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特許拒絶査定不服審判

2021-016874

コンクリート打継部の評価方法および評価装置

審判番号
2021-016874
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-022921外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月07日
審決日
2023年04月10日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (E04G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 22921「コンクリート打継部の評価方法および評価装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-133102〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成31年2月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 1月27日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 8月31日付け:拒絶査定(同年9月7日送達)
令和 3年12月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 5月13日 :上申書の提出
令和 4年 9月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 4年11月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年11月28日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 1月27日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和5年1月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)についてみれば、その記載は以下のとおりである。

「【請求項1】
打継対象のコンクリートと同一組成で打設された試験体の表面の面粗さを示す試験体面粗さパラメータと、表面に新たなコンクリートが打設された前記試験体の特性を示す試験体特性パラメータとの相関関係を示す試験体情報を取得するステップと、
前記打継対象のコンクリートの表面であって新たなコンクリートが打設されるコンクリート打継部の3次元形状を示す3次元情報を、物体の外観を撮像して物体の形状に対応する前記3次元情報を出力する3次元スキャナにより取得するステップと、
前記3次元情報に基づいて、前記コンクリート打継部の面粗さを示す打継部面粗さパラメータを算出するステップと、
前記試験体情報と前記打継部面粗さパラメータとの関係を示す評価画像を表示するための評価画像データを生成するステップと、
前記評価画像データを出力するステップと、
を含み、
前記複数の試験体のそれぞれの表面は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水による洗浄のみにより形成された3次元形状を有し、
前記試験体特性パラメータは、表面にコンクリートが打設された前記試験体の曲げ強度を示す曲げ強度パラメータであり、
前記打継部面粗さパラメータおよび前記試験体面粗さパラメータは、界面の展開面積比である、コンクリート打継部の評価方法。」

第3 当審拒絶理由の概要

当審が通知した令和4年11月28日付け拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

(進歩性)令和4年11月4日提出の手続補正書による補正後の本願請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明と引用文献2ないし5に記載された周知技術に基いて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開平11-336017号公報

引用文献2.米国特許出願公開第2018/0313647号明細書

引用文献3.特開2006-28996号公報

引用文献4.特開2015-175160号公報

引用文献5.表面粗さ測定入門面粗さ編、株式会社キーエンス、日本、2013年掲載、第1-2、7-17頁

第4 引用文献の記載

1.引用文献1には次の記載がある。

ア.「【0009】以下、本発明に係る表面処理形状評価システムについて説明する。図4は本発明の実施の形態の一例を示す表面処理形状評価システムの概略構成図であり、表面処理後の既設コンクリート表面1の凹凸量を所定のピッチで測定する測定装置10と、測定装置10による測定値に基づいて表面処理形状を評価する評価装置20と、評価装置20に操作指示や各種値を入力するための操作ユニット30と、評価装置20から出力される各種情報をCRT画面などに表示する表示装置40と、上記各種情報を必要に応じて印刷するためのプリンタ50とからなるシステム構成を示している。測定装置10は、既設コンクリート表面1の凹凸量を測定する超高精度のレーザ変位計11と、このレーザ変位計11を保持して水平方向(図中XY方向)に一定速度で移動させる図示しない移動機構とを備えている。レーザ変位計11は、既設コンクリート表面1に向けて極短いパルス幅でレーザ光を出射するレーザ発振器(LD)12と、既設コンクリート表面1からの反射レーザ光を検知する受光素子(PD)13とを備え、レーザ光が出射されてから戻ってくるまでの時間により凹凸量を測定する反射型レーザ変位計である。そして、測定装置10は、レーザ変位計11を作動させた状態でこれを移動機構によりX及びY方向に移動させることにより、図5に示すように、所定面積Lx ×Ly (例えば、Lx ×Ly =50cm×50cm)の測定範囲

Rを所定のピッチpx 、py (例えば、px =2mm、py =2mm)でマトリクス状に走査して測定を行い、測定データを順次測定装置10へ送信する。評価装置20は、CPU21と、このCPU21が実行すべき制御プログラムが格納されているプログラムROM22と、予め試験測定により得た理想的な表面処理形状の特徴量、すなわち凹凸量の平均値のデータ及び標準偏差値のデータが保存されているデータROM23と、CPU21が各種処理を実行する際にワーキングエリアとして使用するRAM24と、この評価装置20と外部装置とを相互接続するインタフェース部(I/F)25~28と有している。

【0010】データROM23には、既設コンクリートに含ませる骨材の粒径の平均値(以下、平均粒径という。)を様々に変えて既設コンクリートと新設コンクリートとの付着強度を測定したときに得られた理想的な表面処理形状の特徴量、すなわち凹凸量の平均値のデータ及び標準偏差値のデータがそれぞれ骨材の各平均粒径に対応させて保存されている。CPU21は、操作ユニット30からの指示に応じてこの表面処理形状評価システム全体を統括制御するとともに、測定装置10から順次送られてくる測定範囲R全体の測定データを集計し、当該測定範囲Rにおける既設コンクリート表面1の表面処理形状の特徴量、すなわち凹凸量の平均値と標準偏差値とを算出してRAM24の所定の記憶エリアに一時保存する。そして、操作ユニット30から評価対象の既設コンクリートに含まれている骨材の平均粒径が入力されて評価実行指示がなされると、その入力された平均粒径と対応する理想値としての凹凸量の平均値及び標準偏差値をデータROM23から読み出し、RAM24に保存されている測定値としての凹凸量の平均値及び標準偏差値とそれぞれ比較する。そして、理想値と測定値との差を評価結果として表示装置40に表示させる。表示装置40の表示内容は操作ユニット30からの指示により変更することができ、評価結果と共に各種集計結果を表示したり、各測定点での凹凸量を表示したり、例えば図9~図14に示すように凹凸量の

頻度分布をグラフ化して表示したり、更にはデータROM23に保存されているデータを一覧表示したりすることもできる。また、必要があれば、評価結果や各種集計結果等をプリンタ50により紙に印刷して保管することもできる。

【0011】以上のように、この実施の形態の表面処理形状評価システムでは、表面処理形状を評価すべき既設コンクリート表面1に測定装置10を設置してその凹凸量を測定するだけで、測定値の集計処理、表面処理形状の特徴量算出処理、及び算出された特徴量と予め求めておいた理想的な表面処理形状の特徴量との比較処理が評価装置20によって順次実行され、評価結果が表示装置40に表示されるので、補修工事現場において既設コンクリートの表面処理形状の評価を短時間で正確に行うことができる。なお、上記の実施の形態では、評価対象である既設コンクリート表面の凹凸量の平均値及び標準偏差値と予め求めておいた理想的な表面処理形状の特徴量との差を評価結果として表示するようにしたが、これに限らず、例えば、平均値に関しても標準偏差値に関しても理想値と測定値との差が予め設定された許容値以下のとき、既設コンクリート表面が理想的な表面処理形状になっている旨を表示するようにしてもよい。また、既設コンクリートの骨材の平均粒径に対応させたデータだけでなく、既設コンクリートのモルタルなどのその他の材料や、新設コンクリート舗装材などにも対応させた詳細な条件別データをデータROM23に保存しておき、操作ユニット30により指定された詳細な条件に対応する理想値を用いて評価処理を行うようにすれば、より正確に評価を行うことができる。また、骨材の平均粒径がどの評価対象によってさほど

変わらない場合には、データROM23に必ずしも凹凸量の平均値のデータ及び標準偏差値のデータと骨材の平均粒径とを対応させて保存しておく必要はない。」

イ.「【0013】

【実施例】次に、表面処理形状評価システムについてより具体的に説明する。

[表面処理形状の把握]新旧コンクリートの界面には引張応力及びせん断応力が同時に作用し、新設コンクリートが剥離しないためにはこれらの発生応力に対し十分な強度を有することが大切である。そこで、界面における十分な付着強度を得られる表面処理形状を把握するために、引張強度に着目し、既設コンクリート表面に異なる表面処理方法により複数種類の表面処理形状を作成し、現場において引張試験を実施した。表面処理のバリエーションには、ウォータージェット処理、ショットブラスト処理、及びはつり機による切削処理を単独あるいは併用したものを採用した。諸元は表1に示すとおりである。既設コンクリート表面の50cm×50cmの範囲を3カ所づつ各表面処理方法により処理し、その上に引張試験用供試体を打ち継ぐ前に、レーザ変位計を用いた測定装置により表面処理後の既設コンクリート表面の凹凸量を測定した。測定により得られた表面処理形状の一例を図6に示す。測定のピッチは0.2mm、測定距離は50cmとし、計20測線について測定を行った結果である。

【0014】

【表1】

[図:0001398741000001.jpg]

[引張試験方法及び使用材料]図7に引張試験装置の構成を示す。この引張試験装置60は、測定対象である既設コンクリート表面1上に設置される自立式の載荷フレーム61と、載荷フレーム61上に固定されたセンターホールジャッキ62と、センターホールジャッキ62を駆動するロードセル63と、センターホールジャッキ62により保持されて上下に移動されるPC鋼棒64とで概ね構成されており、PC鋼棒64の下端部分を試供体65内に埋め込んだ試供体65を既設コンクリート表面1の処理面1a上に形成した後、センターホールジャッキ62でPC鋼棒64を緊張することにより引張試験を行う。上記引張試験装置60を使用し、直径20cm、高さ60cmの円柱状の供試体64に対して引張試験を実施した。試験に用いたコンクリートは、普通ポルトランドセメントを使用し、水セメント比39%、スランプ6~7cm、設計曲げ強度50kgf/c 、粗骨材最大粒径40mmとした。コンクリート打設前に処理面1aをワイヤーブラシ等で清掃し、各処理面1aに6体の供試体64を作成してそれぞれに対して引張試験を行った。

【0015】[引張試験結果及び考察]図8に表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さと付着強度との関係を示す。この図から適度な深さを有した表面処理形状であれば、高い付着強度を得ることができ、ウォータージェット処理を用いた工法が非常に有効であることが判る。また、粗骨材の最大粒径が40mmの場合、十分な付着強度である20kgf/cm2以上の付着強度を得るためには、凹凸の平均深さを約5.2mm~13.0mmの範囲とする必要があることが判る。この範囲は、粗骨材の最大粒径に対する割合に直すと13%~32.5%になる。(請求項4に対応)

図9~図14に各工法における凹凸高さの頻度分布を示す。これらは前述のレーザ変位計を用いた測定装置により測定された結果である。全表面処理形状について、凹凸の高さの分布がある程度バラつき、分布形状のすそ野が広がったものと凹部と凸部の差が小さく0mm近辺に分布が偏ったものとを比較すると、前者に属するものの方が高い付着強度を得られる結果となった。ウォータージェットを用いた工法は全て、前者に属する分布形状を示している。この結果から、付着型オーバーレイ工法に採用する表面処理工法としては、ウォータージェット処理後の表面にショットブラスト処理を施す工法が好ましく、その中でもF4工法が最も好ましいことが判る。

【0016】図15に各工法による凹凸量の平均値と引張強度との関係を、図16に各工法による凹凸量の標準偏差値と引張強度との関係を、図17に各工法による凹凸部の平均斜長と引張強度との関係を、図18に各工法による平均凹凸と引張強度との関係をそれぞれ示す。これらは前述のレーザ変位計を用いた測定装置による測定値を各工法毎に集計しそれぞれプロットしたものである。なお、凹凸量の平均値とは、所定の水準点(凹凸量=0)より高い値を正の値として測定し、低い値を負の値として測定したときの処理面1a全体の平均値である。平均斜長とは、凸部の先端から凹部の底面までの表面に沿った長さを処理面1a全体に亘って算出平均した値である。平均凹凸とは、凸部の先端から凹部の底面までの深さを処理面1a全体に亘って算出平均した値である。上記の何れの関係からも、付着型オーバーレイ工法に採用する表面処理工法としては、ウォータージェット処理後の表面にショットブラスト処理を施す工法が好ましく、その中でもF4工法が最も好ましいことが判る。図19に各工法による凹凸部の斜長比と引張強度との関係を示す。この測定結果から、十分な付着強度である20kgf/cm2以上の付着強度を得るためには、斜長比が1.3以上でなければならないことが判る。(請求項5に対応)

図20に各工法により処理した既設コンクリート表面における2mm未満の高さの凹凸の割合と引張強度との関係を示す。また、図21は引張強度試験を行った結果20kgf/cm2以上の引張強度が得られた場合における凹凸の高さの工法別累積頻度分布を示したものである。これらの測定結果から、十分な付着強度である20kgf/cm2以上の付着強度を得るためには、2mm未満の高さの凹凸が処理表面全体の凹凸のうちの14%以上を占めなければならないことが分かる。(請求項6に対応)

そこで本発明では、試験的に表面処理形状を少しずつ異ならせた既設コンクリートに新設コンクリート(供試体)を打ち継ぎ、引張試験などによりそれぞれの付着強度を計測して理想的な表面処理形状を特定し、その表面処理形状の特徴量として、凹凸量の平均値、標準偏差値、平均斜長、斜長比などを算出し、算出結果を理想値として評価装置のデータROMなどに予め保存しておく。そして、データROMに保存されている理想値と工事現場において測定した測定値とを比較することにより、工事現場における既設コンクリート表面の表面処理形状を評価する。したがって、データROMに保存されている理想値と現場で得られた測定値とが一致乃至近い値になるように既設コンクリート表面に処理を施した後、新設コンクリートを打ち継ぐことにより、既設コンクリートに対する新設コンクリートの十分な付着強度が得られる。」

ウ.図8は次のものである。

【図8】

[図:0001398741000002.jpg]

エ.上記ウ.からみて、図8は、表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さを第1軸とし、付着強度を第2軸として試験結果を散布図とし、散布図から得られる近似曲線により表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さと付着強度との関係を示していることが看取できる。

オ.上記ア.ないしエ.より、引用文献1には、表面処理形状評価装置及び同システムを用いた表面処理形状評価方法が開示されているといえる。

カ.以上を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)

「表面処理後の既設コンクリート表面の凹凸量をレーザ変位計を作動させた状態でこれを移動機構によりX及びY方向に移動させることにより所定のピッチで測定する測定装置と、測定装置による測定値に基づいて表面処理形状を評価する評価装置と、評価装置に操作指示や各種値を入力するための操作ユニットと、評価装置から出力される各種情報をCRT画面などに表示する表示装置と、上記各種情報を必要に応じて印刷するためのプリンタとからなる表面処理形状評価システムを用いた表面処理形状評価方法であって、
評価装置は、CPUと、このCPUが実行すべき制御プログラムが格納されているプログラムROMと、予め試験測定により得た理想的な表面処理形状の特徴量、すなわち凹凸量の平均値のデータ及び標準偏差値のデータが保存されているデータROMと、CPUが各種処理を実行する際にワーキングエリアとして使用するRAMと、この評価装置と外部装置とを相互接続するインタフェース部(I/F)と有しており、
データROMは、既設コンクリート表面に異なる表面処理方法により複数種類の表面処理形状を作成し、また、既設コンクリートに含ませる骨材の粒径の平均値(以下、平均粒径という。)を様々に変えて既設コンクリートと新設コンクリートとの引張試験などによる付着強度を測定して表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さを第1軸とし、付着強度を第2軸として試験結果を散布図とし、散布図から得られる近似曲線により表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さと付着強度との関係を示しており、得られた理想的な表面処理形状の特徴量、すなわち凹凸量の平均値のデータ及び標準偏差値のデータがそれぞれ骨材の各平均粒径に対応させて保存されており、
CPUは、測定装置から順次送られてくる測定範囲全体の測定データを集計し、当該測定範囲における既設コンクリート表面の凹凸量の平均値と標準偏差値とを算出してRAMの所定の記憶エリアに一時保存し、
操作ユニットから評価対象の既設コンクリートに含まれている骨材の平均粒径が入力されて評価実行指示がなされると、その入力された平均粒径と対応する理想値としての凹凸量の平均値及び標準偏差値をデータROMから読み出し、RAMに保存されている測定値としての凹凸量の平均値及び標準偏差値とそれぞれ比較し、理想値と測定値との差を評価結果として表示装置に表示させるが、表示装置の表示内容は操作ユニットからの指示により変更することができるものであり、
既設コンクリートの骨材の平均粒径に対応させたデータだけでなく、既設コンクリートのモルタルなどのその他の材料や、新設コンクリート舗装材などにも対応させた詳細な条件別データをデータROMに保存しておき、操作ユニットにより指定された詳細な条件に対応する理想値を用いて評価処理を行うようにすれば、より正確に評価を行うことができるものである、
表面処理形状評価システムを用いた表面処理形状評価方法。」

2.引用文献2には次の記載がある。

ア.「[0033] In some embodiments, system 100 for measuring surface features may include pattern projector 110, at least one digital imaging device 120, and image processing device 130. The pattern projector may project, during use, pattern of light 140 on surface 150 of object 160. At least one of the digital imaging devices may record, during use, at least one image of the projected pattern of light. In some embodiments, at least one of the digital imaging devices may include one or more digital cameras. The image processing device which, during use, converts projected patterns of light recorded on at least one of the images to three-dimensional data points representing a surface geometry of the object using relative positions and relative angles between the at least one imaging device and the pattern projector.」

(当審訳:[0033]いくつかの実施形態では、表面の特徴を測定するためのシステム100は、パターンプロジェクタ110と、少なくとも1つのデジタル画像形成装置120、及び画像処理装置130を含むことができる。パターンプロジェクタは、使用時において、物体160の表面150に光のパターン140を投影することができる。デジタル撮像装置の少なくとも1つは、使用時において、投影された光のパターンの少なくとも1つの画像を記録することができる。いくつかの実施形態では、デジタル撮像装置の少なくとも1つは、1つまたは複数のデジタルカメラを含むことができる。画像処理装置は、使用時において、少なくとも1つの画像上に記録された投影された光のパターンを、少なくとも1つの画像装置とパターンプロジェクタの相対位置と相対角度を用いて対象物の表面形状を示す3次元データの点に変える。)

イ.以上を総合すると、引用文献2からみて次の技術事項は周知(以下「周知技術1」という。)である。

(周知技術1)

「パターンプロジェクタとデジタル撮像装置と画像処理装置を含む、
表面の特徴を測定するためのシステムにおいて、
パターンプロジェクタは、物体の表面に光のパターンを投影することができ、
デジタル撮像装置は、投影された光のパターンの画像を記録することができ、
画像処理装置は、画像上に記録された光のパターンを、対象物の表面形状を示す3次元データの点に変える、
表面の特徴を測定するためのシステム。」

3.引用文献3には次の記載がある。

ア.「【0014】

3)打継ぎ部の強度試験

打継ぎ部の強度試験は、断面10×10cm、長さ40cmの試験体を用い、図4に示すような2点載荷の曲げ試験により行った。試験体は図4に示すように、先打ちコンクリート1を長さ方向に20.5mmまで打設した後、実施例1および比較例1では、打継ぎ面3に凝固遅延剤を塗布し、材齢2日後に、打継ぎ部分のモルタル層を洗い出し、残りの部分に後打ちコンクリート2を打設し一体化した。比較例2では洗い出しは行わず後打ちコンクリート2を打設した。

材齢28日経過後、曲げ試験を行い、曲げ強度より一体性を評価した。

試験結果を表3に示す。」

イ.以上より、引用文献3からみて次の技術事項は周知(以下「周知技術2」という。)である。

(周知技術2)

「打継ぎ部の強度試験が曲げ試験によって行われること。」

4.引用文献4には次の記載がある。

ア.「【0002】

一般的なコンクリートを打ち継ぐ場合やコンクリート製品同士をコンクリートで接合(接着)する場合、コンクリートの表面に凹凸を設けて接合面(接着面)の付着力を向上させることがある。また、コンクリートの打込み後、目粗しという作業を行って接合面の付着力を向上させる場合もある。目粗しは次のようにして実施される。まず、コンクリートの打込み後、型枠面や打設面に遅延剤を塗布する。コンクリートの硬化後、高圧洗浄機等でレイタンスを除去し粗骨材を洗出して接合面の付着力を向上させる。」

イ.以上より、引用文献4からみて次の技術事項は周知(以下「周知技術3」という。)である。

(周知技術3)

「接合面の付着力を向上させるために、コンクリートの打込み後、型枠面や打設面に遅延剤を塗布し、コンクリートの硬化後、高圧洗浄機等でレイタンスを除去し粗骨材を洗出すること。」

5.引用文献5には次の記載がある。

ア.「加工部品等の表面には、高さ、深さ、間隔の異なる山、谷が連続する複雑な形状が存在し、これら深さに比べて比較的小さい間隔で現れる表面のでこぼこを表面粗さと言います。」(第2頁第1~3行)

イ.「ISO 25178表面性状(面粗さ測定)は、表面粗さの評価方法を定めた国際規格です。」(第2頁第15~16行)

ウ.「ISO 25178表面性状の各カテゴリーには、次のような評価パラメーターが定義されています。」(第7頁第16~17行)

エ.第7~8頁には次の表がある。

[図:0001398741000003.jpg]

[図:0001398741000004.jpg]

オ.上記ウ.を踏まえると、上記エ.の表より、表面粗さの評価方法として、「 界面の展開面積比」、「コア部のレベル差」、「5点谷領域深さ」を用いることが看取される。

カ.以上より、引用文献5からみて次の技術事項は周知(以下「周知技術4」という。)である。

(周知技術4)

「表面粗さの評価方法として、界面の展開面積比、コア部のレベル差、5点谷領域深さを用いること。」

第5 対比・判断

1.対比

本願発明と、引用発明とを対比する。

なお、本願発明における「前記複数の試験体」は明細書の記載を参酌し、「複数の前記試験体」の明らかな誤記として、以下対比・検討を行う。

(ア)引用発明の「予め試験測定により得た」「凹凸量の平均値のデータ」の「予め」行われる「試験」は引用文献1の【0013】、【0014】に記載されている。ここで【0013】を参照すると、[表面処理形状の把握]として「表面処理後の既設コンクリート表面の凹凸量を測定した」とあるから、引用発明の「予め試験測定により得た」「凹凸量」は、「表面処理後の既設コンクリート表面の凹凸量」である。

また、技術常識からみて、「凹凸量」は「凸部の先端から凹部の底面までの深さ」である。

したがって、引用発明の「予め試験測定により得た」「凹凸量の平均値のデータ」は「表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さ」である。

(イ)引用発明の「予め試験測定により得た」「凹凸量の平均値のデータ」すなわち「表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さ」、「既設コンクリート」、「既設コンクリート」に「新設コンクリート」が付着したもの、「既設コンクリートと新設コンクリートとの引張試験などによる付着強度」、「凹凸量を所定のピッチで測定する測定装置」及び「評価方法」は、本願発明の「試験体面粗さパラメータ」、「試験体」、「表面に新たなコンクリートが打設された前記試験体」、「表面に新たなコンクリートが打設された前記試験体の特性を示す試験体特性パラメータ」、「3次元スキャナ」及び「評価方法」にそれぞれ相当する。

(ウ)上記(ア)より、引用発明の「既設コンクリートと新設コンクリートとの引張試験などによる付着強度を測定して表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さと付着強度との関係を取得」することは、本願発明の「試験体の表面の面粗さを示す試験体面粗さパラメータと、表面に新たなコンクリートが打設された前記試験体の特性を示す試験体特性パラメータとの相関関係」を取得することに相当する。

2つのパラメータの関係を取得することと、当該2つのパラメータの関係を示す情報を取得することは同義であるから、引用発明の「既設コンクリートと新設コンクリートとの引張試験などによる付着強度を測定して表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さと付着強度との関係を取得」することは、本願発明の「試験体の表面の面粗さを示す試験体面粗さパラメータと、表面に新たなコンクリートが打設された前記試験体の特性を示す試験体特性パラメータとの相関関係を示す試験体情報を取得する」ことに相当し、引用発明は本願発明の「試験体の表面の面粗さを示す試験体面粗さパラメータと、表面に新たなコンクリートが打設された前記試験体の特性を示す試験体特性パラメータとの相関関係を示す試験体情報を取得するステップ」に相当する構成を備えているといえる。

(エ)引用発明の「測定装置」が「レーザ変位計を作動させた状態でこれ

を移動機構によりX及びY方向に移動させることにより所定のピッチ」で「測定」した「凹凸量」は、鉛直、つまりZ方向の「凹凸量」が、「X及びY方向」の「所定のピッチ」のマトリクス状の各点で測定されたものであるから、本願発明の「3次元形状を示す3次元情報」であるといえる。

(オ)上記(ア)及び(エ)より、引用発明の「測定装置」が「表面処理

後の既設コンクリート表面の凹凸量を所定のピッチで測定する」ことは、本願発明の「前記打継対象のコンクリートの表面であって新たなコンクリートが打設されるコンクリート打継部の3次元形状を示す3次元情報を」「出力する3次元スキャナにより取得するステップ」に相当する。

(カ)上記(ア)及び(エ)より、引用発明の「測定装置から順次送られ

てくる測定範囲全体の測定データを集計し、当該測定範囲における既設コンクリート表面の凹凸量の平均値」「を算出」することは、本願発明の「前記3次元情報に基づいて、前記コンクリート打継部の面粗さを示す打継部面粗さパラメータを算出するステップ」に含まれる。

(キ)以上より、本願発明と引用発明とは、

「試験体の表面の面粗さを示す試験体面粗さパラメータと、表面に新たなコンクリートが打設された前記試験体の特性を示す試験体特性パラメータとの相関関係を示す試験体情報を取得するステップと、
打継対象のコンクリートの表面であって新たなコンクリートが打設されるコンクリート打継部の3次元形状を示す3次元情報を出力する3次元スキャナにより取得するステップと、
前記3次元情報に基づいて、前記コンクリート打継部の面粗さを示す打継部面粗さパラメータを算出するステップと、
を含む、
コンクリート打継部の評価方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)

本願発明の「試験体」は「打継対象のコンクリートと同一組成で打設」されているのに対し、引用発明の試験測定に用いられたコンクリートは、その

ようなものであるか明らかでない点。

(相違点2)

本願発明の「3次元スキャナ」は「物体の外観を撮像して物体の形状に対応する前記3次元情報を出力する」のに対し、引用発明の「測定装置」は「

凹凸量を所定のピッチで測定する」点。

(相違点3)

本願発明は「前記試験体情報と前記打継部面粗さパラメータとの関係を示す評価画像を表示するための評価画像データを生成するステップと、前記評価画像データを出力するステップ」を含むのに対し、引用発明は評価画像を生成しているか明らかでない点。

(相違点4)

本願発明の「複数の前記試験体」「のそれぞれの表面は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水による洗浄のみにより形成された3次元形状を有」するのに対し、引用発明は「既設コンクリート表面に異なる表面処理方法により複数種類の表面処理形状を作成」するものであって、「異なる表面処理方法」の具体的内容が不明である点。

(相違点5)

本願発明の「前記試験体特性パラメータは、表面にコンクリートが打設された前記試験体の曲げ強度を示す曲げ強度パラメータであ」るのに対し、引用発明の「付着強度」は「引張試験など」によるものである点。

(相違点6)

本願発明の「前記打継部面粗さパラメータおよび前記試験体面粗さパラメータは、界面の展開面積比である」のに対し、引用発明の「凹凸量」は「凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さ」である点。

2.検討

上記相違点について検討する。

(ア)相違点1について

引用発明は「既設コンクリートの骨材の平均粒径に対応させたデータだ

けでなく、既設コンクリートのモルタルなどのその他の材料や、新設コンクリート舗装材などにも対応させた詳細な条件別データをデータROMに保存しておき、操作ユニットにより指定された詳細な条件に対応する理想値を用いて評価処理を行うようにすれば、より正確に評価を行うことができるものである」ところ、現実的な打継現場での作業に即した正確な評価を行うために「詳細な条件別データ」に「打継対象のコンクリートと同一組成」のものを含めるように設計することは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(イ)相違点2について

周知技術1の「表面の特徴を測定するためのシステム」、「物体の表面」、「画像を記録」すること、「対象物の表面形状」及び「3次元データ」は、本願発明の「3次元スキャナ」、「物体の外観」、「撮像」すること、「物体の形状」及び「3次元情報」に相当するから、周知技術1の「表面の特徴を測定するためのシステム」における「パターンプロジェクタ」が「物体の表面に光のパターンを投影」し、「デジタル撮像装置」が、「投影された光のパターンの画像を記録」し、「画像処理装置」が、「画像上に記録された光のパターンを、対象物の表面形状を示す3次元データの点に変える」ことは、本願発明の「3次元スキャナ」が「物体の外観を撮像して物体の形状に対応する前記3次元情報を出力する」ことに相当する。

引用発明の測定装置として、上記周知技術1に示されるものを採用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(ウ)相違点3について

引用発明は「評価装置から出力される各種情報をCRT画面などに表示する表示装置」を備えるものであり、「データROMは、・・・既設コンクリートと新設コンクリートとの引張試験などによる付着強度を測定して表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さを第1軸とし、付着強度を第2軸として試験結果を散布図として散布図及び近似曲線として表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さと付着強度との関係を取得し、・・・CPUは、・・・理想値と測定値との差を評価結果として表示装置に表示させるが、表示装置の表示内容は操作ユニットからの指示により変更することができるものであ」る。

「表示装置」に表示させる情報として具体的な記載があるのは近似曲線から求めた理想値と測定値とに基づく「評価結果」である「理想値と測定値との差」のみであるが、「表示装置」が「評価装置から出力される各種情報」を表示するものであること、理想値算出の基礎となる近似曲線を示し、視覚的な理解を可能とするよう情報量を増やすことは各種測定装置において技術常識であることから、引用発明がデータとして有している「表面処理後の凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さと付着強度との関係」を評価画像として「表示装置」に表示させる情報とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(エ)相違点4について

打継部に遅延剤を塗布し打継部の表面を高圧水により洗浄することは周知技術3に示されるように本願出願前に周知の技術である。また、打継部の養生時間により付着強度が異なることは技術常識であるので、引用発明において、遅延剤を塗布してからそれぞれ異なる養生時間が経過した後に試験体の表面を高圧水により洗浄して異なる表面処理とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(オ)相違点5について

打継ぎ部の試験体強度試験を曲げ試験により行うことは、周知技術2に示されるように本願出願前に周知の技術であるから、この点を引用発明に適用し、試験体特性パラメータを、表面にコンクリートが打設された試験体の曲げ強度を示す曲げ強度パラメータとすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(カ)相違点6について

物の表面粗さを示す指標として、各種の算術平均の他に界面の展開面積比を採用することは、周知技術4に示されるように本願出願前に周知の技術であり、いずれの指標を用いるかは、必要に応じて選択し得るものであるから、引用発明において、「凹凸量」を、「凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さ」で求めることに代えて、周知の「界面の展開面積比」として、相違点6に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(キ)小括

以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び引用文献2ないし5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.請求人の主張について

(ア)請求人の主張

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請求人は令和5年1月27日付け意見書において、以下のように主張している。

(a)「3-5.「界面の展開面積比」は周知技術であるとされた判断について
審判官殿は、令和4年11月28日付け拒絶理由通知書において、「界面の展開面積比」は周知技術であるとされました。
周知技術は、その技術分野において一般的に知られている技術であって、例えば、以下のようなものをいいます。
(i) その技術に関し、相当多数の刊行物が存在しているもの
(ii) 業界に知れ渡っているもの
(iii) その技術分野において、例示する必要がない程よく知られているもの
なお、当業者に一般的に知られているものであるか否かは、その技術を記載した文献の数のみで判断されるのではなく、その技術に対する当業者の注目度も考慮して判断されます。本願の出願時において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった文献の中で、「界面の展開面積比」が記載された文献は、多く存在するものの、何れの文献も引用文献5の第2頁に記載されるように鋼板及びフィルムの表面の微小な凹凸を数値管理するものであり、本願の技術分野であるコンクリート打継部の評価方法および評価装置とは技術分野とは大きく相違するものですので、「界面の展開面積比」は本願の技術分野の当業者に一般的に知られているものではありません。
「界面の展開面積比」は本願の技術分野の当業者に一般的に知られているものではないので、「界面の展開面積比」は周知技術であるとされた審判官殿の判断は失当であると思料いたします。」
(b)「3-6.技術的阻害要因について
(1)引用文献1の段落〔0003〕には、既設コンクリートを表面処理した後に新設コンクリートを新たに打ちたす付着型オーバーレイ工法において、既設コンクリートの表面処理形状を短時間で正確に評価することができる表面処理形状評価システムを提供することが、引用文献1に記載される発明の目的として記載されています。また、引用文献1の段落〔0015〕には、粗骨材の最大粒径が40mmの場合、十分な付着強度である20kgf/cm2以上の付着強度を得るためには、凹凸の平均深さを約5.2mm~13.0mmの範囲とする必要がある、ことが記載されます。
(2)引用文献5の第7及び8頁には、7個の高さパラメータ、3個の空間パラメータ、2個の複合パラメータ、11個の機能パラメータ、4個の機能(体積)パラメータ及び9個の形態パラメータを含む合計で36個の評価パラメータが記載されています。また、引用文献5の第19頁には、非接触式測定機器として、測定領域が40μm~15mmの白色干渉計、及び測定領域が15μm~2.7mmであるレーザマイクロスコープが記載されています。
(3)引用文献5に記載される白色干渉計又はレーザマイクロスコープを使用して、引用文献1の図2に記載されるように、最大粒径が40mmである粗骨材の間に形成されるマクロな凹凸1aを測定する場合、白色干渉計及びレーザマイクロスコープの測定領域は最大で15mmであるので、引用文献1の段落〔0013〕に記載されるように50cm×50cmの範囲を測定するとき、最小でも1000回に亘って測定処理を繰り返す必要があります。
(4)また、引用文献5の第20頁~第24頁に記載されるように、引用文献5に記載される「表面粗さを測定する機器」は、試料として採取された測定対象物をそれぞれの測定装置に載置して測定するので、測定時間が長くなります。なお、引用文献5に記載される測定装置以外の測定装置によってコンクリート打継部の3次元形状を測定することも考えられますが、本願の出願時において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった文献の中で、「界面の展開面積比」が記載された文献は、表面の微小な凹凸を測定するものであり、引用文献5に記載される測定装置以外の装置でも例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等の何れも試料として採取された測定対象物をそれぞれの測定装置に載置して測定するものです。したがって、当業者は、試験体面粗さパラメータを界面の展開面積比とするときに、試料として採取された測定対象物をそれぞれの測定装置に載置して測定するものと思料いたします。
(5)引用文献1に記載される発明に引用文献5に記載される技術を組み合わせた場合、最小でも1000回に亘って測定処理を繰り返す必要があると共に、試料として採取された測定対象物をそれぞれの測定装置に載置して測定する必要があるため、既設コンクリートの表面処理形状を短時間で正確に評価することができる表面処理形状評価システムを提供するという引用文献1に記載される発明の目的に反するものになります。
したがって、引用文献1に引用文献5を組み合わせることには技術的阻害要因があり、請求項1に係る発明は、引用文献1及び5に基づいて容易に想到できるものではありません。」
(c)「3-7.有利な効果について
(1)請求項1に係る発明と引用文献1に記載される発明との相違点について
請求項1に係る発明は、「前記複数の試験体のそれぞれの表面は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水による洗浄のみにより形成された3次元形状を有し」との構成を有するのに対して、引用文献1に記載される発明では、図8に示す付着強度を測定する引張試験では、打継部は、ウォータージェット処理、ショットブラスト処理、及びはつり機による切削処理を単独あるいは併用した表面処理がされています。
また、請求項1に係る発明は、「前記打継部面粗さパラメータおよび前記試験体面粗さパラメータは、界面の展開面積比である」との構成を有するのに対して、引用文献1に記載される発明では、図8に横軸で示されるように、打継部の面粗さを示すパラメータは、凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さです。
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(2)引用文献1に記載される発明では、ウォータージェット処理、ショットブラスト処理、及びはつり機による切削処理を単独あるいは併用した表面処理がされた表面に打継された打継部の付着強度に基づいて、付着強度が評価されます。引用文献1に記載される発明では、種々の表面処理がされた表面に打継された打継部の付着強度に基づいて、付着強度が評価されるので、採用される表面処理の割合が変化した場合、評価の基準となる理想的な表面処理形状の特徴量である凹凸量の平均値が変化します。引用文献1に記載される発明では、採用される表面処理の割合の変化に応じて、評価の基準となる特徴量が変化するので、評価の基準となる特徴量が理想的な表面処理形状と一致しない可能性が高くなります。
また、引用文献1に記載される発明では、ショットブラスト処理、及びはつり機による切削処理がされた表面を使用して付着強度が評価されるので、表面に配置されていた粗骨材がランダムに剥離して、ショットブラスト処理、及びはつり機による切削処理の処理条件に応じて、表面処理がされた表面の状態が変化するので、評価の基準となる特徴量が理想的な表面処理形状と一致しない可能性が更に高くなります。
(3)一方、請求項1に係る発明は、「前記複数の試験体のそれぞれの表面は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水による洗浄のみにより形成された3次元形状を有し」との構成を有します。請求項1に係る発明は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水による洗浄のみにより形成された3次元形状を有する表面が形成される試験体を使用するので、評価の基準となる面の状態が変動して、理想的な表面処理形状と一致しなくなる可能性は、引用文献1に記載される発明よりも低くなります。
また、請求項1に係る発明は、ショットブラスト処理、及びはつり機による切削処理がされた表面を使用しないので、表面に配置されていた粗骨材がランダムに剥離して表面処理がされた表面の状態が変化することはなく、理想的な表面処理形状と一致しなくなる可能性は、引用文献1に記載される発明よりも低くなります。
(4)引用文献1に記載される発明では、図8に横軸で示されるように、凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さを打継部の面粗さを示すパラメータとして使用して付着強度が評価されます。引用文献1に記載される発明では、凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さを使用するので、測定される表面が傾斜する場合、又は測定される表面に大きな凹部が形成される場合には、凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さは、表面の凹凸に関係なく数値が変動します。凸部の先端から凹部の底面までの深さを算術平均した平均深さを継部の面粗さを示すパラメータとして使用するので、継部の面粗さを示すパラメータと表面の凹凸との相関関係が低くなり、評価の基準として使用できなくなるおそれがあります。
(5)一方、請求項1に係る発明では、「前記打継部面粗さパラメータおよび前記試験体面粗さパラメータは、界面の展開面積比である」ので、測定される表面が傾斜する場合、又は測定される表面に大きな凹部が形成される場合でも、継部の面粗さを示すパラメータと表面の凹凸との相関関係は変化せず、評価の基準として使用することができます。
(6)また、請求項1に係る発明では、「前記複数の試験体のそれぞれの表面は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水のみにより洗浄されて形成された3次元形状を有」するとの構成、及び「前記打継部面粗さパラメータおよび前記試験体面粗さパラメータは、界面の展開面積比である」との構成を有するので、ショットブラスト処理によりランダム形成される微小な凹凸、並びにショットブラスト処理及びはつり機による切削処理により粗骨材が剥離することによりランダムに形成される大きな凹凸の影響により、評価の基準となる試験体面粗さパラメータである界面の展開面積比がばらつき、評価精度が低下するおそれは低くなります。
(7)このように、請求項1に係る発明では、「前記複数の試験体のそれぞれの表面は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水のみにより洗浄されて形成された3次元形状を有」するとの構成、及び「前記打継部面粗さパラメータおよび前記試験体面粗さパラメータは、界面の展開面積比である」との構成を有することで、引用文献1~5に記載される発明が奏さない上述の有利な効果を奏します。
(8)具体的には、本願出願当初明細書の表1に示されるように、近似曲線との相関係数の2乗は、試験体特性パラメータが曲げ強度であり、界面の展開面積比(Sdr)を試験体面粗さパラメータに使用するとき、0.9611と高い値であり、コンクリート打継部の状態を高精度に評価することができる。
一方、引用文献1に記載されるように、算術平均高さ(Sa)を試験体面粗さパラメータに使用するときに、試験体特性パラメータが曲げ強度であるとき、本願発明の発明者らによる測定では、近似曲線との相関係数の2乗は、0.821であり、界面の展開面積比(Sdr)を試験体面粗さパラメータに使用する請求項1に係る発明よりも非常に低い値となります。
(9)したがって、請求項1、請求項1に従属する請求項2~5及び請求項1に対応する構成を有する請求項6に係る発明は、引用文献1~5に基づいて容易に想到できるものではないと思料いたします。」

(イ)請求人の主張に対する当審の判断

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上記(ア)における請求人の主張について判断する。

(a)「界面の展開面積比」は周知技術であるとする判断について

上記第4の5.で認定した周知技術4は「表面粗さの評価方法として、界面の展開面積比、コア部のレベル差、5点谷領域深さを用いること。」であって、分野を問わず「表面粗さの評価方法として」、「界面の展開面積比」を用いることを周知技術とするものであり、「界面の展開面積比」自体引用文献6に記載されているようにISO25178として広く知られたものであり、特定の技術分野でのみ用いられるものとはいえない。

よって、出願人の「「界面の展開面積比」は本願の技術分野の当業者に一般的に知られているものではありません」という主張に理由はなく、採用することはできない。

(b)技術的阻害要因について

上記(a)で述べたとおり、上記第4の5.で認定した周知技術4は「表面粗さの評価方法として、界面の展開面積比、コア部のレベル差、5点谷領域深さを用いること。」であって、引用文献6に記載された測定機器である「レーザマイクロスコープ」についてのみ示した周知技術ではない。したがって、当該「レーザマイクロスコープ」による測定が引用発明1に適用する際の技術的阻害要因となるという請求人の主張は、令和4年11月28日付け拒絶理由通知書における相違点4に対する判断に対してなされたものとは認められない。

(c)有利な効果について

本願発明の表面処理方法によって得られる効果は、継部の面粗さを示すパラメータと表面の凹凸との相関関係を得るという効果を奏する引用発明と、表面に配置されていた粗骨材がランダムに剥離して表面処理がされた表面の状態が変化することはないという効果を奏する周知技術3との組み合わせによって得られる当業者が予想できる範囲のものにすぎない。

また、本願明細書【0055】に「また、異なる表面処理として、ハンマーによるチッピングおよびワイヤブラシによるブラッシングを行ってもよい。」という記載があることからしても複数の試験体を準備するにあたり、どのような表面処理技術を用いても得られる試験体特性に差が生じるものとはいえないから、「表面処理」を「前記複数の試験体のそれぞれの表面は、遅延剤が塗布されて、互いに異なる養生時間の経過後に高圧水のみにより洗浄されて形成された3次元形状を有」するものとすることが他の表面処理と比較して格別の優位な効果を奏するものとは認められない。

そして、出願人が主張する「打継部面粗さパラメータ」および「試験体面粗さパラメータ」が「界面の展開面積比」であることの効果は、「近似曲線との相関係数の2乗は、試験体特性パラメータが曲げ強度であり、界面の展開面積比(Sdr)を試験体面粗さパラメータに使用するとき、0.9611と高い値であり、コンクリート打継部の状態を高精度に評価することができる」ことであるが、周知技術4に示したように表面粗さを示すパラメータは複数あり、評価に応じて選択されるものである以上、最適なパラメータを選択した結果が「近似曲線との相関係数の2乗」の値が高いこととなったにすぎず、「評価」技術としてさらなる効果等を発現したものとはいえない。

したがって、請求人の上記主張について検討しても、本願発明の進歩性について、上記1.及び2.の対比・判断を変更すべき事情は見いだせない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び引用文献2ないし5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-016874

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