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特許拒絶査定不服審判

2022-002882

積層体およびそれを備える包装製品

審判番号
2022-002882
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-005823外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年02月25日
審決日
2024年01月23日
公報発行日
2024年04月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-5823「積層体およびそれを備える包装製品」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月6日出願公開、特開2021-70326〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 20項目
理 由

1 手続の経緯

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本願は、平成28年9月26日を出願日とする特願2016-187264号の一部を、令和3年1月18日に新たな特許出願としたものであって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 3年 7月 6日付け :拒絶理由通知書
令和 3年 9月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年12月 7日付け :拒絶査定
令和 4年 2月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 5月 6日 :上申書の提出
令和 5年 3月15日付け :拒絶理由通知書
令和 5年 5月 1日 :意見書、手続補正書の提出

2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明は、令和5年5月1日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、補正箇所に下線を引いて示すと、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、およびシーラント層が順に積層された積層体であって、
前記積層体は、ラミネートチューブ、蓋材、シート成形品又はラベル材料に使用され、
前記接着剤層が、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み、
続きを表示(全11行)
前記接着剤層のバイオマス度が5%以上35%以下であり、
前記接着剤層が、以下の(A)のポリウレタン樹脂と(B)のポリウレタンウレア樹脂の組み合わせを含まず、
(A)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートとを反応させてなるポリウレタン樹脂、
(B)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートと鎖延長剤とを反応させてなるポリウレタンウレア樹脂、
前記印刷層が、以下の(C)のインキ組成物を含まない、
(C)着色剤、ひまし油ポリオールを原料とするポリウレタンウレア樹脂、及び媒体を含有するインキ組成物、
積層体。」

3 当審で通知した拒絶の理由の概要

令和5年3月15日付けで当審が通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。

(進歩性)本件出願の請求項1~7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2015-193423号公報

2.特許第5942032号公報

3.国際公開第2013/151139号

4.特開2011-225863号公報

4 引用文献等

(1) 引用文献1に記載された事項と引用文献1に記載された発明

ア 引用文献1に記載された事項

引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は参考のため、当審で付したものである。

(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のシートと、
前記一対のシートが重ね合わされた状態で前記一対のシートの周縁同士が部分的にシールされたシール部とを備え、
続きを表示(全15行)
前記一対のシートはそれぞれ、
一の方向に沿って延びる一対の第1及び第2の側縁と、
前記第1の側縁の上端と第2の側縁の上端との間において延びる上縁と、
前記第1の側縁と前記上縁とが交差する隅部に設けられ、先端に向かうにつれて細くなる先細り状の注出口部と、
外方に向けて突出し且つ線状を呈するようにエンボス加工された第1及び第2のエンボス線とを有し、
前記シール部は、
前記第1の側縁のうち少なくとも前記注出口部寄りにおいて、前記第2の側縁に向けて突出するように形成された広幅シール部と、
前記広幅シール部から連続して前記注出口部の先端部周りに延びるように形成された先端シール部とを有し、
前記第1のエンボス線は、前記注出口部の先端近傍から前記第2の側縁の下端に向けて直線状に延び、
前記第2のエンボス線は、前記第1のエンボス線よりも前記上縁側に位置し、前記第1のエンボス線に向けて突出するように湾曲した曲線状に延び、
前記第2のエンボス線の一端は前記注出口部の先端部近傍において前記注出口部の先端側に向かっており、前記第2のエンボス線の他端は前記上縁側に向かっている、詰替え用包装袋。」
(イ) 「【技術分野】
【0001】
本開示は、詰替え用包装袋に関する。」
(ウ) 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、詰替え用包装袋の内容物を容器に詰め替える際には、袋の開封のために注出口部の先端が切り取られる。これにより、注出口部の切り取られた端縁に注出口が形成される。注出口部は容器の口部に対応した先細り形状を呈しているので、通常、注出口の大きさは小さい。さらに、詰替え用包装袋を構成するシートは薄く且つ可撓性を有するので、注出口部近傍においてシート同士が張り付いてしまい、注出口が開いた状態を維持し難いことがある。そのため、注出口から内容物をスムーズに注出することが阻害されうる。この傾向は、内容物の粘度が高い場合に特に顕著となる。
【0006】
そこで、特許文献1,2は、注出口から内容物をスムーズに注出するために、シートのうち注出口部近傍にエンボス加工を施してエンボス線を形成し、エンボス線の形状を工夫することを開示している。しかしながら、依然として注出口からの内容物の注出が妨げられる場合があり、さらなる改善が望まれていた。・・・」
(エ) 「【0032】
[詰替え用包装袋(内容物充填前)の構成]
・・・
【0033】
続きを表示(全15行)
詰替え用袋1Aは、表積層シート2と、裏積層シート3と、底テープ4と、シール部Sとを備える。各シート2,3及び底テープ4はそれぞれ、可撓性を有し、略矩形状を呈する。各シート2,3及び底テープ4の厚みは、例えば、50μm~200μm程度であってもよい。
【0034】
各シート2,3及び底テープ4はそれぞれ、例えば図2の(a)に示されるように、基材層51と、印刷層52と、接着層53と、シーラント層54とを含んでいてもよい。基材層51、印刷層52、接着層53及びシーラント層54は、詰替え用袋1Aの外側から内側に向けてこの順に積層されている。各シート2,3及び底テープ4はそれぞれ、表面に印刷層52が形成された基材層51と、シーラント層54とが、接着層53によって接着されることにより構成される。
【0035】
基材層51としては、例えば、プラスチックフィルム、紙、不織布などを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムが所定の機械的強度や寸法安定性を発現するのであれば、その材料、材質、製造方法等について特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムが二軸延伸されたフィルムからなるものであってもよい。プラスチックフィルムの表面にアルミニウム等の金属の蒸着層が形成されていてもよい。紙としては、例えば、上質紙、片アート紙、コート紙、キャストコート紙、模造紙などが挙げられる。紙が有する機械的強度や製袋適正に基づいて、基材層51に用いる紙を適宜決めてもよい。
【0036】
印刷層52は、袋詰め製品1Bの商品名等を表示するために、インキを用いて印刷された層である。インキは、バインダー樹脂(例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など)に、例えば、各種顔料、体質顔料、及び添加剤(例えば、可塑剤、乾燥剤、安定剤など)が添加されてなる。・・・
【0037】
接着層53は、印刷層52を介して基材層51とシーラント層54とを接着するための層である。接着層53は、例えば、接着剤を基材層51(印刷層52)上に層状に塗布してなるものであってもよい。接着剤としては、例えばドライラミネート用接着剤を用いてもよい。接着剤の種類としては、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。接着剤としてドライラミネート用接着剤を用いる場合には、2つの層をドライラミネート法にて貼り合わせてもよい。
【0038】
シーラント層54は、熱により溶融して他のシートに融着するように構成されている。・・・シーラント層54は、例えば、ポリオレフィン系樹脂により構成されていてもよい。・・・」
(オ) 「【図2】
[図:0001408254000001.jpg]
」

イ 引用文献1に記載された発明

引用文献1の上記アの記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>

「基材層51と、印刷層52と、接着層53と、シーラント層54とをこの順に積層してなる表積層シート2、裏積層シート3又は底テープ4であって、
前記接着層53が、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの接着剤を含み、
前記印刷層52が、各種顔料と、バインダー樹脂(例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など)とを含み、
一対のシートと、前記一対のシートが重ね合わされた状態で前記一対のシートの周縁同士が部分的にシールされたシール部とを備えた詰替え用包装袋の製造に用いられ、
先端に向かうにつれて細くなる先細り状の注出口部と、
外方に向けて突出し、且つ、線状を呈するようにエンボス加工された第1及び第2のエンボス線とを有する、
表積層シート2、裏積層シート3又は底テープ4。」

(2) 引用文献2に記載の事項等

引用文献2には、以下の記載がある。

・「【0016】

植物由来成分を有する芳香族ポリエステルウレタンポリオール(A)を主剤に用いた本発明の二液硬化型ポリエステルウレタン接着剤組成物(以下、単に接着剤組成物と呼ぶ)も、焼却する場合にはCO2を発生する。しかし、本発明の原料の一部は、トウモロコシやヒマ(トウゴマの種子)等の植物から得られる植物由来の短鎖ジオールやポリオールである。これらの原料植物は、その育成過程において、水を与え、光合成を行うことで大気中のCO2を吸収する。本発明では、これらの植物由来の成分と、硬化剤の多官能イソシアネート化合物(H)とを反応させることで、バイオポリウレタン樹脂としている。反応の際に、バイオマス度が10質量%以上の比率、さらには25質量%以上の比率で植物由来の成分を使用しているので、焼却によって排出される二酸化炭素と、植物の育成過程で吸収される二酸化炭素が同じ量とはならないまでも、いわゆるカーボンニュートラルの考えに沿ったものとなっている。」

・「【0024】

植物由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油(トウゴマの種子より抽出)から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、植物由来コハク酸又は植物由来セバシン酸を用いることが好ましい。」

・「【0035】

本発明では、多官能イソシアネート化合物(H)として、上記の他、植物由来のイソシアネートを用いることもできる。植物由来のポリイソシアネートは、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。植物由来のポリイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のイソシアネート化合物を得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。」

・「【0038】

(積層体)

本発明の接着剤組成物は、各種材料からなるシート同士を、接着剤層を介して積層した積層体を形成する接着剤として有用である。特に、接着性や耐熱性に優れた接着剤となるので、ラミネート用に好適である。また、高いバイオマス度を達成したものであるため、積層するシートに植物由来原料からなる素材を用いれば、得られる積層体製品も、環境面を重視したものになる。従って、本発明の積層体は、植物由来原料からなるプラスチックフィルム、植物由来原料からなるポリオレフィンシーラント、植物由来原料からなる繊維布、植物由来原料からなる紙及び金属箔からなる群から選択されるいずれか2種類以上を、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を介して接着してなるものである。この結果、環境面を重視した製品であるにもかかわらず、後述するように、接着強度に優れることは勿論、耐熱性に優れたラミネートフィルムの提供が可能になる。」

(3) 引用文献3に記載の事項等

引用文献3には、以下の記載がある。

・「[0001] 本発明は、1,5-ペンタメチレンジアミンの製造方法、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、ポリイソシアネート組成物の製造方法、および、触媒菌体の保存方法に関するものである。

[0002] 1,5-ペンタメチレンジアミンは、バイオマス由来のポリマー原料、例えば、ポリウレタン原料、ポリアミド原料として注目されている。」

・「(12)1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法

また、本発明は、このようにして得られた1,5-ペンタメチレンジアミン(またはその塩)から1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(以下、単にペンタメチレンジイソシアネート、PDIと称する場合がある。)を製造する方法を含んでいる。」

・「[0347] そして、上記のペンタメチレンジイソシアネート、および/または、上記のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを反応させることにより、ポリウレタン樹脂を得ることができる。

[0348] 活性水素化合物としては、例えば、ポリオール成分(水酸基を2つ以上有するポリオールを主として含有する成分)、ポリアミン成分(アミノ基を2つ以上有するポリアミンを主として含有する化合物)などが挙げられる。

[0349] 本発明において、ポリオール成分としては、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールが挙げられる。」

・「[0352] 高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。」

・「[0358] また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。」

・「[0363] 植物油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などのヒドロキシル基含有植物油などが挙げられる。例えば、ひまし油ポリオール、または、ひまし油脂肪酸とポリプロピレンポリオールとの反応により得られるエステル変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。」

・「[0376] これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。

[0377] 高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリエステルポリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、植物由来のポリエステルポリオールが挙げられる。」

・「[0418] そして、高生産速度、高反応収率および高品質で得られる1,5-ペンタメチレンジアミンを原料とした、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート組成物およびポリウレタン樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ABS、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリオレフィンなどへの各種プラスチックコート材料、太陽電池のバックシート部材へのコーティング原材料や自動車、二輪車などへの外装、金属などへのコート材料、インキなどのバインダーにも好適に使用できる。また、イソシアネート基あるいは水酸基末端のポリウレタンプレポリマーに誘導することにより、ラミネート工法や工業用、住宅・建築用接着材料やシーリング材料にも適用できる。さらには、熱可塑性あるいは熱硬化性ポリウレタンエラストマーとして、フィルム、シート、チューブ、ホース、パウダーあるいは柔軟なゲルなどにも誘導でき、各種産業用途、例えば、医療、衣料、工業部材、電子・電気部材、化粧品などのヘルスケア分野にも展開できる。また、アミノ基を有した化合物と本イソシアネートおよびポリイソシアネート組成物を反応させることにより、各種香料、薬剤などのカプセル材にも適用できる。」

・「[0491] 本発明の1,5-ペンタメチレンジアミンの製造方法により得られる1,5-ペンタメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、および、ポリイソシアネート組成物は、例えば、バイオマス由来のポリマー原料として、コーティング、接着剤、シーラント、エラストマー、ゲル、バインダー、フィルム、シートおよびカプセルなどの材料、農薬、医薬の中間体などの種々の産業分野において、好適に用いることができる。」

(4) 引用文献4に記載の事項等

引用文献4には、以下の記載がある。

・「【特許請求の範囲】

【請求項1】

植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とを用いて合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)を用いて合成されてなるバイオポリエーテルポリオール(C)、のいずれかのポリオールと、イソシアネート成分(d)とを反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、上記バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28~95質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂。

・・・

【請求項7】

前記イソシアネート成分(d)が、石油由来のイソシアネート(d1)または/および植物由来のイソシアネート(d2)である請求項1~6のいずれか1項に記載のバイオポリウレタン樹脂。」

・「【技術分野】

【0001】

本発明は、環境に優しいポリウレタン樹脂に関する。さらに詳しくは、地球温暖化対策や環境負荷低減を目的としたカーボンニュートラルに大きく貢献する、植物由来の原料利用率(含有量)の高いバイオポリウレタン樹脂に関する。本発明のバイオポリウレタン樹脂は、従来のポリウレタン樹脂と同様に、各種コーティング剤、インキ、塗料などのバインダーや、フィルム、シート、フォームおよび各種成形物などへの使用が期待される。

・・・

【0003】

ここで、汎用性の石油系ポリマーの一つであるポリウレタン系樹脂(ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン-ポリウレア樹脂の総称。以下同じ。)は、耐摩耗性、屈曲性、可撓性、柔軟性、加工性、接着性、耐薬品性などの諸物性に優れたものが得られ、かつ、各種加工法への適性にも優れるため、各種コーティング剤、インキ、塗料などのバインダーとして、或いは、フィルム、シートおよび各種成形物用材料として広く使用されている。このため、これらの様々な用途に適した物性のポリウレタン系樹脂が種々提案されている。」

・「【発明が解決しようとする課題】

・・・

【0011】

本発明は、以上のような従来型技術における種々の問題に鑑みてなされたものである。その目的は、植物由来の原材料を高い比率で使用したバイオポリウレタン樹脂において、これを適用した場合に、各種コーティング剤、各種塗料、印刷インキ、成形体、フィルム、シート類に要求されている耐久性や、その性能などが従来のものと遜色がないか、或いはむしろ向上させることができ、しかも、環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材であるバイオポリウレタン樹脂を提供することにある。」

・「【発明の効果】

【0014】

以上のように、本発明によれば、植物由来の原材料を高い比率で使用したバイオポリウレタン樹脂(以下、バイオウレタン樹脂とも呼ぶ)において、これを適用した場合に、各種コーティング剤、各種塗料、印刷インキ、成形体、フィルム、シート類に要求されている耐久性や、その性能などを向上させることができ、しかも、環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材であるバイオポリウレタン樹脂が提供される。」

・「【0018】

バイオポリウレタン樹脂も、焼却する場合にCO2を発生する。しかし、本発明のバイオポリウレタンの原料の一部は、トウモロコシやヒマ(トウゴマの種子)などの植物から得られる植物由来の短鎖ジオールやポリオールである。これらの原料植物は、その育成過程において、水を与え、光合成を行うことで大気中のCO2を吸収する。本発明では、これらの植物由来の成分と、有機イソシアネートと反応させることで、バイオポリウレタン樹脂としているが、その際、高い比率で植物由来の成分を使用しているので、焼却によって排出される二酸化炭素と、植物の育成過程で吸収される二酸化炭素が同じ量とはならないまでも、いわゆるカーボンニュートラルの考えに沿ったものとなっている。」

・「【0036】

本発明で用いることのできるイソシアネート(d)としては、上記の他、植物由来のイソシアネート(d2)を用いることもできる。植物由来のポリイソシアネート(d2)は、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。植物由来のポリイソシアネート(d2)としては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のイソシアネート化合物を得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。

【0037】

上記の原料を用いて得られる本発明のバイオウレタン樹脂は、その製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、短鎖ジオール成分(a)として植物由来の1,3-プロパンジオール化合物と、植物由来のカルボン酸成分(c)からなるバイオポリエステルポリオール(B)と、イソシアネート(d)と、必要に応じて低分子ジアミンを鎖伸長剤とし、イソシアネート基と活性水素含有官能基との当量比が、通常、1.0となる配合の材料を用いて、下記の方法で合成できる。すなわち、上記した材料を用い、ワンショット法、または多段法により、通常、20~150℃、好ましくは60~110℃で、理論イソシアネート%となるまで反応し、イソシアネート基がほとんどなくなるまで反応させることで、バイオウレタン樹脂を得ることができる。」

・「【実施例】

・・・

【0068】

[実施例18:植物由来イソシアネート使用、ポリエステルポリウレタンの合成例PES-PU7]

撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリエステルポリオールPES1を100部、エチレングリコールを15部、DMFを435部仕込み、70℃に加温した。ここに、ダイマー酸ジイソシアネート(植物由来、以下、DDIと略記)を175部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを242部添加して、固形分30%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES-PU7(BP=86%)を得た。

【0069】

[実施例19:植物由来イソシアネート使用、ポリエステルポリウレタンの合成例PES-PU8]

撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、先に合成したポリエステルポリオールPES1を100部、1,3-プロパンジオール(植物由来)を15部、DMFを338部およびDDIを223部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、IPDA(イソホロンジアミン)21部とDMF500部を添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES-PU8(BP=81%)を得た。」

(5) 引用文献2~4から分かること

引用文献2の【0016】及び【0035】には、ポリオールとイソシアネートをそれぞれ植物由来のものとすることが、引用文献3の[0358]及び[0491]にも、ポリオールとイソシアネートをそれぞれ植物由来のものとすることが、記載されている。

そうすると、上記引用文献2及び3の記載から、「接着剤組成物としてポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含」む組成物は、周知の事項である。

さらに、プラスチックや樹脂製品等の原料として、バイオマスを使用することが望まれることは、本願出願時の周知の課題(引用文献2の段落【0016】、引用文献4の段落【0001】)である。

(6) 周知の技術

引用発明の「表積層シート2、裏積層シート3又は底テープ4」に例示されるようなスタンディングパウチ等の包装袋用の積層体を、ラミネートチューブ、蓋材、液体用容器、紙カップ(シート成形品に相当)、又は各種ラベル材料に用いることは、例えば、特開2015-36208号公報の段落【0131】に「<包装体>積層フィルム20Aは、バイオマス由来のPETフィルムからなる基材層11に、PVD法を用いて形成された蒸着層12と、更にその上にガスバリア性塗布膜13とを、二層構造として設けることにより、蒸着層12の膜厚が薄くても高いバリア性を有する蒸着層12を形成できるため、包装体として好適に用いることができる。包装体としては、例えば、包装製品(包装袋)、蓋材、ラミネートチューブ、液体用容器、紙カップ、および各種ラベル材料などを挙げることができる。包装袋として、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。」との記載があり、特開2015-101057号公報の段落【0105】や特開2015-108081号公報の段落【0100】にも同様な記載があるから、周知の技術である。

5 対比・判断

(1) 本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「基材層51と、印刷層52と、接着層53と、シーラント層54とをこの順に積層してなる表積層シート2、裏積層シート3又は底テープ4」は、本願発明1の「少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、およびシーラント層が順に積層された積層体」に相当する。

引用発明の「二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの接着剤を含」む「接着層53」は、本願発明の「ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み」、「以下の(A)のポリウレタン樹脂と(B)のポリウレタンウレア樹脂の組み合わせを含まず、

(A)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートとを反応させてなるポリウレタン樹脂、

(B)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートと鎖延長剤とを反応させてなるポリウレタンウレア樹脂」とされ、「バイオマス度が5%以上35%以下であ」る「接着剤層」と、「接着剤層」である限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>

少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、およびシーラント層が順に積層された積層体。

<相違点1>

「接着剤層」について、本願発明は「ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み」、「以下の(A)のポリウレタン樹脂と(B)のポリウレタンウレア樹脂の組み合わせを含まず、
(A)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートとを反応させてなるポリウレタン樹脂、
(B)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートと鎖延長剤とを反応させてなるポリウレタンウレア樹脂」とされるとともに、「接着剤層」の「バイオマス度が5%以上35%以下であ」るとされているのに対し、引用発明は、「二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの接着剤を含」む「接着層53」であって、バイオマス度についての特定はない点。

<相違点2>

「印刷層」について、本願発明は「以下の(C)のインキ組成物を含まない、(C)着色剤、ひまし油ポリオールを原料とするポリウレタンウレア樹脂、及び媒体を含有するインキ組成物」とされているのに対して、引用発明では「各種顔料と、バインダー樹脂(例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など)とを含む」ものである点。

<相違点3>

本願発明は、「ラミネートチューブ、蓋材、シート成形品又はラベル材料に使用され」とされているものであるのに対し、引用発明は、「一対のシートと、前記一対のシートが重ね合わされた状態で前記一対のシートの周縁同士が部分的にシールされたシール部とを備えた詰替え用包装袋の製造に用いられるものであって、先端に向かうにつれて細くなる先細り状の注出口部と、外方に向けて突出し、且つ、線状を呈するようにエンボス加工された第1及び第2のエンボス線とを有」するものである点。

(2) 以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について

引用発明の「接着層53」に用いる「接着剤」は、「二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの接着剤」であり、これらのうち、多数例示されるウレタン系接着剤を引用発明が採用することは当然想定するものである。ここで、ポリウレタンが、イソシアネート基を有するポリイソシアネートと、ヒドロキシ基を有するポリオールの重付加により生成されることは技術常識であり、プラスチックや樹脂製品等の原料として、バイオマスを使用することが望まれる、との周知の課題を踏まえると、引用発明の「接着層53」に用いるウレタン系接着剤として、上記4(5)に示したように周知の事項である「接着剤組成物としてポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含」む組成物を用いることは、当業者が容易になし得たことである。

加えて、接着剤層のバイオマス度については、化石燃料由来成分をバイオマス由来成分へ置き換える程度に応じて変わる性格のものであって、当業者が適宜設定し得たものである。

そうすると、引用発明において上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

また、その場合には、「以下の(A)のポリウレタン樹脂と(B)のポリウレタンウレア樹脂の組み合わせを含まず、

(A)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートとを反応させてなるポリウレタン樹脂、

(B)ひまし油ポリオールとひまし油ポリオール以外のポリオールとジイソシアネートと鎖延長剤とを反応させてなるポリウレタンウレア樹脂」との発明特定事項も充足している。

イ 相違点2について

引用発明における「印刷層」として記載されている「各種顔料と、バインダー樹脂(例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など)とを含む」ものとして、バインダー樹脂には、ウレタン系以外の多種のものがあるから、「(C)着色剤、ひまし油ポリオールを原料とするポリウレタンウレア樹脂、及び媒体を含有するインキ組成物」を含まないようにすることは当業者において容易になし得たことである。

ウ 相違点3について

上記4(6)に示したように、引用発明の「表積層シート2、裏積層シート3又は底テープ4」に例示されるようなスタンディングパウチ等の包装袋用の積層体をラミネートチューブ、蓋材、液体用容器、紙カップ(シート成形品に相当)、又は各種ラベル材料に用いることは、周知の技術である。よって、引用発明において、相違点3に係る発明特定事項を備えたものとすることは、当該周知の用途を選択したに過ぎず、当業者が容易になし得たことである。

また、引用発明の「表積層シート2、裏積層シート3又は底テープ4」もヒートシールすることで成形されるものであり、ラミネートチューブも積層体をヒートシールして製造されるものであるから、引用発明の「表積層シート2、裏積層シート3又は底テープ4」をラミネートチューブ用とすることは容易であるともいえる。

エ 本願発明の効果について

効果について「本発明による積層体は、少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層をバイオマス由来成分を含む材料により形成することで、接着層全体のバイオマス度をより高めることができる」(【0012】)と記載されているが、かかる効果は、素材にバイオマスのものを利用するとバイオマス度が上がるという極めて当然の効果であるに過ぎず、当業者において予測し得る以上のものであるとはいえない。

オ したがって、本願発明は、引用発明、周知の事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知の事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものであるから、結論のとおり審決する。

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2022-002882

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