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特許拒絶査定不服審判

2021-015885

ブランクマスク及びフォトマスク

審判番号
2021-015885
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-082931
請求日
2021年11月19日
審決日
2022年10月13日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エスアンドエス テック カンパニー リミテッド
  • 【請求人代理人】伊東 忠重
  • 【請求人代理人】伊東 忠彦
  • 【請求人代理人】宮崎 修
審判長/審判官
  • 審判長 加々美 一恵
  • 審判官 松川 直樹
  • 審判官 瀬川 勝久
分類
P18 .113-Z (G03F) / P18 .121-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-82931号「ブランクマスク及びフォトマスク」拒絶査定不服審判事件〔令和2年12月10日出願公開、特開2020-197704号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)5月11日(パリ条約による優先権主張 2019年5月31日 韓国、2019年12月5日 韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 1月27日付け:拒絶理由通知書 令和3年 4月15日 :意見書、手続補正書の提出 令和3年 7月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和3年11月19日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和3年11月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年11月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、補正前(令和3年4月15日付け手続補正によるもの)の特許請求の範囲の請求項1につき、 「【請求項1】 透明基板と、 前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、 前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、 を備え、 前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して3~10%の透過率を有し、 前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、2.5~3.5であり、 前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有し、酸素含有量は窒素含有量よりも低く、且つ 前記遮光性膜は30~70nmの厚さを有する、ことを特徴とするブランクマスク。」 とあったものを、 「【請求項1】 透明基板と、 前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、 前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、 を備え、 前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有し、 前記遮光性膜は30~70nmの厚さを有し、 前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して3~10%の透過率を有し、 前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、193nm波長の露光光に対して2.5~3.5であり、 前記遮光性膜は、上部層と下部層の2層で構成され、 塩素系ガスに対して、前記上部層に比べて前記下部層のエッチング速度が遅い、 ことを特徴とするブランクマスク。」(以下「本件補正発明」という。) に補正するものを含む(下線は当審が付したもので、補正箇所を示すものである。)。 2 補正の適否 (1)令和3年11月19日の拒絶査定不服審判請求における、本件請求人の補正の目的に係る主張の概略 「請求項1~3の各々において、発明特定事項の記載順序を整理するとともに、補正前の請求項5に記載されていた発明特定事項を規定する補正を行いました。換言すれば、補正前の請求項1-3を削除し、(補正前の請求項4を介して)それぞれ補正前の請求項1、2、3に従属していた補正前の請求項5に係る発明の部分を、それぞれ、独立請求項1、2、3として展開する補正を行いました。」(本件審判請求書の「【請求の理由】」「3. 本願発明が特許されるべき理由」「(b)補正の根拠の明示」) (2)本件補正の、本件補正前の請求項1の「前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有し、酸素含有量は窒素含有量よりも低く」との記載を、「前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有し」、「前記遮光性膜は、上部層と下部層の2層で構成され、塩素系ガスに対して、前記上部層に比べて前記下部層のエッチング速度が遅い」との記載に補正することは、補正前の「酸素含有量は窒素含有量よりも低」いとの発明特定事項を削除する補正事項(以下「補正事項A」という。)を含む。 そして、補正事項Aは特許法第17条の2第5項に規定する、「特許請求の範囲の減縮」には、該当しない。 また、補正事項Aは、特許法第17条の2第5項に規定する、請求項の削除、誤記の訂正、さらには、明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)にいずれにも該当しない。 よって、補正事項Aを含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に掲げられたいずれの事項も目的としないものである。 (3)独立特許要件について 仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項に規定する、「特許請求の範囲の減縮」に該当するものであるとして、本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 ア 引用文献の記載及び引用発明 (ア)引用文献1及び引用発明1 原査定における拒絶理由に(引用文献1として)引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2016-197225号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。 a 「【技術分野】 【0001】 本発明は、位相反転ブランクマスク及びフォトマスクに関し、特に、32nm級以下、特に、14nm級以下の微細パターンの具現が可能な位相反転ブランクマスク及びフォトマスクに関する。」 「【0021】 図1及び図2を参照すると、本発明に係る位相反転ブランクマスク100は、透明基板102、透明基板102上に順次に形成された位相反転膜104、遮光性膜106及びレジスト膜112を有する。・・・ 【0029】 位相反転膜104は、193nm又は248nm波長の露光光に対して10%~50%の透過率を有する。・・・」 「【0033】 遮光性膜106は、例えば、クロム(Cr)、又はCrN、CrC、CrO、CrCN、CrON、CrCO、CrCONのようなクロム(Cr)に軽元素を含むクロム(Cr)化合物から形成することが好ましい。遮光性膜106がクロム(Cr)化合物から形成される場合、遮光性膜106は、クロム(Cr)が30at%~70at%、窒素(N)が10at%~40at%、酸素(O)が0~50at%、炭素(C)が0~30at%、ホウ素(B)が0~30at%、水素(H)が0~30at%である組成比を有する。 【0034】 遮光性膜106は2層以上の多層膜で構成されてもよく、このとき、多層膜は、エッチング速度を調節するための膜と光学密度(OD:Optical Density)を調節するための膜を含む。 【0035】 図2を参照すると、遮光性膜106は、クロム(Cr)に軽元素を含むクロム(Cr)化合物からなる第1遮光層114及び第2遮光層116で構成されている。 【0036】 第1遮光層114は位相反転膜104上に形成され、エッチング速度を速くさせて全体遮光性膜106のエッチング工程の時間を短縮する役割を担う。 【0037】 第1遮光層114は、300Å~550Åの厚さを有し、遮光性膜106の全厚さの50%~95%に該当する厚さを有し、好ましくは、70%~90%に該当する厚さを有する。 【0038】 第1遮光層114は、酸素(O)を必ず含み、これによって、エッチング速度を増加させることができる。第1遮光層114は、10at%~50at%の酸素(O)含有量、好ましくは、10at%~20at%の酸素(O)含有量を有し、エッチング速度の増加によって遮光性膜106の全体のエッチング時間が短縮する効果を得ることができる。 【0039】 第2遮光層116は、第1遮光層114上に形成され、光学密度を調節する役割を担う。第1遮光層114のみで光学密度を調節する場合、遮光性膜106に要求される光学特性に合わせるためには厚さが増加するという問題が発生するので、第2遮光層116を形成し、遮光性膜106に要求される光学密度を補充できるようにする。 【0040】 第2遮光層116は、20Å~150Åの厚さを有し、好ましくは、30Å~100Åの厚さを有する。 【0041】 第2遮光層は、酸素(O)を含む又は含まないクロム(Cr)化合物から形成する。 【0042】 第2遮光層116が酸素(O)を含む場合、一定の遮光性の確保のために、酸素(O)を含まない場合に比べて膜厚が厚くなりうるが、エッチング速度が速くなるので、エッチング時間及びレジスト膜の薄膜化においては同一の効果を得ることができる。このとき、第2遮光層116は、1at%~20at%の酸素(O)含有量を有し、好ましくは、1at%~15at%の酸素(O)含有量を有する。第2遮光層116の酸素(O)含有量が20at%を超えると、位相反転膜104のエッチングに使われるフッ素(F)系エッチングガスに対する耐性が低下して位相反転膜104エッチング時に第2遮光層116が損傷し、光学密度が低下するという問題につながる。 【0043】 第2遮光層116が酸素(O)を含まない場合、第2遮光層116は、30at%~70at%のクロム(Cr)含有量を有し、好ましくは、40at%~50at%のクロム(Cr)含有量を有する。 【0044】 遮光性膜106は、300Å~700Åの厚さを有し、好ましくは、350Å~550Åの厚さを有し、2.0Å/sec~4.0Å/secの平均エッチング速度を有する。 【0045】 位相反転膜104及び遮光性膜106が積層された部分の光学密度は、193nm又は248nmの露光波長に対して2.5~3.5、好ましくは、2.7~3.2である。位相反転膜104及び遮光性膜106が積層された部分の表面反射率は20%~40%、好ましくは、25%~35%である。」 「【0103】 本発明に係る位相反転フォトマスクの製造 上述した位相反転ブランクマスクに電子ビームを用いた露光工程を行い、ホットプレート(Hot Plate)を用いて190℃の温度で10分間ポストベーク(Post Exposure bake)工程を施した後、レジスト膜を現像してレジスト膜パターンを形成した。 【0104】 その後、上記レジストパターンをエッチングマスクとし、下部ハードフィルムを、塩素(Cl)系ガスを含むエッチングガスでエッチングしてクロム(Cr)系ハードフィルムパターンを形成し、上記レジスト膜を除去した後、上記ハードフィルムパターンをエッチングマスクとし、フッ素(F)系ガスを含むエッチングガスで下部のシリコン(Si)を含むエッチング阻止膜をエッチングして、エッチング阻止膜パターンを形成した。 【0105】 その後、エッチング阻止膜パターンをエッチングマスクとし、下部遮光性膜を、塩素(Cl)系ガスを含むエッチングガスでエッチングして、遮光性膜パターンを形成した。この時、上記ハードフィルムパターンは、上記エッチング阻止膜とエッチング特性が同じであることから、エッチング阻止膜パターンの形成過程で全て除去される。」 b 以上aによれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(参考までに、段落番号等を括弧書きに記載する。)。 「透明基板102、透明基板102上に順次に形成された位相反転膜104、遮光性膜106及びレジスト膜112を有する位相反転ブランクマスク100であって(【0021】)、 前記遮光性膜106は、クロム(Cr)が30at%~70at%、窒素(N)が10at%~40at%、酸素(O)が0~50at%、炭素(C)が0~30at%、ホウ素(B)が0~30at%、水素(H)が0~30at%である組成比を有し(【0033】)、 前記遮光性膜106は、300Å~700Åの厚さを有し(【0044】)、 前記位相反転膜104は、193nm又は248nm波長の露光光に対して10%~50%の透過率を有し(【0029】)、 前記位相反転膜104及び遮光性膜106が積層された部分の光学密度は、193nm又は248nmの露光波長に対して2.5~3.5であり(【0045】)、 前記遮光性膜106は、クロム(Cr)に軽元素を含むクロム(Cr)化合物からなる第1遮光層114及び第2遮光層116で構成され(【0035】)、 前記位相反転ブランクマスク100を用いて、位相反転フォトマスクを製造する際には(【0103】)、前記遮光性膜106を、塩素(Cl)系ガスを含むエッチングガスでエッチングして、遮光性膜パターンを形成する(【0105】)、 位相反転ブランクマスク100(【0021】)。」 (イ)引用文献2及び引用発明2 原査定における拒絶理由に(引用文献2として)引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2011-215657号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。 a 「【技術分野】 【0001】 本発明は、フォトマスクブランク上に形成されるレジスト膜を電子線描画する際に最適な遮光膜、及び、遮光パターン形成のためのドライエッチング処理用に遮光膜の膜特性を最適化させたフォトマスクブランク及びフォトマスクの製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。また本発明は、遮光膜パターン形成のためのドライエッチング処理用に遮光膜のドライエッチング速度を最適化させたフォトマスクブランク及びフォトマスクの製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。」 「【0024】 構成28にあるように、遮光膜のドライエッチング速度は、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かってドライエッチング速度を遅くすると好適である。例えば、遮光膜のドライエッチング速度を、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かって段階的及び/又は連続的にドライエッチング速度を遅くすることができる。 また、遮光膜の材料は、露光光に対して遮光機能を有する材料であれば良く、例えば、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン等の遷移金属を含む材料とすることができる。構成29にあるように、遮光膜の材料は、主にクロムを含む材料が好適である。 構成30にあるように、本発明のフォトマスクブランクは、更に酸素を含むことが好ましく、この場合、遮光膜の表面側から透光性基板側(深さ方向)に向かって酸素の含有量が減少している領域を有することが好適である。クロムと酸素を含む材料からなる遮光膜は、クロム単体からなる遮光膜よりもドライエッチング速度が速くなり、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができる。ドライエッチング速度を速くできることで、遮光膜のパターニングに必要なレジスト膜の膜厚を薄くすることができ、遮光膜のパターン精度(CD精度)が良好になる。そして、遮光膜の深さ方向に向かって酸素の含有量が減少していることにより、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を遅くさせるように制御することができるので、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度を向上させることができる。・・・ 【0031】 以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。 [第1の実施の形態] 図1は本発明のフォトマスクブランクの第1の実施の形態を示す断面図である。 図1のフォトマスクブランク10は、透光性基板1上に遮光膜2を有するバイナリマスク用フォトマスクブランクの形態のものである。・・・ 【0032】 上記遮光膜2はクロムを含む材料からなり、且つ、水素を含む。クロム系材料からなる遮光膜2中に水素が含まれることにより、遮光膜のシート抵抗を小さくして、導電性を向上させることができる。・・・遮光膜2中の水素の含有量は、1原子%以上の範囲が好適である。・・・ 【0033】・・・ 遮光膜2中には、さらに酸素や、窒素、炭素を含んでも良い。 遮光膜2中に酸素を含む場合、酸素の含有量は、5~80原子%の範囲が好適である。酸素の含有量が5原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度を速める効果が得られにくい。一方、酸素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。好ましい酸素の含有量は、10~50原子%とすることが望ましい。 【0034】 また、遮光膜2中に窒素を含む場合、窒素の含有量は、15~80原子%の範囲が好適である。窒素の含有量が15原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度を高める効果が得られにくい。一方、窒素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。好ましい窒素の含有量は、20~50原子%とすることが望ましい。 また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでも良い。その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が、10~80原子%の範囲とするのが好適である。また、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含む場合の酸素と窒素の含有比は、特に制約はされず、吸収係数等の兼ね合いで適宜決定される。 【0035】 また、遮光膜2中に炭素を含む場合、炭素の含有量は、1~20原子%の範囲が好適である。炭素は、水素と同様に導電性を高める、即ちシート抵抗を小さくする効果、及び、反射率を低減させる効果がある。しかし、遮光膜中に炭素が含まれていると、ドライエッチング速度が低下し、遮光膜をドライエッチングによりパターニングする際に要するドライエッチング時間が長くなり、レジスト膜を薄膜化することが困難となる。以上の点から、炭素の含有量は、1~20原子%が良く、さらに好ましくは、3~15原子%以下が望ましい。 【0036】 また、上記遮光膜2は、単層であることに限られず、多層でも良い。いずれの膜にも、即ち、遮光膜2表面側から透光性基板1側の深さ方向の略全域に水素が含まれているものが良い。また、さらに、いずれの膜にも酸素及び/又は窒素を含むことが好ましい。・・・ 【0042】 次に、図1に示すフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法を説明する。 このフォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法は、フォトマスクブランク10の遮光膜2を、ドライエッチングを用いてパターニングする工程を有し、具体的には、フォトマスクブランク10上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン露光(パターン描画)を施す工程と、所望のパターン露光に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンに沿って前記遮光膜をエッチングする工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有する。・・・ 【0044】 次いで、図2(d)は、上記レジストパターン3aに沿って遮光膜2をエッチングする工程を示す。本発明のフォトマスクブランクはドライエッチングに好適であるため、エッチングはドライエッチングを用いることが好適である。該エッチング工程では、上記レジストパターン3aをマスクとして、ドライエッチングによって、レジストパターン3aの形成されていない遮光膜2が露出した部位を除去し、これにより所望の遮光膜パターン2a(マスクパターン)を透光性基板1上に形成する。 このドライエッチングには、塩素系ガス、又は、塩素系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスからなるドライエッチングガスを用いることが本発明にとって好適である。本発明におけるクロムと水素と酸素、窒素等の元素とを含む材料からなる遮光膜2に対しては、上記のドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行うことにより、ドライエッチング速度を高めることができ、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができ、断面形状の良好な遮光膜パターンを形成することができる。ドライエッチングガスに用いる塩素系ガスとしては、例えば、Cl2,SiCl4,HCl、CCl4、CHCl3等が挙げられる。」 「【0047】 [第2の実施の形態] 次に、図3(a)を用いて本発明のフォトマスクブランクの第2の実施の形態を説明する。 図3(a)のフォトマスクブランク30は、透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2を有する形態のものである。透光性基板1、遮光膜2については、上記第1の実施の形態で説明したので省略する。 上記ハーフトーン型位相シフター膜4は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%~30%)を透過させるものであって、所定の位相差を有するものである。このハーフトーン型位相シフター膜4は、該ハーフトーン型位相シフター膜4をパターニングした光半透過部と、ハーフトーン型位相シフター膜4が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回りこんだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。 【0048】 このハーフトーン型位相シフター膜4は、その上に形成される遮光膜2とエッチング特性が異なる材料とすることが好ましい。例えば、ハーフトーン型位相シフター膜4としては、モリブデン、タングステン、タンタル、ハフニウムなどの金属、シリコン、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフター膜4は、単層でも複数層であっても構わない。 この第2の実施の形態における上記遮光膜2は、ハーフトーン型位相シフト膜と遮光膜とを合わせた積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定する。そのように設定される遮光膜2の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。その理由は、上記第1の実施の形態と同様であって、ドライエッチング時のパターンのマイクロローディング現象等によって、微細パターンの形成が困難となる場合が考えられるからである。・・・」 「【0097】 以下の実施例6~9は、本発明の第3及び第4の実施の形態に対応する実施例である。 (実施例6) 本実施例のフォトマスクブランクは、透光性基板1上に遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2からなる。 このフォトマスクブランクは、次のような方法で製造することができる。・・・ 【0098】 図6は本実施例の遮光膜のラザフォード後方散乱分析による遮光膜の深さ方向の組成分析結果を示す図である。・・・ この遮光膜の光学濃度は、3.0であった。また、この遮光膜の露光波長193nmにおける反射率は14.8%と低く抑えることができた。さらに、フォトマスクの欠陥検査波長である257nm又は364nmに対しては、それぞれ19.9%、19.7%となり、検査する上でも問題とならない反射率であった。 【0099】 次に、前記フォトマスクブランク上に、化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。尚、上記レジスト膜を塗布後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理を行った。 次にフォトマスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画(80nmのラインアンドスペースパターン)を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。 次に、上記レジストパターンに沿って、遮光層と反射防止層とからなる遮光膜2のドライエッチング処理を行って遮光膜パターン2aを形成した。ドライエッチングガスとして、塩素(Cl2)ガスと酸素(O2)ガスの混合ガス(Cl2:O2=4:1)を用いた。このときエッチング速度は、反射防止層が4.9Å/秒、遮光層が3.3Å/秒で、遮光膜全体のエッチング速度は、3.6Å/秒であった。遮光膜の深さ方向におけるエッチング速度は、遮光膜の表面側のエッチング速度が速く、透光性基板側が遅い傾向であった」。 b 上記aによれば、「遮光膜2はクロムを含む材料からなり、・・・遮光膜2中の水素の含有量は、1原子%以上の範囲」(【0032】)であること、「遮光膜2中には、さらに酸素や、窒素、炭素を含んでも良い」(【0033】)こと、「遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでも良い。その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が、10~80原子%の範囲」(【0034】)であること、及び、「遮光膜2中に炭素を含む場合、炭素の含有量は、1~20原子%の範囲」(【0035】)であることを踏まえると、酸素、窒素、炭素を含む場合の遮光膜2におけるクロムの含有量は、最大値88原子%(酸素と窒素の合計が10原子%、炭素の含有量は1原子%、水素の含有量は1原子%の場合)であるといえる。 c 上記aの特に【0024】には、「遮光膜のドライエッチング速度は、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かってドライエッチング速度を遅くすると好適である。例えば、遮光膜のドライエッチング速度を、遮光膜の表面側から透光性基板側に向かって段階的及び/又は連続的にドライエッチング速度を遅くすることができる。」、「遮光膜の材料は、主にクロムを含む材料が好適である。」、「フォトマスクブランクは、更に酸素を含むことが好ましく、この場合、遮光膜の表面側から透光性基板側(深さ方向)に向かって酸素の含有量が減少している領域を有することが好適である。」及び「クロムと酸素を含む材料からなる遮光膜は、クロム単体からなる遮光膜よりもドライエッチング速度が速くなり、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができる。ドライエッチング速度を速くできることで、遮光膜のパターニングに必要なレジスト膜の膜厚を薄くすることができ、遮光膜のパターン精度(CD精度)が良好になる。そして、遮光膜の深さ方向に向かって酸素の含有量が減少していることにより、遮光膜の深さ方向に向かってドライエッチング速度を遅くさせるように制御することができるので、グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度を向上させることができる。」と記載されているから、「主にクロムを含む材料」からなり、「更に酸素を含む」「遮光膜」は、「ドライエッチング時間の短縮化を図」り、「遮光膜のパターン精度(CD精度)が良好にな」り、「グローバルローディング現象を低減させ、パターン精度を向上させる」ために、「遮光膜の表面側から透光性基板側に向かって段階的」に「酸素の含有量が減少していることにより」、「ドライエッチング速度を遅くさせるように制御」するものであるといえる。 d 以上aないしcによれば、「透光性基板1、遮光膜2については、上記第1の実施の形態で説明したので省略する。」(【0047】)との記載を踏まえると、「遮光膜2」に関しては【0033】~【0038】と同じ構成であり、また、「上記第1の実施の形態と同様であって、ドライエッチング時の・・・」(【0048】)との記載を踏まえると、「ドライエッチング」に関しては【0042】~【0044】と同じ構成であるから、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる(参考までに、段落番号等を括弧書きに記載する。)。 「透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2を有するフォトマスクブランク30であって(【0047】)、 前記遮光膜2はクロムを含む材料からなり(【0032】)、前記遮光膜2におけるクロムの含有量は最大値88原子%であり(上記b)、前記遮光膜2中には、さらに酸素や、窒素、炭素を含み、酸素の含有量は、5~80原子%の範囲であり(【0033】)、窒素の含有量は、15~80原子%の範囲であり(【0034】)、炭素の含有量は、1~20原子%の範囲であり(【0035】)、 前記遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでも良く、その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が、10~80原子%の範囲とし、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含む場合の酸素と窒素の含有比は、特に制約はされず、吸収係数等の兼ね合いで適宜決定され(【0034】)、 前記遮光膜2は、多層であって、いずれの膜にも酸素及び/又は窒素を含み(【0036】)、 前記遮光膜2の膜厚は、50nm以下であり(【0048】)、 前記ハーフトーン型位相シフター膜4は、露光波長に対して1%~30%を透過させ(【0047】)、 前記ハーフトーン型位相シフト膜と前記遮光膜とを合わせた積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定され(【0048】)、 前記フォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法において、遮光膜2に対しては、塩素系ガス、又は、塩素系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスからなるドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行うものであって(【0044】)、 前記主にクロムを含む材料からなり、更に酸素を含む前記遮光膜2は、前記遮光膜2の表面側から前記透光性基板側1に向かって段階的に酸素の含有量が減少していることにより、ドライエッチング速度を遅くさせるように制御するものである(上記c)、 フォトマスクブランク30(【0047】)。」 イ 対比・判断 (ア)引用発明1を主引例とする場合 a 対比 (a)引用発明1の「透明基板102」、「位相反転膜104」、「遮光性膜106」及び「位相反転ブランクマスク100」は、本件補正発明の「透明基板」、「位相反転膜」、「遮光性膜」及び「ブランクマスク」に相当するから、引用発明1の「透明基板102、透明基板102上に順次に形成された位相反転膜104、遮光性膜106及びレジスト膜112を有する位相反転ブランクマスク100」は、本件補正発明の「透明基板と、前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、を備え」る「ブランクマスク」に相当する。 (b)引用発明1の「前記遮光性膜106は、クロム(Cr)が30at%~70at%、窒素(N)が10at%~40at%、酸素(O)が0~50at%、炭素(C)が0~30at%、ホウ素(B)が0~30at%、水素(H)が0~30at%である組成比を有」することは、本件補正発明の「前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有」することと、「前記遮光性膜は、クロム30~70at%、窒素15~40at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有」することの点で一致する。 (c)引用発明1の「前記遮光性膜106は、300Å~700Åの厚さを有」することは、本件補正発明の「前記遮光性膜は30~70nmの厚さを有」することに相当する。 (d)引用発明1の「前記位相反転膜104は、193nm又は248nm波長の露光光に対して10%~50%の透過率を有」することは、本件補正発明の「前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して3~10%の透過率を有」することと、「前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して10%の透過率を有」することの点で一致する。 (e)引用発明1の「前記位相反転膜104及び遮光性膜106が積層された部分の光学密度は、193nm又は248nmの露光波長に対して2.5~3.5であ」ることは、本件補正発明の「前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、193nm波長の露光光に対して2.5~3.5であ」ることに相当する。 (f)引用発明1の「前記遮光性膜106は、クロム(Cr)に軽元素を含むクロム(Cr)化合物からなる第1遮光層114及び第2遮光層116で構成され」ることは、本件補正発明の「前記遮光性膜は、上部層と下部層の2層で構成され」ることに相当する。 (g)引用発明1の「前記位相反転ブランクマスク100を用いて、位相反転フォトマスクを製造する際には、前記遮光性膜106を、塩素(Cl)系ガスを含むエッチングガスでエッチングして、遮光性膜パターンを形成する」ことは、本件補正発明の「塩素系ガスに対して、前記上部層に比べて前記下部層のエッチング速度が遅い」ことと、「塩素系ガスに対して、前記上部層及び前記下部層がエッチングされる」ことの点で一致する。 (h)したがって、本件補正発明と引用発明1とは、 「透明基板と、 前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、 前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、 を備え、 前記遮光性膜は、クロム30~70at%、窒素15~40at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有し、 前記遮光性膜は30~70nmの厚さを有し、 前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して10%の透過率を有し、 前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、193nm波長の露光光に対して2.5~3.5であり、 前記遮光性膜は、上部層と下部層の2層で構成され、 塩素系ガスに対して、前記上部層及び前記下部層がエッチングされる、 ブランクマスク。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 上部層及び下部層からなる遮光性膜は、塩素系ガスに対して、本件補正発明は、「前記上部層に比べて前記下部層のエッチング速度が遅い」と特定されるのに対して、引用発明1は「第1遮光層114」のエッチング速度と「第2遮光層116」のエッチング速度の関係がこのように特定されない点。 b 判断 上記相違点1について検討する。 (a)引用文献1には、「第1遮光層114は位相反転膜104上に形成され、エッチング速度を速くさせて全体遮光性膜106のエッチング工程の時間を短縮する役割を担う。」(【0036】)、及び、「第2遮光層116が酸素(O)を含む場合、一定の遮光性の確保のために、酸素(O)を含まない場合に比べて膜厚が厚くなりうるが、エッチング速度が速くなるので、エッチング時間及びレジスト膜の薄膜化においては同一の効果を得ることができる。」(【0042】)と記載されているから、引用発明1において、「第1遮光層114」(本件補正発明の「下部層」に相当。)と「第2遮光層116」(本件補正発明の「上部層」に相当。)はそれぞれ、「全体遮光性膜106のエッチング工程の時間を短縮する」あるいは「レジスト膜の薄膜化」という目的に応じて適宜エッチング速度が定められるものであるといえる。 (b)また、ブランクマスクの技術分野において、2層からなる遮光層のエッチング速度を異ならせることは周知の技術事項でもあり、その際、2層のうちのどちらの層のエッチング速度を遅くするかは、当業者が適宜選択する設計上の事項である。 (例えば、特開2015-194724号公報「パターン断面のえぐれを抑制するために、遮光膜の上層以外の層の全体におけるクロム含有量を多くすると、遮光膜全体のエッチングレートが低下し、面内でのCD均一性の低下が発生する。・・・本発明者は、このようなマスクブランクにおける遮光膜の好ましい構成について、さらに鋭意研究を行った。その結果、遮光膜を上層、中間層、下層の3層構造とし、酸素含有塩素系ガスのドライエッチングに対する各層のエッチングレートが、上層が最も遅く、中間層が最も速く、下層が上層よりも速いが中間層よりも遅いという特性を有することが好ましいという結論に至った。」(【0047】~【0048】)、 特開2019-61106号公報(2019年4月18日公開)「上層32及び下層31を同じエッチング液を使用してエッチングする際、上層32のエッチング速度に対する下層31のエッチング速度の比は、1.1以上5以下ある。エッチング速度の比が1.1以上5以下であると、ウェットエッチング後の位相シフト膜パターンの断面形状は良好であり、CDバラツキは小さい。」(【0031】)、 特開2016-212322号公報「(構成3)前記遮光膜は、前記上層と前記下層との間に中間層が形成されていることを特徴とする構成1又は2記載の位相シフトマスクブランク。・・・構成3のように、遮光膜を、位相シフト膜側から下層、中間層、上層が順に積層された構造とすることにより、各層のクロム含有量を調整して遮光膜のエッチングレートを三段階にコントロールすることができ、遮光膜のパターン側壁にサイドエッチの進行度の相違による段差の形成を抑制し、遮光膜のパターンの断面形状を向上させることができる。」(【0022】~【0023】)、 特許5948495号公報「多層膜とされた位相シフト層11の上にフォトレジスト層14が形成される。位相シフト層11は、段部B1biに対応する下層11d、段部B1bhに対応する中層11c、均一領域B1aに対応する上層11bが基板S側から積層されている。下層11dは、段部B1biに対応するように、厚さTiを有するとともに、この3層のなかでは最も小さなエッチングレートを有する。中層11cは、段部B1bhに対応するように厚さ(Th-Ti)を有するとともに、下層11dより大きなエッチングレートを有する。また、上層1bは、厚さ(Tg-Th)を有するとともに、中層11cより大きなエッチングレートを有する。下層11d、中層11c、上層11bのエッチングレートは、側面の傾斜形状、および、段差の幅寸法B1bhおよび幅寸法B1biの大きさに対応して設定する。」(【0056】)参照。) (c)そうすると、引用発明1において、上記周知の技術事項を適用し、塩素系ガスに対して、「第2遮光層116」(上部層)に比べて「第1遮光層114」(下部層)のエッチング速度が遅いものとなして、上記相違点1に係る本件補正発明の構成となすことに、格別の技術的困難性は認められない。 c 本件補正発明の奏する効果について 本件補正発明において、上記相違点1の構成となすことにより奏される効果も予測し得た程度のことにすぎない。 (イ)引用発明2を主引例とする場合 a 対比 (a)引用文献2の「ハーフトーン型位相シフター膜4は、該ハーフトーン型位相シフター膜4をパターニングした光半透過部と、ハーフトーン型位相シフター膜4が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回りこんだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである」(【0047】)との記載を踏まえると、引用発明2の「ハーフトーン位相シフター膜」は、本件補正発明の「位相反転膜」に相当する。 また、引用発明2の「透光性基板1」、「遮光膜2」及び「フォトマスクブランク30」は、本件補正発明の「透明基板」、「遮光性膜」及び「ブランクマスク」に相当するから、引用発明2の「透光性基板1上に、ハーフトーン型位相シフター膜4とその上の遮光層5と反射防止層6とからなる遮光膜2を有するフォトマスクブランク30」は、本件補正発明の「透明基板と、前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、を備え」る「ブランクマスク」に相当する。 (b)引用発明2の「前記遮光膜2はクロムを含む材料からなり、前記遮光膜2におけるクロムの含有量は最大値88原子%であり、前記遮光膜2中には、さらに酸素や、窒素、炭素を含み、酸素の含有量は、5~80原子%の範囲であり、窒素の含有量は、15~80原子%の範囲であり、炭素の含有量は、1~20原子%の範囲であり、前記遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでも良く、その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が、10~80原子%の範囲と」することは、本件補正発明の「前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有」することと、「前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素5~40at%、炭素0~20at%の組成比を有」することの点で一致する。 (c)引用発明2の「前記遮光膜2の膜厚は、50nm以下であ」ることは、本件補正発明の「前記遮光性膜は30~70nmの厚さを有」することと、「前記遮光性膜は30~50nmの厚さを有」することの点で一致する。 (d)引用文献2における「ArFエキシマレーザー(波長193nm)」(【0034】)及び「遮光膜の露光波長193nm」(【0098】)との記載から、引用発明2の露光波長は193nmであると認められるから、引用発明2の「前記ハーフトーン型位相シフター膜4は、露光波長に対して1%~30%を透過させ」ることは、本件補正発明の「前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して3~10%の透過率を有」することに相当する。 (e)上記(d)での検討を踏まえると、引用発明2の「前記ハーフトーン型位相シフト膜と前記遮光膜とを合わせた積層構造において、露光光に対して光学濃度が2.5以上となるように設定され」ることは、本件補正発明の「前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、193nm波長の露光光に対して2.5~3.5であ」ることに相当する。 (f)引用発明2の「前記遮光膜2は、多層であ」ることは、本件補正発明の「前記遮光性膜は、上部層と下部層の2層で構成され」ることに相当する。 (g)引用発明2の「前記フォトマスクブランク10を用いたフォトマスクの製造方法において、遮光膜2に対しては、塩素系ガス、又は、塩素系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスからなるドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行う」ものであって、当該遮光膜2が、「前記主にクロムを含む材料からなり、更に酸素を含む前記遮光膜2は、前記遮光膜2の表面側から前記透光性基板側1に向かって段階的に酸素の含有量が減少していることにより、ドライエッチング速度を遅くさせるように制御するものである」ことは、本件補正発明の「塩素系ガスに対して、前記上部層に比べて前記下部層のエッチング速度が遅い」に相当する。 b 上記aによれば、本件補正発明と引用発明2とは、 「透明基板と、 前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、 前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、 を備え、 前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素5~40at%、炭素0~20at%の組成比を有し、 前記遮光性膜は30~50nmの厚さを有し、 前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して3~10%の透過率を有し、 前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、193nm波長の露光光に対して2.5~3.5であり、 前記遮光性膜は、上部層と下部層の2層で構成され、 塩素系ガスに対して、前記上部層に比べて前記下部層のエッチング速度が遅い、 ブランクマスク。」の点で一致し、引用発明2は本件補正発明の構成をすべて備えている。よって、本件補正発明は引用発明2である。 また、本件補正発明は引用発明2から当業者が容易に想到し得たものである。 ウ 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明1及び周知の技術的事項に基づいて、あるいは、引用発明2に基づいて当業者であれば容易になし得たものであり、また、本件補正発明は引用発明2である。 エ 請求人の主張について (ア)請求人は、審判請求書の「【意見の内容】」「3. 本願発明が特許されるべき理由」「(c)本願発明と引用文献記載発明との対比(29条1項3号及び同条2項の拒絶理由について)」において概略、下記の通り主張する。 a 本願補正発明は、光学密度が2.5~3.5という好ましい範囲にあるべきことを考慮して、位相反転膜の透過率を3種類の範囲に分類した上で、遮光性膜の組成、組成比及び厚さの組み合わせを調節するものである。 b 本願補正発明は、遮光性膜と位相反転膜との積層構造における光学密度のターゲット範囲を2.5~3.5とし、位相反転膜の透過率のターゲット範囲をそれぞれ異なる3つの範囲に分類した上で、ラジカル反応を抑制するために、遮光性膜の組成、組成比及び厚さについて、遮光性膜は、上部層と下部層の2層で構成され、塩素系ガスに対して、上部層に比べて下部層のエッチング速度が遅くするものである。 c 本願補正発明は、遮光性膜が必ず窒素を含むが、必ずしも酸素を含まず、また、酸素含有量を窒素含有量よりも低くすることにより、反射率の過度な増加を防止しながら、エッチング速度の過度な増加をも防止することができるものである。 (イ)当審の判断 a しかしながら、上記(ア)aの点は、本件補正後の請求項1ないし3に係る発明に分けたことの技術的意味についての主張であって、本件補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)が、引用発明1及び周知の技術的事項に基づいて当業者であれば容易になし得たものであること、あるいは、引用発明2であることについての主張ではなく採用できない。 b 本件補正発明におけるラジカル反応の抑制は、本願の発明の詳細な説明の「本発明の遮光性膜103は、クロムを主成分とする化合物で構成される。クロム化合物は、塩素系ガスによる乾式エッチング時にラジカル(Radica)反応によって相対的に等方性にエッチングされる傾向を示す。・・・一方、遮光性膜103の下部の位相反転膜102は、モリブデンシリコン化合物又はシリコン化合物で構成され、この場合、位相反転膜102は、ラジカル反応に比べてイオン性反応が相対的に高いので、遮光性膜103のCDに比してCD偏差が少ない。」(【0029】)との記載によれば、「CD偏差を少な」くするためであるといえる。 そして、本願の発明の詳細な説明の「遮光性膜103のラジカル反応を抑制するための遮光性膜103の構成は、・・・遮光性膜103は、クロム(Cr)を主成分と」(【0030】・【0031】)するとの記載によれば、遮光性膜103についてクロム(Cr)を主成分とすればラジカル反応を抑制することができるものであると解される。 これに対して、引用発明1及び2は、ラジカル反応の抑制を意図しているものであるとはいえないが、遮光性膜についてクロム(Cr)を主成分とする点で本件補正発明と構成上差異がないため、同じ効果を奏するものであると解されるから、請求人の上記(ア)bの主張は採用できない。 c さらに、上記(ア)cの点については、そもそも、本件補正発明は、「酸素含有量は窒素含有量よりも低く」することを特定していないから、「酸素含有量は窒素含有量よりも低く」することに基づく主張は請求項の記載に基づくものではなく採用できない。 また、窒素(N)と酸素(O)の含有量についても、「前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有し」ていると特定するにとどまり、引用発明1あるいは引用発明2と同じ含有率を含むから、格別のものであるとは認められない。 d 以上によれば、上記(ア)の審判請求書における請求人の主張は、上記イの判断を左右するものではない。 オ まとめ したがって、本件補正発明は引用発明1及び周知の技術的事項に基づいて、あるいは、引用発明2に基づいて当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、また、本件補正発明は引用発明2であるから、特許法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)補正の却下の決定のむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、たとえ、本件補正が特許請求の範囲の減縮であって、上記(2)で指摘した特許法第17条の2第5項の規定の規定を満足するものであっても、上記(3)の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件発明について 1 本件発明 上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、令和3年4月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記第2、[理由]1において、本件補正前のものとして示したとおりのものであるところ、本件発明は、上記第2の[理由]2(3)イで検討した本件補正発明から、遮光性膜と位相反転膜との積層構造における光学密度に関して、「193nm波長の露光光に対して」との限定、及び、遮光性膜に関して、「上部層と下部層の2層で構成され、塩素系ガスに対して、前記上部層に比べて前記下部層のエッチング速度が遅い」との限定事項を省いた上で、遮光性膜に関して、「酸素含有量は窒素含有量よりも低」いとの限定事項を加えたものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~4、12~14に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、または、この出願の請求項1、3~6、11、13~14に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない(新規性)、あるいは、この出願の請求項1~4、12~14に係る発明は、その最先の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、また、この出願の請求項1、3~6、11、14に係る発明は、その最先の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(進歩性)との理由を含むものである。 ・引用文献1:特開2016-197225号公報 ・引用文献2:特開2011-215657号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項及び引用発明1、2は、上記第2、[理由]2(2)アに記載したとおりである。 4 対比・判断 (1)引用発明1を主引例とする場合 ア 対比 上記1及び前記第2、[理由]2(3)イ(ア)での検討を踏まえると、本件発明と引用発明1とは、 「透明基板と、 前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、 前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、 を備え、 前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して10%の透過率を有し、 前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、2.5~3.5であり、 前記遮光性膜は、クロム30~70at%、窒素15~40at%、酸素0~40at%、炭素0~30at%の組成比を有し、酸素含有量は窒素含有量よりも低く、且つ 前記遮光性膜は30~70nmの厚さを有する、ブランクマスク。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。 (相違点2) 遮光性膜について、本件発明は、「酸素含有量は窒素含有量よりも低」いと特定されるのに対して、引用発明1はこのように特定されない点。 イ 判断 上記相違点2について検討する。 引用発明1は、「第2遮光層116が酸素(O)を含む場合、一定の遮光性の確保のために、酸素(O)を含まない場合に比べて膜厚が厚くなりうるが、エッチング速度が速くなるので、エッチング時間及びレジスト膜の薄膜化においては同一の効果を得ることができる。このとき、第2遮光層116は、1at%~20at%の酸素(O)含有量を有し、好ましくは、1at%~15at%の酸素(O)含有量を有する。第2遮光層116の酸素(O)含有量が20at%を超えると、位相反転膜104のエッチングに使われるフッ素(F)系エッチングガスに対する耐性が低下して位相反転膜104エッチング時に第2遮光層116が損傷し、光学密度が低下するという問題につながる。」(【0042】)ことを考慮して、「前記遮光性膜106は、クロム(Cr)が30at%~70at%、窒素(N)が10at%~40at%、酸素(O)が0~50at%、炭素(C)が0~30at%、ホウ素(B)が0~30at%、水素(H)が0~30at%である組成比を有」する範囲で、酸素(O)の組成比を定めるものであるから、当該「窒素(N)が10at%~40at%、酸素(O)が0~50at%」という範囲は、酸素(O)含有量が窒素(N)含有量よりも低い組成比を含む。 したがって、引用発明1は、酸素(O)含有量が窒素(N)含有量よりも低い組成比を含むから、相違点2は実質的な相違点ではない。 よって、上記アでの検討を踏まえると、引用発明1と本件発明に相違するところはない。 したがって、引用発明1は本件発明である。 また、本件発明は引用発明1から当業者が容易に想到し得たものである (2)引用発明2を主引例とする場合 ア 対比 上記1及び前記第2、[理由]2(3)イ(イ)での検討を踏まえると、本件発明と引用発明2とは、 「透明基板と、 前記透明基板上に設けられた位相反転膜と、 前記位相反転膜上に設けられた遮光性膜と、 を備え、 前記位相反転膜は、193nm波長の露光光に対して3~10%の透過率を有し、 前記遮光性膜と前記位相反転膜との積層構造における光学密度は、2.5~3.5であり、 前記遮光性膜は、クロム20~70at%、窒素15~55at%、酸素5~40at%、炭素0~20at%の組成比を有し、且つ 前記遮光性膜は30~50nmの厚さを有する、ブランクマスク。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3) 遮光性膜について、本件発明は、「酸素含有量は窒素含有量よりも低」いと特定されるのに対して、引用発明2はこのように特定されない点。 イ 判断 上記相違点3について検討する。 引用発明2は、「酸素の含有量が5原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度を速める効果が得られにくい。一方、酸素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。好ましい酸素の含有量は、10~50原子%とすることが望ましい。」(【0033】)、及び、「窒素の含有量が15原子%未満であると、クロム単体よりもドライエッチング速度を高める効果が得られにくい。一方、窒素の含有量が80原子%を超えると、波長200nm以下の例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)においての吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度(2.5以上)を得るためには膜厚を厚くする必要が生じてしまう。好ましい窒素の含有量は、20~50原子%とすることが望ましい。」(【0034】)ことを考慮して、「前記遮光膜2中には、さらに酸素や、窒素、炭素を含み、酸素の含有量は、5~80原子%の範囲であり、窒素の含有量は、15~80原子%の範囲であり、炭素の含有量は、1~20原子%の範囲であり、前記遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含んでも良く、その場合の含有量は、酸素と窒素の合計が、10~80原子%の範囲とし、遮光膜2中に酸素と窒素の両方を含む場合の酸素と窒素の含有比は、特に制約はされず、吸収係数等の兼ね合いで適宜決定され」る範囲で、酸素の組成比を定めるものであるから、当該「酸素の含有量は、5~80原子%の範囲であり、窒素の含有量は、15~80原子%の範囲であ」るという範囲は、酸素含有量が窒素含有量よりも低い組成比を含む。 したがって、引用発明2は、酸素含有量が窒素含有量よりも低い組成比を含むから、相違点3は実質的な相違点ではない。 よって、上記アでの検討を踏まえると、引用発明2と本件発明に相違するところはない。 したがって、引用発明2は本件発明である。 また、本件発明は引用発明2から当業者が容易に想到し得たものである。 5 むすび 以上のとおり、本件発明は、引用発明1または2であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本件発明は、引用発明1または2に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-015885

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