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特許拒絶査定不服審判

2021-015919

OLED画素回路及びその駆動方法、表示装置

審判番号
2021-015919
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-566085外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年11月19日
審決日
2022年08月26日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (G09G) / P18 .536-Z (G09G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-566085号「OLED画素回路及びその駆動方法、表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月28日国際公開、WO2018/113221、令和2年1月23日国内公表、特表2020-502549号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成29年6月21日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 2016年12月20日 中華人民共和国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

平成29年12月20日 :翻訳文の提出
令和 3年 2月 1日付け:拒絶理由通知書

同年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出

同年 7月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月19日 :原査定の謄本の送達)

同年11月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年12月13日付け:前置報告書
同月27日 :上申書の提出

第2 令和3年11月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年11月19日にされた補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]

1 本件補正の補正内容

令和3年11月19日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。

(1) 本件補正前

「 【請求項1】
駆動モジュールと、発光モジュールと、短絡保護モジュールとを含むOLED画素回路であって、
前記駆動モジュールは、第1トランジスタと、第1コンデンサと、第2トランジスタとを含み、
前記第1トランジスタは、ゲートが走査信号入力端に接続され、第1極がデータ信号入力端に接続され、第2極が前記第2トランジスタのゲートに接続され、
続きを表示(全11行)
前記第2トランジスタは、第1極が第1電圧端に接続され、第2極が前記発光モジュールに接続され、
前記駆動モジュールは、前記走査信号入力端、前記データ信号入力端及び前記第1電圧端の制御下で前記発光モジュールを駆動して発光させるために用いられ、
前記発光モジュールは、OLEDを含み、前記OLEDは、アノードが前記第2トランジスタの第2極に接続され、カソードが第2電圧端に接続され、前記発光モジュールは、前記駆動モジュール及び前記第2電圧端の制御下で発光するために用いられ、
前記短絡保護モジュールは、第3トランジスタと、第2コンデンサとを含み、
前記第3トランジスタは、ゲート及び第1極がいずれも前記第2トランジスタの第2極及び前記OLEDのアノードに接続され、第2極が前記第2コンデンサの第1端に接続され、前記第2コンデンサの第2端が前記第1トランジスタの第2極及び前記第2トランジスタのゲートに接続され、ただし、前記第3トランジスタはP型トランジスタであり、
前記OLEDが短絡した場合、前記第2トランジスタをオフさせるように、前記第2電圧端の前記アノードに作用した信号が前記第3トランジスタを制御してオンさせる
OLED画素回路。」

(2) 本件補正後

「 【請求項1】
駆動モジュールと、発光モジュールと、短絡保護モジュールとを含むOLED画素回路であって、
前記駆動モジュールは、第1トランジスタと、第1コンデンサと、第2トランジスタとを含み、
前記第1トランジスタは、ゲートが走査信号入力端に接続され、第1極がデータ信号入力端に接続され、第2極が前記第2トランジスタのゲートに接続され、
続きを表示(全13行)
前記第2トランジスタは、第1極が第1電圧端に接続され、第2極が前記発光モジュールに接続され、
前記駆動モジュールは、前記走査信号入力端、前記データ信号入力端及び前記第1電圧端の制御下で前記発光モジュールを駆動して発光させるために用いられ、
前記発光モジュールは、OLEDを含み、前記OLEDは、アノードが前記第2トランジスタの第2極に接続され、カソードが第2電圧端に接続され、前記発光モジュールは、前記駆動モジュール及び前記第2電圧端の制御下で発光するために用いられ、
前記短絡保護モジュールは、第3トランジスタと、第2コンデンサとを含み、
前記第3トランジスタは、ゲート及び第1極がいずれも前記第2トランジスタの第2極及び前記OLEDのアノードに接続され、第2極が前記第2コンデンサの第1端に接続され、前記第2コンデンサの第2端が前記第1トランジスタの第2極及び前記第2トランジスタのゲートに接続され、ただし、前記第3トランジスタはP型トランジスタであり、
前記走査信号入力端は、走査信号を入力して前記第1トランジスタをオンに制御し、前記データ信号入力端は、データ信号を入力して前記第2トランジスタをオンに制御し、前記OLEDを駆動して発光させ、
前記OLEDが正常に発光する場合、前記第1電圧端から前記第2トランジスタを介して前記OLEDのアノードに出力される信号は、前記第3トランジスタを制御してオフにさせ、
前記OLEDが短絡した場合、前記第2電圧端から前記OLEDのアノードに作用した信号が前記第3トランジスタを制御してオンさせ、前記第2コンデンサのブートストラップ動作によって、前記第2トランジスタのゲートの電圧がプルダウンされ、前記第2トランジスタがオフになり、前記第1電圧端の高電圧信号は、前記OLEDのアノードへ出力することを停止し、且つ、前記第2電圧端は前記第3トランジスタを通じて前記データ信号入力端の前記第2コンデンサに入力する高電圧信号を引き下げて、前記データ信号入力端の高電圧信号も前記OLEDのアノードに出力させず、前記OLEDのカソードでの低電位を、アノードでの高電圧との中和によって上昇させない
OLED画素回路。」

2 本件補正の目的

本件補正は、請求項1において、本件補正前の「OLED画素回路」について、「前記走査信号入力端は、走査信号を入力して前記第1トランジスタをオンに制御し、前記データ信号入力端は、データ信号を入力して前記第2トランジスタをオンに制御し、前記OLEDを駆動して発光させ」るという構成を追加するとともに、「前記OLEDが正常に発光する場合」及び「前記OLEDが短絡した場合」の「OLED画素回路」の動作に係る構成を限定したものである。

そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件についての当審の判断

本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、合議体は検討を行った。

合議体は、以下に詳述するとおり、本願の発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件(実施可能要件及び委任省令要件)を満たしていないから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないと判断した。

(1) 本件補正発明

本件補正発明は、前記1(2)に摘記した事項により特定されるとおりのものである。

(2) 本願の明細書及び図面の記載について

本件補正発明は、明細書の段落【0035】~【0056】及び図面【図3】~【図4】に開示された「実施例1」に対応するものであるところ、上記記載箇所を含めて、本願の明細書及び図面には以下の記載がある。下線は合議体が付した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示技術分野に関し、特に、OLED画素回路及びその駆動方法、表示装置に関する。
【背景技術】
続きを表示(全14行)
【0002】
マルチメディア技術の急速な発展に伴い、OLED(Organic Light-EmittingDiode:有機発光ダイオード)は、自発光でき、コントラストが高く、色域が広く、製造プロセスが簡単で、消費電力が低く、フレキシブル表示を容易に実現できるなどのメリットを有するので、表示装置において、重要な発光素子となっている。
【0003】
その中で、特に、AM-OLED(Active Matrix/Organic Light-EmittingDiode:アクティブ・マトリックス有機発光ダイオード)表示パネルは、視角の制限が無く、製造コストが低く、応答速度が速く、消費電力が低く、動作温度の範囲が大きく、重量が軽く、ポータブルマシンの直流駆動に用いられ且つハードウェアデバイスに従って小型化及び薄型化できるなどのメリットを有するので、検討のホットスポットとなっている。
【0004】
ところが、OLEDはアノードとカソードとの間の各膜層そのものが薄いので、膜層に異物が入れ、或いは、穴掘りやクライミングなどのプロセスがよく制御されないと、膜層がさらに薄くなることを招き、OLEDのアノードとカソードとの間の抵抗が小さくなって短絡することで、周りのサブ画素におけるOLEDのカソードとアノードとの間の電圧差が影響され、ひいては、周りのサブ画素の表示が影響されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施例は、短絡したサブ画素がその周りのサブ画素の表示に影響することを避けるOLED画素回路及びその駆動方法、表示装置を提供する。」
「【0024】
本開示の実施例は、OLED画素回路及びその駆動方法、表示装置を提供し、OLED画素回路に短絡保護モジュールを追加し、且つ、サブ画素の発光モジュールが正常に発光する時、短絡保護モジュールがオフされ、サブ画素の発光モジュールが短絡した場合、短絡保護モジュールがオンされ、駆動モジュールを制御してオフさせて、第1電圧端とデータ信号入力端の信号が発光モジュールに出力することができなくなり、これにより、発光モジュールが短絡しても、発光モジュールに接続される第2電圧端の信号は上昇せず、そのまま元の信号強度を保持することで、あるサブ画素が短絡してその周りのサブ画素の正常の表示に影響することを避けることができる。」

「【発明を実施するための形態】

【0027】

以下、本開示の実施例における図面に結合して、本開示の実施例における技術案に対して明確で完全な記述を行う。記述する実施例は、本開示の一部の実施例だけであり、すべての実施例ではないことは当然である。本開示における実施例に基づいて、当業者が創造性の労働を費やさない前提下で取得した全ての他の実施例は、本開示の保護の範囲に属する。

【0028】

図1はOLED画素回路の構成模式図である。図1に示すように、AM-OLED表示パネルの画素構成において、各サブ画素には、それぞれ1セットのトランジスタと第1コンデンサが集積し、トランジスタと第1コンデンサに対する駆動制御により、サブ画素におけるOLEDの電流に対する制御を実現して、OLEDを駆動して発光させる。

【0029】

本開示の他の実施例は、OLED画素回路を提供し、図2に示すように、駆動モジュール10と、発光モジュール20と、短絡保護モジュール30と、を含む。

【0030】

駆動モジュール10は、それぞれ走査信号入力端GATEと、データ信号入力端DATAと、第1電圧端V1と、発光モジュール20に接続され、走査信号入力端GATEと、データ信号入力端DATAと、第1電圧端V1の制御下で発光モジュール20を駆動して発光させるために用いられる。

【0031】

発光モジュール20はさらに、第2電圧端V2に接続され、駆動モジュール10と第2電圧端V2の制御下で発光するために用いられる。

【0032】

短絡保護モジュール30は、駆動モジュール10と発光モジュール20に接続され、発光モジュール20が短絡した時、駆動モジュール10を制御してオフさせる。

【0033】

本開示の実施例は、OLED画素回路を提供し、OLED画素回路に短絡保護モジュール30を追加し、且つ、サブ画素の発光モジュール20が正常に発光する時、短絡保護モジュール30がオフされ、サブ画素の発光モジュール20が短絡した場合、短絡保護モジュール30がオンされ、駆動モジュール10を制御してオフさせて、第1電圧端V1とデータ信号入力端DATAの信号を発光モジュール20に出力することができなくなり、これにより、発光モジュール20が短絡しても、発光モジュール20に接続される第2電圧端V2の信号は上昇せず、そのまま元の信号強度を保持することで、あるサブ画素が短絡してその周りのサブ画素の正常の表示に影響することを避けることができる。

【0034】

以下、具体的な実施例に結合して、図2における各モジュールの具体的な構成について詳しく説明する。

【0035】

実施例1

実施例1は、OLED画素回路を提供し、図3に示すように、駆動モジュール10は、第1トランジスタT1と、第1コンデンサC1と、第2トランジスタT2と、を含む。

【0036】

第1トランジスタT1は、ゲートが走査信号入力端GATEに接続され、第1極がデータ信号入力端DATAに接続され、第2極が第2トランジスタT2のゲートに接続される。

【0037】

第2トランジスタT2は、第1極が第1電圧端V1に接続され、第2極が発光モジュール20に接続される。

【0038】

第1コンデンサC1は、第1端が第1トランジスタT1の第2極に接続され、第2端が第2トランジスタT2の第1極に接続される。

【0039】

或いは、図4に示すように、第1コンデンサC1は、第1端が第1トランジスタT1の第2極に接続され、第2端が第2トランジスタT2の第2極に接続される。

【0040】

発光モジュール20は、OLEDを含み、OLEDは、アノードが駆動モジュール10に接続され、カソードが第2電圧端V2に接続される。

【0041】

短絡保護モジュール30は、第3トランジスタT3と第2コンデンサC2を含み、前記第3トランジスタT3は、ゲートと第1極がいずれも、発光モジュール30と駆動モジュール10に接続され、第2極が第2コンデンサC2の第1端に接続される。

【0042】

第2コンデンサの第2端は、駆動モジュール10に接続される。

【0043】

ただし、第2トランジスタT2はN型トランジスタであり、第3トランジスタT3はP型トランジスタである。

【0044】

より具体的には、第2トランジスタT2は、第1極が第1電圧端V1に接続され、第2極がOLEDのアノードに接続される。

【0045】

図3に示すように、第1コンデンサC1は、第1端が第1トランジスタT1の第2極と第2トランジスタT2のゲートのいずれにも接続され、第2端が第2トランジスタT2の第1極と第1電圧端V1のいずれにも接続される。

【0046】

或いは、図4に示すように、第1コンデンサC1は、第1端が第1トランジスタT1の第2極と第2トランジスタT2のゲートのいずれにも接続され、第2端が第2トランジスタT2の第2極とOLEDのアノードのいずれにも接続される。

【0047】

第3トランジスタT3は、ゲートが第2トランジスタT2の第2極とOLEDのアノードのいずれにも接続され、第1極が第2トランジスタT2の第2極とOLEDのアノードのいずれにも接続され、第2極が第2コンデンサC2の第1端に接続される。

【0048】

第2コンデンサC2の第2端は、第1トランジスタT1の第2極と第2トランジスタT2のゲートのいずれにも接続される。

【0049】

必要な説明として、以下のようです。

【0050】

第1:第1トランジスタT1はN型トランジスタでもよく、P型トランジスタでもよい。本開示の実施例による好ましい第1トランジスタT1はN型トランジスタである。図3と図4において第1トランジスタT1はN型トランジスタであることとして例示する。

【0051】

第2:本開示の実施例によるトランジスタは、エンハンスメント型トランジスタでもよく、空乏型トランジスタでもよい。本開示の実施例によるトランジスタは、第1極がソースでもよく、第2極がドレインでもよいし、または、トランジスタは、第1極がドレインでもよく、第2極がソースでもよく、本開示はこれに対して制限するものではなく、トランジスタのタイプによって、適正に選択すればよい。

【0052】

第3:本開示の実施例は、第1電圧端V1は、ハイレベルを一定出力とし、第2電圧端V2は、ローレベルを一定出力とすることを例として説明するものである。

【0053】

第4:第3トランジスタT3がオンされると、第2電圧端V2は、第3トランジスタT3を通じてデータ信号入力端DATAの第2コンデンサC2に入力する高電圧信号を引き下げて、データ信号入力端DATAが入力する高電圧信号がOLEDのアノードに出力してしまうことを避ける。

【0054】

以上、図3と図4に示すように、走査信号入力端GATEが走査信号を入力すると、第1トランジスタT1がオンされ、データ信号入力端DATAがデータ信号を入力して、第1トランジスタT1を経由して第2トランジスタT2のゲートに出力され、同時に、第1コンデンサC1へ充電される。第2トランジスタT2はP型トランジスタであり、高電圧信号の制御下で、第2トランジスタT2がオンされ、第1電圧端V1の高電圧信号は、第2トランジスタT2を経由してOLEDのアノードに出力され、同時に、第2電圧端V2の低電圧信号がOLEDのカソードに出力されて、OLEDを駆動して発光させる。ただし、第3トランジスタT3はN型トランジスタであり、そのゲートが低電圧信号を受信してオンされ、正常に表示する場合、OLEDのアノードは、第3トランジスタT3のゲートに高電圧信号を出力し、第3トランジスタがオフされる。

【0055】

OLEDのアノードとカソードが短絡した時、アノードでの電位が低くなり、この際、アノードが第3トランジスタT3のゲートに低電圧信号を出力し、第3トランジスタT3を制御してオンさせ、アノードでの低電圧信号が第3トランジスタT3を経由して、第2トランジスタT2のゲートに出力され、低電圧信号の制御下で、第2トランジスタT2がオフされる。第1電圧端V1の高電圧信号は、アノードへ出力することを停止し、且つ、第2電圧端V2は第3トランジスタT3を通じてデータ信号入力端DATAの第2コンデンサC2に入力する高電圧信号を引き下げて、データ信号入力端DATAの高電圧信号もアノードに出力されることができない。

【0056】

これにより、OLEDのアノードとカソードが短絡した後、カソードでの低電位は、アノードでの高電圧との中和によって上昇せず、第2電圧端V2での信号に影響しない。

「【図1】
[図:0001393675000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001393675000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001393675000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001393675000004.jpg]
」

(3) 実施可能要件の検討

ア 発明解決課題について

本願の発明が解決しようとする課題は、明細書の段落【0004】及び【0005】の記載からみて、「OLEDのアノードとカソードとの間の抵抗が小さくなって短絡することにより、周りのサブ画素におけるOLEDのカソードとアノードとの間の電圧差に影響し、周りのサブ画素の表示に影響することを避けること」であると認められる。

イ 発明解決手段について

上記アにおいて認定した課題を解決するために、本件補正発明では、「OLED画素回路」に「短絡保護モジュール」を含むようにし、

「 前記短絡保護モジュールは、第3トランジスタと、第2コンデンサとを含み、
前記第3トランジスタは、ゲート及び第1極がいずれも前記第2トランジスタの第2極及び前記OLEDのアノードに接続され、第2極が前記第2コンデンサの第1端に接続され、前記第2コンデンサの第2端が前記第1トランジスタの第2極及び前記第2トランジスタのゲートに接続され、ただし、前記第3トランジスタはP型トランジスタであり、」

「 前記OLEDが正常に発光する場合、前記第1電圧端から前記第2トランジスタを介して前記OLEDのアノードに出力される信号は、前記第3トランジスタを制御してオフにさせ、」

「 前記OLEDが短絡した場合、前記第2電圧端から前記OLEDのアノードに作用した信号が前記第3トランジスタを制御してオンさせ、前記第2コンデンサのブートストラップ動作によって、前記第2トランジスタのゲートの電圧がプルダウンされ、前記第2トランジスタがオフになり、前記第1電圧端の高電圧信号は、前記OLEDのアノードへ出力することを停止し、且つ、前記第2電圧端は前記第3トランジスタを通じて前記データ信号入力端の前記第2コンデンサに入力する高電圧信号を引き下げて、前記データ信号入力端の高電圧信号も前記OLEDのアノードに出力させず、前記OLEDのカソードでの低電位を、アノードでの高電圧との中和によって上昇させない」ようにしたものである。

ウ 発明の効果について

上記イにおいて認定した解決手段により、本件補正発明は、サブ画素の発光モジュールが正常に発光する時、短絡保護モジュールがオフされ、サブ画素の発光モジュールが短絡した場合、短絡保護モジュールがオンされ、駆動モジュールを制御してオフさせて、第1電圧端とデータ信号入力端の信号が発光モジュールに出力することができなくなり、これにより、発光モジュールが短絡しても、発光モジュールに接続される第2電圧端の信号は上昇せず、そのまま元の信号強度を保持することで、あるサブ画素が短絡してその周りのサブ画素の正常の表示に影響することを避けることができるという効果を奏するとしている(【0024】を参照)。

エ 短絡保護モジュールの動作について

(ア) OLEDが正常に発光する場合

OLEDが正常に発光する場合には、短絡保護モジュールの第3トランジスタはオフに制御されるものであるところ、この制御動作については、明細書の【0054】に次のとおり記載されている。

この記載には、以下に「当審注」として指摘したとおり、第2トランジスタT2が「P型トランジスタ」であり、第3トランジスタT3が「N型トランジスタ」であるとした誤記が含まれているものの(【図3】及び【図4】では、T2がN型、T3がP型であることが示されており、また、T2がP型、T3がN型とすると、【0054】の「高電圧信号の制御下で、第2トランジスタT2がオンされ」、「第3トランジスタT3のゲートに高電圧信号を出力し、第3トランジスタがオフされる」という記載と整合しないことから、誤記であることは明らかである。)、かかる誤記を正しく読み替えれば、この制御動作は正しいものであると認められる。

「【0054】
以上、図3と図4に示すように、走査信号入力端GATEが走査信号を入力すると、第1トランジスタT1がオンされ、データ信号入力端DATAがデータ信号を入力して、第1トランジスタT1を経由して第2トランジスタT2のゲートに出力され、同時に、第1コンデンサC1へ充電される。第2トランジスタT2はP型トランジスタであり(当審注:「P型トランジスタ」は「N型トランジスタ」の誤記。)、高電圧信号の制御下で、第2トランジスタT2がオンされ、第1電圧端V1の高電圧信号は、第2トランジスタT2を経由してOLEDのアノードに出力され、同時に、第2電圧端V2の低電圧信号がOLEDのカソードに出力されて、OLEDを駆動して発光させる。ただし、第3トランジスタT3はN型トランジスタであり(当審注:「N型トランジスタ」は「P型トランジスタ」の誤記。)、そのゲートが低電圧信号を受信してオンされ、正常に表示する場合、OLEDのアノードは、第3トランジスタT3のゲートに高電圧信号を出力し、第3トランジスタがオフされる。」

(イ) OLEDが短絡した場合

a OLEDが短絡した場合に、短絡保護モジュールの第3トランジスタがオンに制御される動作については、明細書の【0055】に次のとおり記載されている。

「【0055】
OLEDのアノードとカソードが短絡した時、アノードでの電位が低くなり、この際、アノードが第3トランジスタT3のゲートに低電圧信号を出力し、第3トランジスタT3を制御してオンさせ、アノードでの低電圧信号が第3トランジスタT3を経由して、第2トランジスタT2のゲートに出力され、低電圧信号の制御下で、第2トランジスタT2がオフされる。第1電圧端V1の高電圧信号は、アノードへ出力することを停止し、且つ、第2電圧端V2は第3トランジスタT3を通じてデータ信号入力端DATAの第2コンデンサC2に入力する高電圧信号を引き下げて、データ信号入力端DATAの高電圧信号もアノードに出力されることができない。」

b しかしながら、この記載はOLEDのアノードとカソードが短絡した時点(瞬間)の画像フレーム表示における第2トランジスタT2の動作を記述したものであって、OLEDのアノードとカソードが短絡した時点(瞬間)よりも後の画像フレーム表示における第2トランジスタT2の動作を正しく記述したものではない。

c すなわち、以下の(a)及び(b)に詳述するとおり、OLEDのディスプレイが、所定のリフレッシュレートで表示制御される場合、OLEDのアノードとカソードが短絡した時点(瞬間)のフレームF1における表示では、上記【0055】に説明されているように第2トランジスタT2はオフになるものの、それ以降のフレームF2における表示では、第2トランジスタT2はオンになってしまうから、上記【0055】の記載は、連続する画像フレームでの表示を正しく説明していない。

(a) 短絡した時点(瞬間)のフレーム表示における動作について

OLEDのアノードとカソードが短絡したとき、アノードの電位が低電位(V2)になり、アノードと等電位にある、第3トランジスタT3(P型トランジスタ)のゲートには低電圧信号(V2)が供給されるから、第3トランジスタT3がオンになる。

この短絡した時点(瞬間)が、ある特定のフレームF1における書き込み終了後(すなわち、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2に充電後)に生じた場合、第3トランジスタT3がオンになると、第2コンデンサC2の第1端(下側電極)の電位も低電位(V2)になり、第2コンデンサC2にデータ信号入力端DATAから高電圧信号(データ信号)が書き込まれていたとしても、ブートストラップ動作によって、第2コンデンサの第2端(上側電極)の電位は、第2コンデンサC2の第1端(下側電極)の低電位(V2)に追従して低くなるから、第2トランジスタT2のゲートの電圧がプルダウンされ、前記第2トランジスタT2がオフになって、OLEDのアノードへ第1電圧端の高電圧信号(V1)が供給されることはない。

(b) 短絡した時点よりも後のフレーム表示における動作について

OLEDのアノードとカソードが短絡した状態のまま、F1の次のフレームF2に遷移したとき、走査信号入力端GATEに走査信号が入力して、第1トランジスタT1がオンされ、データ信号入力端DATAからデータ信号が供給されて、第1トランジスタT1を経由して第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2は充電される。

ここで、例えば、国際公開第2016/098317号の段落[0037]において、「式1および式2から分かるように、寄生容量Cgdが大きくなるほどVgsが小さくなるため、画素電流Ipixが低下する。これは、ブートストラップ動作と呼ばれる現象に起因するものである。ブートストラップ動作とは、信号電圧書込み後から発光開始時に掛けて、駆動トランジスタTrdのソース側の電位が変化する際に、駆動トランジスタTrdのゲート側の電位も追従して変化する現象を示す(特許文献2参照)。この時、駆動トランジスタTrdのゲート側の電位は、完全に駆動トランジスタTrdのソース側の電位変動に追従するわけでは無く、蓄積容量Csおよび駆動トランジスタTrdの寄生容量CgsとCgdに応じた電圧のロスが発生する。式1および式2はブートストラップ動作による電圧ロスを考慮した画素回路の入出力特性を示している。つまり、図3の様に、寄生容量Cgs、Cgdを備えるようなトランジスタ構造を持ち、かつブートストラップ動作を行う画素回路では、アライメントのずれにより寄生容量の大きさが変化することで、画素電流Ipixが変化する。」と記載されているように、「ブートストラップ動作」が「信号電圧書込み後から発光開始時に掛けて、駆動トランジスタTrdのソース側の電位が変化する際に、駆動トランジスタTrdのゲート側の電位も追従して変化する現象」を意味することは技術常識といえる。

これを踏まえると、上記動作では、フレームF2においても、OLEDのアノードとカソードは短絡した状態にあるから、アノードの電位は低電位(V2)のままであり、駆動トランジスタである第2トランジスタT2のソース側電位(第2トランジスタの第2極の電位)もV2のまま変化しておらず、フレームF2においては、ブートストラップ動作は生じない。

すなわち、フレームF2において、第3トランジスタT3がオンになり第2コンデンサC2の第1端(下側電極)が低電位(V2)であっても、それに追従して第2コンデンサの第2端(上側電極)の電位が低くなることはない。

そうすると、データ信号入力端DATAから供給されたデータ信号により第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が充電されると(フレームF2における書き込み動作が行われると)、第2コンデンサC2には、データ信号の電圧とV2の差の電圧が保持されることになり、駆動トランジスタである第2トランジスタT2のゲート電位は高くなるから、T2はオンになってしまう。

オ まとめ

以上検討したとおり、OLEDのアノードとカソードが短絡した時点(瞬間)のフレームF1における表示では、第2トランジスタT2はオフになるものの、それ以降のフレームF2における表示では、第2トランジスタT2はオンになってしまうから、明細書の【0055】の記載を根拠として、本件補正発明が「サブ画素の発光モジュールが短絡した場合、短絡保護モジュールがオンされ、駆動モジュールを制御してオフさせて、第1電圧端とデータ信号入力端の信号が発光モジュールに出力することができなくなる」という効果を実質的に奏すると理解することはできない。

また、本願の明細書及び図面全体をみても、また、技術常識を参酌しても、本件補正発明が上記効果を奏するものであると理解するに足りる根拠は、見出せない。

したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本件補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、実施可能要件を満たしていない。

(4) 委任省令要件の検討

前記(3)において説示したとおり、OLEDのアノードとカソードが短絡した時点(瞬間)のフレームF1における表示では、第2トランジスタT2はオフになるものの、それ以降のフレームF2における表示では、第2トランジスタT2はオンになってしまうから、本願の明細書及び図面の記載は、本件補正発明の「短絡保護モジュール」を設けることの技術的意義を明らかにしていない。

したがって、本願の発明の詳細な説明は、本件補正発明について、経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

(5) 請求人の主張について

ア 審判請求書の主張について

請求人は、審判請求書において次の主張をしている。

「 一般的に、DATAはパルス信号であり、1フレーム以内に連続して入力されることはありません。したがいまして、OLEDが短絡すると、第2トランジスタT2のゲートはフローティングに相当し、第2コンデンサC2は、OLEDの短絡により、OLEDのカソード電位に追従してジャンプし、第2トランジスタT2のゲート電圧が低下し、オフになります。
したがいまして、本願発明における上記技術的特徴によれば、OLEDが正常に発光する時、第3トランジスタT3がオフされ、OLEDが短絡した場合、第3トランジスタT3がオンされ、第2トランジスタT2を制御してオフさせて、第1電圧端V1とデータ信号入力端DATAの信号がOLEDに出力できなくなり、これにより、OLEDが短絡しても、OLEDに接続される第2電圧端V2の信号は上昇せず、そのまま元の信号強度を保持することで、あるサブ画素が短絡してその周りのサブ画素の正常の表示に影響することを避けることができます。」

しかしながら、OLEDのディスプレイは、例えば1秒間に60画像フレームのリフレッシュレートで表示制御されるものであるから、短絡した時点(瞬間)のフレームF1における表示では第2トランジスタT2はオフになったとしても、それ以降のフレームF2における表示では、データ信号が駆動モジュールに供給されて第2トランジスタT2はオンになってしまう。

請求人の上記主張は、短絡した時点(瞬間)のフレームF1における表示についてのみ述べたものであって、それ以降のフレームF2における表示について何ら説明していないから、かかる主張によって当審の判断が左右されることはない。

イ 上申書について

(ア) 上申書の内容

請求人は、令和3年12月27日に提出した上申書において次のとおり述べているところ、前置報告書に対する上申書は提出されなかった。

「出願人は、本願に係る前置報告書に対する上申書を2022年3月24日までに提出することを予定しております。つきましては、本件の審理に当たり、上記上申書の内容を参酌していただきますよう、お願い申し上げます。
しかしながら、上記期限までに上申書が提出されない場合は、審判請求時の主張に基づいて審理頂きたくお願い申し上げます。」

(イ) 前置報告書の内容

令和3年12月13日に作成された前置報告書の内容は次のとおりである。

「請求項1-9についての補正は限定的減縮を目的としている。この場合、補正後の請求項1-9に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
令和3年11月19日付けの補正により「前記走査信号入力端は、走査信号を入力して前記第1トランジスタをオンに制御し、前記データ信号入力端は、データ信号を入力して前記第2トランジスタをオンに制御し、前記OLEDを駆動して発光させ、前記OLEDが正常に発光する場合、前記第1電圧端から前記第2トランジスタを介して前記OLEDのアノードに出力される信号は、前記第3トランジスタを制御してオフにさせ、前記OLEDが短絡した場合、前記第2電圧端から前記OLEDのアノードに作用した信号が前記第3トランジスタを制御してオンさせ、前記第2コンデンサのブートストラップ動作によって、前記第2トランジスタのゲートの電圧がプルダウンされ、前記第2トランジスタがオフになり、前記第1電圧端の高電圧信号は、前記OLEDのアノードへ出力することを停止し、且つ、前記第2電圧端は前記第3トランジスタを通じて前記データ信号入力端の前記第2コンデンサに入力する高電圧信号を引き下げて、前記データ信号入力端の高電圧信号も前記OLEDのアノードに出力させず、前記OLEDのカソードでの低電位を、アノードでの高電圧との中和によって上昇させない(請求項1)」との発明特定事項が追加された。
確かに、上記発明特定事項は、短絡した時点のフレーム表示においての動作を正しく表現したものであると認められる。
しかしながら、サブ画素の発光モジュール20が短絡した場合以降においては、発光モジュール20のアノードの電位は、常々第2電圧端V2となっており(OLEDが短絡していることからOLEDのアノード電位は、第2電圧端V2の電位にクランプされる構成であると考えられる。)、短絡保護モジュール30がオンされても(そもそも、OLED短絡時以降は、短絡保護モジュールは常時オンの状態になっていると考えられる。)、駆動信号の書き込み後に第2トランジスタT2のゲート電位を下げるような効果を発揮することはできないと考えられることから、第2トランジスタT2のゲート電位が下がることはなく、よって、第2トランジスタT2がオフすることはないと思われる。してみると、第2電圧端V2の信号は上昇し、あるサブ画素の短絡により、その周りのサブ画素の正常の表示に影響することを避けることができないと考えられ、本願発明の技術的な意義が不明である。
したがって、この出願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないため、当該補正後の請求項1-9に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。」

(ウ) 上申書を踏まえた検討

前置報告書は、短絡した時点のフレーム表示と短絡した時点以降の状態を明確に区別して、短絡した時点以降では第2トランジスタT2がオフすることはない旨指摘しているところ、この点に対して請求人からは何の反論も示されていない。

(6) 小括

以上検討のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項1号に規定する要件(実施可能要件及び委任省令要件)を満たしていないから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 発明の詳細な説明の記載要件についての当審の判断

1 本願の請求項1~9に係る発明について

本件補正は、上記第2のとおり却下したので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和3年5月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。

2 原査定における拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由1及び2の内容は、次のとおりである。

理由1(実施可能要件)

本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2(委任省令要件)

本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

記

理由1(実施可能要件)について

請求項1~9

発明の詳細な説明の段落[0033]の記載を参酌すると、サブ画素の発光モジュール20が短絡した場合以降においては、短絡保護モジュール30がオンされ、駆動モジュール10を制御してオフさせて、第1電圧端V1とデータ信号入力端DATAの信号を発光モジュール20に出力することができなくなり発光モジュール20は非点灯に維持され続けるような構成を想到していると認められる。

しかしながら、段落[0054]-[0056]の記載を参酌しても、短絡時のフレームにおいては、短絡保護モジュールの効果により、第2トランジスタT2のゲート電位が下がることから、第2トランジスタT2がオフすることは理解できるが、短絡後のフレームにおいては、発光モジュール20のアノードの電位は、常々第2電圧端V2となっており、駆動信号の書き込み後に第2トランジスタT2のゲート電位を下げるような効果を発揮することはない。

してみると、サブ画素の発光モジュール20が短絡した場合以降において、短絡保護モジュール30がオンして、いかにして、駆動モジュール10を制御してオフさせているのか、その技術が不明である。

よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

理由2(委任省令要件)について

請求項1~9

上記理由1で指摘したように、請求項1~9に係る発明の構成では、サブ画素の発光モジュール20が短絡した時点のフレーム表示においてのみ、短絡保護モジュール30がオンされ、駆動モジュール10を制御してオフさせて、第1電圧端V1とデータ信号入力端DATAの信号を発光モジュール20に出力することができなくなり発光モジュール20は非点灯とされる構成であって、サブ画素の発光モジュール20が短絡した場合以降においては、短絡保護モジュール30がオンされても、第2トランジスタT2のゲート電位が下がることはなく、よって、第2トランジスタT2がオフすることはない。

してみると、第2電圧端V2の信号は上昇し、あるサブ画素の短絡により、その周りのサブ画素の正常の表示に影響することを避けることができないと考えられ、請求項1~9に係る発明の技術的な意義が不明である。

よって、本願の発明の詳細な説明は、請求項1~9に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。

3 実施可能要件及び委任省令要件の検討

前記2に示したように、原査定における拒絶の理由においても、短絡した時点のフレーム表示と短絡した時点以降の状態を明確に区別して、短絡した時点以降では第2トランジスタT2がオフすることはない旨指摘しており、請求項1~9に係る発明についても、本件補正発明について検討した実施可能要件及び委任省令要件の検討内容が同様に当てはまる。

したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~9に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、実施可能要件を満たしていない。

また、本願の発明の詳細な説明は、請求項1~9に係る発明について、経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

第4 むすび

以上検討のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~9に係る発明について、特許法36条4項1号に規定する要件(実施可能要件及び委任省令要件)を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

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2021-015919

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