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特許拒絶査定不服審判

2022-005586

構造繊維に基づく統合型の超冗長触覚センサネットワーク

審判番号
2022-005586
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-211427外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年04月13日
審決日
2023年05月10日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-211427号「構造繊維に基づく統合型の超冗長触覚センサネットワーク」拒絶査定不服審判事件〔平成30年7月19日出願公開、特開2018-112542号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 7項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成29年11月1日の外国語書面出願であって(パリ条約による優先権主張 2016年11月1日 米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、以下、2016年11月1日を「優先日」という。

平成30年 2月27日 :翻訳文の提出
令和 3年 8月24日付け:拒絶理由通知書
同年11月26日 :意見書の提出

同年12月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月14日 :原査定の謄本の送達)

令和 4年 4月13日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 3月 6日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明について

本願の請求項1~12に係る発明は、令和5年3月6日に提出された手続補正書により補正された請求項1~12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。

以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。

「 【請求項1】
複合構造物であって、該複合構造物は、
複数の層に形成され、前記複数の層の各々が平行繊維から形成されている、複合構造物(205、305)を含み、
前記複数の層のうちの少なくとも1つの層が、前記平行繊維の間に分布した、複数の繊維センサセル(210、310、315)を含み、前記繊維センサセルの各々(100)が、内部繊維コア(110)、及び、前記内部繊維コアを覆って形成された非導電層(120)を備え、
前記複数の繊維センサセルの各々が、前記繊維センサセルの第1端部にある第1接続端子であって、対応する前記内部繊維コアの第1端部に接続された第1接続端子を有し、かつ、前記繊維センサセルの第2端部にある第2接続端子であって、対応する前記内部繊維コアの第2端部に接続された第2接続端子を有し、
前記複数の繊維センサセルのうち隣接する繊維センサセルは、ジャンパによって直列に接続され、前記ジャンパが、隣接する前記繊維センサセルの第1端部又は第2端部を電気的に結合する、複合構造物。」

第3 当審において通知した拒絶の理由

当審において令和4年11月30日付けで通知した請求項1に係る発明についての拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、進歩性の欠如を理由とする理由1の概要は、次のとおりである。

理由1(進歩性)

本願の請求項1に係る発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献6:英国特許出願公開第2218813号明細書
引用文献2:米国特許第8451013号明細書

第4 当審の判断

1 引用文献等

(1) 引用文献6

ア 引用文献6の記載事項

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当審拒絶理由において引用した引用文献6(英国特許出願公開第2218813号明細書)には、以下の記載がある。下線は当審において付与した。なお、日本語訳は合議体による。行数は空白行も含めたものを示している。以下同様である。

(ア) 明細書1頁3~4行

「The invention relates to a structural member reinforced with carbon fibers.」

<日本語訳>

「本発明は、炭素繊維で強化された構造部材に関する。」

(イ) 明細書1頁6~19行

「Carbon fibers are of high tensile strength and are preferably used as reinforcing fibers for structural members, e. g., plastic laminates. As yet, there is no nondestructive test method that could indicate the failure of the load-carrying carbon fibers in a fiber composite material. A check for a failure of fibers can only be performed by destructive tests like examining polished sections or matrix pyrolysis, or by indirect methods like using additional light guides of glass fibers in the structural member. it is a disadvantage of destructive test methods that the structural member becomes useless. Providing additional light guides in the structural member causes a substantial increase in the price of the structural member.」

<日本語訳>

「炭素繊維は高い引張強度を有し、好ましくは構造部材、例えばプラスチック積層体のための強化繊維として使用される。今のところ、繊維複合材料中の荷重担持炭素繊維の破損を示すことができる非破壊試験方法はない。
繊維の破損の検査は、研磨断面又はマトリックス熱分解を検査するような破壊試験によって、又は構造部材にガラス繊維の追加の光ガイドを使用するような間接的な方法によってしか行うことができず、破壊試験方法の欠点は、構造部材が役に立たなくなることである。構造部材に追加の光ガイドを設けることは、構造部材の価格を実質的に上昇させる。」

(ウ) 明細書1頁21~24行

「It is an object of the present invention to provide a carbon fiber-reinforced structural member, wherein the fibers can be checked without impairing the structural member.」

<日本語訳>

「本発明の目的は、構造部材を傷つけることなく繊維を確認することができる炭素繊維強化構造部材を提供することにある。」

(エ) 明細書2頁29~37行

「It is a particular advantage of the structural member according to the present invention that the carbon fibers can be checked in a nondestructive manner. A check may even be performed when the structural member is mounted or used according to its application. If the structural member is a part of a airplane, e.g., a wing, the check may be performed from the cockpit either constantly or at intervals, without the structural member having to be removed.」

<日本語訳>

「本発明による構造部材の特別な利点は、炭素繊維を非破壊的に検査できることである。検査は、構造部材がその用途に従って取り付けられるか又は使用されるときにも実行され得る。構造部材が航空機の一部、例えば翼である場合、構造部材を取り外す必要なく、コックピットから絶えず又は間隔を置いて検査を行うことができる。」

(オ) 明細書4頁15~17行

「In the structural member according to the present invention, the measuring of the current or the voltage also allows a measuring of the strain.」

<日本語訳>

「本発明の構造部材では、電流又は電圧を測定することにより、歪みを測定することもできる。」

(カ) 明細書5頁6~19行

「The structural member 10 illustrated in Fig. 1 is wing of an airplane consisting of several laminate layers. At least one of the laminate layers contains carbon fibers extending longitudinally and in the direction of the double arrow 11. At the ends of the structural member 10, the fibers are in electrically conductive connection with electric contact elements 12. The contact elements 12 at each end are commonly connected and connected to a source 13 of constant current driving a constant current through the fibers of the structural member in the lengthwise direction. The contact elements 12 are further connected to a volt-meter 14 detecting the voltage drop caused by the carbon fibers.」

<日本語訳>

「図1に示す構造部材10は、いくつかのラミネート層からなる飛行機の翼である。ラミネート層の少なくとも一つは、長手方向及び二重矢印11の方向に延びる炭素繊維を含む。構造部材10の端部において、繊維は、電気接触要素12と導電接続している。各端部の接触要素12は、共通に接続され、構造部材の繊維を通して長さ方向に定電流を駆動する定電流源13に接続される。接触要素12は、炭素繊維によって引き起こされる電圧降下を検出する電圧計14にさらに接続される。」

(キ) 明細書5頁21~34行

「Fig. 2 shows a structural member in which the orientation of the carbon fibers is indicated by a double arrow 11. The fiber ends 11a protrude from the front side of the synthetic resin matrix 16, since the synthetic resin matrix 16 is treated by grinding, polishing, etching and the like, thus causing topographic height differences and making the fiber ends 11a protrude from the matrix. The bonding of the fiber ends 11a. is achieved by applying a solder 17 in liquid state, which flows around the fiber ends, enclosing them entirely, and which, subsequently, solidifies. The coating 17 may also be a conductive silver which is dissolved by a solvent and applied in liquid state and which solidifies upon evaporation of the solvent.」

<日本語訳>

「図2は、炭素繊維の配向が二重矢印11によって示される構造部材を示す。
繊維端部11aは、合成樹脂マトリックス16が研削、研磨、エッチング等の処理を施されているため、繊維端部11aが合成樹脂マトリックス16の前面から突出して凹凸が生じ、繊維端部11aがマトリックスから突出する。繊維端部11aの結合は、液体状態のはんだ17を塗布することによって達成され、はんだは、繊維端部の周りを流れ、繊維端部を完全に囲み、その後、固化する。コーティング17は、溶媒によって溶解され、液体状態で塗布され、溶媒の蒸発時に凝固する導電性銀であってもよい。」

(ク) 明細書6頁1~5行

「The coating 17 is connected to the metal contact element 18 by a flange 17a, to which element a connection wire 19 is soldered. Alternatively, coating 17 may also be conductively and adhesively applied on the fibers by sputtering.」

<日本語訳>

「コーティング17は、フランジ17aによって金属接触要素18に接続され、この要素に接続ワイヤ19がはんだ付けされる。あるいは、コーティング17は、スパッタリングによって繊維上に導電的かつ接着的に適用されてもよい。」

(ケ) 明細書6頁7~20行

「Another possibility of bonding fibers or layers of fibers, respectively orientated in load direction, is shown in Fig. 3. In this case, the structural member 10 is a laminate of a plurality of layers 20,21,22 containing parallel fibers or fiber tissue. In the present embodiment, the carbon fibers 23 of the one layer 20 are orientated in load direction, whereas the fibers of the layer 21 above are transversally orientated and the fibers of the third layer 22 are diagonally orientated. The ends of the fibers 23, extending in the main load direction, protrude from the structural member 10 and, thus, are exposed for bonding. The connection of these fiber ends to the contact element is achieved as in Fig. 3.」

<日本語訳>

「それぞれ荷重方向に配向された繊維又は繊維の層を結合する別の可能性が図3に示されている。この場合、構造部材10は、平行な繊維又は繊維組織を含む複数の層20、21、22の積層体である。本実施形態では、一つの層20の炭素繊維23は荷重方向に配向され、上の層21の繊維は横方向に配向され、第三の層22の繊維は斜めに配向される。主荷重方向に延在する繊維23の端部は、構造部材10から突出し接合のために露出している。これらのファイバ端部の接触要素への接続は、図3のように達成される。」

(コ) 明細書6頁22~37行

「Fig. 4 shows the change in the electric resistance of a unidirectionally reinforced structural member of fiber-rein forced plastic material, together with the stress-strain behaviour. Ruptures of fibers show distinct and abrupt increases in electric resistance. At a strain of 1.2%, no failure of fibers can be observed. Nevertheless, upon increasing the stress/strain of the material, an increase in electric resistance occurs. Thus, ruptures of fibers can be easily revealed by monitoring the electric resistance and one can also find out in advance, whether a rupture of fibers is pending upon further straining the material.
It will be appreciated that, although reference has been made throughout to carbon fibres, any suitable electrically conductive fibres may be substituted.」

<日本語訳>

「図4は、繊維強化プラスチック材料の一方向強化構造部材の電気抵抗の変化を応力-歪み曲線と共に示す。繊維の破断は、電気抵抗の明確で急激な増加を示す。1.2%の歪みでは、繊維の破損は観察できない。それにもかかわらず、材料の応力/歪みを増加させると、電気抵抗の増加が生じる。したがって、繊維の破断は、電気抵抗を監視することによって容易に明らかにすることができ、また、繊維の破断が材料をさらに歪ませることによって保留されているかどうかを事前に見出すことができる。
全体を通して炭素繊維について言及してきたが、任意の適切な導電性繊維を代用してもよいことが理解されよう。」

(サ) 図1

「
[図:0001402207000001.jpg]
」

(シ) 図2

「
[図:0001402207000002.jpg]
」

(ス) 図3

「
[図:0001402207000003.jpg]
」

(セ) 図4

「
[図:0001402207000004.jpg]
」

イ 引用発明の認定

前記アにおいて摘記した事項を総合すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]

「 炭素繊維で強化された構造部材であって、(摘記事項(ア))
炭素繊維は高い引張強度を有し、プラスチック積層体のための強化繊維として使用されるものであり、(摘記事項(イ))
構造部材が航空機の一部、例えば翼である場合、構造部材を取り外す必要なく、コックピットから絶えず又は間隔を置いて検査を行うことができ、(摘記事項(エ))
電流又は電圧を測定することにより、歪みを測定することもできるものであり、(摘記事項(オ))
構造部材10は、いくつかのラミネート層からなる飛行機の翼であり、構造部材10の端部において、繊維は、電気接触要素12と導電接続しており、各端部の接触要素12は、共通に接続され、構造部材の繊維を通して長さ方向に定電流を駆動する定電流源13に接続され、接触要素12は、炭素繊維によって引き起こされる電圧降下を検出する電圧計14にさらに接続され、(摘記事項(カ))
繊維端部11aが合成樹脂マトリックス16の前面から突出して凹凸が生じ、繊維端部11aがマトリックスから突出し、繊維端部11aの結合は、液体状態のはんだ17を塗布することによって達成され、(摘記事項(キ))
コーティング17は、フランジ17aによって金属接触要素18に接続され、この要素に接続ワイヤ19がはんだ付けされ、(摘記事項(ク))
構造部材10は、平行な繊維又は繊維組織を含む複数の層20、21、22の積層体であり、一つの層20の炭素繊維23は荷重方向に配向され、上の層21の繊維は横方向に配向され、第三の層22の繊維は斜めに配向され、主荷重方向に延在する繊維23の端部は、構造部材10から突出し接合のために露出しており、(摘記事項(ケ))
材料の応力/歪みを増加させると、電気抵抗の増加が生じ、繊維の破断は、電気抵抗を監視することによって容易に明らかにすることができる、(摘記事項(コ))
構造部材。」

(2) 引用文献2

ア 引用文献2の記載事項

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当審拒絶理由において引用した引用文献2(米国特許第8451013号明細書)には、以下の記載がある。

(ア) 明細書7欄55行~8欄14行

「 Terms as Used Herein:
The term “in-situ” is defined as the event occurs and is measured at nearly the exact or exact physical location of the fiber sensor in the composite.
The term “micro-level” is defined as the scope of length scale the same or nearly the same as the fiber whose diameter is of micrometer scale.
The term “carbon fiber” is defined as the fiber made of nearly pure carbon or graphite and its diameter is of micrometer scale.
The term “sensor” is defined as an apparatus and method for detecting or measuring physical changes of an object or system.
The term “coating” is defined as a thin layer of polymer, ceramic, glass, diamond or the like, deposited on the fiber.
The term “insulation layer” is defined as the polymer coating, ceramic, glass, diamond or the like, deposited on the fiber to prevent electrical current leak from being conducted between the coating insulated fiber and its surroundings.
The term “strain” is defined as the change in distance between two material points caused by external force(s) or field(s) divided by the original distance between the two material points before external force(s) or field(s) are applied.
The term “monitoring” is defined as to continuously, or nearly so, measure or scan events that occur on an object or system.
The term “recording” is defined as registering the measured results of events that occur on an object or system.」

<日本語訳>

「 本明細書で使用される用語
「in-situ」という用語は、事象が生じ、複合材中の繊維センサのほぼ正確な又は正確な物理的位置で測定されるものとして定義される。
「マイクロレベル」という用語は、直径がマイクロメートルスケールである繊維と同じ又はほぼ同じ長さスケールの範囲として定義される。
「炭素繊維」という用語は、ほぼ純粋な炭素又はグラファイトから作られた繊維として定義され、その直径はマイクロメートルスケールである。
「センサ」という用語は、物体又はシステムの物理的変化を検出又は測定するための装置及び方法として定義される。
「コーティング」という用語は、繊維上に堆積されたポリマー、セラミック、ガラス、ダイヤモンドなどの薄層として定義される。
「絶縁層」という用語は、コーティング絶縁繊維とその周囲との間で電流漏れが伝導するのを防止するために繊維上に堆積されたポリマーコーティング、セラミック、ガラス、ダイヤモンドなどとして定義される。
「歪み」という用語は、外力又は外場によって引き起こされる二つの材料点間の距離の変化を、外力又は外場が印加される前の二つの材料点間の元の距離で割ったものとして定義される。
「モニタリング」という用語は、物体又はシステム上で発生する事象を連続的に、又はほぼ連続的に測定又はスキャンすることとして定義される。
「記録」という用語は、物体又はシステム上で発生する事象の測定結果を登録することとして定義される。」

(イ) 明細書8欄15~25行

「The preferred embodiment of the present invention is illustrated by way of example in FIGS. 1-3. With specific reference to FIG. 1, the insulated fiber sensor 10, according to one embodiment of the present invention, includes a composite 11 formed by the combination of at least one fiber 12 in a matrix 14. As discussed above, a large number of fibers 12 are held together by and in matrix 14 and form the resulting composite 11. In a preferred embodiment fiber 12 is a carbon fiber. The matrix 14 may be any matrix material now known or hereafter developed such as polymer, ceramics, metal or graphite, for example only and not by way of limitation.」

<日本語訳>

「本発明の好ましい実施形態を図1-3に例示する。特に図1を参照すると、本発明の一実施形態による絶縁繊維センサ10は、マトリックス14内の少なくとも一つの繊維12の組み合わせによって形成された複合体11を含む。上述したように、多数の繊維12がマトリックス14によってマトリックス中に保持され、得られる複合体11を形成する。好ましい実施形態では、繊維12は炭素繊維である。マトリックス14は、例えば、ポリマー、セラミック、金属又はグラファイトなどの、現在知られているか又は今後開発される任意のマトリックス材料であってもよいが、これらに限定されるものではない。」

(ウ) 明細書8欄26~32行

「Insulated fiber 16 (as best seen in FIG. 2) is connected with composite 11. That is, insulated fiber 16 may be located on the surface 18 of the composite 11, matrix 14, or embedded within the interior 20 of the composite 11, matrix 14. Or insulated fiber 16 may be surrounded or bundled within a group of fibers 12 as shown in FIG. 2 and the group contained within matrix 14.」

<日本語訳>

「絶縁繊維16(図2に最もよく示されている)は、複合体11に接続されている。すなわち、絶縁繊維16は、複合体11、マトリックス14の表面18上に位置してもよく、又は複合体11、マトリックス14の内部20内に埋め込まれてもよい。あるいは、絶縁繊維16は、図2に示されるように、繊維12のグループ内に囲まれるか又は束ねられてもよく、グループは、マトリックス14内に含まれる。」

(エ) 明細書8欄33~44行

「Insulated fiber 16 is covered by insulation 22. Insulation 22 isolates insulated fiber 16 from direct contact with matrix 14 and/or fibers 12. Importantly, Applicant has determined that the thickness of insulation 22 is critical to the proper performance of the invention. The insulation 22 can not be too thick or it will fail to provide accurate and usable in-situ data. Thus, by experimentation, Applicant has determined that the preferred thickness of the insulation 22 is less than approximately five times the diameter of fibers 12 as more clearly illustrated in FIG. 2. Said another way, the diameter of the insulation 22 is preferably less than approximately eleven times the diameter of the fibers 12.」

<日本語訳>

「絶縁繊維16は、絶縁体22によって覆われている。絶縁体22は、絶縁された繊維16をマトリックス14及び/又は繊維12との直接的な接触から隔離する。重要なことに、本出願人は、絶縁体22の厚さが本発明の適切な性能にとって重要であると判断した。絶縁体22は、厚すぎることができない、さもないと、正確で使用可能な現場データを提供することができない。したがって、実験により、本出願人は、図2により明確に示すように、絶縁体22の好ましい厚さが繊維12の直径の約5倍未満であることを確認した。別の言い方をすれば、絶縁体22の直径は、繊維12の直径の約11倍未満であることが好ましい。」

(オ) 明細書8欄45~51行

「Still referring to FIG. 1, measurement device 24 is connected with the insulated fiber 16. Measurement device 24 is preferably an electrical resistance measurement device such as a mulitmeter, for example only and not by way of limitation. Connection is made by any means now known or hereafter developed such as wires 26 from the insulated fiber 16 as illustrated.」

(当審注:第二文の「mulitmeter」は「multimeter」の明らかな誤記であると認められる。)

<日本語訳>

「さらに図1を参照すると、測定装置24は絶縁繊維16に接続されている。測定装置24は、例えばマルチメータのような電気抵抗測定装置であることが好ましいが、これに限定されるものではない。接続は、図示のような絶縁繊維16からのワイヤ26のような、現在知られている又は今後開発される任意の手段によって行われる。」

(カ) 明細書9欄22~31行

「FIG. 2, also illustrates the preferred embodiment of the invention in which fibers 12 have a diameter 36. Insulated fiber 16 is, preferably, a fiber that is the same as or similar to fiber 12 in all respects including diameter 36. As shown, the thickness of insulation 22 is clearly less than approximately five times the diameter 36 of the fiber 12. This, again, Applicant has discovered is a critical element for ensuring real time, in-situ measurements of what is occurring in and around fibers 12 while effectively eliminating “noise” from the surrounding fibers 12.」

<日本語訳>

「図2はまた、繊維12が直径36を有する本発明の好ましい実施形態を示す。絶縁繊維16は、好ましくは、直径36を含むすべての点で繊維12と同一又は類似の繊維である。図示のように、絶縁体22の厚さは、繊維12の直径36の約5倍よりも明らかに小さい。これもまた、本出願人は、周囲の繊維12から「ノイズ」を効果的に除去しながら、繊維12の中および周囲で何が起こっているかをリアルタイムでその場で測定することを確実にするための重要な要素であることを発見した。」

(キ) 図1

「
[図:0001402207000005.jpg]
」

(ク) 図2

「
[図:0001402207000006.jpg]
」

イ 引用文献2技術事項の認定

上記アに摘記された事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2技術事項]

「絶縁繊維センサ10が、マトリックス14内の少なくとも一つの繊維12の組み合わせによって形成された複合体11を含み、多数の繊維12がマトリックス14によってマトリックス中に保持され、得られる複合体11を形成し、繊維12は炭素繊維であり、(摘記事項(イ))
絶縁繊維16は、繊維12のグループ内に囲まれるか又は束ねられてもよく、グループは、マトリックス14内に含まれるものであり、(摘記事項(ウ))
絶縁繊維16は、絶縁体22によって覆われており、絶縁体22は、絶縁された繊維16をマトリックス14及び/又は繊維12との直接的な接触から隔離するものであり、(摘記事項(エ))
「絶縁層」という用語は、コーティング絶縁繊維とその周囲との間で電流漏れが伝導するのを防止するために繊維上に堆積されたポリマーコーティング、セラミック、ガラス、ダイヤモンドなどとして定義され、(摘記事項(ア))
測定装置24は絶縁繊維16に接続されており、測定装置24は、例えばマルチメータのような電気抵抗測定装置であり、接続は、絶縁繊維16からのワイヤ26によって行われるものであり、(摘記事項(オ))
絶縁繊維16は、直径36を含むすべての点で繊維12と同一又は類似の繊維であること。(摘記事項(カ))」

(3) 周知技術について

ア 引用文献7の記載事項

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当審において新たに引用する文献である特開2003-82625号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。

(ア) 段落【0030】~【0035】、【図6】~【図8】

「【0030】図6~図8に例示した電気接続部品20は、プラスチック複合材10間で導電性繊維束11を4対4で簡単に一括接続できる。この電気接続部品20は、プラスチック複合材10の端部に連結して通電端子部と電気導通可能に接続されるコネクタC1、C2を電線21の両端に取り付けた構成になっている。なお、コネクタC1、C2の構成は同じであるため、両コネクタC1、C2に共通の構成を説明する場合、「コネクタC」と称する場合がある。
【0031】このコネクタCは、プラスチック複合材10の長手方向両端部に形成されたネジ部17に螺着可能な雌ネジを構成するリング部22の内側に、可動端子部23と、付勢部材24(ここではスプリング。以下「スプリング24」と称する場合がある)とを収容した構成になっている。前記可動端子部23は、リング部22内にて該リング部22の中心軸線回りに回転自在かつリング部22の中心軸線に沿って移動自在になっている端子部本体27の前面27a側(図7(a)、(b)左側)に、位置決めピン25と4本のピン端子26a~26dとを突設させた構成になっている。但し、端子部本体27ではピン端子26a~26d間の電気絶縁性を確保している。
【0032】このコネクタCをプラスチック複合材10の端部に接続するには、まず、プラスチック材12の端面12aに穿設されている位置決め穴12bに位置決めピン25を挿入し、次いで、ネジ部17にリング部22をねじ込んでいけば良い。ここで、各ピン端子26a~26dは端子部本体27からの突出長を一定に揃えているが、位置決めピン25の端子部本体27からの突出長は各ピン端子26a~26dに比べて数mm~十数mm程度長い。しかも、接続前の状態では、可動端子部23は、スプリング24によってリング部22の接続方向前端(図7(a)、(b)左側)へ押し出された状態になっており、位置決めピン25がリング部22から接続方向前側に突出状態になっているから、位置決め穴12bへの位置決めピン25の挿入作業は、位置決め穴12b及び位置決めピン25を目視確認しながら効率良く行える。
【0033】プラスチック材12の端面12aの位置決め穴12bに位置決めピン25を挿入すると、コネクタ20の4本のピン端子26a~26dが、プラスチック複合材12の端面12aの4つの通電端子部14に個別に位置決めされる。そして、ネジ部17にリング部22をねじ込んでいくと、各導電性繊維束11個別に設けられている通電端子部14に各ピン端子26a~26dが1対1で当接される。また、ネジ部17へのリング部22のねじ込みによって、可動端子部23がスプリング24を押し縮めつつリング部22後ろ側に向けて押し込まれ、このスプリング24の付勢力が各ピン端子26a~26dの通電端子部14に対する押し付け力として作用するため、各ピン端子26a~26dの通電端子部14との間の電気導通可能な接続状態が確実に確保される。
【0034】図6に示すように、各コネクタC1、C2の可動端子部23からリング部22後端に突出されたブーツ部28の側面には、可動端子部23の向きを示す表示28aが形成されている。図7(c)の模式図に示すように、電気接続部品20では、各コネクタC1、C2における位置決めピン25及びピン端子26a~26dと表示28aとの位置関係が一致され、しかも、表示28aに対する位置関係が対応するピン端子同士が電線21の芯線21a~21dを介して接続されている。このため、該電気接続部品20の2つのコネクタC1、C2をそれぞれプラスチック複合材10の導電性繊維束11と接続すると、各プラスチック複合材10の導電性繊維束11の内、表示28aに対する位置関係が同じ導電性繊維束11同士が電線21の芯線21a~21dを介して接続される。
【0035】図7(c)は、電気接続部品20を、図4、図9に例示したセンサユニット41を構成する隣り合うプラスチック複合材10間の接続に利用した場合を例示している。電気接続部品20の2つのコネクタC1、C2をそれぞれプラスチック複合材10の導電性繊維束11と接続した後、電線21の可撓性等を利用して、各コネクタC1、C2の表示28aが同じ側、例えば図3(b)右側を向くように向きを統一すると、この電気接続部品20を介して接続されている各プラスチック複合材10の向きが位置決めされる。この状態では、前述のように、表示28aに対する位置関係が同じ導電性繊維束11同士が電線21の芯線21a~21dを介して接続されているから、例えば、各プラスチック複合材10の下側の導電性繊維束111同士が電線21の芯線21aを介して接続され、各プラスチック複合材10の上側の導電性繊維束112同士が電線21の芯線21bを介して接続されている。」
「【図6】
[図:0001402207000007.jpg]
」
「【図7】
[図:0001402207000008.jpg]
」
「【図8】
[図:0001402207000009.jpg]
」

(イ) 段落【0069】~【0072】、【図18】

「【0069】(第2実施形態)次ぎに本発明の第2実施形態を説明する。図17、図18(a)、(b)に示すように、本実施形態の歪み検知機能付き防護柵40は、道路41横や道路41近傍に存在する地山T斜面上に立設されて地山T斜面から崩落した土砂T1や雪塊や岩石(落石T2)の道路41(他方の領域)への流入を防止する防護柵42を利用して組み立てたものであり、防護柵42と、この防護柵42に取り付けた複数本のプラスチック複合材10によって構成されたセンサユニット43と、このセンサユニット43の両端にて該センサユニット43のセンシング回路71~74と接続された抵抗測定器60と、この抵抗測定器60に接続された検知信号出力部61(図17では検知信号出力部の図示を省略している)とを有して構成されている。
【0070】図18(a)、(b)に示すように、前記防護柵42は、地盤に立設された複数本の支柱44によって、横方向に延在する細長形状の防護横材45を複数本上下に配列状態に支持して、地山T斜面の勾配(図18(b)矢印P)に直交するようにして立設する壁状に構成されており、上下に連設された複数本の防護横材45によって、支柱44の地山T斜面上流側(図18(b)右上側。一方の領域)からの崩落土砂T1や雪塊、落石T2等を受ける受圧面46を形成している。各防護横材45には、その長手方向に沿わせるようにして棒状のプラスチック複合材10が固定されている。この防護柵42に設けられた各プラスチック複合材10は、上下方向に隣り合うプラスチック複合材10間で4本の導電性繊維束11同士を電気導通可能に接続して、複数本のプラスチック複合材10を電気的に直列に接続してなるセンサユニット43を構成している。センサユニット43を構成する各プラスチック複合材10は、図19に示すように、2対、合計4本の導電性繊維束11の内、地山T斜面の勾配Pに沿った方向に1対の導電性繊維束11が対向配置され、前記勾配Pに垂直の方向に別の一対の導電性繊維束11が対向配置されている。このセンサユニット43は、各プラスチック複合材10の4本の4本の導電性繊維束11同士の接続によって形成された4本のセンシング回路71~74を有している。なお、プラスチック複合材10間での4本の導電性繊維束11同士の接続には、ここでは、前述図6~図8に例示した電気接続部品20を採用しているが、電気接続部品としては、後述のようにセンサユニット43の各センシング回路71~74の配置を一定に維持する接続を簡単に実現できるものであれば良く、電気接続部品20以外の構成も採用可能である。
【0071】センサユニット43を構成する各プラスチック複合材10でのセンシング回路の配置位置は一定になっており、つまり、センシング回路71は各プラスチック複合材10間にて勾配下流側の導電性繊維束11(図19中11P1)同士を接続したものであり、センシング回路72は勾配上流側の導電性繊維束11(図19中11P2)同士を接続したものであり、センシング回路73は下側の導電性繊維束11(図19中11P3)同士を接続したものであり、センシング回路74は上側の導電性繊維束11(図19中11P4)同士を接続したものである。
【0072】各センシング回路71~74は、センサユニット43の両端での導電性繊維束11と抵抗測定器60との接続によって、抵抗測定器60に個別に接続され、個別に電気抵抗が測定される。また、抵抗測定器60に接続された検知信号出力部61は、抵抗測定器60での各センシング回路71~74の電気抵抗の測定結果に基づいて異常(防護柵42の変形)が検知されたときに、異常検知信号を出力する。」
「【図18】
[図:0001402207000010.jpg]
」

(ウ) 段落【0083】

「【0083】通電用端子部としては、プラスチック材の長手方向の端面に形成した導電層に限定されず、例えば、プラスチック材の長手方向端面に突出させた導電性繊維束自体、導電性繊維束先端に接続されたピン端子、プラスチック材の長手方向端面から窪んだ凹所内に露出された導電性繊維束先端等、各種構成が採用可能である。通電用端子部に接続するコネクタ等も、この通電用端子部の具体的構成に対応して電気導通可能に接続できる構成のものを採用することは言うまでも無い。」

イ 引用文献8の記載事項

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当審において新たに引用する文献である国際公開第2016/159245号(以下「引用文献8」という。)には、以下の記載がある。

(ア) 段落[0191]~[0204]、[図23]、[図24]

「[0191] 次に、本実施形態において、複数の通電路92を形成する際の通電回路の構成を図23から図27を用いて示す。
[0192] 図23は、通電路付部材202に形成される通電回路201を示す。通電回路201は、電気抵抗となる複数の通電路92が並列に接続されて構成される(図23(a)参照)。これにより、例えば、通電路付部材202が壁紙や板材などのように所望の広域な面積を有する場合、多数の通電路92を分散配置できるので、各通電路92近傍の歪等を検知することが可能となる。また、全ての通電路92に対して、共通の端子A、端子Bとなる一対(又は複数対)の良導体から電圧が印加されるので、通電回路201の回路構成を単純化できる。
(中略)
[0198] 図24は、図23で示した通電回路201の変形例である二次元マトリックス状の通電回路204の例を示す。図24(a)の二次元マトリックス通電回路204は、電気抵抗となる複数の通電路92が、メッシュ状(格子状)に相互接続して構成される。通電路92と通電路92の間は良導体で形成された回路パターンで接続されている。通電回路204は、電気抵抗を測定するための端子A、端子B、端子C、端子Dを備えており、例えば端子Aと端子Cの間の抵抗を測定することで、通電路付部材202の変化をセンシングすることができる。
[0199] また、通電路92が全て同じ電気抵抗だとしても、複数の通電路92のいずれかが断線や故障した場合、一個所の接続が切れたのか、二個所以上の接続が切れたのかといった大まかな故障情報を簡単に得ることができる。また各通電路92については、それぞれ例えばキロオーム単位で異なる素数の抵抗値、すなわち2キロオーム、3キロオーム、5キロオームといった異なる値を備えていれば、通電路92が形成された通電路付部材202のどの部分に破断等の支障が起こったのか、端子間の抵抗を測定すれば推定することが可能である。例えば、全ての抵抗値を素数に設定すれば、並列回路における合成抵抗値に含まれる素数積の因数分解性から、断線した抵抗値を推測することができ、結果として、断線した通電路205の場所を特定できる。
[0200] 図24(b)には二次元マトリックス状の通電回路204の更なる変形例を示す。この通電回路204では、マトリックス状に配置される通電路92が、互いに直列接続される。この直列回路の場合、どこかで断線が生じると、通電回路204の全体でセンシングができなくなるので、断線によって以上を検知することが可能になる。一方で、図23(a)や図24(a)で示した並列接続を含む通電回路の方が、一部が断線しても残部でセンシングが可能となり、長期間に亘る計測用途に好適となる。
[0201] また、図24(b)では端子A、端子Bのみを図示しているが、各通電路92(又はある特定の複数の通電路92群)を測定する端子を設けることで、構造体のどこに損傷が生じているかを、事後的に特定できるようにしてもよい。従って定期センシングでは端子Aと端子Bの間の抵抗を測定することで、通電路付部材202全体についての安全性を容易にチェックできるとともに、何らかの異常を検知した後や、地震等の突発的な事象後の詳細検査時には、各通電路92間を個別測定することで、通電路付部材202のどの部分で損傷が生じているかを特定しても良い。
[0202] 図23及び図24のように、通電路92が二次元平面に広がった通電回路は、長さ、細さが変化すれば電気抵抗も変化する。従って、この通電回路が形成されたシート状又はメッシュ状の通電路形成部材を、道路、床、壁等の建造物等に埋設することで、アスファルトやコンクリート等の硬化時、硬化後に生じる歪みをリアルタイムにセンシングすることができる。またこのようなシート状の部材を埋設又は貼り付ける用途の応用として、ダム、空港滑走路、港湾、高層建築物、上下水道網、高速道路、鉄道の高架橋等巨大構造物の建設工程解析、故障解析等に特に好適である。また、各通電回路の一部にメモリを配置しておき、センシング履歴データを保存するようにすれば、建設工程時に生じる振動現象等の履歴を正確に蓄積することができ、事後的なデータ改ざん等を防止できる。
[0203] また、上記図23及び図24の事例では、通常、通電路付部材の歪等を検知している。更に、通電回路に切断部位が生じた場合は、その位置を容易に特定できる。一方で、そもそも通電路付部材の切断現象(即ち、通電回路の断線現象)を限定的に検知する目的で活用することもできる。
[0204] 更に図24では、複数の通電路92を二次元マトリクス状に相互接続する場合を例示したが、三次元マトリクス状(立体状)に相互接続しても良い。通電路付部材が立体構造物の場合に好適である。」
「[図23]
[図:0001402207000011.jpg]
」
「[図24]
[図:0001402207000012.jpg]
」

(イ) 段落[0212]、[図28]

「[0212] 図28は、通路付部材の他の実施形態を示す。本実施形態の通路付部材217は、複数の通電回路を有する帯状の材料となる。この通電路付部材217は、所謂スマート包帯であり、図28(a)のように、橋脚等の柱状の構造物212にらせん状に巻きつけられて、構造物212を補強すると同時に、補強後の自身の変形等によって物理現象を検出する。通電路付部材217への通電回路のプリント方法は、転写、エッチング、塗布、半導体プロセス等でもよい。通電路付部材217の材質は、布、不織布、樹脂、炭素繊維、金属繊維、ケイ素繊維、ガラス繊維等の各種強化繊維を含む繊維強化合成樹脂、紙、ゴム、シリコーン等、様々である。通電路の材質はアルミでも銅でも有機伝導体でもその他の電気伝導体でも良い。(以下省略)」

「[図28]
[図:0001402207000013.jpg]
」

(イ) 段落[0214]

「[0214] <その他の観点>
上記以外にも、本発明は、多用な機械部品に適用することが可能である。
(中略)
飛行機としての適用としては、例えば、レドーム、車輪、ギャレー、客席、主翼、水平尾翼、垂直尾翼、フラップ、スポイラー、ジェットエンジン、ナビゲーションライト、燃料タンク、エルロン、エレベーター、ラダー、主円筐、縦通材、カウリング、主翼桁、翼端版、胴体外板、円筐、水平安定板、圧力隔壁、垂直安定板、カナード、窓、ドア、化粧室、貨物室、非常用設備、プロペラ、スタックディスチャージャー、ピトー管等を挙げることが出来る。(以下省略)」

ウ 周知技術の認定

前記ア及びイにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は周知技術である(以下「周知技術」という。)

[周知技術]

「複数の繊維センサセルのうち隣接する繊維センサセルの端部同士を電気的に結合して、複数の繊維センサセルが直列に接続されること。」

(4) 慣用技術について

ア 引用文献9の記載事項

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当審において新たに引用する文献である特開2007-294309号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の記載がある。

「【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る融雪ネットの平面図、図2は同融雪ネットの拡大部分平面図、図3は同融雪ネットの拡大部分断面図である。
【0015】
この融雪ネットNは、複数本のヒーターコード1と複数本の合成樹脂コード2を直交させてネット状に配置し、ヒーターコード1と合成樹脂コード2の交点を熱融着等の手段で接合一体化したものであって、各ヒーターコード1の両端にはコネクタ3が設けられており、隣り合うコネクタ3,3同士は通電用のジャンパーコード4で接続されている。そして、この融雪ネットNの下端両側のコネクタ3,3には、リードコード8,8が接続されている。
続きを表示(全12行)
【0016】
上記のヒーターコード1は、図2に示すように、ステンレス線、炭素繊維、鋼合金線、ニクロム線などの発熱抵抗線11を、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの可撓性のある合成樹脂12で被覆したものあって、特に、発熱抵抗線11にポリアミド繊維などの補強繊維を撚り合わせて引張り強度を高めたものが好ましく使用される。このヒーターコード1の発熱抵抗線11の端部にはレセクタブル5が接続固定されている。
【0017】
また、上記の合成樹脂コード2は、ヒーターコード1の被覆用の合成樹脂12と同様の可撓性のある合成樹脂22からなるコードであって、特に、図2に一部破断して示すように、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維などを撚り合わせた補強用芯線21を上記の合成樹脂22で被覆した引張り強度の大きいものが好ましく使用される。
【0018】
また、上記のジャンパーコード4は、図2に一部破断して示すように、銅線、ステイレス線などの導線41を、上記ヒーターコード1の被覆用の合成樹脂12と同様の可撓性のある合成樹脂42で被覆したものであって、このジャンパーコード4の導線41の端部にもレセクタブル5が接続固定されている。
【0019】
ヒーターコード1の両端に設けられるコネクタ3は、図2に示すように、ヒーターコード1の端部1aと、その両側のジャンパーコード4,4の端部4a,4aと、これらのコードの端部1a,4a,4a(発熱抵抗線と導線の端部)に接続固定されたレセクタブル5,5,5と、これらのレセクタブルを導通させるショートバー6とを、例えばインサート成形等の手段により、硬質合成樹脂よりなるコネクタ躯体31中に埋め込んで一体化したものであって、ヒーターコード1の端部1aもジャンパーコード4,4の端部4a,4aも、コネクタ躯体31のネット側の側面31aから互いに平行に埋入された状態となっている。そのため、ジャンパーコード4,4は融雪ネットNの内側に凸湾曲して、ヒーターコード1とヒーターコード1の間に配線されている。」
「【図1】
[図:0001402207000014.jpg]
」
「【図2】
[図:0001402207000015.jpg]
」

イ 引用文献10の記載事項

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当審において新たに引用する文献である特開平8-5695号公報(以下「引用文献10」という。)には、以下の記載がある。

「【0003】図3には、その試験の概要説明図を示す。図に示すように、例えば一対の心線2が相互に線間短絡を生じていないかどうかを試験するために導通試験装置5が接続される。即ち、一対の心線2の一端2Aに導通試験装置5を接続し他端を開放して、この心線2に試験電流を供給する。これによって、心線2が相互に短絡していれば、例えばランプ6が光り、ブザー7が鳴る。また、心線2の導体が途中で断線しているかどうかを調べるためには、心線2の他端2Bにジャンパー線4を接続し、導通試験装置5から試験電流を供給する。試験電流が流れれば心線2は正常であり、試験電流が流れなければ心線2は断線している。これもランプ6やブザー7によって認識する。」

「【図3】
[図:0001402207000016.jpg]
」

「【0012】また、この他にこの装置には、導通試験のために端子部11とは別に対間短絡用の端子部11*が設けられている。図5に、このような端子部11*の結線図を示す。この図に示すように、端子部11*の各端子は、それぞれボックス30の内部で、対を構成する端子が、互いにジャンパー線4によって短絡されている。これは、先に図3を用いて説明した被試験ケーブルの反対側で対間を短絡するために使用される。」

「【図5】
[図:0001402207000017.jpg]
」

ウ 慣用技術の認定

前記ア及びイにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって広く慣用された技術である(以下「慣用技術」という。)

[慣用技術]

「隣接する導電性線状部材の端部にある端子同士をジャンパにより接続すること。」

2 対比・判断

(1) 対比

本願発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「構造部材10」は、「炭素繊維で強化された構造部材であって、炭素繊維は高い引張強度を有し、プラスチック積層体のための強化繊維として使用されるものであ[る]」から、少なくとも炭素繊維及びプラスチック積層体の二つからなる構造部材であり、本願発明の「複合構造物」に相当する。

よって、本願発明と引用発明は、「複合構造物」の発明である点で一致する。

イ 引用発明の「構造部材10」の「積層体」を形成する「平行な繊維又は繊維組織を含む複数の層20、21、22」は、本願発明の「各々が平行繊維から形成されている」「複数の層」に相当する。

よって、前記アを踏まえると、本願発明と引用発明は、「該複合構造物は、複数の層に形成され、前記複数の層の各々が平行繊維から形成されている、複合構造物を含[む]」という点で一致する。

ウ 引用発明の「一つの層20の炭素繊維23」は、「荷重方向に配向され」、「構造部材10の端部において」、「電気接触要素12と導電接続しており、各端部の接触要素12は、共通に接続され、構造部材の繊維を通して長さ方向に定電流を駆動する定電流源13に接続され、接触要素12は、炭素繊維によって引き起こされる電圧降下を検出する電圧計14にさらに接続され」るから、引用発明の「一つの層20の炭素繊維23」は、本願発明の「複数の繊維センサセル」に相当する。

そうすると、引用発明の「一つの層20」は、本願発明の「複数の繊維センサセルを含む」「前記複数の層のうちの少なくとも1つの層」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、「前記複数の層のうちの少なくとも1つの層が、複数の繊維センサセルを含[む]」という点で共通する。

(2) 一致点及び相違点の認定

前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、以下のイに示す相違点1~相違点3において相違する。

ア 一致点

「 複合構造物であって、該複合構造物は、
複数の層に形成され、前記複数の層の各々が平行繊維から形成されている、複合構造物を含み、
前記複数の層のうちの少なくとも1つの層が、複数の繊維センサセルを含む、
複合構造物。」

イ 相違点

(ア) 相違点1

本願発明では、「繊維センサセル」が「平行繊維の間に分布した」ものであるのに対して、引用発明では、「炭素繊維23」が、平行繊維の間に分布したものであるか明らかではない点。

(イ) 相違点2

本願発明では、「前記繊維センサセルの各々(100)が、内部繊維コア(110)、及び、前記内部繊維コアを覆って形成された非導電層(120)を備え[る]」のに対して、引用発明では、炭素繊維23が非導電層に覆われていない点。

(ウ) 相違点3

本願発明では、「前記複数の繊維センサセルの各々が、前記繊維センサセルの第1端部にある第1接続端子であって、対応する前記内部繊維コアの第1端部に接続された第1接続端子を有し、かつ、前記繊維センサセルの第2端部にある第2接続端子であって、対応する前記内部繊維コアの第2端部に接続された第2接続端子を有し、

前記複数の繊維センサセルのうち隣接する繊維センサセルは、ジャンパによって直列に接続され、前記ジャンパが、隣接する前記繊維センサセルの第1端部又は第2端部を電気的に結合する」のに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(3) 判断

ア 相違点1について

前記相違点1について検討すると、引用文献2技術事項には、マトリックス14内の少なくとも一つの繊維12の組み合わせによって形成された複合体11を含む絶縁繊維センサ10において、炭素繊維である絶縁繊維16(「繊維センサセル」に相当)が、繊維12(「平行繊維」に相当)のグループ内に囲まれるか又は束ねられることが開示されており、複合構造物において、繊維センサセルが平行繊維の間に分布したものであることは、公知の技術である。

そして、かかる公知の技術を引用発明の「炭素繊維23」に適用することにより、前記相違点1に係る本願発明の構成とすることに当業者ならば格別の困難性はない。

イ 相違点2について

前記相違点2について検討すると、引用文献2技術事項には、炭素繊維である絶縁繊維16(「繊維センサセル」に相当)が、絶縁体22によって覆われており、電気抵抗測定装置である測定装置24に接続されることが開示されているところ、絶縁体22は、コーティング絶縁繊維とその周囲との間で電流漏れが伝導するのを防止するためのものであるから、繊維センサセルの各々が、内部繊維コア、及び、前記内部繊維コアを覆って形成された非導電層を備えることは、公知の技術である。

そして、かかる公知の技術を引用発明の「炭素繊維23」に適用することにより、前記相違点2に係る本願発明の構成とすることに当業者ならば格別の困難性はない。

ウ 相違点3について

「複数の繊維センサセルのうち隣接する繊維センサセルの端部同士を電気的に結合して、複数の繊維センサセルが直列に接続されること」は、当業者にとって周知の技術である(前記周知技術を参照)。

また、「隣接する導電性線状部材の端部にある端子同士をジャンパにより接続すること」は、当業者にとって広く慣用された技術である(前記慣用技術を参照)。

したがって、引用発明の「炭素繊維23」(「繊維センサセル」に相当)の接続態様を前記周知技術に倣って隣接する炭素繊維23の繊維端部11a同士を直列に接続するようにし、その際に接続手段として前記慣用技術を採用して繊維端部11aに端子を接続し、端子同士をジャンパにより接続するように構成することは、当業者ならば格別の困難性はない。

エ 総合評価

前記相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術及び慣用技術から当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

よって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項、周知技術及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 請求人の主張について

ア 請求人の主張の概要

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請求人は、令和5年3月6日に提出された意見書において、次の主張をしている。

引用文献6及び引用文献2には、隣接する繊維センサセルがジャンパによって直列に接続されることについて、記載も示唆もない。

隣接する繊維センサセルをジャンパによって直列に接続することにより、リード線の長さを短縮できるという効果が奏され(本願明細書の段落[0026]参照)、当該効果は、航空機の翼の長手方向に延在する繊維にとっては、特に有利になり得る。

イ 請求人の主張に対する当審の判断

請求人の上記主張は、前記相違点3に係る構成に関するものであるところ、前記(3)ウにおいて説示したとおり、前記相違点3に係る構成は、周知技術及び慣用技術にすぎないものであり、その効果についても、前記(3)エにおいて説示したとおり、当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-005586

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