特許拒絶査定不服審判
2021-016136
制御装置、無線通信装置、無線通信システム及び制御方法
- 審判番号
- 2021-016136
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-189732外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月25日
- 審決日
- 2022年08月10日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 志賀国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-189732「制御装置、無線通信装置、無線通信システム及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019- 68169、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月29日の出願であって、令和3年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年4月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月21日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、同年11月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年9月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由2 本願の請求項1-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2016-082381号公報
第3 本願発明
本願の請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和3年11月25日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶する記憶部と、
端末装置と無線通信を行う無線通信装置の指向性通信を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記端末装置の特性を示すデバイス識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように、前記指向性通信を制御する制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記端末装置と前記無線通信装置とが行う無線通信の通信品質を取得し、前記通信品質に基づいて前記通信条件を満たすための前記指向性通信のパラメータを決定し、決定したパラメータで動作するように前記通信装置を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
無線通信アンテナと、
前記無線通信アンテナにおける指向性通信を制御する通信制御部と、
端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と自装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶する記憶部と、
通信相手となる端末装置のデバイス識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように、前記指向性通信の制御内容を決定する決定部と、
を備え、
前記通信制御部は、前記決定部によって決定された制御内容で前記無線通信アンテナにおける指向性通信を制御する、
無線通信装置。
【請求項4】
端末装置を認証する認証装置と、
前記端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶するデータベースと、
無線通信アンテナを用いて前記端末装置と無線通信する無線通信装置と、
前記無線通信アンテナにおける指向性通信を制御する通信制御部と、
通信相手となる端末装置のデバイス識別情報に対応付けて前記データベースに記憶されている通信条件を満たすように、前記指向性通信の制御内容を決定する決定部と、
を備え、
前記通信制御部は、前記決定部によって決定された制御内容で前記無線通信アンテナにおける指向性通信を制御する、無線通信システム。
【請求項5】
端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶する記憶部を備えたコンピューターが、
端末装置と無線通信を行う無線通信装置の指向性通信を、前記端末装置の特性を示すデバイス識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように制御する制御方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2016-082381号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審にて付与したものである。
(1)「【0001】
本発明は、無線端末が通信可能なエリアを構築する基地局及びアンテナの制御方法に関する。」
(2)「【0019】
[基地局1の概要]
初めに、図1を参照して本発明の基地局1の概要について説明する。基地局1は、複数の送受信アンテナを備え、指向性制御が可能な無線基地局である。基地局1は、当該基地局1と無線通信可能な通信エリアの範囲を校正するためのエリア校正モードを備えており、当該エリア校正モードで決定した範囲をカバーするようにアンテナの指向性を制御することで、通信エリアを構築する。
【0020】
具体的には、基地局1は、基地局1に接続する無線端末(UE:User Equipment)9のリストを備え、図1(A)に示すように、エリア校正モードにおいてリスト内の無線端末9を検出する。リスト内の無線端末9を検出すると、基地局1は、当該無線端末9の方向及び当該方向に対する送信電力を決定し、決定した方向及び送信電力に基づいてアンテナの指向性を制御することで、図1(B)に示すように、通信エリアRを構築する。
このように予め登録したリストに基づいて構築される通信エリアRは、リスト内の無線端末9のスループットを十分に確保できる通信エリアであり、また、他の基地局が構築する通信エリアに対する不要な干渉を抑えることのできる通信エリアである。
【0021】
なお、基地局1は、無線端末9との間で電波を送受信可能な任意の装置であり、例えば、モバイル基地局(マクロ局)やフェムト局、また、ユーザ宅内に設置される無線LANアクセスポイント等である。また、無線端末9は、基地局1との間で電波を送受信可能な任意の装置であり、例えば、携帯電話、スマートフォン、PC、タブレットPC、ゲーム機等であってもよく、また、ユーザ宅内にセンサネットワークを構築する場合に用いられる各種センサ等であってもよい。
以下、本発明の基地局1に好適な実施形態について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
初めに、図2から図5を参照して、本発明の基地局1の第1実施形態について説明する。なお、第1実施形態の基地局1は、エリア校正モードにおいて移動しない無線端末9を検出することで、通信エリアを構築することとしている。
【0023】
[基地局1の機能構成]
図2は、本発明の基地局1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、基地局1は、送受信部2と、記憶部3と、制御部4と、センサ5と、を含んで構成され、送受信部2から送信される信号の振幅・位相を調整することで、送信する電波の送信パターンを制御する。なお、基地局1の通信方式は、TDD(Time-Division-Duplex)であってもよく、また、FDD(Frequency-Division-Duplex)であってもよい。
【0024】
送受信部2は、送信又は受信する電波の指向性を制御可能なアンテナを含んでおり、特定の方向に対して、電波の放射を集中させたり、受信感度を高めたりすることができる。このような送受信部2としては、既に公知の構成を採用することができるが、その一例を図3に示す。なお、図3に示す例は一例に過ぎず、その他の構成により指向性を制御可能にすることとしてもよい。
【0025】
また、図3では、送信アンテナの指向性を制御するための構成を示し、受信アンテナの指向性を制御するための構成は省略している。この点、受信アンテナの指向性を制御するための構成は、変調部6の代わりに復調部を備える他、送信アンテナと基本的に同じである。また、基地局1は、送信アンテナと受信アンテナとを別々に備えるのではなく、送受信兼用のアンテナを備えることとしてもよい。
【0026】
図3に示すように、送受信部2は、例えば、変調部6と、分配部7と、信号発生部8と、複数のアンテナ素子20とを含んで構成される。変調部6は、予め定められた変調方式に従い入力された送信用のデータを変調して、高周波信号(例えば、RF(Radio Frequency)信号やベースバンド信号)を生成し、分配部7に供給する。分配部7は、指向性に応じたウェイトに基づいて、供給された高周波信号を信号発生部8に対して分配する。信号発生部8は、分配部7により分配された高周波信号をアンテナ素子20に出力し、アンテナ素子20から高周波信号を放射させる。
このように、分配部7が、各アンテナ素子20から放射される高周波信号のウェイトを調整することで、送受信部2では、送信アンテナの指向性を制御することができる。なお、送信アンテナと受信アンテナとでは、少なくとも、送信アンテナの利得が大きい方向(即ち、無線端末9に対して電波を放射している方向)において受信アンテナの利得が大きければよく、両アンテナの指向性パターンは異なることとしてもよい。
【0027】
図2に戻り、記憶部3は、ROM及びRAM等のメモリ又はハードディスク等の記憶媒体である。記憶部3は、制御部4を動作させるためのプログラム及び制御部4が動作する際に生成されるデータを記憶する。また、記憶部3は、上述のエリア校正モード中に参照するリストを記憶する。
【0028】
ここで、記憶部3に記憶されるリストの一例を図4に示す。図4に示すように、リストは、基地局1と通信する無線端末9の一覧表であり、無線端末9を識別する識別情報に対応付けて当該無線端末9の所要SNR(Signal to Noise Ratio)を記憶する。また、リストには、指向方向、伝搬損失及び検出済み判定といった項目が設けられている。これら項目は、エリア校正モード中に制御部4の制御に応じて更新される。
【0029】
所要SNRは、無線端末9が基地局1と通信する際に必要となる信号雑音比である。基地局1が構築する通信エリアに存在する無線端末9としては、上述のように、スマートフォンやPC等の他、各種センサ等のように様々な端末が想定される。これら無線端末9では、その種別に応じて必要となるSNRが異なる。一例として、動画視聴等が想定される無線端末9では高いSNRが求められ、センサのように測定値を通信するだけの無線端末9では低いSNRで足りる。
そこで、本実施形態では、リストに含まれる無線端末9毎に所要SNRを記憶しておき、無線端末9毎の所要SNRに基づき、当該無線端末9に対して放射する電波強度(送信強度)を算出する。
【0030】
なお、リストに登録される無線端末9は任意の方法で設定することができる。一例として、基地局1を用いるユーザ(管理者)が手動で設定することとしてもよく、また、基地局1が有するホワイトリストを用いることとしてもよい。LTE(Long Term Evolution)では、登録された無線端末9のみが基地局1に接続できるようにする仕組みとしてCSG(Closed Subscriber Group)機能が設けられている。このCSG機能を利用している無線端末9(即ち、ホワイトリストとして登録した無線端末9)を、記憶部3のリストに登録することで、ホワイトリストを用いた登録を実現することができる。
なお、CSG機能を利用して基地局1に接続している無線端末9のうちの一部の無線端末9を絞り込み当該無線端末9のみを、記憶部3のリストに登録することとしてもよい。一部の絞り込みとしては、スマートフォン等のように人が持って移動する無線端末9と、センサのように家電機器等に設置され移動することのない無線端末9といった、無線端末9の種別を用いて絞り込みを行うことができる。」
(3)「【0032】
図2に戻り、制御部4は、例えばCPUであり、記憶部3に記憶されたプログラムを実行することにより、起動制御部41、探索部42、特定部43、更新部44、強度算出部45及びアンテナ制御部46として機能する。
【0033】
起動制御部41は、基地局1におけるエリア校正モードの起動/終了を制御する。エリア校正モードの起動/終了は、任意の条件により制御することができるが、以下にその一部を例示する。」
(4)「【0036】
探索部42は、記憶部3のリストに含まれる無線端末9を探索する。ここで、探索部42による無線端末9の探索方法の一例を、図5に示す。
図5(A)に示すように、まず、探索部42は、基地局1の送信電力を最小値に設定し、送受信部2の指向方向を特定方向に向けて探索範囲を形成する。形成した探索範囲内に対象の無線端末9が存在する場合、当該無線端末9から接続要求が通知されるため、探索部42は、この接続要求を受けることで、リスト内の無線端末9を検出する。」
(5)「【0042】
特定部43は、探索した無線端末9と基地局1との間の伝搬損失が最小となる方向、及び当該方向の伝搬損失を特定する。
伝搬損失が最小となる方向の特定方法としては、探索時に基地局1から送信した電波(ダウンリンク)の指向方向を、当該方向として特定することもでき、また、探索時に無線端末9から受信した電波(アップリンク)の到来方向を、当該方向として特定することもできる。基地局1から送信する電波は、所定のビーム幅を持つため、一般に、ダウンリンクの放射方向に基づく推定よりもアップリンクの到来方向に基づく推定の方が、角度情報の推定精度が高い。そこで、本実施形態では、特定部43は、探索した無線端末9から受信したアップリンク信号の到来方向を、伝搬損失が最小となる方向として特定する。
(6)「【0044】
更新部44は、探索結果に基づいて、記憶部3のリストを更新する。例えば、更新部44は、探索した無線端末9について、特定部43が特定した方向及び伝搬損失を、リストに記録するとともに、当該無線端末9が検出済みであることをリストに記録する。
【0045】
強度算出部45は、特定した方向と当該方向の伝搬損失とに基づいて、当該方向に対する電波の送信強度を算出する。具体的には、強度算出部45は、リストに記録された無線端末9の各方向のうち、当該方向と合致する結果を全て選びだし、その中で一番大きな伝搬損失を選出する。例えば、強度算出部45は、同一の方向について一の無線端末9のみが存在する場合には、当該無線端末9と基地局1との間の伝搬損失を選出し、同一の方向について複数の無線端末9が存在する場合には、最も大きな伝搬損失を選出する。続いて、強度算出部45は、選出した伝搬損失と、当該伝搬損失に対応する無線端末9の所要SNRとを加算し算出した和を、当該方向に対する電波の送信強度として算出する。図4に示す例では、強度算出部45は、「UE1」が存在する方向「95deg」に対する電波の送信強度として「75dB(=25+50)」を算出し、「UE2」が存在する方向「60deg」に対する電波の送信強度として「70dB(=5+65)」を算出する。」
(7)「【0046】
アンテナ制御部46は、各方向について算出した送信強度に基づいて送受信部2の指向性を制御する。具体的には、アンテナ制御部46は、各方向に対して算出した送信強度を満たすように、複数のアンテナ素子20に対するウェイトの計算を行うことで、送受信部2の指向性を制御する。ウェイト計算の方法は任意であるが、例えば、MMSE(Minimum Mean Square Error)法等の手法を用いることができる。即ち、アンテナ制御部46は、乗算するウェイト(複素数)の位相を回転、振幅を増減させながら各方向への利得と、ウェイト乗算後の利得との差の二乗を誤差として算出し、各方向の誤差の和が最小となるウェイトを求める。このとき、ウェイトの探索方法としては、再急降下法等の任意の方法を用いることができる。」
(8)「【図1】
[図:0001388212000001.jpg]
」
(9)「【図2】
[図:0001388212000002.jpg]
」
(10)「【図4】
[図:0001388212000003.jpg]
」
2 以上の記載を基地局1に含まれる制御部4についてまとめると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「送受信部2と、記憶部3と、制御部4と、を含んで構成される基地局1に含まれる制御部4であって(【0023】)、
基地局1は、無線端末9との間で電波を送受信可能な装置であり(【0021】)、
送受信部2は、送信又は受信する電波の指向性を制御可能なアンテナを含み(【0024】)、
記憶部3はエリア校正モード中に参照するリストを記憶し、リストは、基地局1と通信する無線端末9の一覧表であり、無線端末9を識別する識別情報に対応付けて当該無線端末9の所要SNR(Signal to Noise Ratio)を記憶するものであり(【0027】、【0028】)、
制御部4は、起動制御部41、探索部42、特定部43、更新部44、強度算出部45及びアンテナ制御部46として機能し(【0032】)、
起動制御部41は、基地局1におけるエリア校正モードの起動/終了を制御し(【0033】)、
探索部42は、記憶部3のリストに含まれる無線端末9を探索し(【0036】)、
特定部43は、探索した無線端末9と基地局1との間の伝搬損失が最小となる方向、及び当該方向の伝搬損失を特定し(【0042】)、
更新部44は、探索した無線端末9について、特定部43が特定した方向及び伝搬損失を、リストに記録し(【0044】)、
強度算出部45は、選出した伝搬損失と、当該伝搬損失に対応する無線端末9の所要SNRとを加算し算出した和を、当該方向に対する電波の送信強度として算出し(【0045】)、
アンテナ制御部46は、各方向に対して算出した送信強度を満たすように、複数のアンテナ素子20に対するウェイトの計算を行うことで、送受信部2の指向性を制御する(【0046】)、
基地局1に含まれる制御部4。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「無線端末9」は、本願発明1の「端末装置」に相当する。
イ 引用発明の「基地局1」は、「無線端末9との間で電波を送受信可能な装置」であるから、本願発明1の「無線通信装置」に相当する。
ウ 引用発明の「無線端末9の所要SNR」は、無線端末9と基地局1との無線通信において要求されるSNRといえるから、上記ア、イを踏まえれば、本願発明1の「前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件」に相当する。
そうすると、引用発明の「無線端末9を識別する識別情報に対応付けて当該無線端末9の所要SNR(Signal to Noise Ratio)を記憶する」「記憶部3」と、本願発明1の「端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶する記憶部」とは、「端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件を記憶する記憶部」である点で共通する。
エ 引用発明の「制御部4」は「アンテナ制御部46」として機能するから、「制御部4」は、「アンテナ制御部46」を備えたものといえる。
そうすると、「アンテナ制御部46」は、基地局1が含む「送受信部2の指向性を制御する」から、上記ア、イを踏まえれば、本願発明1の「端末装置と無線通信を行う無線通信装置の指向性通信を制御する制御部」に相当する。
オ 引用発明の「アンテナ制御部46」は、「各方向に対して算出した送信強度を満たすように、複数のアンテナ素子20に対するウェイトの計算を行うことで、送受信部2の指向性を制御する」ものであり、送信強度は「伝搬損失に対応する無線端末9の所要SNRとを加算し算出した和」により算出されるから、送信強度は、無線端末9の所要SNRから算出されるものである。
そうすると、上記ア~エを踏まえれば、引用発明の「制御部4」が備える「アンテナ制御部46」が、「記憶部3」に「無線端末9を識別する識別情報に対応付けて」記憶されている「無線端末9の所要SNR」から算出される「送信強度を満たすように、複数のアンテナ素子20に対するウェイトの計算を行うことで、送受信部2の指向性を制御する」ことと、本願発明1の「前記制御部は、前記端末装置の特性を示すデバイス識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように、前記指向性通信を制御する」こととは、「前記制御部は、前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように、前記指向性通信を制御する」点で共通している。
カ 引用発明の「記憶部3」及び「制御部4」とからなる回路と、本願発明1の「記憶部」を備える「制御装置」とは、上記ア~オを踏まえれば、いずれも無線通信装置の指向性通信を制御する回路といえるから、両者は「制御回路」である点で一致する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。
一致点
「端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件を記憶する記憶部と、
端末装置と無線通信を行う無線通信装置の指向性通信を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように、前記指向性通信を制御する制御回路。」
相違点1
本願発明1は、記憶部に「端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて」記憶するのに対して、引用発明は、「無線端末9を識別する識別情報に対応付けて当該無線端末9の所要SNR(Signal to Noise Ratio)を記憶」するものであり、本願発明1のように「端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と」対応付けて通信条件を記憶していない点。
相違点2
相違点1に関連して、本願発明1は、「前記端末装置の特性を示すデバイス識別情報に対応付けて」前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように、前記指向性通信を制御するのに対して、引用発明は、記憶部に記憶されている無線端末9の所要SNRから算出される送信強度を満たすように、指向性を制御する点。
相違点3
「制御回路」について、本願発明1は「記憶部」を備える「制御装置」であるのに対して、引用発明は「記憶部3」と「制御部4」とからなる回路である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1及び2について検討する。
引用文献1には、「所要SNRは、無線端末9が基地局1と通信する際に必要となる信号雑音比である。基地局1が構築する通信エリアに存在する無線端末9としては、上述のように、スマートフォンやPC等の他、各種センサ等のように様々な端末が想定される。これら無線端末9では、その種別に応じて必要となるSNRが異なる。」(【0029】)旨の記載があるが、当該記載は、無線端末9の種別に応じて必要となるSNRが異なることを示すにとどまるものである。
そして、他に「端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶する」ことが周知であることを示す証拠もない。
そうすると、引用発明において、「記憶部」を、相違点1の「端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて」記憶するものとして、相違点2に係る「前記端末装置の特性を示すデバイス識別情報に対応付けて」前記記憶部に記憶されている通信条件を満たすように、指向性通信を制御することは、当業者が容易になしえたものとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて容易になしえたものとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用するものであり、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明3について
本願発明3は、「無線通信装置」が「端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と自装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶する記憶部」を備えることが特定されている。
そして、当該特定事項は、上記1(2)のように、引用文献1に記載されるものでなく、他に周知であるとの証拠もないから、本願発明3は、引用発明に基いて、当業者が容易になしえたものとはいえない。
4 本願発明4について
本願発明4は、「無線通信システム」が「前記端末装置の特性を示す情報であるデバイス識別情報と、そのデバイス識別情報を有する前記端末装置と無線通信装置との無線通信において要求される通信条件と、を対応付けて記憶するデータベース」を備えることが特定されている。
そして、当該特定事項は、上記1(2)のように、引用文献1に記載されるものでなく、他に周知であるとの証拠もないから、本願発明4は、引用発明に基いて、当業者が容易になしえたものとはいえない。
5 本願発明5について
本願発明5は、本願発明1に対応する「制御方法」の発明であり、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定について
本願発明1-5は、上記第5で示したとおり、原査定で引用された引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-016136