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特許拒絶査定不服審判

2022-007320

エッチング方法

審判番号
2022-007320
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-523511外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月16日
審決日
2023年03月22日
公報発行日
2023年05月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-523511「エッチング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月13日国際公開、WO2018/225661、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 21項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、2018年(平成30年)6月1日(優先権主張 平成29年6月8日)を国際出願日とする出願であって、令和3年7月8日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月13日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和4年2月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年5月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の理由の概要

原査定(令和4年2月21日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1、2、6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、以下の引用文献1、6に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

また、本願の請求項3~5に係る発明は、以下の引用文献1~6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1.特開平05-247673号公報

2.特開昭57-049235号公報

3.特開昭55-138834号公報

4.特開2000-208488号公報

5.特開平05-152255号公報

6.特開2017-050529号公報

第3 本願発明

本願請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」という。)は、令和4年5月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
積層されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層とを有する積層膜を備える被処理体を、炭素、臭素、及びフッ素からなるハロゲン化炭素化合物を含有するエッチングガスにより処理して、前記シリコン酸化物層と前記シリコン窒化物層との両方をエッチングするエッチング工程を備え、
前記ハロゲン化炭素化合物がジブロモジフルオロメタンであり、
前記エッチングガスが酸素ガスを含有せず、
前記エッチング工程においては、前記エッチングガスをプラズマ化して得られるプラズマガスを用いてエッチングし、
前記シリコン酸化物層のエッチング速度に対する前記シリコン窒化物層のエッチング速度の比を0.9以上1.2未満とするエッチング方法。」

なお、本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平05-247673号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下、同じ。)。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば半導体素子における酸化膜および窒化膜のエッチング方法に関するものである。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0007】この発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、酸化膜や窒化膜を基板に対して高選択比でエッチングすることができ、異方性が良好であり、さらにマイクロローディング効果、すなわちエッチング径が小さくなるとエッチング深さが減少する効果を抑制することができる酸化物部分および窒化物部分を含む被処理体のエッチング方法を提供することにある。」
「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明の酸化物部分又は窒化物部分を有する被処理体のエッチング方法は、処理容器内に酸化物部分又は窒化物部分を有する被処理体を装入する工程と、処理容器内においてハロゲン元素を含むガスのプラズマにより被処理体の酸化物部分又は窒化物部分をエッチングする工程とを具備し、前記プラズマの雰囲気に酸化数4未満の炭素(C)と酸素(O)とを含むガスを存在させることを特徴とするものである。」

「【0011】ハロゲン元素を含むガスとしては、CHF3、CBrF3のようなフレオンガス、SF6、NF3及びF2など、フッ素を含むガスを好適に用いることができる。また、同様に、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)など他のハロゲン元素を含むガスを用いることもできる。」

「【0035】また、エッチング加工する膜としては、SiO2等の酸化膜単独のみならず、SiN膜等の窒化膜単独にも適用でき、SiO2とSiNとの積層膜、さらにSiON膜にも適用し得る。さらに、Si以外の酸化膜および窒化膜についても適用可能であり、例えばTa2O5、TiO2、TiNに適用可能である。」

(2)上記(1)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ハロゲン元素を含むガスのプラズマにより被処理体の酸化物部分又は窒化物部分をエッチングする工程を具備し、
前記プラズマの雰囲気に酸化数4未満の炭素(C)と酸素(O)とを含むガスを存在させ、
ハロゲン元素を含むガスとしてCBrF3を好適に用いることができ、
被処理体は、SiO2とSiNとの積層膜についても適用可能である、エッチング方法。」

2 引用文献2について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開昭57-049235号公報)には、次の事項が記載されている

ア 「この既知の方法では、Si3N4がSiO2よりもごく僅かしか速い速度でエツチ(腐蝕)され、除去されないことが欠点である。従つてこの方法を使用し、Si基板にSiO2層を保護層として設け、Si3N4層をマスクを用いてエツチする場合にはSiO2層を比較的厚くする必要がある。この理由によつてこの既知の方法はLOCOS法によつてフィールド酸化物を堆積させたSi3N4酸化マスクを製造する如き実際上の用途には適さない。本発明はこのような欠点を解決することをその目的とする。
この目的を達成するため弗素以外のハロゲンを含むガス化合物の1ないし15体積%を混合ガスに加える。弗素以外のハロゲンを含有する少量の化合物を加えることによりSi3N4はSiO2よりも少なくとも5倍の速さでエツチ(腐蝕)され除去される。このためSi基板上に設けたSi3N4層に対しSiO2の保護層を持つたマスクをエツチングするのに本発明を使用すると、保護層のSiO2層を比較的に薄くすることができる。」(2ページ右上欄11行~左下欄9行)
イ 「実施例II
第6図はCF4と5体積%のO2を有し、さらに図の関数として示した量のCF3Brをこの混合ガスに加えたガス中で約65Paの圧力で形成したプラズマ組成によつてSi3N4とSiO2がエツチされる速度を示すものである。CF3Brを添加しない場合には、Si3N4はSiO2よりも約2倍の速さでエツチされる。少量のCF3Br(2ないし8体積%)を加えるとこの比は約10倍となる。10体積%以上のより多い量のCF3Brを加えるとエツチング速度の比は再び減少し、とくにSi3N4のエツチング速度は低い値に減少する。CF3Brの代わりに他のBr化合物、例えばCF2Br2,HBr,Br2,BrF3,BrF5等をCF4とO2との混合物に加えてもほぼ同等の結果が得られる。しかしながらCF3Brは取扱いの容易の点、および腐蝕性の低いこと、並びに有毒でない点で最も好適である。」(3ページ右下欄7行~4ページ左上欄3行)
ウ 「
[図:0001396944000001.jpg]
」

3 引用文献3について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開昭55-138834号公報)には、次の事項が記載されている。

ア 「本発明の目的は,したがって,SiO2下地の上に被着されたSiなどの,一般に弗化物が揮発性の物質の層をアンダカットなしに選択的にエッチングすることを可能にするドライ・エッチング方法を提案することである。」(3ページ左上欄12~16行)

イ 「CF4,C2F6ガスとBr2,I2ガスの混合ガスと同様な効果を示すことが期待されるガスとして,CBrF3,CBr2F2,CIF3,CI2F2のように,弗化炭素CnFmの弗素の一部がBrもしくはIに置換された形の分子構造を有するガスが挙げられる。」(4ページ左上欄4~8行)

ウ 「第4図は,エッチング・テーブル材として石英ガラスを使用し,CBrF3の流量15cc/min,高周波電力50Wで得られた単結晶Si,多結晶シリコン,Si3N4,ホトレジストAZ1350J,およびSiO2についてのCBrF3ガス圧とエッチ速度の関係を,第5図はガス圧を0.03Torrに固定し200mmφの電極を使用し,同じCBrF3流量で,第4図と同じ物質について,高周波電力とエッチ速度の関係を示す。図から明らかな通り,50W(0.16W/cm2)のような比較的小さな高周波電力においても,Siは700Å/min以上のエッチ速度を示した。また,SiのSiO2に対するエッチ速度比はSi:SiO2=6:1以上であった。さらに,Si3N4も能率よくエッチングされ,Si3N4:SiO2=4:1以上のエッチ速度比が得られた。」(4ページ左上欄下から2行~右上欄14行)

「
[図:0001396944000002.jpg]
」
「
[図:0001396944000003.jpg]
」

4 引用文献4について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2000-208488号公報)には、次の事項が記載されている

「【0027】上記の炭化水素もしくは炭化水素の臭素化物の代わりに、各種の置換基を有する誘導体を使用することも可能である。炭化水素の誘導体は、その分子中に臭素原子を含まない限り、他の臭素原子を含むガスと組み合わせて使用する。炭化水素の臭素化物の誘導体として、例えば、酸素やフッ素を含んだ臭化カルボニル(COBr2、沸点-8~-6℃) 、ジブロモジフルオロメタン(CBr2F2、沸点24.5℃) 等も下地や被エッチング物質に適する範囲で使用可能である。これらの炭化水素の臭素化物の誘導体は、CBr2 結合を分子内に有するため、それ単独で使用してBr /C比の高い堆積物を生成する事が可能である。しかしもちろん、他の物質と組み合わせて堆積物生成反応を起こさせることも可能である。特に臭化カルボニルは、酸素原子を離脱して>CBr2 を生成することにより、高い反応性を得ることができる。」

「【0040】また、上記実施例の他に、シリコン酸化膜エッチングに対して本発明を適用することもできる。この場合は、エッチング装置として平行平板型反応性イオンエッチング装置(RIE)を用いた。ガス系としては、従来技術のCF4/CHF3/Ar /CO=10/15/285/100sccm、に対して、本発明は、CF4/CHF3/Ar /CO/CH2=CHBr =20/15/285/150/30sccmを用いる。この場合、主たるエッチング種は、CF4、CHF3から発生したFおよびCFx ラジカルである。一般的に酸化膜エッチングの反応は、
Si O2+CF4 → Si F4+CO2
で表される。このように、Si はフッ素と結合し、酸素はカーボンと結合することによってエッチング反応が進行する。本実施例の酸化膜エッチングガス雰囲気は、メインエッチングガスであるCF4およびCHF3と、CBrxを生成するための、アルケン類炭化水素の臭素化物であるXとを含む。」

5 引用文献5について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平05-152255号公報)には、次の事項が記載されている

「【0015】本願の第3の発明にかかるドライエッチング方法は、被エッチング基板の温度を室温以下に制御し、一般式CxBryFz(ただしx,y,zは原子数を示す自然数であり、x≧2,y+z≦2xの条件を満足する。)で表されるブロモフルオロカーボン化合物を含むエッチング・ガスを用いて酸化シリコン系材料層をエッチングすることを特徴とする。」

「【0031】実施例2
本実施例は、本願の第2の発明をコンタクト・ホール加工に適用し、ブロモペンタフルオロエタン(C2BrF5)を用いてSiO2層間絶縁膜をエッチングした例である。本実施例で使用したウェハは、図2(a)に示したものと同じである。このウェハをマグネトロンRIE装置にセットし、一例として下記の条件でSiO 2 層間絶縁膜13のエッチングを行った。」

「【0044】さらに、被エッチング材料層は上述のSiO2に限られるものではなく、PSG,BSG,BPSG,AsSG,AsPSG,AsBSG,SiN等であっても良い。」

6 引用文献6について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2017-050529号公報)には、次の事項が記載されている

「【0004】
そこで、非特許文献2に示されるように、p-SiとSiOxからなる積層膜に代えて、窒化シリコン(以下SiNと呼ぶ)とSiOxからなる積層膜を用いたNANDフラッシュメモリも検討されている。その場合の作製方法の一例では、図1(a)のように、基板4の上にSiN層1とSiOx層2からなる交互積層膜を予め作製し、図1(b)のように、該層に対して垂直方向に貫通孔5をエッチング加工により作製する。その後、図示していないが、SiN層を除去し、ゲートを形成する工程などを行う。」
「【0012】
ところで、特許文献2の実施例からもわかるとおり、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、添加ガス、及び不活性ガスからなるエッチングガスでは、SiNのエッチング速度がSiOxのエッチング速度に対して1.2倍程度大きい。この特性は、前述のCF系ガスのみを用いた場合に生じるSiN層でのエッチング速度の低下によるエッチング形状異常を防ぐ点では効果的であるが、アスペクト比20を超えるような極めて大きなアスペクト比を持つ貫通孔を形成するための積層膜の深掘りエッチングに対しては、新たなエッチング形状異常の原因となりうる。というのも、本発明者らが十分なエッチング速度とイオンの直進性を得る為、相対的に大きな電力およびイオンエネルギーを与えて実施したところ、該エッチングガスの分解が過剰に進行したためか、SiN層のエッチングがSiOx層のエッチングに比べて過剰に大きくなり、その比は最大で2.0倍以上に達し、異方性エッチングに加えて、SiN層の等方的なエッチングが進行してしまうことがわかった。
【0013】
SiNを構成するSi-N結合は、SiOxを構成するSi-O結合に比べて結合エネルギーが弱いことが知られている。そのため、SiOxはバイアス電圧の印加によりイオンエネルギーが高まった状態でなければ、エッチングはほとんど進行しない。一方、SiNは、H原子とF原子を含むエッチングガスを用いてエッチングした場合、バイアス電圧の印加がなくとも比較的容易にエッチングが進行する。そのため、前述の高アスペクト比のエッチングを実施した際にSiNが選択的に水平方向にも等方的にエッチングされてしまったものと考えられる。また、構造上、SiOx層上にSiN層が存在する場合があり、そのような場合には、該層に対して垂直方向へのSiOxエッチング速度よりも、むしろ該層に対して水平方向のSiNエッチング速度が大きくなる。その結果、図2に示すように、SiN層の水平方向のSiNエッチングが過剰に発生する。
【0014】
この水平方向のSiNエッチングが過剰に発生するメカニズムは以下のように考察される。通常のエッチングプロセス中には、ホール内にSiNを異方的にも等方的にもエッチングするポテンシャルを持った活性種が常に存在し、そこにバイアス電圧によって加速されたイオンが加わることにより等方的なエッチングに加えて異方的なエッチングが優勢になる。しかし、下層のSiOx層が露出した場合には、該層に対して垂直方向にSiNが存在していないため、前述のSiNに対する活性種は、異方的なエッチングに寄与することができず、全て水平方向への等方的なエッチングに寄与することになると考えられる。
そのため、SiOx層を貫通して下層のSiN層が露出している場合に比べて、SiN層の水平方向への等方的なエッチングが加速的に進行してしまったものと考えられる。
【0015】
上記のSiN層の水平方向への過剰なエッチングが発生した場合、積層構造に予期せぬ空隙を形成することになり構造の崩壊につながる。そのため、SiNのエッチング速度に対するSiOxのエッチング速度比(SiN/SiOx比)を低下させ、SiN層の水平方向への過剰なエッチングを抑制する必要があった。具体的には、SiNのエッチング速度に対するSiOxのエッチング速度比(SiN/SiOx比)を0.90~1.5の間で任意に制御するドライエッチング方法が望まれていた。」

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「積層膜」の「SiO2」と「SiN」とは、それぞれ、SiO2層とSiN層であるといえるから、引用発明の「SiO2」、「SiN」、「SiO2とSiNとの積層膜」は、それぞれ、本願発明1の「シリコン酸化物層」、「シリコン窒化物層」、「積層されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層とを有する積層膜」に相当し、引用発明の「SiO2とSiNとの積層膜を有する被処理体」は、本願発明1の「積層されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層とを有する積層膜を備える被処理体」に相当する。

イ 引用発明の「ハロゲン元素を含むガス」は、「CBrF3を好適に用いることができる」から、炭素、臭素、及びフッ素からなるハロゲン化炭素化合物であるといえる。

したがって、引用発明の「ハロゲン元素を含むガス」は、本願発明1の「炭素、臭素、及びフッ素からなるハロゲン化炭素化合物を含有するエッチングガス」に相当する。

ウ 引用発明は、「ハロゲン元素を含むガスのプラズマにより被処理体の酸化物部分又は窒化物部分をエッチングする」ものであり、「被処理体は、SiO2とSiNとの積層膜についても適用可能である」から、SiO2とSiNとの両方をエッチングするものである。

そうすると、上記ア及びイの検討を参酌すれば、引用発明の「ハロゲン元素を含むガスのプラズマにより被処理体の酸化物部分又は窒化物部分をエッチングする工程」は、本願発明1の「積層されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層とを有する積層膜を備える被処理体を、炭素、臭素、及びフッ素からなるハロゲン化炭素化合物を含有するエッチングガスにより処理して、前記シリコン酸化物層と前記シリコン窒化物層との両方をエッチングするエッチング工程」に相当する。

エ 引用発明においては、エッチングガスとして「ハロゲン元素を含むガス」の他に「前記プラズマの雰囲気に酸化数4未満の炭素(C)と酸素(O)とを含むガスを存在させ」るものであるところ、引用文献1には、エッチングガスとして、酸素ガスを含ませることは記載されていない。

したがって、引用発明と本願発明1とは、「前記エッチングガスが酸素ガスを含有せず」との点で一致する。

オ 引用発明の「ハロゲン元素を含むガスのプラズマによりSiO2とSiNとの積層膜を有する被処理体をエッチングする工程」は、エッチングガスをプラズマ化して得られるプラズマガスを用いてエッチングしているといえるから、本願発明1の「前記エッチング工程においては、前記エッチングガスをプラズマ化して得られるプラズマガスを用いてエッチングする」に相当する。

カ 以上から、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>

「積層されたシリコン酸化物層とシリコン窒化物層とを有する積層膜を備える被処理体を、炭素、臭素、及びフッ素からなるハロゲン化炭素化合物を含有するエッチングガスにより処理して、前記シリコン酸化物層と前記シリコン窒化物層との両方をエッチングするエッチング工程を備え、
前記エッチングガスが酸素ガスを含有せず、
前記エッチング工程においては、前記エッチングガスをプラズマ化して得られるプラズマガスを用いてエッチングするエッチング方法。」

<相違点>

相違点1:「ハロゲン化炭素化合物」について、本願発明1は、「ジブロモジフルオロメタン」であるのに対し、引用発明は、「CBrF3」である点。
相違点2:本願発明1は、「前記シリコン酸化物層のエッチング速度に対する前記シリコン窒化物層のエッチング速度の比を0.9以上1.2未満」とするのに対し、引用発明は、そのような構成を備えているか不明である点。

(2)相違点についての判断

ア 相違点1について

(ア)引用文献1の【0007】(上記第4 1(1))の記載によれば、引用発明が解決しようとする課題は、酸化膜や窒化膜を基板に対して高選択比でエッチングすることができ、異方性が良好である、酸化物部分および窒化物部分を含む被処理体のエッチング方法を提供することであり、上記「異方性が良好である」ということは、酸化膜(SiO2)と窒化膜(SiN)のエッチング速度を同等にしようとするものであるといえる。

(イ)引用文献2の上記第4 2(1)イの実施例IIには、CF4と5体積%のO2を有し、CF3Brをこの混合ガスに加えたガス中で約65Paの圧力で形成したプラズマ組成によってSi3N4とSiO2がエッチされること、及び、CF3Brの代わりにCF2Br2(ジブロモジフルオロメタン)をCF4とO2との混合物に加えてもほぼ同等の結果が得られることが記載されている。

しかし、引用文献2の上記第4 2(1)アには、既知の方法では、Si3N4がSiO2よりもごく僅かしか速い速度でエッチ(腐蝕)され、除去されないことが欠点であり、本発明はこのような欠点を解決することをその目的とすること、この目的を達成するため弗素以外のハロゲンを含むガス化合物の1ないし15体積%を混合ガスに加えること、及び、弗素以外のハロゲンを含有する少量の化合物を加えることによりSi3N4はSiO2よりも少なくとも5倍の速さでエッチ(腐蝕)され除去されることが記載されている。

そうすると、引用文献2に記載された発明は、Si3N4をSiO2よりも速い速度でエッチングするものであり、引用発明のように、SiO2とSiNのエッチング速度を同等にしようとするものではない。

(ウ)引用文献3の上記第4 3(1)イには、CF4、C2F6ガスとBr2、I2ガスの混合ガスと同様な効果を示すことが期待されるガスとして、CBrF3、CBr2F2(ジブロモジフルオロメタン)が挙げられることが記載されている。

しかし、引用文献3の上記第4 3(1)ウには、エッチング・テーブル材として石英ガラスを使用し、CBrF3の流量15cc/min、高周波電力50WでSi3N4及びSiO2についてエッチングし、又は、ガス圧を0.03Torrに固定し200mmφの電極を使用し、同じCBrF3流量で、同じ物質についてエッチングすると、Si3N4:SiO2=4:1以上のエッチ速度比が得られたことが記載されている。

そうすると、引用文献3に記載された発明も、Si3N4をSiO2よりも速い速度でエッチングするものであり、引用発明のように、SiO2とSiNのエッチング速度を同等にしようとするものではない。

(エ)引用文献4(上記第4 4(1))の【0027】には、炭化水素の臭素化物の誘導体として、ジブロモジフルオロメタン(CBr2F2 ) も下地や被エッチング物質に適する範囲で使用可能であること、【0040】には、シリコン酸化膜エッチングに対して適用できることが記載されている。

しかし、引用文献4には、ジブロモジフルオロメタン(CBr2F2 )をSiO2とSiNとの積層膜のエッチングに適用できることは記載されていない。

(オ)上記(イ)及び(ウ)によれば、引用文献2、3には、エッチングガスとしてCBrF3とCBr2F2(ジブロモジフルオロメタン)とは同様の効果が得られることは記載されているものの、引用文献2、3に記載された発明は、いずれも、Si3N4をSiO2よりも速い速度でエッチングするものであり、引用発明のように、SiO2とSiNのエッチング速度を同等にしようとするものではない。

また、上記(エ)によれば、引用文献4には、ジブロモジフルオロメタン(CBr2F2 )をシリコン酸化膜のエッチングに適用できることは記載されているものの、SiO2とSiNとの積層膜のエッチングに適用できることは記載されていない。

したがって、引用発明に引用文献2~4に記載された発明を適用する動機付けがあるとはいえない。

(カ)また、引用文献5、6には、相違点1に係る本願発明1の構成については、何ら記載も示唆もされていない。

(キ)以上のとおりであるから、引用発明に引用発明2~引用文献6に記載された発明を適用し、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

イ 小括

よって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2~6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

2 本願発明2、3について

本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明であり、いずれも上記相違点1に係る本願発明1の構成を有しているから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2、3は、引用文献1及び引用文献2~6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

第6 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1~3は、いずれも上記相違点1に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記第5で検討したとおり、本願発明1~3は、引用文献1及び引用文献2~6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないから、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-007320

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