特許拒絶査定不服審判
2022-004495
光検出器及びそれを用いた光学測距装置
- 審判番号
- 2022-004495
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-099419
- 請求日
- 2022年03月28日
- 審決日
- 2023年04月24日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社豊田中央研究所
- 【請求人代理人】弁理士法人YKI国際特許事務所
- 【請求人】株式会社デンソー
- 【請求人代理人】弁理士法人YKI国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 99419「光検出器及びそれを用いた光学測距装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月28日出願公開、特開2019-204887〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、平成30年5月24日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和3年 8月24日付け:拒絶理由通知書
令和3年10月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 1月19日付け:拒絶査定
令和4年 3月28日 :審判請求書の提出
2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和3年10月11日にされた手続補正書による補正(以下「本願補正」という。)後の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
<本願発明>
「複数の受光素子を有するアレイと、
前記受光素子からの出力信号を整形矩形パルスに変換する複数の弁別回路と、
前記弁別回路からの出力を加算して出力する加算回路と、
を備え、
前記弁別回路は、
前記受光素子からの出力を矩形パルスにして出力する二値化回路と、
前記矩形パルスのパルス幅tpを前記受光素子のデッドタイムtDから所定のパルス幅twの差分値(tD-tw)だけ短縮して前記整形矩形パルスに変換するパルス幅変換回路と、
を備えることを特徴とする光検出器。」
3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の内容を含むものである。
本願補正前の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献:特開2012-60012号公報
4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献に記載された事項
原査定において引用された引用文献(特開2012-60012号公報、以下、単に「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。)
「【請求項1】
ガイガーモードで使用される複数のアバランシェフォトダイオードのアレイと、
前記アバランシェフォトダイオードの各々からの出力信号をそれぞれ矩形パルスに変換する複数の弁別回路と、
前記複数の弁別回路によって生成された前記矩形パルスを加算して出力する加算回路と、
を備えることを特徴とする光検出器。」
「【0027】
光検出器100は、4つのシングルフォトンアバランシェフォトダイオード(SPAD)10a~10dを含むSiPM10を含んで構成される例を示している。もちろん、本発明の適用範囲は4つのSPAD10a~10dを含むSiPM10に限定されるものでなく、例えば10×10の行列状にSPADを配置した構成等、4つ以外のSPADを含むSiPM10であっても同様に適用できる。」
「【0033】
弁別回路14aは、クエンチング素子12aの端子電圧を所定の基準値と比較し、その比較結果に応じて矩形パルスを生成する。弁別回路14aは、図2に示すように、コンパレータ14e、遅延素子14f及びアンド素子14gを含んで構成することかできる。また、図3に弁別回路14a~14dの動作を説明するためのタイミングチャートを示す。
【0034】
コンパレータ14eは、クエンチング素子12aの端子電圧Vaを受けて、端子電圧Vaと基準電圧VREFとを比較し、端子電圧Vaが基準電圧VREF以上であればハイレベルであり、端子電圧Vaが基準電圧VREF未満であればローレベルである出力パルスA1を出力する。遅延素子14fは、コンパレータ14eの出力パルスを受けて、出力パルスの変化を遅延時間Wだけ遅延させて出力パルスB1として出力する。遅延時間Wは、SPAD10aのデッドタイム、すなわちSPAD10aの出力である端子電圧Vaの立ち上がりから消滅までの時間よりも短い時間とすることが好適である。具体的には、遅延時間Wは、1n秒以上20n秒以下とすることがより好適である。アンド素子14gは、コンパレータ14eからの出力パルスA1と、遅延素子14fからの出力パルスB1の反転信号と、を受けて、それらの論理積を算出して出力する。これにより、弁別回路14aは、SPAD10aからの出力である端子電圧Vaが基準電圧VREF以上となった時点から所定の遅延時間Wだけのパルス幅を有する矩形パルスC1を生成して出力する。」
「【0056】
<第6の実施の形態>
第6の実施の形態における光検出器600は、図10に示すように、第5の実施の形態における構成にさらに弁別回路28(28a~28d)、デジタル加算器30及び遅延素子32を加えた構成を有する。また、図11に光検出器600の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。
【0057】
弁別回路28(28a~28d)は、それぞれ弁別回路14(14a~14d)からの出力信号C1~C4を受けて、遅延時間Wよりも長いパルス幅Tを有する矩形パルスH1~H4を生成して出力する。具体的には、弁別回路28(28a~28d)は、図12に示すように、それぞれフリップフロップ素子28e及び遅延素子28fを含んで構成することができる。以下、弁別回路28aを例に説明する。
【0058】
フリップフロップ素子28eは、矩形パルスC1をクロック信号として受けて、矩形パルスC1がローレベルからハイレベルに変化したタイミングに同期して出力Qをローレベルからハイレベルへ変化させると共に、反転出力Qバーをハイレベルからローレベルへ変化させる。遅延素子28fは、反転出力Qバーの反転信号を遅延時間Tだけ遅延させて出力する。遅延素子28fの出力はフリップフロップ素子28eのリセット端子へ入力される。したがって、フリップフロップ素子28eは、出力Qがローレベルからハイレベルへ変化してから遅延時間T経過後にリセットされ、出力Qをハイレベルからローレベルへ変更する。このようにして、弁別回路28aは、パルス幅Wの矩形パルスC1をパルス幅Tの矩形パルスH1に変更する機能を有する。
【0059】
なお、遅延素子28fの遅延時間Tは、SPAD10aのデッドタイム、すなわちSPAD10aの出力である端子電圧Vaの立ち上がりから消滅までの時間と略等しくすることが好適である。具体的には、遅延時間Tは、5n秒以上100n秒以下とすることが好適である。」
「図2
[図:0001398869000001.jpg]
」
「図3
[図:0001398869000002.jpg]
」
「図11
[図:0001398869000003.jpg]
」
(2)【0034】より、出力パルスA1は、端子電圧Vaが基準電圧VREF以上であればハイレベルであり、基準電圧VREF未満であればローレベルであるから、端子電圧Vaを二値化してパルス信号にしたものと理解できるところ、「端子電圧Va」が「二値化される」のであるから、端子電圧Vaが有るか無いか(Va>0、Va=0)により二値化されることが自然といえ、その場合、基準電圧VREFは、0より大きく、0に近い値に設定されるものと理解できる。そして、この理解は、<第6の実施の形態>(【0056】~)の記載からも首肯される。すなわち、第6の実施の形態において、遅延時間Tは、SPAD10aのデッドタイム、すなわちSPAD10aの出力である端子電圧Vaの立ち上がりから消滅までの時間と略等しいところ(【0059】)、図11より、遅延時間Tは、出力パルスA1のパルス幅に等しいことがみてとれるから、出力パルスA1のパルス幅は、端子電圧Vaの立ち上がりから消滅までの時間(Va>0の時間)と略等しいものと理解でき、第1の実施の形態においても同様に設定されるものと解することが自然といえる。
以上より、出力パルスA1のパルス幅は、端子電圧Vaの立ち上がりから消滅までの時間と略等しいもの、すなわち、SPAD10aのデッドタイムに等しい、と認められる。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)によれば、引用文献には、第1の実施の形態に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「ガイガーモードで使用される複数のアバランシェフォトダイオードのアレイと、前記アバランシェフォトダイオードの各々からの出力信号をそれぞれ矩形パルスに変換する複数の弁別回路と、前記複数の弁別回路によって生成された前記矩形パルスを加算して出力する加算回路とを備える光検出器であって、(請求項1)
アバランシェフォトダイオードは、シングルフォトンアバランシェフォトダイオード(SPAD)であり、(【0027】)
弁別回路は、コンパレータ、遅延素子及びアンド素子を含んで構成され、(【0033】)
コンパレータは、クエンチング素子の端子電圧を受けて、端子電圧と基準電圧とを比較し、端子電圧が基準電圧以上であればハイレベルであり、端子電圧が基準電圧未満であればローレベルである出力パルスA1を出力し、
出力パルスA1のパルス幅は、SPAD10aのデッドタイムに等しく、(上記(2))
遅延素子は、コンパレータの出力パルスを受けて、出力パルスの変化を遅延時間Wだけ遅延させて出力パルスB1として出力し、
遅延時間Wは、アバランシェフォトダイオードのデッドタイム、すなわちSPAD10aの出力である端子電圧Vaの立ち上がりから消滅までの時間よりも短い時間とし、
アンド素子は、コンパレータからの出力パルスA1と、遅延素子からの出力パルスB1の反転信号と、を受けて、それらの論理積を算出して出力し、
これにより、弁別回路は、アバランシェフォトダイオードからの出力である端子電圧Vaが基準電圧以上となった時点から所定の遅延時間Wだけのパルス幅を有する矩形パルスC1を生成して出力する、(【0034】)
光検出器。」
5 対比・判断
(1)本願発明と引用発明の対比
ア 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
(ア)本願発明の「複数の受光素子を有するアレイと」、「前記受光素子からの出力信号を整形矩形パルスに変換する複数の弁別回路と」及び「前記弁別回路からの出力を加算して出力する加算回路と、を備え」との特定事項について
引用発明は、「ガイガーモードで使用される複数のアバランシェフォトダイオードのアレイと、前記アバランシェフォトダイオードの各々からの出力信号をそれぞれ矩形パルスC1に変換する複数の弁別回路と、前記複数の弁別回路によって生成された前記矩形パルスC1を加算して出力する加算回路とを備える光検出器」である。
そうすると、引用発明の「アバランシェフォトダイオード」、「アレイ」、「矩形パルスC1」、「弁別回路」及び「加算回路」は、それぞれ本願発明の「受光素子」、「アレイ」、「整形矩形パルス」、「弁別回路」及び「加算回路」に相当し、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たすといえる。
(イ)本願発明の「前記弁別回路は、前記受光素子からの出力を矩形パルスにして出力する二値化回路と、前記矩形パルスのパルス幅tpを前記受光素子のデッドタイムtDから所定のパルス幅twの差分値(tD-tw)だけ短縮して前記整形矩形パルスに変換するパルス幅変換回路と、を備える」との特定事項について
a 引用発明の「弁別回路」に含まれる「コンパレータ」は、「クエンチング素子の端子電圧を受けて、端子電圧と基準電圧とを比較し、端子電圧が基準電圧以上であればハイレベルであり、端子電圧が基準電圧未満であればローレベルである出力パルスA1を出力し」ている。そうすると、引用発明の「出力パルスA1」及び「コンパレータ」は、それぞれ本願発明の「矩形パルス」及び「二値化回路」に相当し、引用発明の「コンパレータ」は、本願発明の「前記受光素子からの出力を矩形パルスにして出力する」との特定事項を満たすといえる。
b 引用発明の「弁別回路」に含まれる「遅延素子」は、「コンパレータの出力パルスを受けて、出力パルスの変化を遅延時間Wだけ遅延させて出力パルスB1として出力し」、「アンド素子」は、「コンパレータからの出力パルスA1と、遅延素子からの出力パルスB1の反転信号と、を受けて、それらの論理積を算出して出力し」ており、当該「出力」は、「矩形パルスC1」であり、当該「矩形パルスC1」は、「出力パルスA1」と同時に立ち上がり、遅延時間Wの経過後に立ち下がるパルスと認められる。
そうすると、引用発明の「遅延素子」及び「アンド素子」は、共働して、「出力パルスA1」を「矩形パルスC1」に変換しているものと理解できるから、引用発明の「遅延素子」及び「アンド素子」は、本願発明の「パルス幅変換回路」と、「前記矩形パルスを」「前記整形矩形パルスに変換する」「変換回路」である点で一致し、当該変換が、パルス幅を変換するといえるか不明である点で相違している。
c また、本願発明は、「矩形パルス」から「整形矩形パルス」への変換を、「矩形パルスのパルス幅tpを前記受光素子のデッドタイムtDから所定のパルス幅twの差分値(tD-tw)だけ短縮して」行うのに対し、引用発明では、「出力パルスA1」から「矩形パルスC1」への変換を、「コンパレータからの出力パルスA1と、遅延素子からの出力パルスB1の反転信号と、を受けて、それらの論理積を算出して」行っている。
(ウ)本願発明の「光検出器」について
引用発明の「光検出器」は、本願発明の「光検出器」に相当する。
イ 以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び一応の相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「複数の受光素子を有するアレイと、
前記受光素子からの出力信号を整形矩形パルスに変換する複数の弁別回路と、
前記弁別回路からの出力を加算して出力する加算回路と、
を備え、
前記弁別回路は、
前記受光素子からの出力を矩形パルスにして出力する二値化回路と、
前記矩形パルスを前記整形矩形パルスに変換する変換回路と、
を備えることを特徴とする光検出器。」
<相違点>
「変換回路」について、本願発明は、「矩形パルスのパルス幅tpを」「受光素子のデッドタイムtDから所定のパルス幅twの差分値(tD-tw)だけ短縮して」行う「パルス幅変換回路」であるのに対し、引用発明は、「コンパレータからの出力パルスA1と、遅延素子からの出力パルスB1の反転信号と」「の論理積を算出して」変換を行う変換回路である点。
(2)判断
引用発明の「出力パルスA1のパルス幅」は、「SPAD10aのデッドタイムに等しく」、「矩形パルスC1」は、「遅延時間Wだけのパルス幅を有する」ものであり、「遅延時間W」は、「アバランシェフォトダイオードのデッドタイム」「よりも短い時間」であるから、「出力パルスA1」から「矩形パルスC1」への変換を、パルス幅の変化に着目してみれば、「矩形パルスC1のパルス幅(遅延時間W)」は、「出力パルスA1のパルス幅(デッドタイム)」を、「「出力パルスA1のパルス幅(デッドタイム)」-「矩形パルスC1のパルス幅(遅延時間W)」」、すなわち、「デッドタイム」から「遅延時間W」を引いた値(差分値)だけ、短縮したものと理解することができる。
そしてこのことは、「出力パルスA1のパルス幅」を「SPAD10aのデッドタイム」から「遅延時間W」の差分値だけ短縮してパルス幅変換を行う、と言い換えることができるから、引用発明は、上記相違点を満たすといえる。
よって、上記相違点は実質的な相違ではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、上記相違点は実質的な相違とはいえず、本願発明は引用文献に記載された発明である。
(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書にて、本願発明は引用文献に記載された技術と異なる構成を備えるものであり、引用文献に記載された事項から予想できない技術的な効果を与える旨主張している。
しかしながら、上記(2)に説示のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、上記審判請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。
6 むすび
上記のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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