特許拒絶査定不服審判
2022-004341
揚水発電
- 審判番号
- 2022-004341
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-116734外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月04日
- 審決日
- 2023年02月20日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】浦本 鴻一
- 分類
- P18 .1 -WZ (F03B) / P18 .536-WZ (F03B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-116734「揚水発電」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年12月19日出願公開、特開2022-187453〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年6月7日の出願であって、令和3年11月9日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月13日(同月10日付け)に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和4年2月10日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年3月7日(同月4日付け)に審判の請求がされ、その後、同年10月26日付けの拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、同年11月7日に意見書が提出されたものである。
第2 特許請求の範囲の記載事項
特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和3年12月13日にされた手続補正により補正された次のとおりである。
「 【請求項1】
従来の揚水発電は揚水のポンプの電力は他からの電力に頼っていましたがそれを自力で賄う為、容器を二つ用意し、その容器の中に浮体を浮かせ、一つの容器の液体をもう一つ別の容器にポンプで移し、浮体を上昇させ、その容器が一杯になり液体を吸い取った容器が空になったら、満杯になった容器から空になった容器へポンプで液体を移動させ浮体を上下させて、浮体の重さにより引力を利用して発電します。
其の時、引力を利用するため、引力の作用は重さに比例して作用するため 浮体に重さが必要なのです、なぜならエネルギ-の法則で1ジュ-ルは102gの物を1メ-トル持ち上げる力と決まっています。だから重いものを持ち上げればそれだけ大きなエネルギが取れることになります。だから重ければ重いほどいいのです。だから重さが必要なのです。重力が多ければ多いほどエネルギ-は大きい、即ち物が重いほど重力があることですが浮体の重量を増やす為、浮体や容器の幅や長さ広げて重さを得よとすると容器の液体も増えることになり、浮体の重さの増加に対して容器の液も比例して増え、得られるエネルギ-の量と容器の溶液が増える量の比は変わりませんが、そこで容器と浮体を同型の立方体とし浮体や容器の幅や長さなどを変えず即ち、床面積を変えず、容器に注水する方式を取れば浮体の高さを高くすれば液の増え方に比べて重さを増せる。又浮体の比重を大きくして浮体の重量を増やすと浮体は容器内の液体の比重を超えると沈んでしまいます、だから重さを得ようとして比重を増やしても浮体の重量を増やすことに限界があり容器内の液体の比重より大きくは出来ません。しかし浮体の高さを変える方法で、重量を得て、浮体を上昇させれば沢山のエネルギ-が取れますが、容器の液の量はかわりません、
なぜなら物が浮くと言うことは浮体の重さで沈んだ浮体の体積が液をはじき出すことになります、だから容器の中とか容積の限られた所に入れられた液は浮体が沈んだ分、今まであった場所から、はじき出されることになります。ただ容器の中に納まる内容の量は液体量プラス浮体の体積ですから、液の量は変わらず、浮体の体積が大きくなっただけ、ですからず、浮体は浮いているため浮体と液体の比重がほとんど同じなら浮体の高さは液面と同じはずです。だから液面が浮体の高さを超えることが無いのです。では、はじき出された液は何処へ行くかと言えば浮体と容器の隙間に入ります、だがその隙間が浮体と容器の隙間がほとんどないので行くところがありませんせん、そこで浮体を越えて液が流れ出ていくかと言えば、出ていきません浮体の上を超えて液が流れ出すことはないのです、其れは流体が低いところへ流れだすので浮体と液面は液位と浮体の高さが同じなので、流れ出さない、だから液面は浮体と同じ高さしか上がらないからです、其の為、底にたまった液はほとんど変わりません。容器と浮体が同じ立体でそのわきの隙間が無いため容器と浮体が高くなってもその隙間を埋める液はほとんど必要無いのです。だから液が底から出る量が少なく浮体は今以上には沈下しないのです。だから浮体を高くして、重くしても底の液の量はかわらず浮体の底の高さは変わらず維持されます。だから、そこへ液を足せば浮体の底が浮くだけで、必要な液を足せば、どんなに高さを高くして浮体の重さを生み出しても液体の量は変わらないのです。
だから、浮体の高さを高くしても移動さす液量は変わりませんので移動させる液の量は変わらずに、エネルギ-が沢山取れます。そのためポンプで移動さす液の量は変わらず、取れるエネルギ-が多くなり、液を移動さすポンプが消費するエネルギ-より、浮体を高くして取れるエネルギ-の方が多ければ、エネルギ-を生み出すことが出来ます。この方法で液の移動にかかるポンプの電気消費量より浮体の高さを高くして重量を大きくした浮体から得られるエネルギ-を多くするやり方で、自力でポンプを動かし他からエネルギ-を貰わなくてもエネルギ-を得られるので、今まであった揚水ポンプの様に他から電力を供給してもらうのではなく、自分で稼働するエネルギ-は自分で作り発電する方法」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、次の理由1及び2に示すとおりである。
理由1 この出願の請求項1に記載されたものは、下記(1)の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
(1)請求項1に記載された「他からエネルギ-を貰わなくてもエネルギ-を得られる」とは、自然法則であるエネルギー保存の法則に反しているから、請求項1に記載された発電する方法は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。
理由2 この出願は、下記(1)ないし(3)の点で発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)発明の詳細な説明には、概略、一方の容器3の底に浮体1がつくように入れ、他方の容器4に浮体2を入れ、さらに液体を容器4の上辺6まで入れて浮体2を浮上させた状態(状態α)をつくり、次に、ポンプ10により、液体を容器4から容器3へ移動させ(状態β)、さらに、この状態からポンプ12により、液体を容器3から容器4へ移動させ、最初の状態(状態α)とし、これを繰り返して浮体1及び浮体2の上下動により得られるエネルギーを取り出し、ポンプの消費エネルギーより、浮体1と浮体2の上下動により得られるエネルギーが大きくなるまで浮体1及び浮体2の高さ13を大きくすることで、エネルギーを得ることが記載されている。しかし、浮体1及び浮体2の高さ13をどれだけ高くしても、浮体1及び浮体2の上下動により得られるエネルギーをポンプの消費エネルギーより大きくすることができないから、発明の詳細な説明に記載されたものは、どのようにして、ポンプの消費エネルギーより、浮体1と浮体2の上下動により得られるエネルギーを大きくするのか不明である。
(2)発明の詳細な説明には、容器3から容器4へ液体を全量移し、また、容器4から容器3へ液体を全量移すことが記載されている。しかし、【図1】及び【図2】に示されるようにパイプ9及び11が、容器3と容器4に接続されている位置から液体を取り込んでいるとすると、一方の容器3又は4から他方の容器4又は3へ液体をすべて移すことはできず、どのようにして、容器3と容器4の間で液体を全量移すことができるのか不明である。
(3)【図1】及び【図2】をみると、歯車25の両側を直線歯車を付けた棒15と棒16ではさんでおり、また歯車26の両側を直線歯車を付けた棒17と棒18ではさんでいることから、棒15と棒16、棒17と棒18が上下動しても歯車25と歯車26は回転できず、どのようにして発電機を回すのか不明である。
第4 当審の判断
1 理由1について
特許請求の範囲の請求項1には、上記第2に示すとおりの事項が記載されているところ、この請求項1に記載されたものは、概ね、「容器を二つ用意し、その容器の中に浮体を浮かせ、一つの容器の液体をもう一つ別の容器にポンプで移し、浮体を上昇させ、その容器が一杯になり液体を吸い取った容器が空になったら、満杯になった容器から空になった容器へポンプで液体を移動させ浮体を上下させて、浮体の重さにより引力を利用して発電」するものであって、「浮体と液体の比重がほとんど同じ」とすることで、「浮体の高さは液面と同じ」「だから液面が浮体の高さを超えることが無い」ようにするとともに、「容器と浮体が同じ立体でそのわきの隙間が無いため容器と浮体が高くなってもその隙間を埋める液はほとんど必要無い」ものとすることで、「浮体の高さを高くしても移動さす液量は変わりませんので移動させる液の量は変わらずに、エネルギ-が沢山取れ」ることから、「液を移動さすポンプが消費するエネルギ-より、浮体を高くして取れるエネルギ-の方が多ければ、エネルギ-を生み出すことが出来」、「液の移動にかかるポンプの電気消費量より浮体の高さを高くして重量を大きくした浮体から得られるエネルギ-を多くするやり方で、自力でポンプを動かし他からエネルギ-を貰わなくてもエネルギ-を得られるので、今まであった揚水ポンプの様に他から電力を供給してもらうのではなく、自分で稼働するエネルギ-は自分で作り発電する方法」である。
ここで、エネルギーに関する自然法則として、エネルギー保存の法則が存在する。エネルギー保存の法則とは、「外部からの影響を受けない物理系(孤立系)においては、その内部でどのような物理的あるいは化学的変化が起こっても、全体としてのエネルギーは不変である。(広辞苑)」という法則である。
そして、請求項1に記載された「他からエネルギ-を貰わなくてもエネルギ-を得られる」とは、二つの容器の間でポンプを用いて液体を移動させる前の時点での容器及び浮体、液体等が有しているエネルギーの総和より、液体を移動させた後の時点でのそれらが有しているエネルギーの総和が増えることを意味していると解されるが、エネルギー保存の法則にしたがえば、二つの容器の間でポンプを用いて液体を移動させた前後で容器及び浮体、液体等が有しているエネルギーの総和は、変わることはない。
したがって、「他からエネルギ-を貰わなくてもエネルギ-を得られる」とは、自然法則であるエネルギー保存の法則に反しているから、請求項1に記載された発電する方法は、自然法則を利用したものとはいえず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。
2 理由2について
(1)発明の詳細な説明及び図面の記載
発明の詳細な説明及び図面には、次の事項が記載されている。
ア 「【背景技術】
【0002】
パナマ運河では揚水により船を浮かせている、また排水により船を下降させている、この上下するエネルギーは大きい、これを動力として使うことにしました。」
イ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
自然の力での潮位差や落差を利用して発電する方法はあったが、自然に起こる現象では場所が限定された、また時期や周期に拘束され人が気ままに水位差を作ることができなかった。これを解決したかった。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
二つの容器を用い、その容器の中に液体を入れ、ここに浮体を浮かせます、浮体の重さは重ければ重いほど引力の力即ち重力が多く含まれています。そこでその引力を取る方法ですが、容器より少し小さい浮体を容器に入れる。浮体が沈まないで最大の重量が取れる様、比重は液体の比重と同じにする。これで符号1を符号3に入れ。符号1を符号3の底までつかせ、符号2を符号4の上辺の符号6の高さまで液体を入れて浮上させます。この状態をαとします。この状態からポンプで液体を符号4から符号3へ移動させる、この移動で符号1の上辺が符号5の位置まで上がれば満杯でこの状態をβとする。計算簡単にするため底の面積Zとすると同じ立方体で作れば符号1と符号2とは同じ立方体になる。符号3と符号4は同じ立方体になる。符号1と符号2は同じ高さ符号13とする。符号1と符号2のポンプによる上下の移動距離は符号14である。符号3と符号4の高さは符号13+符号14です。符号1と符号2の出すエネルギーは各浮体で液体の重量(Z×符号13×比重)×符号14です。この符号1と符号2を浮上さす、溶液の容積は(Z×符号14)でこれだけの液体があれば符号1と符号2を交互に符号3と符号4内で上下させられます。液体の移動で浮体を浮上さすポンプの消費エネルギーより浮体の上下で出すエネルギが大きければ浮体からエネルギーが取れます。結論は符号1と符号2と底の面積の同じ立方体にする。符号3と符号4は符号1と符号2より少し大きくする。符号3の中に符号1が入って上下できるような大きさとする。また符号4の中に符号2が上下に動けるような少し大きい底面積にする。符号3から符号4へ液体を全量移しαの状態にし、αに状態に達したら符号4から符号3へ液体を全量移しβの状態にする、この液体の移動をポンプで繰りかえす。ポンプの消費エネルギーより、浮体からとれるすエネルギーが大きければ電気が取れるエネルギーを得ることになる、これは液体の量が増えるより符号1と符号2の重量が増えればよく、底の面積Zを一定に保てば重量を大きくとるには符号13を大きくしなければならない。そこで符号13を大きくしても符号14を変えなければ液体の体積は変わらず一定を保てる、その時ポンプの消費エネルギーより符号1と符号2のエネルギーが大きくなるまで符号13を大きくすればエネルギーが取れる。
この符号1と符号2の上下するエネルギーを符号1と符号2の上方より直線の棒符号15と符号16と符号17と符号18を経由して取り出し、符号15と符号16と符号17と符号18にそれぞれ直線歯車を付け回転歯車符号25と符号26をはさみ回転歯車を回転させ、回転増加さすため歯車符号23と符号24で回転を増加させ発電機を回し発電する。」
エ 「【図面の簡単な説明】
【図1】図面1は左辺の液体が抜かれ液体が右辺に移され右辺が満杯になっている状態図
【図2】図面2は液体が右辺の容器より左辺へ移され左辺が満杯になった状態図
この装置ではこの状態を繰り返し行います
【符号の説明】
[図面1]符号1は左辺の浮体を表す。
符号2は右辺の浮体を表す。
符号3は符号1を入れる容器。
符号4は符号3を入れる容器。(当審注:「符号3」は、「符号2」の誤記と認められる。)
符号5は符号3の上辺。
符号6は符号4の上辺。
符号7は符号5より下へ符号14の距離を取った位置。
符号8は符号6より下へ符号14の距離を取った位置。
符号9は符号3より符号4へ移す水の通路のパイプ。
符号10は符号9を通って符号3より符号4へ液体を移すポンプ。
符号11は符号4より符号3へ移す水の通路のパイプ。
符号12は符号11を通って符号4より符号3へ液体を移すポンプ。
符号13は符号1と符号2の高さを表す。
符号14は符号3へ液体が注入されて符号3が満杯まで注入された場合の符号3の底と符号1の底との距離で同じく符号4へ液体が注入され満杯になった場合の符号4の底と符号2の底との距離
符号15と符号16と符号17と符号18は符号1と符号2よりエネルギーを取り出す棒です。
符号19と符号と20と符号21と符号22は符号15と符号16と符号17と符号18より符号25と符号26へエネルを伝える為の直線歯車です。
符号23と符号24は符号25と符号26の回転を増す歯車です。回転を増し発電機で発電出来るようになるまで回転歯車の数を増やして回転を増加するための歯車です。
符号25と符号26は符号16と符号20と符号21と符号22とかみ合って回転する歯車です。
[図面2]符号は全て[図面1]と同じです。」
オ 図面には、図1及び図2として、次の図が記載されている。
[図:0001396864000001.jpg]
(2)拒絶理由について
ア 発明の詳細な説明の記載事項について
発明の詳細な説明には、上記(1)に示す事項が記載されており、これらの記載からみて、発明の詳細な説明には、概略、次の(ア)ないし(キ)に示す事項が記載されていると認められる。なお、発明の詳細な説明では、「符号1」等としているが、ここでは、上記(1)エに示された符号の説明にしたがった名称と参照番号を用いた。
(ア)二つの容器3、4を用い、浮体1を一方の容器3に入れ、浮体1を容器3の底につかせ、別の浮体2を他方の容器4に入れ、さらに液体を容器4の上辺6まで入れて浮体2を浮上させる。この状態をαとする(この状態が図1の状態と理解できる。)。浮体1、2の比重は液体の比重と同じにする。また、容器3、4は、浮体1、2より少し大きくする。
(イ)αの状態から、ポンプで液体を容器4から容器3へ移動させ、浮体1の上辺を容器3の上辺5の位置まで上げる。この状態をβとする(この状態が図2の状態と理解できる。)。
(ウ)容器3から容器4へ液体を全量移しαの状態にし、αの状態に達したら容器4から容器3へ液体を全量移しβの状態にする。この液体の移動をポンプで繰りかえす。
(エ)浮体1と浮体2の出すエネルギー(βの状態からαの状態に変化したときに浮体1から得られるエネルギー及びαの状態からβの状態に変化したときに浮体2から得られるエネルギーの意味と解され、以下、「浮体1と浮体2のエネルギー」という。)は、液体の重量(浮体1、2の底面積Z×浮体1、2の高さ13×比重)×容器3に満杯まで液体が注入された場合の容器3の底と浮体1の底との距離14となる(なお、距離14は、容器4に満杯まで液体が注入された場合の容器4の底と浮体2の底との距離でもある。)。
(オ)液体の容積は、浮体1、2の底面積Z×距離14であり、これだけの液体があれば、浮体1と浮体2を交互に容器3と容器4内で上下させられる。
(カ)容器3と容器4の間で液体を移動させるのに必要なポンプの消費エネルギーより、浮体1と浮体2のエネルギーが大きければエネルギーを得ることになり、そのためには、液体の量が増えるより浮体1と浮体2の重量が増えればよく、浮体1と浮体2の底面積Zを一定に保って、浮体1と浮体2の重量を大きくするには、浮体1と浮体2の高さ13を大きくしなければならない。そこで、ポンプの消費エネルギーより、浮体1と浮体2のエネルギーが大きくなるまで、浮体1と浮体2の高さ13を大きくし、エネルギーを取る。
(キ)浮体1と浮体2のエネルギーを浮体1と浮体2の上方より直線の棒15、16と棒17、18を経由して取り出し、棒15、16、17、18にそれぞれ直線歯車を付け歯車25と歯車26をはさみ回転させ、歯車23と歯車24で回転を増加させ発電機を回し発電する。
イ エネルギーについて
発明の詳細な説明には、概略上記アに示す事項が記載され、ポンプの消費エネルギーより、浮体1と浮体2のエネルギーが大きくなるまで、浮体1と浮体2の高さ13を大きくし、エネルギーを取るとされている(上記ア(カ))が、浮体1及び浮体2の高さ13を大きくすると、浮体1及び浮体2の質量が増加し、これらの浮体1及び浮体2を浮かしている液体をポンプ10及びポンプ12で移動させるときに必要となるエネルギーが増加し、結局、浮体1及び浮体2の高さ13をどれだけ高くしても、ポンプの消費エネルギーより大きくすることができない。すなわち、液体を容器3から容器4に移したときに、浮体1が容器3の底につくためには、液体の全量を容器4に移すことが必要であり、同様に、液体を容器4から容器3に移したときに、浮体2が容器4の底につくためには、液体の全量を容器3に移すことが必要である。また、浮体1が入れられた容器3又は浮体2が入れられた容器4に液体を入れるには、浮体1及び浮体2がない場合に比べて、大きなエネルギーが必要となる。例えば、浮体1又は浮体2の上方から容器3又は容器4に液体を入れるとすると、浮体1及び浮体2の高さ13が大きくなった分だけ高くなった位置までポンプ10及び12により液体を上げる必要が生じ、ポンプ10及び12に必要とされるエネルギーが増える。また、浮体1又は浮体2の下方から、容器3又は容器4に液体を入れるとすると、容器3又は容器4に入れる液体には、浮体1又は浮体2のいずれかと既に容器3又は容器4に入れられた液体による液圧がかかり、この液圧に逆らって容器3又は容器4に液体を入れる分、必要となるエネルギーが増える。
このように、浮体1又は浮体2が入れられた容器3又は容器4に液体を入れるときには、浮体1又は浮体2がない場合に比較して、必要となるエネルギーが増える点に考慮して、発明の詳細な説明に記載されたものをみると、αの状態における容器4には、浮体2と浮体2の上辺が容器4の上辺まで上がるように液体が入っており、βの状態における容器3には、浮体1と浮体1の上辺が容器3の上辺まで上がるように液体が入っていて、αの状態における容器4の中の浮体2と液体、βの状態における容器3の中の浮体1と液体の状態は同じであるから、αの状態における容器4の中の浮体2と液体が有するエネルギー(いわゆる位置エネルギー)とβの状態における容器3の中の浮体1と液体が有するエネルギーは同じである(以下、このエネルギーを「浮体と液体のエネルギー」という。)。同様に、αの状態における容器3の中の浮体1が有するエネルギーとβの状態における容器4の中の浮体2が有するエネルギーも同じとなる(以下、このエネルギーを「浮体のエネルギー」という。)。そして、αの状態からβの状態になる際に、容器3には液体が容器4から移されるが、容器3に液体が入るためには、上記のようにエネルギーが必要となり、このエネルギーは、浮体1の高さが大きくなり、重量が増えるとその分だけ増加し、液体の移動に伴う損失等を考慮しなければ、その必要となるエネルギーは、浮体と液体のエネルギーから浮体のエネルギーを引いたものとなる。また、αの状態からβの状態になる際の容器4からは、液体が容器3へ流れ、浮体2が低下するから、例えば、流れ出す液体を介してエネルギーを得ることができ、このエネルギーも、液体の移動に伴う損失を考慮せず、発電機等による他へのエネルギーの取り出し等がなければ、浮体と液体のエネルギーから浮体のエネルギーを引いたものとなる。したがって、液体の移動に伴う損失、他へのエネルギーの取り出し等を考慮しなければ、容器3において、αの状態から液体が入りβの状態へ変わるのに必要なエネルギーは、容器4において、αの状態から液体が流出し、βの状態へ変わることで得られるエネルギーの全てとなる(上記1に示すエネルギー保存の法則参照)から、結局αの状態からβの状態へ変わってもエネルギーは増加しない。そして、βの状態からαの状態に変わるときは、このαの状態からβの状態へ変わるときに容器3と容器4の中で生じている浮体1及び浮体2並びに液体の移動が、それぞれ容器4と容器3の中で生じているだけであり、この移動によりエネルギーが増加することはない。そうすると、αの状態とβの状態を繰り返しても、浮体1及び浮体2の高さの大きさにかかわらず、浮体1、浮体2及び容器3、容器4並びに液体を用いて、入力以上のエネルギーを得ることはできない。
したがって、浮体1及び浮体2の高さ13をどれだけ高くしても、浮体1及び浮体2の上下動により得られるエネルギーをポンプの消費エネルギーより大きくすることができないから、発明の詳細な説明からは、どのようにして、ポンプの消費エネルギーより、浮体1と浮体2のエネルギーが大きくなるまで浮体1及び浮体2の高さ13を大きくすることができるのか理解することができない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
ウ 液体の取り込み位置について
明細書の【符号の説明】によれば、「符号9は符号3より符号4へ移す水の通路のパイプ。」とし、「符号11は符号4より符号3へ移す水の通路のパイプ。」としており、「符号3は符号1を入れる容器」、「符号4は符号3(当審注:図面の記載からみて「符号2」の誤記)を入れる容器」であるから、パイプ9は容器3から容器4へと水を移し、パイプ11が容器4から容器3へと水を移すものであり、また、図1及び図2の記載をみると、浮体1が入れられた状態で容器3へ液体が満杯まで注入されたときの容器3の底と浮体1の底との距離(=浮体2が入れられた状態で容器4へ液体が満杯まで注入されたときの容器4の底と浮体2の底との距離)を距離14とした場合に、パイプ9が、容器3の上辺5付近と容器4の上辺6より下へ距離14を取った位置8付近に接続され、パイプ11が、容器4の上辺6付近と容器3の上辺より下へ距離14を取った位置7付近に接続されている。
ここで、容器3及び容器4のどこからパイプ9及びパイプ11が液体を取り込んでいるかは、発明の詳細な説明及び図1、図2の記載からは、不明であるが、仮に、図1及び図2に示されるようなパイプ9及び11が、容器3と容器4に接続されている位置から液体を取り込んでいるとすると、一方の容器3又は4から他方の容器4又は3へ液体をすべて移すことはできず、容器3、4に入れられる浮体1、2は容器より少し小さいだけであることを考慮すると、移すことのできる液体は、容器3、4と浮体1、2の間にあるわずかな量だけである。これに対して、容器3の底に浮体1がつくように液体を容器4に移すには、容器3内の液体のほぼ全量を容器4に移すことが必要であり、同様に、容器4の底に浮体2がつくように液体を容器3に移すには、容器4内の液体のほぼ全量を容器3に移すことが必要である(上記(2)ア(ア)及び(ウ)参照)。
そして、発明の詳細な説明には、容器3と容器4との間で液体を全量移し、容器3及び容器4の底に浮体3及び浮体4がつくまで沈むことで、浮体3及び容器4から大きなエネルギーが取れる旨記載されていると解されるが、図1及び図2に記載された容器3及び容器4とパイプ9及びパイプ11のような位置関係では、液体を全量移すことができないから、なぜ、入力以上のエネルギーを取ることができるのか不明である(実験的にも証明されていない)。
そうすると、発明の詳細な説明には、全量の液体を、容器3と容器4の一方から他方へ移して、入力以上のエネルギーを取ることが記載されていない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
エ 歯車の回転について
明細書の【課題を解決するための手段】には、「符号15と符号16と符号17と符号18にそれぞれ直線歯車を付け回転歯車符号25と符号26をはさみ回転歯車を回転させ、回転増加さすため歯車符号23と符号24で回転を増加させ発電機を回し発電する」と記載され、【符号の説明】より、「符号15と符号16と符号17と符号18は符号1と符号2よりエネルギーを取り出す棒」で、「符号25と符号26は符号16と符号20と符号21と符号22とかみ合って回転する歯車」としているが、【図1】及び【図2】をみると、歯車25の両側を直線歯車を付けた棒15と棒16ではさんでおり、また歯車26の両側を直線歯車を付けた棒17と棒18ではさんでいることから、棒15と棒16、棒17と棒18が上下動しても歯車25と歯車26は回転できず、どのようにして発電機を回すのか不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
3 請求人の主張について
請求人は、令和4年11月7日に提出した意見書において、「容器と浮体を同じ立方体にして浮体を少し小さくして納めれば容器と浮体の隙間が小さく、浮体を高くして浮体の質量が上がっても、入れる水の量は同じで浮体を浮かすことが出来、浮体の底の位置は変わらないので、浮体を高くすれば、移動させる水の量は変わらず、浮体の質量を増すことができる」から、「質量が上がれば引力がまし、注ぐ水は同じなので、引力が増した分、取れるエネルギーが増し、エネルギー不変の法則には反してない」旨主張する。
しかし、浮体を高くして浮体の質量を大きくすると、移動させる水の量が変わらなくても、浮体を高くし、質量を大きくした分、水を移動させるのに必要なエネルギーは大きくなる。これについて説明すると、浮体が浮いている容器へ液体(水)を移動させる場合に、仮に、浮体の上から容器へ液体(水)を入れるようにすると、浮体より高い位置まで液体(水)を揚げて容器へ入れることとなるから、浮体が高くなればなるほど、液体(水)を揚げるのに必要なエネルギーが大きくなる。また、仮に、浮体が浮いている容器の底面付近から液体(水)を入れるようにすると、この液体(水)には、重力により浮体の質量に応じて、この液体(水)を容器より出す方向に力がかかるから、浮体から液体(水)にかかる力に抗して液体(水)を容器へ移動させるには、浮体の質量が大きくなるのにつれて、大きなエネルギーが必要となる。そして、特許請求の範囲の請求項1に記載されたもの及び発明の詳細な説明に記載されたものが、液体(水)を移動させるために必要となったエネルギーよりも大きなエネルギーを浮体の低下によって取り出すことはできないのは、上記(2)イに示したとおりである。
よって、浮体を高くして浮体の質量を大きくすると、移動させる液体(水)の量が変わらなくても、液体(水)を移動させるのに必要なエネルギーは、浮体の質量の増加につれて大きくなり、この必要なエネルギーよりも大きなエネルギーを取り出すことはできないから、「他からエネルギ-を貰わなくてもエネルギ-を得られる」ことにはならず、請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができず、また、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、同様に特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-004341