像度コードをデコードできるものであって、フォーカスすることは、ユーザが「ズームイン」動作を行って、デコード装置106を希望領域にフォーカスするか、あるいは、ユーザがタグ104に物理的により近づくことであ”ることが記載されているといえる。

カ 上記(1)のBの段落【0022】には、「他の実施形態では、コードはURLリンクを提供でき、もしデコード装置106にインターネットアクセスがあれば、ユーザはデコード装置106をURLリンクに対応する領域にフォーカスして、そのURLリンクへナビゲートできる」ことが記載され、「他の実施形態では」との記載はあるものの、「デコード装置106」との記載があることからすれば、図1の実施形態の「視覚コード」は、URLリンクを提供できるものと解すべきであるから、引用文献1には、“視覚コードはURLリンクを提供でき、デコード装置106にインターネットアクセスがあれば、ユーザはデコード装置106をURLリンクに対応する領域にフォーカスして、そのURLリンクへナビゲートできる”ことが記載されているといえる。

(3)上記(1)、(2)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「現実の構造物102に備えられ、現実の構造物と関連づけられた情報をエンコードした二次元の多解像度の視覚コードを含むタグ104であって、
タグ104上の低解像度レベルのコードは、タグ上に9つの領域があり、各領域は異なるタイプの情報をエンコードした高解像度コードを含むことを示すものであり、
ユーザが、ユーザインターフェース110と、好適にはズーム機能を備えたレンズ108とを含むデコード装置106のレンズ108をタグ104に向けると、デコード装置106は多解像度の視覚コードを最低の解像度レベルで捕捉かつデコードし、デコードされた情報に基づいて、デコード装置106はユーザインターフェース110をユーザに示し、ここで、ユーザインターフェース110は各領域の位置と、各領域内の高解像度コードが持つ情報の種類とを表示するものであって、次いで、ユーザは、デコード装置106を対応する領域にフォーカスして対象物の1つを選択すると、デコード装置106が対応領域中の高解像度コードをデコードできるものであって、フォーカスすることは、ユーザが「ズームイン」動作を行って、デコード装置106を希望領域にフォーカスするか、あるいは、ユーザがタグ104に物理的により近づくことであり、
視覚コードはURLリンクを提供でき、デコード装置106にインターネットアクセスがあれば、ユーザはデコード装置106をURLリンクに対応する領域にフォーカスして、そのURLリンクへナビゲートできる、
タグ104。」

2 引用文献2

本願の優先日前に頒布され、原査定の理由において引用された、特開平10-177532号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0011】そこで、本発明は、このようなテレビとインターネットという相異なる媒体の有機的に組み合わせる。すなわち、テレビの番組に同期して、その番組に関連したURLへの自動アクセスを行わせることにより、情報の提供(および視聴者からの返答受信)が可能なホームページを自動的にテレビ画面に表示させる。このような両媒体の時間的なリンクは、情報提供、双方向コミュニケーション、広告宣伝、商品取引、等の種々の用途において非常に大きな効果を生み出すことができる。情報提供側は、各URLを変更することなく、そのホームページの内容のみを変更することにより、提供する情報を自由に変更できるので、その内容は融通性に富む。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」は、「デコード装置106のレンズ108をタグ104に向けると、デコード装置106は多解像度の視覚コードを最低の解像度レベルで捕捉かつデコード」すものであるから、機械可読の光コードである点で、本願発明の「多次元機械可読光コード」に相当する。

また、引用発明の「タグ104」は、デコード装置106により読み取られる「二次元の多解像度の視覚コード」を提供するものであり、「現実の構造物102に備えられ」るものであるから、構造物102への取り付けのために、所定の面積を有するいわゆる基板を備えているものと認められる。そして、「二次元の多解像度の視覚コード」は、当該基板の物理的表面上に具現化されるものであることは明らかである。

してみると、引用発明の「タグ104」は、本願発明の「物理的表面を含む基板と、前記物理的表面上に具現化される多次元機械可読光コードと、を備え」た、「物品」に相当する。

2 当該技術分野において、二次元の視覚コードが、符号化された値の組において符号化された値をそれぞれ表す光学要素を有することは技術常識である。

したがって、引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」は、符号化された値の組において符号化された値をそれぞれ表す光学要素を有するものと認められる。

3 そして、引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」は、「低解像度レベルのコード」と「高解像度コード」を含むものであるから、引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」の光学要素が、「低解像度レベルのコード」の光学要素の組及び「高解像度コード」の光学要素の組を含み、各組が前記物理的表面上で具現化されたものであることは明らかである。

4 引用発明の「低解像度レベルのコード」に関して、発明の詳細な説明の段落【0022】には、「例えば、現実の構造物102がオペラハウスならば、タグ104上の最低解像度のコードは、オペラハウスに関する各種情報を提供できる。かかる情報はコードに直接エンコードできる。」と記載され、オペラハウスの情報を直接エンコードしたものであるから、引用発明の「低解像度レベルのコード」は、他のデータを参照しない静的データを符号化したものであるということができる。

5 また、引用発明の「高解像度コード」は、「タグ上」の「9つの領域」にあり、「各領域は異なるタイプの情報をエンコードした」ものである。

そして、引用発明は、「ユーザ」が「高解像度コード」の「各領域の位置と、各領域内の高解像度コードが持つ情報の種類とを表示」する「ユーザインターフェース110」をもとに、「デコード装置106を対応する領域にフォーカス」すると「対応領域中の高解像度コードをデコードできるもので」ある。

また、引用発明は、「視覚コードはURLリンクを提供でき、デコード装置106にインターネットアクセスがあれば、ユーザはデコード装置106をURLリンクに対応する領域にフォーカスして、そのURLリンクへナビゲートできる」ものである。ここで、「URLリンク」は「フォーカス」される領域の情報であるから、「URLリンク」は「高解像度コード」としてエンコードされているものと認められる。また、「URLリンク」は、「インターネットアクセス」するものであるから、データを参照するルックアップ値であるといえる。

してみると、引用発明において、「URLリンク」を提供する「高解像度コード」の光学要素の組は、データを参照するルックアップ値を符号化したものといえる。

6 引用発明の「デコード装置106」によって「最低の解像度レベルで捕捉かつデコード」されるコードは、引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」に含まれる「低解像度レベルのコード」と「高解像度コード」とのうち、「低解像度レベルのコード」であると認められる。

ここで、光学要素の組により構成されるコードにおける「解像度」とは、一の光学要素の占める面積、すなわち、大きさを示しており、「高解像度コード」を構成する光学要素の大きさは、「低解像度レベルのコード」を構成する光学要素の大きさよりも小さいことは、例えば上記「第4 1(1)」のCに引用した段落【0027】~【0029】の記載及び上記「第4 1(1)」のFに引用した図2にも記載されているように、当業者にとって自明である。

そして、引用発明においては、「ユーザが「ズームイン」動作を行って、デコード装置106を希望領域にフォーカスするか、あるいは、ユーザがタグ104に物理的により近づく」「フォーカス」することで「対応領域中の高解像度コードをデコードできるもので」あるから、引用発明の「高解像度コード」の光学要素の組は、「低解像度レベルのコード」の光学要素の組が復号可能である距離において、復号可能ではない状態から、「ズームイン」動作や、ユーザがタグ104に物理的により近づくことで、デコード装置106とタグ104との間の距離が仮想的にあるいは物理的に、所定の距離に達した段階で復号可能となるものであると認められ、一方、引用発明の「低解像度レベルのコード」の光学要素の組は、「高解像度コード」の光学要素の組が復号可能となる所定の距離以上の距離においても、復号が可能であるものと認められる。してみると、引用発明の「高解像度コード」の光学要素の組は、それらが復号可能となる所定の距離より大きい距離において復号可能でなく、「低解像度レベルのコード」の光学要素の組は、前記所定の距離以上の距離において復号可能であり、前記「低解像度レベルのコード」である光学要素の組に含まれる複数の光学要素の大きさを第1の大きさであるとすると、前記「高解像度コード」である光学要素の組に含まれる複数の光学要素の大きさは、それぞれが前記第1の大きさより小さい第2の大きさであるものと認められる。

7 上記2ないし6を踏まえると、引用発明の「低解像度レベルのコード」の光学要素の組は、本願発明の「静的データ(SD)光学要素の組」に相当し、引用発明の「URLリンク」を提供する「高解像度コード」の光学要素の組と、本願発明の「ルックアップデータ(LD)光学要素の組」とは、後記の点で相違するものの、“もう一方の光学要素の組”の点では共通する。

そして、引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」と、本願発明の「前記多次元機械可読光コード」とは、後記の点で相違するものの、“符号化された値の組において符号化された値をそれぞれ表す光学要素を有”し、“前記光学要素は、静的データ(SD)光学要素の組及びもう一方の光学要素の組を含み、各組が前記物理的表面上で具現化され、前記もう一方の光学要素の組は、データを参照するルックアップ値を符号化し、前記SD光学要素の組は、他のデータを参照しない静的データを符号化し、前記もう一方の光学要素の組は、所定の距離より大きい距離において復号可能でなく、前記SD光学要素の組は、前記所定の距離以上の距離において復号可能であり、前記SD光学要素の組は、それぞれが第1の大きさである第1の複数の光学要素を含み、前記もう一方の光学要素の組は、それぞれが前記第1の大きさより小さい第2の大きさである第2の複数の光学要素を含む”点では共通する。

上記の検討から、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「物理的表面を含む基板と、
前記物理的表面上に具現化される多次元機械可読光コードと、を備え、前記多次元機械可読光コードが、符号化された値の組において符号化された値をそれぞれ表す光学要素を有し、前記多次元機械可読光コードの前記光学要素は、静的データ(SD)光学要素の組及びもう一方の光学要素の組を含み、各組が前記物理的表面上で具現化され、前記もう一方の光学要素の組は、データを参照するルックアップ値を符号化し、前記SD光学要素の組は、他のデータを参照しない静的データを符号化し、前記もう一方の光学要素の組は、所定の距離より大きい距離において復号可能でなく、前記SD光学要素の組は、前記所定の距離以上の距離において復号可能であり、前記SD光学要素の組は、それぞれが第1の大きさである第1の複数の光学要素を含み、前記もう一方の光学要素の組は、それぞれが前記第1の大きさより小さい第2の大きさである第2の複数の光学要素を含む、物品。」

(相違点1)

「もう一方の光学要素の組」が、本願発明では「ルックアップデータ(LD)光学要素の組」であって、「前記LD光学要素の組は、動的に可変のデータを参照するルックアップ値を符号化し」たものであるのに対して、引用発明では、「URLリンク」を提供する「高解像度コード」の光学要素の組であって、URLリンクが参照するデータが動的に可変である旨は特定されていない点。

(相違点2)

「もう一方の光学要素の組」が、復号可能でない距離が、本願発明では「閾値距離以上の距離」であるのに対し、引用発明では、「所定の距離以上の距離」であって、当該「所定の距離」に関して、特定の「閾値」を有するかどうか不明な点。

第6 判断

上記相違点について検討する。

1 相違点1について

上記「第4 2」の引用文献2に記載されるように、提供する情報を自由に更新できるようにURLリンクを用いることは周知技術である。

そして、引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」にエンコードされる「現実の構造物と関連づけられた情報」には、例えば、引用文献1の段落【0035】、図4等に記載されるように、「過去のイベント」、「現在のインベント」、「今後のイベント」の詳細情報などの随時更新が必要な情報も含まれるものである。

してみれば、引用発明の「二次元の多解像度の視覚コード」にエンコードされる情報における随時更新が必要な情報を提供するために上記周知の技術を適用して、URLリンクが参照するデータを動的に可変なものとすることで、上記相違点の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について

引用文献1には、上記「第4 1」のBのとおり、「例えば、ある多解像度タグは、25フィート(約7.62m)の距離から見ると、表示されたタグの一般的な種類、例えばイベント、移動体、または人物等を記載する4ビットコードに見える。より近づいて、例えば10フィート(約3.05m)の距離では、このコードはより高解像度にデコードされ、ユーザはカメラベースのデコード装置を用いてより特定の情報を入手できる。」(【0017】)と記載され、「低解像度レベルのコード」は、25フィートの距離でデコード可能とし、「高解像度コード」は、10フィートの距離でデコード可能とする例が示されている。

ここで、「高解像度コード」が、どの程度の距離以上でデコードができなくなるかについては、明確に記載されていないが、少なくとも10フィートから25フィートまでの間において、「高解像度コード」がデコードできなくなる特定の距離が存在することは、当業者が普通に想到し得ることであり、その距離をどの程度に設定するかは、「高解像度コード」により提供する情報の内容等に鑑みて、当業者が適宜設定するものであるといえ、引用発明において、そのような距離を「閾値距離」として取り扱うことに、当業者が困難を要するものとは認められない。

3 相違点についてのまとめ

以上のとおり、本願発明と引用発明との相違点1、2に係る構成はいずれも、引用発明ならびに引用文献2に記載のごとき周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明のそれらの構成によってもたらされる効果も、当業者であれば容易に予測できる程度のものであって、格別なものとは認められない。

4 審判請求人の主張について

なお、審判請求人は、審判請求書で、

「しかしながら、引用文献1(特開2007-207221号公報)記載の発明は、インターネット接続のあるコンピュータにアクセスできない(つまり、URLなどの情報識別子と関連付けられた情報を検索できない)環境であっても現実世界の対象に関連した情報を効率的にブラウジングすることを目的としており(引用文献1の段落0003~段落0005など)、このために、タグが、詳細な情報をコード中に直接エンコードできるようにした高解像度コード部分を具備することを技術的特徴とするものであります(引用文献1の段落0027~段落0029など)。
従いまして、当業者であれば、引用文献1記載の高解像度コード部分において、引用文献2(特開平10-177532号公報)などに記載の「動的に可変のデータを参照するURL等のルックアップ値」を採用することは、引用文献1の上記目的を損なうものであり到底採用し得えないものでありますから、たとえ当業者であっても、上記引用文献1及び2を基に、本願の請求項1及び7~9に係る発明を容易に想到することはできないものと確信しております。」と主張している。

確かに、引用発明は、インターネット接続のあるコンピュータにアクセスできない環境であっても現実世界の対象に関連した情報を効率的にブラウジングすることを主たる目的とするものである。

しかしながら、引用文献1の段落【0003】には「また、ユーザは、関心のある主題をユニフォーム・リソース・ロケータ(URL)等の情報識別子と関連づけ、関連情報を検索するために何等かの方法でこの識別子を通信装置に入力しなければならない。」と記載され、URLの通信装置への入力を簡易化することも目的とするものと認められ、さらに、引用文献1の段落【0022】には、インターネットアクセスが可能な「デコーダ装置106」のために、「二次元の多解像度の視覚コード」に「URLリンク」を提供しURLリンクへナビゲートできることが記載され、そして、段落【0025】には、「本発明の実施形態の利点の一つは、・・・。ナビゲーション中には、ユーザが観察している対象のURLを手動で入力する必要はない。」と記載されている。

してみると、引用発明がインターネットへの接続を排除するものではないか ら、引用文献2などに記載の「動的に可変のデータを参照するURL等のルックアップ値」を採用することは、引用文献1の上記目的を損なうものとまではいえない。

したがって、上記主張を採用することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-008391

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