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特許拒絶査定不服審判

2022-003044

プログラム

審判番号
2022-003044
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-202553外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月01日
審決日
2022年10月12日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H04N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-202553「プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月25日出願公開、特開2021- 48626〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成28年5月11日に出願した特願2016-95558号の一部を令和2年12月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 3月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 7月12日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月 2日 :意見書の提出
令和3年11月30日付け:拒絶査定
令和4年 3月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 5月20日付け:補正の却下の決定、拒絶理由通知書(当審)
令和4年 7月15日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和4年7月15日提出の補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。(記号A~Gは分説するために当審にて付した。以下「構成A」~「構成G」という。)

【請求項2】

A タッチパネルディスプレイを有する制御装置であって、

B 前記制御装置とは異なる制御対象機器の状態を前記制御対象機器から取得する第1手段と、

C 前記取得した状態に基づいて、前記制御対象機器の状態を示す状態表示を、前記制御対象機器の状態に応じた表示態様で前記タッチパネルディスプレイに表示させる第2手段と、

D 前記状態表示の表示態様を更新するタッチ操作に応じて、更新後の前記状態表示の表示態様と前記制御対象機器の状態とが対応するよう、前記制御対象機器の状態を調整するための制御信号を生成する第3手段と、を備え、

E 前記制御対象機器は、スピーカを有するがテレビではなく、

F 前記制御対象機器の状態は、前記スピーカの音質または音量であり、

G 前記スピーカを有するがテレビではない制御対象機器との通信が可能でない場合には、前記状態表示の表示態様を更新できない、

A 制御装置。」

第3 当審における拒絶の理由

令和4年5月20日付けで当審が通知した請求項7に対する拒絶理由のうち引用文献1を主引例とした理由1(進歩性)についての拒絶理由は、以下のとおりのものである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項7について、引用文献1、4

引用文献1.特開2013-106168号公報

引用文献4.特開2007-158409号公報

なお、請求項7は、令和4年7月15日提出の手続補正書により補正され、請求項2に繰り上げされた。

第4 引用文献の記載、引用発明、引用技術

1 引用文献1について

(1)引用文献1に記載された事項

引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付したものである。以下同じ。)。

【0021】

再生装置1は、例えば音楽コンテンツの再生部やスピーカ部等を備え、独自に音楽等の再生を行うことができる機器である。

再生装置1は、コンテンツデータを、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、複数毎の光ディスク、例えばCD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc(登録商標))等を収納した交換型光ディスクプレーヤなどから再生する。

そして再生した音楽コンテンツデータを、内蔵スピーカや接続されたスピーカ等から出力できる。

その一方で再生装置1は、ネットワーク4で各機器と通信可能とされることで、サーバ装置として機能できる。即ち再生装置1はサーバ装置として、ネットワーク4上の他の装置(ネットワークスピーカ2B、2C、2D)に対して再生した音楽コンテンツデータを配信することができる。

【0022】

ネットワークスピーカ2B、2C、2Dはアンプ及びスピーカ部を備えた音声出力機器であるが、特にネットワーク通信機能を備え、システム上でクライアント装置として機能できる機器である。

例えば再生装置1がシステム上のサーバとなった場合、ネットワークスピーカ2B、2C、2Dは再生装置1から配信されてくる音楽コンテンツを受信し、音楽として出力することができる。

【0023】

ネットワーク4は、例えば家庭内の通信が可能とされる有線又は無線の伝送路により構成される。

例えば有線の場合、電灯線、テレビ用RFケーブル、DLNA(Digital Living Network Alliance)、HDMI(High Definition Multimedia Interface)などが考えられる。また無線の場合、無線LAN(IEEE802.11x(=a,b,g,n..))、ブルートゥース(Blue tooth)、2.4GHz帯を用いた他の通信方式などが考えられる。

【0046】

[3-3:リモートコントローラ]

次にリモートコントローラ3の構成例を図5で説明する。

リモートコントローラ3は、制御部41、コマンドメモリ42、送受信部43、表示駆動部44、表示部45、タッチパネルセンサ46、位置検出部47を備える。

【0047】

制御部41はマイクロコンピュータにより構成される。

コマンドメモリ42は、ROM、不揮発性メモリ等で形成され、各種のコマンドコードを記憶する。

送受信部43は、コマンドコードを送信するための所定の通信方式に応じた変調、送信を行う。またネットワーク4上の各機器と通信を行い、各機器からの情報を受信することも行う。つまり送受信部43は、ネットワーク4上の各機器に対する送信部、及び受信部として機能する。

【0048】

このリモートコントローラ3では、ユーザ操作は、主にタッチパネル操作で行われる。このため表示部45が設けられ、表示部45の表示面上にはタッチパネルセンサ46が形成される。

表示部45は例えば液晶パネルや有機ELパネルなどとされ、その表示部45の表面に圧電センサや静電センサなどのタッチパネルセンサ46が設けられてタッチパネルが形成される。

表示部45には、例えば操作用のボタン、アイコン等が表示され、各種の操作入力が可能とされる。本実施の形態では、操作入力のための表示の一つとして、図6以降で述べるように、表示部45に音量操作表示70が行われ、ユーザはこれに対するタッチ操作で操作入力を行うことができる。

つまり、いわゆるGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)としての機能でユーザに操作手段を提供するものとなる。

【0050】

制御部41には、そのソフトウエアプログラムによって実現される機能構成として、コマンド読出部41a、送受信制御部41b、入力検知部41c、表示制御部41dが形成される。

-入力検知部41cは、位置検出部47からのタッチ位置の情報を認識し、そのタッチ位置、或いはタッチ操作の軌跡により、ユーザの求める操作内容を判定する。

コマンド読出部41aは、入力検知部41cが判定した操作内容に応じてコマンドメモリ42からコマンドコードを読み出し、送受信制御部41bに供給する。

送受信制御部41bは、コマンド読出部41aが読み出したコマンドコードを送受信部43に送信させる制御を行う。この場合、送受信部43は、コマンドコードを変調し、所定の通信方式でネットワーク4上の制御対象機器に送信する。

また送受信制御部41bは送受信部43によってネットワーク4上の他の機器から送信されてきた情報、例えば各機器の現在の音量設定情報の受信処理を行う。各機器の音量設定情報については、後述する音量操作表示での表示内容に反映させる。

表示制御部41dは、表示部45での表示内容とする表示データを表示駆動部44に供給する。例えば操作アイコン表示、操作メニュー表示、音量操作表示などを表示部45で実行させる表示データを生成する。

また、表示制御部41dは、入力検知部41cで検知されたタッチ操作に応じて、表示画面上の表示内容を変化させる制御も行う。

【0053】

リモートコントローラ3の表示部45では、例えば図6に音量操作表示70として示すようなGUI表示が行われる。

この音量操作表示70としては、マスター音量設定部FDMと、個別音量設定部FD1~FD4としての表示を含む。

個別音量設定部FD1~FD4は、制御対象となる音声出力装置に対応するものとされる。つまり本例の場合、再生装置1に対応して個別音量設定部FD1が表示される。

またネットワークスピーカ2Bに対応して個別音量設定部FD2、ネットワークスピーカ2Cに対応して個別音量設定部FD3、ネットワークスピーカ2Dに対応して個別音量設定部FD4が、それぞれ表示される。

一方、1つのマスター音量設定部FDMが表示されるが、これは複数の音声出力装置の音量を一括制御するための表示とされる。

【0057】

一方、個別音量設定部(FD1~FD4)にも、それぞれスライドバー(SL1~SL4)、ノブ(N1~N4)、数値表示部(L1~L4)、ミュートボタン(MT1~MT4)が含まれる。

【0058】

例えば個別音量設定部FD1について述べると、ユーザはスライドバーSL1上でノブN1を左右に移動させることで、対応する音声出力装置である再生装置1の出力音量の設定を増減させることができる。ノブN1を左側に移動させる操作は、再生装置1に対して設定音量を下げる操作となり、ノブN1を右側に移動させる操作は、再生装置1に対して設定音量を上げる操作となる。

スライドバーSL1では、ノブN1より左側の部分は、現在の音量設定が棒グラフ的に見えるようにして視覚的に分かりやすくするため、異なる色とされている。

【0059】

またスライドバーSL1の全長は、例えば「0」~「100」までの101段階の音量設定に対応するものとされ、現在の音量設定値が数値表示部L1に表示される。この図6の場合、ノブN1はスライドバーSL1の中央にあるため、数値表示部L1には「50」と表示される。

またミュートボタンMT1は、対応する音声出力装置のミュート操作を行うための表示である。つまりユーザは、ミュートボタンMT1を操作することで、再生装置1に対して設定音量を変更しないままの状態での音声出力の停止(ミュート)を指示できる。

【0060】

このように個別音量設定部FD1を用いることで、ユーザは、再生装置1に対する出力音量設定の可変操作を行うことができるとともに、現在の音量設定状態を数値やスライドバー(ノブ位置)で一目で確認することができる。また、ミュート操作により、再生装置1を一時的に消音させるなども可能となる。

また個別音量設定部FD2~FD4によっては、ユーザはネットワークスピーカ2B、2C、2Dのそれぞれについて、任意に音量設定操作やミュート操作を行うことができ、また現在の音量設定状態を確認できる。

【0061】

音声出力装置個別の操作を図7Aに示す。

例えばユーザは、再生装置1の音量設定を上げたいと思った場合は、図のようにノブN1にタッチしながら、ノブN1をスライドバーSL1上で右に移動させる。

図5に示した制御部41は、このようなユーザ操作を検知することに応じて、表示上でノブN1がユーザの指について移動されていくようにし、数値表示部L1の数値も変化させる。また、その操作に応じて、制御部41は、再生装置1についての出力音量設定を内部的に更新すると共に、再生装置1に対して、その操作量に応じた分だけ上昇させる制御コマンド(更新された音量設定値を指示する制御コマンド)を送信する。

例えば図のように、ユーザがノブN1を「75」の位置まで移動させた場合、音量設定状態を「75」に相当するレベルまで上昇させる制御コマンドを再生装置1に送信する。再生装置1の制御部11は、この制御コマンドの受信に応じて、アンプ部17での出力音量設定を可変制御する。これにより、部屋Aにおける再生装置1の出力音量が「75」相当のレベルまで上昇される。

【0065】

また、実際にはリモートコントローラ3による制御のみではなく、各部屋の音声出力装置側での音量操作も行われる。例えば音声出力装置本体の音量操作子の操作や、その音声出力装置に対応するリモートコントローラによる操作によるものである。

リモートコントローラ3は、各音声出力装置と送受信部43により通信を行い、各音声出力装置側で音量操作があったことも検知する。音声出力装置において音量操作が行われたことを検知した場合は、制御部41は、該当する音声出力装置の個別音量設定部についての音量設定値も更新し、かつ表示上も、その個別音量設定部のスライドバー上のノブ位置や数値表示部の表示も、実際の音声出力装置の音量設定状態に即して変化させる。

例えば図7Aは、ユーザが個別音量設定部FD1のノブN1を「75」の位置まで移動させた場合として説明したが、実際にユーザが再生装置1の本体の音量操作子を用いて、音量設定を「75」まで変化させたとしても、リモートコントローラ3における表示状態は図7Aのようになる。

これにより、リモートコントローラ3における音量操作表示70は、常に実際の音量設定を表す表示状態とされる。

(2)引用文献1に記載された発明

上記(1)の摘記事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。(各構成の末尾に、対応する段落番号を付した。記号a~jは分説するために当審にて付した。以下「構成a」~「構成j」という。)。

(引用発明)

a 表示部45、表示部45の表示面上に形成されるタッチパネルセンサ46を備えるリモートコントローラ(制御端末装置)であって、(【0046】、【0048】)

b 無線の伝送路により構成されるネットワーク4上の他の機器から送信されてきた情報、例えば各機器の現在の音量設定情報の受信処理を行い、(【0023】、【0050】)

c 各機器の音量設定情報については、後述する音量操作表示での表示内容に反映させ、(【0050】)

d 表示部45では、音量操作表示70として示すようなGUI表示が行われ、音量操作表示70としては、マスター音量設定部FDMと、個別音量設定部FD1~FD4としての表示を含み、再生装置1に対応して個別音量設定部FD1、ネットワークスピーカ2Bに対応して個別音量設定部FD2、ネットワークスピーカ2Cに対応して個別音量設定部FD3、ネットワークスピーカ2Dに対応して個別音量設定部FD4が、それぞれ表示され、(【0053】)

d-1 再生装置1は、例えば音楽コンテンツの再生部やスピーカ部等を備え、独自に音楽等の再生を行うことができる機器であり、コンテンツデータを、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、複数毎の光ディスク、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc(登録商標))等を収納した交換型光ディスクプレーヤなどから再生し、(【0021】)

d-2 ネットワークスピーカ2B、2C、2Dはアンプ及びスピーカ部を備えた音声出力機器であり、(【0022】)

d-3 再生装置1はサーバ装置として、ネットワーク4上のネットワークスピーカ2B、2C、2Dに対して再生した音楽コンテンツデータを配信することができ、(【0021】)

e 個別音量設定部(FD1~FD4)に、それぞれスライドバー(SL1~SL4)、ノブ(N1~N4)、数値表示部(L1~L4)、ミュートボタン(MT1~MT4)が含まれ、(【0057】)

f 例えば個別音量設定部FD1について述べると、ユーザはスライドバーSL1上でノブN1を左右に移動させることで、対応する音声出力装置である再生装置1の出力音量の設定を増減させることができ、(【0058】)

g 現在の音量設定値が数値表示部L1に表示され、(【0059】)

h 例えば、ユーザがノブN1を「75」の位置まで移動させた場合、音量設定状態を「75」に相当するレベルまで上昇させる制御コマンドを再生装置1に送信すると、再生装置1の制御部11は、この制御コマンドの受信に応じて、アンプ部17での出力音量設定を可変制御することにより、再生装置1の出力音量が「75」相当のレベルまで上昇され、(【0061】)

i リモートコントローラ3における音量操作表示70は、常に実際の音量設定を表す表示状態とされる、(【0065】)

j リモートコントローラ3。

2 引用文献4について

(1)引用文献4に記載された事項

引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。

【0029】

既に電源がオンされているか又は操作部312による電源オン操作があった場合は、ステップS2に進み、再生モードかどうかを見る。再生モードであればステップS3に進み、例えば最新画像などの所定の画像を記録部317から読み出して伸張し表示部315に表示する。なお、既に何らかの画像が表示部315で再生されている場合にはステップS3ではその再生を継続する。次にステップS4に進み、高精細テレビ1との間で、信号の送受信を試みて、無線USBによる通信が可能な環境であるかどうかをチェックする。ここに、通信が可能な環境とは、デジタルカメラ3が高精細テレビ1の通信圏内にあり、かつ高精細テレビ1の主電源がオンされていて通信の待機状態にあることを指す。このように、第一の実施例では、デジタルカメラ3が再生モードにあるときに高精細テレビ1への画像送信を可能にする。

【0034】

ステップS4からステップS7までの機能を実現するための第二の構成としては、上記と異なり、メニュー表示中には常に「テレビ再生」という項目が表示されるようにしておく。ステップS4において無線USB通信が可能と判断されてステップS5に進んだときに、ユーザが操作部312を操作し、メニューの中から「テレビ再生」を選択することができるのは上記第一の構成と同じである。一方、ステップS4において無線USB通信が不能と判断されてステップS7に移行したときは、メニュー表示中の「テレビ再生」という項目を操作部312で選択したとしてもその操作が無効になるよう構成する。従って、ユーザは「テレビ再生」を選択することができない。この場合、ユーザが「テレビ再生」という項目を操作部312で選択したことに応答して、表示部315に警告表示を出すようにしてもよい。その警告表示の例としては、「USB通信圏外です」や「テレビのメイン電源を入れてください」のようなものが考えられる。

【0133】

なお、デジタルカメラ3と高精細テレビ1の通信は直接行われる場合に限らず、家庭内が無線LAN等の無線通信可能な環境にあれば、無線LANを統括するサーバを介して通信を行うようにしてもよい。このことは第一の実施例や第二の実施例でも同様であり、これらの実施例においても、デジタルカメラ3と高精細テレビ1の通信は無線USBに限らず、無線LANであってもよく、また、直接通信に限らず、サーバ等の他の機器を経由するものであってよい。

ここで、【0133】には、デジタルカメラ3と高精細テレビ1の通信は無線USBに限らず、無線LANであってもよく、また、直接通信に限らず、サーバ等の他の機器を経由するものであってよいことが記載されていることから、【0029】、【0034】の無線USBは、無線通信として認定できるものである。

(2)引用文献4に記載された技術

上記(1)の摘記事項から、引用文献4には、次の技術(以下「引用技術」という。)が記載されている。

(引用技術)

操作対象の高精細テレビ1との間で、信号の送受信を試みて、無線通信が可能な環境であるかどうかをチェックし、(【0029】)

無線通信が不能と判断されたときは、メニュー表示中の「テレビ再生」という項目を操作部312で選択したとしてもその操作が無効になるよう構成する技術。(【0034】)

上記引用技術は、無線通信を利用して高精細テレビ1を操作制御する技術であるから、無線通信を利用した操作制御技術であって、当該無線通信が不能の場合には、「テレビ再生」という項目を選択する操作をしても、高精細テレビ1で「テレビ再生」を実行することができない、すなわち、当該操作を無効にする構成であるといえる。

すなわち、無線通信を利用した操作制御技術において、通信が不能と判断されたときに、通信が不能であると実行できない機能(「テレビ再生」)についての操作を無効なものとする操作制御技術は、公知技術であるといえる。

第5 対比・判断

1 対比

本願発明と引用発明とを、以下で対比する。

(1)構成Aについて

構成aより、表示部45の表示面上にタッチパネルセンサ46が形成されていることから、表示部45とタッチパネルセンサ46が一体で形成されているといえ、当該一体で形成されている表示部45とタッチパネルセンサ46は、構成Aの「タッチパネルディスプレイ」に相当する。

したがって、構成aの「表示部45、表示部45の表示面上に形成されるタッチパネルセンサ46を備えるリモートコントローラ(制御端末装置)」は、構成Aの「タッチパネルディスプレイを有する制御装置」に相当する。

(2)構成Bについて

構成bの「他の機器」は、構成d~d-3より、再生装置1、ネットワークスピーカ2B、2C、2Dであり、「リモートコントローラ(制御端末装置)」とは異なる機器である。そして、再生装置1、ネットワークスピーカ2B、2C、2Dは、構成f~hより、リモートコントローラにより制御される機器である。

したがって、構成bの「他の機器」は、構成Bの「前記制御装置とは異なる制御対象機器」に相当する。

構成bの「各機器の現在の音量設定情報の受信処理を」行うことは、各機器の現在の音量状態を各機器から取得することであるから、引用発明は、構成Bの「前記制御装置とは異なる制御対象機器の状態を前記制御対象機器から取得する第1手段」に相当する手段を有するものである。

(3)構成Cについて

構成b~dより、引用発明は、受信した各機器の現在の音量設定情報を表示部45の音量操作表示70として表示されるものであるから、構成Cの「前記取得した状態に基づいて、前記制御対象機器の状態を示す状態表示を、前記制御対象機器の状態に応じた表示態様で前記タッチパネルディスプレイに表示させる第2手段」に相当する手段を有するものである。

(4)構成Dについて

構成f~hより、引用発明は、スライドバーSL1上でノブN1を左右に移動させることで、再生装置1の出力音量の設定を増減させることができ、現在の音量設定値が数値表示部L1に表示され、ユーザがノブN1を「75」の位置まで移動させた場合、音量設定状態を「75」に相当するレベルまで上昇させる制御コマンドを再生装置1に送信し、再生装置1の制御部11は、この制御コマンドの受信に応じて、再生装置1の出力音量が「75」相当のレベルまで上昇される構成である。

ここで、「ユーザがノブN1を「75」の位置まで移動」させることは、音量の表示を「75」に更新するタッチ操作であるといえ、引用発明は、ユーザがノブN1を「75」の位置まで移動させた場合、再生装置1の出力音量が「75」になるような制御コマンドを再生装置1に送信するものであるから、構成Dの「前記状態表示の表示態様を更新するタッチ操作に応じて、更新後の前記状態表示の表示態様と前記制御対象機器の状態とが対応するよう、前記制御対象機器の状態を調整するための制御信号を生成する第3手段」に相当する手段を有するものである。

(5)構成Eについて

構成f~hより、引用発明のリモートコントローラは、再生装置1、ネットワークスピーカ2B、2C、2Dを制御するものである。

ここで、構成d-1より、再生装置1は、「音楽コンテンツの再生部やスピーカ部等を備え、独自に音楽等の再生を行うことができる機器」であり、スピーカを有するがテレビではない機器も含まれる。

また、構成d-2より、ネットワークスピーカ2B、2C、2Dは、スピーカを有するがテレビではない。

以上より、引用発明の再生装置1、ネットワークスピーカ2B、2C、2Dは、スピーカを有するがテレビではないので、構成Eに相当する。

(6)構成Fについて

引用発明は、再生装置1、ネットワークスピーカ2B、2C、2Dの音量を制御するものであるから、構成Fに相当する。

(7)構成Gについて

引用発明は、構成Gに相当する構成に特定されているものではない。

2 一致点及び相違点

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

A タッチパネルディスプレイを有する制御装置であって、

B 前記制御装置とは異なる制御対象機器の状態を前記制御対象機器から取得する第1手段と、

C 前記取得した状態に基づいて、前記制御対象機器の状態を示す状態表示を、前記制御対象機器の状態に応じた表示態様で前記タッチパネルディスプレイに表示させる第2手段と、

D 前記状態表示の表示態様を更新するタッチ操作に応じて、更新後の前記状態表示の表示態様と前記制御対象機器の状態とが対応するよう、前記制御対象機器の状態を調整するための制御信号を生成する第3手段と、を備え、

E 前記制御対象機器は、スピーカを有するがテレビではなく、

F 前記制御対象機器の状態は、前記スピーカの音質または音量である、

A 制御装置。」

<相違点>

本願発明は、「前記スピーカを有するがテレビではない制御対象機器との通信が可能でない場合には、前記状態表示の表示態様を更新できない」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成に特定されているものではない点。

3 相違点についての判断

無線通信においては、通信状況を通常監視しており、無線通信を利用した操作制御技術において、通信が可能でない状態となった場合にどのような対処を行うかを予め検討しておくことは当業者であれば当然に考慮する事項である。

そうすると、引用発明においても、リモートコントローラ3と各機器との通信が可能でない状態となった場合にどのような対処を行うかを予め検討しておくことは当業者であれば当然に考慮する事項であるといえる。

ここで、引用発明において通信が可能でない状態では、リモートコントローラ3からの制御コマンドを再生装置やネットワークスピーカが受信することができないため、リモートコントローラ3の音量操作表示70で音量設定を変化させても、再生装置やネットワークスピーカの出力音量は変化せず、音量設定を変化させる前の音量のままである。

そうすると、引用発明のリモートコントローラ3における音量操作表示70は、常に実際の音量設定を表す表示状態(構成i)を反映していることから、通信が可能でない状態では、実際の音量設定すなわち音量設定を変化させる前の音量を表示させようとすると考えるのが自然である。

そして、上記第4の2(2)で検討したように、無線通信を利用した操作制御技術において、通信が不能と判断されたときに、通信が不能であると実行できない機能についての操作を無効なものとする操作制御技術は、公知技術であり、引用発明と上記公知技術は、被制御機器を無線により制御するという点で共通する技術である。

してみると、引用発明において、通信が可能でない状態では、実際の音量設定すなわち音量設定を変化させる前の音量を表示させるために、上記公知技術を採用し、ユーザがノブN1を「75」の位置まで移動させる操作を無効にし、元の位置のままの表示をする、すなわち、表示を更新せず元のままにすることで「前記状態表示の表示態様を更新できない」という相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

第6 意見書の主張について

請求人は、令和4年7月15日付け意見書において、引用文献1を主引例とする進歩性に関して、以下のような主張をしている。

「ア 引用文献4に記載された技術事項を組み合わせても本願発明に到達しないこと
引用文献4には、相違点における「状態表示」に該当するものの開示はありません。また、引用文献4には、相違点における「スピーカを有するがテレビではない制御対象機器」に該当するものの開示はありません。よって、引用文献4に記載された技術事項を組み合わせても本願発明に到達しません。
なお、拒絶理由通知では・・・と認定されました。
しかし、・・・引用文献4における「テレビ」、「テレビ再生」をそれぞれ「機器」、「通信が不能であると実行できない機能」と過度に上位概念化するものであり、失当です。」(第3の1(3)ア)
「イ 引用文献4に記載された事項を引用1発明に適用する動機付けがないこと
・・・
(ア)技術分野の関連性がないこと
引用1発明は、制御対象はスピーカを有するがテレビではない機器であり、制御主体はリモートコントローラです。
続きを表示(全13行)
一方、引用文献4は、制御対象はテレビであり、制御主体はデジタルカメラです。
引用1発明と、引用文献4に記載された技術と、では制御対象も制御主体も異なるので、両者は技術分野が関連しません。現に、引用文献4の技術分野はデジタルカメラおよびテレビであることが明示されていますが(引用文献4の[0001])、引用1発明はテレビではない機器が制御対象ですし、デジタルカメラが制御主体となることも全く想定されていません。
・・・
このように、引用1発明と引用文献4に記載の技術事項とでは技術分野の関連性がありません。
・・・
(イ)相応の動機付けがないこと
・・・引用1発明は再生装置やネットワークスピーカの音量を増減させるものであるのに対し、引用文献4に記載された技術事項はデジタルカメラで撮影した画像をテレビ画面に表示するというものであり、共通する課題はありません。・・・
また、拒絶理由通知では「引用1発明においても、リモートコントローラ3と各機器との通信が可能でない状態となることは想定し得る状況である」とされていますが、引用文献1ではリモートコントローラ3と各機器との通信が可能でない状態となることは示唆すらされていないのであり、まさに後知恵と言うべきものです。
このように、引用1発明と引用文献4に記載された技術事項に共通する課題はありません。その他にも「相応の動機付け」となるものはありません。」(第3の1(3)イ)
「ウ 顕著な効果があること
本願発明は、制御対象機器との通信ができない場合に、状態表示が示す制御対象機器の状態と、制御対象機器の状態との間に齟齬が生じるのを防げるという顕著な効果を奏します(本願明細書[0076])。
これに対し、引用1発明は制御対象機器との通信ができないという状況を全く考慮していませんし、引用文献4は本願発明の「状態表示」に該当するものの開示がありませんので、引用1発明と引用文献4に記載された技術事項を組み合わせたとしても、上記のような本願発明の効果を奏することはありません。」(第3の1(3)ウ)

要するに、請求人は意見書で、以下の3点を主張している。

(1)引用文献4を過度に上位概念化するものであり、引用文献4に記載された技術事項を組み合わせても本願発明に到達しない点。

(2)引用1発明と引用文献4に記載された技術とでは技術分野が関連せず、 また、引用1発明と引用文献4に記載された技術事項に共通する課題がなく、相応の動機付けがないため、引用文献4に記載された事項を引用1発明に適用する動機付けがない点。

(3)引用1発明と引用文献4に記載された技術事項を組み合わせたとしても、本願発明の効果を奏することはなく、本願発明は顕著な効果がある点。

上記(1)に関して、無線通信を利用した操作制御技術において、通信が不能と判断されたときに、どのような制御を行うかを考えた場合に、通信が不能であると操作される機器で実行できない機能についての操作を無効なものとする操作制御技術が公知技術であることを示す例として引用文献4を提示したまでであり、引用文献4に記載された技術を過度に上位概念化して、引用発明と組み合わせようとしたものではない。

そして、引用発明と公知技術を組み合わせた場合に、本願発明が容易に想到し得ることについては、上記第5で検討したとおりである。

上記(2)に関して、上記第5の3で検討したように、無線通信を利用した操作制御技術において、通信が可能でない状態となった場合には、操作制御を行っても、当該操作制御が、操作される機器に通信されないことから、そのような場合にどのような対処を行うかを予め検討しておくことは当業者であれば当然に考慮する事項であるから、引用発明においても、リモートコントローラ3と各機器との通信が可能でない状態となった場合にどのような対処を行うかを予め検討しておくことは当業者であれば当然に考慮する事項である。

そうすると、引用発明と公知技術は共通する課題を有するものであるといえ、公知技術を引用発明に適用する動機付けがあるといえる。

上記(3)に関して、引用発明は、常に実際の音量設定を表す表示状態(構成i)とすることが前提であることから、引用発明に公知技術を適用することにより、制御対象機器との通信ができない場合に、表示状態が示す制御対象機器の状態と、制御対象機器の状態との間に齟齬が生じるのを防げるという本願発明と同様の効果を奏するものである。

したがって、請求人の主張を認めることはできない。

第7 むすび

上記のとおりであるから、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明と公知技術(引用技術)とに基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-003044

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