特許拒絶査定不服審判
2021-016153
窒化アルミニウムウェーハの製造方法
- 審判番号
- 2021-016153
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-105990外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月25日
- 審決日
- 2022年10月11日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】JFEミネラル株式会社
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 分類
- P18 .536-Z (C30B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-105990「窒化アルミニウムウェーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 8月29日出願公開、特開2019-142771〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月7日に出願された特願2016-1732号(以下、「原出願」という。)の一部を令和元年6月6日に特願2019-105990号として新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 6月23日付け:拒絶理由通知
同年 8月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 1月27日付け:拒絶理由通知
同年 3月25日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月25日付け:拒絶査定
同年11月25日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和3年3月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであり、請求項1~3に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
昇華法により、窒化アルミニウム単結晶であって、該窒化アルミニウム単結晶の母体を構成するマトリックス領域と、該マトリックス領域内に含まれる少なくとも1つの単結晶領域であるドメイン領域とを有し、前記窒化アルミニウム単結晶は、窒化アルミニウム単結晶の結晶成長方向に垂直な断面において、外周から径方向内側に3mmの範囲である外周部と、外周部よりも径方向内側に位置する内部領域と有し、前記ドメイン領域が前記外周部のみに存在する窒化アルミニウム単結晶を製造し、得られた窒化アルミニウム単結晶に対してウェーハ加工処理を施して、窒化アルミニウムウェーハを得ることを特徴とする窒化アルミニウムウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記ドメイン領域の少なくとも1つが、結晶の成長方向において結晶全体に亘って延在している、請求項1に記載の窒化アルミニウムウェーハの製造方法。
【請求項3】
結晶構造がウルツ鉱構造である、請求項1または2に記載の窒化アルミニウムウェーハの製造方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である、令和3年1月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2は、次のとおりのものである。
1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
●理由1(実施可能要件)について
・請求項 1-3
請求項1では「ドメイン領域が前記外周部のみに存在する」と記載している。請求項1に係る発明は「窒化アルミニウムウェーハの製造方法」(物を生産する方法)の発明であるから、当業者がその方法により物を生産できなければならない。しかし、発明の詳細な説明には、如何にして外周から3mmの範囲(外周部)にのみドメイン領域が存在する生産物を得るのか、外周部のみにドメインが存在するようにする製造条件等の数値は何ら記載されておらず、具体的な原材料、処理工程が記載されているとはいえない。結晶内のドメイン位置を制御することは困難であるという出願時の技術常識に照らすと、発明の詳細な説明は、請求項1を実施可能な程度に記載されているとはいえない。請求項1を引用する請求項2、3についても同様である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
●理由2(明確性)について
・請求項 1-3
請求項1では、「マトリックス領域内に含まれる少なくとも1つのドメイン領域」と記載している。
しかし、この「ドメイン領域」とは如何なる領域なのか、当業者は明確に理解できない。発明の詳細な説明には、「単結晶中における多結晶領域、いわゆるドメインが観察された」(段落0025)と記載しているが、その一方で、X線回折による結果は、ドメイン領域のない単結晶AlNと同じであり、熱的特性、電気特性も同じである旨記載しているから、多結晶とはいえない。さらに、「ドメイン領域の存在により、結晶の切断が容易になる理由は明らかではない。」との記載もある。また、ドメイン領域を透過電子顕微鏡で確認した旨の記載はあるが(段落0024)、図面には概念図しかなく、「明確に確認できる『ドメイン領域』D」とはどのように明確に確認可能なのか、当業者が明確に把握できない。そうすると、当業者は何をもって「ドメイン領域」と判断するのか、「ドメイン領域」とは如何なる領域なのか理解できない。請求項2、3についても同様である。
よって、請求項1-3に係る発明は明確でない。
第4 実施可能要件についての判断
1 明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、方法の発明又は物を生産する方法にあっては、当業者が明細書及び図面の記載並びに本願の出願当時の技術常識に基づいて、その方法を使用できるように、具体的に記載されていることが必要であると解される。
2 請求項1に係る発明は、「窒化アルミニウムウェーハの製造方法」に関する物を生産する方法の発明であって、「昇華法により、窒化アルミニウム単結晶であって、該窒化アルミニウム単結晶の母体を構成するマトリックス領域と、該マトリックス領域内に含まれる少なくとも1つの単結晶領域であるドメイン領域とを有し、前記窒化アルミニウム単結晶は、窒化アルミニウム単結晶の結晶成長方向に垂直な断面において、外周から径方向内側に3mmの範囲である外周部と、外周部よりも径方向内側に位置する内部領域と有し、前記ドメイン領域が前記外周部のみに存在する窒化アルミニウム単結晶を製造し、得られた窒化アルミニウム単結晶に対してウェーハ加工処理を施して、窒化アルミニウムウェーハを得る」と特定されている。
そうすると、請求項1に係る発明の「少なくとも1つの単結晶領域であるドメイン領域」は、「窒化アルミニウム単結晶の母体を構成するマトリックス領域」「内に含まれる」ものであって、かつ、「窒化アルミニウム単結晶の結晶成長方向に垂直な断面において、外周から径方向内側に3mmの範囲である外周部」「のみに存在する」ものである。
3 一方、本願明細書及び図面には、上記2で示した請求項1に係る発明の、「窒化アルミニウム単結晶の母体を構成するマトリックス領域」「内に含まれる」ものであって、かつ、「窒化アルミニウム単結晶の結晶成長方向に垂直な断面において、外周から径方向内側に3mmの範囲である外周部」「のみに存在する」、「少なくとも1つの単結晶領域であるドメイン領域」を形成するための具体的な製造方法及び製造条件は、全く記載されていない。
また、上記「窒化アルミニウム単結晶の母体を構成するマトリックス領域」「内に含まれる」ものであって、かつ、「窒化アルミニウム単結晶の結晶成長方向に垂直な断面において、外周から径方向内側に3mmの範囲である外周部」「のみに存在する」、「少なくとも1つの単結晶領域であるドメイン領域」を形成するための方法が、本願の原出願の出願当時において技術常識であったともいえない。
4 ここで、請求人は、令和3年11月25日付け審判請求書の「3.理由1(特許法第36条第4項第1号)について」において、概略、以下の主張をしている。
主張1:特開平8-245299号公報(以下、「提示文献1」という。)、特開平11-278985号公報(以下、「提示文献2」という。)、特表2002-527342号公報(以下、「提示文献3」という。)の記載から、昇華法により、結晶性が高く、ドメイン領域の存在しない単結晶を製造する様々な技術が提案されており、成長基板に温度分布を与えて結晶性を高める技術1つを取ってみても数多く存在し、つまり、成長基板に温度分布を与えて結晶性を高めてドメイン領域のない単結晶を製造する技術は当業者の技術常識であり、したがって、当業者であれば、本願の出願当初明細書の記載及び本願の原出願の出願当時の当業者の技術常識に基づいて、昇華法により窒化アルミニウム単結晶を製造する際に、例えば、結晶性の高いドメイン領域のない単結晶を得る上述の対策を施した方法と、上述の対策を施さない方法とを組み合わせることによって、請求項1に係る発明の構成である、少なくとも1つのドメイン領域が外周部のみに存在する窒化アルミニウム単結晶を製造することができる。
主張2:提示文献2、特開2011-190129号公報(以下、「提示文献4」という。)、特開2011-144082号公報(以下、「提示文献5」という。)の記載から、昇華法により、成長基板(種結晶)に温度分布を設けてドメイン領域の位置を制御し、結晶性の高い単結晶を得ることは周知技術であり、蓋体に温度分布(温度勾配)を設けることによってドメイン領域の収斂を制御することも周知技術であり、したがって、当業者であれば、蓋体の温度分布(温度勾配)を制御して、外周から3mmの外周部のみにドメイン領域が存在するようにAlN単結晶を製造することができる。
そこで、請求人の上記主張1、2について検討する。
(1)提示文献1~5の記載事項
ア 提示文献1(特開平8-245299号公報)には以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「【0014】それゆえに、本発明の目的は、貫通欠陥が低減化されたSiC単結晶の成長方法を提供することである。」
「【0020】図1に示すように、種結晶基板20の一方の縁部から対向する他方の縁部に渡って温度勾配を設けると、温度が相対的に低い縁部において結晶核の発生が早くしかも多くなる。成長の初期過程では、この結晶核から島状成長が行われ、それらが互いに結合し合って低温側の縁部にステップ(段差)が形成される。ステップが形成されると、そのステップの側壁に分子種が吸着し、ステップの発生した低温側の縁部から高温の縁部に向かってステップの成長が進行するとともに、そのステップ上の低温側の縁部に新たなステップが形成される。この過程が繰り返されることにより、図1に示すようなステップ成長機構を主体とする成長層21が形成される。結果的に、渦巻き成長の発生が抑制され、渦巻き成長と密接な関係がある貫通欠陥の発生が防止される。
「【図1】
[図:0001391670000001.jpg]
」
イ 提示文献2(特開平11-278985号公報)には以下の記載がある。
「【請求項1】 種結晶載置部に設置した種結晶基板上に単結晶を成長させることにより単結晶を製造する方法において、単結晶の成長初期には種結晶の成長表面に少なくとも一つ相対的な低温領域を設け、単結晶成長の中後期には成長表面の温度分布が略均一になる状態にて単結晶を成長させることを特徴とする単結晶の製造方法。」
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単結晶の製造方法、更に詳しくは、種結晶載置部に設置した種結晶基板上に単結晶を成長させることにより単結晶を製造する方法において、単結晶の成長初期に種結晶の成長表面に少なくとも一つ相対的な低温領域を設けることにより複数個の成長核の生成を妨げ、それにより結晶欠陥の少ない単結晶を製造することができる単結晶の製造方法に関するものである。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0005】本発明は上記従来技術の問題点を解決するためのものであり、その目的とするところは、単結晶の成長初期における成長核の生成を制御し、複数の成長核の生成を抑制することを可能にして、欠陥が少ない単結晶を得ることができ且つ成長結晶の大口径化が容易な単結晶の製造方法を提供することにある。」
「【0009】
【実施例】以下の実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の方法に用いる装置
図1は本発明の方法に用いることができる炭化珪素単結晶製造装置の一例の概略構成図である。反応容器は、黒鉛製るつぼ1と黒鉛製蓋体2とにより構成されている。黒鉛製るつぼ1内には炭化珪素原料粉末3が、また種結晶載置部を兼ねる黒鉛製蓋体2には炭化珪素原料粉末3に対向して種結晶4が設置されている。本例では、黒鉛製蓋体2に種結晶の成長面を局所的に低温化するための座繰り6を設けた。種結晶の成長は、黒鉛製の抵抗発熱体(図示せず)による温度調整と、不活性ガス等の圧力調整により行われる。具体的には、原料温度:約2200℃~2400℃、種結晶温度:約2100℃~2300℃、雰囲気圧力:約1Torr~数10Torrにて、炭化珪素単結晶5を成長させる。なお、以下の図において、7は切れ込み、8はポーラスカーボン、9は溝、10は傾斜載置部を示す。
【0010】実施例1
図2の蓋体(種結晶載置部)を用いて、昇華法で4H多形の炭化珪素バルク単結晶を成長させた。種結晶基板としては、貫通孔欠陥が存在しない4H多形の炭化珪素単結晶の(0001)ジャスト面を用いた。直径25mmの凸型部分を含む蓋体の裏側(種結晶基板を設置する面の反対側の面)に、直径2mm、種結晶接着面からの距離Lが2mmになるように座繰り6を作製した。この座繰り6付き蓋体に種結晶を固定し、図1に示す単結晶製造装置に配置し、従来の昇華法工程を用いて、上記条件にて炭化珪素単結晶を成長させた。この場合、座繰り6のある近傍は熱輻射により周辺部と比較して低温になる。すなわち種結晶の中央部は周辺部と比較して相対的に低温になる。このことは、種結晶中央部に接する炭化珪素ガスの過飽和度が種結晶周辺部と比較して高くなることを意味する。従って、種結晶中央部では成長核の核生成密度が高くなることが予想される。また、成長核同士の成長ステップの接合により導入されるらせん転位による成長ステップの密度もまた増加することが予想される。一方、種結晶周辺部では、中央部のステップの前進により成長が行われるステップフロー成長機構が支配的となる。本発明の方法により得られた幾つかの単結晶インゴットを成長方向に垂直に切断・研磨を行い、溶融アルカリエッチング法、直交偏光顕微鏡観察法を用いて欠陥密度の測定を行った。測定の結果、ウェハー全面にわたって貫通孔欠陥の存在は確認されなかった。次に前記単結晶インゴットについて、らせん転位密度を中央部と周辺部とで比較検討した。らせん転位密度は、単結晶インゴットから切り出した試料に溶融アルカリ(例えば、KOH:500℃×7分)エッチング法を適用してエッチピットを形成し、それを光学顕微鏡で観察することにより測定した。その結果、中央部:102 ~103 cm-2、周辺部:0~102 cm-2であり、主に中央部では2次元核生成機構により、周辺部ではステップフロー機構により単結晶の成長が行われていることが推察された。これらの成長機構は、中央部と周辺部とで温度差の生じ易い成長初期に顕著である。成長後期には、黒鉛製蓋体(黒鉛多結晶)などと比較して炭化珪素単結晶の熱伝導率が大きいため、成長表面の径方向の温度差は、成長装置(成長るつぼ側壁等)の温度分布に強く拘束されるようになることから、次第に小さくなる。すなわち、成長表面全面にわたって次第にステップフロー機構が支配的になっていくものと推察される。なお、成長中後期に成長面内の温度分布を均一にするには、能動的及び/又は受動的な輻射板を成長面に対向配置させる(図示せず)とその効果が増す。こうして得られた単結晶インゴットは、一つの結晶面で形成されているため、均一ドーピングに使用するためにも適しており、基板の製造歩留まりも向上した。従って、本発明の方法を貫通孔欠陥が無い種結晶に適用した場合、貫通孔欠陥の無い高品位単結晶を再現性良く製造することが可能となる。なお、本発明の方法により得られた単結晶には、らせん転位密度が相対的に高い箇所(中央部)が存在するが、現在、らせん転位がデバイス特性に及ぼす影響については明らかになっておらず、仮に将来、本発明の方法により得られた単結晶から製作されたデバイスの動作に不具合が生じる可能性が明らかになっても、らせん転位の位置が予め特定できているため、転位密度の低い部分(周辺部)を使用することにより、高性能のデバイスを作製することが可能である。」
「【図1】
[図:0001391670000002.jpg]
【図2】
[図:0001391670000003.jpg]
」
ウ 提示文献3(特表2002-527342号公報)には以下の記載がある。
「【請求項1】 以下の工程:すなわち、
バルク単結晶を成長させるのに必要な選択された元素Al、Si、N及びCの蒸気種を結晶成長閉鎖容器中に提供する工程;
当該結晶成長閉鎖容器に複式核形成部位を提供する工程;
結晶成長閉鎖容器における周囲表面に比べて低い温度まで当該核形成部位を選択的に冷却する工程;及び
各核形成部位において生じる単結晶質AlNx:SiCyの成長を規定する条件下で当該蒸気種を堆積させる工程を含む、AlNx:SiCy(式中、x+y=1及びxは1→0であり、yは0→1である)のバルク単結晶を製造する方法。」
「【0012】
発明の概要
本発明により、高い生産率で、AlN,SiC及びAlN:SiCの低欠陥密度低不純物のバルク単結晶を経済的に成長させることができる。
【0013】
一つの基本的な面において本発明は、 結晶成長閉鎖容器の周囲表面に比べて低い温度まで選択的に冷却された複式核形成部位によって提供される成長結晶界面上に蒸気種の流れを等方性で堆積できる方法及びシステムである。」
「【0022】
図面参照。AlN、SiC及びAlN:SiC合金の低欠陥密度低不純物のバルク単結晶を低コストで大量に生産するために設計されている本発明の結晶成長システム10の一つの形態を示している。システム10は、固体ソース材料15を含む下部帯16、選択された雰囲気、例えばN2を含み、そこを通って昇華されたソース蒸気種が核形成部位へと移動する中心帯18、及び昇華されたソース蒸気種が、選択的に冷却された核形成部位において再凝縮するときに結晶成長が起こる上部帯20を有する直立円筒形昇華炉12の形態で結晶成長閉鎖容器を含む。水冷ステンレス鋼ヒートシンクロッド22は、核形成部位を被っているグラファイト冷却ディスク部材23によって核形成部位を選択的に冷却するのに役立つ。炉12は、水平プレート加熱要素24及び直立円筒形加熱要素26によって加熱される。ステンレス鋼チャンバ30は、システム10のための外部格納容器構造として役立つ。チャンバ30は当業において公知の原理にしたがって水冷される(図示されていない)。」
「【図1】
[図:0001391670000004.jpg]
」
エ 提示文献4(特開2011-190129号公報)には以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0006】
そこで、本発明の目的は、成長結晶中における所定値以上の温度勾配を維持しつつ成長結晶の中心部と外周部との温度差を小さくして、良質で大口径の単結晶を得ることができる炭化ケイ素単結晶の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため、本発明は次のような特徴を有している。本発明の第1の特徴は、昇華用原料(昇華用原料15)を収容するるつぼ本体(るつぼ本体5)と、前記昇華用原料に対向した位置に種結晶(種結晶43)を取り付ける種結晶取付部(種結晶取付部21)が設けられた蓋体(蓋体3)とを有する坩堝(坩堝9)を備え、該坩堝の外周側から加熱される炭化ケイ素単結晶の製造装置(炭化ケイ素単結晶の製造装置1)であって、前記蓋体について、内周側の熱伝導率を外周側の熱伝導率よりも大きく設定していることを要旨とする。
【0008】
蓋体について、内周側の熱伝導率を外周側の熱伝導率よりも大きく設定しており、坩堝の外周側から加熱されるため、内周側から外周側に向かう温度勾配は、内周側が緩やかで、外周側が急になる。従って、蓋体における径方向中心と外周端縁との温度差を低減することができるため、単結晶中の周方向引っ張り応力が小さくなると共に、成長初期における種結晶の外周端縁の熱消失がなくなる。一方、成長結晶の外周端縁における温度勾配を所定値(例えば、1℃/cm)以上に維持することができる。ここで、成長結晶は、外周側に向かうにつれて下に凸の湾曲形状を維持しにくくなり、外周端縁では、最も凹面形状になりやすいという問題がある。従って、成長結晶の外周端縁における温度勾配を所定値以上に維持することによって、成長結晶全体の形状を下に凸の湾曲形状にすることができる。
【0009】
なお、蓋体における径方向中心と外周端縁との温度差は、所定値(例えば、20℃以下)に設定する必要がある。
【0010】
以上より、大きい口径の単結晶を作製する場合においても、蓋体における径方向中心と外周端縁との温度差を低減し、温度勾配を所定値以上に設定できるため、良質な単結晶を製造することができる。」
「【発明の効果】
【0015】
本発明に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置によれば、成長結晶中における所定値以上の温度勾配を維持しつつ成長結晶の中心部と外周部との温度差を小さくして、良質で大口径の単結晶を得ることができる。」
「【図1】
[図:0001391670000005.jpg]
」
オ 提示文献5(特開2011-144082号公報)には以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0009】
そこで、本発明は、炭化ケイ素単結晶の品質を低下させることなく、炭化ケイ素単結晶の大口径化に対応できる炭化ケイ素単結晶の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。 まず、本発明の第1の特徴は、炭化ケイ素を含む種結晶(種結晶11)と、該種結晶と対向する側に配設され前記種結晶の成長に用いられる昇華用原料(昇華用原料10)とを収容する坩堝(坩堝2)を備える炭化ケイ素単結晶の製造装置(炭化ケイ素単結晶の製造装置1)であって、前記坩堝は、前記昇華用原料が収容される坩堝本体(坩堝本体7)と、前記種結晶が配設される蓋体(蓋体8,30)とを備え、前記種結晶の径方向中央側に対応する前記蓋体の中央領域における厚み(厚みT1、T3)は、前記種結晶の径方向中央側よりも径方向外側に対応する周辺領域における前記蓋体の厚み(厚みT2、T4)よりも大きく設定されている。
【0011】
これによれば、坩堝を加熱したとき、蓋体の前記中央領域における温度と周辺領域における温度との温度差が小さくなり、大口径の炭化ケイ素単結晶を製造する際に、球面に近い形状を保持したまま高品質の炭化ケイ素単結晶を成長させることができる。以下、具体的に説明する。
【0012】
蓋体の径方向中央と径方向外側における温度差を小さくするには、厚い蓋体を用いて温度勾配を小さくすれば良いが、そうすると、結晶の周辺部において、球面状の単結晶を成長させる温度勾配の最低値以下になるおそれがある。また、種結晶の径方向中央部(中央領域)は外周部(周辺領域)よりも温度勾配を小さくすることが結晶成長の点では望ましい。従って、本発明においては、種結晶の中央領域に対応する部位の蓋体の厚みを、種結晶の周辺領域に対応する部位の蓋体の厚みよりも大きく形成することにより、蓋体の径方向中央部では温度勾配を小さくし、径方向外側では大きな温度勾配にしていることを要旨とする。」
「【発明の効果】
【0016】
本発明に係る炭化ケイ素単結晶の製造装置によれば、炭化ケイ素単結晶の品質を低下させることなく、炭化ケイ素単結晶の大口径化に対応できる。」
「【図1】
[図:0001391670000006.jpg]
」
(2)主張1について
上記(1)ア~ウにおける提示文献1~3の記載から、昇華法において、成長基板に温度分布を与えて結晶性の高い単結晶を製造する技術は、本願の原出願の出願当時の技術常識であったといえる。
しかし、上記提示文献1~5のいずれにも、昇華法により、ドメイン領域のない単結晶を製造すること、及び、ドメイン領域のある単結晶を製造することについては、何ら記載も示唆もされていない。さらに、上記提示文献1~5のいずれにも、昇華法により、結晶性の高い単結晶を得る上述の対策を施した方法と、上述の対策を施さない方法とを組み合わせることによって、請求項1に係る発明の構成である、少なくとも1つのドメイン領域が外周部のみに存在する単結晶を製造できることは、何ら記載も示唆もされていない。
したがって、昇華法において、成長基板に温度分布を与えて結晶性を高めてドメイン領域のない単結晶を製造する技術は、本願の原出願の出願当時の技術常識であったとはいえないし、また、本願の出願当時の技術常識に基づいて、本願の請求項1に係る発明の構成である、少なくとも1つのドメイン領域が外周部のみに存在する窒化アルミニウム単結晶を製造することができるともいえない。
(3)主張2について
上記(1)イ、エ、オにおける提示文献2、4、5の記載から、昇華法により、蓋体に温度分布(温度勾配)を設けることによって、成長基板(種結晶)に温度分布を設けて結晶性の高い単結晶を得ることは、本願の出願当時の周知技術であるといえる。
しかし、上記提示文献1~5のいずれにも、昇華法により、成長基板(種結晶)に温度分布を設けてドメイン領域の位置を制御すること、及び、蓋体に温度分布(温度勾配)を設けることによってドメイン領域の収斂を制御することは、何ら記載も示唆もされていない。さらに、上記提示文献1~5のいずれにも、昇華法により、蓋体の温度分布(温度勾配)を制御して、外周から3mmの外周部のみにドメイン領域が存在するように単結晶を製造することは、何ら記載も示唆もされていない。
したがって、昇華法により、成長基板(種結晶)に温度分布を設けてドメイン領域の位置を制御し、結晶性の高い単結晶を得ること、及び、蓋体に温度分布(温度勾配)を設けることによってドメイン領域の収斂を制御することは、いずれも、本願の原出願の出願当時における技術常識であるとはいえないし、また、本願の原出願の出願当時における技術常識に基づいて、蓋体の温度分布(温度勾配)を制御して、外周から3mmの外周部のみにドメイン領域が存在するようにAlN単結晶を製造することができるともいえない。
(4)まとめ
よって、請求人の上記主張1及び2はいずれも採用できない。
5 以上によれば、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願明細書及び図面の記載並びに本願の原出願の出願当時の技術常識に基づいて、請求項1に係る発明の「窒化アルミニウムウェーハの製造方法」を使用できるように、具体的に記載されているとはいえない。
したがって、上記1の判断手法に照らすと、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
また、請求項1を引用する請求項2、3に係る発明についても同様の理由により、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項2、3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-016153