特許拒絶査定不服審判
2022-005535
高濃縮液体配合物における粘弾性を制御するためのEO/POブロックコポリマー界面活性剤の使用
- 審判番号
- 2022-005535
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-516584外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月13日
- 審決日
- 2023年09月26日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (C11D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-516584「高濃縮液体配合物における粘弾性を制御するためのEO/POブロックコポリマー界面活性剤の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月 4日国際公開、WO2019/067608、令和 2年11月26日国内公表、特表2020-534414〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)9月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2017年9月27日(以下「本件優先日」という。)(US)米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月 8日付け:拒絶理由通知書
令和3年 7月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年12月 8日付け:拒絶査定(謄本発送は、12月14日)
令和4年 4月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 7月13日 :上申書の提出
第2 令和4年4月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年4月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 濃縮洗浄組成物であって、前記組成物は、前記組成物の合計重量に基づいて、
1重量%~30重量%のプロポキシル化EO/POブロックコポリマー界面活性剤と、
アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、又はこれらの組み合わせから選択される、1重量%~50重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、
アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、又はこれらの組み合わせから選択される、15重量%~50重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と、
プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、1重量%~20重量%の溶媒と、を含み、
前記組成物が、水溶性であり、室温又は40°F(4℃)で測定される900cPs未満の粘度を有し、使用溶液中で1~12のpHを有し、少なくとも18重量%の合計活性濃度を有する低粘弾性液体濃縮物であり、
前記組成物は、エタノールを含まない、組成物。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年7月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 濃縮洗浄組成物であって、前記組成物は、前記組成物の合計重量に基づいて、
1重量%~30重量%のプロポキシル化EO/POブロックコポリマー界面活性剤と、
アルコキシル化もしくは非アルコキシル化の、直鎖もしくは分岐鎖の、カルボキシレート、スルフェート又はスルホネートである、1重量%~50重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、
前記プロポキシル化EO/POブロックコポリマー界面活性剤に加えて、15重量%~70重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と、を含み、
前記組成物が、水溶性であり、室温又は40°F(4℃)で測定される900cPs未満の粘度を有し、使用溶液中で1~12のpHを有し、少なくとも18重量%の合計活性濃度を有する低粘弾性液体濃縮物であり、
前記組成物は、エタノールを含まない、組成物。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「アルコキシル化もしくは非アルコキシル化の、直鎖もしくは分岐鎖の、カルボキシレート、スルフェート又はスルホネートである」、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤について、「アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、又はこれらの組み合わせから選択される」と成分を限定するものであり、また、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「15重量%~70重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤」について、「アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、又はこれらの組み合わせから選択される、15重量%~50重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤」と含有量及び成分を限定するものであり、さらに本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「組成物」が、「プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、1重量%~20重量%の溶媒」を含むことを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本件優先日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2016-505657号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
正に荷電したPEIポリマー;
洗浄剤量の界面活性剤であって、該界面活性剤は、1種もしくは2種以上の、アニオン性界面活性剤、アミンオキシド、およびベタインもしくはスルタインを含む界面活性剤;
を含む発泡性洗浄組成物であって、
0.5質量%未満のコカミドDEAを含む、組成物。」
「【0001】
本発明は、洗浄組成物における使用のための、長期に亘って分子間相互作用の形成(静電的なまたはイオン性の)によって作用する、新規な気泡安定化組成物に関する。そのような気泡安定化組成物は、ポットおよびパン浸漬組成物、ハンドソープ、泡沫分離、ガス探査水除去、食品および飲料発泡洗浄剤、車両洗浄などのそのような洗浄組成物において、規制の圧力下にある慣用の発泡剤の代替として用いることができる。また、本発明は、それらの組成物を製造する方法、およびそれらの組成物を用いる方法に関する。」
「【0070】
<本発明の組成物>
<正に荷電したポリマー>
本発明によれば、正に荷電し種類のポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)およびその誘導体、例えばエトキシル化(PEI)ポリマー、ポリアミン、ポリクワット(polyquats)、ポリグリセロールクワット(quats)、および他のPEI誘導体、それらの塩または混合物を、本発明の組成物に用いることができる。PEIは、高分子アミンまたはポリアミンであり、そしてポリエチレンイミン化合物(PEI)および/またはその誘導体が挙げられる。ポリエチレンイミンとしては、第1級、第2級または第3級アミン化合物を挙げることができる。ポリエチレンイミン化合物および/またはその誘導体としては、直鎖および/または分岐ポリエチレンイミンを挙げることができる。なお更に、ポリエチレンイミンおよび/またはその誘導体は、分子量、トポロジーおよび形状、例えば直鎖、分岐もしくはエチレンイミンの開環重合の結果としての櫛型構造が、有意に変わることができる。Angelescuら、Langmuir、27、9961-9971(2011)を参照、その全体を参照することによって本明細書の内容とする。本発明の態様によれば、漂白活性化剤は、直鎖および/または分岐ポリエチレンイミンであることができる。」
「【0091】
<アニオン性界面活性剤>
本発明は、1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤の使用を意図しており、これは、正に荷電したポリマーと、静電気的に相互作用するか、またはイオン的に相互作用して、気泡安定性を高める。アニオン性界面活性剤は、疎水性物質上の電荷が負であるので、アニオンに分類される表面活性物質であるか、あるいは、pHが中性またはそれ以上に高められていない限り、分子の疎水性部分が電荷を帯びない界面活性剤(例えば、カルボン酸)である。カルボキシレート、スルホネート、スルフェートおよびホスフェートは、アニオン性界面活性剤中にみられる極性(親水性)可溶化基である。それらの極性基に会合するカチオン(対イオン)では、ナトリウム、リチウムおよびカリウムが水溶性を与え、アンモニウムおよび置換アンモニウムイオンは、水溶性と油溶性の両方を与え、そしてカルシウム、バリウム、およびマグネシウムは、油溶性を促進する。
【0092】
当業者は理解するように、アニオンは、優れた洗浄性界面活性剤であり、そして従って重質洗剤組成物への添加に伝統的に好まれる。一般的に、アニオンは、高い気泡プロファイルを有しており、それが本発明の発泡性洗浄組成物に有用である。アニオン性界面活性化合物は、本組成物内で洗浄性以外の特殊な化学的または物理的性質を与えるのに有用である。
【0093】
大部分の大量商業的アニオン性界面活性剤は、当業者に知られており、そして「Surfactant Encyclopedia」、Cosmetics Toiletries、第104巻、第2号、p.71-86(1989)に記載されている、5つの主要な化学的分類および付加的な部分群に更に分割することができる
【0094】
第1の分類は、アシルアミノ酸(および塩)、例えばacylgluamates、アシルペプチド、サルコシナート(例えば、N-アシルサルコシナート)、タウレート(例えば、N-アシルタウレートおよびメチルタウリドの脂肪酸アミド)などを含んでいる。第2の分類は、カルボン酸(および塩)、例えばアルカン酸(およびアルカノエート)、エステルカルボン酸(例えば、アルキルスクシネート)、エーテルカルボン酸などを含んでいる。第3の分類は、スルホン酸(および塩)、例えば、イセチオン酸塩(例えば、アシルイセチオン酸塩)、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルホネート、スルホサクシネート(例えば、スルホサクシネートのモノエステルおよびジエステル)などを含んでいる。特に好ましいアニオン性界面活性剤は、アルファオレフィンスルホネートである。第4の分類は、スルホン酸(および塩)、例えば、イセチオン酸塩(例えば、アシルイセチオン酸塩)、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルホネート、スルホサクシネート(例えば、スルホサクシネートのモノエステルおよびジエステル)などを含んでいる。第5の分類は、硫酸エステル(塩)、例えばアルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェートなどを含んでいる。第5の分類は、硫酸エステル(および塩)、例えばアルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェートなどを含んでいる。特に好ましいアニオン性界面活性剤は、ナトリウムラウレル(laurel)エーテルスルフェートである。」
「【0102】
<両性界面活性剤>(アミンオキシド、ベタインおよびスルタイン)
また、本発明は、両性および/または両性イオン性界面活性剤を含んでおり、約10~約18個の炭素原子の1つのアルキル部分ならびに、約1~約3個の炭素原子を含むアルキル基およびヒドロキシアルキル基からなる群から選ばれた2つの部分を含む水溶性アミンオキシド;約10~約18個の炭素原子の1つのアルキル部分ならびに、約1~約3個の炭素原子を含むアルキル基およびヒドロキシアルキル基からなる群から選ばれた2つの部分を含む水溶性ホスフィンオキシド;ならびに約10~約18個の炭素原子の1つのアルキル部分ならびに、約1~約3個の炭素原子のアルキルおよびヒドロキシアルキル部分からなる群から選ばれた部分を含む水溶性スルホキシドが挙げられる。」
「【0120】
<付加的な界面活性剤>
付加的な界面活性剤は、本発明を用いる幾つかの組成物中に、上記のものに加えて存在することができる。付加的な界面活性剤または界面活性剤混合物は、ノニオン性(上記の)、半極性のノニオン性、アニオン性(上記の)、カチオン性、両性、または両性イオン性界面活性剤、あるいはそれらのいずれかの組合わせから選択することができる。少なくとも幾つかの態様では、これらの界面活性剤は、水溶性または水混和性である。本発明のプロセスおよび製品中での使用のために選ばれた特定の界面活性剤または界面活性剤混合物は、最終的な有用性、例えば、製造法、物理的な製品の形態、使用pH,使用温度、気泡制御、および汚れの種類、の条件に依存する。界面活性剤の議論については、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第8巻、p.900-912を参照。本組成物は、付加的な界面活性剤を、所望の水準の洗浄性を与えるのに有効な量、例えば、0~20質量%、または1.5~15質量%で含むことができる。これ以降に、既に述べられてはいない界面活性剤の異なる種類の例の議論が続けられる。
【0121】
<ノニオン性界面活性剤>
界面活性剤は、好ましくはノニオン性界面活性剤である。本発明で有用なノニオン性界面活性剤は、通常は、有機疎水性基および有機親水性基の存在によって特徴付けられ、そして典型的には、有機脂肪族、アルキル芳香族、もしくはポリオキシアルキレン疎水性化合物と、親水性アルカリ(alkaline)オキシド部分との縮合によって生成され、親水性アルカリ(alkaline)オキシド部分は、一般的な方法では、エチレンオキシドまたはその多水和(polyhydration)生成物、ポリエチレングリコールである。実際に、反応性水素原子を備えたヒドロキシル、カルボキシル、アミノまたはアミノ基を有するいずれかの疎水性化合物は、エチレンオキシド、またはその多水和付加物(polyhydration)、またはアルコキシレン、例えばプロピレンオキシドとのその混合物、と縮合して、ノニオン性界面活性剤を形成することができる。いずれかの特定の疎水性化合物と縮合した親水性ポリオキシアルキレン部分の長さは、親水性と疎水性の間の均衡の所望の程度を有する水分散性または水溶性化合物をもたらすように、容易に調整することができる。
【0122】
本発明において有用なノニオン性界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
1. プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパンを基にし、エチレンジアミンを開始剤の反応性水素化合物とした、ブロックポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー化合物。開始剤の逐次的なプロポキシ化およびエトキシル化で作られたポリマー化合物の例としては、商業的に入手可能な、BASF Corp.によって製造された商品名Pluronic(商標)およびTetronic(商標)がある。
【0123】
Pluronic(商標)化合物は、エチレンオキシドを、プロピレンオキシドの、プロピレンングリコールの2つのヒドロキシル基への付加によって形成された疎水性基部と縮合することによって形成された2官能性(2つの反応性水素)化合物である。この分子のこの疎水性部分は、1000~4000の分子量である。次いで、エチレンオキシドが、親水性基の間にこの疎水性物質をサンドイッチするように付加され、長さが、最終的な分子の約10質量%~約80質量%を構成するように制御される。」
「【0207】
<ポリオール>
また、本発明の組成物は、ポリオールを含むことができる。ポリオールは、本組成物に付加的な安定性およびヒドロトロープ性を与えることができる。プロピレングリコールおよびソルビトールは、幾つかの好適なポリオールの例である。」
「【0226】
本発明の組成物は記載された液体形態の種類で用いられることを意図されてはいるが、本明細書中の何も、本発明による組成物が、それから更なる量の水で洗浄溶液を形成する使用を制限するようには理解されてはならない。そのような提案された希釈された洗浄溶液では、その洗浄希釈液を形成するように加えられた水の比率が大きくなればなる程、そのように形成された洗浄溶液の速度および/または効率の低下は大きくなる可能性がある。従って、汚れを緩めることに影響する汚れの上のより長い滞留時間および/またはより大量の使用が、必要とされる可能性がある。濃縮された硬質表面洗浄組成物:水の好ましい希釈比率は、質量/質量(”w/w”)比またはあるいは体積/体積(”v/v”)比のいずれでも、1:1~100、好ましくは、1:2~100、より好ましくは、1:3~100、なおより好ましくは、1:10~100、そして最も好ましくは、1:16~85である。」
「【0237】
本発明は、ここに下記の限定するものではない例によって更に説明され、その中で、部およびパーセントは、特に断りのない限り、質量による。
【実施例】
・・・
【0247】
・・・
[図:0001407079000001.jpg]
」
「
[図:0001407079000002.jpg]
」
(イ)引用文献1の【0247】表16に記載された「DEA代替#110」に注目すると、引用文献1には、「「ゼオライト軟水化水」23.50質量%、「AOS,40%」34.00質量%、「SLES,60%」13.0質量%、「ES 8965,PEIエトキシレート」0.50質量%、「BARLOX12,30%」24.00質量%、「PLURONIC N-3」5.00質量%、を含有する発泡性洗浄組成物」の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。
(3)対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明との対比・判断
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「AOS」は、界面活性剤の分野では「α-オレフィンスルホネート」の意味で一般に使用されているところ(特表2014-525739号公報【0065】、特表2004-511626号公報【0045】参照)、引用文献1には、表16に「AOS」の番号として「171318」と記載され、表3では同番号が「C14-C16オレフィンスルホン酸ナトリウム」に付されているため、引用発明の「AOS」は、「C14-C16オレフィンスルホン酸ナトリウム」を意味すると認められ、本件補正発明の「アルキルスルホネート」に相当する。また、引用発明の「SLES」は、界面活性剤の分野では「ラウリルエーテル硫酸ナトリウム」の意味で一般に使用されているところ(特表2014-525739号公報【0065】、特表2004-511626号公報【0045】参照)、引用文献1には、表16に「SLES」の番号として「171405」と記載され、表3では同番号が「ラウリルエーテルエトキシレート硫酸ナトリウム」に付されているため、引用発明の「SLES」は、「ラウリルエーテルエトキシレート硫酸ナトリウム」を意味すると認められ、本件補正発明の「アルキルエーテルスルフェート」に相当する。そして、引用発明は、「AOS,40%」34.00質量%、「SLES,60%」13.0質量%を含むものであり、アニオン性界面活性剤を合計で47質量%含むものであるから、本件補正発明の「アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、又はこれらの組み合わせから選択される、1重量%~50重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤」を充足する。
引用発明の「BARLOX12」は、本願明細書【0146】に実施例で用いた材料として「BARLOX 12:ココアミンオキシド非イオン性界面活性剤(30%の活性ラウリルジメチルアミンオキシド」と記載されていることから、本件補正発明の「アミンオキシド」に相当する。そして、引用発明は、「BARLOX12,30%」24.00質量%を含むものであるから、本件補正発明の「アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、又はこれらの組み合わせから選択される、15重量%~50重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤」を充足する。
引用発明の「PLURONIC N-3」は、引用文献1の【0122】に、「ブロックポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー化合物」の例として、「商品名Pluronic(商標)」と記載されており、また本願明細書の【0042】に、「EO/POブロックコポリマーには、市販のPluronic(登録商標)およびリバースPluronic(登録商標)界面活性剤が含まれ」と記載されていることから、本件補正発明の「プロポキシル化EO/POブロックコポリマー界面活性剤」に相当する。そして、引用発明は、「PLURONIC N-3」5.00質量%を含むものであるから、本件補正発明の「1重量%~30重量%のプロポキシル化EO/POブロックコポリマー界面活性剤」を充足する。
引用発明の「発泡性洗浄組成物」は、引用文献1の【0226】に、「濃縮された硬質表面洗浄組成物」と記載され、「水の好ましい希釈比率」と記載され、水で希釈して用いるとされているので、本件補正発明の「濃縮洗浄組成物」に相当する。
引用発明の「発泡性洗浄組成物」における活性成分の濃度は、「AOS」が、34.00質量%×0.4で13.6質量%、「SLES」が、13.0質量%×0.6で8.16質量%、「ES 8965,PEIエトキシレート」が0.50質量%、「BARLOX12」が、24.00質量%×0.3で7.2質量%、「PLURONIC N-3」が5.00質量%であり、合計で34.46質量%であるから、本件補正発明の「少なくとも18重量%の合計活性濃度を有する」を充足する。
引用発明の「発泡性洗浄組成物」は、エタノールを含まないため、本件補正発明の「前記組成物は、エタノールを含まない」を充足する。
(イ)以上より、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
本件補正発明と引用発明とは、
「濃縮洗浄組成物であって、前記組成物は、前記組成物の合計重量に基づいて、
1重量%~30重量%のプロポキシル化EO/POブロックコポリマー界面活性剤と、
アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、又はこれらの組み合わせから選択される、1重量%~50重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、
アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、又はこれらの組み合わせから選択される、15重量%~50重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と、を含み、
前記組成物が、少なくとも18重量%の合計活性濃度を有する低粘弾性液体濃縮物であり、
前記組成物は、エタノールを含まない、組成物。」
の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
組成物が、本件補正発明は、「プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、1重量%~20重量%の溶媒」を含むのに対し、引用発明は、プロピレングリコール及びヘキシレングリコールを含まない点。
(相違点2) 組成物が、本件補正発明は、「水溶性であり、室温又は40°F(4℃)で測定される900cPs未満の粘度を有し、使用溶液中で1~12のpHを有」するのに対し、引用発明は、水溶性、粘度、pHが特定されていない点。
(ウ)判断
(相違点1について)
引用発明を認定した引用文献1の【0207】には、組成物がポリオールを含むことができ、ポリオールが組成物に安定性及びヒドロトロープ性を与えることができること、プロピレングリコールが好適なポリオールの例であることが記載されている。また、その実施例において、【0247】表3の「DEA代替#12」には、プロピレングリコールを1.50質量%含む組成物の例が記載されている。
そうしてみると、引用発明において、組成物に安定性及びヒドロトロープ性を付与するため、プロピレングリコールを含ませること、その含有量を1.50質量%程度とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件補正発明の効果について検討すると、本願明細書の【0167】~【0170】には、水の代わりにプロピレングリコール及びヘキシレングリコールを用いた例として実施例5が記載されており、粘度及び泡の量を測定しているが、プロピレングリコール及びヘキシレングリコールを用いず水を用いた場合と比較して顕著な効果を奏することが記載されているとは認められない。仮に、顕著な効果を奏するとしても、本件補正発明においては、溶媒としてプロピレングリコール及びヘキシレングリコールに加えて水を用いることを排除しているものではないから、実施例5における粘度及び泡の量は、本件補正発明の一態様についての効果を示すものでしかない。
よって、本件補正発明が、引用文献1の記載から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものであるとは認められない。
(相違点2について)
引用発明の「発泡性洗浄組成物」は、その配合成分と配合量から、「水溶性」であり、「使用溶液中で1~12のpHを有」するものと認められる。また「粘度」についても、本件補正発明同様の含有量で、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤とともに、「プロポキシル化EO/POブロックコポリマー界面活性剤」に相当する「PLURONIC N-3」を含むものであるから、「室温又は40°F(4℃)で測定される900cPs未満の粘度」を有するものといえる。よって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
イ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、引用文献1には、「濃縮洗浄組成物が、「プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、1重量%~20重量%の溶媒」を更に含むことは記載又は示唆されていません。」と主張している。しかしながら、前記ア(ウ)で検討したとおり、引用文献1の【0207】及び【0247】表3には、組成物に安定性及びヒドロトロープ性を付与するため、プロピレングリコールを含むことが記載されているので、当該審判請求人の主張は採用できない。
また、審判請求人は、審判請求書において、引用文献1には、濃縮洗浄組成物が「エタノールを含まないことについて具体的な示唆はありません。」と主張している。しかしながら、前記ア(ア)で検討したとおり、引用文献1の【0247】表16に記載された「DEA代替#110」の成分表から、引用発明にはエタノールが含まれないことが記載されているといえるので、当該審判請求人の主張は採用できない。
また、審判請求人は、審判請求書において、「本願発明は、高い洗浄性能、安定した発泡性、室温又は40°F(4℃)で測定される900cPs未満の粘度を有する濃縮洗浄組成物を提供することができるという顕著な効果を奏します。」と主張している。しかしながら、当該効果は、「プロポキシル化EO/POブロックコポリマー」を含むことによる効果とされており、「プロポキシル化EO/POブロックコポリマー」に相当する「PLURONIC N-3」を含み、かつ粘度を高めるような他の成分を含まない引用発明においても同等の効果を奏するものといえるので、当該効果が、引用発明と比較した顕著な効果であるとはいえない。
また、審判請求人は、審判請求書において、「実施例5に示すように、グリコール系溶媒の添加は、組成物のプロポキシル化界面活性剤が提供する低粘度を維持することを助け、濃縮洗浄組成物を容易に分配することを可能にします。グリコール系溶剤は、界面活性剤を均一に分散させ、低粘度を維持するのに非常に有効です。(グリコール系溶媒を含む)全ての評価された配合物は、室温で粘度の閾値を満たしたことが実証されています(本願明細書段落0170)。」とグリコール系溶媒を用いた効果について主張している。
しかしながら、実施例5の記載から、「プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、1重量%~20重量%の溶媒」を含む場合に、当該溶媒に代えて水を用いた場合と比較して顕著な効果を奏することが記載されているとはいえず、また引用文献1の【0207】に、ポリオールが組成物に安定性及びヒドロトロープ性を与えることが記載されており、界面活性剤の水への分散性を向上させることは予測し得ることであるから、審判請求人の主張する効果が、引用文献1の記載から当業者が予測し得ない顕著な効果であるとは認められない。
なお、令和4年7月13日に提出された上申書において、審判請求人は、補正案を提示し、「審判請求書の請求の理由に述べた理由により現請求項にかかる本願発明にて特許可能でないとのご見解であれば、上記補正案で特許可能か否か、電話面談の機会あるいは拒絶理由通知を頂戴しご心証をうかがえると幸いでございます。」と申し立てている。しかしながら、審判請求人は、審判請求時に補正を行う機会があったのであるから、前記申し立ては採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年4月13日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年7月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、2、8~15、19~22に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、この出願の請求項1~15、19~23に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
記
引用文献1:特表2016-505657号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、又はこれらの組み合わせから選択される」について、「アルコキシル化もしくは非アルコキシル化の、直鎖もしくは分岐鎖の、カルボキシレート、スルフェート又はスルホネートである」とし、本件補正発明の「アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、又はこれらの組み合わせから選択される、15重量%~50重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤」について、「15重量%~70重量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤」とし、本件補正発明の「プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、又はこれらの組み合わせを含む、1重量%~20重量%の溶媒」について、当該溶媒を含むことを特定しないものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した場合、前記第2[理由]2(3)ア(イ)の相違点2の点でのみ相違するが、前記相違点2は実質的な相違点とはいえない。
したがって、本願発明は引用発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるか、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-005535