特許拒絶査定不服審判
2022-005651
マルチチャネル流管によって流体を測定する方法
- 審判番号
- 2022-005651
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-058092外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月14日
- 審決日
- 2023年01月30日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】マイクロ モーション インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 有古特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-58092号「マルチチャネル流管によって流体を測定する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月30日出願公開、特開2020-115144号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月16日の外国語特許出願(特願2018-560195号)の一部を令和2年3月27日に新たな特許出願とした外国語書面出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年 3月30日 :翻訳文の提出
同月31日 :上申書、手続補正書の提出
令和3年 3月 8日付け:拒絶理由通知書
同年 5月26日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月 2日付け:拒絶理由通知書
同年11月25日 :意見書、手続補正書の提出
(発明の名称を変更する補正)
同年12月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月14日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 4月14日 :審判請求書の提出
同年 6月 6日 :手続補正書(方式)の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和3年5月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
マルチチャネル流管によって流体を測定する方法であって、
マルチチャネル流管によって流体の密度を測定するステップと、
測定された密度を用いてガスボイド率を決定するステップと、
マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定するステップと、
この流量誤差を使用して、流量測定値を補償するステップとを含む、方法。
【請求項2】
測定された密度を用いてガスボイド率を決定するステップは、密度測定値とガスボイド率との間の所定の相関からガスボイド率を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。」
第3 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由(進歩性欠如)の概要は、次のとおりである。
なお、原査定においては、引用文献1を主たる引用文献とする進歩性欠如の理由と、引用文献2を主たる引用文献とする進歩性欠如の理由の2つの理由が示されている。
本願発明1及び2は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特表2003-528306号公報
引用文献2:特開平9-133564号公報
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用する引用文献1(特表2003-528306号公報)には、次の事項が記載されている。下線は当審において付した。以下同様である。
ア 【0025】~【0028】、【図1】、【図2A】、【図2B】
「 【0025】
[発明の詳細な説明]
本発明の他の特徴および効果は、図面を含む以下の記載と請求項とから明らかにする。
ディジタル流量計などにおける二相流の影響を説明する技術が提供される。これらの技術が、図40の参照を初めとして説明される前に、ディジタル流量計について図1から図39を参照して説明されている。
【0026】
図1を参照すると、ディジタル質量流量計100は、ディジタルコントローラ105、一つ以上の運動センサ110、一つ以上の駆動回路115、導管120(以下、流管とも称す)、温度センサ125を含む。ディジタルコントローラ105は、例えば、プロセッサ、フィールド・プログラマブルゲートアレイ、ASIC、他のプログラマブル論理アレイやゲートアレイ、プロセッサコアを有するプログラマブル論理回路等の一つ以上を使用して実行される。ディジタルコントローラは、運動センサ110から入力される信号に少なくとも基づいて、導管120を流れる質量流の測定値を生成する。ディジタルコントローラも、駆動回路115を制御して、導管120に運動を誘起する。この運動は、運動センサ110により検出される。
【0027】
導管120を流れる質量流は、駆動回路115によって供給される駆動力に応答して、導管に誘起される運動に対応する。特に、質量流は、導管の温度と同様に、運動の位相および周波数に対応する。ディジタル質量流量計も、導管の中を流れる材料の密度の測定値を提供する。密度は、運動の周波数および導管の温度に対応する。記載されている技術の多くは、質量流の測定よりはむしろ密度の測定を行う比重計に応用できる。
【0028】
導管の温度は、温度センサ125を使用して測定され、その剛性および寸法等の導管の特性に影響を及ぼす。ディジタルコントローラは、これらの温度作用を補償する。ディジタルコントローラ105の温度は、例えば、ディジタルコントローラの動作周波数に影響を及ぼす。一般に、コントローラ温度の影響は、十分に小さく、無視できると考えられている。しかしながら、場合によっては、ディジタルコントローラは、固体装置を使用して、コントローラの温度を測定して、コントローラの温度の影響を補償する。
A.機械的設計
1の実施例において、図2Aおよび図2Bに図示するように、導管120は、小領域が導管に対して空間を除去したりまたは確保するパイプライン(図示せず)に挿入されるように設計されている。導管120は、パイプラインとの接続用の装着フランジ12と、パイプラインと垂直に向きが定められた2つの平行な平坦ループ18,20を支持する中心マニホールドブロック16とを含む。電磁気駆動回路46とセンサ48とは、ループ18、20の各端部の間に取付けられる。2つの駆動回路46の各々は、図1の駆動回路115に相当するが、2つのセンサ48の各々は、図1のセンサ120に相当する。」
「【図1】
[図:0001394950000001.jpg]
」
「【図2A】
[図:0001394950000002.jpg]
」
「【図2B】
[図:0001394950000003.jpg]
」
イ 【0382】~【0387】、【図40A】~【図40D】
「 【0382】
(中略)
I.空気混和(二相流)
ディジタル流量計は、導管に空気混和が存在する場合(二相流として公知でもある)には、改善された性能を提供する。空気混和は、質量流量計によって生成された測定値に相当な負の影響がある導管のエネルギ損失を生成し、結果として導管が失速する。実験によって、ディジタル流量計は、従来のアナログ流量計に対して、空気混和がある場合には性能が実質的に改善されることを示した。この性能改善は、非常に広い利得範囲を提供し、負のフィードバックを使用し、非常に低い振幅レベルで正確に測定値を計算し、振幅の変化率および流管力学などの力学的効果を補償する計器の能力から生じる。性能の改善は、更に、正確なデジタル振幅制御アルゴリズムの計器の使用から生じる。
【0383】
ディジタル流量計は、必要な駆動回路利得が、見かけの流体密度の低下と同時に上がるときに、空気混和の発生を検出する。次に、ディジタル流量計は、検出された空気混和に直接反応する。一般に、計器は、導管を流れる材料の観察密度(すなわち、通常の測定法から得られる密度測定値)を、材料の空気混和のない周知の密度と比較することによって、空気混和の有無をモニタする。コントローラは、観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて、空気混和のレベルを測定する。次に、コントローラは、質量流の測定値を補正する。
【0384】
コントローラは、空気混和が存在しない期間(すなわち、密度の値が安定している期間)での密度をモニタすることによって、材料の空気混和のない密度を測定する。あるいは、コントローラが接続されている制御システムが、接続されて、初期化パラメータとして空気混和のない密度を提供してもよい。
一実施例において、コントローラは、空気混和の影響を考慮する3つの補正、泡沫作用補正、減衰作用補正、センサ非平衡補正を使用する。図40A乃至図40Hは、補正プロシージャの効果を示す。
【0385】
図40Aは、測定された密度が異なる質量流量、空気混和補正のない状態で減少する(すなわち、空気混和が増加する)ときの、位相測定値の誤差を示す。示すように、位相誤差は、負であり、振幅は、空気混和の増加と共に増加する。図40Bは、結果として生じた質量流誤差が負であることを示している。ディジタル流量計が、高いレベルの空気混和で作動する点に注目することは、大切である。対照的に、垂直線4000で示すように、従来のアナログ計器は、低レベルの空気混和が存在するときに、失速する傾向がある。
【0386】
流量計は、低振幅の振動で高駆動電流を流す十分に大きな駆動回路利得を提供することができないときに、失速する。減衰のレベルが、一定の振幅で振動を維持するために流管によって供給できるもの以上の高い駆動回路利得を必要とする場合、導管に供給される駆動エネルギは不十分である。これは、振動振幅の低下につながり、これは、最大利得限界値により供給されるより僅かな駆動エネルギになる。破局的な崩壊の結果と、流管の振動とは、対応する駆動回路利得必要条件が流量計によって供給されるレベルまで減衰が減少するまで、不可能である。
【0387】
泡効果補正は、無効部分と呼ばれる空気混和のレベルが増加するにつれて質量流が減少するという仮定に基づいている。無効な部分と泡沫効果との実際の関係を予測しようと試みることなく、この補正は、優れた理論的な正当化によって、観察された質量流への影響は、観察された密度への影響と同じであると、仮定する。本当の流体密度が公知であるので、泡効果補正は、同じ割合で質量流量を補正する。この補正は、全ての流量に対して線形調整である。図40Cおよび図40Dは、それぞれ、泡沫効果を補正した後の、残留位相および質量流誤差を示す。図示するように、残留誤差は、正であり、元の誤差よりも振幅がかなり小さい。」
「【図40A】
[図:0001394950000004.jpg]
」
「【図40B】
[図:0001394950000005.jpg]
」
「【図40C】
[図:0001394950000006.jpg]
」
「【図40D】
[図:0001394950000007.jpg]
」
(2) 引用発明1の認定
前記(1)に摘記した記載事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「ディジタルコントローラ105、一つ以上の運動センサ110、一つ以上の駆動回路115、導管120、温度センサ125を含むディジタル質量流量計100であって、
ディジタルコントローラ105は、運動センサ110から入力される信号に少なくとも基づいて、導管120を流れる質量流の測定値を生成し、駆動回路115を制御して、導管120に運動を誘起するものであり、この運動は、運動センサ110により検出され、(【0026】)
導管120を流れる質量流は、駆動回路115によって供給される駆動力に応答して、導管に誘起される運動に対応するものであり、ディジタル質量流量計は、導管の中を流れる材料の密度の測定値を提供するものであり、(【0027】)
導管に空気混和が存在する場合には、ディジタル流量計は、必要な駆動回路利得が、見かけの流体密度の低下と同時に上がるときに、空気混和の発生を検出するものであり、検出された空気混和に直接反応し、導管を流れる材料の観察密度(すなわち、通常の測定法から得られる密度測定値)を、材料の空気混和のない周知の密度と比較することによって、空気混和の有無をモニタし、コントローラは、観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて、空気混和のレベルを測定し、質量流の測定値を補正するものであり、(【0382】、【0383】)
コントローラは、空気混和が存在しない期間(すなわち、密度の値が安定している期間)での密度をモニタすることによって、材料の空気混和のない密度を測定し、あるいは、コントローラが接続されている制御システムが、接続されて、初期化パラメータとして空気混和のない密度を提供してもよく、コントローラは、空気混和の影響を考慮する3つの補正、泡沫作用補正、減衰作用補正、センサ非平衡補正を使用し、(【0384】)
泡効果補正は、無効部分と呼ばれる空気混和のレベルが増加するにつれて質量流が減少するという仮定に基づいており、無効な部分と泡沫効果との実際の関係を予測しようと試みることなく、この補正は、観察された質量流への影響は、観察された密度への影響と同じであると、仮定するものであり、本当の流体密度が公知であるので、泡効果補正は、同じ割合で質量流量を補正するものであり、全ての流量に対して線形調整である、(【0387】)
ディジタル質量流量計100。」
2 引用文献2
(1) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用する引用文献2(特開平9-133564号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】図4は、従来より一般に使用されている従来例の平行2本U字管型コリオリ質量流量計の構成説明図で、例えば、米国特許4,491,025号、発明の名称「PARALLEL PATH CORIOLIS MASS FLOW RATE METER 」1982年11月3日出願、1985年1月1日特許に示されている。図5,図6は、図4の動作説明図である。
【0003】図において、1は固定体2に、両端が取付けられたU字形の測定管で、流量計入口で2つに分岐し出口で再び合流する。従って、測定流体floは、流量計入口より流入し、流量計出口より流出する。
【0004】2は管路A(図示せず)への測定管1の取付け固定体である。3はU字形をなす測定管1の中央部分に設けられた加振器で、測定管1をU字形の測定管1が存在する平面に対し垂直方向に加振する。4,5は、測定管1の固定端と中央部との間にそれぞれ設けられた振動検出センサである。この場合は、電磁コイル(速度センサ)が使用されている。」
「【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例の要部構成説明図である。図において、図4と同一記号の構成は同一機能を表わす。以下、図4と相違部分のみ説明する。
【0015】11は、測定管1内を、細分化された流路12の集合と成るように測定管1内に設けられた仕切り板である。
【0016】以上の構成において、測定管1に測定流体が流され、加振器3が駆動されると、コリオリ力が働く、このコリオリ力に比例した振動の振幅を振動検出センサ4により測定すれば、質量流量が測定出来る。
【0017】この場合、細分化された流路12の中では、気泡は図7のように存在するのではなく、図2に示す如く、その細分化された流路12の断面積いっぱいに広がって、存在する可能性が高くなる。このような状況においては、気泡の測定管1の壁面への衝突、気泡同士の合併、分離は起こる可能性が低くなる。
【0018】この結果、
(1)一般に、気泡混入率の高い液体内では、通常は、気泡の測定管1の壁面への衝突や、気泡同士の合体、気泡の分離等の影響で、振動している測定管1に、コリオリ力による振動以外の余計な振動ノイズが加わる。
【0019】しかしながら、本発明においては、仕切り板11が、測定管1内を細分化された流路12の集合と成るように測定管1内に設けられたので、図2に示す如く、細分化された流路12の流路を遮断するように、流路12の断面積方向一杯を、気泡が占める可能性が大きくなるので、気泡の衝突や合併、分離等が発生しにくくなり、余計な振動ノイズも小さくなる。
【0020】以上の結果、比較的気泡混入率の高い液体の流量や密度測定の場合でも、出力揺動が小さく、誤差の少ないコリオリ質量流量計が得られる。
【0021】(2)一般に、気泡の混入率が増加すると、測定液体内の気泡の移動によって、振動系の減衰定数が増加し、Q値が小さくなる。混入率がある程度以上増加すると、測定管1は共振状態で一定振幅の振動を保てなくなり、流量や密度の測定機能が麻痺する。
【0022】しかしながら、本発明においては、仕切り板11が、測定管1内を細分化された流路12の集合と成るように測定管1内に設けられたので、無用な気泡の衝突や合併を防ぐように、測定管1の管路が細かく区切られる。
【0023】以上の結果、安定した共振状態を続けることが可能になり、気泡混入率の高い測定液体の流量や密度を測定することが可能なコリオリ質量流量計が得られる。」
「【図1】
[図:0001394950000008.jpg]
」
「【図2】
[図:0001394950000009.jpg]
」
「【図4】
[図:0001394950000010.jpg]
」
「【図7】
[図:0001394950000011.jpg]
」
(2) 引用発明2の認定
前記(1)に摘記した記載事項を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明2]
「平行2本U字管型コリオリ質量流量計であって、(【0002】)
固定体2に両端が取付けられたU字形の測定管1は、流量計入口で2つに分岐し出口で再び合流し、測定流体は、流量計入口より流入し、流量計出口より流出するものであり、(【0003】)
測定管1内を細分化された流路12の集合と成るように、測定管1内に仕切り板11が設けられ、(【0015】)
測定管1に測定流体が流され、加振器3が駆動されると、コリオリ力が働き、このコリオリ力に比例した振動の振幅を振動検出センサ4により測定すれば、質量流量が測定出来るものであり、(【0016】)
細分化された流路12の中では、気泡はその細分化された流路12の断面積いっぱいに広がって存在する可能性が高くなり、このような状況においては、気泡の測定管1の壁面への衝突、気泡同士の合併、分離が起こる可能性が低くなり、(【0017】)
比較的気泡混入率の高い液体の流量や密度測定の場合でも、出力揺動が小さく、誤差の少ない、(【0020】)
コリオリ質量流量計。」
第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1) 引用文献1を主たる引用文献としたときの判断
ア 本願発明1と引用発明1の対比
(ア) 引用発明1では、ディジタル質量流量計100のディジタルコントローラ105が、運動センサ110から入力される信号に少なくとも基づいて、導管120を流れる質量流の測定値を生成しているから、流体を測定しているといえる。
よって、本願発明1と引用発明1は、「流体を測定する方法」である点で共通する。
(イ) 引用発明1のディジタル質量流量計は、導管の中を流れる材料の密度の測定値を提供するものであるから、流体の密度を測定しているといえる。
よって、本願発明1と引用発明1は、「流体の密度を測定するステップ」を含む点で共通する。
(ウ) 引用発明1では、コントローラが、観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて、空気混和のレベルを測定しており、測定された密度を用いて流体の空気混和のレベルを決定しているといえる。
また、本願発明1の「ガスボイド率」と、引用発明1の「空気混和のレベル」は、いずれも気泡の度合いに関する値であるといえる。
よって、本願発明1と引用発明1は、「測定された密度を用いて流体に混入する気泡の度合いを決定するステップ」を含む点で共通する。
(エ) 引用発明1において、空気混和の影響を考慮した泡効果補正は、無効部分と呼ばれる空気混和のレベルが増加するにつれて質量流が減少するという仮定に基づき、観察された質量流への影響は、観察された密度への影響と同じであると仮定して、同じ割合で質量流量を補正するものであるから、流量測定値を補償しているといえる。
よって、本願発明1と引用発明1は、「流量測定値を補償するステップ」を含む点で共通する。
(オ) 以上(ア)~(エ)の検討内容をまとめると、本願発明1と引用発明1は、以下の一致点1において一致し、以下の相違点1において相違する。
[一致点1]
「流体を測定する方法であって、
流体の密度を測定するステップと、
測定された密度を用いて流体に混入する気泡の度合いを決定するステップと、
流量測定値を補償するステップとを含む、方法。」
[相違点1]
本願発明1は、「マルチチャネル流管によって流体を測定する方法」であって、「マルチチャネル流管によって流体の密度を測定」し、「測定された密度を用いてガスボイド率を決定」し、「マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定」し、「この流量誤差を使用して、流量測定値を補償する」ものであるのに対して、
引用発明1は、「導管120」が「マルチチャネル流管」ではなく、「密度測定値」は「通常の測定法から得られる」ものであるため、「マルチチャネル流管によって流体の密度を測定」したものではなく、「観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて、空気混和のレベルを測定」しているものの、「空気混和のレベル」が「ガスボイド率」に相当するといえるか不明であり、「泡効果補正」が、「観察された質量流への影響は、観察された密度への影響と同じであると、仮定」して、「同じ割合で質量流量を補正するもの」であるから、「マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定」し、「この流量誤差を使用して、流量測定値を補償する」ものではない点。
イ 相違点1の判断
相違点1について検討する。
(ア) 「ガスボイド率」の決定について
a 本願発明1の「測定された密度を用いて」「決定」される「ガスボイド率」に関して、本願の明細書及び図面には次の記載がある。
「【0055】
図8は、一実施形態に係る図3に示す単軸分割部を有するマルチチャネル流管(「密度単軸分割」)の密度誤差とガスボイド率との間の関係を示すグラフ800を示す。グラフ800は、0.5m/s~10m/sの範囲の異なる流量のデータのデータプロット830を有する。データプロット830は、パーセント混合物密度誤差が低いガスボイド率では比較的低いことを示している。パーセント混合物密度誤差は、ガスボイド率の割合が高いほど増加する。しかしながら、図7に示すほどパーセント混合物密度誤差は増加しない。例えば、10m/sの流量では、図7に示される1%未満から約25%への増加とは対照的に、パーセント混合物密度誤差は1%未満から5%未満まで増加する。」
「【0062】
さらに、図8からのデータを使用して、図10および図12に示される質量および体積流量測定における流量誤差を補償することができる。データプロット830によって示される混合物密度誤差は、ガスボイド率および流量の範囲にわたって、一貫して5%未満である。したがって、液体気体混合物のガスボイド率は、密度測定値と正確に相関することができる。さらに、図10および図12に示される質量流量および体積流量は、各流量において約10%以内で正確である。ガスボイド率は正確に密度読み取り値に相関することができ、質量流量および体積流量は正確であるので、質量および/または体積流量は、密度読み取り値と相関するガスボイド率を使用することによって測定および補償することができる。これは、図13および図14に示す方法を参照して、以下でより詳細に説明する。」
「【図8】
[図:0001394950000012.jpg]
」
b 前記aにおいて摘記した事項から、本願発明1は、マルチチャネル流管の密度誤差とガスボイド率の間の関係について、混合物密度誤差がガスボイド率及び流量の範囲にわたって一貫して5%未満であることを前提として、密度測定値と正確に相関する「ガスボイド率」を決定することを構成として含むものである。
c この点に関し、引用発明1では、「観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて、空気混和のレベルを測定」しているものの、「観察された密度」は、マルチチャネル流管を使用した場合のものではなく、上記「空気混和のレベル」が、本願発明1のように、「観察された密度」と正確に相関するものであるかどうかは明らかではないから、引用発明1の観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて測定される「空気混和のレベル」を、本願発明1の「マルチチャネル流管によって」「測定された密度」と正確に相関する「ガスボイド率」と同一視することはできない。
(イ) 「流量誤差」の決定について
a 本願発明1では、「マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定」し、「この流量誤差を使用して、流量測定値を補償」している。
b これに対して、引用発明1では、「泡効果補正」が、「観察された質量流への影響は、観察された密度への影響と同じであると、仮定」して、「同じ割合で質量流量を補正するもの」であり、「全ての流量に対して線形調整である」としている。
c すなわち、引用発明1では、空気混和による質量流量への影響の割合が、観察された密度への影響の割合と同じであるとして質量流量を補正しており、例えば、密度誤差が5%のときは流量誤差も5%であり、密度誤差が10%のときは流量誤差も10%であるとして線形に調整している。
d そうすると、引用発明1では、流量誤差を直接用いることなく、密度誤差を用いることにより質量流量を補正しているのであるから、「マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差」を決定しようとする動機がそもそも見出せない。
(ウ) 引用文献2に開示された技術について
a 引用文献2には、測定管1内を細分化された流路12の集合と成るように、測定管1内に仕切り板11が設けられ、気泡の測定管1の壁面への衝突、気泡同士の合併、分離が起こる可能性が低くなり、比較的気泡混入率の高い液体の流量や密度測定の場合でも、出力揺動が小さく、誤差の少ない、コリオリ質量流量計が開示されている(前記第4の2(2)の引用発明2を参照)。
b しかしながら、引用文献2に開示された技術をいかに引用発明1に適用しても、「マルチチャネル流管によって測定された密度を用いてガスボイド率を決定」し、「マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定」し、「この流量誤差を使用して、流量測定値を補償する」という構成が満たされることはなく、相違点1に係る構成に想到することは当業者といえども困難であるというべきである。
(エ) 前記(ア)~(ウ)の検討結果を踏まえると、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用文献2に開示された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 引用文献2を主たる引用文献としたときの判断
ア 本願発明1と引用発明2の対比
(ア) 引用発明2の「測定管1」は、「測定管1内を細分化された流路12の集合と成るように、測定管1内に仕切り板11が設けられ」ており、本願発明1の「マルチチャネル流管」に相当する。
そして、引用発明2では、「測定管1に測定流体が流され、加振器3が駆動されると、コリオリ力が働き、このコリオリ力に比例した振動の振幅を振動検出センサ4により測定すれば、質量流量が測定出来るもの」であるから、マルチチャネル流管によって流体を測定しているといえる。
よって、本願発明1と引用発明2は、「マルチチャネル流管によって流体を測定する方法」という点で一致する。
(イ) 引用発明2では、「比較的気泡混入率の高い液体の流量や密度測定の場合でも、出力揺動が小さく、誤差の少ない」としているから、マルチチャネル流管によって流体の密度を測定しているといえる。
よって、本願発明1と引用発明2は、「マルチチャネル流管によって流体の密度を測定するステップ」を含む点で一致する。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)の検討内容をまとめると、本願発明1と引用発明2は、以下の一致点2において一致し、以下の相違点2において相違する。
[一致点2]
「マルチチャネル流管によって流体を測定する方法であって、
マルチチャネル流管によって流体の密度を測定するステップを含む、方法。」
[相違点2]
本願発明1は、「測定された密度を用いてガスボイド率を決定」し、「マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定」し、「この流量誤差を使用して、流量測定値を補償する」ものであるのに対して、
引用発明2は、「比較的気泡混入率の高い液体の流量や密度測定の場合でも、出力揺動が小さく、誤差の少ない」「コリオリ質量流量計」であるものの、これは、「細分化された流路12の中では、気泡はその細分化された流路12の断面積いっぱいに広がって存在する可能性が高くなり、このような状況においては、気泡の測定管1の壁面への衝突、気泡同士の合併、分離が起こる可能性が低くな[る]」からであって、密度測定値からガスボイド率を決定し、流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定し、この流量誤差を使用して流量測定値を補償していない点。
イ 相違点2の判断
相違点2について検討する。
(ア) 引用文献1には、「導管を流れる材料の観察密度(すなわち、通常の測定法から得られる密度測定値)を、材料の空気混和のない周知の密度と比較することによって、空気混和の有無をモニタし」、「観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて、空気混和のレベルを測定し、質量流の測定値を補正」し、「泡効果補正」は、「観察された質量流への影響は、観察された密度への影響と同じであると、仮定」して、「同じ割合で質量流量を補正するもの」であり、「全ての流量に対して線形調整である」という技術事項が開示されている(前記4の1(2)の引用発明1を参照)。
(イ) 前記(ア)において説示したように、引用文献1に開示された技術事項では、「観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて、空気混和のレベルを測定」しているものの、「観察された密度」は、マルチチャネル流管を使用した場合のものではなく、上記「空気混和のレベル」が、本願発明1のように、「観察された密度」と正確に相関するものであるかどうかは明らかではないから、引用文献1の観察された密度と実際の密度との間の差に基づいて測定される「空気混和のレベル」を、本願発明1の「マルチチャネル流管によって」「測定された密度」と正確に相関する「ガスボイド率」と同一視することはできない。
(ウ) また、引用文献1に開示された技術では、流量誤差を直接用いることなく、密度誤差を用いることにより質量流量を補正しているから、「マルチチャネル流管に対する流量誤差とガスボイド率との間の所定の相関関係から流量誤差を決定」し、「この流量誤差を使用して流量測定値を補償する」ものではない。
(エ) そうすると、引用発明2に引用文献1に開示された技術をいかに適用しても、相違点2に係る構成に想到することは当業者といえども困難であるというべきである。
(オ) 前記(ア)~(エ)の検討結果を踏まえると、本願発明1は、当業者であっても引用発明2及び引用文献1に開示された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2も、前記相違点1又は相違点2に係る本願発明1の構成と同じものを含むから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 小括
上記1及び2において検討したとおりであるから、本願発明1及び2は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-005651