特許拒絶査定不服審判
2024-008214
目地幅調整用治具及びこれを用いた目地幅調整方法
- 審判番号
- 2024-008214
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-215513
- 請求日
- 2024年05月16日
- 審決日
- 2026年05月22日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日鉄鋼板株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【請求人】株式会社イング
- 【請求人代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 藏田 敦之
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P18 .121-Z (E04G) / P18 .575-Z (E04G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-215513「目地幅調整用治具及びこれを用いた目地幅調整方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月 3日出願公開、特開2021- 85244〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年11月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 9月28日付け:拒絶理由通知
同年11月27日提出:意見書
令和6年 2月 8日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
(同月20日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月16日提出:審判請求書、手続補正書
第2 令和6年 5月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年 5月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
令和6年 5月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正するものである(下線部は補正箇所を示す。)。
(1)補正前
「第一パネルと第二パネルの間の目地幅を調整するための目地幅調整用治具であって、
一方向に長尺な治具本体と、
前記治具本体と一体に設けられ、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第一引っ掛け部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記治具本体の長手方向に沿って移動自在な可動部と、
前記可動部と一体に設けられ、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第二引っ掛け部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記可動部を移動させることのできる操作部と、
を備える、
目地幅調整用治具。」
(2)補正後
「第一パネルと第二パネルの間の目地幅を調整するための目地幅調整用治具であって、
一方向に長尺な治具本体と、
前記治具本体から突出し、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第一引っ掛け部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記治具本体の長手方向に沿って移動自在な可動部と、
前記可動部から突出し、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第二引っ掛け部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記可動部を移動させることのできる操作部と、
を備える、
目地幅調整用治具。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第一引っ掛け部」における「治具本体」との関係について、補正前に「前記治具本体と一体に設けられ」るとしていたものを、「一体」とすることの具体的な態様として「前記治具本体から突出」するものに限定するとともに、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第二引っ掛け部」における「可動部」との関係について、補正前に「前記可動部と一体に設けられ」るとしていたものを、「一体」とすることの具体的な態様として「前記可動部から突出」するものに限定して、「第一引っ掛け部」と「治具本体」及び「第二引っ掛け部」と「可動部」との構造的関係を特定して限定するものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献である特開平5-113039号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。
a 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ユニット住宅を構成する家屋ユニットの据付け時に、隣接する家屋ユニットどうしの間隔を調整するための治具に関する。
【0002】
【従来の技術】複数個の家屋ユニットを据え付けることにより建造されるユニット住宅では、各家屋ユニットを、運搬可能な一定の大きさの箱状のものとして工場で予め組み立ててから建築現場へ運搬し、その建築現場において、前後左右あるいは上下に配列し据え付け互いに接合(水平ジョイント,垂直ジョイント)して、一戸の家屋とする。
【0003】その据付けに当って、家屋ユニットは、例えばクレーンの使用により所定の位置へ置かれた後、隣接する他の家屋ユニットとの間隙が一定となるように、また、隣接する他の家屋ユニットとの側面と正確に揃うように、その据付けの状態を調整しながら水平ジョイントが行なわれる。
【0004】このような家屋ユニットの据付け時(特に水平ジョイント時)に、ユニット間隔を調整する治具としては、例えば、図4に示すようなものがある(特公昭55-32135号公報参照)。この図4において、1は両端にねじ山1a,1aを形成された案内棒、2はこの案内棒1の各ねじ山1aに螺合し案内棒1の回転により移動しうる螺合部(脚部用台座)、3は各螺合部2から突設された係止用脚部である。
【0005】ここで、案内棒1両端のねじ山1a,1aは、その巻き方向が互いに逆向きのものとして刻設されており、案内棒1を回転させる方向によって、係止用脚部3,3相互の間隔が、広げられたり狭められたりして変化せしめられるようになっている。」
b 「【0017】
【実施例】以下、図面により本発明の一実施例としての家屋ユニットの据付け調整治具について説明すると、図1はその斜視図、図2はその取付前状態を示す分解斜視図、図3はその調整治具およびその取付状態を示す側面図である。
【0018】図1,図2に示すように、本実施例の調整治具6も、図4に示した従来のものとほぼ同様に構成されており、案内棒1の両端に形成されたねじ山1a,1aには、それぞれ螺合部(脚部用台座)2,2が螺合されている。ここで、案内棒1両端のねじ山1a,1aは、従来と同様に、その巻き方向が互いに逆向きのものとして刻設されており、案内棒1を回転させる方向によって、螺合部2,2相互の間隔が、広げられたり狭められたりして変化せしめられるようになっている。
【0019】そして、本実施例の調整治具6においては、図1~図3に示すごとく、従来のものと全く同様に、各螺合部2に短尺の直方体ユニット係止用脚部3が取り付けられている。この直方体ユニット係止用脚部3は、直方体ユニット8上面のランバー(例えば厚さ3.8cm)8aに形成された吊りアイボルト穴8bを通って、直方体ユニット8のダブルスタッド8cの箱金物10内部に溶接さた吊りアイボルト取付用ナット12に挿入されて、直方体ユニット8に係止されるものである。
【0020】また、2つの螺合部2のうちの一方(図中の左側のもの)に、長尺(例えば長さ15cm)の台形ユニット係止用脚部3Aが取り付けられている。この台形ユニット係止用脚部3Aは、台形ユニット7の傾斜面のランバー(例えば厚さ3.8cm)7aに形成された吊りアイボルト孔7bを通って、台形ユニット7のダブルスタッド7cの箱金物9内部に溶接された吊りアイボルト取付用ナット11に挿入されて、台形ユニット7に係止されている。なお、各係止用脚部3Aは、図1に示すように、各ナット11,12への挿入時に案内棒1を直方体ユニット8の上面と平行な状態に保持するに十分な長さを有して形成されている。
【0021】このとき、一方の螺合部2において、直方体ユニット係止用脚部3と台形ユニット係止用脚部3Aとは、案内棒1まわりに90度の角度を成して取り付けられている。
【0022】ここで、係止用脚部3Aの長さとしては、ユニット7を形成するランバー7aの厚さの3倍以上が適当であるが、あまり長く設定すると、重量的にも取扱を行ない難くなるので、ランバー7aの厚さの4倍程度までとする。実際長では、12~18cm程度である。本実施例では、ランバー厚さ3.8cmに対して、台形ユニット係止用脚部長は15cmとしている。
【0023】なお、図1~図3中、符号1bは案内棒1の両端に形成された回転駆動用六角部で、この六角部1bに、図3に示すように、ラチェット13等を係合させて、案内棒1を回転するようになっている。
【0024】また、図2,図3中、符号14はユニット7,8にまたがって配設されこれらのユニット7,8を後述するごとく連結するためのジョイントプレートで、このジョイントプレート14には、調整治具6の脚部3,3Aが貫通する一対の穴部14a,14aが形成されている。各穴部14aは、調整治具6によるユニット7,8の間隔調整に際しての各脚部3,3Aの移動を許容できるように、若干大きめに形成されている。
【0025】上述の構成により、所定の位置へ置かれた隣接する台形ユニット(妻壁面が全体的に傾斜したもの)7と直方体ユニット8との据付け状態を調整する際には、まず、一方の螺合部2に取り付けられた長尺の台形ユニット係止用脚部3Aを鉛直下方へ向けて配置するとともに、他方の螺合部2に取り付けられた短尺の直方体ユニット係止用脚部3を鉛直下方へ向けて配置する。
【0026】そして、ジョイントプレート14をユニット7,8のランバー7a,8a上にまたがって仮置きした後、脚部3A,3を、それぞれ、ジョイントプレート14の各穴部14a,14aおよびランバー7a,8aの吊りアイボルト孔7b,8bを通して、箱金物9,10内の吊りアイボルト取付用のナット11,12に挿入する。
【0027】このとき、調整治具6の台形ユニット7側については、図3に示すように、手で支持したり、案内棒1と台形ユニット7の傾斜面との間に三角形状の当て木15を挿入したりして、水平状態を保持しながら、案内棒1の端部に形成された回転駆動用六角部1bにラチェット13を係合させて、このラチェット13により案内棒1をゆっくり回転させることで、ユニット7,8の間隔が調整される。」
c 図1「
[図:0001437741000001.jpg]
」
d 図3「
[図:0001437741000002.jpg]
」
e 図4「
[図:0001437741000003.jpg]
」
(イ)認定事項
a 【0026】の記載を参酌すると、図3より、調整治具6の台形ユニット係止用脚部3Aが、台形ユニット7の直方体ユニット8側に位置する吊りアイボルト孔7bを通して吊りアイボルト取付用のナット11に挿入されるとともに、前記調整治具6の脚部3が、前記直方体ユニット8の前記台形ユニット7側に位置する吊りアイボルト孔8bを通して吊りアイボルト取付用のナット12に挿入されることが見てとれる。
b 【0018】の記載によれば、図1,図2に示される本実施例の調整治具6も、図4に示した従来のものとほぼ同様に構成されており、【0019】の記載によれば、短尺の直方体ユニット係止用脚部3は、従来のものと全く同様に各螺合部2に取り付けられたものである。
よって、【0004】及び図4に記載された従来のものと同様に、図1に示される本実施例の係止用脚部3は、各螺合部2から突設されたものであるといえる。また、図1より、台形ユニット係止用脚部3Aについても、同様に、螺合部2から突設されたものであるといえる。
(ウ)引用発明
上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。括弧内に主な根拠箇所を示す。
「運搬可能な一定の大きさの箱状のものとして工場で予め組み立ててから建築現場へ運搬し、その建築現場において、前後左右あるいは上下に配列し据え付け互いに接合(水平ジョイント、垂直ジョイント)して、一戸の家屋とする家屋ユニットの据付け調整治具6であって(【0002】、【0017】)、
巻き方向が互いに逆向きのものとして刻設されたねじ山1a,1aを両端に刻設された案内棒1と(【0018】、図1)、
前記ねじ山1a,1aのそれぞれに螺合された螺合部(脚部用台座)2,2と(【0018】、図1)、
各螺合部2から突設された短尺の直方体ユニット係止用脚部3と(【0004】、図1、(イ)b)、
前記2つの螺合部2のうちの一方から突設された長尺の台形ユニット係止用脚部3Aと(【0004】、図1、(イ)b)、
前記案内棒1の両端に形成され、ラチェット13等を係合させて、案内棒1を回転する回転駆動用六角部と(【0023】図1)、
を備え、
隣接する台形ユニット7と直方体ユニット8との据付け状態を調整する際には、まず、一方の前記螺合部2に取り付けられた長尺の前記台形ユニット係止用脚部3Aを鉛直下方へ向けて配置するとともに、他方の前記螺合部2に取り付けられた短尺の前記直方体ユニット係止用脚部3を鉛直下方へ向けて配置し(【0025】)、
前記調整治具6の前記台形ユニット係止用脚部3Aが、前記台形ユニット7の前記直方体ユニット8側に位置する吊りアイボルト孔7bを通して吊りアイボルト取付用のナット11に挿入されるとともに、前記調整治具6の前記脚部3が、前記直方体ユニット8の前記台形ユニット7側に位置する吊りアイボルト孔8bを通して吊りアイボルト取付用のナット12に挿入され(【0026】、図3、(イ)a)、
前記案内棒1の端部に形成された前記回転駆動用六角部1bにラチェット13を係合させて、このラチェット13により前記案内棒1をゆっくり回転させることで、前記台形ユニット7と前記直方体ユニット8の間隔が調整される(【0027】、図3)、
家屋ユニットの据付け調整治具6(【0017】)」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 本願発明の「パネル」について、本願明細書に、「第一パネルP1と第二パネルP2は、建物の躯体10に固定されて建物の壁を形成するパネルである。」(【0040】より抜粋)等とあるから「壁を形成する」ものが含まれる。一方、引用発明の「ユニット(家屋ユニット、台形ユニット7、直方体ユニット8)」は、「その建築現場において、前後左右あるいは上下に配列し据え付け互いに接合(水平ジョイント、垂直ジョイント)して、一戸の家屋とする」から、壁に用いるものが含まれるのは明らかである。よって、引用発明におけるユニットと、本件補正発明におけるパネルとは相当関係にある。
イ 上記アより、引用発明における「台形ユニット7」及び「直方体ユニット8」は、それぞれ、本件補正発明における「第一パネル」及び「第二パネル」に相当する。
すると、引用発明である「家屋ユニットの据付け調整治具6」により、調整される「前記台形ユニット7と前記直方体ユニット8の間隔」は、本件補正発明において「調整」される「第一パネルと第二パネルの間の目地幅」に相当する。また、このことより、引用発明における「家屋ユニットの据付け調整治具6」は、本件補正発明における「目地幅調整用治具」に相当する。
ウ 引用発明の「案内棒1」は、棒状であり、また、棒状とは、ある方向に細長く伸びる形状をいう。よって、引用発明における「案内棒1」は、本件補正発明における「一方向に長尺な治具本体」に相当する。
エ 引用発明において、「長尺の台形ユニット係止用脚部3A」は、「前記2つの螺合部2のうちの一方から突設された」ものであるところ、当該「長尺の台形ユニット係止用脚部3A」は、螺合部(脚部用台座)2,2から突出し、さらに、螺合部(脚部用台座)2,2が螺合する案内棒1(治具本体)からも突出する。
また、引用発明において、「前記台形ユニット7の前記直方体ユニット8側に位置する吊りアイボルト孔7bを通して吊りアイボルト取付用のナット11に挿入される」「台形ユニット係止用脚部3A」は、本件補正発明における「第一引っ掛け部」と、「前記第一パネル(台形ユニット7)のうち前記第二パネル(直方体ユニット8)に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された」ものである点で共通する。
以上のことから、引用発明において、「案内棒1」の「両端に刻設された」「ねじ山1a,1aのそれぞれに螺合された螺合部(脚部用台座)2,2」「のうちの一方から突設された」、「前記台形ユニット7の前記直方体ユニット8側に位置する吊りアイボルト孔7bを通して吊りアイボルト取付用のナット11に挿入される」「長尺の台形ユニット係止用脚部3A」は、本件補正発明における「前記治具本体から突出し、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第一引っ掛け部」に相当する。
また、引用発明における「長尺の台形ユニット係止用脚部3A」(第一引っ掛け部)は、これが突設された「螺合部(脚部用台座)2」を介して、「螺合部(脚部用台座)2」が螺合する「案内棒1」(治具本体)と一体である。
オ 引用発明において、「案内棒1」の「両端に刻設された」「ねじ山1a,1aのそれぞれに螺合された螺合部(脚部用台座)2,2」は、「前記案内棒1の端部に形成された前記回転駆動用六角部1bにラチェット13を係合させて、このラチェット13により前記案内棒1をゆっくり回転させることで」、「案内棒1」の長手方向に沿って移動する。
また、「案内棒1」の「両端に刻設された」「ねじ山1a,1aのそれぞれに螺合された螺合部(脚部用台座)2,2」は、「案内棒1」(治具本体)に取り付けられたものといえる。
よって、引用発明における「案内棒1」の「両端に刻設された」「ねじ山1a,1aのそれぞれに螺合され」、「前記案内棒1の端部に形成された前記回転駆動用六角部1bにラチェット13を係合させて、このラチェット13により前記案内棒1をゆっくり回転させることで」、「案内棒1」の長手方向に沿って移動する「螺合部(脚部用台座)2,2」の一方は、本件補正発明における「前記治具本体に取り付けられ、前記治具本体の長手方向に沿って移動自在な可動部」に相当する。
カ 引用発明における「前記直方体ユニット8の前記台形ユニット7側に位置する吊りアイボルト孔8bを通して吊りアイボルト取付用のナット12に挿入され」る「脚部3」は、本件補正発明における「第二引っ掛け部」と、「前記第二パネル(直方体ユニット8)のうち前記第一パネル(台形ユニット7)に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された」ものである点で共通する。
また、引用発明において、「短尺の直方体ユニット係止用脚部3」は、「各螺合部2から突設された」ものであるから、上記「短尺の直方体ユニット係止用脚部3」は、「各螺合部2」の一方(可動部)から突出している。
以上のことから、引用発明において、「各螺合部2」の一方「から突設された」、「前記直方体ユニット8の前記台形ユニット7側に位置する吊りアイボルト孔8bを通して吊りアイボルト取付用のナット12に挿入され」る「短尺の直方体ユニット係止用脚部3」は、本件補正発明における「前記可動部から突出し、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第二引っ掛け部」に相当する。
また、引用発明における「短尺の直方体ユニット係止用脚部3」(第二引っ掛け部)は、これが突設された「各螺合部2」の一方(可動部)と一体である。
キ 上記オにて述べたとおり、引用発明における「前記案内棒1の端部に形成された前記回転駆動用六角部1b」は、これ「にラチェット13を係合させて、このラチェット13により前記案内棒1をゆっくり回転させることで、」「螺合部(脚部用台座)2,2」(可動部)を移動させることのできる部材である。
よって、引用発明における「前記案内棒1(治具本体)の端部に形成され」、「ラチェット13を係合させて、このラチェット13により前記案内棒1をゆっくり回転させることで、」「螺合部(脚部用台座)2,2」(可動部)を移動させることのできる「回転駆動用六角部1b」は、本件補正発明における「前記治具本体に取り付けられ、前記可動部を移動させることのできる操作部」と、「前記治具本体」に設けられ、「前記可動部を移動させることのできる操作部」である点で共通する。
ク 以上のとおりであるから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「第一パネルと第二パネルの間の目地幅を調整するための目地幅調整用治具であって、
一方向に長尺な治具本体と、
前記治具本体から突出し、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第一引っ掛け部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記治具本体の長手方向に沿って移動自在な可動部と、
前記可動部から突出し、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第二引っ掛け部と、
前記治具本体に設けられ、前記可動部を移動させることのできる操作部と、
を備える、
目地幅調整用治具。」
<相違点>
「操作部」が、本件補正発明においては、「前記治具本体に取り付けられ」たものであるのに対して、引用発明では、「前記案内棒1(治具本体)の端部に形成された」ものである点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
「前記治具本体に取り付けられた」とは、治具本体と一体となっているものを含むから、上記の点は、実質的な相違点ではない。
上記の点を、治具本体とは別体である操作部を、治具本体に取り付けるものと解するとしても、別々の部材を作成して後、これらを連結して(取付け)一体とすることは、広く一般に行われているところであるから、そのようなこと(治具本体とは別体である操作部を、治具本体に取り付けること)は、当業者であれば適宜なし得たことである。
よって、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
(5)効果について
相違点に係る本件補正発明の構成により格別の効果を奏するとは認められない。
(6) 請求人の主張について
ア 主張の概要
請求人は、審判請求書の請求の理由において概ね次の主張をしている。
(主張1)引用文献1に記載の台形ユニット係止用脚部3Aは、案内棒1からではなく、螺合部2から突出しており、本願発明1の第一引っ掛け部のように、治具本体から突出しておらず、本願発明1の第一引っ掛け部に相当しない(「4-1.本願発明1について」参照)。
(主張2)本願発明1(本件補正発明)は、操作部を操作して可動部を移動させることによって第二引っ掛け部を移動させ、これにより、治具本体から突出していて移動しない第一引っ掛け部と、可動部から突出していて移動する第二引っ掛け部と、の間隔を変更するものであるのに対して、引用文献1に記載の発明は、回転駆動用六角部1bを操作して案内棒1を回転させることによって2つの螺合部2を移動させ、これにより、一方の螺合部2から突出していて移動する台形ユニット係止用脚部3Aと、他方の螺合部2から突出していて移動する直方体ユニット係止用脚部3と、の間隔を変更するものであり、本願発明1と引用文献1に記載の発明とでは、第一引っ掛け部と第二引っ掛け部の間隔を変更する方法が全く異なるから、引用文献1に記載の発明から出発して本願発明1に想到することは、当業者であっても容易ではない(「4-1.本願発明1について」参照)。
イ 主張に対する見解
(ア)主張1について
引用発明において、「案内棒1」の「両端に刻設された」「ねじ山1a,1aのそれぞれに螺合された螺合部(脚部用台座)2,2」「のうちの一方から突設された長尺の台形ユニット係止用脚部3A」は、「螺合部(脚部用台座)2,2」から突出し、かつ、「螺合部」が螺合する「案内棒1」(治具本体)からも突出している。
よって、主張1により上記判断を左右するものではなく採用することはできない。
(イ)主張2について
本件補正発明には、「第一引っ掛け部」が突出する「治具本体」と、「第二引っ掛け部」が突出する「可動部」は、「前記治具本体に取り付けられ」た「操作部」により「前記可動部を移動させることのできる」ことが特定されているが、この構成により必ず「操作部を操作した際に、第一引っ掛け部が(治具本体に対して)移動しないことも、第二引っ掛け部のみを移動させることにより、移動しない第一引っ掛け部と、可動部から突出していて移動する第二引っ掛け部と、の間隔を変更する」ような機能・動作のみが特定されるとはいえない。
一方、引用発明は、上記に示したとおり「第一引っ掛け部」が突出する「治具本体」と、「第二引っ掛け部」が突出する「可動部」は、「前記治具本体に取り付けられ」た「操作部」により「前記可動部を移動させることのできる」機能・作用を有するものである。
なお、引用文献1にも、「例えば、上記実施例では、螺合部2,2がいずも移動して脚部3,3Aの間隔を調整する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、一方の螺合部2を軸方向へ移動しないものとし、他方の螺合部2のみが案内棒1の回転に伴って移動するようにしてもよく、この場合も、上記実施例と同様の作用効果が得られる。」(引用文献1【0034】より抜粋)の記載がある。よって、仮に、特許請求の範囲の記載から、操作部を操作した際に、第一引っ掛け部が(治具本体に対して)移動せず、第二引っ掛け部のみを移動させることを特定できるものと仮定しても、そのことは、引用文献1に記載されているところであるから、本件補正発明の進歩性が認められるものでもない。
よって、主張2により上記判断を左右するものではなく採用することはできない。
ウ 小括
以上のとおり、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年 5月16日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
(1)本件補正発明は、文言上、前記治具本体と第一引っ掛け部とが一体に設けられることも、前記可動部と第二引っ掛け部とが一体に設けられることも特定されていなかったので、確認のため、本願発明のこれらの点について、引用発明と対比する。
「引用発明における「長尺の台形ユニット係止用脚部3A」(第一引っ掛け部)は、これが突設された「螺合部(脚部用台座)2」を介して、「案内棒1(治具本体)」と一体である。」ことは、上記「第2 理由 2(3)エ」にて述べたとおりである。
また、「引用発明における「短尺の直方体ユニット係止用脚部3」(第二引っ掛け部)は、これが突設された「各螺合部2」の一方(可動部)と一体である。」ことは、上記「第2 理由 2(3)カ」にて述べたとおりである。
よって、引用発明は、本願発明における、前記治具本体と第一引っ掛け部とが一体に設けられる構成も、前記可動部と第二引っ掛け部とが一体に設けられる構成も備えている。
(2)本願発明のその余の構成については、上記「第2 理由 2(3)」に示したとおりである。
(3)本願発明は、上記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から、上記第2[理由]1の補正事項に係る限定を削除して拡張したものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定して減縮した本件補正発明が、上記「第2[理由]2」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記第2[理由]1の補正事項に係る限定を削除して拡張した本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 請求人の主張
(1)請求人の主張の概要
請求人は、令和5年11月27日提出の意見書において概ね次の主張をしている。
(主張3)引用文献1に記載の台形ユニット係止用脚部3Aは、案内棒1ではなく、螺合部2と一体に設けられており、本願発明の第一引っ掛け部のように、治具本体と一体に設けられておらず、本願発明の第一引っ掛け部に相当しない。
(主張4)本願発明1は、操作部を操作して可動部を移動させることによって第二引っ掛け部を移動させ、これにより、第一引っ掛け部と第二引っ掛け部の間隔を変更するものであるのに対して、引用文献1に記載の発明は、回転駆動用六角部1bを操作して案内棒1を回転させることによって2つの螺合部2を移動させ、これにより、台形ユニット係止用脚部3Aと直方体ユニット係止用脚部3の両方を移動させて、台形ユニット係止用脚部3Aと直方体ユニット係止用脚部3の間隔を変更するものであり、本願発明1と引用文献1に記載の発明とでは、第一引っ掛け部と第二引っ掛け部の間隔を変更する方法が全く異なるから、引用文献1に記載の発明から出発して本願発明1に想到することは、当業者であっても容易とはいえない。
(2)主張に対する見解
ア 主張3について
上記「第2 理由 2(3)エ」にて述べたとおり、引用発明における「長尺の台形ユニット係止用脚部3A」(第一引っ掛け部)が突設された「螺合部(脚部用台座)2」は、案内棒1に形成されたねじ山1aに螺合している。このことから、引用発明における「長尺の台形ユニット係止用脚部3A」(第一引っ掛け部)は、「螺合部(脚部用台座)2」を介して「案内棒1」(治具本体)と一体をなすものといえるから、引用発明は、「第一引っ掛け部」の「前記治具本体と一体に設けられ」る点を備えている。
よって、主張3により上記4の判断を左右するものではなく採用することはできない。
イ 主張4について
主張4については、上記「第2 理由 2(6)イ(イ)」に示したとおり特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、かつ、仮に、特許請求の範囲の記載から、操作部を操作した際に、第一引っ掛け部が移動せず、第二引っ掛け部のみを移動させることを特定できるものと仮定しても、そのことは、引用文献1【0034】に記載されているところであるから、本願発明の進歩性が認められるものでもないことは、前記第2[理由]2(6)イ(イ)にて述べたところである。
よって、主張4により上記4の判断を左右するものではなく採用することはできない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願発明が特許法第29条第1項第3号に該当するという拒絶理由及びその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-008214