2021-701200
活性酸素発生装置
- 審判番号
- 2021-701200
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-211892外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6889499
- 請求日
- 2021年12月17日
- 審決日
- 2022年11月29日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】WEF技術開発株式会社
- 【権利者代理人】櫻井 健一
- 【異議申立人】高橋 吉明
- 分類
- P1652.113-YAA(C01B) / P1652.121-YAA(C01B) / P1652.538-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、実用新案法第55条第1項、特許法第186条第1項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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特許第6889499号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年11月23日に出願され、令和3年5月25日にその特許権の設定登録がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
同年 5月20日 :特許権者による意見書の提出
同年 6月21日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月20日付け:訂正請求があった旨の通知
なお、当審は申立人に上記訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人はそれに対し応答しなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ことを特徴とする活性酸素発生装置。」と記載されているのを、「ことを特徴とする活性酸素発生装置(一重項酸素を生成するものを除く。)。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6についても同様に訂正する。)。なお、下線は訂正箇所を示す(以下同様。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6の「有機廃棄物を分解処理する」と記載されているのを、「有機廃棄物を酸化分解処理する」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
(1)訂正事項1について
ア 目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、「活性酸素発生装置」のうち、活性酸素として「一重項酸素」を生成する活性酸素発生装置を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「活性酸素発生装置」のうち、活性酸素として「一重項酸素」を生成する活性酸素発生装置を除く訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 新規事項の有無
「活性酸素発生装置」のうち、活性酸素として「一重項酸素」を生成する活性酸素発生装置を除く訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものとはいえないことから、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(2)訂正事項2について
ア 目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、有機廃棄物を分解処理することを、有機廃棄物を「酸化」分解処理することに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、分解処理を「酸化」分解処理に限定する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 新規事項の有無
本件明細書等の【0031】に「この活性酸素と有機廃棄物とを接触させることによって有機廃棄物を酸化して有機廃棄物の分解処理する」ことが記載されていることから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項2~6は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~6は一群の請求項である。そして、上記訂正事項1及び2は、その一群の請求項においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。
4 独立特許要件について
上記訂正事項1は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~6についても同様に訂正するものであるが、そのうちの請求項2、4及び5については、特許異議の申し立てがされていない請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、検討しなければならない。
下記第6の1で述べるように、請求項1に係る発明(下記の「本件発明1」)は、特許法第29条第1項及び第2項の規定により特許を受けることができないものではないことから、本件発明1を直接的又は間接的に引用する請求項2、4及び5に係る発明についても、同様に特許法第29条第1項及び第2項の規定により特許を受けることができないものではない。また、下記第7の2で述べるように、発明の詳細な説明は、請求項4及び5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものではない。
そして、請求項2、4及び5に係る発明について、他に特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由もない。
よって、請求項2、4及び5に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
5 訂正についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものである。
よって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
特許第6889499号の請求項1~6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、上記特許異議の申立てに係る請求項である請求項1、3及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明3」及び「本件発明6」という。)ついて記載すると、以下のとおりである。
「【請求項1】気体流入口から流入する含酸素気体に電子を放射してイオン化気体を流出するための電子放射式マイナスイオン発生ユニットと、永久磁石内に設けられた流路の流入側がS極又はN極であり、流出側がその反対の極であって、この流路に電子放射式マイナスイオン発生ユニットから流出するイオン化気体を流入させて活性酸素を流出するための高磁界チャンバーとを有することを特徴とする活性酸素発生装置(一重項酸素を生成するものを除く。)。」
「【請求項3】永久磁石がネオジム磁石、アルニコ磁石及びサマコバ磁石からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の活性酸素発生装置。」
「【請求項6】請求項1~3のいずれかに記載された活性酸素発生装置を用いて発生させた活性酸素と有機廃棄物とを接触させて有機廃棄物を酸化分解処理することを特徴とする有機廃棄物の分解処理方法。」
第4 取消理由の概要
令和4年6月21日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1
(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記(甲号証については甲号証一覧参照)
●取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
・訂正前の請求項1、3
・甲第1号証
●取消理由2(進歩性)について
・訂正前の請求項6
・甲第1号証、甲第2号証
<甲号証一覧>
(以下、甲第○号証は「甲○」という(○は数字)。)
第5 甲号証の記載
1 甲1について
(1)記載事項
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甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下同様)。
(甲1ア)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を流した放電針から電子を発生させる放電管の先端に電磁コイルを巻きつけ、その中心部に空気を流し込むことで空気中の酸素分子を励起させることによって一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる空気の電子化装置。」
(甲1イ)「【技術分野】
【0001】
本考案は、空気中の酸素分子を電磁的に励起させ、一重項酸素などの活性化酸素を発生させるための電子化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の酸素分子は基底状態が三重項状態であり、常磁性を示す分子である。この基底状態にある酸素分子は、互いにスピンが平行な2個の不対電子を持つために、酸素分子と有機化合物などとの反応性は高くない。しかし、紫外線照射、レーザー照射、荷電粒子照射、電磁波照射、高電圧照射、光照射、電気分解などによって基底状態にある酸素分子は反応性が高い活性酸素種に変換させることができる。その例として、ヒドロキシ-ラジカル(OH・)、スーパーオキシドアニオン(O2・-)、一重項酸素分子(1O2)が知られている。」
(甲1ウ)「【考案が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、先の技術により放電筒から放出される活性化空気を大気中に取り出すと放電筒から発生するオゾン濃度が高いと環境的に問題となる。大気汚染防止法ではオゾンを有害ガスとしていないが、光化学オキシダントについての環境基準は、その1時間値が0.06ppm以下としており、日本産業衛生学会は作業環境中のオゾンの許容濃度を0.1ppmとしている。
【0010】
この種の装置が脚光を浴びているのは気相オゾンが光分解によって電子励起状態の酸素原子となり、その励起状態にある酸素原子と水分子が反応してヒドロキシ-ラジカルが生成されることである。ヒドロキシ-ラジカルは、その強力な酸化力により水中や大気中の汚染物質を酸化するので、水質浄化、悪臭分解、土壌汚染物質の除去、ダイオキシン分解などに活用することができる。
【0011】
しかし、この種の活性化空気を大気中に放散させると活性化空気中に残留するオゾンの影響が心配されるため、解放的に使用することが難しかった。
そこで、本考案はオゾンを発生させないで、空気を電子的に電子化させ、磁力を掛けて励起させることによって一重項酸素などの活性酸素種を生成させる装置を提供することを課題とする。」
(甲1エ)「【課題を解決するための手段】
【0012】
本考案は、上記課題を解決するために高電圧を流した放電針で電子を発生させる放電管の先端に電磁コイルを巻きつけ、その中心部に空気を流し込むことによって空気中の酸素を電子化する構造物を提供するものである。
【0013】
その構造物の第一の考案は、放電管で発せられる自由電子が空気中に拡散されて空気をイオン化するだけでなく、電磁コイルにより発生する空気流の流れに沿った磁力線の電磁誘導(フレミングの法則)によって激しく回転する(添付資料2参照)状態となり、空気放電によって励起した酸素分子および酸素原子の電子軌道に遊離電子が付加される状態になることを特徴とする空気の電子化装置である。
【0014】
添付資料2」
(甲1オ)「【考案を実施するための最良の形態】
【0020】
本考案の一実施形態を図1に示す。放電管1は非電導性の樹脂で作り、筒状の管内部に放電針2と対面極3を端子4および端子5で取付けて固定する。その放電管1の先端部に電磁コイル7を巻きつけたボビン6を接合して一体化する。電磁コイル7の末端は端子8および端子9と接合し、外部電源から供給される電流が通電される構造とする。また、ボビン6に巻きつけられる電磁コイル7は側板10および側板11で固定する。
【0021】
放電管1およびボビン6の形状は、円筒でも角筒であってもよい。
【0022】
対面極3の形状は、平板でもリング状の丸いものであってもよい。
【0023】
ボビン6の材質は、電磁コイル7から発生する熱を放散させるために熱伝導性がよく、非磁性体金属である銅、アルミニウム、スズ、真鍮、亜鉛、チタンなどを使用する。
【0024】
放電管1は、ABS、塩化ビニール、ベークライトなどの化学合成樹脂などで作られるが、非電導性の材質であれば何でもよく、ガラス製やセラミック製でもよい。
放電針2と対面極3はモリブデン、タングステン、ステンレスなどの耐腐蝕性金属で作られるが、電導性の金属材料であれば何でもよい。
「実施形態の効果」
【0025】
この実施形態によれば、放電針1(当審注:「1」は「2」の誤記である。)に数千ボルトの高電圧を掛けて、電磁コイル7に数十アンペアーの電流を流したところに空気(イ)を送入すると、その空気流に乗って放電針1から放射される電子がボビン6のなかを通過する過程で、電磁コイルから発生する磁界に曝され、ボビン6の中心部を空気流に沿って直進する磁力線の作用(電磁誘導)を受けて激しく回転する状態となり、空気中の酸素分子を電磁的に励起させて一重項酸素などの活性酸素種を含んだ空気(ロ)が発生する。」
(甲1カ)「他の実施形態」
【0027】
図1の実施形態では、電子化空気に磁界を与えるために電磁石を使用しているが、他の実施形態としてフエライト磁石やネオジウム磁石などの永久磁石を設けたものでも良い。」
(甲1キ)「【0028】
本考案に関わる空気の電子化装置は、発生する活性酸素を活用してヒドロキシ-ラジカルを生成することができるので、極めて酸化力が強いヒドロキシ-ラジカルを活用して有機物を酸化し、分解するラジカル反応装置として工業的に利用することが可能である。従って炭化水素の重合、縮合、酸化などの化学反応や有機物の加水分解、発酵促進、低分子化、ガス化、脱臭、殺菌、脱色など、産業上の利用可能性を有する。」
(甲1ク)「【0031】
【添付資料1】
放電と光触媒によるオゾンの発生のメカニズムを説明した資料である。
【添付資料2】
電磁誘導による電子の回転運動を説明した資料である。」
(甲1ケ)上記図1として、以下の図面が記載されている。
「[図:0001395190000001.jpg]」
(甲1コ)上記添付資料2として、以下の図が記載されている。
「[図:0001395190000002.jpg]」
なお、実用新案権が登録がされている甲1の添付資料については、実用新案法第55条第1項で準用する特許法第186条第1項の規定により、何人も、特許庁長官に対して閲覧の請求ができるものである。そして、平成21年(行ケ)第10110号において判示された「一般公衆による閲覧、複写の可能な状態におかれた外国特許局備え付けの明細書原本の複製物と認められるから、特許法29条1項3号の外国において「頒布された刊行物」に該当すると認められる。」との判示事項に鑑みれば、上記添付資料2は「頒布された刊行物」といえる。
(2)甲1発明について
ア 記載事項の整理
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(ア)甲1発明の認定を、上記(甲1カ)の「他の実施形態」に基づいて行うとすると、上記(甲1カ)の「他の実施形態」の下線部の記載及び上記図1から、(甲1ア)の(ボビン6に)「電磁コイルを巻きつけ」ることは、「他の実施形態」においては(ボビン6に)「フエライト磁石やネオジウム磁石などの永久磁石を設け」ることになる。
(イ)摘記(甲1オ)の【0025】の下線部を踏まえて上記図1を参照するに、放電管1に空気(イ)が送入するところが気体流入口であり、その空気が流れるボビン6の中心部が流路となり、そして、活性酸素種を含んだ空気(ロ)がボビン6から流出することが見て取れる。すなわち、空気は気体流入口から流入し、ボビン6の中心部の流路を通り、一重項酸素などの活性酸素種を含んだ空気がボビン6から流出することが見て取れる。
イ 甲1発明
上記(1)の記載事項(特に下線部参照)及び上記アから、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。なお、図面における番号を略して記載した。
「高電圧を流した放電針から電子を発生させる放電管の先端のボビンにフエライト磁石やネオジウム磁石などの永久磁石を設け、その中心部に空気を流し込むことで空気中の酸素分子を励起させることによって一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる空気の電子化装置であって、上記放電管およびボビンの形状は、円筒であり、上記放電管は、空気中に拡散されて空気をイオン化する自由電子を発するものであり、上記空気は気体流入口から流入し、ボビンの中心部の流路を通り、一重項酸素などの活性酸素種を含んだ空気がボビンから流出するものである、空気の電子化装置。」(以下「甲1発明」という。)
(2)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2ア)「【0001】
本考案は、空気中の酸素分子を電磁的に励起させることにより、スーパーオキシドなどの活性酸素を発生させる空気の電子化装置によって、生ゴミなどの有機廃棄物、野菜くずなどの農産廃棄物、木材や紙、パルプなどのバイオマス資材を低温で加水分解する装置に関する。」
(甲2イ)「【0010】
活性酸素種は、老化や過酸化脂質を伴う血管障害などの病気発生をもたらす極めて酸化力が強いものとして知られているが、様々な有機物を酸化分解する作用も注目されている。そこで、本考案者は活性酸素種の高エネルギー的に作用するラジカル反応が生ごみや野菜屑などに含まれる有機物、木質や紙、パルプなどの有機物の加水分解に活用できるのではないかと考えた。そこで、本考案者が考案した空気の電子化装置を用いて、この装置から発生する活性酸素種を含む空気を野菜屑に吹き付けて攪拌したところ、20~60℃程度の低い温度で加水分解されることが分った。」
(甲2ウ)「【0035】
図1の実施形態では本考案者が既に考案している実用新案登録証登録第3133388号の空気の電子化装置を使用するものであるが、自由電子と一重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルなどの極めて酸化力が強い活性酸素を発生させる機能をもった装置であれば同様の形態と機能を作り出すことができる。そのような電子化装置を該考案の感熱型電子化装置に換えて実施形態にしてもよい。」
第6 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「気体流入口から流入」する「空気」は、本件発明1の「気体流入口から流入する含酸素気体」に相当する。
イ 本件発明1の「イオン化気体」とは、本件明細書の【0027】の記載によれば、酸素分子を含む含酸素気体に電子を放射して生成するものであるところ、甲1発明でも「放電管」により「空気中に」「自由電子」が「発」せられているから、甲1発明における「自由電子」が「発」せられた「空気」は、本件発明1の「イオン化気体」に相当する。
そうすると、甲1発明の「空気中に拡散されて空気をイオン化する自由電子を発する」「放電管」は、本件発明1の「含酸素気体に電子を放射してイオン化気体を流出するための電子放射式マイナスイオン発生ユニット」に相当する。
ウ ネオジウム磁石は、一般に強い磁力を持つ磁石で高磁界を発生させるものである。そうすると、甲1発明の「ネオジウム磁石などの永久磁石を設け」た「ボビン」は、「高磁界チャンバー」に相当する。
エ 甲1発明の「円筒」「形状」の「ボビンに」「設け」られた「永久磁石」内の「ボビンの中心部の流路」は、本件発明1の「永久磁石内に設けられた流路」に相当する。
オ 甲1発明の「放電管の先端の」「ボビンの中心部の流路」「に空気を流し込むことで空気中の酸素分子を励起させることによって一重項酸素などの活性酸素種を生成させ」「一重項酸素などの活性酸素種を含んだ空気がボビンから流出する」ことは、本件発明1の「流路に電子放射式マイナスイオン発生ユニットから流出するイオン化気体を流入させて活性酸素を流出する」ことに相当する。
カ 甲1発明の「一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる空気の電子化装置」は、本件発明1の「活性酸素発生装置」に相当する。
キ よって、上記ア~カを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、
(一致点)
「気体流入口から流入する含酸素気体に電子を放射してイオン化気体を流出するための電子放射式マイナスイオン発生ユニットと、永久磁石内に設けられた流路があり、この流路に電子放射式マイナスイオン発生ユニットから流出するイオン化気体を流入させて活性酸素を流出するための高磁界チャンバーとを有する活性酸素発生装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
永久磁石の磁化方向について、本件発明1では、流路の「流入側がS極又はN極であり、流出側がその反対の極であ」るのに対し、甲1発明では、永久磁石の磁化方向が不明である点。
(相違点2)
本件発明1は、「(一重項酸素を生成するものを除く。)」活性酸素発生装置であるのに対し、甲1発明は、「一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる」空気の電子化装置である点。
(2)相違点の判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ア 甲1発明における「一重項酸素など」について
(ア)甲1発明の「一重項酸素などの活性酸素種を生成させること」について、「など」は「ある語に添えて、例として指示する意を表し、その外にも類似の物事があることを暗示する。それだけに限定しないでやわらかくいう。」(広辞苑第四版)という意味であるから、文言上は、活性酸素種として「一重項酸素」を生成することを前提にして、それ以外の活性酸素種の生成を暗示したものと解される。
(イ)また、甲1発明の課題の点からみるに、「解決しようとする課題」が記載されている摘記(甲1ウ)の【0010】及び【0011】には、「この種の装置が脚光を浴びているのは気相オゾンが光分解によって電子励起状態の酸素原子となり、その励起状態にある酸素原子と水分子が反応してヒドロキシ-ラジカルが生成されることである。ヒドロキシ-ラジカルは、その強力な酸化力により水中や大気中の汚染物質を酸化するので、水質浄化、悪臭分解、土壌汚染物質の除去、ダイオキシン分解などに活用することができる。しかし、この種の活性化空気を大気中に放散させると活性化空気中に残留するオゾンの影響が心配されるため、解放的に使用することが難しかった。そこで、本考案はオゾンを発生させないで、空気を電子的に電子化させ、磁力を掛けて励起させることによって一重項酸素などの活性酸素種を生成させる装置を提供することを課題とする。」と記載されている。
そして、活性酸素種として、ヒドロキシ-ラジカルはフリーラジカルなものであり、一重項酸素はフリーラジカルなものではないことから、甲1発明の課題は、フリーラジカルな活性酸素種によりオゾンを発生させることがないように、活性酸素種としてフリーラジカルでない一重項酸素を生成することを課題としたものといえる。
(ウ)さらに、実施例の点からみるに、甲1の実施形態として、摘記(甲1オ)の【0025】には「ボビン6の中心部を空気流に沿って直進する磁力線の作用(電磁誘導)を受けて激しく回転する状態となり、空気中の酸素分子を電磁的に励起させて一重項酸素などの活性酸素種を含んだ空気(ロ)が発生する。」と記載されており、一重項酸素以外の活性酸素種として何が発生するのか具体的に記載されておらず、一重項酸素以外の活性酸素種が発生していることの裏付けはない。
(エ)加えて、摘記(甲1キ)には「本考案に関わる空気の電子化装置は、発生する活性酸素を活用してヒドロキシ-ラジカルを生成することができる」との記載はあるももの、上記イで述べた甲1発明の課題がフリーラジカルでない一重項酸素を生成すること、上記ウで述べた甲1の実施形態として一重項酸素以外の活性酸素種が発生していることの裏付けがないことを踏まえると、上記記載は、空気の電子化装置によって(一重項酸素である)活性酸素を発生させ、それを活用してヒドロキシ-ラジカルを生成すると解するのが相当であるから、甲1発明の「空気の電子化装置」は専ら一重項酸素である活性酸素が発生させるものであり、フリーラジカルな活性酸素であるヒドロキシ-ラジカルを生成するものではないといえる。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、甲1発明の「一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる空気の電子化装置」は、「一重項酸素」を生成することを前提とするものであり、「など」はそれ以外のフリーラジカルでない活性酸素種をさらに含む可能性のあることを示しているにすぎないといえる。
イ そうすると、甲1発明の「一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる空気の電子化装置」において、「一重項酸素を生成するもの」を除くことに動機はなく、むしろ阻害要因あるといえることから、甲1発明において、「一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる空気の電子化装置(一重項酸素を生成するものを除く。)」とすることは、当業者が容易になし得たことではない。この点、上記甲2の記載事項を参照しても、甲1発明において「一重項酸素を生成するものを除く」ことが容易といえるものではない。
よって、本件発明1は、上記相違点2が当業者が容易になし得たことではないことから、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)効果について
本件発明1と甲1発明とは、上記相違点1及び2があり、両者は同一でないことから、本件発明1の効果についても検討しておく。
ア 本件明細書には、実施例及び比較例として、
「【実施例】【0033】<実施例>電子放射式マイナスイオン発生ユニットとして、マイナスイオン発生ユニットMION(日新電機株式会社、印加電圧-8000V)を用い、リング型ネオジム磁石(内径25mm、外径35mm、厚さ9mm、ニッケルメッキ厚12μm)2個とリング型ネオジム磁石(内径25mm、外径35mm、厚さ13mm、ニッケルメッキ厚12μm)2個とを重ねてその内部にフッ素樹脂チューブを内装させて流路(入口側がN極、出口側がS極)を形成した高磁場チャンバーを用い、電子放射式マイナスイオン発生ユニットのイオン気体流出口と高磁界チャンバーのイオン気体流入口とを接続し、さらに高磁界チャンバーの活性酸素流出口に長さ1m、内径15mmの耐圧塩化ビニルホースを接続して、本発明の活性酸素発生装置を構成した。続きを表示(全20行)【0034】電子放射式マイナスイオン発生ユニットの気体流入口から空気を28L/分で供給して、耐圧塩化ビニルボースから流出する活性酸素を平行平板式イオン密度測定器(イオンカウンターNKMH-103、北斗電子工業株式会社)で測定したところ、イオン密度は73×104個/mlであった。また、耐圧塩化ビニルホースを外して活性酸素流出口から流出する活性酸素を同様に測定すると1733×104個/mlであった。 また、耐圧塩化ビニルボースから流出する活性酸素を0.1mol/Lヨウ化カリウム水溶液(無色透明液体)1000mLにバブリングして、水溶液が赤褐色透明液体になるまでの時間を計測したところ、751秒であった(3回の平均値)。【0035】なお、バブリングした活性酸素中にある種のラジカル種(・X)が存在すると、ラジカル種とヨウ化物イオン(Iー)とが反応して、三ヨウ化物イオン(I3ー)が生成(次式で表される)し、三ヨウ化物イオン(I3ー)の濃度(ラジカル種の濃度に比例する)により水溶液が黄色透明液体から茶色~赤褐色透明液体に変化する(Weissler法と呼ばれる検出方法)。Iー+・X=Xー+・I・I+Iー=・I2ー2・I2ー=I2+2IーI2ー+Iー=I3ー【0036】<比較例>電子放射式マイナスイオン発生ユニットとして、マイナスイオン発生ユニットMION(日新電機株式会社、印加電圧-8000V)を用い、コイル中心部の磁束密度が30mTである電磁コイル(内径25mm、長さ44mm)にアルミニウム製放熱チューブを内装させて流路(入口側がN極、出口側がS極)を形成した高磁場チャンバーを用い、電子放射式マイナスイオン発生ユニットのイオン気体流出口と高磁界チャンバーのイオン気体流入口とを接続し、さらに高磁界チャンバーの活性酸素流出口に長さ1m、内径15mmの耐圧塩化ビニルホースを接続して、比較用の活性酸素発生装置(特許文献1に記載された装置に相当するもの)を構成した。【0037】実施例と同様に、電子放射式マイナスイオン発生ユニットの気体流入口から空気を28L/分で供給して、耐圧塩化ビニルボースから流出する活性酸素を平行平板式イオン密度測定器(イオンカウンターNKMH-103、北斗電子工業株式会社)で測定したところ、イオン密度は0個/mlであった。また、耐圧塩化ビニルホースを外して活性酸素流出口から流出する活性酸素を同様に測定すると239×104個/mlであった。また、耐圧塩化ビニルボースから流出する活性酸素を0.1mol/Lヨウ化カリウム水溶液(無色透明液体)1000mLにバブリングしたが、30分経過しても水溶液が赤褐色透明液体にならなかった(3回の平均値)。【0038】以上の通り、本発明の活性酸素発生装置から排出される活性酸素は明らかにラジカル種{スーパーオキシドアニオン(・O2-)等}であると考えられ、比較用の活性酸素発生装置に比べて多量の活性酸素の発生を確認できた。」と記載されている。
イ 上記実施例の記載から、リング型ネオジム磁石の内部流路(入口側がN極、出口側がS極)を形成した高磁場チャンバーを用いることにより、ラジカル種(スーパーオキシドアニオン(・O2-))である活性酸素が1733×104個/ml発生しているのに対し、比較例である電磁コイルで形成した高磁場チャンバーを用いた場合には、活性酸素量が239×104個/mlだけ発生し、その活性酸素もWeissler法により赤褐色透明液体にならなかったことからラジカル種ではない。
活性酸素の発生量については、電磁コイルについてはコイル中心部の磁束密度が30mTであると記載されているが、リング型ネオジム磁石の内部の磁束密度が不明であることから、単純に、1733×104個/mlと239×104個/mlを比較して、リング型ネオジム磁石の内部流路(入口側がN極、出口側がS極)を形成した高磁場チャンバーを用いた場合の方が発生する活性酸素の量が多いとはいえないものの、リング型ネオジム磁石の内部流路(入口側がN極、出口側がS極)を形成した高磁場チャンバーを用いた場合には、ラジカル種(スーパーオキシドアニオン(・O2-))である活性酸素が発生し、電磁コイルで形成した高磁場チャンバーを用いた場合には、ラジカル種でない活性酸素が発生していることが示されているといえる。
ウ 一方、甲1発明は、「ボビンにフエライト磁石やネオジウム磁石などの永久磁石を設け」「空気中の酸素分子を励起させることによって一重項酸素などの活性酸素種を生成させることができる空気の電子化装置」であり、ラジカル種でない一重項酸素を生成させることを前提とした装置であることに鑑みると、上記本件発明1に対応する上記実施例で記載されているリング型ネオジム磁石の内部流路(入口側がN極、出口側がS極)を形成した高磁場チャンバーを用いることにより、ラジカル種(スーパーオキシドアニオン(・O2-))である活性酸素が発生することは、甲1の記載からは到底予期し得ないことである。
また、上記甲2にも、永久磁石の内部に形成した高磁場チャンバーを用いることにより、ラジカル種である活性酸素が発生することは記載されておらず、そして、永久磁石の内部に形成した高磁場チャンバーを用いることにより、ラジカル種である活性酸素が発生することが当業者において周知の事項でもない。
エ よって、本件発明1が奏する上記実施例によって裏付けらる効果は、当業者の予期し得ない効果である。
(4)申立人の主張について
上記第1で記載したように、申立人は、訂正された本件発明1の「活性酸素発生装置(一重項酸素を生成するものを除く。)」について、意見を述べていない。
(5)まとめ
よって、本件発明1は、少なくとも相違点2の点で甲1発明ではないことから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、そして、相違点1について検討するまでもなく、相違点2の点で、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件発明3及び6について
本件発明3及び6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、本件発明1と同様に、少なくとも上記相違点2の点で甲1発明ではないことから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、そして、少なくとも相違点2の点で、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明3及び6に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 本件特許異議の申立ては、特許異議申立書の1頁に「1 特許異議の申立てに係る特許の表示 特許番号特許第6889499号公報 請求項の表示請求項1、請求項3、請求項6」と記載されているとおり、請求項1、3及び6に係る特許に対する特許異議の申立てであるところ、特許異議申立書の5頁13~20行には、
「エ 記載不備の理由本件の特許明細書の実施例には、比較用の活性酸素発生装置に比べて多量の活性酸素が発生することは確認されているが、「【請求項4】の空気清浄方法」および「【請求項5】の廃水処理方法」などは、空気や廃水の浄化能力が高いと想定されているものの、掛かる手段の具体的効果については何ら記載されておらず、掛かる手段は周知のものでもない。したがって、本件の特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」との記載不備についての記載があり、
そして、5頁36行~6頁1行には、
「イ 特許法第36条第4項第1号について(同法第113条第4号)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、本件特許発明1は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」(ここで「本件特許発明1」との記載は、上記記載不備の指摘の記載を踏まえると「本件特許発明4及び5」の誤記といえる。)との記載がある。
この記載不備の指摘は、請求項4及び5に対するものであるといえるところ、本件特許異議の申立ては請求項1、3及び6に対するものであるから、この記載不備の指摘が特許異議の申立の理由として記載されているものとはいえないものであるが、念のために以下検討する。
2 当審の判断
請求項4に係る発明は「請求項1~3のいずれかに記載された活性酸素発生装置を用いて発生させた活性酸素と空気とを接触させて空気を清浄することを特徴とする空気清浄方法。」であり、「活性酸素と空気とを接触」させることは、両者が気体であることから、両気体同士を混合させることにより実施できるものであり、具体的な手段について発明の詳細な説明に記載されていないからといって、当業者が実施できないものではない。
また、請求項5に係る発明は「請求項1~3のいずれかに記載された活性酸素発生装置を用いて発生させた活性酸素と廃水とを接触させて廃水を浄化することを特徴とする廃水処理方法。」であり、「活性酸素と廃水とを接触」させることは、前者が気体で後者が液体であることから、後者の液体中に前者の気体を噴出させることにより実施できるものであり、具体的な手段について発明の詳細な説明に記載されていないからといって、当業者が実施できないものではない。
そうすると、発明の詳細な説明は、当業者が請求項4及び5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとはいえないことから、特許法第36条第4項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明1、3及び6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明1、3及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701200