特許異議申立
2021-700422
水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法
- 審判番号
- 2021-700422
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-023125
- 登録番号
- 6780526
- 請求日
- 2021年04月30日
- 審決日
- 2022年12月28日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】栗田工業株式会社
- 【権利者代理人】大谷 保
- 【権利者代理人】有永 俊
- 【異議申立人】阿部 治美
- 【異議申立人】森山 涼子
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 宮部 裕一
- 分類
- P1651.121-YAA(C22B) / P1651.536-YAA(C22B) / P1651.537-YAA(C22B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6780526号発明「水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6780526号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第6780526号の請求項1、3~7に係る特許を維持する。
特許第6780526号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6780526号の請求項1~7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年2月10日の出願であって、令和2年10月19日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行されたものである。
本件は、その後、令和3年4月30日付けで特許異議申立人阿部治美(以下、「申立人1」という。)より請求項1~7(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、また、同年5月6日付けで特許異議申立人森山涼子(以下、「申立人2」という。)より請求項1~7(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがなされた特許異議申立事件であって、その後の経過は次のとおりである。
令和3年 9月21日付け 取消理由の通知
同年11月26日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 1月 6日 申立人1による意見書の提出
同年 1月11日 申立人2による意見書の提出
同年 2月 7日付け 取消理由(決定の予告)の通知
同年 4月14日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月 1日 申立人1による意見書の提出
同年 6月 6日 申立人2による意見書の提出
同年 7月 4日付け 取消理由(決定の予告)の通知
同年 9月 5日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、同年9月20日付けで、申立人1及び申立人2に対して意見を求めたが両者から意見書の提出はなかった。
また、令和3年11月26日になされた訂正請求、及び、令和4年4月14日になされた訂正請求は、令和4年9月5日に訂正請求(以下、当該訂正請求を「本件訂正請求」という。)がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6780526号の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
なお、訂正箇所には、当審で下線を付した。
(1)訂正事項1
請求項1について、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)前の「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な石炭を含む鉱物原料」を「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料」に訂正する。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1について、本件訂正前の「鉱物原料と、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を含む原料混合物」を「鉱物原料に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を添加して混合し、得られた原料混合物」に訂正する。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項2を削除する。
(4)訂正事項4
請求項3について、本件訂正前の「前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と、前記鉱物原料を、前記貯留設備内に、交互に且つ層状に、投入する工程を有する、請求項1に記載の水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。」を「高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と、粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料を、配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された前記貯留設備内に、交互に且つ層状に、投入して、前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料とを収容し、前記貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する、水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。」に訂正する。
請求項3を直接または間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項4について、本件訂正前の「前記貯留設備に、前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を投入する工程と、続いて、前記鉱物原料を添加する工程を有する、請求項1に記載の水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。」を「配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された前記貯留設備に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を投入し、続いて、粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料を添加することにより、前記貯留設備内に前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料とを収容し、前記貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する、水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。」に訂正する。
請求項4を直接または間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項5について、本件訂正前の「請求項1~4」を「請求項1」に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項6について、本件訂正前の「請求項1~5」を「請求項1、3~5」に訂正する。
(8)訂正事項8
請求項7について、本件訂正前の「請求項1~5」を「請求項1、3~5」に訂正する。
2 当審の判断
2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%」であり、「湿潤」であるものが、「石炭」ではなく「鉱物原料」であることを明確にするために、「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な」の後に読点「、」を付す(訂正事項1-1)とともに、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)【0015】の記載を根拠として、「鉱物原料」が「ベルトコンベアで固形物として搬送可能な」ものであることを特定する(訂正事項1-2)ものである。
そうすると、訂正事項1-1は、「明瞭でない記載の釈明」を、また、訂正事項1-2は、「特許請求の範囲の減縮」を、それぞれ目的とするものであり、さらに、これらの訂正事項は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載された事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の「鉱物原料と、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を含む原料混合物」について、本件訂正前の請求項2を根拠として、「鉱物原料に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を添加して混合し、得られた」ものであることを特定するものである。
そうすると、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項2を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項3について、請求項1の発明特定事項を請求項3に繰り入れることにより、本件訂正前の請求項1を引用しないものとする(訂正事項4-1)とともに、本件訂正前の請求項1の「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%」であり、「湿潤」であるものが、「石炭」ではなく「鉱物原料」であることを明確にするために、「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な」の後に読点「、」を付し(訂正事項4-2)、また、本件明細書【0015】の記載を根拠として、「鉱物原料」が「ベルトコンベアで固形物として搬送可能な」ものであることを特定し(訂正事項4-3)、さらに、「貯留設備に収容」する対象について、本件訂正前の「鉱物原料と、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を含む原料混合物」から「高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料」に特定する(訂正事項4-4)ものである。
そうすると、訂正事項4-1は、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を、また、訂正事項4-2は、「明瞭でない記載の釈明」を、さらに、訂正事項4-3は、「特許請求の範囲の減縮」を、また、訂正事項4-4は、「特許請求の範囲の減縮」を、それぞれ目的とするものである。
そして、これらの訂正事項は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項4について、請求項1の発明特定事項を請求項4に繰り入れることにより、本件訂正前の請求項1を引用しないものとする(訂正事項5-1)とともに、本件訂正前の請求項1の「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%」であり、「湿潤」であるものが、「石炭」ではなく「鉱物原料」であることを明確にするために、「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な」の後に読点「、」を付し(訂正事項5-2)、また、本件明細書【0015】の記載を根拠として、「鉱物原料」が「ベルトコンベアで固形物として搬送可能な」ものであることを特定し(訂正事項5-3)、さらに、「貯留設備に収容」するものについて、本件訂正前の「鉱物原料と、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を含む原料混合物」から「高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料」に特定する(訂正事項5-4)ものである。
そうすると、訂正事項5-1は、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を、また、訂正事項5-2は、「明瞭でない記載の釈明」を、さらに、訂正事項5-3は、「特許請求の範囲の減縮」を、また、訂正事項5-4は、「特許請求の範囲の減縮」を、それぞれ目的とするものである。
そして、これらの訂正事項は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正事項3において請求項2を削除することに伴い、本件訂正前の請求項5について、請求項2を引用しないようにするとともに、請求項5の「前記原料混合物」について特定されていない請求項3、4を引用しないようにするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、及び、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
(7)訂正事項7、8
訂正事項7、8は、訂正事項3において請求項2を削除することに伴い、本件訂正前の請求項6、7について、請求項2を引用しないようにするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、及び、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
2-2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~7は、請求項1を引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~7は一群の請求項であり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
そして、本件訂正は、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めがないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~7〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。
2-3 独立特許要件について
本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件は課されない。
3 訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、令和4年9月5日に特許権者が行った訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕についての訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
令和4年9月5日に特許権者が行った請求項1~7についての訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を添加して混合し、得られた原料混合物を、配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容し、前記貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する、水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と、粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料を、配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された前記貯留設備内に、交互に且つ層状に、投入して、前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料とを収容し、前記貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する、水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。
【請求項4】
配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された前記貯留設備に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を投入し、続いて、粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料を添加することにより、前記貯留設備内に前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料とを収容し、前記貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する、水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。
【請求項5】
前記原料混合物が、前記鉱物原料100質量部に対して、0.01~1質量部の量の高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を含む、請求項1に記載の水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。
【請求項6】
前記高吸水性樹脂がポリアクリル酸ナトリウム塩である、請求項1、3~5の何れか1項に記載の水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。
【請求項7】
前記水溶性高分子化合物がアクリルアミド・アクリル酸アンモニウム共重合物である、請求項1、3~5の何れか1項に記載の水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法。」
2 令和4年7月4日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要
令和4年7月4日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
(1)本件特許は、令和4年4月14日になされた訂正請求に係る訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項3の「前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物」及び「前記鉱物原料」の「前記」が何を指しているのかが不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項3~7に係る特許は、取り消されるべきものである(職権で通知)。
(2)本件特許は、同請求項4の「前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物」及び「前記鉱物原料」の「前記」が何を指しているのかが不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項4~7に係る特許は、取り消されるべきものである(職権で通知)。
(3)本件特許は、同請求項3、4を引用する請求項5の「前記原料混合物」の「前記」が何を指しているのかが不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項5~7に係る特許は、取り消されるべきものである(職権で通知)。
3 令和4年2月7日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要
令和4年2月7日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
(1)本件特許は、令和3年11月26日になされた訂正請求に係る訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1の「含水率が1~30質量%」であり、「湿潤」である事項が、鉱物原料と高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物とを混合する前であるのか、後であるのか、その両方であるのかが不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである(職権で通知)。
4 令和3年9月21日付けで通知された取消理由の概要
令和3年9月21日付けで通知された取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)本件特許は、その特許請求の範囲の記載が下記ア~ウの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである。
ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤」であるものが「石炭」であるのか「鉱物原料」であるのかが不明である(職権で通知)。
イ 同請求項1の「含水率が1~30質量%」であり、「湿潤」である事項が、鉱物原料と高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物とを混合する前であるのか、後であるのか、その両方であるのかが不明である(上記3の(1)と同じ:職権で通知)。
ウ 同請求項1の「粒子径が2mm以下」である事項は、どのような定義でどのような測定方法による「粒子径」であるのかが不明である。
(2)願書に添付された特許請求の範囲の請求項1、2、5、6に係る発明(以下、請求項数に応じて、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという。)は、下記の甲1-1に記載された発明、甲1-2に記載された事項、及び周知の事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項1、2、5、6に係る特許は、取り消されるべきものである(請求項6は職権で通知)。
(3)本件特許発明1、2、6は、甲1-2に記載された発明、甲1-2に記載された事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項1、2、6に係る特許は、取り消されるべきものである。
(甲1-1)特開2012―214292号公報(申立人1が提出した甲第1号証:以下、「甲1-1」という。)
(甲1-2)再公表特許第2014/103005号(申立人1が提出した甲第2号証:以下、「甲1-2」という。)
5 上記2~4以外の特許異議申立理由
5-1 申立人1によるもの
(1)願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な石炭を含む鉱物原料」は、その形態、含水率、石炭の含有割合が不明であるため、明確であるとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明5は、甲1-2に記載された発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項5に係る特許は、取り消されるべきものである。
(3)本件特許発明7は、甲1-1に記載された発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項7に係る特許は、取り消されるべきものである。
なお、申立人1は、甲1-1及び甲1-2以外に次の証拠方法も提出している。
(証拠方法)
甲第3号証:特開2010-181055号公報(以下、「甲1-3」という。)
甲第4号証:特開平2-140293号公報(以下、「甲1-4」という。)
甲第5号証:特開昭61-151294号公報(以下、「甲1-5」という。)
甲第6号証:特開2003-165980号公報(以下、「甲1-6」という。)
甲第7号証:特開2007-238230号公報(以下、「甲1-7」という。)
甲第8号証:特開2012-91922号公報(以下、「甲1-8」という。)
5-2 申立人2によるもの
(1)本件特許発明1は、石炭の量が特定されておらず、課題を解決し得ない発明を包含するものであるから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明1は、石炭の量が特定されていないため、どのようにして「貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する」のかが不明であるから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである。
(3)本件特許発明1~7は、下記の甲2-1に記載された発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである。
(4)本件特許発明1~7は、下記の甲2-2に記載された発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである。
(5)本件特許発明1~7は、下記の甲2-3に記載された発明、甲2-1に記載された事項、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、請求項1~7に係る特許は、取り消されるべきものである。
(甲2-1)中国特許出願公開第104645723号明細書(申立人2が提出した甲第1号証:以下「甲2-1」という。)
(甲2-2)特開昭61-151294号公報(申立人2が提出した甲第2号証:以下「甲2-2」という。)
(甲2-3)中国実用新案第200967641号明細書(申立人2が提出した甲第3号証:以下「甲2-3」という。)
なお、申立人2は、甲2-1~甲2-3以外に次の証拠方法も提出している。
(証拠方法)
甲第4号証:特開2010-181055号公報(以下、「甲2-4」という。)
甲第5号証:特開平2-140293号公報(以下、「甲2-5」という。)
甲第6号証:特許第6780526号(特願2017-023125号)の令和2年2月18日付け拒絶理由通知書(以下、「甲2-6」という。)
甲第7号証:特許第6780526号(特願2017-023125号)の令和2年4月13日付け意見書(以下、「甲2-7」という。)
6 引用刊行物の記載事項、及び、引用刊行物に記載された発明
(1) 甲1-1の記載事項
甲1-1には、次の記載がある。
なお、下線は当審で付した。以下、同じ。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭及び/又は鉄鉱石スラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合することを特徴とする、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの改質方法。
・・・(略)・・・
【請求項5】
石炭及び/又は鉄鉱石スラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合することを特徴とする改質された原料の製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本技術は、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの改質方法、並びにこれにより改質された原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭及び/又は鉄鉱石(以下、「鉄鉱石等」ともいう)は、鉱山にて採掘され、ベルトコンベアや貨車、貨物船、トラック等の搬送手段で、採掘現場内外の保管貯蔵場や処理施設等に搬送され、保管・貯蔵や処理されている。その後、鉄鉱石等は、ベルトコンベア等の運搬手段にて、鉄鉱石等を使用する施設(例えば、製鉄所、発電・工業用熱源発生施設、工場等)に搬送され、利用されている。
このような採掘現場、搬送手段、処理施設、使用施設等では、鉄鉱石等に雨が降ること;保管や清掃等のときに、鉄鉱石等に散水や放水すること;石炭及び/又は鉄鉱石を水浸させること等がある。よって、採掘現場、処理施設、使用施設(特に製鉄所等)等で、鉄鉱石等は水と接触することが多い。
【0003】
このように石炭及び/又は鉄鉱石に、水が接触し、水を含むことで、石炭及び/又は鉄鉱石のスラリーが発生することになる。このようなスラリーを、原料として再利用するか、又は廃棄物として処分する必要がある。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術は、斯かる問題と実状に鑑み、より簡便な石炭及び/又は鉄鉱石、及びそのスラリーの改質方法及びこれにより改質された原料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、スラリー状のため取り扱いが難しく、簡便に改質することが困難である石炭及び/又は鉄鉱石スラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合すると、簡便に、このスラリーの流動性を低下させることができ、得られた改質物は安定的に取り扱いが容易であった。」
「【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、より簡便に、石炭及び/又は鉄鉱石や製鉄所等で発生する石炭及び/又は鉄鉱石スラリーを、取り扱いが容易な堆積物に改質することができる。これにより、取り扱いが容易な石炭及び/又は鉄鉱石を含む原料を得ることが可能である。」
「【0014】
処理対象である石炭及び/又は鉄鉱石スラリーとは、少なくとも石炭及び/又は鉄鉱石を含むスラリーである。そして、これには、更にコークスやスラグ等の製鉄原料として使用されるものが含まれていてもよい。
【0015】
前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリーとして、上述のとおり、鉱山の現場ヤード;破粉砕等の処理施設;野積み等の貯蔵保管場;ベルトコンベア、船、貨車等の搬送手段;製鉄所等の使用施設等において、鉄鉱石等が水を含むことにより発生するもの等が挙げられる。
例えば、屋外ヤードに野積みされた原料への降雨や粉塵目的の散水等にて、石炭や鉄鉱石、コークス、スラグ等の原料が流出し、排水溝に堆積したもの;原料を搬送するベルトコンベアを洗浄する水を貯留するピットや生産ラインから流出した原料を雨水等によって流れ込ませる沈殿池(ポンド)に堆積したもの;湿式集塵プラントからの回収した堆積物やヤードでの堆積物;屋外ヤードに野積みされた原料をベルトコンベアで搬送する際に粉塵防止目的で散水されて水を含んだもの;乾式集塵プラントからの回収物に水が流されてスラリー化したもの;運搬手段、処理施設、貯蔵管理場所等で管理保管の目的で散水されて水を含んだもの;船内で貯蔵保管目的で水浸させたウェット状態なもの;搬送手段等を水で洗浄し、回収したもの等が挙げられる。
微細な石炭や鉄鉱石等の原料がスラリーとなり易いが、この原料の大きさとして、例えば粒径(最大長径)5mm以下のものが挙げられる。
【0016】
本技術の処理対象である石炭及び/又は鉄鉱石スラリーは、成分に炭成分と鉄成分が含まれることから、保水性がほとんど無いため、一般的な建設工事現場から出る掘削土や泥状土砂とは性状が異なっており、取り扱いが困難であると考えられていたが、本技術にて改質することで取り扱いを容易にすることが可能となった。
【0017】
前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの含水率は、特に限定されないが、10質量%以上のものが好ましく、15~80質量%とするのがより好ましく、更に20~70質量%とするのが好ましい。この含水率は、JIS A1125にて測定することが可能である。
【0018】
本技術に用いる水溶性高分子化合物は、例えば、合成水溶性高分子化合物、半合成水溶性高分子化合物及び天然水溶性高分子化合物等が挙げられる。なお、以下のこれらのものを1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
前記合成水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等の共重合物又はその塩等が挙げられる。この塩としては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0020】
前記半合成水溶性高分子化合物としては、ビスコース、メチルセルロース、カチオン化セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;アルファ化デンプン、カルボキシルデンプン、ジアルデヒドロデンプン、カチオン化デンプン、デキストリン、ブリティッシュゴム等のデンプン誘導体;カチオン化グアーガム、アニオン化グアーガム、メチルグリコールキトサン等が挙げられる。
【0021】
前記天然水溶性高分子化合物としては、デンプン、マンナン、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、ペクチン、デキストラン、ゼラチン、ラムザンガム、ジェランガム等が挙げられる。
【0022】
また、前記水溶性高分子化合物は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の何れでもよい。このうち、魚類への毒性が少ないアニオン性及びノニオン性が好ましく、更にアニオン性が好ましい。
【0023】
前記水溶性高分子化合物のうち、合成水溶性高分子化合物が好ましい。
前記合成水溶性高分子化合物は、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーの1種又は2種以上を構成成分とする単独重合体又は共重合体が好適である。
前記アニオン性基(アニオン性モノマー)としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸(モノマー);スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸(モノマー)等が例示される。
また、前記ノニオン性基(ノニオン性モノマー)としては、例えば、アクリルアミド(モノマー)やメタクリルアミド(モノマー)等が例示される。
【0024】
更に、前記合成水溶性高分子化合物のうち、アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーが好ましい。
前記アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸単重合物、アクリルアミド単独重合物、アクリル酸/アクリルアミド共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、アクリル酸/アクリルアミド/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。このうち、アクリル酸/アクリルアミド共重合物、アクリルアミド単独重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物が、高分子量であるので、好ましい。
前記アクリルアミド系又はアクリル酸系ポリマーの平均分子量は、好ましくは1,000,000~10,000,000、より好ましくは5,000,000~9,000,000(固有粘度法)とするのが好適である。
また、アニオン性高分子の場合、前記アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーを生成する際のアクリル酸単位の含有量は、使用する単量体の全合計量(100モル%)に対して、好ましくは5モル%以上、より好ましくは20~100モル%とするのが好適である。」
「【0026】
前記水溶性高分子化合物の使用量は、前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリー1m3に対し、乾燥物換算で、通常0.1~15kg、好ましくは1~10kgの範囲で添加するのが好適である。この範囲内の使用量であれば、過不足なく前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリーを造粒物化することが可能であり、経済的にも有利である。」
「【0028】
前記水溶性高分子化合物の添加・混合は、適宜行えばよいが、一例として、前記スラリーに、前記水溶性高分子化合物を添加後、通常スラリー1m3あたり0.5~60分間程度混合を行えばよい。更に、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーが油分を含む場合には、前記水溶性高分子化合物を添加後、5~60分放置した後に混合するのが、作業効率向上の点で、好適である。
前記混合(攪拌)を行うことにより、このスラリー中の水分を前記水溶性高分子化合物に含ませつつ、このスラリー中に前記水溶性高分子化合物を分散させる。よって、前記水溶性高分子化合物が、石炭や鉄鉱石の各粒子と架橋し、また水分を拘束する。これにより、流動性が低下した処理物(改質された原料)、すなわち改質物を得ることが可能となる。
前記混合に使用する攪拌機又は混練機については、特に限定されないが、例えば、バックホウ、ユンボー、スタビライザー、二軸ミキサー等の従来の公知のものを使用すればよい。
また、このとき、処理温度は特に限定されないが、常温(5~35℃)程度で行うのが、反応性の点から好適である。」
「【0036】
前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリーを、前記水溶性高分子化合物又は、前記水溶性高分子化合物及び無機金属化合物を添加・混合した後に、一定期間養生することが、乾燥が促進し、軽量化が図れるので、好適である。当該養生期間としては、好ましくは10~150時間、より好ましくは48~120時間とするのが、作業効率の点から、好適である。
【0037】
そして、この状態で安定的な造粒にすることが可能であり、これにより、スラリーが改質され、前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの流動性を低下させることも可能となる。そして得られた改質物の乾燥、養生後の含水率は、流動性を低下させ、また軽量化を図るため、好ましくは、10~40質量%、より好ましくは15~30質量%とするのが好適である。
【0038】
本技術の改質の機構について述べる。
前記石炭及び/又は鉄鉱石、並びにそのスラリーに、本技術の水溶性高分子(好適にはエマルジョン状態)を添加した後に(油分を含むスラリーの場合、好適には添加後放置した後に)、混合・攪拌すると、調湿石炭及び/又は鉄鉱石並びにこのスラリーに含まれる水分を含みながら水溶性高分子物質が、水分の存在下で石炭及び/又は鉄鉱石並びにこのスラリー中に分散する。
この前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリー等の前記対象物には、石炭や鉄鉱石を高濃度に含有しているものの、その後、水の存在下で、水溶性高分子化合物と石炭及び/又は鉄鉱石と架橋し、造粒化が可能である。造粒することで、この粒子中に水分を拘束し、スラリーの流動性が抑制されるようになる。しかも、改質された物はスラリーの塑性流動性の改善によって症状の改質がみられるようになる。スラリーになる前の石炭及び/又は鉄鉱石でも、本技術の水溶性高分子(好適にはエマルジョン状態)を水の存在下で使用することにより、これらの改質ができる。よって、改質された鉄鉱石等は、その後水と接触してもスラリー化が抑制されるので、取り扱いが容易である。
更に、本技術の水溶性高分子化合物の他、無機金属塩を添加攪拌することで、造粒物の自立性を促進させることができる。これにより、より安定的な造粒物となる。」
「【0044】
これに対し、本技術の方法によれば、前記石炭や鉄鋼石、そのスラリーに、セメントや石灰を添加せずとも、製鉄等再利用の際に影響がないかほとんどないような素材(前記水溶性高分子化合物や前記無機金属化合物)を添加し、混合することで流動性の低下し、再利用可能な改質された原料(再利用原料)を得ることが可能となる。すなわち、前記高分子化合物を用いて、石炭及び/又は鉄鉱石、そのスラリーを原料(再利用原料)に製造することも可能である。しかもこの素材は人体に影響の少ないものであることから、攪拌混合中や搬送にアルカリ暴露等の問題もなく、作業効率や安全性も向上する。
【0045】
また、前記石炭や鉄鋼石、そのスラリー(堆積物)は造粒化され、水抜けを促進するので、より乾燥しやすい状態となっている。そして、乾燥に際して改質物の含水率は低くなって軽くなり、この改質物は安定的な造粒状を維持できるため、容易に運搬することでき、また高く山積みできる。
【0046】
以上のとおり、本技術の水溶性高分子化合物は、対象物に水の存在下で添加し、混合することで、石炭及び/又は鉄鉱石の原料を改質すること;石炭及び/又は鉄鉱石スラリーを改質することが可能である。また、本技術の水溶性高分子化合物を使用することで改質された石炭及び/又は鉄鉱石の原料を製造することも可能である。
そして、本技術の水溶性高分子化合物は、石炭及び/又は鉄鉱石原料の改質剤;このスラリーの改質剤等の改質剤(以下、「改質剤」ともいう)を製造するために使用することが可能である。該改質剤には、必要に応じて、無機金属塩、乳化剤、界面活性剤等の任意成分を配合してもよい。この任意成分は、該改質剤の補助剤として使用することが可能であり、該改質剤と同時に又は別々に使用してもよい。なお、これら各剤は、液体、固体、粉末等の何れの状態でもよい。
ここで、本技術の対象物として、例えば、石炭及び/又は鉄鉱石(以下、「鉄鉱石等」ともいう)、含水の鉄鉱石等、及び鉄鉱石等のスラリー等が挙げられ、スラリーになる前のものでもよい。
そして、本技術の石炭及び/又は鉄鉱石の原料の改質方法、該スラリーの改質方法において、上述の水溶性高分子化合物(更に、無機金属塩)を、そのまま又は水溶液にして前記対象物に使用することが可能である。また、上述の水溶性高分子化合物(更に、無機金属塩)を、改質剤として、対象物に使用することも可能である。例えば、本技術の改質剤は、石炭及び/又は鉄鉱石、またそのスラリーに添加・混合することで、より良好な性状(水抜け、軽さ、造粒形状等)の改質物を得ることが可能である。また、処理方法の一例として、鉄鉱石等を、水溶液状態の本技術の改質剤等で処理してもよいし、含水の鉄鉱石等を、粉体状の本技術の改質剤等で処理してもよい。
なお、「本技術の水溶性高分子化合物及びその水溶液、並びに本技術の水溶性高分子化合物を含有する改質剤」を、「本技術の改質剤等」ともいう。」
「【0052】
〔試験例1〕鉄鉱石スラリーの流動性改善確認試験
<実験条件>
JIS R 5201によるセメントの物理性状試験を参考に、改質した湿鉱スラリーの耐振動性を評価するため、テーブルフローの落下衝撃回数をJISが定める15回から、50回まで増やして評価した。また、0回のものも評価した。
1)スラリー0.5Lをモルタルミキサー(容量3L)に投入した。このとき使用したスラリーは、表1に示すものを使用した。
スラリーは、製鉄所で得たスラリー状の堆積物であり、(破砕)鉄鉱石を鉄濃度40~80質量%含むものであり、(破砕)石炭も含まれていた。
【0053】
2)これに、アクリル酸/アクリルアミド共重合物を40質量%含有のアニオン性W/O型エマルジョンポリマーを表2に示す配合量添加し、30秒攪拌した。
ここで、表中の「kg/m3」とは、スラリー1m3に対するアニオン性W/O型エマルジョンポリマーのエマルジョンとしての使用量(kg)である。
また、アクリル酸/アクリルアミド共重合物の固有粘度換算による分子量は、800万であった。また、アクリル酸/アクリルアミド共重合物のアクリル酸単量体のモル%は、35モル%であった。
なお、W/O型エマルジョンポリマー(pH6~8程度)は、公知の手法(例えば特公昭52-039417号公報、特開昭51-41090号公報参照)にて製造でき、具体的には、鉱物油に界面活性剤(転相剤も含む)及びアクリル酸/アクリルアミドの単量体水溶液を添加し、乳化重合によって得ることが可能である。
3)その後、これに、PACを10質量%含有の無機金属塩水溶液を、表2に示す配合量を添加し、30秒間攪拌した。
ここで、表中の「kg/m3」とは、スラリー1m3に対する無機金属塩水溶液の使用量(kg)である。
4)試料を取り出し、JIS R-5201に準拠して、テーブルフロー値(落下衝撃回数:0回)を計測した。
5)テーブルを落下衝撃後のテーブルフロー値を計測した。
【0054】
【表1】
[図:0001396247000001.jpg]
【0055】
【表2】
[図:0001396247000002.jpg]
」
「【0057】
〔試験例2〕石炭スラリーの流動性改善確認試験
製鉄所で得た表3の石炭スラリーを使用し、各測定値は、上述の試験例1に準じて、表4に示す添加量(試験例1と同様のアニオン性W/O型エマルジョンポリマー及び無機金属塩水溶液を使用)にてスラリーの処理を行った。
【0058】
【表3】
[図:0001396247000003.jpg]
【0059】
【表4】
[図:0001396247000004.jpg]
【0060】
試験例2の結果を、表4及び図2に示した。
実験7-12のように、水溶性高分子化合物の添加量の増加に伴い、落下衝撃0回(n=0)のフロー値が小さくなり、スラリー状の流動性が低下、すなわち改善されていくことが認められた。
また、実験8-12は、実験7(無処理:現状処理)と比較し、フロー値は著しく改善されたことが認められた。
実験12にて、落下衝撃0(n=0)及び50回(n=50)のときのテーブルフロー値が110mmを下回った。落下衝撃50回後のテーブルフロー値が110mm以下になると、スラリーだったものが、十分に改質されて、団粒状の形態となり、形態も安定的に維持できることが認められた。
【0061】
〔試験例3〕石炭スラリーの乾燥促進効果確認試験
スラリーは、試験例2(表2)の石炭スラリーを使用した。このとき、試験例1の<実験条件>に準じて、表4に示す添加量(試験例1と同様のアニオン性W/O型エマルジョンポリマー及び無機金属塩水溶液を使用)にて、実験11として、スラリーの処理を行った。
スラリーを、無処理及び改質処理した後、室温(25℃)で放置し、乾燥状態を比較した。
【0062】
【表5】
[図:0001396247000005.jpg]
【0063】
試験例3の結果を、表5及び図3に示した。
実験13及び14のように、改質された物の含水率の低下速度が、無処理のスラリーに比較し、速いことが認められた。すなわち、スラリーを薬剤添加にて改質処理することによって、乾燥促進効果が認められた。」
「【0067】
以上のことから、石炭・鉄鉱石スラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合することによって、スラリーの流動性を低下(改善)させることが可能となることが確認できた。流動性が低下することによって、より高く山積みすることが可能となることが確認できた。
しかも、水溶性高分子化合物を混練した後、更に無機金属塩を混練することによって、より良好な造粒物とすることが可能であることが確認できた。
このように、水溶性高分子化合物を使用するか、又は水溶性高分子化合物及び無機金属塩を併用すれば、スラリー状のものから、良好な造粒物とすることができることが確認できた。そして、油分を含有するスラリーでは、水溶性高分子化合物を添加し、放置させた後に混合すると、放置させずに混合する場合と比較して、改質するまでの混合時間が短くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本技術にて、スラリー(スラリー状の堆積物等)の流動性を低下させると共に造粒化できる。また乾燥促進により軽量化も可能となる。このようなより優れて改質された物を得ることができるので、この改質物をより高く山積みすることも可能であり、処理場所も省スペースで行うことができる。更に、使用する水溶性高分子化合物及び無機金属塩はほとんど無害であるので作業者の安全性を確保しやすく、しかも作業性も向上する。更に、アルミニウムが再利用可能な場合には、製鉄原料として再利用することも可能であり、また廃棄物として処分する場合でも取り扱いが容易である。」
(2) 甲1-1に記載された発明
ア 上記(1)の【0061】では、試験例3について、「スラリーは、試験例2(表2)の石炭スラリーを使用した」とされているが、表2は試験例1の評価結果であるから、該「表2」との記載は「表3」の誤記であると認められる。
イ また、上記(1)の【0061】では、試験例3について、「表4に示す添加量(試験例1と同様のアニオン性W/O型エマルジョンポリマー及び無機金属塩水溶液を使用)にて、実験11として、スラリーの処理を行った」とされているが、「実験11」は、試験例2ですでに行われた実験であって、上記(1)の【0060】で考察されているものであるし、上記(1)の【0062】の表5及び【0063】に記載されているとおり、試験例3では実験13及び実験14を行ったものであるから、当該記載の「表4」は「表5」の誤記であり、「実験11」は「実験13及び実験14」の誤記であると認められる。
ウ ここで、上記アを踏まえると、上記(1)の【0058】の表3より、試験例3で用いる「製鉄所で得た」「石炭スラリー」(上記(1)の【0057】)は、含水率41質量%、汚泥比重1.20である。
エ また、上記イを踏まえると、上記(1)の表5より、試験例3の実験No.14は、処理*1を行ったものであるから、石炭スラリーに対し、A剤であるアニオン性W/O型エマルジョンポリマーを(5kg/m3)を添加し30秒間攪拌、次いでB剤である無機金属塩水溶液を(5kg/m3)添加し、30秒間攪拌したものである(上記(1)の表5の下部参照。)。
オ さらに、上記イを踏まえると、上記(1)の表5より、試験例3の実験No.14は、72時間経過後には、含水率が16.6質量%である。
カ そうすると、甲1-1の試験例3の実験No.14のスラリー改質方法に注目すると、甲1-1(特に、【0057】~【0063】)には、次の発明(以下、「甲1-1発明」)が記載されていると認められる。
「製鉄所で得た、含水率41質量%、汚泥比重1.20である石炭スラリーの改質方法であって、
当該石炭スラリーに対し、A剤であるアニオン性W/O型エマルジョンポリマー5kg/m3を添加して30秒間攪拌、次いでB剤である無機金属塩水溶液5kg/m3を添加し、30秒間攪拌し、
72時間経過後には、含水率が16.6質量%となり、乾燥促進効果が認められる石炭スラリーの改質方法。」
(3) 甲1-2の記載事項
甲1-2には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱石や石炭の如き含水バラ物を貨物船から橋形クレーンやアンローダのグラブバケットまたは連続式アンローダのバケットを使って荷揚げするに当たり、荷揚げ作業時に、湧水中に粉体粒子が懸濁した状態の懸濁湧水が生成した場合に、前記懸濁湧水に対し、高分子凝集剤および水分吸着剤の少なくとも一方を添加することにより、懸濁湧水の湧水と粉体粒子の凝結・凝集および/または懸濁湧水の少なくとも湧水の吸着を起こさせてから、バラ物とともに荷揚げを行なうことを特徴とする含水バラ物の荷揚げ方法。
・・・(略)・・・
【請求項3】
前記懸濁湧水に対して水分吸着剤だけを添加することにより、該水分吸着剤に少なくとも湧水を吸着させてから、バラ物とともに荷揚げすることを特徴とする請求項1に記載の含水バラ物の荷揚げ方法。
【請求項4】
前記水分吸着剤として、高分子吸水剤を用いることを特徴とする請求項1または3に記載の含水バラ物の荷揚げ方法。
【請求項5】
前記水分吸着剤は、懸濁湧水量の0.5超~3.3mass%相当量を添加することを特徴とする請求項1、3または4のいずれか1項に記載の含水バラ物の荷揚げ方法。
・・・(略)・・・
【請求項9】
前記懸濁湧水の発生位置に水分吸着剤を添加すると共に、他の部位のバラ物を混ぜて攪拌してから荷揚げすることを特徴とする請求項1、3、4~6のいずれか1項に記載の含水バラ物の荷揚げ方法。
【請求項10】
前記懸濁湧水発生位置に高分子凝集剤および水分吸着剤を添加して、高分子凝集剤の添加により、凝結粒子、凝集粒子を生成させ、凝結粒子、凝集粒子の生成がない前記懸濁湧水部分の少なくとも湧水を水分吸着剤に吸着させてから、バラ物とともに荷揚げすることを特徴とする請求項1に記載の含水バラ物の荷揚げ方法。
【請求項11】
前記懸濁湧水の発生位置に水分吸着剤を添加し、前記懸濁湧水中の少なくとも湧水を減じた後、高分子凝集剤の添加により、凝結粒子、凝集粒子を生成させ、バラ物とともに荷揚げすることを特徴とする請求項1に記載の含水バラ物の荷揚げ方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含む鉱石や石炭等のバラ物を運搬船やはしけ(艀)などから橋形クレーンやアンローダまたは連続式アンローダのバケットによって、間欠的もしくは連続的に荷揚げする時、湧水が発生することによって起こる荷揚げ障害を解消するために開発された含水バラ物の荷揚げ方法に関するものである。」
「【0007】
そこで、本発明の目的は、含水バラ物の荷揚げの際に不可避的に発生する湧水ならびに懸濁湧水の効果的な処理方法を提案することにある。」
「【発明の効果】
【0010】
前記のような構成を有する本発明方法を採用すれば、貨物船の船倉内で荷揚げの途中に懸濁湧水が発生した場合でも、高分子凝集剤および水分吸着剤の少なくとも一方を添加することにより、湧水と粉体粒子の凝結・凝集をもたらし、および/または少なくとも湧水を該水分吸着剤に吸着(吸水・保水)させてから、固形物(湧水、高分子凝集剤、水分吸着剤、粉体粒子)を、他のバラ物とともに一緒に荷揚げするようにしたため、懸濁湧水のみの汲み揚げ作業を行なう必要がなくなる。
そのため、従来のように荷揚げ作業の中断を招くことなく、連続的な荷揚げ作業を行なうことができるので、荷揚げ作業効率が著しく向上することになる。
【0011】
なおここで、高分子凝集剤だけを用いる場合は、高分子凝集剤と、鉱石の粉体粒子とが反応してサラサラの粒子となるため、付着性をもって原料を混ざり難くするなどの悪影響を排除できる。また、使用量が少なくて済むため、コストが低いなどの利点がある。
この一方で、高分子凝集剤には、含水率に限りがあることに加え、粉体粒子を絡めとり、中に水を取り込むため、バラ物自体の親水性の影響を受け易く、バラ物の種類によって、薬剤使用量を増減させることが必要になる不利がある。
【0012】
これに対し、水分吸着剤だけを用いる場合は、薬剤量を増せば水をいくらでも吸着できるので、吸水量に上限がない利点がある。
しかるに、単価が高く、使用量が多いためコスト高になる他、たとえば高分子吸着剤は、コンベアベルト上で跳ねたり、粉体粒子間に隙間や水の偏在箇所を作ることから、次工程や搬送ラインに悪影響がでるという不利がある。
【0013】
ところで、高分子凝集剤と水分吸着剤を併用したときは、高分子凝集剤で取り込めない範囲の水分を水分吸着剤に吸着させることでバラ物の含水量の上限を高めることができ、水分吸着剤のみを使用する場合に比してコストを低下させることができ、そして、水分吸着剤のみの使用に比して、次工程や搬送ラインへの影響を小さくできる利点がある。」
「【0015】
以下に本発明の実施形態を図面に示すところに基いて説明する。
図1に示すところにおいて、貨物船の船倉(荷室)1に収容されているバラ物2と呼ばる鉱石や石炭(以下、「鉱石類」とも言う)を橋形クレーンやアンローダのグラブバケットを使って荷揚げする場合、一般に、鉱石類堆積層の下層部分には湧水からなる水溜り3が発生する。バラ物2の荷揚げ作業が進み、中層~下層部分に達すると、バラ物堆積層の一部にはグラブバケットによる掴み出し後に窪み4が生じ、その窪み4内に、主に礫状の鉱石類から分離した粉体粒子が分散して懸濁した状態の懸濁湧水Wmが溜まることが知られている。
【0016】
船倉内のバラ物堆積層に前記懸濁湧水Wmが発生すると、荷揚げが進むと共に次第にスラリー化して、アンローダのグラブバケット5などでの荷揚げが困難になる。しかも、一旦、スラリー化したものは、たとえグラブバケット5で掴み得たとしても、アンローダ機内の図示を省略したホッパーやベルトコンベア部分で流出してしまい、アンローダの運転が継続できなくなる。特に、船倉1の底部ではこのような状態になることが多く、荷揚げ作業をしばしば中断して、湧水を汲み揚げることが必要になる。この問題はグラブバケットによる荷揚げに代わり、近年使用されている連続式アンローダのバケットによる荷揚げを行なう場合にも同様である。
図2、7に示すように、連続式アンローダでは船倉1内に垂直支持ビーム部が挿入され、多数のバケット5による連続掘削で荷揚げが行われる。バケット5はチェーンを介して連結されて、油圧シリンダー機構によりスプロケット間の長さ調整によって、船倉1への挿入長さ、掻き取り長さ等の調整ができるようになっており、駆動リンク部では掘削深さ調整が行えるようになっている。また、別途の駆動装置による駆動で、駆動リンク部で掘削量を調整しながらバケット5が、図では反時計回りに回転され、該バケット5により原料表面を掘削して高い作業能率での荷揚げを行なうことができる。掘削したバラ物はバケットエレベータで船外に荷揚げされる。
バラ物堆積層の下層部分には輸送過程においてバラ物から分離して船倉底部に溜まった水溜り3、あるいは雨水により高水分化して溜まった水溜り3が発生する。連続式アンローダによる荷揚げ作業が進み、中層~下層部分に達すると、バラ物堆積層の一部にはバケットによる掘削後に窪み4が生じ、その窪み4内に、懸濁した状態の懸濁湧水Wmが発生する。荷揚げが進むと共に次第にスラリー化して、連続式アンローダのバケット5によっても荷揚げが困難になる。
即ち、一旦、スラリー化したものは、グラブバケットと同様にバケット5により掘削し得たとしても、連続式アンローダ機内のホッパーやベルトコンベア部分で流出してしまい、連続式アンローダであってもその運転が継続できなくなる。
【0017】
そこで本発明では、前記懸濁湧水Wmが発生したとき、前記窪み4内の懸濁湧水Wmに対し、高分子凝集剤および、高分子吸水剤のような水分吸着剤の少なくとも一方を所定量添加し、たとえば、高分子凝集剤で該懸濁湧水(湧水+粉体粒子)中の粉体粒子を絡めとって凝結・凝集させて粒体化させ、また、懸濁湧水Wmを水分吸着剤に吸着(吸水および保水)させた状態でバラ物とともに荷揚げすることにより、荷揚げ作業効率の向上を図るようにした。
即ち、本発明方法に従えば、鉱石類等のバラ物2と共に、凝結・凝集された粒状体および/または懸濁湧水Wmを吸着した水分吸着剤を同時に荷揚げすることができる。
【0018】
図3(a)~(c)は、粉体粒子Pを含む懸濁湧水Wm中に高分子凝集剤Aを添加した状態を示すものである。この添加により、懸濁湧水Wmは図3(b)に示すように、粉体粒子Pの一部が高分子凝集剤Aの分子鎖が枝状に広がったポリマーに絡めとられるようにして凝結し、まず、粒状の小さい凝結粒子6の幾らかを形成する。次いで、時間の経過(荷揚げの進捗)と共に、その凝結粒子6の複数個がやがて凝集(集合)して、図3(c)に示すように、粒径の大きな凝集粒子7へと成長する。
【0019】
この段階になると、懸濁湧水Wmは固形物状態となり、グラブバケット5等によって容易に掴み取り、掻き取り等することができるようになって、懸濁湧水Wm自体もバラ物と共に荷揚げされることになる。
【0020】
図3(d)、(e)は、粉体粒子Pを含む懸濁湧水Wm中に水分吸着剤Bを添加した状態を示すものである。ここでは、懸濁湧水Wmの水は図3(e)に示すように、粉体粒子Pとともに水分吸着剤Bの架橋構造の中に閉じ込められて膨潤した形で粒状化する。
【0021】
即ち、懸濁湧水Wmは、水分吸着剤B中に吸収されて固形物状態(膨潤状態)となるので、その後は、グラブバケット5により、容易に掴み取ることができるようになって、この懸濁湧水Wm自体もバラ物2と共に荷揚げできるようになる。同様にして、連続式アンローダのバケットでも、懸濁湧水Wmをバラ物2とともに掘削できるようになる。
【0022】
本発明の他の実施形態では、前記懸濁湧水Wmに、高分子凝集剤および水分吸着剤の少なくとも一方を添加すると共に、窪み4近傍あるいはその他の部位にある礫状のバラ物2をグラブバケット5を使って加えて、できればさらに攪拌(グラブバケットによる掴み揚げと開放落下とを繰返す操作を)することが、前述の固形物化を促進し、荷揚げ作業の効率化を図る上で望ましい。
なお、連続式アンローダでは、前記懸濁湧水Wmに、高分子凝集剤および水分吸着剤の少なくとも一方を添加すると共に、バケット掘削により発生した窪み4近傍あるいはその他の部位にある礫状のバラ物2をバケットを使って掻き寄せ、できればさらに攪拌(バケットによる掻き寄せ方向の切り替えを繰返す操作を)することが、前述の固形物化を促進し、荷揚げ作業の効率化を図る上で望ましい。
【0023】
本発明で使用する水溶性の高分子凝集剤としては、懸濁湧水にこの薬剤を添加することによって、高分子のもつ静電気力および水素結合によって粉体に吸着活性を生じさせ、粉体間架橋作用を起すことにより、固粒化構造を形成して、凝結粒子を形成させる類のものが使用可能である。例えば、粉末、顆粒状または液状の有機系凝集剤であるポリアクリルアミド系(アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムを共重合したもの)、ポリビニルアミジン系、両性高分子系の凝集剤などは、凝結作用のみならず、凝集作用を発揮するので好ましい。勿論、無機系凝集剤と混ぜて使用してもよい。
また、アクリル酸カチオンポリマー、アクリルアミド系カチオンポリマー、メタクリル酸系ポリマー、メタクリル酸アミノエステルカチオンポリマー、アミジンポリマーなどを使用することもできる。
【0024】
また、水分吸着剤としては、たとえば、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、略してSAP)が使用でき、水分吸収速度が速く、かつ高い吸水性と高い保水性とを具え、しかも一度吸水した水分は外部から多少の力がかかっても水分をほとんど放出しない薬剤、例えば、ポリアクリル酸塩(ナトリウム、カリウム)樹脂などの高分子吸水剤が好適である。この高分子吸水剤は、水分吸収後に、分子構造内に水分を吸着しても粘着性を示さない物性を有し、この意味において、無機系のシリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等も併せて用いることがより好ましい。この水分吸着剤としては、粉状、顆粒状のものが用いられる。
なお、水分吸着剤として粉状、顆粒状のものを用いる理由は、湧水との接触面積を高め、水分吸収速度を速めるためであり、使用時の飛散防止のため微粉状のものは避け、粒径が0.5mm以上、10mm未満のものとする。より好ましくは1mm以上、5mm以下のものを使用する。」
「【実施例4】
【0052】
豪雨時に、連続式アンローダによる荷揚げを継続し、水分過多となった石炭を例にとって以下に説明する。
【0053】
豪雨中も図7に示すような連続式アンロータのバケットによる荷揚げを継続し、荷揚げ作業が進み、荷揚げ後半の下層部分に達する段階で豪雨による高水分化により湧水が観察され始めた、図9(a)に示す状態にある石炭を、実施例1、2、3の鉄鉱石の荷揚げと同様に、運搬船から荷揚げする際、高分子吸水剤であるポリアクリル酸塩樹脂顆粒を懸濁湧水量に対し、1.0~2.0mass%に相当する量を添加した。
この懸濁湧水Wmの量に対する高分子吸収剤の量は、懸濁湧水が、バケットで掘削した後の窪みに発生するため、バケット容量と掘削深さに基づく掘削量から推定し、添加すべき高分子吸収剤の量を決定するという方法で行なった。同様に、重量比として示される数値も、バケット容量と掘削深さに基づく掘削量から推定して行った。
【0054】
次に、船倉内のバラ物堆積層に生じた窪み部分に発生した懸濁湧水Wmに、高分子吸水剤を添加した後、その懸濁湧水周囲の石炭をバケットを使ってその懸濁湧水中に掻き寄せ、バケットを使って掻き混ぜた。即ち、連続式アンローダのバケットにて掻き寄せ方向の切り替えを繰返す操作による攪拌操作により石炭と高分子吸水剤の攪拌を繰り返した後に、荷揚げの作業を継続した。
その結果、懸濁湧水Wmに高分子吸水剤を加えてかき混ぜることによって、懸濁湧水中の粉体粒子と湧水分子を高分子吸水剤によって吸着する作用が促進され、荷揚げが容易になったことが確認できた。
なお、石炭でも鉄鉱石と同様に掻き寄せ方向の切り替えを繰返す攪拌のみでは、高分子吸水剤どうしが集合して大きな塊を作る場合があり、ホッパーで詰り易く、また、高分子吸水剤が分散できても膨潤体は跳ねやすく、輸送中のベルトコンベアからの落下の憂いがあるため、バラ物重量と懸濁湧水を吸水した高分子吸水剤重量との比率を示す粉鉱比(-)を7以上とすることによって、バラ物中に懸濁湧水を吸水した膨潤体(高分子吸水剤)をより分散させた。
【0055】
荷揚げの途中、湧水が観察されたとき、従来は、船底に多量の水が残っていたが、上記の処理によって残湧水も少なくなった。
以上の結果から、従来は、豪雨中では荷揚げを控えていた陸上への荷揚げに際しては、本発明に適合する上記の荷揚げ方法を採用すると、通常時の効率を100%とした時、長時間の豪雨時での荷揚げでも、約95%の効率を達成することができた。
【0056】
なお、実施例2~4とも高分子吸水剤の使用は過少であるので、グラブバケットあるいはバケットを介してベルトコンベアで陸上に荷揚げされた後は、原料ヤードに積み上げられ、そのまま、鉄鉱石は焼結原料として、石炭は、コークス原料として使用可能であった。」
(4) 甲1-2に記載された発明
ア 甲1-2の実施例4の石炭荷揚げ方法に注目すると、甲1-2(特に、【0052】~【0054】、【0056】参照。)には、次の発明(以下、「甲1-2発明」)が記載されていると認められる。
「石炭を、運搬船から荷揚げする際、荷揚げ後半の下層部分に達する段階で豪雨による高水分化により湧水が観察され始めたので、高分子吸水剤であるポリアクリル酸塩樹脂顆粒を懸濁湧水量に対し、1.0~2.0mass%に相当する量を添加し、
次に、船倉内のバラ物堆積層に生じた窪み部分に発生した懸濁湧水Wmに、高分子吸水剤を添加した後、その懸濁湧水周囲の石炭をバケットを使って掻き寄せ、バケットを使って掻き混ぜて、荷揚げの作業を継続し、
その結果、懸濁湧水Wmに高分子吸水剤を加えてかき混ぜることによって、懸濁湧水中の粉体粒子と湧水分子を高分子吸水剤によって吸着する作用が促進され、荷揚げが容易になったことが確認でき、
グラブバケットあるいはバケットを介してベルトコンベアで陸上に荷揚げされた後は、原料ヤードに積み上げられ、そのまま、コークス原料として使用可能である、石炭荷揚げ方法。」
(5) 甲1-3の記載事項
甲1-3には、次の記載がある。
「【0008】
石炭の粒度分布は、下記の理由により、粉コークスに比較して大きく変化する。すなわち、粉コークスも発生設備や発生部位によりその粒度分布は変化するが、焼結鉱凝結材として使用される粉コークスは、高炉に装入される塊コークスの篩下物であることから、その粒度分布の範囲は石炭に比較して狭い。
【0009】
これに対して、石炭は、一般に入荷前には、粒径の大きな塊粒子の除去など、簡易的な整粒が行われるのみであることから、粉コークスに比較すると広い粒度分布範囲を有している。さらに、石炭の入荷時のヤードにおける積み付けは、スタッカーなどにより自然落下させながら行われるため、粗大粒子は積み付けの際に堆積した山の斜面に沿って転がり落ち、堆積した山の裾部分に偏析する傾向が強くなる。すなわち、原料ヤードに積み付けられた山の裾部分には粒度の粗い石炭が堆積し、山の頂点部分には粒度の細かい石炭が堆積することとなる。したがって、石炭の採取位置により、その粒度分布は大きく変動する。また、石炭の水分含有率は、ヤードでの採取位置、降雨の有無などによる影響を受けて大きく変動する。」
(6) 甲1-4の記載事項
甲1-4には、次の記載がある。
ア 「本実施例において、原炭としては、国内外の石炭山元から得られる粒径が20mm~50mm以下の石炭を使用する。この石炭の粒径分布は第2図に示す通りである。
この原料の石炭を、乾式粗粉砕機3によつて通常粒径5mm以下に粗粉砕して第3図に示すように巾の狭い粒径分布の石炭が得られる。更にこれを湿式粉砕機8によつて微粉炭の粒子同志の“いも洗い”状の摩砕を行ない、粒径500μ以下に粉砕して第4図に示すように巾の広い粒径分布の石炭スラリーを得ることができる。このときの粒径分布は、500μ以下のものが100%、1μのものが10~25%の分布となる。
このようにして、第5図に示すように、原炭から乾式粗粉砕を経て、湿式粉砕を行なうことによつて、粒経が1μから500μにわたつて小さい粒子から大きい粒子迄整然とした分布の微粉炭が得られる。この粒径分布によつて、第6図に示すように、スラリーにおいて大小の粒子による最密充填が可能となり、高濃度のスラリーを得ることができる。」(第2頁右下欄第15行~第3頁左上欄第16行)
イ 「
[図:0001396247000006.jpg]
」(第4頁)
(7) 甲1-3及び甲1-4に記載された事項の検討
ア 甲1-3には、「石炭は、一般に入荷前には、粒径の大きな塊粒子の除去など、簡易的な整粒が行われるのみであることから、粉コークスに比較すると広い粒度分布範囲を有している」(上記(5)の【0009】)と記載され、甲1-4には、「原炭としては、国内外の石炭山元から得られる粒径が20mm~50mm以下の石炭を使用する。この石炭の粒径分布は第2図に示す通りである」(上記(6)のア)と記載され、また、甲1-4の第2図より、粒径が50mm程度から1mm以下まで分布していることが看取できる(上記(6)のイ参照。)。
イ そうすると、上記アより、一般に、国内外の石炭山元から得られる石炭は、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有しているといえる。
(8)甲1-6の記載事項
甲1-6には、次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】製鉄原料として使用されるコークスは、原料炭を室炉式コークス炉において乾留して製造される。原料炭が入荷してからコークス炉で乾留されるまでのフローを図4を用いて説明する。原料となる石炭によりコークスの品質(強度、灰分、反応性等)は大きく影響を受けるため、通常複数種類の銘柄の原料炭を配合してコークス炉で乾留している。図4に示すように、原料炭は銘柄毎にストックヤード11で山積み管理され、必要な銘柄の石炭はリクレーマ12で切り出して、輸送コンベア13を経由して配合槽15へ入れられる。配合槽15では各槽は各銘柄毎に単一の石炭が入れられている。
【0003】コークスに要求される品質を満足するべく選ばれた種々の銘柄の石炭はその配合比に応じて配合槽15から切り出されて輸送コンベア16を経由して粉砕機17へ送られる。石炭は粉砕機17で3mm以下が70~80%程度となるように粉砕された後、輸送コンベア18で乾燥機(調湿炭装置)20に送られ、ここで石炭中の水分を調整される。乾燥機20を出た石炭は輸送コンベア21でコークス炉24へ送られ、装炭車23から各炭化室へ装入されて17~21時間程度の乾留操作を受けた後にコークスとなる。
【0004】コークス炉24では石炭の乾留中に発生するコークス炉ガスは煙道25を経て排出され、ガス中のタール分29をタールデカンタ28で除去した後、コークス炉ガス27として送出され、燃料等に使用される。
【0005】ストックヤード11に山積みされた石炭はもともと原産地の気候等や管理状態に応じて、8~13質量%程度の水分を含んでいるのが普通である。さらに、ストックヤード11においても2日から3ヶ月程度は在庫として放置された後に使用されるため、天候等による水分の変動が生じる。特に梅雨期、台風時など大量に降雨がある場合には水分は13質量%を超えるほどに高くなり、また日照による乾燥が進む夏期や降雨量の少ない冬期にはストックヤード11に放置された石炭中の水分が低下する傾向がある。またストックヤード11での山積みの表面部と下層部とでは水分含有量に大きな変動がある場合もある。」
「【図4】
[図:0001396247000007.jpg]
」
(9)甲1-7の記載事項
甲1-7には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
図2は、原料地区における石炭の移動経路を説明する模式図で、石炭aは、石炭ヤードからローダー90により切り出され、定量切出装置(CFW)100まで搬送される。
【0003】
定量切出装置(CFW)100で一定量とされた石炭が砕炭機200に搬送され、その後、コークス炉300に投入される。
【0004】
石炭の石炭ヤードからコークス炉までの移動は全てベルトコンベアによるので、ベルトコンベアは原料設備のほぼ90%を占め、装備数850本、総延長は80kmにも達し、ベルトコンベアからの石炭の落下(以下、落炭)や、発塵は環境防災に大きな影響を与える。」
「【図2】
[図:0001396247000008.jpg]
」
(10)甲1-8の記載事項
甲1-8には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
製鉄所において、製銑地区における石炭(原料)は、例えば、図4に示すように、輸送される。図4は、製銑地区の原料輸送ラインの一例の模式図である。
図4において、石炭aは、石炭ヤードからローダー100により切り出され、ベルトコンベア110を介して定量切り出し装置(CFW)120まで搬送される。
定量切り出し装置120は、複数のホッパー121を備え、各々のホッパー121には、銘柄の異なる石炭aが搬送されるようになっている。そして、各々のホッパー121から切り出された石炭aは、各ホッパー121の下方に設置されている各フィーダーコンベア(ベルトコンベア)122上に落下する。そして、各フィーダーコンベア122上に落下した石炭aは、各フィーダーコンベア122によって搬送されてスケールコンベア(ベルトコンベア)123上に落下し、該スケールコンベア123によって搬送される。
【0003】
次いで、石炭aは、スケールコンベア123からその石炭aの粒度を調整するための砕炭機130のベルトコンベア131上に搬送され、砕炭機130で砕かれた後、下流側のベルトコンベア132を経てコークス炉140へ搬送される。
このような石炭aの輸送工程において、ベルトコンベア110,122,123,131,132から石炭aが落下すると、環境防災に大きな影響を与えることになる。特に、定量切り出し装置120において、各々のホッパー121から石炭aをフィーダーコンベア122上に切り出す際に、フィーダーコンベア122の外側に石炭aがこぼれ出すおそれがある。」
「【図4】
[図:0001396247000009.jpg]
」
(11) 甲1-6~甲1-8に記載された事項の検討
ア 上記(8)によれば、甲1-6には、従来技術として、「原料炭は銘柄毎にストックヤード11で山積み管理され、必要な銘柄の石炭はリクレーマ12で切り出して、輸送コンベア13を経由して配合槽15へ入れられる。配合槽15では各槽は各銘柄毎に単一の石炭が入れられている。コークスに要求される品質を満足するべく選ばれた種々の銘柄の石炭はその配合比に応じて配合槽15から切り出されて輸送コンベア16を経由して粉砕機17へ送られる」(【0002】~【0003】)と記載されており、また、甲1-6の図4より、配合槽15の下方にベルトコンベアからなる輸送コンベア16が配置されていることが看取できる。
イ また、上記(9)によれば、甲1-7には、背景技術として、「図2は、原料地区における石炭の移動経路を説明する模式図で、石炭aは、石炭ヤードからローダー90により切り出され、定量切出装置(CFW)100まで搬送される。定量切出装置(CFW)100で一定量とされた石炭が砕炭機200に搬送され、その後、コークス炉300に投入される」(【0002】~【0003】)と記載されており、また、甲1-7の図2より、定量切出装置(CFW)100が3つのホッパーを備え、その下方にベルトコンベアが配置されていることが看取できる。
ウ さらに、上記(10)によれば、甲1-8には、背景技術として、「製鉄所において、製銑地区における石炭(原料)は、例えば、図4に示すように、輸送される。図4は、製銑地区の原料輸送ラインの一例の模式図である。図4において、石炭aは、石炭ヤードからローダー100により切り出され、ベルトコンベア110を介して定量切り出し装置(CFW)120まで搬送される。定量切り出し装置120は、複数のホッパー121を備え、各々のホッパー121には、銘柄の異なる石炭aが搬送されるようになっている。そして、各々のホッパー121から切り出された石炭aは、各ホッパー121の下方に設置されている各フィーダーコンベア(ベルトコンベア)122上に落下する」(【0002】)と記載されている。
エ そして、上記ア~ウは、従来技術や背景技術としての一般的な技術が記載されているといえるから、上記ア~ウより、原料炭が、配合槽やホッパーである貯蔵設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容されることは、慣用的になされていることであって、周知の事項であるといえる。
(12)甲2-1の記載事項
甲2-1には、次の記載がある。なお、翻訳は当審による。以下、同じ。
「
[図:0001396247000010.jpg]
」
(訳)[0001]本発明は微粉炭の水分を除去する方法に関し、固液分離技術分野に属する。
「
[図:0001396247000011.jpg]
[図:0001396247000012.jpg]
」
(訳)[0005]本発明では微粉炭から水分を除去する方法を提供しており、以下のステップを含むことを特徴としている。
(1)水分を含む微粉炭と吸水性樹脂を混炭機に入れて混合し、両者を十分に接触させて微粉炭中の水分を吸水性樹脂に移す。
(2)選別機によって吸水性樹脂と微粉炭を分離し、含水率が10%以下の微粉炭生成物を得る。
(3)使用後の吸水性樹脂は、脱水して再生し、その中の水分を除去した後、繰り返し使用する。
[0006]上記の手段では、前記吸水性樹脂は高分子吸水性樹脂を指し、さらに、前記吸水性樹脂はポリアクリル酸系吸水性樹脂を指す。
[0007]さらに、前記ポリアクリル酸系吸水性樹脂は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物、ポリアクリル酸-アクリル酸ナトリウム共重合物の中の1種または2種を含む。
「
[図:0001396247000013.jpg]
」
(訳)[0009]上記の手段では、前記微粉炭の粒子径は0.5mmを下回り、前記吸水性樹脂の粒子径は1~10mmである。
「
[図:0001396247000014.jpg]
」
(訳)[0011]本発明の原理は、吸水性樹脂の高い吸水性能を利用して微粉炭の水分を低減させるという目的を達成している。微粉炭の含水率は一般に20~30%であり、吸水性樹脂と微粉炭を混合すると、吸水性樹脂が微粉炭中の水分の一部を吸収し、微粉炭の含水率を10%以下まで引き下げる。吸水性樹脂が微粉炭中の水分を吸収し終わった後は、樹脂と微粉炭の粒子径の差を利用して、振り分け方式で吸水性樹脂と微粉炭を分離する。分離された樹脂は、まず真空吸引濾過または遠心濾過によってその中の大部分の水分が除去され、樹脂中に残った少量の水分が熱乾燥によって二次脱水されることで、樹脂の再生とリサイクルを実現する。
「
[図:0001396247000015.jpg]
」
(訳)[0016]実施例3:
粒子径が0.5mmを下回り、最初の含水率が20%の微粉炭100kgを取り、粒子径1~2.5mmのポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂1kgと微粉炭を混炭機に入れて2.5時間撹拌し、35メッシュの選別機を用いて脱水後の微粉炭と吸水性樹脂を分離し、脱水後の微粉炭を測定すると、残留含水率は8.5%であった。分離後の吸水性樹脂は、真空吸引濡過により45分脱水した後、100~105℃ の条件で熱乾燥を行い、再度脱水して再生させることで、繰り返し使用することができる。
(13)甲2-1に記載された発明
上記(12)の実施例3の脱水方法に注目すると、甲2-1(特に、[0016]参照。)には、次の発明(以下、「甲2-1発明」)が記載されていると認められる。
「粒子径が0.5mmを下回り、含水率が20%の微粉炭100kgを取り、粒子径1~2.5mmのポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂1kgと微粉炭を混炭機に入れて2.5時間撹拌し、35メッシュの選別機を用いて脱水後の微粉炭と吸水性樹脂を分離し、脱水後の微粉炭を測定すると、残留含水率は8.5%である脱水方法。」
(14)甲2-2の記載事項
甲2-2には、次の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1)石炭と吸脱水性重合体とを可及的均一に混合し、石炭中の水分を吸脱水性重合体に吸着させ、次いで上記石炭と吸脱水性重合体とを分離し、回収された吸脱水性重合体については脱水して再使用することを特徴とする石炭の水分低減方法。
(2)石炭と吸脱水性重合体との混合物を貯槽に入れ、この貯槽内に気体を吹込むか通風することにより、石炭中の水分を吸脱水性重合体に移行吸着させる特許請求の範囲第1項記載の石炭の水分低減方法。」
「ところで、コークス原利用石炭中の水分は、石炭ヤード貯炭中に天候の影響を受け一般に7~11重量%の範囲で変動しており、平均的には9重量%程度である。」(第1頁右欄下から4行~最終行)
「本発明で使用する吸脱水性重合体としては、澱粉アクリルニトリルグラフト重合体、ポリアクリル酸ソーダ系重合体、アクリル酸ビニルアルコール重合体、ポリアクリル酸ビニルアルコール重合体、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びその架橋物系重合体並びにアクリルアミド誘導体を主成分とし架橋性モノマーを添加し重合して得られる三次元架橋ポリマー等を挙げることができる。」(第2頁右下欄第14行~第3頁左上欄第1行)
「そして、この吸脱水性重合体は、自重の数十倍から数百倍あり、石炭中の水分を吸着させるために装入炭量の約1重量%程度でよい。」(第5頁左下欄下から2行~右下欄第2行)
(15)甲2-2に記載された発明
上記(14)の石炭の水分低減方法に注目すると、甲2-2(特に、特許請求の範囲、第1頁右欄下から4行~最終行参照。)には、次の発明(以下、「甲2-2発明」)が記載されていると認められる。
「水分が平均的には9重量%程度である石炭と吸脱水性重合体とを可及的均一に混合し、この混合物を貯槽に入れ、石炭中の水分を吸脱水性重合体に吸着させる石炭の水分低減方法。」
(16)甲2-3の記載事項
甲2-3には、次の記載がある。
「
[図:0001396247000016.jpg]
」
(訳)技術分野
本発明は石炭ホッパー設備、特に石炭ホッパーの下部に設置される漏斗足装置に関し、燃料貯蔵技術分野に属する。
背景技術
コークス企業にとって、石炭ホッパーは必要不可欠な貯蔵設備であり、石炭ホッパーの下部には石炭放出漏斗足が設けられており、振動フィーダによって石炭が振り落とされると、漏斗足の下に配設されているベルトコンベアが石炭を運搬する。設備の運行過程では、次のような問題がしばしば発生する。1.漏斗足からの放出がスムーズではないので、人為的に絶え間なく漏斗足を叩いたり、長い鉄パイプで力を込めて漏斗内の石炭を突いたりしなければ、石炭を持続的に落とすことができず、そのために石炭の運搬時間が延びて生産効率が低下し、しかも漏斗足を常に叩くことで、しばらくすると漏斗足が変形したり、設備の他の部位が長期的な振動により損壊したりすることもある。2.ホッパーの下は水溜まりがひどく、工場で水洗された石炭は一般に9~12%の水分を含んでおり、石炭ホッパー内の石炭が含有する水分は、ホッパーの底の漏斗足から滲み出してベルトやその両側まで流れ、ホッパーの下の地面に溜まり、ベルト上にも水が残る。ベルト上面に残った水を排除するために、石炭を運搬していない時に、1時間に一度はベルトを動かして排水を行う必要がある。また、振動フィーダのモータ上に常に水があると、短絡やモータの焼損が生じやすい。3.石炭がベルトに付着しやすい。水分が下に滲み出す過程で、漏斗の底部より上にある石炭が炭泥を形成し、かつ上部からの圧力を受けるので、炭泥が漏斗足から大量に噴出し、ベルトの両側やベルト設備上に飛び散るため、作業員が設備を清掃する労働強度が増してしまう。」(第1/3頁第2~16行)
(17)甲2-3に記載された発明
上記(16)の方法に注目すると、甲2-3(特に、第1/3頁第6~12行参照。)には、次の発明(以下、「甲2-3発明」)が記載されていると認められる。
「石炭ホッパーの下部には石炭放出漏斗足が設けられており、振動フィーダによって9~12%の水分を含んでいる石炭が振り落とされると、漏斗足の下に配設されているベルトコンベアが石炭を運搬する方法。」
7 当審の判断
(1)上記2の(1)について(特許法第36条第6項第2号)
ア 本件訂正により、請求項3において、本件訂正前の「前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物」及び「前記鉱物原料」の「前記」が削除された。
イ よって、請求項3及びそれを引用する請求項4~7に係る発明は、明確となった。
(2)上記2の(2)について(特許法第36条第6項第2号)
ア 本件訂正により、請求項4において、本件訂正前の「前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物」及び「前記鉱物原料」の「前記」が削除された。
イ よって、請求項4及びそれを引用する請求項5~7に係る発明は、明確となった。
(3)上記2の(3)について(特許法第36条第6項第2号)
ア 本件訂正により、請求項5が引用する請求項から、「原料混合物」なる文言が存在しない請求項3、4が削除された。
イ よって、請求項5及びそれを引用する請求項6、7に係る発明は、明確である。
(4)上記3の(1)について(特許法第36条第6項第2号)
ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の「含水率が1~30質量%の湿潤な石炭を含む鉱物原料」とは、(a)混合する前の状態で、「含水率が1~30質量%」であって「湿潤」であるものなのか、(b)混合した後、「鉱物原料中の含水分の少なくとも一部が高吸水性樹脂に吸収され」た状態で、「含水率が1~30質量%」であって「湿潤」であるものなのか、(c)上記(a)及び(b)の両方を含むものであるのかが不明であった。
イ しかしながら、本件訂正により、請求項1、3、4は、「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料」に高吸水性樹脂等を添加して混合することや、上記鉱物原料が貯留設備内に収容されることが明らかになったため、「鉱物原料」について、混合又は収容する前の状態で、「含水率が1~30質量%の湿潤な」ものであることが明確となった。
ウ よって、請求項1、3、4及びそれを引用する請求項5~7に係る発明は、明確である。
(5)上記4の(1)のアについて(特許法第36条第6項第2号)
ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1には、「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な石炭を含む鉱物原料」と記載されていた。
イ そして、本件訂正により、請求項1、3、4には、「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料」と訂正され、上記アの「粒子径が2mm以下であ」る事項、「含水率が1~30質量%」である事項、及び、「湿潤」である事項が、いずれも「鉱物原料」について特定する事項であることが明確となった。
ウ よって、請求項1、3、4及びそれを引用する請求項5~7に係る発明は、明確である。
(6)上記4の(1)のイについて(特許法第36条第6項第2号)
ア 上記(4)と同様の理由により、請求項1、3、4及びそれを引用する請求項5~7に係る発明は、明確である。
(7)上記4の(1)のウについて(特許法第36条第6項第2号)
ア 請求項1、3、4には、「粒子径が2mm以下であって・・・(略)・・・石炭を含む鉱物原料」と記載されている。
イ そして、石炭の粒径の測定は、「JIS M8801:石炭類-試験方法」にあるようにふるい分け法により算出することが技術常識である。
ウ また、体積基準の平均粒子径とすることも普通に行われている。
エ そうすると、請求項1、3、4の「粒子径」は、ふるい分け法によって測定した体積基準の平均粒子径であると考えられる。
オ よって、請求項1、3、4及びそれを引用する請求項5~7に係る発明は、明確である。
(8)上記5の5-1の(1)について(特許法第36条第6項第2号)
ア 請求項1、3、4には、「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料」及び「貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する、水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法」と記載されている。
イ そして、上記アの「鉱物原料」は、上記アの記載のとおり、「粒子径が2mm以下であり、「含水率が1~30質量%」であり、「湿潤」であり、「石炭を含」み、「ベルトコンベアで固形物として搬送可能」であることが特定されているものである。
ウ そうすると、請求項1に「鉱物原料」の形態、及び、石炭の含有割合が特定されていなくても、上記イの各発明特定事項は明確なものであるから、上記アの「粒子径が2mm以下であって、含水率が1~30質量%の湿潤な、石炭を含むベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料」は明確である。
エ そして、上記アの「貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する、水及び/又は鉱物原料の漏出防止方法」との発明特定事項から、本件発明1、3、4は、「貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する」もののみに限られるものである。
オ よって、請求項1、3、4及びそれを引用する請求項5~7に係る発明は、明確である。
カ なお、申立人2は、令和4年6月6日付けの意見書において、次の主張をしている。
「「ベルトコンベアで固形物として搬送可能」とは、どのような場合に「搬送可能」と判断するのかその基準が明確ではありません。すなわち、「ベルトコンベアで固形物として搬送可能」であることを評価する基準としては、鉱物原料の組成、形状及び含水率の他にも、搬送条件及び設備状況等の条件、並びにこれらにおける可能なあるいは不可能を評価する数値的判断基準が必要であるところ、本件特許明細書はそのような条件及び判断基準を一切記載していません。」(第3頁下から6行~最終行)
キ ここで、本件明細書には、次の記載がある。
「【0003】
原料ヤードから搬出された鉱物原料は、貯留設備で一旦保管された後にボイラーやコークス炉など様々な設備に供給される。鉱物原料は、原料ヤードから各設備まで、ベルトコンベヤを乗り継いで移送される。
原料ヤードで鉱物原料の含水率が大きく上昇して泥状の流動物(以下、スラリーという)となった場合には、ベルトコンベヤでの搬送が困難となる。」
「【0005】
また、鉱物原料に含まれる水分が貯留設備の下部に溜まると、その水が貯留設備の下方に配置されたベルトコンベヤ上に落下して、ベルトコンベヤの中央部に水溜まりを形成することもある。鉱物原料の移送時に、貯留設備内の鉱物原料がこの水溜り上に排出されると、鉱物原料が水で滑って搬送ができず、そこに滞留した鉱物原料がベルトコンベアの側部から下方に落下してベルトコンベアのリターン面を損傷する恐れがあった。」
「【0015】
本発明で言う「湿潤な鉱物原料」とは、スラリー状態ではないが、水を含んだ鉱物原料であり、ベルトコンベヤで固形物として搬送可能なものを指す。すなわち、ベルトコンベヤでは搬送困難な、水分が多い泥状又は液状の流動物であるスラリーとは区別される。」
ク ここで、上記キからすると、「ベルトコンベア」(当審注:上記キの「ベルトコンベヤ」も同義であると解される。)とは、「原料ヤードから搬出された鉱物原料は、貯留設備で一旦保管された後にボイラーやコークス炉など様々な設備に供給される」(【0003】)際に、一般的に用いられるベルトコンベヤであると解されるし、特殊な用途に用いることも記載されていないから、その使用方法も鉱物原料を搬送するごく一般的な方法であると解される。
ケ そして、上記アの「ベルトコンベアで固形物として搬送可能な鉱物原料」とは、その文言のとおり、「固形物として搬送可能」であって、上記キからすると、「原料ヤードで鉱物原料の含水率が大きく上昇して泥状の流動物(以下、スラリーという)とな」(【0003】)っておらず、「鉱物原料が水で滑って搬送ができ」(【0005】)ないものでもないと解される。
コ そうすると、上記アの「ベルトコンベアで固形物として搬送可能」とは、上記ク、ケより、鉱物原料の搬送に一般的に用いられるベルトコンベアを用いて、鉱物原料を搬送するごく一般的な方法で、「固形物として搬送可能」であることを意味するといえるから、当該記載は明確である。
サ よって、申立人2の上記カの主張には理由がない。
(9)上記5の5-2の(1)について(特許法第36条第6項第1号)
ア 本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書の記載によれば、「貯留設備で貯留中の鉱物原料が貯留設備から漏出することを防止する方法、及び/又は、貯留設備で鉱物原料を貯留中に貯留設備から水が漏出することを防止する方法、を提供すること」(【0007】)であると認められる。
イ そして、本件発明1、3、4は、「貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する」との発明特定事項を含むものである。
ウ そうすると、本件発明1、3、4は、「貯留設備からの水の漏出及び/又は鉱物原料の漏出を防止する」方法のみに限定されるものであると解されるから、上記アの課題を解決し得るものである。
エ よって、請求項1、3、4及びそれを引用する請求項5~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(10)上記5の5-2の(2)について(特許法第36条第4項第1号)
ア 上記(9)で検討したとおり、本件発明1、3~7は、本件発明の解決しようとする課題を解決し得るものである。
イ よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1、3~7に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(11)上記4の(2)及び上記5の5-1の(3)について(甲1-1を主たる引用例とする特許法第29条第2項)
(11)-1 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は、「鉱物原料に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を添加して混合し、得られた原料混合物を、配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容」するのに対し、甲1-1発明は、「石炭スラリーに対し、A剤であるアニオン性W/O型エマルジョンポリマーを5kg/m3を添加して30秒間攪拌」するものの、当該混合物を、「配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容」するか否かが不明である点。
イ 以下、相違点1について検討する。
ウ 上記6の(11)のエより、原料炭が、配合槽やホッパーである貯蔵設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容されることは、慣用的になされていることであって、周知の事項である。
エ そして、甲1-1には、「石炭及び/又は鉄鉱石スラリーとして、上述のとおり、鉱山の現場ヤード;破粉砕等の処理施設;野積み等の貯蔵保管場;ベルトコンベア、船、貨車等の搬送手段;製鉄所等の使用施設等において、鉄鉱石等が水を含むことにより発生するもの等が挙げられる」(【0015】)と記載されていることから理解できるように、甲1-1発明の「石炭スラリー」となる原料炭は、「貯蔵保管場」で貯蔵保管したり、「ベルトコンベア」で搬送したりするものであるから、甲1-1発明の「石炭スラリー」となる原料炭に対して、同じ「原料炭」に対する技術である、「下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容」するという上記ウの周知技術を適用する動機があるといえる。
オ しかしながら、たとえ、甲1-1発明の「石炭スラリー」となる原料炭に対して、上記ウの周知技術を適用する動機があったとしても、甲1-1発明の「石炭スラリー」とアニオン性W/O型エマルジョンポリマーとを混合した後、得られた混合物を貯留設備に収容する動機がない。
カ したがって、甲1-1発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
キ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明、甲1-2に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(11)-2 本件発明5~7について
ア 請求項5~7は請求項1を引用するものであって、本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、甲1-1発明は本件発明5~7に対し、少なくとも相違点1で相違するものである。
イ そうすると、上記(11)-1で検討した理由と同様の理由により、本件発明5~7は、甲1-1発明、甲1-2に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(12)上記4の(3)及び上記5の5-1の(2)について(甲1-2を主たる引用例とする特許法第29条第2項)
(12)-1 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1-2発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
(相違点2)
「鉱物原料」の「粒子径」について、本件発明1は、「2mm以下であ」るのに対し、甲1-2発明は、「石炭スラリー」の粒子径が不明である点。
イ 以下、相違点2について検討する。
ウ 甲1-2発明は、「運搬船から荷揚げ」し、「陸上に荷揚げされた後は、原料ヤードに積み上げられ、そのまま、コークス原料として使用可能である、石炭荷揚げ方法」についての発明であるから、甲1-2発明の「石炭」は、陸上に荷揚げされ、未処理状態の石炭であると考えられる。
エ 一方、上記6の(7)のイより、国内外の石炭山元から得られる石炭は、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有している。
オ そうすると、上記ウ、エより、甲1-2発明の「石炭」は、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有していると考えられる。
カ そして、上記(7)のエより、本件発明1の「粒子径」は、ふるい分け法によって測定した体積基準の平均粒子径を意味するところ、甲1-2発明において、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有している「石炭」を粒子径2mm以下とする動機がない。
キ したがって、甲1-2発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ク よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-2発明、甲1-2に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(12)-2 本件発明5~7について
ア 請求項5~7は請求項1を引用するものであって、本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、甲1-2発明は本件発明5~7に対し、少なくとも相違点2で相違するものである。
イ そうすると、上記(12)-1で検討した理由と同様の理由により、本件発明5~7は、甲1-2発明、甲1-2に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(13)上記5の5-2の(3)について(甲2-1を主たる引用例とする特許法第29条第2項)
(13)-1 本件発明1について
ア 本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
(相違点3)
本件発明1は、「鉱物原料に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を添加して混合し、得られた原料混合物を、配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容」するのに対し、甲2-1発明は、「アクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂1kgと微粉炭を混炭機に入れて」「撹拌」するものの、この混合物を、「配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容」するか否かが不明である点。
イ 以下、相違点3について検討する。
ウ 上記6の(11)のエより、原料炭が、配合槽やホッパーである貯蔵設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容されることは、慣用的になされていることであって、周知の事項である。
エ しかしながら、甲2-1発明の「微粉炭」に対して、上記ウの周知技術を適用する動機がない。
オ 仮に、甲2-1発明の「微粉炭」に対して、上記ウの周知技術を適用する動機があったとしても、甲2-1発明の「微粉炭」とアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂とを混合した後、得られた混合物を、貯留設備に収容する動機がない。
カ したがって、甲2-1発明において、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
キ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(13)-2 本件発明3について
ア 本件発明3と甲2-1発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
(相違点4)
本件発明3は、「高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と、」「鉱物原料を、配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された前記貯留設備内に、交互に且つ層状に、投入して、前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料とを収容」するのに対し、甲2-1発明は、「ポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂1kgと微粉炭を混炭機に入れて」「撹拌」するものの、「微粉炭」と「ポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂」とを「交互に且つ層状に、投入して、前記高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物と前記鉱物原料とを収容」するものではない点。
イ 以下、相違点4について検討する。
ウ 上記6の(11)のエより、原料炭が、配合槽やホッパーである貯蔵設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容されることは、慣用的になされていることであって、周知の事項である。
エ しかしながら、甲2-1発明の「微粉炭」に対して、上記ウの周知技術を適用する動機がない。
オ 仮に、その動機があったとしても、当該周知技術の貯留設備に、甲2-1発明の「微粉炭」と「ポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂」とを「交互に且つ層状に、投入」する動機がない。
カ したがって、甲2-1発明において、相違点4に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
キ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2-1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(13)-3 本件発明4について
ア 本件発明4と甲2-1発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
(相違点5)
本件発明4は、「配合槽、ホッパー、サイロ、及びバンカーの少なくともいずれかである貯留設備であって、下方にベルトコンベアが配置された前記貯留設備に、高吸水性樹脂及び/又は水溶性高分子化合物を投入し、続いて、」「鉱物原料を添加する」するのに対し、甲2-1発明は、「ポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂1kgと微粉炭を混炭機に入れて」「撹拌」するものの、貯留設備に、「ポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂」を投入し、続いて、「微粉炭」を添加するものではない点。
イ 以下、相違点5について検討する。
ウ 上記6の(11)のエより、原料炭が、配合槽やホッパーである貯蔵設備であって、下方にベルトコンベアが配置された貯留設備に収容されることは、慣用的になされていることであって、周知の事項である。
エ しかしながら、甲2-1発明の「微粉炭」に対して、上記ウの周知技術を適用する動機がない。
オ 仮に、その動機があったとしても、貯留設備に、先に「ポリアクリル酸-アクリルアミド共重合物吸水性樹脂」を投入し、続いて、「微粉炭」を添加する動機がない。
カ したがって、甲2-1発明において、相違点5に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
キ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲2-1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(13)-4 本件発明5~7について
ア 請求項5~7は請求項1、3、4を引用するものであって、本件発明5~7は、本件発明1、3、4のいずれかの1つの発明特定事項を全て有するものであるから、甲2-1発明は本件発明5~7に対し、少なくとも相違点3~5のいずれかで相違するものである。
イ そうすると、上記(13)-1~(13)-3で検討した理由と同様の理由により、本件発明5~7は、甲2-1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(14)上記5の5-2の(4)について(甲2-2を主たる引用例とする特許法第29条第2項)
(14)-1 本件発明1、3、4について
ア 本件発明1、3、4と甲2-2発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
(相違点6)
「鉱物原料」の「粒子径」について、本件発明1、3、4は、「2mm以下であ」るのに対し、甲2-2発明は、「石炭」の粒子径が不明である点。
イ 以下、相違点6について検討する。
ウ 甲2-2には、「コークス原利用石炭中の水分は、石炭ヤード貯炭中に天候の影響を受け一般に7~11重量%の範囲で変動しており、平均的には9重量%程度である」(第1頁右欄第17~20行)と記載されているように、甲2-2発明の「石炭」は、石炭ヤードで貯炭され、コークス炉に装入される前のものであると考えられる。
エ 一方、上記6の(7)のイより、国内外の石炭山元から得られる石炭は、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有している。
オ そうすると、上記ウ、エより、甲2-2発明の「石炭」は、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有していると考えられる。
カ そして、上記(7)のエより、本件発明1、3、4の「粒子径」は、ふるい分け法によって測定した体積基準の平均粒子径を意味するところ、甲2-2発明において、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有している「石炭」を粒子径2mm以下とする動機がない。
キ したがって、甲2-2発明において、相違点6に係る本件発明1、3、4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ク よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1、3、4は、甲2-2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(14)-2 本件発明5~7について
ア 請求項5~7は請求項1、3、4を引用するものであって、本件発明5~7は、本件発明1、3、4のいずれかの1つの発明特定事項を全て有するものであるから、甲2-2発明は本件発明5~7に対し、少なくとも相違点6で相違するものである。
イ そうすると、上記(14)-1で検討した理由と同様の理由により、本件発明5~7は、甲2-2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(15)上記5の5-2の(5)について(甲2-3を主たる引用例とする特許法第29条第2項)
(15)-1 本件発明1、3、4について
ア 本件発明1、3、4と甲2-3発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
(相違点7)
「鉱物原料」の「粒子径」について、本件発明1、3、4は、「2mm以下であ」るのに対し、甲2-3発明は、「石炭」の粒子径が不明である点。
イ 以下、相違点7について検討する。
ウ 甲2-3には、「コークス企業にとって、石炭ホッパーは必要不可欠な貯蔵設備であり、」(第3頁第6行)と記載されているように、甲2-3発明の「石炭」は、コークス炉に装入される前後のものであると考えられる。
エ 一方、上記6の(7)のイより、国内外の石炭山元から得られる石炭は、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有している。
オ また、申立人2も、特許異議申立書第39頁第16行において、甲2-3は、「特別な石炭を用いていない」旨述べている。
カ そうすると、上記ウ~オより、甲2-3発明の「石炭」は、50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有していると考えられる。
キ そして、上記(7)のエより、本件発明1、3、4の「粒子径」は、ふるい分け法によって測定した体積基準の平均粒子径を意味するところ、甲2-3発明において、概ね50mm程度~1mm以下の広い粒度分布を有している「石炭」を粒子径2mm以下とする動機がない。
ク したがって、甲2-3発明において、相違点7に係る本件発明1、3、4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ケ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1、3、4は、甲2-3発明、甲2-1に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(15)-2 本件発明5~7について
ア 請求項5~7は請求項1、3、4を引用するものであって、本件発明5~7は、本件発明1、3、4のいずれかの1つの発明特定事項を全て有するものであるから、甲2-3発明は本件発明5~7に対し、少なくとも相違点7で相違するものである。
イ そうすると、上記(15)-1で検討した理由と同様の理由により、本件発明5~7は、甲2-3発明、甲2-1に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
8 むすび
以上のとおり、本件の請求項1、3~7に係る特許は、令和4年7月4日付け取消理由通知書に記載した取消理由(決定の予告)、同年2月7日付け取消理由通知書に記載した取消理由(決定の予告)、令和3年9月21日付け取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1、3~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件の請求項2は、本件訂正により削除されたから、本件の請求項2に係る特許に対して、申立人1、2がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在せず、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700422