特許拒絶査定不服審判
2023-001012
集中型データ通信に関する方法および装置
- 審判番号
- 2023-001012
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-022723
- 請求日
- 2023年01月20日
- 審決日
- 2023年11月07日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オッシア インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 稲葉 崇
- 分類
- P18 .537-Z (H04B) / P18 .561-Z (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第50条の2、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 22723「集中型データ通信に関する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月 8日出願公開、特開2021-101539〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2013年2月22日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2015-558991号の一部を平成30年4月19日に新たな特許出願とした特願2018-80745の一部を令和元年5月8に新たな特許出願とした特願2019-88341の一部を令和3年2月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年 2月16日 上申書
令和 4年 2月 9日付け 拒絶理由通知書(特許法50条の2の通知を伴う)
5月10日 意見書・手続補正書
9月14日付け 補正の却下の決定
拒絶査定
令和 5年 1月20日 審判請求書・手続補正書
3月15日 前置報告書
5月16日 上申書
以下では、令和4年9月14日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和5年1月20日の手続補正書による補正を「本件補正」といい、令和5年5月16日の上申書を「上申書2」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付した。
「【請求項1】
集中型データを無線で送信する方法であって、
3次元空間において複数のカバレッジローブを形成するために、3次元配列で構成された複数のアンテナアレイ素子の少なくとも1つの第1のサブセットを同調するステップであって、前記複数のアンテナアレイ素子は電磁放射をそれぞれ受信する、該ステップと、
前記複数のカバレッジローブの少なくとも1つにおいて、1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置を検出するステップと、
前記少なくとも1つの第1のサブセットによって、前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置から第1のメッセージを受信するステップであって、前記少なくとも1つの第1のサブセットは、前記第1のメッセージを含む電磁放射の進行方向に沿って配列された前記複数のアンテナアレイ素子の一部である、該ステップと、
前記第1のメッセージの受信時に前記少なくとも1つの第1のサブセットに含まれる各アンテナアレイ素子における各受信データの入力時間オフセットに基づいて、前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の各々への方向を決定することにより、3次元空間における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定するステップであって、前記入力時間オフセットは、前記各アンテナアレイ素子の配置に起因する電磁放射の経路長差に基づく、該ステップと、
前記入力時間オフセットに基づいて、前記少なくとも1つの第1のサブセットまたは前記複数のアンテナアレイ素子の少なくとも1つの第2のサブセットを同調して、前記第1の位置において電磁波の強め合う強度信号を生成するステップであって、前記少なくとも1つの第2のサブセットは、前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の各々の移動に起因して再較正された前記複数のアンテナアレイ素子の一部である、該ステップと、
前記少なくとも一つの第1または第2のサブセットによって、前記電磁波を前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置に送信するステップと、
を含むことを特徴とする方法。」
2 本件補正による新規事項追加の有無
本件補正によって、請求項1に係る発明には、「前記少なくとも1つの第1のサブセットは、前記第1のメッセージを含む電磁放射の進行方向に沿って配列された前記複数のアンテナアレイ素子の一部である」との発明特定事項が導入された。
しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「電磁放射の進行方向」についての記載が存在しない。
詳述すれば、当初明細書等には、「基地局送信機アレイ821が稼動している場合、サービス領域内で新しいクライアントを検出し、通信に関する時間オフセットを設定する。クライアント装置110は、電源が投入されると、基地局送信機アレイ820との通信を試みる。したがって、基地局送信機アレイ820は、特定のアンテナ素子821を特定の方向に同調する。例えば、図8Aでは、アンテナ素子9、11、および12は、第1の方向に同調される。図8Bでは、アンテナ素子5、15、および19は、第2の方向に同調される。図8Cでは、アンテナ素子6、14、および17は、第3の方向に同調される。図8Dでは、アンテナ素子8、9、および11は、第4の方向に同調される。図8Eでは、アンテナ素子1、5、および15は、第5の方向に同調される。図8Fでは、アンテナ素子3,6、および14は、第6の方向に同調される。同調は、上述の概念コンポーネント610のような専用の回路などにより、ソフト的な方法で実行される。」(【0034】)との記載があり、図8A(下図)によれば、アンテナ素子9、11及び12が横方向に一列に配列されている(図8B~図8Fにつても同様であるので、図は省略する。)ものの、下図におけるアンテナ素子9、11及び12の配列された方向(紙面左右方向)がメッセージを含む電磁放射の進行方向であることを伺わせる記載は当初明細書等には存在せず、技術常識を考慮しても、アンテナ素子を電磁放射の進行方向に沿って配列することは当然のこととはいえない。
[図:0001408663000001.jpg]
請求人は、本件補正が明細書の【0009】、【0015】、【0017】、【0019】~【0021】、【0034】、【0041】及び【0044】等の記載に基づいている旨、主張する(審判請求書3頁)が、当初明細書等における請求人指摘の箇所を参照しても、アンテナ素子を電磁放射の進行方向に沿って配列することは記載されておらず、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、上申書2にて、本件補正が新規事項追加に当たる旨の前置報告に対して、補正案を提示し、当該補正案に基づく主張をする(上申書2、1~3頁)が、該補正案を採用する理由はないため、請求人の主張は採用できない。
以上のとおりであるから、本件補正によって導入された前記発明特定事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導かれる事項ではない。
3 本件補正の適否
前記2のとおり、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではないから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下された。また、令和4年5月10日の手続補正書による補正は、同年9月14日付け補正の却下の決定により却下された。よって、本願の特許請求の範囲は本願の願書に最初に添付されたのものである。
そして、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
集中型データを無線で送信する方法であって、
3次元空間において複数のカバレッジローブを形成するために複数のアンテナアレイ素子の第1のサブセットを同調するステップであって、前記複数のアンテナアレイ素子は電磁放射を受信する、該ステップと、
前記複数のカバレッジローブの少なくとも1つにおいて、1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置を検出するステップと、
前記第1のサブセットによって、前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置から第1のメッセージを受信するステップと、
前記第1のメッセージに基づいて、3次元空間における前記1つまたは複数の新しい第1のクライアント装置の第1の位置を決定するステップと、
前記第1の位置において電磁波の強め合う強度信号を生成するために、前記複数のアンテナアレイ素子の第2のサブセットを同調するステップと、
前記第1および第2のサブセットによって、前記電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置に送信するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の位置を前記決定するステップは、前記複数のアンテナアレイ素子のうちの1つまたは複数のためのリバースタイミングを計算するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
●理由1(実施可能要件)について
(省略)
●理由2(サポート要件)について
・請求項 1~10
「第1のサブセット」と「第2のサブセット」とを用いて、「電磁波を前記1つまたは複数の第1の装置に送信する」ことは、発明の詳細な説明に記載されていない。
請求項2~10についても同様の点が指摘される。
・請求項 2、3
請求項2には、「前記第1の位置を前記決定するステップは、…リバースタイミングを計算するステップを含む」と記載されている。
しかし、発明の詳細な説明には、[0041]に「時間オフセットを分析することで…高度角を決定することができる」と記載されているのみであり、「第1の位置」を決定するステップが「リバースタイミング」を含むことは記載されていない。
・請求項 6
請求項6に記載された「前記単一のデータ入力信号を複数のデータ信号に分離するステップであって、各々は前記第1のクライアント装置の1つに対応する、ステップ」は、発明の詳細な説明に記載されていない。
第5 サポート要件についての判断
本願発明は、「前記第1の位置を前記決定するステップは、前記複数のアンテナアレイ素子のうちの1つまたは複数のためのリバースタイミングを計算するステップを含む」(請求項2)との発明特定事項を含むので、以下では、本願の発明の詳細な説明に、「クライアント装置の位置を決定するステップ」が「リバースタイミングを計算するステップ」を含むことが記載されているか否かを検討する。
1 発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
(1)「【0029】
アレイコントローラ600は、特定のクライアント装置110に関する概念コンポーネント610において、クライアント装置110からの信号を受信する。信号は、各アンテナ素子のプロセッサ500のA/Dエンコーダ550を介して、間接的に受信される。各アンテナ素子121からの信号は、送信に用いられる、クライアント装置110の時間オフセットの「リバースタイミング」を用いることで、他の全てのアンテナ素子121からの信号に加えられる。リバースタイミングは、以下の式に従って計算される。
リバースタイミング=(クライアント時間オフセットの最大値)-(クライアント時間オフセット) 式(3)
ここで、リバースタイミングは、0と各クライアントに関するクライアント時間オフセットの間の有効な数であり、また、時間オフセットの最大値は、最初にアンテナ素子121がある信号を受信してから、最後にアンテナ素子121がそれと同じ信号を受信するまでの時間の差分である。」
(2)「【0041】
図10Bおよび図10Cは、GPSまたはナビゲーションサービスに類似した、位置情報サービスを用いる実施形態として、集中型データ通信システム1000を示している。図10Bおよび図10Cに示される例で、建物Bに隣接して示される、位置Lにあるクライアント装置110は、基地局送信機アレイ1020を用いることで、位置が特定される。基地局送信機アレイ1020の各アンテナ素子(不図示)の時間オフセットを分析することで、基地局送信機アレイ1020の高さHに対する位置Lの高度角を決定することができる。同様に、方位角θは、基地局送信機アレイ1020との関係で、北に対する位置Lの方向を識別することで決定することができる。さらに、距離dは基地局送信機アレイ1020の構成により決定されることから、位置Lのクライアント装置110にロケーションサービスを提供することができる。実際には、基地局送信機アレイ1020における時間遅延を調べることで、クライアントの方向が決定される。但し、基地局送信機アレイ1020は容積サイズを有するので、複数の決定された方向が、実際の位置(方向+距離)を提供することができるカバレッジがどこにあるかを決定するために、ボリュームのエッジからトレースされる。」
2 判断
他方、発明の詳細な説明の【0029】の記載によれば、リバースタイミングは、「時間オフセットの最大値」及び「時間オフセット」から計算されると解される。
他方、発明の詳細な説明の【0041】の記載によれば、クライアント装置の位置(高度角、方位角及び距離)は、「時間オフセット」及び「基地局送信機アレイ1020の構成」によって決定されると解される。
そうすると、リバースタイミング及びクライアント装置の位置は、「時間オフセット」に基づいて個別に決定されると解される一方、クライアント装置の位置を決定するためにリバースタイミングが必要であると解することはできないし、クライアント装置の位置を決定する過程でリバースタイミングが計算されると解することもできない。
よって、前記1の記載からは、「クライアント装置の位置を決定するステップ」が「リバースタイミングを計算するステップ」を含むと認めることはできない。
また、発明の詳細な説明のその余の記載を参照し、かつ、技術常識に鑑みても、「クライアント装置の位置を決定するステップ」が「リバースタイミングを計算するステップ」を含むとは認められない。
以上によれば、請求項2に記載された発明特定事項を含む本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものであると認めることはできない。
したがって、本願の特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法36条6項1号の規定に違反する。
3 請求人の主張について
請求項2のサポート要件について、請求人は、本件補正後の請求項の記載に基づいて主張する(審判請求書6~7頁)が、本件補正は前記第2のとおり却下されたので、請求人の主張は前提において失当である。
また、請求人は、上申書2に提示した補正案に基づいて本願の特許請求の範囲がサポート要件を満たす旨を主張をする(上申書2、4~5頁)が、該補正案を採用する理由はないため、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
前記第5のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法36条6項1号の規定に違反する。
したがって、他の請求項の記載について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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