審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2021-700930

タンクピットの雨仕舞、及びタンクピットの雨仕舞の設置方法

審判番号
2021-700930
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-124496
登録番号
6894406
請求日
2021年09月28日
審決日
2023年05月19日
公報発行日
2023年08月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東芝プラントシステム株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人 天城国際特許事務所
  • 【異議申立人】鈴木 憲治
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 井上 茂夫
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-YAA(B65D) / P1651.16 -YAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6894406号発明「タンクピットの雨仕舞、及びタンクピットの雨仕舞の設置方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6894406号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。 特許第6894406号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6894406号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年6月29日を出願日とする特許出願であって、令和3年6月7日に特許権の設定登録がされ(特許掲載公報 令和3年6月30日発行)、その特許について、令和3年9月28日に特許異議申立人鈴木憲治(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和4年3月9日付けで取消理由が通知され、令和4年5月10日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和4年7月6日付けで訂正拒絶理由が通知され、令和4年8月2日に特許権者から意見書が提出され、この訂正の請求について、申立人に意見を求めたが、意見書は提出されなかった。 その後、令和5年1月6日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和5年2月16日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、令和5年4月4日に申立人より意見書が提出された。 なお、令和4年5月10日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第6894406号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載の「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲にせきを備えたタンクピット内の前記タンクの周囲に設置され雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く雨除けと前記タンクの側面との間の隙間を塞ぐ前記タンクピットの雨仕舞であって」を、 「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピット内の前記タンクの周囲に、上端部が前記タンクの上端から前記せきの上部の間に位置するように設置され、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く雨除けと、前記タンクの側面との間の隙間を塞ぐ前記タンクピットの雨仕舞であって」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に記載の「上端部が前記タンクピットに設置されている前記タンクの側面に取り付けられ、前記タンクの側面と前記雨除けとの間の隙間を覆うように配置される防水シートを有する」を、 「上端部が、前記タンクピットに設置されている前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ、前記タンクの側面と前記雨除けとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記雨除けとの隙間に降る雨水を前記雨除けを伝って前記せきの外に導くように配置される防水シートを有する」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に記載の「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲にせきを備えたタンクピットに設置されている前記タンクの前記せきより上部の側面に上端部が取り付けられ、前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆うように配置される防水シートを有する」を、 「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピットに設置されている前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ、下端側が前記せきの外側に垂れ下がるように配置され、前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記せきとの隙間に降る雨水を前記せきの外側に導くように配置される防水シートを有する」に訂正する。(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に記載の「前記シートは、発砲ゴムで形成されている」を、「前記シートは、発泡ゴムで形成されている」に訂正する。(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)、 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に記載の「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲にせきを備えたタンクピットに設置されている前記タンクの側面に、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く防水シートを配置する工程と」を、 「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピットに設置されている前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く防水シートを配置する工程と」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9に記載の「取付具を使用して、前記タンクの側面に配置された前記防水シートを前記防水シートの周囲から締め付けることにより前記防水シートを前記タンクの側面に固定する工程と」を、 「取付具を使用して、前記タンクの側面に配置された前記防水シートの上端部を前記防水シートの周囲から締め付けることにより前記防水シートの上端部を前記タンクの前記雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に固定する工程と」に訂正する。 2.訂正の適否 (1)一群の請求項 本件訂正前の請求項3は直接的に請求項1又は2を引用し、請求項7はその請求項3及び請求項4~6を直接的又は間接的に引用し、請求項8は直接的に請求項7を引用するものであるから、訂正後の請求項〔1~8〕は、一群の請求項である。 (2)訂正事項1について ア 訂正事項1のうち、「前記タンクより低いせき」とする訂正は、「せき」について限定するものであり、また、「上端部が前記タンクの上端から前記せきの上部の間に位置するように設置され」を加える訂正は、雨除けの配置される位置について限定するものであり、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 「前記タンクより低いせき」については、段落【0010】に「せき3の高さは、例えば、1mである。」、「例えば、タンク1の高さは12m程度であり」と記載され、図2にもせきの高さがタンクの高さよりも低いことが記載されている。 「上端部が前記タンクの上端から前記せきの上部の間に位置するように設置され」については、段落【0011】に「図2に示されるように、タンクピットに設置されているタンク1の周囲には、柱5、雨除け6が設置されている。」と記載され、図2に、雨除けの上端部がタンクの上端からせきの上部の間のタンクの側面に位置するように設置されることが記載されている。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ さらに、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2について ア 訂正事項2のうち、「前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ」とする訂正は、「タンクの側面」についてと「取付け」る態様について限定するものであり、「前記タンクの側面と前記雨除けとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記雨除けとの隙間に降る雨水を前記雨除けを伝って前記せきの外に導くように配置される」とする訂正は、防水シートの配置について限定するものであり、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 「前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ」と、「前記タンクの側面と前記雨除けとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記雨除けとの隙間に降る雨水を前記雨除けを伝って前記せきの外に導くように配置される」については、段落【0015】に「防水シート10は、タンク1の側面に取り付けられ、タンク1の側面と雨除け6との間の隙間7に降り込む雨水およびタンク1の表面を伝って流れる雨水を雨除け6の上に導く。」と、段落【0033】に「タンク1と防水シート10との水密性を高めることができる。」と記載されている。 よって、訂正事項2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ さらに、訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項3について ア 訂正事項3のうち、「前記タンクより低いせき」とする訂正は、上記(2)アで述べたように特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ」とする訂正、及び「前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記せきとの隙間に降る雨水を前記せきの外側に導くように配置される」とする訂正は、上記(3)アで述べたように特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 「下端側が前記せきの外側に垂れ下がるように配置され」とする訂正は、防水シートの配置について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 「前記タンクより低いせき」とする訂正、「前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ」とする訂正、及び「前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記せきとの隙間に降る雨水を前記せきの外側に導くように配置される」とする訂正については、上記(2)イ、(3)イで述べたように本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 「下端側が前記せきの外側に垂れ下がるように配置され」については、段落【0035】に「第3の実施形態では、図7に示されるように、雨除け6が無い場合について説明する。この場合、防水シート10のタンク1の側面に固定されていない下端側がせき3の外側に垂れさがるように防水シート10を配置する。」と記載されており、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ さらに、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項4について ゴムの中に気泡を含ませたものは、一般に「発泡ゴム」と記載し、願書に最初に添付された明細書の段落【0044】においても、「防水シート10の素材として発泡ゴムを使用した場合、防水シート10を軽量化することができる。」と記載されていたところ、訂正前の請求項6においては、それを「発砲ゴム」と記載していたことから、訂正事項4は、「発砲ゴム」を「発泡ゴム」に訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものである。 また、訂正事項4は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項5、6について 訂正事項5のうち、「前記タンクより低いせき」とする訂正は、上記(2)アで述べたように特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項5のうち、「前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に」とする訂正、及び訂正事項6の「前記防水シートの上端部」を「前記タンクの前記雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に固定する」とする訂正は、上記(3)アで述べたように特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5、6は、上記(2)イ、(3)イで述べたように本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.本件訂正請求についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げられた事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等といい、また、本件発明1~9を総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された、次のとおりのものである。 【請求項1】 タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピット内の前記タンクの周囲に、上端部が前記タンクの上端から前記せきの上部の間に位置するように設置され、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く雨除けと、前記タンクの側面との間の隙間を塞ぐ前記タンクピットの雨仕舞であって、 上端部が、前記タンクピットに設置されている前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ、前記タンクの側面と前記雨除けとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記雨除けとの隙間に降る雨水を前記雨除けを伝って前記せきの外に導くように配置される防水シートを有する、 タンクピットの雨仕舞。 【請求項2】 タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピットに設置されている前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ、下端側が前記せきの外側に垂れ下がるように配置され、前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記せきとの隙間に降る雨水を前記せきの外側に導くように配置される防水シートを有する、 タンクピットの雨仕舞。 【請求項3】 前記防水シートは、前記タンクの周囲に巻回して配置された複数のシートと、前記シートそれぞれの間の隙間を塞ぐパッチシートから構成されている、請求項1または2に記載のタンクピットの雨仕舞。 【請求項4】 複数の前記シートの形状が矩形である、 請求項3に記載のタンクピットの雨仕舞。 【請求項5】 前記シートは、ゴムを使用した素材で形成されている、 請求項3または4に記載のタンクピットの雨仕舞。 【請求項6】 前記シートは、発泡ゴムで形成されている、 請求項3から5の何れか一項に記載のタンクピットの雨仕舞。 【請求項7】 前記タンクの側面に配置された前記防水シートを介して前記タンクに巻回され、前記防水シートを前記タンクの側面に固定する取付具を有する、 請求項1から6の何れか一項に記載のタンクピットの雨仕舞。 【請求項8】 前記取付具は、バンドである、 請求項7に記載のタンクピットの雨仕舞。 【請求項9】 タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピットに設置されている前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く防水シートを配置する工程と、 取付具を使用して、前記タンクの側面に配置された前記防水シートの上端部を前記防水シートの周囲から締め付けることにより前記防水シートの上端部を前記タンクの前記雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に固定する工程と、を含むタンクピットの雨仕舞の設置方法。 第4 取消理由(決定の予告)について 1.取消理由の概要 (1)理由1(進歩性) 本件特許の請求項1~9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ア 請求項1、3~8に係る発明に対し引用文献1 イ 請求項2~9に係る発明に対し引用文献2 (2)理由2(拡大先願) 本件特許の請求項2に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 (3)引用文献等 引用文献1:実願平1-78352号(実開平3-17596号)のマイクロフィルム(甲第1号証) 引用文献2:特開2013-32179号公報(甲第8号証) 引用文献3:特許第6020419号公報(甲第9号証) 引用文献4:実願昭58-1283号(実開昭59-109697号)のマイクロフィルム(甲第10号証) 先願:特願2017-18671号(特開2018-124238号:甲第11号証) 以下、甲第1号証を「甲1」という。他も同様。 2.引用文献の記載事項等 (1)引用文献1(甲1) 引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア 「原子力発電所等の原子力施設に設けられた屋外タンクのうち、内溶液に放射性物質を含むものを貯蔵するタンクでは、該タンクからの内溶液の漏洩があった場合、その漏洩を食い止めるため、第2図に示されるように、タンク(1)外周をコンクリート等でできた防液堤(9)で囲み、この内側をタンク室(10)として、放射線管理上の管理区域としている。 このタンク室(10)の上部を覆う雨仕舞屋根(2)とタンク(1)の間には、両間にずれを生じた場合にそのずれを吸収し、且つ雨の侵入を防ぐため、第3図に示されるようにゴムシート等の伸縮シート(3)からなる伸縮接手X’が取付けられている。即ち、タンク(1)側板上部のトップアングル(7)に張り出し部材(6)を固定して、ちょうどタンク(1)屋根側から張り出すような張り出し部(6a)を形成すると共に、前記伸縮シート(3)の各端部を該張り出し部材(6)及び雨仕舞屋根(2)の夫々と押え金物(4)(4)の間で挟み込み、ボルト・ナット(5)(5)で締め付けている。」(明細書1頁下から2行~2頁18行) イ 「第2図 [図:0001400406000001.jpg] 」 ウ 「第3図 [図:0001400406000002.jpg] 」 エ 第3図から、防液堤(9)はタンク(1)より低いこと、雨仕舞屋根(2)の上端部がタンク(1)の上端から防液堤(9)の上部の間に位置していることが、看取される。 オ 上記記載事項等から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「タンク(1)からの内溶液の漏洩があった場合、その漏洩を食い止める、タンク(1)より低い防液堤(9)で囲まれたタンク室(10)の内に設けられた屋外タンク(1)側板上部のトップアングル(7)に固定された張り出し部(6a)と、タンク(1)外周に設けられたタンク室(10)の上部を覆い、上端部がタンク(1)の上端から防液堤(9)の上部の間に位置している雨仕舞屋根(2)との間に取付けられ、雨の侵入を防ぐための伸縮シート(3)からなる伸縮接手X’であって、 当該伸縮接手X’の上端は張り出し部(6a)を介して前記タンク室(10)内に設けられた屋外タンク(1)の側板上部のトップアングル(7)に取り付けられており、 前記伸縮シート(3)はゴムシートであり、前記屋外タンク(1)の側面側から張り出した張り出し部(6a)と前記雨仕舞屋根(2)との間に雨の侵入を防ぐように取り付けられている 原子力施設用屋外タンクの雨仕舞用伸縮接手。」 (2)引用文献2(甲8) 引用文献2には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 この発明は、石油など危険物の液体を貯蔵する鋼製タンクのプレハブコンクリート防液堤に関するものである。」 イ 「【0026】 本発明に係る鋼製タンクのプレハブコンクリート防液堤の実施形態例について図1から図8を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略または付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。 なお、図は円筒形又は多角形プレハブコンクリート構造の連続した防液堤兼用のコンクリート側壁の概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。また、この構造は、既設の鋼製タンクに形成する場合を示すが、新規の鋼製タンクに採用しても良い。 【0027】 図1は本発明に係る鋼製タンク1のプレハブコンクリート防液堤の第1の実施形態例を示す全体側面説明図で、2は側板、3は基礎、4は底板、5は屋根である。 この発明による鋼製タンクのコンクリート補強範囲は、地震や津波、洪水などで被害を受けないように、タンク側板2の外面に当接させて防液堤兼用のコンクリート側壁6を立設して補強形成する。 ・・・・ 【0029】 図2は、第2の実施形態例で、側板2からメンテナンスを行うための空間を確保するよう離隔して、防液堤兼用のコンクリート側壁6を立設する場合を示す。 ・・・・ 【0030】 このように、側板2から離隔して防液堤兼用のコンクリート側壁6を立設する場合は、基礎3の外周部に確りと杭7を打込むことができるため、底部フーチングユニット6aを幅広く確りと立設し、この上に側壁下部ユニット6bと側壁上部ユニット6cを積上げて水平荷重に対して強い防液堤構造に形成することができる。」 ウ 「【0036】 図7は、側板2上部の外周面に制振材8bを固着し、側板2から離隔し空間9をおいてコンクリート側壁6を設けた事例を示す。 制振材8bは、側板2の周方向に間隔をおいて放射状に取り付け、その外周縁のコンクリート壁6との間に緩衝材12bを介装する。 トップアングル2aとコンクリート側壁6との間には覆い材10を設け、雨水が空間9内に入らないように形成する。」 エ 「【図2】 [図:0001400406000003.jpg] 」 オ 「【図7】 [図:0001400406000004.jpg] 」 カ 図2及び図7より、トップアングル2aの地面からの高さが、コンクリート防液堤6の高さよりも高いことが看取できる。 キ 上記記載事項から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「タンクヤードにおける鋼製タンク1とコンクリート防液堤6との間に設けられる覆い材10であって、 前記コンクリート防液堤6は、鋼製タンク1の側板2から空間9を確保するよう離隔して設けられ、 前記覆い材10は、前記鋼製タンク1のトップアングル2aと前記コンクリート防液堤6との間に、雨水が前記空間9内に入らないように設けられ、 トップアングル2aの地面からの高さが、コンクリート防液堤6の高さよりも高い、 覆い材10。」 (3)先願(甲11) 先願の公開公報には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、堰で囲まれた敷地内に複数の貯蔵タンクが設けられる施設において、貯蔵タンクの間の区域や貯蔵タンクと堰の間の区域などへの雨水等の浸入を防止するために用いられる雨水カバー装置に関する。」 イ 「【0007】 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。 本発明の実施形態に係る雨水カバー装置Aは、図1~図4に示すように、原子力発電所の事故処理として建設された汚染水貯留施設など、堰Wで囲まれる敷地内に複数の貯蔵タンクTをそれぞれ所定間隔毎に設けた箇所に配備され、堰Wの内部領域Sへの雨水等の浸入を防止するものである。 堰Wの内部領域Sは、並設した各貯蔵タンクTの間に配置される中間区域S1と、貯蔵タンクT及び堰Wの間に配置される外周区域S2とからなる。 詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る雨水カバー装置Aは、複数の貯蔵タンクTの間の中間区域S1を被覆するように設けられる内側カバー1と、貯蔵タンクT及び堰Wの間の外周区域S2を被覆するように設けられる外側カバー2と、内側カバー1の低域部1Lから堰Wの外部領域Oに向けて配管される排水管路3と、を主要な構成要素として備えている。 【0008】 貯蔵タンクTは、汚染水や雨水などを含む液体又は気体などを貯留するための有蓋円筒タンクなどであり、円柱状のタンク側面T1を有している。 タンク側面T1の所定高さには、タンク側面T1に対して内側カバー1や外側カバー2を取り付けるための取付部T2が設けられる。 取付部T2は、金属などの硬質材料によりタンク側面T1に沿って周方向へ延びる管状や線状や紐状や帯状などの形状に形成され、タンク側面T1の周方向へ連続する環状に配置するか、又は必要箇所のみに周方向へ分断する弓状に配置する。 取付部T2の設置高さとしては、堰Wの上面よりも高く且つ内側カバー1や外側カバー2によって作業者の通行を妨げない地上から約2m~4mの範囲に配置することが好ましい。 取付部T2の具体例として図1~図3に示される場合には、金属パイプなどからなる環状のバンドを、タンク側面T1に沿って周方向へ所定間隔毎に突設した支持具T3で、タンク側面T1から若干離れた状態で固定している。 また、その他の例として図示しないが、取付部T2を図示例以外の形状に変更することも可能である。」 ウ 「【0010】 外側カバー2は、内側カバー1と同様に不透明又は透明な防水シートなどの変形可能な軟質材料や肉薄の合成樹脂シートなどの変形可能な軟質材料からなる。 外側カバー2は、タンク側面T1に沿って曲線状に形成される内曲辺2aと、堰Wに沿って形成される外辺2bと、を有している。 内曲辺2aは、貯蔵タンクTの取付部T2に連結される。内曲辺2aと取付部T2の連結手段としては、タンク側面T1と内曲辺2aの間に隙間(通水空間4)が形成されるように、ロープやワイヤなどからなる第一線材51を用いることが好ましい。 外辺2bは、堰Wに対して内曲辺2aよりも低位となる傾斜状に連結される。外辺2bと堰Wの連結手段としては、外辺2bと堰Wとの間に隙間が形成されないように、ロープやワイヤなどからなる第二線材52を用いることが好ましい。」 エ 「【0012】 そして、貯蔵タンクTのタンク側面T1と、内側カバー1の曲辺1a及び外側カバー2の内曲辺2aとの間には、貯蔵タンクTに触れた雨水が通過する所定幅の通水空間4を形成することが好ましい。 これにより、貯蔵タンクTに触れた雨水は、通水空間4を通って堰Wの内部領域S(中間区域S1と外周区域S2)に流れ込む。 通水空間4の具体例として図1~図3に示される場合には、タンク側面T1に設けられた取付部T2となるバンドと、内側カバー1の曲辺1a及び外側カバー2の内曲辺2aとを、ロープやワイヤなどの第一線材51で締結している。このため、取付部T2となるバンドを挟んでタンク側面T1と内側カバー1の曲辺1a又は外側カバー2の内曲辺2aとの間に通水空間4が形成される。 また、外側カバー2の外辺2bは、堰Wの支持材W2に対してロープやワイヤなどの第二線材52で締結され、隣り合う内側カバー1と外側カバー2の端辺同士や隣り合う外側カバー2の端辺同士は、ロープやワイヤなどの第三線材53で締結されている。 なお、その他の例として図示しないが、通水空間4を図示例以外の構造で形成することも可能である。外側カバー2の外辺2bと堰Wとの連結手段や、隣り合う内側カバー1と外側カバー2の端辺同士の連結手段や、隣り合う外側カバー2の端辺同士の連結手段を図示例以外の連結手段に変更することも可能である。」 オ 「【図1】 [図:0001400406000005.jpg] 」 オ 「【図3】 [図:0001400406000006.jpg] 」 図1より、堰Wの高さは貯蔵タンクTよりも低いことが明らかであり、上記記載事項も踏まえると、先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。 <先願発明> 「堰Wで囲まれる敷地内に複数の貯蔵タンクTをそれぞれ所定間隔毎に設けた箇所に配備され、堰Wの内部領域Sへの雨水等の浸入を防止する雨水カバー装置Aであって、堰Wの高さは貯蔵タンクTよりも低く、 雨水カバー装置Aは、複数の貯蔵タンクTの間の中間区域S1を被覆するように設けられる内側カバー1と、貯蔵タンクT及び堰Wの間の外周区域S2を被覆するように設けられる防水シートからなる外側カバー2と、内側カバー1の低域部1Lから堰Wの外部領域Oに向けて配管される排水管路3と、を主要な構成要素として備え、 タンク側面T1の所定高さには、タンク側面T1に対して内側カバー1や外側カバー2を取り付けるための取付部T2となるバンドが、タンク側面T1に沿って周方向へ所定間隔毎に突設した支持具T3で、タンク側面T1から若干離れた状態で固定され、取付部T2となるバンドと、内側カバー1の曲辺1a及び外側カバー2の内曲辺2aとを、ロープやワイヤなどの第一線材51で締結し、 取付部T2の設置高さとしては、堰Wの上面よりも高く且つ内側カバー1や外側カバー2によって作業者の通行を妨げない地上から約2m~4mの範囲に配置される、 雨水カバー装置A。」 2.引用文献1(甲1)を主引用例とする理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「タンク(1)からの内溶液の漏洩があった場合、その漏洩を食い止める、タンク(1)より低い防液堤(9)」は、本件発明1の「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう」にする「タンクより低いせき」に、引用発明1の「防液堤(9)で囲まれたタンク室(10)」は、本件発明1の「周囲に」「せきを備えたタンクピット」に、それぞれ相当する。 (イ)引用発明1の「雨の侵入を防ぐための伸縮シート(3)からなる伸縮接手X’」が「ゴムシートであ」ることは、「雨の侵入を防ぐ」とされ、かつ一般的に「ゴム」が防水性であることを考慮すると、本件発明1の「防水シート」に相当する。 (ウ)引用発明1の「タンク(1)外周に設けられたタンク室(10)の上部を覆い、上端部がタンク(1)の上端から防液堤(9)の上部の間に位置している雨仕舞屋根(2)」は、「雨仕舞い」が「雨水の浸入や雨漏りを防ぐこと。また、その施工方法。」(広辞苑第六版)を意味し、引用発明1の「雨仕舞屋根(2)」が、タンクと防潮堤(9)との間の「タンク室(10)の上部を覆う」とされているところから見て、浸入を防がれる雨水は、タンク室(10)のエリアを画定する「防液堤(9)」の外へと導かれることは明らかであるから、本件発明1の「タンクの周囲に、上端部が前記タンクの上端から前記せきの上部の間に位置するように設置され、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く雨除け」に相当する。 (エ)引用発明1の「タンク(1)外周に設けられたタンク室(10)の上部を覆い、上端部がタンク(1)の上端から防液堤(9)の上部の間に位置している雨仕舞屋根(2)」は、「雨の侵入を防ぐための伸縮シート(3)からなる伸縮接手X’」と共に、本件発明1の「タンクの側面との間の隙間を塞ぐ前記タンクピットの雨仕舞」として機能する。 (オ)引用発明1の「雨仕舞屋根(2)との間に取付けられ、雨の侵入を防ぐための伸縮シート(3)からなる伸縮接手X’」の「上端は張り出し部(6a)を介して前記タンク室(10)内に設けられた屋外タンク(1)の側板上部のトップアングル(7)に取り付けられており、前記伸縮シート(3)はゴムシートであり、前記屋外タンク(1)の側面側から張り出した張り出し部(6a)と前記雨仕舞屋根(2)との間に雨の侵入を防ぐように取り付けられている」態様と、 本件発明1の「防水シート」の「上端部が、前記タンクピットに設置されている前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ、前記タンクの側面と前記雨除けとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記雨除けとの隙間に降る雨水を前記雨除けを伝って前記せきの外に導くように配置される」態様とは、 「タンクの側面と雨除けの間の隙間を覆って雨水をせきの外に導く」という限りで一致する。 (カ)そうすると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。 《一致点1》 タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピット内の前記タンクの周囲に、上端部が前記タンクの上端から前記せきの上部の間に位置するように設置され、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く雨除けと、前記タンクの側面との間の隙間を塞ぐ前記タンクピットの雨仕舞であって、 タンクの側面と雨除けの間の隙間を覆って雨水をせきの外に導く、 タンクピットの雨仕舞。 《相違点1》 「タンクの側面と雨除けの間の隙間を覆って雨水をせきの外に導くこと」に関し、 本件発明1の「防水シート」の「上端部が、前記タンクピットに設置されている前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ、前記タンクの側面と前記雨除けとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記雨除けとの隙間に降る雨水を前記雨除けを伝って前記せきの外に導くように配置される」のに対し、 引用発明1の「雨仕舞屋根(2)との間に取付けられ、雨の侵入を防ぐための伸縮シート(3)からなる伸縮接手X’」の「上端は張り出し部(6a)を介して前記タンク室(10)内に設けられた屋外タンク(1)の側板上部のトップアングル(7)に取り付けられており、前記伸縮シート(3)はゴムシートであり、前記屋外タンク(1)の側面側から張り出した張り出し部(6a)と前記雨仕舞屋根(2)との間に雨の侵入を防ぐように取り付けられている」点。 イ 上記相違点1について検討する。 本件発明1の「防水シート」は「上端部が、前記タンクピットに設置されている前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ」るのに対し、引用発明1の伸縮接手X’は屋外タンク(1)の側板上部のトップアングル(7)に取り付けられ、雨水が伝って流れ落ちる側面に取り付けられたものではない。 この点、引用文献3(甲9(特に、【0011】、図4))には、土台20とタンク底部(アニュラ板31)との境界部分である、屋外タンクと土台との境界部分32への雨水浸入を防ぎ、タンク底部の錆、タンクの破損を防止するために、防水シートで屋外タンクと土台との境界部分を露出させることなく、その境界部分を完全に覆うことが、 引用文献4(甲10(特に、明細書2頁11~14行、4頁10~15行、第3図))には、タンク側板3の下方外周面からタンク底板2、そしてタンク底板2の外周の基礎スラブ1に亘って防水テープ4を貼着し、この防水テープ4の上端部は、タンクの全周を巻装して成るバンド6によって締付けられており、バンド6の締付けによるタンク内側方向への押圧力によって防水テープ4の上端部が剥離しないようにされたことが、それぞれ記載されている。 しかし、いずれにも、「上端部が、前記タンクピットに設置されている前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ」る「防水シート」は、記載も示唆もされていない。 また、引用文献2(甲8(特に、【0036】、図7))には、鋼製タンク1の側板2上端のトップアングル2aとコンクリート側壁6との間に、覆い材10を設けることが、特公平1-17951号公報(甲7(特に、4欄41行~6欄18行、第5図))には、タンク外壁に溶接された支持部材13上のサポートリング14に、鋼板製あるいはアルミニウム合金板製のカバー部材17Aの端部下辺に設けた切欠部17bを入れ、地盤上に設置されたコンクリート基台10の上に設置されたサポートリング15との間で、庇17を支持する構造が記載されているが、「上端部が、前記タンクピットに設置されている前記タンクの前記雨除けの上端部より上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に取付けられ」る「防水シート」は記載も示唆もされておらず、他にそのような証拠は提出されていない。 よって、本件発明1の上記相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 以上より、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~8について 本件発明3~8は、いずれも本件発明1、2の発明特定事項を全て備えているところ、本件発明1は、上記(1)で述べたように、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明3~8も、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.引用文献2(甲8)を主引用例とする理由1(進歩性)について (1)本件発明2について ア 本件発明2と、引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「タンクヤード」、「鋼製タンク1」、「空間9」は、本件発明2の「タンクピット」、「タンク」、「タンクの側面」と「せきとの間の隙間」にそれぞれ相当する。 (イ)引用発明2の「コンクリート防液堤6」は、鋼製タンク1の「トップアングル2aの地面からの高さが、コンクリート防液堤6の高さよりも高い」ことからみて、本件発明2の「タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう」にする「タンクより低いせき」に相当する。 (ウ)引用発明2の「前記鋼製タンク1のトップアングル2aと前記コンクリート防液堤6との間に、雨水が前記空間9内に入らないように設けられ」る「タンクヤードにおける鋼製タンク1とコンクリート防液堤6との間に設けられる覆い材10」と、 本件発明2の「タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ、下端側が前記せきの外側に垂れ下がるように配置され、前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記せきとの隙間に降る雨水を前記せきの外側に導くように配置される防水シートを有する、タンクピットの雨仕舞」とは、 「タンクの側面とせきの間の隙間を覆って雨水をせきの外に導く、タンクピットの雨仕舞」という限りで一致する。 (エ)そうすると、本件発明2と引用発明2とは、次の一致点2で一致し、相違点2で相違する。 《一致点2》 タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピットに設置されている、 タンクの側面とせきの間の隙間を覆って雨水をせきの外に導く、タンクピットの雨仕舞。 《相違点2》 「タンクの側面とせきの間の隙間を覆って雨水をせきの外に導く、タンクピットの雨仕舞」に関し、 本件発明2が「タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ、下端側が前記せきの外側に垂れ下がるように配置され、前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記せきとの隙間に降る雨水を前記せきの外側に導くように配置される防水シートを有する、タンクピットの雨仕舞」であるのに対し、 引用発明2は「前記鋼製タンク1のトップアングル2aと前記コンクリート防液堤6との間に、雨水が前記空間9内に入らないように設けられ」る「タンクヤードにおける鋼製タンク1とコンクリート防液堤6との間に設けられる覆い材10」である点。 イ 上記相違点2について検討する。 本件発明2の「防水シート」は「タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ」るのに対し、引用発明2の覆い材10は鋼製タンク1のトップアングル2aに取り付けられており、雨水が伝って流れ落ちる側面に取り付けられたものではない。 この事項は引用文献3及び4に記載も示唆もされていないし、他に提出された証拠にもない。 よって、本件発明2の上記相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 以上より、本件発明2は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~8について 本件発明3~8は、いずれも本件発明2の発明特定事項を全て備えているところ、本件発明2は、上記(1)で述べたように、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明3~8も、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明9について ア 引用文献2には、覆い材の設置方法に係る次の発明(以下「引用発明2’」という。)も記載されている。 「タンクヤードにおける鋼製タンク1とコンクリート防液堤6との間に設けられる覆い材10について、 前記コンクリート防液堤6は、鋼製タンク1の側板2から空間9を確保するよう離隔して設けられており、鋼製タンク1のトップアングル2aの地面からの高さが、コンクリート防液堤6の高さよりも高く、 前記覆い材10を、前記鋼製タンク1のトップアングル2aと前記コンクリート防液堤6との間に、雨水が前記空間9内に入らないように設置する方法。」 イ 本件発明9と引用発明2’を対比する。 (ア)引用発明2’の「タンクヤードにおける鋼製タンク1とコンクリート防液堤6との間に設けられる覆い材10」を「鋼製タンク1のトップアングル2aと前記コンクリート防液堤6との間に、雨水が前記空間9内に入らないように設置する」ことと、 本件発明9の「タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く防水シートを配置する工程と、取付具を使用して、前記タンクの側面に配置された前記防水シートの上端部を前記防水シートの周囲から締め付けることにより前記防水シートの上端部を前記タンクの前記雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に固定する工程と、を含むタンクピットの雨仕舞の設置方法」とは、 「タンクの側面に雨水をせきを越して外側に導く工程を含む、タンクピットの雨仕舞の設置方法」という限りで一致する。 (イ)そうすると、本件発明9と引用発明2’とは、次の一致点3で一致し、相違点3で相違する。 《一致点3》 タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピットに設置されている、 タンクの側面に雨水をせきを越して外側に導く工程を含む、タンクピットの雨仕舞の設置方法。 《相違点3》 「タンクの側面に雨水をせきを越して外側に導く工程を含む、タンクピットの雨仕舞の設置方法」に関し、 本件発明9が「タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に、雨水を前記せきを越して前記タンクピットの外側に導く防水シートを配置する工程と、取付具を使用して、前記タンクの側面に配置された前記防水シートの上端部を前記防水シートの周囲から締め付けることにより前記防水シートの上端部を前記タンクの前記雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に固定する工程と、を含むタンクピットの雨仕舞の設置方法」であるのに対し、 引用発明2’は「タンクヤードにおける鋼製タンク1とコンクリート防液堤6との間に設けられる覆い材10」を「鋼製タンク1のトップアングル2aと前記コンクリート防液堤6との間に、雨水が前記空間9内に入らないように設置する」点。 ウ 上記相違点3について検討する。 本件発明9の「防水シート」は「上端部を前記タンクの前記雨水が伝って流れ落ちる側面に水密に固定する」のに対し、引用発明2’の覆い材10は鋼製タンク1のトップアングル2aに取り付けられており、雨水が伝って流れ落ちる側面に取り付けられたものではない。 この事項は引用文献3及び4に記載も示唆もされていないし、他に提出された証拠にもない。 よって、本件発明9の上記相違点3に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 エ 以上より、本件発明9は、引用発明2’に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4.理由2(拡大先願)について ア 本件発明2と先願発明を対比する。 先願発明の「堰Wで囲まれる敷地」、「貯蔵タンクT」は、それぞれ本件発明2の「周囲にせきを備えたタンクピット」、「タンク」に相当する。 先願発明の「防水シートからなる外側カバー2」を備える「雨水カバー装置A」と、本件発明2の「防水シート」を有する「タンクピットの雨仕舞」とは、「防水シートを有する、雨水排出手段」という限りで一致する。 そうすると、本件発明2と先願発明とは、次の一致点4で一致し、相違点4で相違する 《一致点4》 タンクから漏れ出た液体が外部に流出しないよう周囲に前記タンクより低いせきを備えたタンクピットに設置されている 防水シートを有する、雨水排出手段。 《相違点4》 「防水シートを有する、雨水排出手段」に関し、 本件発明2が「前記タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ、下端側が前記せきの外側に垂れ下がるように配置され、前記タンクの側面と前記タンクピットの前記せきとの間の隙間を覆って、前記タンクの側面を伝って流れ落ちる雨水および前記タンクと前記せきとの隙間に降る雨水を前記せきの外側に導くように配置される防水シートを有する、タンクピットの雨仕舞」であるのに対し、 先願発明は「タンク側面T1の所定高さには、タンク側面T1に対して内側カバー1や外側カバー2を取り付けるための取付部T2となるバンドが、タンク側面T1に沿って周方向へ所定間隔毎に突設した支持具T3で、タンク側面T1から若干離れた状態で固定され、取付部T2となるバンドと、内側カバー1の曲辺1a及び外側カバー2の内曲辺2aとを、ロープやワイヤなどの第一線材51で締結し」た「雨水カバー装置A」である点。 イ 上記相違点4について検討する。 先願発明の防水シートからなる外側カバー2は、「タンク側面T1に沿って周方向へ所定間隔毎に突設した支持具T3で、タンク側面T1から若干離れた状態で固定され、取付部T2となるバンドと、内側カバー1の曲辺1a及び外側カバー2の内曲辺2aとを、ロープやワイヤなどの第一線材51で締結し」ており、本件発明2の「防水シート」のように、タンク側面に「水密に取付けられ」るものではない。この事項は、課題解決のための具体化手段における微差でもない。 ウ よって、本件発明2は、先願発明と同一ではない。 第5 取消理由(決定の予告)で通知しなかった特許異議申立理由について 申立人は、本件発明2及び9は、引用文献1(甲1)に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するが、以下に述べるように、それらの主張は採用することができない。 本件発明2と引用発明1とを対比すると、本件発明2の「防水シート」は「タンクの前記せきより上部で雨水が伝って流れ落ちる側面に上端部が水密に取付けられ」るのに対し、引用発明1の伸縮接手X’は屋外タンク(1)の側板上部のトップアングル(7)に取り付けられ、雨水が伝って流れ落ちる側面に取り付けられたものではない。 この事項は引用文献3及び4に記載も示唆もされていないし、他に提出された証拠にもない。 よって、本件発明2は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明9も、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許権者に通知した取消理由(決定の予告)又は特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700930

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決40件(東芝プラントシステム株式会社、鈴木 憲治)
  • 2026-700276異議申立 / 2026-08-07 / 維持バイポーラプレート(BPP)のためのドープDLC
    同じ当事者: 鈴木 憲治
  • 2026-700277異議申立 / 2026-08-07 / 維持トライボロジー用途のためのドープDLC
    同じ当事者: 鈴木 憲治
  • 2023-700527異議申立 / 2026-03-23 / 請求成立(取消)デッキプレート構造
    同じ当事者: 鈴木 憲治
  • 2023-701084異議申立 / 2026-03-19 / 訂正認容食品機械用潤滑剤組成物
    同じ当事者: 鈴木 憲治
  • 2025-700170異議申立 / 2025-09-04 / 訂正認容ラックアシストタイプ電動パワーステアリングのボールねじ部用グリース組成物
    同じ当事者: 鈴木 憲治
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,338件(121・B65D、16・B65D)
  • 2020-700873異議申立 / 2022-09-30 / 訂正認容容器およびその製造方法
    共通の審決分類: 121・B65D、16・B65D
  • 2020-700959異議申立 / 2022-09-30 / 訂正認容容器およびその製造方法
    共通の審決分類: 121・B65D、16・B65D
  • 2020-008735拒絶査定不服審判 / 2021-08-23 / 請求不成立梱包容器及び緩衝材
    共通の審決分類: 121・B65D、16・B65D
  • 2019-013345拒絶査定不服審判 / 2020-09-08 / 請求不成立半導体製品の製造用の薬液を流動させる際に薬液と接触する部材
    共通の審決分類: 121・B65D、16・B65D
  • 2017-016141拒絶査定不服審判 / 2018-02-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)包装袋及びロール製品パッケージ
    共通の審決分類: 121・B65D、16・B65D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存