特許拒絶査定不服審判
2022-003041
スクリーンマスク検査方法及びスクリーンマスク検査装置
- 審判番号
- 2022-003041
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-102023
- 請求日
- 2022年03月01日
- 審決日
- 2023年10月20日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】CKD株式会社
- 【請求人代理人】川口 光男
- 審判長/審判官
- 審判長 藤本 義仁
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 佐藤 海
- 分類
- P18 .121-WZ (B41M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-102023「スクリーンマスク検査方法及びスクリーンマスク検査装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月27日出願公開、特開2021-194831〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年6月12日に出願され、令和3年7月16日付けで手続補正がなされ、同年9月8日付けで拒絶理由が通知され、同年10月21日付けで意見書が提出され、同年12月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和4年3月1日付けで拒絶査定不服審判請求がされたものである。
その後、当審において、令和5年5月9日付けで拒絶理由が通知され、同年6月23日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」・・・「本願発明4」といい、これらをまとめて「本願発明」という。)は、令和5年6月23日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の、請求項1ないし4に記載された以下の事項によって特定されるものと認められる。
「【請求項1】
基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査方法であって、
前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射する照射工程と、
前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により取得された画像データを基に、前記開口部に係る元画像データを取得する元画像データ取得工程と、
入力される画像データから特徴量を抽出する符号化部と該特徴量から画像データを再構成する復号化部とを有するニューラルネットワークに対し、異物の付着していない前記開口部の画像データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段へ前記元画像データを入力して再構成された前記開口部に係る再構成画像データを取得する再構成画像データ取得工程と、
前記元画像データと再構成画像データとを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定する判定工程とを備え、
前記学習データについては、前記スクリーンマスクの厚さ及び材質、並びに、前記開口部の大きさ及び配置レイアウトの同一性が不要であることを特徴とするスクリーンマスク検査方法。
【請求項2】
前記比較工程においては、
前記元画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像と、前記再構成画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像とを比較することを特徴とする請求項1に記載のスクリーンマスク検査方法。
【請求項3】
基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査装置であって、
前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射可能な照射手段と、
前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により取得された画像データを基に、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に係る検査を実行可能な画像処理手段とを備え、
前記画像処理手段は、
入力される画像データから特徴量を抽出する符号化部と該特徴量から画像データを再構成する復号化部とを有するニューラルネットワークに対し、異物の付着していない前記開口部の画像データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段と、
前記クリーニングしたスクリーンマスクの開口部を前記撮像手段により撮像した前記開口部に係る元画像データを取得可能な元画像データ取得手段と、
前記元画像データを前記識別手段へ入力して再構成された前記開口部に係る再構成画像データを取得可能な再構成画像データ取得手段と、
前記元画像データと再構成画像データとを比較可能な比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定可能な判定手段とを備え、
前記学習データについては、前記スクリーンマスクの厚さ及び材質、並びに、前記開口部の大きさ及び配置レイアウトの同一性が不要であることを特徴とするスクリーンマスク検査装置。
【請求項4】
前記比較手段は、
前記元画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像と、前記再構成画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像とを比較することを特徴とする請求項3に記載のスクリーンマスク検査装置。」
第3 当審において通知した拒絶の理由
当審において令和5年5月9日付けで通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)
本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
・引用文献1 特開平9-201953号公報
・引用文献2 「正常データだけを学習する異常検知(Vol.3)」、株式会社システムインテグレータ、[online]、2018年8月27日、https://products.sint.co.jp/aisia-ad/blog/deep-learning-vol.3 [2023年4月14日検索](周知技術)
・引用文献3 特開2018-5773号公報(周知技術)
・引用文献4 特開2019-28591号公報(周知技術)
第4 当審の判断
1 引用文献の記載等
(1)引用文献1
ア 記載事項
当審が拒絶理由において引用し、本願の出願前に出願公開された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は、当審において付した。以下、同様。)。
「【0008】
【課題を解決するための手段】本願第1発明のクリーム半田印刷機におけるメタルマスクのクリーニング方法は、上記の課題を解決するために、メタルマスクを使用してクリーム半田をプリント基板に印刷し、所定回数印刷する毎に前記メタルマスクをクリーニングするクリーム半田印刷機において、前記クリーニング後に、撮像手段により前記メタルマスクに残存しているクリーム半田の画像データを取り込み、前記画像データを処理して前記メタルマスクに残存しているクリーム半田の状態を示すデータを求め、前記データを判定基準と比較して適・不適を判定し、適の場合にはクリーム半田印刷を続けて行い、不適の場合には再度クリーニングを行うことを特徴とする。
・・・・
【0011】これらにより、メタルマスクのパターン孔の縁部に残存するクリーム半田の状態を悪影響が無い状態に限定できるので、回路基板に実装する電子部品が微細化し、メタルマスクのパターン孔が微細化しても、メタルマスクによるクリーム半田印刷が適正に行われ、半田欠け、半田にじみ、半田ブリッジ等の半田印刷不良が無くなり半田印刷状態が向上し、且つ、充分な接合強度が得られる。
・・・・
【0015】22はメタルマスク6の表面やパターン孔の画像を取り込むラインセンサカメラ、14はラインセンサカメラ22に取り付けるレンズ、12はラインセンサカメラ22をX方向(図1の紙面に直角な方向)に移動させるXテーブル、17はラインセンサカメラ22をY方向(図1の左右方向)に移動させるYテーブル、11はXテーブル12とYテーブル17とを取り付ける基盤である。
・・・・
【0017】19はYテーブル17の上に設置され後述のZテーブル21の回転角を調整するために水平回転する回転テーブル、18は回転テーブル19を回転させるθ軸モータ、20はラインセンサカメラ22用の照明手段、21はクリーム半田印刷すべきプリント基板を載せるZテーブル、23はZテーブル21に載せられたプリント基板をメタルマスク6の基板側の面46の規定位置に密着させるためにZ方向(図1の上下方向)に移動させるZ軸モータで、密着させる力がプリント基板の姿勢に合わせて均一になるように複数個設けてある。
・・・・
【0037】本実施の形態による検査処理には図6と図7に示す複数の処理方法があり、これらの検査方法は並行して処理される。先ず、図6から説明する。
【0038】図6のステップ#17において、取込みメモリ28に格納されている画像データから図8、図9の40に示す切出し画像データを切り出して切出しメモリ29に格納する。
【0039】ステップ#18において、図8、図9に示すように検査エリア42を設定する。
【0040】ステップ#19において、縁部に付着しているクリーム半田43を含まないパターン孔41の空間部分を色抽出する。
【0041】ステップ#20において、前記の色抽出部を2値化する。
【0042】ステップ#21において、前記の2値化データにより縁部に付着しているクリーム半田43を含まないパターン孔41の空間部分の面積、即ち、認識マスク孔の面積S1 を求める。
【0043】ステップ#22において、所定のマスク孔面積S0-認識マスク孔面積S1≦許容値が成立するか否かを判断し、成立すればOKとの判断でステップ#23に進み、不成立であれば不良との判断でステップ#24に進む。
【0044】ステップ#23において、クリーニング結果良の信号を出し、ステップ#1に戻ってクリーム半田印刷を続ける。
【0045】ステップ#24において、クリーニング結果不良の信号を出し、ステップ#3に戻ってメタルマスクを再クリーニングする。
・・・・
【0054】尚、本実施の形態では、メタルマスクのクリーニング後にメタルマスクに残存しているクリーム半田の状態として、メタルマスクのパターン孔の縁部に残存しているクリーム半田の面積と、残存しているクリーム半田が半田ブリッジを起こす状態か否かを検査しているが、これらに限らず、メタルマスクのクリーニング後にメタルマスクに残存しているクリーム半田の各種の状態を利用できるので、目的に合わせて検査すべき残存クリーム半田状態を選択すれば良い。
・・・・
【0059】又、メタルマスクのパターン孔の検査は、総てのパターン孔について行っても良く、特に微細なパターン孔に限って行っても良く、検査するパターン孔を任意に設定できる。
【0060】
【発明の効果】本発明のクリーム半田印刷機におけるメタルマスクのクリーニング方法は、従来のクリーニング方法に検査機能を加え、メタルマスクのクリーニング後にメタルマスクに残存しているクリーム半田の状態を検査し、検査結果が不良であれば再度クリーニングを行うことにより、クリーム半田印刷において、実装すべき電子部品が微細化してプリント基板のパターン孔が微細になっても、クリーム半田印刷の半田欠け、半田にじみ、半田ブリッジ等の不良の発生を防止でき、電子部品の接合状態を向上させ接合強度を安定させるという効果が得られる。」
イ 記載された発明
上記アより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が、記載されているものと認められる。
<引用発明1>
メタルマスクを使用してクリーム半田をプリント基板に印刷するクリーム半田印刷機において、メタルマスクをクリーニングするクリーニング後に、画像データを取り込み、画像データを処理して、前記メタルマスクに残存しているクリーム半田の状態の適・不適を判定する、検査方法であって、
照明手段を有するラインセンサカメラにより、メタルマスクの表面やパターン孔の画像を取り込み、
画像データを切り出して、パターン孔を含む検査エリアを設定し、
認識マスク孔の面積を求めて、所定のマスク孔面積から減算した値について許容値以下が成立するか否かに基づいて、クリーニング結果良の信号を出し、またはクリーニング結果不良の信号を出すことで、
メタルマスクのクリーニング後にメタルマスクのパターン孔の縁部に残存しているクリーム半田について、検査を行う、検査方法。
(2)引用文献2
ア 記載事項
当審が拒絶理由において引用し、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、次の記載がある。
「(2)オートエンコーダー(VAE)の学習
オートエンコーダーは、どういう仕組みで入力データから潜在変数を求めるのでしょうか。代表的なオートエンコーダーのVAE(Variational Autoencoder)をモデルにして簡単に説明しましょう。 VAEはDCGANと同じく潜在変数を取得するのに確率分布を使っています。図4の学習プロセスをご覧ください。エンコーダー君は入力(X)の特徴を圧縮してn次元のガウス分布の平均μと分散σを出力し、その2つをもとにして潜在変数(Z)をサンプリングで求めます。
デコーダー君は、潜在変数(Z)をもとに出力(X')を生成するわけですが、入力(X)と出力(X')との間に復元誤差(Reconstraction Error)が生じます。例えば入力(X)のデータを200枚用意して何回も学習させながら、この復元誤差(Reconstraction Error)を少なくするようにエンコーダーとデコーダーそれぞれの重みを調整します。いい感じに復元できるようになったとき、エンコーダー君は与えられた入力データから最適な潜在変数(凝縮された特徴)を認識できるようになっており、デコーダー君は潜在変数を与えられれば学習したやつとそっくりの画像を生成できるようになっているわけです。
[図:0001405191000001.jpg]
図4:VAEの学習と判定
(3)オートエンコーダー(VAE)による異常検知
さて、生成モデルとされるVAEを使って異常検知するってどういうことなのでしょうか。ポイントは、VAEは「習っていないやつは復元できない」って中坊のような正論を言うってことです。
図4の判定プロセスに登場するエンコーダー君とデコーダー君は、学習プロセスで200枚の正常品を学習した優等生です。コンベアに流れてくる製品が正常品だったら、エンコーダー君は適切に潜在変数(Z)に変換し、デコーダー君はそれを見事に復元できます。
そこに不良品が流れて来ましたらどうなるでしょうか。エンコーダー君とデコーダー君は優等生にありがちながり勉タイプなので、勉強した以外のことには弱いのです。なので、不良品(X)にあった傷などの異常については復元できず、デコーダーが生成した出力(X)は傷のない画像になってしまいます。
ところで、2つのファイルを比較するDiffと呼ばれるソフトを知っていますか。いろいろな種類があって、テキストの差分比較だけでなくPDFや画像の比較を行えるものも公開されています。こうしたDiffを使って入力(X)と出力(X')を比較したらどうなるでしょうか。
正常品の場合は入力(X)と出力(X')が同じなので差分無しの真っ黒になります。一方、不良品の場合は傷の部分だけが不一致となり図5のように差が抽出できます。この座標をもとにヒートマップ(赤丸)を付ければ、一目でどこにどんな異常が発見されたかわかるわけです。
・・・・
まとめ
生成モデルを使った「正常品だけを学習する異常検知」の仕組み、理解できましたでしょうか。今回は生成モデルとしてVAEを使いましたが、畳み込みNNを使ったコンボリューショナルオートエンコーダー、GAN(敵対性生成ネットワーク)の一種のACGAN、VAEとGANを組み合わせたVAEGANなどなど、実にさまざまな生成モデルがあります。」
イ 技術事項
上記アより、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。
「入力画像の特徴を圧縮して潜在変数を求めるエンコーダーと、潜在変数をもとに出力画像を生成するデコーダーとを、
学習プロセスでは、正常品を学習させることで、正常品であれば見事に復元して出力できる一方、不良品にあった傷などの異常については復元できず、傷のない画像を生成して出力するものとし、
判定プロセスでは、入力画像と出力画像との画像の比較を行うことで、
畳み込みNNを使ったコンボリューショナルオートエンコーダーなどにより、正常品だけを学習する異常検知をすること。」
(3)引用文献3
ア 記載事項
当審が拒絶理由において引用し、本願の出願前に出願公開された引用文献3には、次の記載がある。
「【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における異常判定システムの構成を示す機能ブロック図である。
本実施形態における異常判定システムは、主に、学習用演算器1と、異常判定装置としての判別用演算器2と、カメラ10とから構成されている。学習用演算器1では、本異常判定システムにおける異常判定に必要なパラメータに関する学習を行う。判別用演算器2では、学習済みのパラメータを用いて異常判定を行う。カメラ10は、判定対象物を撮像して、本異常判定システムに入力される画像データを取得する。なお、図1において、「NN」は「ニューラルネットワーク」を省略したものである。
【0009】
学習用演算器1は、カメラ10から取得した学習用正常画像データを予め学習に用いるデータとして学習用正常画像データ記憶部11に蓄積しておく。学習用正常画像データ記憶部11に蓄積される学習用正常画像データ群は、正常、異常のラベル情報を持たなくてもよいが、正常な画像データのみ、あるいは、正常な画像データが異常な画像データに対して圧倒的多数となるようにする。また、学習用正常画像データ記憶部11に蓄積される学習用正常画像データ群は、前処理部13により、画像サイズやチャネル調整など、学習に適切な形式に変換された状態で蓄積される。
【0010】
特徴量抽出・再構成ニューラルネットワークパラメータ学習部14では、適切なN次元の特徴量を得る次元圧縮処理を実施するための特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータを取得する処理と、N次元特徴量を前処理部13の処理後と等しい次元(画像データ)に再構成(復元)する圧縮データ再構成処理を実施するための再構成ニューラルネットワークパラメータを取得する処理を実行する。前者の処理で得られた特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータは、特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータ記憶部21に記憶される。また、後者の処理で得られた再構成ニューラルネットワークパラメータは、再構成ニューラルネットワークパラメータ記憶部22に記憶される。
【0011】
また、識別モデル学習部15は、識別モデルパラメータ記憶部23に記憶されている異常判定条件としての識別モデルパラメータを取得するための学習を行う。
【0012】
特徴量抽出・再構成ニューラルネットワークパラメータ学習部14で得られる特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータや再構成ニューラルネットワークパラメータ、及び、識別モデル学習部15により得られる識別モデルパラメータは、判別用演算器2からも読み出して利用できるように構成される。
【0013】
判別用演算器2は、カメラ10で撮像した判別対象物の撮像画像のデータを判別対象画像データである判別用画像データとして取得し、判別用画像データ記憶部12に記憶する。判別用画像データ記憶部12に記憶される判別用画像データも、前処理部13により、学習用正常画像データ記憶部11に蓄積される学習用正常画像データと同じ形式に変換される。
【0014】
特徴量抽出部16は、判別用画像データ記憶部12に記憶される判別用画像データから、特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータ記憶部21に記憶されている特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータを用いて、N次元特徴量を抽出する処理を実行する。
【0015】
データ再構成誤差検出部17は、特徴量抽出部16で抽出された判別用画像データのN次元特徴量から、再構成ニューラルネットワークパラメータ記憶部22に記憶されている再構成ニューラルネットワークパラメータを用いて、前処理部13の処理後と等しい次元(画像データ)に再構成(復元)して、再構成画像データを生成する処理を行う。また、データ再構成誤差検出部17は、このようにして生成した再構成画像データと、判別用画像データ記憶部12に記憶される判別用画像データとの差分計算を行う処理も実行し、その計算結果(差異情報)を再構成誤差提示部19へと送る。
・・・・
【0018】
図2は、本実施形態の学習用演算器1における処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS101では、学習用正常画像データの入力処理を行う。その後、ステップS102では、単純なサイズ変換、チャネルの分割、正規化など、学習に用いやすい形式になるように前処理を行う。前処理では、学習用正常画像データの数が少ない場合に、意図的にデータにノイズを加えるなどして、学習用正常画像データの数をかさ増しする処理を行っても良い。
・・・・
【0023】
また、ステップS206では、ステップS203で抽出されたN次元特徴量(圧縮データ)に対し、判別用画像データと同じ次元数のデータ(再構成画像データ)への再構成処理を実施する。そして、ステップS207において、元の判別用画像データと再構成画像データとを比較して差分(誤差)の計算を行う。この計算結果は、例えば、判別用画像データのどの領域(判別用画像上のどの画像部分)に異常が見られるかなどを指示する形で、ステップS208において提示される。」
イ 技術事項
上記アより、引用文献3には、次の技術事項が記載されている。
「学習用演算器と、異常判定装置としての判別用演算器と、カメラとから構成される異常判定システムにおいて、
学習用演算器は、予め学習に用いる学習用正常画像データ群を正常な画像データのみとなるようにし、
特徴量抽出・再構成ニューラルネットワークパラメータ学習部は、適切なN次元の特徴量を得る次元圧縮処理を実施するための特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータを取得する処理と、N次元特徴量を画像データに再構成する圧縮データ再構成処理を実施するための再構成ニューラルネットワークパラメータを取得する処理を実行し、
判別用演算器は、カメラで撮像した判別対象物の判別用画像データを取得し、特徴量抽出ニューラルネットワークパラメータを用いて、N次元特徴量を抽出し、抽出されたN次元特徴量から、再構成ニューラルネットワークパラメータを用いて、再構成画像データを生成し、生成した再構成画像データと判別用画像データとの差分計算を行う処理も実行し、
差分の計算結果は、判別用画像データのどの領域に異常が見られるかなどを指示すること。」
(4)引用文献4
ア 記載事項
当審が拒絶理由において引用し、本願の出願前に出願公開された引用文献4には、次の記載がある。
「【0012】
本発明の第8の態様によれば、学習済みモデルは、正常時における監視対象が撮像された画像データに対して、正常の範囲を超えずに色調の変更を伴う異なる画像処理を行うことにより生成された複数の複製画像データを教師データとして、前記監視対象を撮像した画像データから、前記監視対象の正常性の判定に用いられる値を出力するように学習された学習済みモデルであって、コンピュータに、取得された前記画像データから、前記監視対象の正常性の判定に用いられる値を出力するステップを実行させる。
・・・・
【0024】
画像処理部305は、画像データに複数の異なる画像処理を行うことで、複数の複製画像データを生成する。画像処理の例としては、平滑化処理、ガンマ補正、エッジ抽出、平行移動、回転などが挙げられる。ガンマ補正は、色調変更を伴う画像処理の一例である。例えば、画像処理部305は、A個の画像データについて、Bパターンの平滑化処理、Cパターンのガンマ補正、Dパターンの平行移動、Eパターンの回転を行うことで、A×B×C×D×E個の複製画像データを生成する。画像処理部305は、監視対象100の正常の範囲を超えない範囲で、色調の変更を伴う異なる画像処理を行う。例えば、画像処理部305は、熱画像の画像処理を行う場合に、画像データの色調を、所定期間の最高気温から最低気温までの温度範囲内で変化させるように画像処理を行う。また例えば、画像処理部305は、可視画像の画像処理を行う場合に、画像データの色調を、照明のオンからオフまでの照度範囲内で変化させるように画像処理を行う。
【0025】
学習部306は、履歴記憶部303が記憶する画像データと、画像処理部305が生成した複製画像データとを教師データとして、モデルを学習させる。すなわち、学習部306は、近傍法の標本データとして、画像取得部301に入力された画像データと、画像処理部305が生成した複製画像データとをモデル記憶部307に記憶させる。複数の複製画像データを含む標本データ群は、学習済みモデルの一例である。
・・・・
【0044】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る監視システム10は、近傍法に基づいて画像データから監視対象100の正常性を判定する。これに対し、第2の実施形態に係る監視システム10は、ニューラルネットワークに基づいて画像データから監視対象100の正常性を判定する。
【0045】
第2の実施形態に係る監視装置300は、第1の実施形態とモデル記憶部307が記憶するモデル、ならびに学習部306、推論処理部308および判定部309の処理が異なる。
【0046】
モデル記憶部307は、入力層、中間層、および出力層からなるニューラルネットワークモデルを記憶する。入力層および出力層のノード数は、画像データの画素数と等しい。学習済みモデルは、入力層に入力された画像データを圧縮した後に復元して出力するオートエンコーダとして機能する。学習済みモデルが出力する画像データは、「監視対象の正常性の判定に用いられる値」の一例である。
【0047】
学習部306は、履歴記憶部303が記憶する画像データと、画像処理部305が生成した複製画像データとを教師データとして、モデルを学習させる。すなわち、学習部306は、モデル記憶部307が記憶するモデルの入力層と出力層に教師データを入力し、入力層と中間層の各ノードにおける重み係数と活性化関数とを学習させる。教師データは、いずれも正常時における監視対象100が写った画像データである。そのため、学習済みモデルは、入力された画像データから、正常時における監視対象100が写った画像データを出力するように学習される。つまり、異常時における監視対象100が写った画像データが学習済みモデルに入力されることで、学習済みモデルが、オリジナルの画像データより正常に近い監視対象100が写った画像データを出力することが期待される。
【0048】
推論処理部308は、モデル記憶部307が記憶する学習済みモデルを用いて、画像取得部301に入力された画像データから、画像データを再生成する。学習済みモデルは、正常時における監視対象100が写った画像データに基づいて学習されているため、入力した画像データと再生成された画像データとの差は、監視対象100が異常である可能性が高いほど大きくなる。
【0049】
判定部309は、推論処理部308が再生成した画像データと入力した画像データとの差を算出し、当該差を閾値と比較することで、監視対象100の正常性を判定する。判定部309は、再生成した画像データと入力した画像データとの差が閾値未満である場合に、監視対象100の正常であると判定する。判定部309は、指標値が閾値以上である場合に、監視対象100の異常であると判定する。」
イ 技術事項
上記アより、引用文献4には、次の技術事項が記載されている。
「ニューラルネットワークに基づいて画像データから監視対象の正常性を判定する監視システムにおいて、
入力層に入力された画像データを圧縮した後に復元して出力するオートエンコーダとして機能する、学習済みモデルを用い、
モデルを学習させる教師データは、いずれも正常時における監視対象が写った画像データとし、
推論処理部は、学習済みモデルを用いて、画像取得部に入力された画像データから、画像データを再生成し、
判定部は、再生成した画像データと入力した画像データとの差を閾値と比較することで、監視対象の正常性を判定すること。」
2 本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「プリント基板」は、本願発明1における「基板」に相当する。引用発明1において、「クリーム半田をプリント基板に印刷する」ことは、本願発明1において、「半田印刷」に相当する。引用発明1において、「クリーム半田をプリント基板に印刷する」際に「使用」する「メタルマスク」は、本願発明1において、「スクリーンマスク」に相当する。引用発明1において、「クリーニング後」の「メタルマスク」の「画像データを取り込み、画像データを処理して、前記メタルマスクに残存しているクリーム半田の状態の適・不適を判定する」構成は、本願発明1において、「クリーニングしたスクリーンマスクを検査する」構成に、相当する。引用発明1において、「クリーニング後」に「適」と「判定」された「メタルマスク」が、後に「クリーム半田をプリント基板に印刷するクリーム半田印刷機」で「使用」されることが明らかであることを踏まえると、引用発明1において、「メタルマスクを使用してクリーム半田をプリント基板に印刷するクリーム半田印刷機において、メタルマスクをクリーニングするクリーニング後に、画像データを取り込み、画像データを処理して、前記メタルマスクに残存しているクリーム半田の状態の適・不適を判定する、検査方法」である構成は、本願発明1において、「基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査方法」である構成に、相当する。
引用発明1において、「照明手段を有するラインセンサカメラにより、メタルマスクの表面やパターン孔の画像を取り込」む構成は、画像を取り込む対象となるメタルマスクの表面やパターン孔に対して、「照明手段」の光を照射することが明らかであることを踏まえると、本願発明1において、「前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射する照射工程」及び「前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像する撮像工程」に相当する。
引用発明1において、「画像データを切り出して、パターン孔を含む検査エリアを設定」する構成は、本願発明1において、「前記撮像工程により取得された画像データを基に、前記開口部に係る元画像データを取得する元画像データ取得工程」に相当する。
引用発明1において、「認識マスク孔の面積を求めて、所定のマスク孔面積から減算した値」を求める構成と、本願発明1において、「前記元画像データと再構成画像データとを比較する比較工程」とは、「比較工程」という点で、共通する。
引用発明1において、「減算した値について許容値以下が成立するか否か基づいて、クリーニング結果良の信号を出し、またはクリーニング結果不良の信号を出すことで、メタルマスクのクリーニング後にメタルマスクのパターン孔の縁部に残存しているクリーム半田について、検査を行う」構成は、本願発明1において、「比較工程における比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定する判定工程」に相当する。
以上を整理すると、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
「基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査方法であって、
前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射する照射工程と、
前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により取得された画像データを基に、前記開口部に係る元画像データを取得する元画像データ取得工程と、
比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定する判定工程とを備えている、
スクリーンマスク検査方法。」
そして、本願発明1と引用発明1とは、次の点で相違する。
<相違点1>
「比較工程」に関し、
本願発明1においては、「入力される画像データから特徴量を抽出する符号化部と該特徴量から画像データを再構成する復号化部とを有するニューラルネットワークに対し、異物の付着していない前記開口部の画像データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段へ前記元画像データを入力して再構成された前記開口部に係る再構成画像データを取得する再構成画像データ取得工程」を有し、「前記元画像データと再構成画像データとを比較する」のに対し、
引用発明1においては、そうなっていない点。
<相違点2>
「学習データ」に関し、
本願発明1においては、「前記学習データについては、前記スクリーンマスクの厚さ及び材質、並びに、前記開口部の大きさ及び配置レイアウトの同一性が不要である」と特定されているのに対し、
引用発明1においては、そうなっていない点。
3 相違点についての判断
(1)相違点1について
上記相違点1について、判断する。
引用文献2ないし4に記載される技術事項に示されるように、画像データを用いた異常判定において、入力された画像データを圧縮した後に復元して出力するニューラルネットワークを、正常時の画像データのみを教師データとした学習済みモデルとし、学習済みモデルが再生成した画像と入力した画像との比較に基づいて判定を行うことは、周知技術である。
上記周知技術は、検査の対象とする画像を「スクリーンマスク」の「開口部」とするか否かを措くとして、画像データに基いた異常検知の手法として、上記相違点1に係る本願発明1の構成に相当する構成を有している。
そして、引用発明1は、「画像データを切り出して、パターン孔を含む検査エリア」を検査する方法であり、引用文献1の段落【0011】にも記載されるとおり、「メタルマスクのパターン孔の縁部に残存するクリーム半田の状態を悪影響がない状態に限定できる」ことを、「メタルマスクのパターン孔が微細化しても」意図していることからすれば、画像処理による異常検知の精度を向上することは内在する自明の課題といえ、上記周知技術を採用する動機付けはある。
また、引用発明1は、「画像データを切り出して、パターン孔を含む検査エリア」を検査するものであるから、上記周知技術の異常検知手法を適用する際、「メタルマスクのパターン孔」に係る画像を処理対象とすることは、当然である。
したがって、引用発明1において、引用文献2ないし4に示される周知技術を適用し、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できた事項である。
(2)上記相違点2について、判断する。
ア 引用文献2ないし4に記載される技術事項に示される、画像データを用いた異常判定において、入力された画像データを圧縮した後に復元して出力するニューラルネットワークを、正常時の画像データのみを教師データとした学習済みモデルとし、学習済みモデルが再生成した画像と入力した画像との比較に基づいて判定を行う、周知技術は、引用文献2に記載されるように、「正常品であれば見事に復元して出力できる一方、不良品にあった傷などの異常については復元できず、傷のない画像を生成して出力する」ように「正常品を学習」させればよく、「コンベアに流れてくる製品」を対象として、コンベア上での配置にかかわらず「傷などの異常」について復元できないものとすればよいから、学習させる「正常品」について、識別すべき「傷などの異常」がないものであれば足り、具体的な製品として完全に同一な製品のみとすることや、当該製品の配置を完全に同一としたうえで学習させることが、必須の要件となっているものとはいえない。
イ また、上記周知技術は、引用文献3の段落【0018】に記載されるように、「学習用正常画像データの数が少ない場合に、意図的にデータにノイズを加えるなどして、学習用正常画像データの数をかさ増しする処理を行っても良い」ものであるから、識別すべき異常を有さない「正常画像データ」であれば、種々の状態の「正常画像データ」により学習を行うことが好適な技術であると、当該引用文献3の記載からも理解される。
ウ また、上記周知技術は、引用文献4の段落【0012】に記載されるように、「正常時における監視対象が撮像された画像データ」に対して「正常の範囲を超えずに」「異なる画像処理を行うことにより生成された複数の複製画像データを教師データ」として「学習」させてよく、段落【0024】及び【0025】に記載されるように、「複数の異なる画像処理」として「平行移動、回転など」を行った「複製画像データとを教師データとして、モデルを学習」させてよいものであるから、学習に用いる「正常」な「画像データ」について、配置の同一性が不要であることは、当該引用文献4の記載からも、理解される。
エ 上記ア~ウに反して、上記周知技術において、教師データとする正常時の画像データについて、識別すべき異常がないだけでは十分でなく、具体的な製品として完全に同一な物品のみを学習させる必要があることや、当該製品の配置まで同一として学習させる必要があることを示す記載は、引用文献2ないし4中に見いだすことができない。
オ 上記ア~エのとおり、引用文献2ないし4に記載される技術事項に示される上記周知技術は、教師データとする正常時の画像データについて、識別すべき異常がない正常品の画像であれば、種々の状態の画像であることが許容されるものであり、具体的製品として完全に同一のものに限られたり、その配置まで完全に同一な画像データであることを要する技術ではない。
カ 上記ア~オのとおりであるから、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献2ないし4に記載される技術事項に示される上記周知技術において、教師データとする正常時の画像データについて、潜在的に許容されている要件を、検査対象を「スクリーンマスクの開口部」とする場合に即して表現した構成と、位置づけられる。
キ そして、引用発明1は、「メタルマスク」の「画像データを切り出して、パターン孔を含む検査エリア」を検査する方法であり、引用文献1の段落【0059】に記載されるとおり、「メタルマスクのパターン孔の検査は、全てのパターン孔について行っても良く、特に微細なパターン孔に限って行っても良」いから、引用発明1において、「メタルマスク」中の「パターン孔」について、「特に微細な」ものを含む「全てのパターン孔」として、大きさや配置が異なるパターン孔を検査の対象とすることは、意図されている。
ク また、引用文献1の段落【0011】に記載されるとおり、引用発明1は、「回路基板に実装する電子部品が微細化し、メタルマスクのパターン孔が微細化しても、メタルマスクによるクリーム半田印刷が適切に行われ」るように、「メタルマスクのパターン孔の縁部に残存するクリーム半田の状態を悪影響がない状態に限定できる」ことを意図しているから、「メタルマスクのパターン孔の縁部」が「残存するクリーム半田」のない状態であるとの確認を、「実装する電子部品」が変わり、実装する電子部品に応じて使用する「メタルマスク」が変わっても、適切に行うことは、内在する自明の課題といえる。
ケ そうすると、上記(1)で相違点1について判断したとおり、引用発明1において、画像処理による異常検知の手法として、上記周知技術の異常検知手法を適用する際、「メタルマスク」中の「全てのパターン孔」である大きさや配置が異なる「パターン孔」を検査の対象とすることに支障が生じないよう、また、「実装する電子部品」が変わり、実装する電子部品に応じて使用する「メタルマスク」の厚さや材質が変わっても、「メタルマスクのパターン孔の縁部」が「残存するクリーム半田」のない状態であることを確認する検査に支障が生じないよう、教師データとする正常時の画像データについて、識別すべき異常を有さない、すなわち「メタルマスクのパターン孔の縁部」が「残存するクリーム半田」のない状態であるという以上に過度の要件を追加することを避け、「パターン孔」の大きさや配置、レイアウト、及び使用する「メタルマスク」の厚さや材質を、同一のもののみに限らないことは、当業者であれば適宜選択し得た設計事項程度である。そして、そうしたことによる効果も、上記キ及びクに示した引用文献1の開示と示唆、並びに、上記ア~オに示した上記周知技術の性質から、事前に予測される範囲を超える格別顕著なものではない。
コ したがって、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明1、及び、引用文献2ないし4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に想到できた事項である。
(3)小括
上記(1)及び(2)のとおり、本願発明1は、引用発明1、及び、引用文献2ないし4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、上記(1)及び(2)においては、相違点1と相違点2とを区分したうえで、順次判断を行ったが、上記(2)に示したとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、「メタルマスク」の「パターン孔」を検査対象とする引用発明1において、引用文献2ないし4に示される周知技術を適用して相違点1に係る本願発明1の構成とする際、上記周知技術が教師データとする正常時の画像データについて潜在的に許容する要件を、不要に限定しないことにより得られる構成であるから、相違点1と相違点2とを一つの相違点としてまとめて判断した場合にも、上記判断が変わるものではない。
(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和5年6月23日に提出した意見書において、同日に提出した手続補正書により補正した本願発明1の上記相違点2に係る構成に関し、引用文献2ないし4はいずれも「学習データ」として、いわゆる正規品の画像データをベースとするのに対して、本願発明1は相違点2に係る構成により、「スクリーンマスク」の「学習データ」として、多岐にわたる「開口部」の「画像データ」を用いることが可能な発明であることが明白となった旨を主張している。
そして、審判請求人は、引用文献2ないし4は、検査の対象を「スクリーンマスク」の「開口部」として上記相違点2に係る構成を想起させるものではなく、本願発明1は上記相違点2に係る構成により、学習データが少ないという問題が生じにくく、学習データの汎用性が向上するという特別な作用効果を奏するから、本願発明1は、たとえ当業者が引用文献1-4に触れたとしても、容易に想到し得るものではない旨を主張している。
しかしながら、上記(2)ア~オに示したとおり、引用文献2ないし4に記載される技術事項に示される上記周知技術は、教師データとする正常時の画像データについて、識別すべき異常がない正常品の画像であれば、種々の状態の画像であることが許容されるものであり、具体的製品として完全に同一なもののみとすることや、その配置まで完全に同一としたうえで学習させることを要する技術ではないから、審判請求人のいう「いわゆる正規品」に関する主張は、上記(2)の判断に反する部分について、採用することができない。
また、上記(2)キ及びクに示したとおり、引用文献1において、「メタルマスク」中の「パターン孔」について、「特に微細な」ものを含む「全てのパターン孔」として、大きさや配置が異なるパターン孔を検査の対象とすること、及び、「実装する電子部品」が変わり、実装する電子部品に応じて使用する「メタルマスク」が変わっても、「メタルマスクのパターン孔の縁部」が「残存するクリーム半田」のない状態であることを適切に確認することは、意図されているか内在する自明の課題であるから、上記(2)ケに示したとおり、引用発明1において、画像処理による異常検知の手法として、上記周知技術の異常検知手法を適用する際、教師データとする正常時のメタルマスクの画像データについて、識別すべき異常を有さない、すなわち「メタルマスクのパターン孔の縁部」が「残存するクリーム半田」のない状態であるという以上に過度の限定を加えることなく、「パターン孔」の大きさや配置レイアウト、及び使用する「メタルマスク」の厚さや材質を、同一のもののみに限らないことは、当業者であれば適宜選択し得た設計事項程度であり、そうしたことによる効果も、引用文献1の開示と示唆、及び上記周知技術の性質から、事前に予測される範囲を超える格別顕著なものではない。
したがって、審判請求人による、相違点2に係る効果が特別なものであり、相違点2に係る構成が引用文献1ないし4から容易想到ではない旨の主張も、採用することができない。
4 本願発明1の進歩性
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当審より通知した拒絶理由のとおり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
第5 むすび
上記第4のとおり、本願発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、上記の結論のとおり審決する。
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2022-003041