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特許拒絶査定不服審判

2022-006846

有用代謝産物の生産方法及び代謝産物生産条件のスクリーニング方法

審判番号
2022-006846
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-189266外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月09日
審決日
2023年09月05日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C12P) / P18 .56 -Z (C12P)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-189266「有用代謝産物の生産方法及び代謝産物生産条件のスクリーニング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月12日出願公開、特開2018-57371〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)9月29日(優先権主張 平成28年9月29日)を出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 6月 8日付け:拒絶理由通知書 令和3年 10月18日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年 2月 1日付け:拒絶査定 令和4年 5月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和4年 6月 7日 :手続補正書(請求の理由)の提出 第2 令和4年5月9日付け手続補正書についての補正却下の決定 [結論] 令和4年5月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正 令和4年5月9日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。下線は補正箇所である。)は、令和3年10月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に、 (補正前) 「[請求項1] 緑色光または青色光による光刺激を付与しながら放線菌を培養する光刺激培養工程を含むことを特徴とする有用代謝産物の生産方法。」とあったものを、 (補正後) 「[請求項1] 緑色LEDまたは青色LEDによる光刺激を付与しながら放線菌を培養する光刺激培養工程、および、 前記光刺激培養工程の前又は後に、暗所で前記放線菌を培養する暗所培養工程を含むことを特徴とする有用代謝産物の生産方法。」とする補正事項を含むものである。 2.本件補正の目的 本件補正により、補正前の請求項1に記載されていた「緑色光または青色光による光刺激」が「緑色LEDまたは青色LEDによる光刺激」に限定され、補正前の請求項1に記載されていた「有用代謝産物の生産方法」が、「前記光刺激培養工程の前又は後に、暗所で前記放線菌を培養する暗所培養工程」を含むものに限定されたから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当すると認められる。 そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)(以下、「独立特許要件」という。)について、以下で検討する。 3.独立特許要件の検討 (1)引用文献の記載事項 令和3年6月8日付け拒絶理由通知書及び令和4年2月1日付け拒絶査定で引用文献2として引用されている、本願の優先日(平成28年(2016年)9月29日)前に頒布されたことが明らかな文献である、特開昭60-133874号公報(以下では、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。また、本願の優先日当時の技術常識を示す、周知文献1~3には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 ア.引用例(特開昭60-133874号公報) (ア―1) 「1.抗生物質生産性微生物を培養し、抗生物質を生産する方法において、該培養を少なくとも280nmおよびそれ以上の波長域の光線を実質的に含有する光線の照射下に行なうことを特徴とする抗生物質生産性微生物の培養方法。 ・・・ 7.該光線が、人工光線及び/又は自然光線である特許請求の範囲第1~6項記載の方法。 8.該微生物が菌類、および放線菌類である特許請求の範囲第1~7項記載の方法。」 (特許請求の範囲の請求項1~8) (ア―2) 「本発明は抗生物質生産性微生物の培養方法に関し、さらに詳しくは、抗生物質生産性微生物を特定の波長領域の光線の照射下に培養することによつて該抗生物質の生産性を向上させる抗生物質生産性微生物の培養方法及びそれに使用する培養資材に関する。 本発明者は各種有用植物の生育、有用植物に対する病害糸状菌類の繁殖の防除、藻類植物の培養等において、光質条件が如何に影響するかを研究している過程において、全く偶然的に、抗生物質生産性微生物を少くとも280nmおよびそれ以上の光線を実質的に含有する特定の光線の積極的照射下に培養すると、抗生物質の生産性が大いに向上することをみい出し本発明を完成するに至つた。」(2頁左上欄12行~右上欄6行) (ア―3) 「[II]放線菌類 (A) ストレフトマイセス属(Streptomyces) ストレフトマイセス・クラブリゲルス(S.clavuligerus)(ATCC 27064)<Cephamycin C> ・・・ ストレフトマイセス・グリセウス(S.griseus)(ATCC 12475、15395、23345;IFO 13304)<Indolmycin、Cephamycin、Candicidin、Streptomycin、Cycloheximite、ChromomycinA3> ・・・ ストレフトマイセス・カナマイセチユウス(S.kanamyceticus)(ATCC 12853、IFO 13414)<KanamycinA、KanamycinB> 」(3頁左上欄下から6行~右上欄12行) (ア―4) 「なお、照射形式としては、続けて照射を行う連続照射法、照射と暗黒とを交互にくり返す間欠照射法、およびこれらの組み合せ法等があり、適宜選択することが出来る。」(8頁右上欄1行~4行) (アー5) 「本発明に使用し得る人工光源として、上記した特定波長域の光線を放射する光源であれば、いづれのものでも使用できる。そして、かかる光源としては例えば、螢光灯、水銀灯、陽光ランプ、一般電球、投光用電球、特殊電球(東芝ランプカタログより、東芝電材株式会社)等がある。」(9頁右上欄下から2行~左下欄5行) (アー6) 「実施例5~7、比較例2 ストレプトマイセス・カナマイティカス(I.F.O13414からの分譲株)の実験室ストックを2.5L容量のジャー・ファーメンタ-でバッチ式に培養した。・・・空気は羽根車の下から導入し、培養容器の周囲に縦方向に位置した四つのバッフルにより、混合を助けるようにして、暗黒下36時間培養を続けた。 その後、菌体が対数増殖中期に至った事を確認したので予めパイレックスガラス製の発酵槽壁部の外側全面に、光質フィルターをはりつけ、発酵槽の片側20cmの距離に可視光ランプ(東芝螢光ランプPL-40SW;40W)2本と、他方の片側40cmの距離に近紫外線ランプ(東芝ブラックライト螢光ランプPL-40SBLB;40W)1本をそれぞれ設置しておいた光源を点灯し、60時間連続照射培養した。 培養後・・・透明なコハク色の培養液を得た。 これらの液(各1)をカチオン型交換樹脂(Amberlite IRC-50)のカラムに20分間で流下させ、カナマイシンを吸着させた。・・・カナマイシンA-塩酸塩の減圧乾燥後の重量を表-3に示した。 [図:0001403179000001.jpg] 生産指数:比較例(暗黒区)の生産量を100とした。」 (10頁左下欄下から9行~11頁右上欄2行) (ア―7) 「参考例 前記実施例及び比較例に用いた光質フィルターNo.1~7は次の様にして調整した。 フィルターNo.1: ポリ塩化ビニル100重性部、ジオクチルフタレート(可塑剤)45重量部、ジブチル錫マレート(熱安定剤)1.5重量部、ステアリン酸亜鉛(熱安定剤)1.0重量部、ステアリン酸(滑剤)0.1重量部、及びソルビタンモノラウレート(防曇剤)1.0重量部を相互に充分に混合し、その混合物をエクストルーダーにより200℃で溶融押出し、厚さ0.075mmの透明なフィルターを得た。これをフィルターNo.1と呼ぶ。 フィルターNo.2: 上記フィルターNo.1の配合において、さらに、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(紫外線吸収剤)1.6重量部を配合する以外、上記フィルターNo.1におけると同様にして、厚さ0.075mmのフィルターを得た。これをフィルターNo.2と呼ぶ。 フィルターNo.3: 上記フィルターNo.2において、紫外線吸収剤である2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン1.6重量部を2-(2’-ヒドロキシ-3′-メチル-5’-tertブチルフェニル)ペンゾトリアソール1.5重量部に変更する以外、上記フィルターNo.2におけると同様にして厚さ0.1nmのフィルターを得た。このフィルターをNo.3と呼ぶ。 フィルターNo.4: 上記フィルターNo.3に、市販の黄色着色セロファン(厚さ0.018mm)を2枚重ね合せて黄色着色フィルターを得た。これをフィルターNo.4と呼ぶ。 フィルターNo.5: 上記フィルターNo.3に、市販の青色着色セロファン(厚さ0.018mm)を2枚重ね合せて青色着色フィルターを得た。これをフィルターNo.5と呼ぶ。 フィルターNo.6: 上記フィルターNo.3に、市販の緑色セロファン(厚さ0.018mm)を2枚重ね合せて緑色着色フィルターを得た。これをフィルターNo.6と呼ぶ。 フィルターNo.7: 上記フィルターNo.3に市販の赤色セロファン(厚さ0.018mm)を2枚重ね合せて赤色着色フィルターを得た。これをフィルターNo.7と呼ぶ。 上記フィルターNo.1~7の光線透過率曲線を添付の第1図に示す。 ・・・ [図:0001403179000002.jpg] 」(13頁右下欄下から2行~15頁) イ.周知文献1(特開2016-111984号公報) (イ―1) 「【0003】 近年、省エネルギーの観点から、蛍光灯に代わってLEDを使用した培養法への関心が高まってきている。例えば特許文献1には、青色LED光の連続光照射またはパルス光照射が、ヘマトコッカスによるアスタキサンチンの生産を促進することが記載されている。 【0004】 また、赤色LED光と青色LED光を交互に照射すること(特許文献2)や赤色LED光と青色LEDを単独または同時に照射すること(特許文献3、4)により、ヘマトコッカスの遊走細胞における生育を促進することが記載されている。」 ウ.周知文献2(国際公開第2013/35473号) (ウ―1) 「[0029] ・・・LEDは消費電力が低いため好適である。また、光の波長についても、とくに制限はなく、菌類の生長抑制作用を得られる波長の光であればいずれも適用が可能である。具体的には、可視光、赤外線、紫外線、その他の電磁波について適用が可能であるが、好ましくは単色可視光および近紫外線である。さらに、温度や音など、光以外の刺激によっても菌類の生長抑制作用が得られる可能性がある。ただし、生長抑制作用は、光の波長が、495nmから570nmの範囲である緑色光から確認され、380nmから495nmの範囲である青色光であると効果が顕著であるため好適である。」 エ.周知文献3(特開2004-147641号公報) (エ―1) 「【0012】 光照射工程における光源としては、LED(発光ダイオード)、電球(バルブ)、蛍光灯、冷陰極管などを用いることができるが、特定波長領域の光を照射する必要があることから、使用する光源の光の波長スペクトルが広域に亘る場合には不要な光をカットすることが好ましい。ここで、LEDは波長幅の狭い光を放出可能であることを特徴の一つとする。したがって、LEDを用いれば一部の光をカットするといった特別の手段を要することなく波長域を絞った光の照射が可能となる。また、効率的な光の利用が図られるといった効果も奏される。LEDとしては発光効率が高い窒化ガリウム系化合物半導体を用いたものを採用することが好ましい。 ・・・ 【0016】 LEDとして主たる発光波長が赤系領域、緑系領域、青系領域、及び紫系領域にある4種類(赤系LED、緑系LED、青系LED、及び紫系LED)を用いた。各LEDの発光スペクトルを図1に示す。赤系LEDは約625nm、緑系LEDは約525nm、青系LEDは約470nm、及び紫系LEDは約420nmにそれぞれ発光ピークを有し、そのスペクトル幅は蛍光灯に比してはるかに狭い(蛍光灯の発光スペクトルは、ほぼ可視光領域全体に亘っている(図2))。」 (2)引用発明 引用例の摘記事項(ア―6)の実施例6には、ストレプトマイセス・カナマイティカスを暗黒下36時間培養した後、発酵槽壁部の外側全面にフィルターNo.5の光質フィルターをはりつけ、発酵槽の片側に可視光ランプ2本、他方の片側に近紫外線ランプ1本を設置した光源を点灯して、60時間連続照射培養すると、カナマイシン生産指数145(暗黒区(比較例2)のカナマイシン生産指数は100)でカナマイシンを生産したことが記載されている。 また、引用例の摘記事項(ア-7)には、No.5の光質フィルターが、紫外線吸収剤を配合したフィルターNo.3に市販の青色着色セロファンを2枚重ね合わせた青色着色フィルターであることが示されている。 そうすると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ストレプトマイセス・カナマイティカスを、暗黒下で36時間培養した後、発酵槽壁部の外側全面に、紫外線吸収剤を配合したフィルターに市販の青色着色セロファンを2枚重ね合わせた青色着色フィルターをはりつけ、発酵槽の片側に可視光ランプ2本、他方の片側に近紫外線ランプ1本を設置した光源を点灯し、60時間連続照射して培養する、カナマイシンを生産する方法。」 (3)対比 補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「ストレプトマイセス・カナマイティカス」は摘記事項(ア―3)の記載から、補正発明の「放線菌」に相当し、引用発明の「カナマイシン」は放線菌が生産する抗生物質であるので、補正発明の「有用代謝産物」に相当する。 引用例の摘記事項(ア―2)、(アー6)によると、引用発明は「発酵槽壁部の外側全面に、紫外線吸収剤を配合したフィルターに市販の青色着色セロファンを2枚重ね合わせた青色着色フィルターをはりつけ、発酵槽の片側に可視光ランプ2本、他方の片側に近紫外線ランプ1本を設置した光源を点灯し、60時間連続照射して培養」することで、カナマイシンの生産性が向上するので、引用発明の上記の培養は光刺激を付与していると認められ、引用発明の上記の培養は、補正発明の「光刺激を付与しながら放線菌を培養する光刺激培養工程」に相当する。 引用発明の上記の培養は、「暗黒下で36時間培養した後」に行われるものであるから、引用発明の「暗黒下で36時間培養」は、補正発明の「光刺激培養工程の前」に行われる「暗所で前記放線菌を培養する暗所培養工程」に相当する。 そうすると、補正発明と引用発明は、 「光刺激を付与しながら放線菌を培養する光刺激培養工程、および、前記光刺激培養工程の前に、暗所で前記放線菌を培養する暗所培養工程を含むことを特徴とする有用代謝産物の生産方法。」で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) 補正発明では、 「緑色LEDまたは青色LED」により光刺激を付与しているのに対して、 引用発明では、 「発酵槽壁部の外側全面に、紫外線吸収剤を配合したフィルターに市販の青色着色セロファンを2枚重ね合わせた青色着色フィルターをはりつけ、発酵槽の片側に可視光ランプ2本、他方の片側に近紫外線ランプ1本を設置した光源」により光刺激を付与している点 (4)判断 ア.相違点について 引用例の摘記事項(ア―7)の第1図によると、紫外線吸収剤を配合したフィルターに市販の青色着色セロファンを2枚重ね合わせた青色着色フィルター(フィルターNo.5)は、480~500nm付近の波長域で最大の光線透過率を示すフィルターであるので、発酵槽壁部の外側全面にはりつけられた青色着色フィルター(フィルターNo.5)を透過する光線は、青色光であると認められる。 一方、引用例の摘記事項(アー5)には、「本発明に使用し得る人工光源として、上記した特定波長域の光線を放射する光源であれば、いづれのものでも使用できる。そして、かかる光源としては例えば、螢光灯、水銀灯、陽光ランプ、一般電球、投光用電球、特殊電球(東芝ランプカタログより、東芝電材株式会社)等がある。」と記載されており、引用例には、引用発明の光源として、螢光灯等の他の人工光源を採用できる旨の記載がある。 また、本願優先日(2016年9月29日)当時の技術常識を示す、周知文献1には、「省エネルギーの観点から、蛍光灯に代わってLEDを使用した培養法への関心が高まってきている。」(摘記事項(イー1))、同周知文献2には、「LEDは消費電力が低いため好適である。」(摘記事項(ウ―1))、同周知文献3には、「LEDは波長幅の狭い光を放出可能であることを特徴の一つとする。したがって、LEDを用いれば一部の光をカットするといった特別の手段を要することなく波長域を絞った光の照射が可能となる。」(摘記事項(エ―1))との記載がある。 以上の記載によると、青色LEDを含むLEDは、消費電力を低減でき、特別の手段を要することなく波長域を絞った光照射が可能なため、螢光灯等に代わり得る培養の人工光源として好適であることが本願優先日における周知技術であったと認められる。 そうすると、引用発明の青色光を照射する光刺激の付与手段に代えて、消費電力の低減が可能であり、フィルター等の特別の手段を要することなく波長域を絞った青色光の照射が可能な青色LEDを採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。 イ.補正発明の効果について 引用例の摘記事項(アー2)、(アー6)によると、引用発明の青色光を照射する光刺激の付与手段を用いて放線菌を培養すると、暗所培養区(比較例2)と比較して抗生物質、すなわち有用代謝産物の生産性が向上することが示されている。 一方、本願明細書(下線は当審で付与した。)には、光刺激培養工程の前に、暗所で放線菌を培養する工程を含む方法の効果を裏付ける実験例2が記載されており、【0055】に「培養したサンプルについて、目視観察を行った。まず、MR5培地を用いた場合の結果について記載する。暗所で培養した後に青色光による光刺激を付与しながら培養したサンプル(j)は薄めの黄橙色となったことから、ウンデシルプロジギオシンもアクチノロージンもほとんど生産されなかったと推定される。」、【0056】に「次に、GYM培地を用いた場合の結果について記載する。GYM培地を用いた場合には、暗所で培養した後に青色光による光刺激を付与しながら培養したサンプル(n)は全体的に黄橙色となり、暗所で培養したサンプル(m)と似た傾向を示した。」との記載がある。 そうすると、補正発明の発明特定事項により、引用例1に示される効果と比べて当業者の予測を超える格別顕著な効果を奏したとは認められない。 (5)小括 以上からすると、補正発明は、引用発明、すなわち引用例(原査定で引用された引用文献2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえない。 4.審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書(下記の(1)、(2))及び上申書(下記の(3))において、概ね以下の点を主張している。 (1) 青色LEDによる光刺激は引用例の公開時には存在しておらず、暗所で培養することが一般的である放線菌において、青色LEDによる光刺激による抗生物質などの有用物質の生産量の増加は知られていなかった。 (2) 審判請求人は、青色LEDによる光刺激を放線菌に対して行うことにより、暗所培養では見られない代謝産物を生産できることを見出し(実験例1)、さらに、暗所での培養を組み合わせて、代謝産物の種類や量を変えることができることを見出したが(実験例2)、暗所培養では見られない代謝産物を生産できることに加えて、代謝産物の種類や量(すなわち、複数の有用物質の量)を変更できることは、引用文献1,2には示唆も開示もされていない。 (3) 令和3年10月18日付け意見書に添付した参考資料7では、0~40時間の前培養(暗所培養)後、50μmolm-2s-1または180μmolm-2s-1の緑色光または青色光を照射して、放線菌StreptomycescoelicolorA3(2)を7日間培養したところ、青色抗生物質(アクチノロージン)生産量の増加が認められ、本願の工程に基づく効果は格別顕著なものである。 (1)について検討すると、引用例の公開時に青色LEDによる光照射が知られていなかったとしても、周知文献1~3に示されるように本願優先日前には、青色LEDを含むLEDを培養の光源として使用することは周知技術であったので、上記(1)の主張により、補正発明の進歩性の判断は左右されない。 (2)について検討すると、補正発明は「有用代謝産物の生産方法」の発明であり、生産される有用代謝産物の種類は特定されていないから、暗所培養で見られない代謝産物が生産できることや代謝産物の種類や量(すなわち、複数の有用物質の量)が変更できることは、補正発明の発明特定事項に基づく有利な効果であるとは認められない。 また、本願明細書の【0047】、【0048】、【0055】、【0056】によると、光刺激により生じる有用代謝産物の種類や量は、培養に使用する培地、暗所培養と光刺激の順序により大きく左右されるので、暗所培養で見られない代謝産物を生産できることや代謝産物の種類や量(すなわち、複数の有用物質の量)が変更できることは、補正発明の全体に亘り奏される有利な効果であるとは認められない。 よって、代謝産物の種類や量(すなわち、複数の有用物質の量)を変更できることが、引用例に明示されてないとしても、補正発明の進歩性の判断は左右されない。 (3)について検討すると、引用例の摘記事項(アー2)、(アー6)によると、特定の波長領域の光線の照射下で放線菌を培養することで、暗所培養と比較して抗生物質、すなわち代謝産物の生産性が向上することが示されているので、本願出願日後のデータである参考資料7を参酌したとしても、補正発明の効果が格別顕著なものであるとは認められない。 したがって、審判請求人の主張は、いずれも理由がない。 5.まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和3年10月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載の事項により特定される発明であると認める。 2.原査定の理由 令和4年2月1日付け拒絶査定に記載された理由は、この出願の請求項1~9に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 <引用文献等一覧> 2.特開昭60-133874号 3.当審の判断 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.に(補正前)として記載したものである。 本願発明は、補正発明が備えている、「緑色光または青色光による光刺激」を「緑色LEDまたは青色LEDによる光刺激」とする限定や、「前記光刺激培養工程の前又は後に、暗所で前記放線菌を培養する暗所培養工程」を含む限定を有さないものであり、本願発明は、これらの限定以外の補正発明の発明特定事項を含むものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記の限定を付加したものに相当する補正発明が、上記第2の3(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、すなわち、引用例(原査定で引用された引用文献2)に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、補正発明と同様の理由により、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-006846

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