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特許拒絶査定不服審判

2021-015663

脂肪族多環構造含有有機基を有するシリコン含有レジスト下層膜形成組成物

審判番号
2021-015663
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-005376
請求日
2021年11月15日
審決日
2023年01月05日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日産化学株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
審判長/審判官
  • 審判長 松波 由美子
  • 審判官 里村 利光
  • 審判官 井口 猶二
分類
P18 .113-Z (G03F) / P18 .121-Z (G03F) / P18 .57 -Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020- 5376「脂肪族多環構造含有有機基を有するシリコン含有レジスト下層膜形成組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月21日出願公開、特開2020- 76999〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特願2016-534409号(以下「原出願」という。)は、平成27年7月10日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年7月15日)の出願である。 特願2020-5376号(以下「本件出願」という。)は、原出願の一部を令和2年1月16日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和2年11月16日付け:拒絶理由通知書 令和3年 3月16日 :手続補正書・意見書の提出 令和3年 8月 6日付け:拒絶査定 令和3年 8月 6日付け:補正の却下の決定 令和3年11月15日 :審判請求書の提出 令和3年11月15日 :手続補正書の提出 (この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。) 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正前の特許請求の範囲 令和3年3月16日に提出された手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本件補正前の特許請求の範囲の記載は、本件出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 シランとして加水分解性シラン、その加水分解物、その加水分解縮合物、又はそれらの組み合わせを含む脂肪族多環構造含有リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物であって、脂肪族多環構造は式(1): 【化1】 [図:0001394632000001.jpg] (式(1)中、R1は脂肪族多環構造を含み且つSi-C結合でSi原子と結合している有機基である。R2はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものである。R3はエトキシ基を示す。aは1の整数を示し、bは0~2の整数を示し、a+bは1~3の整数を示す。)で表される加水分解性シランが有する構造であり、上記加水分解性シランは式(1)のシランとテトラエトキシシランとを含んでいるものである上記組成物。 【請求項2】 式(1)中のR1が置換されていても良いノルボルネン、置換されていても良いノルボルナン、ヘテロ原子を含む脂肪族多環基、又はそれらを含む有機基である請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項3】 式(1)のR1の置換基がカルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又は酸素原子である請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項4】 該加水分解性シランが、式(1)の加水分解性シランとその他の加水分解性シランの組み合わせであり、その他の加水分解性シランが式(2): 【化2】 [図:0001394632000002.jpg] (式(2)中、R4はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R5はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、cは0~3の整数を示す。)、及び式(3): 【化3】 [図:0001394632000003.jpg] (式(3)中、R6はアルキル基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R7はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基又はアリーレン基を示し、dは0又は1の整数を示し、eは0又は1の整数である。)からなる群より選ばれた少なくとも1種の加水分解性シランである請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項5】 請求項1に記載の式(1)の加水分解性シランと請求項4に記載の式(2)の加水分解性シランの組み合わせからなる加水分解性シランの加水分解縮合物をポリマーとして含むレジスト下層膜形成組成物。 【請求項6】 更に加水分解触媒として酸を含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項7】 更に水を含む請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項8】 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによって得られるレジスト下層膜。 【請求項9】 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成しレジスト下層膜を形成する工程、前記下層膜の上にレジスト組成物を塗布しレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、露光後にレジスト膜を現像しレジストパターンを得る工程、レジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジストとレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。 【請求項10】 半導体基板上に有機下層膜を形成する工程、その上に請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布し焼成しレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜の上にレジスト組成物を塗布しレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、露光後にレジスト膜を現像しレジストパターンを得る工程、レジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、パターン化されたレジスト下層膜により有機下層膜をエッチングする工程、及びパターン化された有機下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 なお、下線は補正箇所を示す。 「 【請求項1】 シランとして加水分解性シランの加水分解縮合物を含む脂肪族多環構造含有リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物であって、脂肪族多環構造は式(1): 【化1】 [図:0001394632000004.jpg] (式(1)中、R1は脂肪族多環構造を含み且つ置換基R1は脂肪族多環構造中の炭素原子がケイ素原子と直接結合してSi-C結合でSi原子と結合している有機基である。R2はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものである。R3はエトキシ基を示す。aは1の整数を示し、bは0~2の整数を示し、a+bは1~3の整数を示す。)で表される加水分解性シランが有する構造であり、上記加水分解性シランはテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシラン、及びフェニルトリアルコキシシランからなる群から選ばれた加水分解性シラン(1-1)と、式(1)で表される化合物として、ノルボルネン、ノルボルナン、及びヘテロ原子を含む脂肪族多環基からなる群から選ばれた構造を含む加水分解性シラン(1-2)との組み合わせを含み、 上記加水分解縮合物は、下記2つの単位構造: 【化2】 [図:0001394632000005.jpg] (式(a)で表される単位構造はテトラエトキシシラン由来の単位構造である) を必須として含み、及び 上記組成物は、有機酸と酸発生剤とを含み、ただし5-(ビシクロヘプテニル)トリメトキシシランを含む加水分解性シランの加水分解縮合物は含まない、 上記組成物。 【請求項2】 さらに加水分解性シラン及び/又はその加水分解物を含む、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項3】 式(1)中のR1が置換されていても良いノルボルネン、置換されていても良いノルボルナン、ヘテロ原子を含む脂肪族多環基、又は置換されていても良いノルボルネン、置換されていても良いノルボルナン、若しくはヘテロ原子を含む脂肪族多環基を含む有機基である請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項4】 式(1)中のR1の置換基がカルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、又は酸素原子である請求項3に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項5】 該加水分解性シランが、加水分解性シラン(1-1)と加水分解性シラン(1-2)の組み合わせに加え、加水分解性シラン(1-2)以外の式(1)の加水分解性シランと加水分解性シラン(1-1)以外のその他の加水分解性シランの組み合わせを含み、その他の加水分解性シランが式(2): 【化3】 [図:0001394632000006.jpg] (式(2)中、R4はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R5はエトキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、cは0~3の整数を示す。)、及び式(3): 【化4】 [図:0001394632000007.jpg] (式(3)中、R6はアルキル基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R7はエトキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基又はアリーレン基を示し、dは0又は1の整数を示し、eは0又は1の整数である。)からなる群より選ばれた少なくとも1種の加水分解性シランである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項6】 請求項1に記載の式(1)の加水分解性シランと請求項5に記載の式(2)の加水分解性シランの組み合わせからなる加水分解性シランの加水分解縮合物をポリマーとして含むレジスト下層膜形成組成物。 【請求項7】 更に加水分解触媒として酸を含む請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項8】 更に水を含む請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【請求項9】 前記加水分解縮合物が、更に以下の式(1-1)又は式(1-2)で表される単位構造を含有する、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。 【化5】 [図:0001394632000008.jpg] 【請求項10】 請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによって得られるレジスト下層膜。 【請求項11】 請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成しレジスト下層膜を形成する工程、前記下層膜の上にレジスト組成物を塗布しレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、露光後にレジスト膜を現像しレジストパターンを得る工程、レジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジストとレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。 【請求項12】 半導体基板上に有機下層膜を形成する工程、その上に請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布し焼成しレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜の上にレジスト組成物を塗布しレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、露光後にレジスト膜を現像しレジストパターンを得る工程、レジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、パターン化されたレジスト下層膜により有機下層膜をエッチングする工程、及びパターン化された有機下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。」 (3)本件補正の目的について 最初に、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえるかについて検討する。 本件補正は、新たな請求項9を追加する補正事項を含むところ、このような補正は、補正前後で請求項の数が増加する、いわゆる、増項補正に該当するものである。 ここで、補正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するというためには、補正後の請求項が補正前の請求項の発明特定事項を限定した関係にあることが必要であり、その判断に当たっては、補正後の請求項が補正前のどの請求項と対応関係にあるのかを特定し、その上で、補正後の請求項が補正前の当該請求項の発明特定事項を限定するかどうかを判断すべきものと解されるところ、増項補正の適否についても同様の判断基準に基づいて判断すべきものといえる。 そこで、この点について、本件補正について検討すると、上記(1)及び(2)によれば、本件補正前の請求項2、3、4、5、6、7、8、9及び10が、ぞれぞれ本件補正後の請求項3、4、5、6、7、8、10、11及び12に対応することは明らかである。また、本件補正前に請求項1において、「レジスト下層膜形成組成物」が含むとされていた、「シランとして加水分解性シラン、その加水分解物、その加水分解縮合物、又はそれらの組み合わせ」のうち、「加水分解縮合物」の部分が本件補正後の請求項1に対応し、「加水分解性シラン、その加水分解物」の部分が本件補正後の請求項2に対応する。 そうしてみると、本件補正後の請求項9に対応する、補正前の請求項は存在しないことになるから、新たに請求項9を追加する補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の第2号(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであるということはできない。 次に、本件補正が、特許法第17条の2第5項のその他の号に掲げる事項を目的とするものといえるかについて検討する。 上記補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第5項の第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)及び第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれを目的としたものでもないことは明らかである。 したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれに掲げる事項を目的としたものであるともいえない。 加えて、本件補正は、以下に示す理由によっても適法なものとはいえない。 すなわち、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項である、「式(1)のシラン」について、「式(1)中、」「置換基R1は脂肪族多環構造中の炭素原子がケイ素原子と直接結合してSi-C結合でSi原子と結合している有機基である」点、「ノルボルネン、ノルボルナン、及びヘテロ原子を含む脂肪族多環基からなる群から選ばれた構造を含む加水分解性シラン(1-2)」を含む点を付加し、さらには、発明特定事項である「レジスト下層膜形成用組成物」について、「有機酸と酸発生剤とを含む」点を付加することによって、「式(1)のシラン」の化学構造及び「レジスト下層膜形成用組成物」の成分をさらに限定するものである。そして、この補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0024】~【0025】及び【0042】等の記載に基づくものである。 したがって、新たに請求項9を追加する上記補正事項の点をひとまず措けば、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、同条5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的としたものに該当するということができる。 そこで、以下では、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 2 独立特許要件についての判断 (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(国際公開第2014/069329号)は、先の出願前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は、半導体装置の製造に使用される基板とレジスト(例えば、フォトレジスト、電子線レジスト)の間に下層膜を形成するための組成物に関する。詳しくは、半導体装置製造のリソグラフィー工程においてフォトレジストの下層に使用される下層膜を形成するためのリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物に関する。また、当該下層膜形成組成物を用いたレジストパターンの形成方法に関する。 背景技術 [0002]従来から半導体装置の製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウエハー等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。 ・・・中略・・・ 発明が解決しようとする課題 [0005]本発明の目的は、半導体装置の製造に用いることのできるリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を提供することにある。詳しくは、ハードマスクとして使用できるレジスト下層膜を形成するためのリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を提供することである。また、反射防止膜として使用できるレジスト下層膜を形成するためのリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を提供することである。また、レジストとのインターミキシングを起こさず、レジストに比較して大きなドライエッチング速度を有するリソグラフィー用レジスト下層膜及び該下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することである。 [0006] 特に本発明は、上層レジストを露光しアルカリ現像液や有機溶剤で現像した時に優れたレジストパターン形状が形成でき、後のドライエッチングにより下層に矩形なレジストパターンを転写することができるレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。 ・・・中略・・・ 発明の効果 [0008] 本発明では基板上に有機下層膜を介するか、又は有機下層膜を介さず、その上に本発明の組成物から形成されるレジスト下層膜(無機系シリコン系化合物含有)を被覆し、その上にレジスト膜(有機レジスト膜)の順で被覆する。」 イ 「発明を実施するための形態 ・・・中略・・・ [0044] 本発明に用いられる加水分解縮合物の具体例としては以下に例示される。 [図:0001394632000009.jpg] ・・・中略・・・ 実施例 [0119](化合物1の合成) [化25] [図:0001394632000010.jpg] ・・・中略・・・ [0124](合成例1) 15.40g(全シラン中で75mol%)のテトラエトキシシラン、1.23g(全シラン中で7mol%)のメチルトリエトキシシラン、1.37g(全シラン中で7mol%)のフェニルトリメトキシシラン、1.72g(全シラン中で6mol%)のメチルスルホニルメチルフェニルトリメトキシシラン、1.62g(全シラン中で5mol%)の(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、32.00gのアセトンを100mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01mol/lの塩酸6.66gを混合溶液に滴下した。添加後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート21gを加え、反応副生物であるエタノール、水、塩酸を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。プロピレングリコールモノエチルエーテルを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノエチルエーテル20/80の溶媒比率として140℃における固形残物換算で15重量パーセントとなるように調整した。得られたポリマーは式(5-1)に相当し、GPCによる重量平均分子量はポリスチレン換算でMw1600であった。 ・・・中略・・・ [0142](レジスト下層膜の調整) 上記合成例1乃至14、比較合成例1乃至4で得られたケイ素含有ポリマー、酸、硬化触媒、添加剤、溶媒、水を表1に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、レジスト下層膜形成用組成物の溶液をそれぞれ調製した。 表1及び表2中でマレイン酸はMA、(3-トリエトキシシリプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールはIMIDTEOS、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートはTPS105、マレイン酸モノトリフェニルスルフォニウムはTPSMA、トリフェニルスルホニウムカンファスルホネートはTPSCS、(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物はNorAnTEOS、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートはPGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルはPGEEと略した。水は超純水を用いた。各添加量は質量部で示した。ポリマーの添加量はポリマー溶液の質量ではなく、ポリマーの質量である。 ・・・中略・・・ [図:0001394632000011.jpg] (当合議体注:[表2]の実施例20以降の部分は省略した。) ・・・中略・・・ [図:0001394632000012.jpg] 」 (当合議体注:[表3]の実施例20以降の部分は省略した。) (2)引用文献1に記載された発明 上記(1)によれば、引用文献1には、[0124]で合成例1として得られた式(5-1)で表されるポリマーの発明(以下「ポリマー発明」という。)及び前記ポリマーを含む実施例19のレジスト下層膜形成用組成物の発明(以下「引用発明」という。ポリマー以外の組成は[0142][表2]参照。)がそれぞれ記載されている。ここで、上記レジスト下層膜形成用組成物は、引用文献1の[0001]の記載から、「リソグラフィー用」の組成物と認められる。 ア ポリマー発明 「15.40gのテトラエトキシシラン、1.23gのメチルトリエトキシシラン、1.37gのフェニルトリメトキシシラン、1.72gのメチルスルホニルメチルフェニルトリメトキシシラン、1.62gの(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、32.00gのアセトンの混合溶液を撹拌しながら0.01mol/lの塩酸6.66gを混合溶液に滴下し、反応させた後、室温まで冷却し、反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート21gを加え、反応副生物であるエタノール、水、塩酸を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得、プロピレングリコールモノエチルエーテルを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノエチルエーテル20/80の溶媒比率として固形残物換算で15重量パーセントとなるように調整し、得られた、式(5-1)で表されるポリマー(GPCによる重量平均分子量はポリスチレン換算でMw1600)。)」 (当合議体注:式(5-1)の再掲は省略する。) イ 引用発明 「ポリマー発明における下記式(5-1)で表されるポリマー:2質量部、MA(マレイン酸):0.02質量部、IMIDTEOS((3-トリエトキシシリプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール):0.006質量部、TPS105(トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート):0.02質量部、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):7質量部、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル):80質量部及び水:13質量部を混合して調整した、リソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。 [図:0001394632000013.jpg] 」 (3)対比・判断 本件補正後発明と引用発明を対比する。 ア リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物 引用発明の「リソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物」に含まれる「ポリマー」は、「ポリマー発明における式(5-1)で表されるポリマー」であって、「テトラエトキシシラン」、「メチルトリエトキシシラン」、「フェニルトリメトキシシラン」、「メチルスルホニルメチルフェニルトリメトキシシラン」、「(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物)」を加水分解して、縮合反応させて得た「加水分解縮合物(ポリマー)」である。 したがって、引用発明の「リソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物」は、本件補正後発明において、「シランとして加水分解性シランの加水分解縮合物を含む」とされる、「リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物」に相当する。 イ 加水分解性シラン 上記アの製造方法によれば、引用発明の「テトラエトキシシラン」、「メチルトリエトキシシラン」及び「(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物)」は、いずれも引用発明の「レジスト下層膜形成用組成物」の原料となる加水分解性シランである。 上記加水分解性シランのうち、「テトラエトキシシラン」及び「メチルトリエトキシシラン」は、本件補正後発明の「テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシラン、及びフェニルトリアルコキシシランからなる群から選ばれた加水分解性シラン(1-1)」に相当する。 また、上記加水分解性シランのうち、「(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物)」は、その化学構造からみて、本件補正後発明の「式(1)」において、「a=1、b=0」であり、「R1」がノルボルネン構造(脂肪族多環構造)を含み、当該ノルボルネン構造中の炭素原子がケイ素原子と直接結合した有機基であり、「R3」が「エトキシ基」である化合物である。そうすると、引用発明の「(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物)」は、本件補正後発明の「式(1)で表される化合物として、ノルボルネン、ノルボルナン、及びヘテロ原子を含む脂肪族多環基からなる群から選ばれた構造を含む加水分解性シラン(1-2)」に相当する。 上記ア及びイを総合すると、引用発明は、本件補正後発明の「上記加水分解性シランはテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシラン、及びフェニルトリアルコキシシランからなる群から選ばれた加水分解性シラン(1-1)と、式(1)で表される化合物として、ノルボルネン、ノルボルナン、及びヘテロ原子を含む脂肪族多環基からなる群から選ばれた構造を含む加水分解性シラン(1-2)との組み合わせを含み」との要件を満たす。 (当合議体注:「式(1)」は、「第1」「1(2)」に記載のものであって、再掲を省略する。) ウ 加水分解縮合物 引用発明の「ポリマー(加水分解縮合物)」は、「式(5-1)」で表される構造を有し、当該構造中の一番左の構造単位及び左から3番目の構造単位が、それぞれ本件補正後発明の「加水分解縮合物」における「式(a)」及び「式(b)」で表される「2つの単位構造」に相当する。ここで、引用発明の「ポリマー(加水縮合物)」の製造工程によれば、上記一番左の構造単位が、「テトラエトキシシラン」由来の構造単位であることは明らかである。 したがって、引用発明の「ポリマー(加水分解縮合物)」は、本件補正後発明の「上記加水分解縮合物は、下記2つの単位構造: 【化2】 [図:0001394632000014.jpg] (式(a)で表される単位構造はテトラエトキシシラン由来の単位構造である) を必須として含み」との要件を満たす。 さらに、上記ア~ウを総合すると、引用発明の「リソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物」は、本件補正後発明の「シランとして加水分解性シランの加水分解縮合物を含む脂肪族多環構造含有リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物であって、脂肪族多環構造は式(1)」「で表される加水分解性シランが有する構造であり」との要件を満たす。 エ 5-(ビシクロヘプテニル)トリメトキシシラン 引用発明の「ポリマー」の原料である加水分解性シランに、「5-(ビシクロヘプテニル)トリメトキシシラン」は含まれていない。 したがって、引用発明の「リソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物」は、本件補正後発明の「ただし5-(ビシクロヘプテニル)トリメトキシシランを含む加水分解性シランの加水分解縮合物は含まない、上記組成物」との要件を満たす。 オ 有機酸及び酸発生剤 引用発明の「MA」及び「TPS105」は、それぞれ本件補正後発明の「有機酸」及び「酸発生剤」に相当する。 以上ア~オによれば、本件補正後発明と引用発明には相違点はない。 したがって、本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明である。 また、本件補正後発明は、当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 (5)請求人の主張について 請求人は、令和3年11月15提出の審判請求書(以下「請求書」という。)において、以下の点を主張している。 ア 請求人は、審判請求書の「3.(3)(a)」において、以下の[A]~[C]の効果を主張している。 [A]本発明に係るレジスト下層膜形成組成物(実施例)から形成されたレジスト下層膜が、十分なフッ素系ガスエッチレートを有し、且つ有機下層膜に対する酸素系ガス耐性に優れ、またレジストパターニング評価においても良好なレジスト裾形状を得られたこと(表4~表6)。 [B]EUV露光によるレジストパターンの形成において、ポジ型アルカリ現像及びネガ型溶剤現像のいずれの現像方法でも良好なパターン形状を形成できること(表7及び表8)。 [C]実施例1等の本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、これを35℃で1ヶ月の保管したとき、保管前の組成物から形成したレジスト下層膜と保管後の組成物から形成したレジスト下層膜との膜厚の変化が少ない点(膜厚変化評価:良好)が確認され、高い安定性を有するレジスト下層膜形成組成物である点が示されている。一方、合成例1に用いた5-(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシランに代えて、5-(ビシクロヘプテニル)トリメトキシシランを用いた加水分解性シランの加水分解縮合物(比較合成例2)を含む組成物(比較例2)にあっては、35℃で1ヶ月の保管後の膜厚変化が大きかったこと。 しかしながら、上記(4)で示したとおり、本件補正後発明は引用発明と構成において相違しないから、同一の構成により同等の効果が奏されることは明らかである。したがって、上記[A]~[C]の効果に基づく上記アの主張は採用できない。 イ 請求人は、審判請求書の「3.(3)(b)」において、「実施例19には、合成例1で合成されたポリマー、酸、硬化触媒、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、溶剤及び水を含む組成物が記載されている。これら実施例に含まれるポリマーは、脂肪族多環構造含有シランとして、脂肪族多環構造酸無水物シラン(5-(トリエトキシシリル)ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物)又は脂肪族多環構造エステルシラン(化合物1)を用いて製造されたものである。 一方、本願請求項1に係る加水分解性シランの加水分解縮合物は、脂肪族多環構造含有シランとして、ノルボルネン、ノルボルナン、及びヘテロ原子を含む脂肪族多環基からなる群から選ばれた構造を含む加水分解性シラン(1-2)を使用したものであり、上記脂肪族多環構造酸無水物シラン又は脂肪族多環構造エステルシランを用いた加水分解縮合物でない点において、引用文献1に記載の発明とは明確に相違するものと思料する。」と主張している。(下線は当合議体で付したものである。) しかしながら、上記主張は、本件補正後の請求項1の記載に基づかない主張であるから採用できない。なぜなら、本件補正後の請求項1は、「加水分解性シラン(1-2)」を「式(1)で表される化合物として、ノルボルネン、ノルボルナン、及びヘテロ原子を含む脂肪族多環基からなる群から選ばれた構造を含む加水分解性シラン(1-2)」と特定しているのであって、これらの特定の加水分解性シランを用いた上記下線部の加水分解縮合物を排除するものではないからである。 そして、このような本件補正後発明の「加水分解縮合物」についての解釈は、本件補正後の請求項1を介して請求項3を引用する本件補正後の請求項4において、「式(1)中のR1の置換基がカルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基」と記載されている点からも理解できる事項である。 したがって、請求人の上記イの主張は採用できない。 (6)小括 以上によれば、本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 また、本件補正後発明は、当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5 補正の却下の決定のむすび 本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反し、また、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、[A]本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、[B]本願発明は、当業者が先の出願前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献1の記載及び引用発明 引用文献1に記載された発明(引用発明)は、前記「第2」[理由]2(2)イに記載したとおりのものである。 4 対比及び判断 本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、前記「第2」[理由]1(3)で述べた限定を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに上記限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2(3)~(6)で述べたとおり、引用文献1に記載された発明であるか、当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明であるか、当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-015663

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