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特許拒絶査定不服審判

2021-016277

集中型データ通信に関する方法および装置

審判番号
2021-016277
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-088341
請求日
2021年11月29日
審決日
2022年08月24日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】オッシア インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 角田 慎治
  • 審判官 衣鳩 文彦
  • 審判官 土居 仁士
分類
P18 .537-Z (H04B) / P18 .536-Z (H04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第5項、特許法第50条の2、特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第3号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 88341「集中型データ通信に関する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月 5日出願公開、特開2019-149831〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)2月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年2月22日 米国(US))を国際出願日とする特願2015-558991号の一部を平成30年4月19日に新たな特許出願として出願した特願2018-80745号の一部を、令和元年5月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年 5月 8日 :上申書の提出 令和2年 8月13日付け:特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知 書 令和3年 2月16日 :意見書、手続補正書の提出 令和3年 7月26日付け:令和3年2月16日の手続補正書でした補正の 却下の決定、拒絶査定 令和3年11月29日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出 令和4年 1月26日 :前置報告書 令和4年 3月24日 :上申書の提出 第2 令和3年11月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年11月29日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。) 「 【請求項1】 無線通信システムであって、 電磁放射を受信する複数のアンテナ素子であって、該複数のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む、該複数のアンテナ素子と、 前記複数のアンテナ素子に通信可能に接続されたアレイコントローラと を備え、前記アレイコントローラは、 前記複数のアンテナ素子を使用して、1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置から第1の信号を受信し、 前記第1の信号が前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子によって受信されたとき、ある時間の差分を表す入力時間オフセットに基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についてリバースタイミングを計算し、 前記第1の信号の前記入力時間オフセットを分析することによって得られる、前記複数のアンテナ素子を含む基地局送信機アレイの高さに対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の高度角と、前記基地局送信機アレイでの北に対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の方向を識別することによって得られる方位角と、前記基地局送信機アレイと前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置との間の距離とに基づいて、3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定し、 前記第1の位置において電磁波の強め合う強度信号を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調することと、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置へ送信することと、 を含むことを特徴とする無線通信システム。 【請求項2】 前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングは、 各それぞれのアンテナ素子について前記第1の信号のそれぞれの入力時間オフセットを 記録することと、 前記それぞれの入力時間オフセットに基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングを計算することと によってさらに計算されることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項3】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記複数のアンテナ素子を使用して、1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置から第2の信号を受信し、 前記第2の信号の入力時間オフセットを分析することによって得られる、前記複数のアンテナ素子を含む基地局送信機アレイの高さに対する前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置の位置の高度角と、前記基地局送信機アレイでの北に対する前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置の位置の方向を識別することによって得られる方位角と、前記基地局送信機アレイと前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置との間の距離とに基づいて、3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置の第2の位置を決定し、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記第2の位置において電磁波の強め合う強度信号を生成することとを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項4】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記電磁波を、第1の周波数で前記1つまたは複数の第1のクライアント装置へおよび第2の周波数で前記1つまたは複数の第2のクライアント装置へ送信することを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。 【請求項5】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記第1の信号を複数のデータ信号として受信し、各々は前記第1のクライアント装置の1つに対応し、 前記第1のクライアント装置の各々についてそれぞれのデータ信号を準備し、 前記それぞれのデータ信号を多重化することによって出力データ信号を生成し、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記出力データ信号を前記複数の第1のクライアント装置へ送信することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項6】 前記第1の位置は、高さ成分を含むことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項7】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記第1の位置に基づいて、前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の方向を決定することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項8】 無線通信方法であって、 アレイコントローラによって、第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子を含む複数のアンテナ素子を使用して、1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置から第1の信号を受信することと、 前記アレイコントローラによって、前記第1の信号が前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子によって受信されたとき、ある時間の差分を表す入力時間オフセットに基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についてリバースタイミングを計算することと、 前記アレイコントローラによって、前記第1の信号の前記入力時間オフセットを分析することによって得られる、前記複数のアンテナ素子を含む基地局送信機アレイの高さに対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の高度角と、前記基地局送信機アレイでの北に対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の方向を識別することによって得られる方位角と、前記基地局送信機アレイと前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置との間の距離とに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定することと、 前記アレイコントローラによって、前記第1の位置において電磁波の強め合う強度信号を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調することと、 前記アレイコントローラによって、前記複数のアンテナ素子を介して、前記電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置へ送信することと を含むことを特徴とする無線通信方法。 【請求項9】 前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングは、 各それぞれのアンテナ素子について前記第1の信号のそれぞれの入力時間オフセットを記録することと、 前記それぞれの入力時間オフセットに基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングを計算することと によってさらに計算されることを特徴とする請求項8記載の無線通信方法。 【請求項10】 前記アレイコントローラによって、前記複数のアンテナ素子を介して、1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置から第2の信号を受信することと、 前記アレイコントローラによって、前記第2の信号の入力時間オフセットを分析することによって得られる、前記複数のアンテナ素子を含む基地局送信機アレイの高さに対する前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置の位置の高度角と、前記基地局送信機アレイでの北に対する前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置の位置の方向を識別することによって得られる方位角と、前記基地局送信機アレイと前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置との間の距離とに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置の第2の位置を決定することと、 前記アレイコントローラによって、前記複数のアンテナ素子を使用して、前記第2の位置において電磁波の強め合う強度信号を生成すること をさらに含むことを特徴とする請求項8記載の無線通信方法。 【請求項11】 前記第1のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最も早い前記第1の信号を受信し、 前記第2のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最後の前記第1の信号を受信することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。 【請求項12】 前記第1のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最も早い前記第1の信号を受信し、 前記第2のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最後の前記第1の信号を受信することを特徴とする請求項8記載の無線通信方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、願書に最初に添付された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 無線通信システムであって、 電磁放射を受信する複数のアンテナ素子であって、該複数のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む、該複数のアンテナ素子と、 前記複数のアンテナ素子に通信可能に接続されたアレイコントローラと を備え、前記アレイコントローラは、 前記複数のアンテナ素子を使用して、1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置から第1の信号を受信し、 前記第1の信号が前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子によって受信されたとき、ある時間の差分に基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についてリバースタイミングを計算し、 前記リバースタイミングに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定し、 前記第1の位置において電磁波の強め合う干渉を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調し、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置へ送信することを特徴とする無線通信システム。 【請求項2】 前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングは、 各それぞれのアンテナ素子について前記第1の信号のそれぞれの入力時間オフセットを記録することと、 前記それぞれの入力時間オフセットに基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングを計算することと によってさらに計算されることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項3】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記複数のアンテナ素子を使用して、1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置から第2の信号を受信し、 前記第2の信号のリバースタイミングに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第2の位置を決定し、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記第2の位置において電磁波の強め合う干渉を生成することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項4】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記電磁波を、第1の周波数で前記1つまたは複数の第1のクライアント装置へおよび第2の周波数で前記1つまたは複数の第2のクライアント装置へ送信することを特徴とする請求項3記載の無線通信システム。 【請求項5】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記第1の信号を、各々が前記第1のクライアント装置の1つに対応する複数のデータ信号に分離し、 前記第1のクライアント装置の各々について応答データ信号を準備し、 前記応答データ信号を多重化することによって出力データ信号を生成し、 前記複数のアンテナ素子を使用して、前記出力データ信号を前記複数の第1のクライアント装置へ送信することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項6】 前記第1の位置は、高さ成分を含むことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項7】 前記アレイコントローラは、さらに、 前記第1の位置に基づいて、前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置について動きベクトルを決定することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。 【請求項8】 無線通信方法であって、 アレイコントローラによって、第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子を含む複数のアンテナ素子を使用して、1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置から第1の信号を受信することと、 前記アレイコントローラによって、前記第1の信号が前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子によって受信されたとき、ある時間の差分に基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についてリバースタイミングを計算することと、 前記アレイコントローラによって、前記リバースタイミングに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定することと、 前記アレイコントローラによって、前記第1の位置において電磁波の強め合う干渉を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調することと、 前記アレイコントローラによって、前記複数のアンテナ素子を介して、前記電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置へ送信することと を含むことを特徴とする無線通信方法。 【請求項9】 前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングは、 各それぞれのアンテナ素子について前記第1の信号のそれぞれの入力時間オフセットを記録することと、 前記それぞれの入力時間オフセットに基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についての前記リバースタイミングを計算することと によってさらに計算されることを特徴とする請求項8記載の無線通信方法。 【請求項10】 前記アレイコントローラによって、前記複数のアンテナ素子を介して、1つまたは複数の新しい第2のクライアント装置から第2のメッセージを受信することと、 前記アレイコントローラによって、前記第2のメッセージに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第2の位置を決定することと、 前記アレイコントローラによって、前記複数のアンテナ素子を使用して、前記第2の位置において電磁波の強め合う干渉を生成すること をさらに含むことを特徴とする請求項8記載の無線通信方法。 【請求項11】 前記第1のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最も早い前記第1の信号を受信し、 前記第2のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最後の前記第1の信号を受信することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。 【請求項12】 前記第1のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最も早い前記第1の信号を受信し、 前記第2のアンテナ素子は、前記複数のアンテナ素子の中で最後の前記第1の信号を受信することを特徴とする請求項8記載の無線通信方法。」 2 補正の適否 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る以下の補正事項が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。 (1)上記1からみて、請求項1に係る補正事項は、以下の「補正事項1」~「補正事項4」である。(下線は、補正箇所である。) 補正事項1:本件補正前の「前記第1の信号が前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子によって受信されたとき、ある時間の差分に基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についてリバースタイミングを計算し、」との事項を、本件補正後の「前記第1の信号が前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子によって受信されたとき、ある時間の差分を表す入力時間オフセットに基づいて前記複数のアンテナ素子の各々についてリバースタイミングを計算し、」とする補正事項。 補正事項2:本件補正前の「前記リバースタイミングに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定し、」との事項を、本件補正後の「前記第1の信号の前記入力時間オフセットを分析することによって得られる、前記複数のアンテナ素子を含む基地局送信機アレイの高さに対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の高度角と、前記基地局送信機アレイでの北に対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の方向を識別することによって得られる方位角と、前記基地局送信機アレイと前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置との間の距離とに基づいて、3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定し、」とする補正事項。 補正事項3:本件補正前の「前記第1の位置において電磁波の強め合う干渉を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調し、」との事項を、本件補正後の「前記第1の位置において電磁波の強め合う強度信号を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調することと、」とする補正事項。 補正事項4:本件補正前の「前記複数のアンテナ素子を使用して、前記電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置へ送信することを特徴とする」との事項を、本件補正後の「前記複数のアンテナ素子を使用して、前記電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置へ送信することと、を含むことを特徴とする、」とする補正事項。 (2)補正事項2について ア 補正事項2が特許法第17条の2第5項第1号に規定される「請求項の削除」を目的とするものでないことは明らかである。 イ 補正事項2は、「新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定」することが、「前記リバースタイミングに基づいて」いることを、「前記第1の信号の前記入力時間オフセットを分析することによって得られる、前記複数のアンテナ素子を含む基地局送信機アレイの高さに対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の高度角と、前記基地局送信機アレイでの北に対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の方向を識別することによって得られる方位角と、前記基地局送信機アレイと前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置との間の距離とに基づいて」いることに補正するものであるから、本件補正前に特定されていた「前記リバースタイミング」に基づいているとの事項を削除するものである。 そして、本件補正前においては「リバースタイミング」は、「ある時間の差分に基づいて」「計算」されるものであり、本件補正後の「前記入力時間オフセット」は、補正事項1により「ある時間の差分を表す」ものであるから、本件補正後の「入力時間オフセット」は、本件補正前の「リバースタイミング」を減縮したものではない。 そうすると、本件補正後の「(「ある時間の差分を表す」)前記入力時間オフセットを分析することによって得られる、前記複数のアンテナ素子を含む基地局送信機アレイの高さに対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の高度角と、前記基地局送信機アレイでの北に対する前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の位置の方向を識別することによって得られる方位角と、前記基地局送信機アレイと前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置との間の距離とに基づいて」は、本件補正前の「(「ある時間の差分に基づいて」「計算」される)前記リバースタイミングに基づいて」を減縮したものではない。 よって、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。 ウ 本件補正前の「前記リバースタイミングに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定し、」との記載に「誤記」と考えられる事項が存在しないことは、その記載からして明らかである。 よって、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第3号に規定される「誤記の訂正」を目的とするものではない。 エ 本件補正前の「前記リバースタイミングに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定し、」との記載には、その記載のとおり、「前記リバースタイミングに基づいて」第1の位置を決定することが明確に特定されているから、明瞭でない記載は存在しない。 よって、特許法第17条の2第5項第4号に規定される「明りようでない記載の釈明」を目的とするものではない。 請求人は、令和4年3月24日に提出した上申書において、 「1)審判請求時の補正の目的について 前置報告書にてご指摘された上記2つの問題点に対応する請求項1の2つの補正箇所は、令和2年8月18日付け拒絶理由通知書の理由2(1)(2)(サポート要件、すなわち特許法第36条第6項第1号)で指摘された内容に対処するためのものです。具体的な指摘内容は、理由2(1)では「電磁波の強め合う干渉を生成する」ことは、発明の詳細な説明に記載されていないこと、理由2(2)では「リバースタイミングに基づいて・・・第1のクライアント装置の第1の位置を決定する」ことは、発明の詳細な説明に記載されていないこと、をそれぞれ指摘されましたので、これら問題点を解消する目的で、審判請求時に請求項1の指摘された2箇所について補正をしたものでした。従いまして、審判請求時にした補正の目的は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項(理由2(1)(2))についてするものであって、明瞭でない記載の釈明にあたることを目的とすることは明らかであります。」 と主張する。 しかしながら、補正事項2に関連する、令和2年8月13日付けの特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由は、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の規定を満たしていないことであり、特許法第36条第6項第2号(明確性)の規定を満たしていないことを通知するものではない。 そして、本件補正前の「前記リバースタイミングに基づいて3次元空間内における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定し、」という記載は明確であって、本件補正前の請求項1に係る発明は技術的に明瞭に特定されているものであり、明瞭でない記載は存在しないから、上記補正事項2は、明瞭でない記載の釈明をするものとはいえない。 よって、上申書の主張は採用できない。 オ 上記ア~エのとおり、補正事項2は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、補正事項2を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反したものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和3年11月29日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 第4 原査定の拒絶の理由 拒絶査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 理由1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ・請求項 1-12 請求項1の「第1のクライアント装置の第1の位置を決定し」に関して、発明の詳細な説明の[0041]には、基地局送信機アレイ1020を用いてクライアント装置110の位置を決定することが記載されている。しかしながら、[0041]の記載は、当業者が位置決定を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。請求項2-12についても同様の点が指摘される。 理由2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ・請求項 1-12 (1)請求項1には「前記第1の位置において電磁波の強め合う干渉を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調し」と記載されている。 しかし、「電磁波の強め合う干渉を生成する」ことは、発明の詳細な説明に記載されていない。 よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。請求項2-12についても同様の点が指摘される。 (2)請求項1には、「前記リバースタイミングに基づいて・・・第1のクライアント装置の第1の位置を決定」することが記載されている。 しかし、発明の詳細な説明には、[0041]に「時間オフセットを分析することで・・・高度角を決定することができる」と記載されているのみであり、「リバースタイミング」に基づいて第1の位置を決定することは記載されていない。 よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。請求項2-12についても同様の点が指摘される。 ・請求項 5 (1)請求項5に記載された「前記第1の信号を、各々が前記第1のクライアント装置の1つに対応する複数のデータ信号に分離し」は、発明の詳細な説明に記載されていない。 (2)請求項5に記載された「応答データ信号」は発明の詳細な説明に記載されていない。 ・請求項 7 請求項7に記載された「動きベクトル」は、発明の詳細な説明に記載されていない。 第5 当審の判断 1 原査定の拒絶の理由1(実施可能要件)について 請求項1に記載される「第1のクライアント装置の第1の位置を決定し」に関して、発明の詳細な説明には、クライアント装置の位置の決定について、以下の記載がある。 「【0041】 図10Bおよび図10Cは、GPSまたはナビゲーションサービスに類似した、位置情報サービスを用いる実施形態として、集中型データ通信システム1000を示している。図10Bおよび図10Cに示される例で、建物Bに隣接して示される、位置Lにあるクライアント装置110は、基地局送信機アレイ1020を用いることで、位置が特定される。基地局送信機アレイ1020の各アンテナ素子(不図示)の時間オフセットを分析することで、基地局送信機アレイ1020の高さHに対する位置Lの高度角を決定することができる。同様に、方位角θは、基地局送信機アレイ1020との関係で、北に対する位置Lの方向を識別することで決定することができる。さらに、距離dは基地局送信機アレイ1020の構成により決定されることから、位置Lのクライアント装置110にロケーションサービスを提供することができる。実際には、基地局送信機アレイ1020における時間遅延を調べることで、クライアントの方向が決定される。但し、基地局送信機アレイ1020は容積サイズを有するので、複数の決定された方向が、実際の位置(方向+距離)を提供することができるカバレッジがどこにあるかを決定するために、ボリュームのエッジからトレースされる。」 クライアント装置の位置を決定するためには、基地局送信機アレイからみた高度角、方位角、及び距離を特定することが必要であることは理解できるが、発明の詳細な説明には、「距離dは基地局送信機アレイ1020の構成により決定される」とのみ記載されるものであり、基地局送信機アレイ1020の構成により、クライアント装置の位置に依らないで、どのように距離を決定できるのか、理解できない。 そうすると、発明の詳細な説明は、クライアント装置の位置の決定について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 2 原査定の拒絶の理由2(サポート要件)について ・請求項1 (1)請求項1に記載される「前記第1の位置において電磁波の強め合う干渉を生成するために、前記複数のアンテナ素子を同調し」について 発明の詳細な説明には、「電磁波の強め合う干渉を生成する」という記載はされていないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 (2)請求項1に記載される「前記リバースタイミングに基づいて・・・第1のクライアント装置の第1の位置を決定」について ア 発明の詳細な説明には、「リバースタイミング」及び「(第1のクライアント装置の)第1の位置を決定する」ことに関して以下の事項が記載されている。 (ア)「【0029】 アレイコントローラ600は、特定のクライアント装置110に関する概念コンポーネント610において、クライアント装置110からの信号を受信する。信号は、各アンテナ素子のプロセッサ500のA/Dエンコーダ550を介して、間接的に受信される。各アンテナ素子121からの信号は、送信に用いられる、クライアント装置110の時間オフセットの「リバースタイミング」を用いることで、他の全てのアンテナ素子121からの信号に加えられる。リバースタイミングは、以下の式に従って計算される。 リバースタイミング=(クライアント時間オフセットの最大値)-(クライアント時間オフセット) 式(3) ここで、リバースタイミングは、0と各クライアントに関するクライアント時間オフセットの間の有効な数であり、また、時間オフセットの最大値は、最初にアンテナ素子121がある信号を受信してから、最後にアンテナ素子121がそれと同じ信号を受信するまでの時間の差分である。」 (イ)「【0041】 図10Bおよび図10Cは、GPSまたはナビゲーションサービスに類似した、位置情報サービスを用いる実施形態として、集中型データ通信システム1000を示している。図10Bおよび図10Cに示される例で、建物Bに隣接して示される、位置Lにあるクライアント装置110は、基地局送信機アレイ1020を用いることで、位置が特定される。基地局送信機アレイ1020の各アンテナ素子(不図示)の時間オフセットを分析することで、基地局送信機アレイ1020の高さHに対する位置Lの高度角を決定することができる。同様に、方位角θは、基地局送信機アレイ1020との関係で、北に対する位置Lの方向を識別することで決定することができる。さらに、距離dは基地局送信機アレイ1020の構成により決定されることから、位置Lのクライアント装置110にロケーションサービスを提供することができる。実際には、基地局送信機アレイ1020における時間遅延を調べることで、クライアントの方向が決定される。但し、基地局送信機アレイ1020は容積サイズを有するので、複数の決定された方向が、実際の位置(方向+距離)を提供することができるカバレッジがどこにあるかを決定するために、ボリュームのエッジからトレースされる。」 イ 「リバースタイミング」について 上記ア(ア)において、「各アンテナ素子121からの信号は、送信に用いられる、クライアント装置110の時間オフセットの「リバースタイミング」を用いることで、他の全てのアンテナ素子121からの信号に加えられる。」と記載されているように、「リバースタイミング」は、基地局送信機アレイが備えるアンテナ素子121からクライアント装置110に信号を送信する際に用いられるものであり、クライアント装置110の位置を決定する際に用いられるものではない。 ウ 「第1の位置を決定する」ことについて 上記ア(イ)において、「基地局送信機アレイ1020の各アンテナ素子(不図示)の時間オフセットを分析することで、基地局送信機アレイ1020の高さHに対する位置Lの高度角を決定することができる。」、「同様に、方位角θは、基地局送信機アレイ1020との関係で、北に対する位置Lの方向を識別することで決定することができる。」、「さらに、距離dは基地局送信機アレイ1020の構成により決定される」と記載されている様に、クライアント装置110の位置を決定する際には、「各アンテナ素子の時間オフセット」、「基地局送信機アレイ1020との関係(北に対する位置Lの方向)」、「基地局送信機アレイ1020の構成」が用いられることは記載されているものの、「リバースタイミング」が用いられる旨は記載されていない。 エ 発明の詳細な説明のその他の記載について 発明の詳細な説明における、上記ア(ア)及び(イ)以外の箇所の記載を参酌しても、「リバースタイミング」がクライアント装置の位置を決定する際に用いられるとの記載又はその旨を示唆する記載はない。 オ 上記ア~エより、請求項1に記載されている「前記リバースタイミングに基づいて・・・第1のクライアント装置の第1の位置を決定」との事項は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 第6 むすび 以上のとおり、この出願は、発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 また、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-016277

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