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特許拒絶査定不服審判

2023-011666

情報処理端末

審判番号
2023-011666
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-080176
請求日
2023年07月11日
審決日
2025年05月08日
公報発行日
2025年06月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】株式会社フライトソリューションズ
  • 【請求人代理人】木田 博
  • 【請求人代理人】成毛 敏明
  • 【請求人代理人】大石 敏弘
審判長/審判官
  • 審判長 林 毅
  • 審判官 大塚 俊範
  • 審判官 脇岡 剛
分類
P18 .113-WY (G06K) / P18 .121-WY (G06K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

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特願2021- 80176「情報処理端末」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年11月24日出願公開、特開2022-174402、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1.手続の経緯 本願は、令和3年5月11日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年11月14日付け:拒絶理由通知書 令和5年 1月19日 :意見書、手続補正書の提出 同年 2月21日付け:拒絶理由通知書 同年 4月26日 :意見書、手続補正書の提出 同年 5月19日付け:補正却下の決定、拒絶査定 同年 7月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 8月25日付け:前置報告書 同年12月14日 :上申書の提出 令和6年 1月30日付け:審決(補正を却下する、本件審判の請求は成り立たない) 同年 3月13日 :審決の取消を求める訴えの提起 (知的財産高等裁判所:令和6年(行ケ)第10023号) 同年11月13日 :判決言渡(審決を取り消す) 同年12月24日付け:拒絶理由通知書 令和7年 2月 5日 :意見書、手続補正書の提出 第2.本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和7年2月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 決済以外の用途において適用可能な情報処理端末であって、 情報記憶媒体から情報を読み取り可能な接触型の読み取り部と、 前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な非接触型の読み取り部と、 前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれにより読み取られた情報を処理する情報処理部とを、備え、 前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部は、決済に関する情報の入力がなされていない前記情報記憶媒体から読み取り対象の情報を読み取り可能であり、 前記情報処理部は、前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれを同時に、前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な待ち受け状態に維持しつつ、前記接触型の読み取り部により読み取られた情報又は前記非接触型の読み取り部により読み取られた情報を処理するものであって、前者の情報である場合には第1後続処理を、後者の情報である場合には第2後続処理を、それぞれ実行し、前記情報記憶媒体は、処理可能な種別として、個人ごとに固有の証明用情報が記憶された第1種別を含み、 前記第1種別に応じた前記第1後続処理及び前記第1種別に応じた前記第2後続処理は、それぞれ、コード入力に基づく認証が成功した場合に行う所定情報読み取り処理と、前記所定情報読み取り処理がエラーとなった場合に別の読み取り方式にユーザを誘導する誘導処理を含む、情報処理端末。 【請求項2】 前記情報処理部は、前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のいずれかから処理対象の情報が入力されたか否かを判定し、 前記処理対象の情報が入力されたと判定されると、前記処理対象の情報が、前記接触型の読み取り部により読み取られた情報又は前記非接触型の読み取り部により読み取られた情報のうちの、いずれかであるかを判定し、 前記処理対象の情報が入力されなかったと判定されると、前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれを同時に前記待ち受け状態に維持する、請求項1に記載の情報処理端末。 【請求項3】 前記情報記憶媒体は、アプリケーションIDを含む情報を、前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のうちの少なくともいずれか一方に読み取らせることが可能であり、 前記情報処理部は、入力された前記処理対象の情報が前記接触型の読み取り部により読み取られた情報であると判定した場合に、前記処理対象の情報に含まれるアプリケーションIDに基づいて、前記情報記憶媒体の種別に応じた前記第1後続処理を実行する、請求項2に記載の情報処理端末。 【請求項4】 前記情報処理部は、入力された前記処理対象の情報が前記非接触型の読み取り部により読み取られた情報であると判定した場合に、前記処理対象の情報に含まれるアプリケーションIDに基づいて、前記情報記憶媒体の種別に応じた前記第2後続処理を実行する、請求項3に記載の情報処理端末。 【請求項5】 前記第2後続処理は、前記第1後続処理よりも、処理可能な前記情報記憶媒体の種別の数が多い、請求項4に記載の情報処理端末。 【請求項6】 前記第1種別に応じた前記第1後続処理及び前記第1種別に応じた前記第2後続処理は、それぞれ、コード入力を取得する処理と、コード入力に基づいて認証を行う処理と、コード入力に基づく認証が成功した場合に行う前記所定情報読み取り処理とを含む、請求項4又は5に記載の情報処理端末。」 第3.原査定及び当審による拒絶理由の概要 1.原査定の概要 令和5年5月19日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された以下の引用文献Aに記載された発明、及び、引用文献BないしEに記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 A.特開2020-181331号公報 B.特許第6754989号公報 C.特開2018-151957号公報 D.特開2011-170710号公報 E.特開2016-110462号公報 2.当審拒絶理由の概要 令和6年12月24日付け拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 (新規性)この出願の下記の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (進歩性)この出願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2、3に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2016-057804号公報 2.特開2018-151957号公報(引用文献C) 3.特開2009-245399号公報 第4.当審拒絶理由について 1.引用文献の記載事項 (1)引用文献1 ア.引用文献1の記載事項 引用文献1には次の事項が記載されている。 「【0010】 端末12について説明する。 端末12は、ICカード11と通信するリーダライタ(R/W)の端末であり、ICカード11にとって外部の端末となる。 接触通信部31は、ICカード11の接触通信部21との間で、有線の通信路13を介して接触方式で通信する。 非接触通信部32は、ICカード11の非接触通信部22との間で、無線の通信路14を介して非接触方式で通信する。 切替部33は、制御部35により制御されて、接触通信部31と非接触通信部32とで、通信に使用される通信部を切り替える。 【0011】 記憶部34は、その領域に、プログラムおよび各種のデータを記憶する。記憶部34は、例えば、記憶内容が書き換え可能な不揮発性のEEPROM、制御部35が処理を行う際の処理データを一時的に保持するRAM、および制御部35により実行されるプログラムを記憶するROMなどを備える。なお、それぞれの情報を記憶するメモリとしては、様々なメモリが用いられてもよい。 制御部35は、端末12における各種の処理および制御を行う。制御部35は、CPUを有し、記憶部34の領域に記憶されたプログラムを実行して、各種の処理および制御を行う。本実施形態では、制御部35は、切替部33を制御して、接触通信部31と非接触通信部32とで、通信に使用する通信部を切り替える。 【0012】 ここで、ICカード11と端末12は、それぞれ、接触方式のインターフェース(接触通信部21、31のインターフェース)と非接触方式のインターフェース(非接触通信部22、32のインターフェース)の両方を備える。本実施形態では、ICカード11はコンビカードである。 【0013】 接触方式では、ICカード11と端末12のそれぞれに金属の接触点が設けられて、端末12の接触点とICカード11の接触点とが接触させられた状態で、端末12とICカード11とが通信する。この場合、これらの接触点により接続される端末12とICカード11とをつなぐ導電性の経路(有線の経路)が、有線の通信路13となる。端末12は、ICカード11が挿入されたときにそれぞれの金属の接触点が接触させられる構造を有する接触通信用の挿入口を備える。 非接触方式では、ICカード11と端末12とのそれぞれにループアンテナなどのアンテナが設けられて、端末12のアンテナとICカード11のアンテナとの間での電磁誘導により、端末12とICカード11とが通信する。この場合、電磁誘導が行われる空中の経路(無線の経路)が、無線の通信路14となる。 【0014】 端末12は、ICカード11の内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えることなどを行うために、特定のプロトコルにしたがって、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)コマンドをICカード11に送信する。ICカード11は、例えばUARTを介して端末12から受信したコマンドを受信用バッファに保持し、その後、受信用バッファに保持したコマンドを解釈し、コマンドに応じた処理を実行する。 また、本実施形態では、ICカード11が電源を備えておらず、端末12からICカード11へ接触方式または非接触方式で電力を供給する構成が用いられる。他の構成例として、ICカード11が電源を備える構成が用いられてもよい。 …中略… 【0016】 ICカード11は、例えば、端末12が送信したコマンド(処理要求)を、コンタクト部61を介して受信し、受信したコマンドに応じた処理(コマンド処理)を実行する。そして、ICカード11は、コマンド処理の実行結果であるレスポンス(処理応答)をコンタクト部61を介して端末12に送信する。 ここで、端末12は、ICカード11と通信する上位装置であり、例えば、リーダライタであり、また、他の装置であってもよい。 …中略… 【0023】 本実施形態では、接触方式のインターフェース(接触通信部31のインターフェース)と非接触方式のインターフェース(非接触通信部32のインターフェース)の両方を備える端末12の接触通信用の挿入口に、例えば利用者の手作業により、ICカード11が挿入される。すると、端末12は、接触通信部31により、挿入されたICカード11を接触方式のインターフェースにより活性化させる。また、端末12は、非接触通信部32により、ICカード11と非接触方式で通信するための磁界を発生させている。 …中略… 【0029】 ここで、本実施形態における端末12およびICカード11による接触方式と非接触方式との切り替えの例を示す。 端末12では、接触通信部31(例えば、そこから電気信号を介して供給される電源)によりICカード11を活性化させる機能と、非接触通信部32(例えば、そこから磁界を介して供給される電源)によりICカード11を活性化させる機能との両方がオンになっている。そして、制御部35の制御により、ICカード11からの応答があった方の通信部(接触通信部31、または、非接触通信部32)を通信に使用するように、切替部33により切り替える。また、端末12では、ICカード11と接触方式の通信を行う際に、ICカード11から所定の指示(接触方式から非接触方式への切り替えの指示)を受信した場合に、制御部35の制御により、非接触通信部32を通信に使用するように、切替部33により切り替える。 ICカード11では、初期状態では、切替部23は、接触通信部21を通信に使用するように切り替えられている。そして、ICカード11では、端末12と接触方式で通信する場合には、そのまま、接触通信部21を通信に使用する。また、ICカード11では、端末12と接触方式で通信することなく初期から非接触方式で通信する場合、あるいは端末12と接触方式で通信したが非接触方式で通信するように切り替える場合には、制御部25の制御により、非接触通信部22を通信に使用するように、切替部23により切り替える。 …中略… 【0040】 上記実施形態では、携帯可能電子装置の一例として、ICカードが使用されるものとした。これに関し、他の構成例として、ICカードの代わりに、ICタグ、ICを内蔵したパスポート、ICを内蔵した免許証など、携帯することが可能な電子装置である様々なものを携帯可能電子装置として使用するものであってもよい。 また、携帯可能電子装置(本実施形態では、ICカード11)の機能を実現するためのプログラム(コンピュータのプログラム)が提供等されてもよい。 …中略… 【0042】 上記実施形態によれば、ICカード11において、ICモジュール51と、ICモジュール51が埋め込まれコンタクト部61およびアンテナ71が設けられた本体(本実施形態では、カード基材52)と、を有し、ICモジュール51は、コンタクト部61を用いて端末12と接触方式で通信する接触通信部21と、アンテナ71を用いて端末12と端末12から発生させられる磁界により非接触方式で通信する非接触通信部22と、接触通信部21により端末12と接触方式で通信するときに、非接触通信部22が磁界を受けた場合に、非接触通信部22による非接触方式の通信に関する情報を接触通信部21により端末12に送信する制御部25と、を備える。 これにより、ICカード11では、接触方式の通信から非接触方式の通信への切り替えの指示を端末12に対して行うことで、接触方式よりも高速通信可能な非接触方式への切り替えを実現することができる。本実施形態では、例えば、ICカード11と端末12との間で大容量のデータを通信する場合に、通信時間の短縮化を図ることができる。また、本実施形態では、例えば、ICカード11と端末12との非接触方式の通信において、接触不良により通信エラーが発生しやすい環境下である場合に、接触方式の通信から非接触方式の通信に切り替えることで、通信の安定性を確保することができる。具体例として、本実施形態に係る通信システム1は、大容量のデータを扱うものとして、電子料金収受システム(ETC: Electronic Toll Collection system)の車載器(ETC車載器)、または、顔データあるいは指紋データなどの生体データを扱うシステムなど、に適用することができる。 このように、本実施形態のICカード11では、非接触方式の通信の利点を活かすことができる。」 イ.引用発明1 (ア)上記段落0040によると、引用文献1におけるICカード11は、携帯可能電子装置の一例であって、上記携帯可能電子装置としては、ICを内蔵したパスポートや免許証などを使用することができることが記載されている。 (イ)上記段落0010、0014、0029によると、引用文献1には、ICカード11と通信するリーダライタの端末12であって、ICカード11との間で有線の通信路13を介して接触方式で通信する接触通信部31と、ICカード11との間で無線の通信路14を介して非接触で通信する非接触通信部32と、各種の処理を行う制御部35が記載されているといえる。 そして、上記(ア)のとおりであるから、引用文献1には、携帯可能電子装置と通信するリーダライタの端末12であって、携帯可能電子装置との間で有線の通信路13を介して接触方式で通信する接触通信部31と、携帯可能電子装置との間で無線の通信路14を介して非接触で通信する非接触通信部32と、各種の処理を行う制御部35を備え、携帯可能電子装置としてICを内蔵したパスポートや免許証が使用されることが記載されているといえる。 (ウ)上記段落0029によると、引用文献1には、接触通信部31(例えば、そこから電気信号を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能と、非接触通信部32(例えば、そこから磁界を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能との両方がオンになっており、接触通信部31と非接触通信部32のうち携帯可能電子装置からの応答があった方の通信部を用いて、携帯可能電子装置と通信することが記載されているといえる。そして、上記段落0014、0016には、端末12が、ICカード11の内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えること、又は、所定のコマンドをICカード11に送信し、当該コマンド処理の実行結果であるレスポンスを受信することが記載されているといえるところ、「端末12」が「通信部」を用いて「携帯可能電子装置」と通信するとは、「端末12」が「通信部」を用いて、「携帯可能電子装置の内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えること、又は、所定のコマンドを携帯可能電子装置に送信し、当該コマンド処理の実行結果であるレスポンスを受信する」ことであると解される。そうすると、引用文献1には、「接触通信部31(例えば、そこから電気信号を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能と、非接触通信部32(例えば、そこから磁界を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能との両方がオンになっており、接触通信部31と非接触通信部32のうち携帯可能電子装置からの応答があった方の通信部を用いて、携帯可能電子装置の内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えること、又は、所定のコマンドを携帯可能電子装置に送信し、当該コマンド処理の実行結果であるレスポンスを受信する」ことが記載されているといえる。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)によると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「携帯可能電子装置と通信するリーダライタの端末12であって、 携帯可能電子装置との間で有線の通信路13を介して接触方式で通信する接触通信部31と、 携帯可能電子装置との間で無線の通信路14を介して非接触で通信する非接触通信部32と、 各種の処理を行う制御部35を備え、 携帯可能電子装置としてICを内蔵したパスポートや免許証などを使用することができ、 接触通信部31(例えば、そこから電気信号を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能と、非接触通信部32(例えば、そこから磁界を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能との両方がオンになっており、接触通信部31と非接触通信部32のうち携帯可能電子装置からの応答があった方の通信部を用いて、携帯可能電子装置の内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えること、又は、所定のコマンドを携帯可能電子装置に送信し、当該コマンド処理の実行結果であるレスポンスを受信する端末」 (2)引用文献2及び3(周知技術) 引用文献2の段落0007、0034、0048には、「免許証等のIDカードからアプリケーションIDを読み取り、当該アプリケーションIDに基づいてIDカードの種別に応じた処理を行う」ことが記載されているといえる。 引用文献3の段落0036、0056、0057、0063ないし0069には、「免許証、パスポート、住民基本台帳等の身分証明証となるICカードから、カード識別子を読み取り、当該カード識別子からICカードの種別を判別し、判別した種別に応じた処理を行う」ことが記載されているといえる。 上記引用文献2及び3に記載された事項によると、「免許証等の決済以外の用途に使用されるIDカードから所定のIDを読み取り、IDカードの種別に応じた処理を行う」ことは、周知技術であると認められる。 2.本願発明1について (1)対比 ア.引用発明1において、「パスポートや免許証」が、個人の識別(身分証)、渡航資格・運転資格の有無の確認など、少なくとも決済以外の用途に使用(適用)可能なものであることは本願出願時における技術常識から明らかである。また、引用発明1の「リーダライタの端末12」は、「情報処理端末」といい得るものである。 そうすると、引用発明1は、「携帯可能電子装置」としてICを内蔵したパスポートや免許証などを使用することができるものであり、引用発明1の「リーダライタの端末12」は、そのような「携帯可能電子装置」と通信することが可能であるため、決済以外の用途において適用可能なものであるといえ、本願発明1の「決済以外の用途において適用可能な情報処理端末」に相当する。 イ.引用発明1の「携帯可能電子装置」としてのパスポートや免許証は、個人の識別(身分証)、渡航資格・運転資格の有無に必要な情報を記憶する媒体としても機能しているといえるから、本願発明1の「情報記録媒体」に相当する。 ウ.引用発明1の「携帯可能電子装置との間で有線の通信路13を介して接触方式で通信する接触通信部31」は、本願発明1の「情報記憶媒体から情報を読み取り可能な接触型の読み取り部」に相当する。 エ.引用発明1の「携帯可能電子装置との間で無線の通信路14を介して非接触で通信する非接触通信部32」は、「前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な非接触型の読み取り部」に相当する。 オ.引用発明1において、「制御部35」が行う「各種の処理」には、「携帯可能電子装置の内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えること、又は、所定のコマンドを携帯可能電子装置に送信し、当該コマンド処理の実行結果であるレスポンスを受信する」ことを含み、ひいては、読み出した情報又は受信したレスポンス(本願発明1における「読み取られた情報」に相当。)の処理を含むものと解するのが相当であるから、引用発明1の「制御部35」は、「上記情報記録媒体から読み取られた情報を処理する」ものといえる。よって、引用発明1の「各種の処理を行う制御部35」は、本願発明1の「前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれにより読み取られた情報を処理する情報処理部」に相当する。 カ.本願発明1において、「前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部」が「決済に関する情報の入力がなされていない前記情報記憶媒体」から「読み取り可能」であるとは、本願が解決しようとする課題「決済以外の用途において適用可能な情報処理端末であって、接触型及び非接触型のいずれの情報記憶媒体からも短時間で必要な情報を読み取り可能な情報処理端末を提供すること」(本願明細書の段落0005)、及び本願明細書の段落0044~0048に例示されたカードのうち、決済に使用されるクレジットカード以外のカード(マイナンバーカード、外国人在留者カード、運転免許証)に鑑みれば、決済以外の用途に用いられる情報記録媒体から情報を読み取り可能なことであると解するのが相当である。 ここで、引用発明1の「接触通信部31」と「非接触通信部32」とは、「ICを内蔵したパスポートや免許証」に対して、その内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えることができる、又は、所定のコマンドを送信し、当該コマンド処理の実行結果であるレスポンスを受信することができるものであるところ、「ICを内蔵したパスポートや免許証」は、決済以外の用途に用いられる情報記録媒体であるから、上記「接触通信部31」と「非接触通信部32」は、「決済に関する情報の入力がなされていない前記情報記憶媒体」から「読み取り可能」なものといえる。よって、引用発明1と本願発明1とは、「前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部は、決済に関する情報の入力がなされていない前記情報記憶媒体から読み取り対象の情報を読み取り可能」である点で共通する。 キ.本願発明1の「前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な待ち受け状態」に関して、本願明細書の段落0017には「待ち受け状態とは、当該状態において、情報記憶媒体が非接触型リーダ211に対して所定距離内に位置すると、当該情報記憶媒体と直ちに通信を開始できる状態に対応する。」と記載され、同段落0021には、「待ち受け状態とは、当該状態において、情報記憶媒体が接触すると、当該情報記憶媒体と直ちに通信を開始できる状態に対応する。」と記載されていること及びICカード及びそのリーダライタに係る本願出願時における技術常識を参酌すれば、当該状態において所定の条件(情報記憶媒体が非接触型リーダ211に対して所定距離内に位置する、又は、情報記憶媒体が接触する)を満たした場合に情報記録媒体から情報を読み取ることが可能な状態であると解される。 ここで、引用発明1の「制御部35」では、「接触通信部31(例えば、そこから電気信号を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能と、非接触通信部32(例えば、そこから磁界を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能との両方がオンになっており、接触通信部31と非接触通信部32のうち携帯可能電子装置からの応答があった方の通信部を用いる」ものであるところ、上記「接触通信部31(例えば、そこから電気信号を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能と、非接触通信部32(例えば、そこから磁界を介して供給される電源)により携帯可能電子装置を活性化させる機能との両方がオン」になっている状態とは、携帯可能電子装置が接触通信部31又は非接触通信部32に接触または近接し、電源を携帯可能電子装置に供給することを条件として当該携帯可能電子装置を活性化することにより携帯可能電子装置から情報(応答)を読み取ることが可能な状態であるといえる。 また、上記オ.を参酌すれば、「制御部35」は、接触通信部31又は非接触通信部32により読み取られた情報を処理するものといえる。 よって、引用発明1の「制御部35」は、本願発明1の「前記情報処理部」が備える「前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれを同時に、前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な待ち受け状態に維持しつつ、前記接触型の読み取り部により読み取られた情報又前記非接触型の読み取り部により読み取られた情報を処理する」との機能を有していると認められる。 ク.引用発明1の「接触通信部31と非接触通信部32のうち携帯可能電子装置からの応答があった方の通信部を用いて、携帯可能電子装置の内部に記憶された情報を読み出すことおよび書き換えること」とは、本願発明1の「前者の情報である場合には第1後続処理を、後者の情報である場合には第2後続処理を、それぞれ実行」することに相当する。 ケ.上記アないしクによると、本願発明1と引用発明1とは、以下の点において一致し、また、相違する。 【一致点】 「決済以外の用途において適用可能な情報処理端末であって、 情報記憶媒体から情報を読み取り可能な接触型の読み取り部と、 前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な非接触型の読み取り部と、 前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれにより読み取られた情報を処理する情報処理部とを、備え、 前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部は、決済に関する情報の入力がなされていない前記情報記憶媒体から読み取り対象の情報を読み取り可能であり、 前記情報処理部は、前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれを同時に、前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な待ち受け状態に維持しつつ、前記接触型の読み取り部により読み取られた情報又前記非接触型の読み取り部により読み取られた情報を処理するものであって、前者の情報である場合には第1後続処理を、後者の情報である場合には第2後続処理を、それぞれ実行する、情報処理端末。」 【相違点】 ・相違点1 本願発明1の「前記情報記憶媒体」は、「処理可能な種別として、個人ごとに固有の証明用情報が記憶された第1種別」を含むものであるのに対して、引用発明1の「ICを内蔵したパスポートや免許証」には、当該事項が特定されていない点。 ・相違点2 本願発明1の「前記第1種別に応じた前記第1後続処理及び前記第1種別に応じた前記第2後続処理」は、「それぞれ、コード入力に基づく認証が成功した場合に行う所定情報読み取り処理と、前記所定情報読み取り処理がエラーとなった場合に別の読み取り方式にユーザを誘導する誘導処理を含む」ものであるのに対して、引用発明1では当該事項が特定されていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 「接触型の読み取り部」と「非接触型の読み取り部」とを備えた情報処理端末において、「前記所定情報読み取り処理がエラーとなった場合に別の読み取り方式にユーザを誘導する誘導処理」を行うことは、引用文献2ないし3に記載も示唆もされておらず、また、このように構成することが、本願出願時において周知技術であったともいえない。 したがって、本願発明1は、引用発明1と同一であるとはいえず、また、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することがでたものとはいえない。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明1と同一であるとはいえず、また、引用発明1及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 3.本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6は、本願発明1を引用するものであって、本願発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記2に示した理由と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 第5.原査定の理由について 1.引用文献の記載事項 (1)引用文献A 引用文献Aには、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。 「決済端末1において(段落0019)、 磁気カード決済用スロット11、接触型ICカード決済用スロット12、及び、非接触型決済用のタッチ領域を有する面13を備え(段落0022ないし0023、図1)、 決済端末1は、磁気カード決済、接触型ICカード決済及び、非接触型決済を、同時に待ち受け可能な状態にしておくことができ(段落0060)、 店員による決済方式の切り替え処理を不要とし(段落0061)、 非接触型決済を用いるのであれば、カードを所定の箇所にタッチし、接触型ICカード決済であれば、ICカードをICカード決済用のスロットに挿入することで、決済処理を行うこと(段落0028、0033、0061)」 (2)引用文献B 引用文献Bには、次の事項が記載されていると認められる。 「決済端末100において、メモリ18に保持されたプログラムを実行することで、各種機能を実現する第1CPU11を備え、第1CPU11は、クレジットカード決済及び電子マネー決済に関する処理を行うこと(段落0035ないし0037、図7)」 (3)引用文献C 引用文献Cには、「アプリケーションIDを読み出してIDカードの種別を判断すること(請求項1)」が記載されていると認められる。 (4)引用文献D 引用文献Dには、「ICカードにおける非接触通信として、4つ以上の通信方式があること(段落0020、図1)」が記載されていると認められる。 (5)引用文献E 引用文献Eには、次の事項が記載されていると認められる。 「携帯型情報処理装置1において、支払方法選択画面を表示部に表示する処理を行い(段落0151)、 決済処理にエラーが発生した場合、エラーメッセージなどを表示した後で支払方法選択画面の表示を行うこと(段落0153)」 2.本願発明1について (1)対比 ア.引用発明Aの「決済端末1」は、決済等に係る情報処理を行う端末といえるから、本願発明1の「情報処理端末」に相当する。 イ.引用発明Aの「接触型ICカード決済用スロット12」は、本願発明1の「情報記憶媒体から情報を読み取り可能な接触型の読み取り部」に相当する。 ウ.引用発明Aの「非接触型決済用のタッチ領域を有する面13」は、非接触型決済に対応した情報記憶媒体から、非接触で情報を読み取るためのものといえるから、本願発明1の「前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な非接触型の読み取り部」に相当する。 エ.上記イ、ウを踏まえると、引用発明Aの「決済端末1」の「磁気カード決済、接触型ICカード決済及び、非接触型決済を、同時に待ち受け可能な状態にしておく」ことは、「接触型ICカード決済用スロット12」又は「非接触型決済用のタッチ領域を有する面13」のいずれかを用いて読み取られた情報を処理するためのものといえることからすると、引用発明Aは、「前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれを同時に、前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な待ち受け状態に維持しつつ、前記接触型の読み取り部により読み取られた情報又は前記非接触型の読み取り部により読み取られた情報を処理する」ための構成を備えているといえる。 オ.引用発明Aの「接触型ICカード決済」は、「接触型ICカード決済用スロット12」によって読み取られた接触型ICカードの情報を処理するものであり、また、引用発明Aの「非接触型決済」は、「非接触型決済用のタッチ領域を有する面13」によって読み取られた非接触決済に対応した情報記憶媒体の情報を処理するものと解される。そして、引用発明Aにおいて、「磁気カード決済、接触型ICカード決済及び、非接触型決済を、同時に待ち受け可能な状態にしておく」ものであることを踏まえると、引用発明Aは、「接触型ICカード」の情報が読み取られた場合には当該情報を処理し、「非接触決済」に対応した情報記憶媒体の情報が読み取られた場合には、当該情報を処理するものといえる。 そうすると、引用発明Aの「接触型ICカード」の情報が読み取られた場合には当該情報を処理し、「非接触決済」に対応した情報記録媒体の情報が読み取られた場合には、当該情報を処理することは、本願発明1の「前者の情報である場合には第1後続処理を、後者の情報である場合には第2後続処理を、それぞれ実行」することに相当する。 カ.上記アないしオによると、本願発明1と引用発明Aとは、以下の点において一致し、また、相違する。 【一致点】 「情報処理端末であって、 情報記憶媒体から情報を読み取り可能な接触型の読み取り部と、 前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な非接触型の読み取り部とを、備え、 前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部は、前記情報記憶媒体から読み取り対象の情報を読み取り可能であり、 前記情報処理部は、前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれを同時に、前記情報記憶媒体から情報を読み取り可能な待ち受け状態に維持しつつ、前記接触型の読み取り部により読み取られた情報又前記非接触型の読み取り部により読み取られた情報を処理するものであって、前者の情報である場合には第1後続処理を、後者の情報である場合には第2後続処理を、それぞれ実行する、情報処理端末。」 【相違点】 ・相違点ア 本願発明1の「情報処理端末」は、「決済以外の用途において適用可能」であり、また、同「情報記憶媒体」は、「決済に関する情報の入力がなされていない」ものであるのに対して、引用発明Aは、当該事項が特定されていない点。 ・相違点イ 本願発明1は、「前記接触型の読み取り部及び前記非接触型の読み取り部のそれぞれにより読み取られた情報を処理する情報処理部」を備えるのに対して、引用発明Aは、当該事項が特定されていない点。 ・相違点ウ 本願発明1の「前記情報記憶媒体」は、「処理可能な種別として、個人ごとに固有の証明用情報が記憶された第1種別」を含むものであるのに対して、引用発明Aの「接触型ICカード」又は「非接触決済」に対応した情報記憶媒体は、当該事項が特定されていない点。 ・相違点エ 本願発明1の「前記第1種別に応じた前記第1後続処理及び前記第1種別に応じた前記第2後続処理」は、「それぞれ、コード入力に基づく認証が成功した場合に行う所定情報読み取り処理と、前記所定情報読み取り処理がエラーとなった場合に別の読み取り方式にユーザを誘導する誘導処理を含む」ものであるのに対して、引用発明Aでは当該事項が特定されていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、上記相違点エについて先に検討する。 「接触型の読み取り部」と「非接触型の読み取り部」とを備えた情報処理端末において、「前記所定情報読み取り処理がエラーとなった場合に別の読み取り方式にユーザを誘導する誘導処理」を行うことは、引用文献BないしEに記載も示唆もされておらず、また、このように構成することが、本願出願前において周知技術であったともいえない。 したがって、上記相違点エに係る本願発明1の構成は、引用発明A及び引用文献BないしEに記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明A及び引用文献BないしEに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 3.本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6は、本願発明1を引用するものであって、本願発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記2に示した理由と同様の理由により、引用発明A及び引用文献BないしEに記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 4.原査定についてのまとめ 上記2、3で説示したとおり、本願発明1ないし6は、拒絶査定において引用された引用文献AないしEに基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第6.まとめ 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-011666

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