2021-014505
導電性樹脂組成物及びそれを用いた電子回路部材
- 審判番号
- 2021-014505
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-170687外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月26日
- 審決日
- 2023年11月21日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】小谷 昌崇
- 【請求人代理人】宇佐美 綾
- 分類
- P18 .536-Z (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号
- データ出所
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結論
理由
目次 ▾ 8項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年9月1日の出願であって、令和2年8月12日付けで拒絶理由が通知され、同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年3月25日付で拒絶理由が通知され、同年5月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月6日付けで拒絶査定がされ、同年10月26日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和5年4月13日付けで拒絶理由が通知され、同年6月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和5年6月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものと認められる。
「(A)樹脂と、前記(A)樹脂と反応する(B)硬化剤と、(C)導電性フィラーとを必須成分として含む導電性樹脂組成物であって、その硬化物において、25%伸長後の残留ひずみが15%以下であり、前記(A)樹脂は官能基を有し、官能基当量400g/eq以上で10000g/eq以下であり、且つ、Tgまたは軟化点が40℃以下、あるいは30℃での弾性率が1.0GPa未満であり、かつ、エポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂のうち少なくとも1つを含有し、前記(C)導電性フィラーが、室温での固有体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下の導電物質からなること、及び、前記(C)導電性フィラーのタップ密度が6.0g/cm3以下であることを特徴とする、導電性樹脂組成物。」
第3 当審の拒絶理由の概要
令和5年4月13日付け拒絶理由通知に記載した拒絶理由は、以下の理由2を含むものである。
「2.(実施可能要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。記●理由2(実施可能要件)について・請求項1ないし11本願請求項1ないし11に係る発明は、「その硬化物において残留ひずみが15%以下であ」ることを発明特定事項としている。そして、本願明細書の発明の詳細な説明には、25%伸長後の残留ひずみが9%(実施例1,5,9)、10%(実施例2,6,10)、12%(実施例3,7,11)及び15%(実施例4,8)の態様が記載されているのみであり、「25%伸長後の残留ひずみ」を15%以下にするための条件については何ら記載されておらず、ましてや「25%伸長後の残留ひずみ」がどのような要因で調整できるのかについても何ら記載されていない。一方、本願明細書の発明の詳細な説明において、25%伸長後の残留ひずみが9%の実施例1と30%の比較例2の成分を比較すると、(B)硬化剤の種類及び配合量が25%伸長後の残留ひずみに影響を及ぼすと推察されるが、硬化剤の種類及び配合量をどのように変更すれば、25%伸長後の残留ひずみが大きくまたは小さくなるのかについて、当業者といえども理解することができず、このことが本願出願時の技術常識から自明であるともいえない。さらに、25%伸長後の残留ひずみが9%の実施例1、15%の実施例8及び12%の実施例11の成分を比較すると、(D)界面活性剤の種類及び配合の有無、並びに(F)分散剤の配合の有無が25%伸長後の残留ひずみに影響を及ぼすと推察されるが、界面活性剤及び分散剤をどのように変更すれば、25%伸長後の残留ひずみが大きくまたは小さくなるのかについて、当業者といえども理解することができず、このことが本願出願時の技術常識から自明であるともいえないし、(A)樹脂の種類及び物性が25%伸長後の残留ひずみに影響を及ぼすことは、本願出願時の技術常識であるといえる。そうすると、(A)樹脂がエポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂のうち少なくとも1つを含有する導電性樹脂組成物において、特定の物性を有するエポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂を選択し、硬化剤の種類及び配合量を選択し、(A)樹脂、(B)硬化剤及び(C)導電性フィラー以外の成分である、(D)界面活性剤の種類及び配合の有無、並びに(F)分散剤の配合の有無を選択し、「その硬化物において残留ひずみが15%以下であ」る導電性樹脂組成物を得ることは、当業者にとって期待し得る程度を越える過度の試行錯誤を要すると認められる。したがって、請求項1ないし11に係る発明は、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、実施をすることができない。よって、発明の詳細な説明は、請求項1ないし11に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。」
第4 当審の判断
当審は、令和5年6月6日提出の意見書及び手続補正書によっても、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、本願は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、拒絶すべきものと判断する。
以下にその理由を述べる。
1 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)の判断基準
特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。
これは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用することについて、明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その発明を実施することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。
そこで、この点について以下に検討する。
2 発明の詳細な説明に記載された事項
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は、フレキシブル性を有し、伸張時の導電性変化が抑制された導電性樹脂組成物及びそれを用いた電子回路部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野において、特にセンサ、ディスプレイ、ロボット用人工皮膚や人工筋肉といった用途においては、曲面や凹凸面などに配置したり自由に変形させたりすることが可能な柔軟なデバイスが要求されつつある。それに対応する有機トランジスタなどが研究されてきているが、デバイスに使用する基板や配線にも柔軟性が必要である。特に配線に関してはこれまでの金属回路では柔軟性がなく、柔軟な配線の開発が必要となってきている。
【0003】
従来の導電性ペーストとしては、耐熱性に優れたエポキシ樹脂をベースに銀粉などの導電性フィラーを充填したペーストが数多く開発されているが、エポキシ樹脂は固く脆い性質のため柔軟性に乏しく、変形に対する追従性が乏しいという問題があった。一方、柔軟性のみに主眼をおいた報告例では、カーボンナノチューブとイオン液体を混合したゲルをゴムに分散した導電材料が提案されているが、導電率としては従来の金属配線に遠く及ばない。
【0004】
導電性と伸縮性を両立するために、柔軟な熱可塑エラストマーと金属粉を組み合わせた導電ペーストや、さらに導電性ペーストを用いて柔軟性を有する基板上に印刷する回路基板が報告されている(特許文献1および特許文献2)。しかしこれらの方法では、熱可塑性エラストマーが導電性フィラーのバインダーとなるため耐熱環境での影響が大きく、塑性変形後の復元性が乏しいという難点がある。そのためエレクトロニクスにおける実装時や長期信頼性に関して従来と同等の品質を両立するのが困難である。
【0005】
また、所定の樹脂と導電性フィラーを使用することにより導電性と伸縮性をさらに向上させた報告例もある(特許文献3)。この方法についても、伸縮性の役割を担うのがゴムエマルジョンを主原料とする熱可塑性エラストマーである。特にニトリル系ゴムエマルジョンを用いる場合には、ニトリル基の含有量によって変形後の復元性や耐熱性や伸縮性の両立が難しく、シリコン系のゴムエマルジョンを用いる場合には部材との密着力低下の課題が指摘されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたものであり、塗布または印刷等の手段により導電性パターン等の描画が可能であり、導電性と伸縮性、変形後の復元性に優れる導電性樹脂組成物及びそれを用いた電子回路部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討した結果、下記構成の樹脂組成物において、良好な変形復元性と硬化性樹脂の耐熱性を維持しつつ、伸縮性及び導電性を両立することを見出し、当該知見に基づいてさらに研究を重ね、本発明に至った。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な変形復元性、高い耐熱性、導電性と伸縮性を両立する導電性樹脂組成物及びそれから成る回路部材を提供することが可能となる。またこのような特徴を有する導電性樹脂組成物または回路部材を用いることで、装着性や形状追従性が要求されるセンサやディスプレイなどの様々なインターフェースデバイスを実現できると考えられる。また、本発明の導電性樹脂組成物は、太陽電池を始めとするフレキシブルバッテリーや医療分野、車載分野など、装着性や形状追従性が要求される用途にも幅広く適用できると考えられる。」
・「【0015】
<(A)樹脂>
本実施形態において、(A)樹脂は官能基を有することを特徴とし、官能基の種類としては例えば、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、カルボニル基などが挙げられる。これら官能基は(B)硬化剤と反応性を有する、または、(A)樹脂同士の自重合といった反応性を有している限り特に限定はされない。また、その官能基当量は400g/eq以上で10000g/eq以下である。官能基当量が400g/eq未満の場合には架橋密度が高密度になるため硬化物が脆くなり伸縮性が低下する。一方、官能基当量が10000g/eqを超える場合には架橋密度が低密度となるため耐熱性が低下する。より好ましい官能基当量は、500g/eq以上8000g/eq以下、さらに好ましくは、1000g/eq以上6000g/eqである。
【0016】
さらに、本実施形態の(A)樹脂は、Tgまたは軟化点が40℃以下であるか、あるいは、30℃での弾性率が1.0GPa未満であることをさらなる特徴として備える。
【0017】
(A)樹脂のTgまたは軟化点が40℃を超える場合には、室温付近における弾性率が高くなるため常温における柔軟性が低下する。Tg又は軟化点の下限値について特に限定はなく、Tgまたは軟化点が低くなるほど室温における柔軟性や伸縮性は向上する。ただし、Tgまたは軟化点が-40℃を下回る場合にはタッキングのようなベタつきが発生しやすくなるため、(A)樹脂のTgまたは軟化点は好ましくは-40℃以上であり、より好ましくは-30℃以上である。
【0018】
あるいは、30℃における弾性率が1.0GPa以上である場合には、伸縮時や変形時の内部応力が高くなり導電フィラーの破壊や導電フィラーと樹脂の界面での破壊が誘発されやすくなるため、伸縮時の導電性低下の原因となるおそれがある。30℃における弾性率の下限値についても特に限定はないが、形状の復元性という観点から、100kPa以上であることが好ましく、500kPa以上であることがより好ましい。
【0019】
また、本実施形態において、(A)樹脂は重量平均分子量が5万以上であることが好ましい。それにより、本実施形態の樹脂組成物を用いて導電パターンを印刷した場合等にニジミが発生しにくくなると考えられる。一方、重量平均分子量の上限値については特に限定はないが、分子量が300万を超える場合には粘度が高くなり取り扱い性が低下するおそれがあるため、(A)樹脂の重量平均分子量範囲として好ましくは5万以上300万以下、より好ましくは10万以上100万以下である。
【0020】
さらに、(A)樹脂の分子構造が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、及びアクリロニトリルのうちから選択される少なくとも1つを構成要素として含む分子構造であることが好ましい。
・・・
【0026】
本実施形態の(A)樹脂の具体例としては、エポキシ変性(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基変性(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基変性(メタ)アクリル酸エステル等が好ましく例示される。」
「【0028】<(B)硬化剤>本実施形態の導電性樹脂組成物に含まれる(B)硬化剤としては、上述したような(A)樹脂との反応性を有している限り、特に制限なく様々な硬化剤を用いることができる。(B)硬化剤の具体例としては、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、酸無水物系化合物、イソシアネート系化合物、メルカプト系化合物、オニウム塩、過酸化物などのラジカル発生剤、光酸発生剤などが挙げられる。【0029】続きを表示(全14行)<(C)導電性フィラー>本実施形態で使用される(C)導電性フィラーは、室温での固有体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下である導電物質からなることを特徴とする。室温での固有体積抵抗率が1×10-4Ω・cmを超える材料を用いる場合、導電性樹脂組成物とした時に、その体積抵抗率は配合量にもよるが概ね1×10-3Ω・cm~1×10-2Ω・cmとなる。そのため回路にした場合、抵抗値が高くなり電力のロスが大きくなる。・・・【0031】また、本実施形態において、(C)導電性フィラーの形状は扁平形状であることが好ましく、厚みと面内長手方向のアスペクト比が10以上であることが好ましい。前記アスペクト比が10以上である場合には、導電性フィラーの質量比に対する表面積が大きくなり導電性の効率が上がるだけでなく、樹脂成分との密着性もよくなり伸縮性が向上する効果もある。・・・【0033】このようなアスペクト比を有する導電性フィラーの例としては、タップ法により測定したタップ密度で6.0g/cm3以下である導電性フィラーが挙げられる。さらに、タップ密度が2.0g/cm3以下である場合には更にアスペクト比が大きくなるためより好ましい。【0034】本実施形態の(C)導電性フィラーの粒子サイズに特に制限はないが、スクリーン印刷時の印刷性や配合物の混練において適度な粘度となるという観点から、レーザー光散乱方によって測定した平均粒径(体積累積50%における粒径;D50)が0.5μm以上、30μm以下であることが好ましく、1.5μm以上、20μm以下であることがより好ましい。」
・「【0040】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物には、上記必須成分以外にも、目的に応じて添加剤等を加えることができる。添加剤等については、例えばエラストマー、界面活性剤、分散剤、着色剤、芳香剤、可塑剤、pH調整剤、粘性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤などがあげられる。中でも、(D)界面活性剤、(E)希釈溶剤及び(F)分散剤のうち少なくとも1つを添加することが好ましい。
【0041】
<(D)界面活性剤>
本実施形態の樹脂組成物には、更に表面張力を低下させるための(D)界面活性剤を含有させることが、配合時の混練性、作業時の印刷性、被印刷体への接着性が向上する点で好ましい。このような界面活性剤(D)としては、表面張力を減少させる目的のものであれば特に限定なく使用できるが、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を用いることができる。より具体的には、イオン性界面活性剤としてはカルボン酸エステルのアルカリ金属塩等の界面活性剤を用いることができ、また、非イオン界面活性剤としては、シリコン系、フッ素系、アクリル系などのモノマーやオリゴマー、コポリマー等を用いることができる。
【0042】
これら(D)界面活性剤の添加量としては、導電性樹脂組成物全量のうち(C)導電性フィラーを除く樹脂組成物全体に対し、0.01~50質量%程度とすることが好ましい。このような添加量であれば混練性、印刷性、接着性が向上する点で好ましい。より好ましくい添加量は0.05~35質量%である。
【0043】
<(E)希釈剤>
本実施形態において粘度を調整する、あるいは印刷時の作業性やポットライフを制御する目的で(E)希釈溶剤を更に含有することが好ましい。希釈用剤としては、例えば、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系、グリコール系、グリコールエステル系、グリコールエーテル系、グライム系などの有機溶剤を用いても良くこれらは1種類でも2種類以上を併用しても良い。
・・・
【0053】
<(F)分散剤>
また、本実施形態の樹脂組成物には、導電性フィラーと樹脂の分散安定性を向上させる目的で(F)分散剤をさらに添加することが好ましい。分散剤として効果が認められればどのような分散剤でも特に限定はされないが、例えば、酸基を含む共重合物、顔料親和性ブロック共重合物、リン酸エステル系化合物、ポリエーテルリン酸エステル系化合物、脂肪酸エステル系化合物、アルキレンオキサイド共重合物、変性ポリエーテル重合物、脂肪酸誘導体、ウレタンポリマー等が挙げられる。市販の分散剤としては、ビックケミー社製DISPERBYKシリーズ;日本ルーブリゾール社製SOLSPERSEシリーズ;BASF社製ソカラン、タモール、Efkaシリーズ;エレメンティス社製Nuosperseシリーズ;楠本化成社製ディスパロンシリーズ;共栄社化学社製フローレンシリーズ;味の素ファインテクノ社製アジスパーシリーズ等が挙げられる。」
・「【実施例】
【0061】
まず、本実施例で用いた各種材料は次の通りである。
【0062】
(樹脂)
・(A)樹脂1:エポキシ変性アクリル酸エステル樹脂「PMS-14-2」(ナガセケムテックス製、エポキシ当量:1852g/eq、分子量:100万、Tg:-35℃)
・(A)樹脂2:ヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂「SG-600TEA」(ナガセケムテックス製、水酸基当量:2805g/eq、分子量:120万、Tg:-37℃)
・(A)樹脂3:エポキシ変性アクリル酸エステル樹脂「SG-P3改215」(ナガセケムテックス製、エポキシ当量:5000g/eq、分子量:85万、Tg:-10℃)
・官能基当量の低い樹脂:ビスA型エポキシ樹脂「EPICLON850S」(DIC製、エポキシ当量:185g/eq、分子量:370、室温で液状)
((B)硬化剤)
・イソシアネート系硬化剤:ポリイソシアネート「DN-950」DIC製
・イミダゾール系硬化促進剤:2エチル4メチルイミダゾール「2E4MZ」(四国化成製)
(導電性フィラー)
・(C)導電性フィラー1:銀粉「Ag-XF-301」(比表面積2.0m2/g、タップ密度0.56g/cm3、福田金属箔粉工業社製)
・(C)導電性フィラー2:銀粉「AgC-204B」(比表面積2.4m2/g、タップ密度2.1g/cm3、福田金属箔粉工業社製)
・高抵抗導電性フィラー:アセチレンブラック「HS-100」(比表面積39m2/g、タップ密度0.2g/cm3、電気抵抗率0.14Ωcm、デンカ製)
((D)界面活性剤)
・ポリエステル変性シリコン系表面調整剤:「BYK-370」(ビックケミー・ジャパン製)
((E)溶剤)
・シクロヘキサノン
((F)分散剤)
・ブロックコポリマー型湿潤分散剤「DISPERBYK-2155」(ビックケミージャパン製)
(カップリング剤)
・グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-403」(信越シリコーン製)
・デシルトリメトキシシラン「KBM-3103」(信越シリコーン製)
【0063】
<実施例1~10および比較例1~5>
1.樹脂組成物の調製
下記表1に示す配合組成(質量部)で、各成分を溶剤(シクロヘキサノン)に添加して、自転-公転式ミキサー(THINKY社「ARV-310」、2000rpm-3分)で撹拌することによって各成分を均一に混合し、導電性樹脂組成物を調製した。
【0064】
2.評価
(体積抵抗値)
上記で得られた各導電性樹脂組成物を、PET基材(PET-O2-BU、三井化学東セロ製)上に、乾燥後厚み50μmと成るように塗布し、電気オーブンにて100℃10分、及び170℃で1時間加熱した。
【0065】
得られた各実施例および比較例のサンプル表面を4端子法にて抵抗測定(MCP-T370、三菱化学アナリテック製)し、その結果を体積抵抗値とした。
【0066】
(伸縮時の抵抗変化の測定)
上記で得られた各導電性樹脂組成物を、厚み60μmのメタルマスクにて基材上(Sewfree 3412、BEMIS製)に印刷し、JISダンベル6号の導体パターンを印刷した。その後、電気オーブンにて100℃10分、170℃で1時間加熱した。得られた印刷済みの基材を、手動式のフィルム延伸機に固定した。その際ダンベルの掴み部から抵抗計に銅線を介して接続し、伸縮前の抵抗値及び伸縮時の抵抗値を記録した。その動作を10回繰返し行い、その初期値からの抵抗変動量を100分率で算出し、その平均値を10%繰返し10回伸縮時の抵抗変動の平均として測定した。
【0067】
(残留ひずみの測定)
上記体積抵抗値測定用の導電性樹脂組成物のフィルム作成と同様に、各導電性樹脂組成物を、PET基材(PET-O2-BU、三井化学東セロ製)上に乾燥後厚み50μmと成るように塗布し、電気オーブンにて100℃10分、170℃で1時間加熱した。その後、JISダンベル6号パターンに切り取り、引張圧縮試験用の導電性樹脂組成物フィルムサンプルを得た。有効伸張長さを25%に成るまで伸張し、その状態を5分保持、その後同じ速度で0%の位置まで戻す動作を行い、残留ひずみを測定した。ひずみ長さはサンプルのつかみ具間距離の割合で計測した。
【0068】
以上の評価結果を表1に示す。
【表1】
[図:0001406085000001.jpg]
【0070】
(結果・考察)
以上より、本発明の導電性樹脂組成物を使用した実施例1~11では、体積抵抗率も低く高い導電性を示し、10回伸縮時の抵抗変動も小さく、残留ひずみも小さく復元性が良好であることが確認された。
【0071】
一方、官能基当量が小さいエポキシ樹脂を用いた比較例1では伸縮時の抵抗変動が大きかった。また、本発明の(B)硬化剤を使用しなかった比較例2、及び、樹脂として熱可塑性樹脂を使用した比較例3では、残留ひずみが大きく、ほとんど復元しなかった。本発明の(C)導電性フィラーを添加しなかった比較例4では、抵抗値が高かった。樹脂として、軟化点が本発明の規定より高い樹脂を用いた比較例5では、伸縮性が殆ど無く、引張試験時に破断してしまった。」
3 判断
(1)本願明細書の発明の詳細な説明における一般的な記載について
ア (A)樹脂について
本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】(以下、本願明細書の発明の詳細な説明に記載した箇所については、単に段落【0015】等という。)には、「官能基当量が400g/eq未満の場合には架橋密度が高密度になるため硬化物が脆くなり伸縮性が低下する。一方、官能基当量が10000g/eqを超える場合には架橋密度が低密度となるため耐熱性が低下する。」と記載されるにとどまり、上記伸縮性が「25%伸長後の残留ひずみが15%以下」を意味するとは解せず、さらに、「25%伸長後の残留ひずみ」と「伸縮性」が直接関連することを示す技術常識があるともいえないことから、上記記載は、官能基当量が400g/eq以上であれば、25%伸長後の残留歪みが15%以下となることを示すものではない。
段落【0017】には、「(A)樹脂のTgまたは軟化点が40℃を超える場合には、室温付近における弾性率が高くなるため常温における柔軟性が低下する。」と記載されるにとどまり、上記柔軟性が「25%伸長後の残留ひずみが15%以下」を意味するとは解せず、さらに、「25%伸長後の残留ひずみ」と「柔軟性」が直接関連することを示す技術常識があるともいえないことから、上記記載は、(A)樹脂のTgまたは軟化点が40℃以下であれば、25%伸長後の残留歪みが15%以下となることを示すものではない。
段落【0018】には、「30℃における弾性率が1.0GPa以上である場合には、伸縮時や変形時の内部応力が高くなり導電フィラーの破壊や導電フィラーと樹脂の界面での破壊が誘発されやすくなるため、伸縮時の導電性低下の原因となるおそれがある。」と記載され、伸縮時の導電性低下を考慮して、樹脂の30℃における弾性率を設定することが示されており、さらに、「30℃における弾性率の下限値について」、「形状の復元性という観点から、100kPa以上であることが好まし」いことが記載されている。
段落【0019】には、「(A)樹脂は重量平均分子量が5万以上であることが好ましい。それにより、本実施形態の樹脂組成物を用いて導電パターンを印刷した場合等にニジミが発生しにくくなると考えられる。」と記載され、ニジミの発生を考慮して、樹脂の重量平均分子量を設定することが示されている。
段落【0026】には、「(A)樹脂の具体例としては、エポキシ変性(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基変性(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基変性(メタ)アクリル酸エステル等が好ましく例示される。」と記載されているが、エポキシ変性(メタ)アクリル酸エステルやヒドロキシル基変性(メタ)アクリル酸エステルが好ましいことが示されるにとどまり、上記【0026】の記載は、これらの樹脂を用いることにより、25%伸長後の残留ひずみが15%以下となることを示すものではない。
イ (B)硬化剤について
段落【0028】には、硬化剤について記載されている。
ウ (C)導電性フィラーについて
段落【0031】には、「前記アスペクト比が10以上である場合には、導電性フィラーの質量比に対する表面積が大きくなり導電性の効率が上がるだけでなく、樹脂成分との密着性もよくなり伸縮性が向上する効果もある。」と記載されるにとどまり、当該記載から、アスペクト比10以上の導電性フィラーが、硬化物の25%伸長時の残留ひずみを調整するために有用であるとは当業者といえども理解できないし、それ以外は、導電性フィラーの抵抗率や形状と導電性や印刷性や粘度との関係について記載されているのみである。
段落【0034】には、「スクリーン印刷時の印刷性や配合物の混練において適度な粘度となるという観点から、レーザー光散乱方によって測定した平均粒径(体積累積50%における粒径;D50)が0.5μm以上」であることが記載され、印刷性及び粘度を考慮して、導電性フィラーの平均粒径を設定することが示されている。
エ その他の成分について
段落【0042】には、「(D)界面活性剤の添加量としては、導電性樹脂組成物全量のうち(C)導電性フィラーを除く樹脂組成物全体に対し、0.01~50質量%程度とすることが好ましい。このような添加量であれば混練性、印刷性、接着性が向上する点で好ましい。」と記載され、混練性、印刷性、接着性を考慮して、界面活性剤を添加することが示されている。
段落【0043】には、「粘度を調整する、あるいは印刷時の作業性やポットライフを制御する目的で(E)希釈溶剤を更に含有すること」が記載されている。
段落【0053】には、「導電性フィラーと樹脂の分散安定性を向上させる目的で(F)分散剤をさらに添加すること」が記載されている。
オ 「25%伸長後の残留ひずみ」について
段落【0067】には、「引張圧縮試験用の導電性樹脂組成物フィルムサンプルを」、「有効伸張長さを25%に成るまで伸張し、その状態を5分保持、その後同じ速度で0%の位置まで戻す動作を行い」、残留ひずみを測定すること、「ひずみ長さはサンプルのつかみ具間距離の割合で計測」することが記載され、段落【0070】には、「10回伸縮時の抵抗変動も小さく、残留ひずみも小さく復元性が良好である」ことが記載されている。
(2)本願明細書の発明の詳細な説明における実施例の記載について
段落【0069】の【表1】には、25%伸長後の残留ひずみが9%である実施例1,5,9に係る導電性樹脂組成物、同10%である実施例2,6,10に係る導電性樹脂組成物、同12%である実施例3,7,11に係る導電性樹脂組成物、同15%である実施例4,8に係る導電性樹脂組成物が記載されており、段落【0070】には、「実施例1~11では、体積抵抗率も低く高い導電性を示し、10回伸縮時の抵抗変動も小さく、残留ひずみも小さく復元性が良好であることが確認された」ことが記載されている。
(3)実施可能要件を満たしていないことについて
ア 本願明細書の発明の詳細な説明には、上記(1)アないしエで述べたとおり、本願発明の導電性樹脂組成物を構成する各成分について記載されているが、上記(1)オ及び上記(2)で述べた摘示箇所以外に「25%伸長後の残留ひずみ」に関する記載はないことから、「25%伸長後の残留ひずみ」を調整する指針については、当業者といえども理解することができない。
さらに、上記(1)オ及び上記(2)からは、「10回伸縮時の抵抗変動も小さく、残留ひずみも小さく復元性が良好である」ことは理解できるが、25%伸長後の残留ひずみ」がそのまま「変形後の復元性」と直接関連するとは理解できず、そのうえ、上記(1)アで述べたとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、「変形後の復元性」について、わずかに「樹脂の30℃における弾性率の下限値が100kPa以上」であることが記載されているのみであるところ、本願明細書の発明の詳細な説明からは、「30℃における弾性率」と「残留ひずみ」との技術的関連性について理解することができないことから、「変形後の復元性」に関する記載からみても、「25%伸長後の残留ひずみ」を調整する指針について、当業者といえども理解することはできない。
イ 一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記(2)で述べたとおり、「その硬化物において、25%伸長後の残留ひずみが15%以下」である導電性樹脂組成物が、実施例において11種類記載されている。
しかしながら、上記アで述べたとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、「25%伸長後の残留ひずみ」を調整する指針についての記載がないのであるから、上記11種類の導電性樹脂組成物以外の「その硬化物において、25%伸長後の残留ひずみが15%以下」である導電性樹脂組成物をどのように得るのかについて、当業者といえども理解できないし、さらに、上記11種類の導電性樹脂組成物の各配合成分から当業者が予測することもできない。そして、これらのことが本願出願時の技術常識から自明であるともいえない。
ウ 実施例をみると、25%伸長後の残留ひずみが10%である実施例2と実施例10の成分を比較すると、(D)界面活性剤の種類及び(F)分散剤の配合の有無が相違するにも関わらず、同じ残留ひずみ値であるのに対し、実施例1と実施例8の成分を比較すると、(D)界面活性剤、(F)分散剤及びカップリング剤の配合の有無が相違するが、それにより残留ひずみ値が6%も相違し、実施例1と実施例11の成分を比較すると、(D)界面活性剤の種類が相違し、カップリング剤の配合の有無が相違するが、それにより残留ひずみ値が3%も相違し、実施例8と実施例11の成分を比較すると、(D)界面活性剤及び(F)分散剤の配合の有無が相違するが、それにより残留ひずみ値が3%も相違していることから、実施例1ないし11の(A)樹脂、(B)硬化剤及び(C)導電性フィラーを含有する導電性樹脂組成物は「その硬化物において、25%伸長後の残留ひずみが15%以下」であるものの、それ以外の任意成分の配合量や種類も残留ひずみの値に影響すると解されるところ、これらと残留ひずみの増減との関連性を読み取ることができない。
そうすると、実施例の結果からみても、「25%伸長後の残留ひずみ」を調整するための指針を見いだすことができないし、このことが本願出願時の技術常識から自明であるともいえない。
エ よって、(A)樹脂がエポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂のうち少なくとも1つを含有する導電性樹脂組成物において、特定の物性を有するエポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂を選択し、硬化剤の種類及び配合量を選択し、(A)樹脂、(B)硬化剤及び(C)導電性フィラー以外の成分の配合を選択し、「その硬化物において残留ひずみが15%以下」である導電性樹脂組成物を得ることは、当業者にとって期待し得る程度を越える過度の試行錯誤を要すると認められる。
オ したがって、本願発明は、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、実施をすることができない。よって、発明の詳細な説明は、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(4)審判請求人の令和5年6月6日提出の意見書における主張について
ア 審判請求人は、上記意見書において、
「審査官殿の指摘されているその他の成分(B)硬化剤、(D)界面活性剤、(F)分散剤は、(A)樹脂を硬化させたり、表面張力を低下させたり、導電性フィラーと樹脂との分散安定性を向上させる目的で配合される副成分であり、これらの役割を果たすものであれば特に限定無く使用できる成分です。よって、当業者であれば、過度の試行錯誤を要さずに、本願明細書の記載を参照し、請求項1に規定される(A)樹脂に応じて、導電性樹脂組成物として使用できるように、(B)硬化剤、(D)界面活性剤の種類や量を適宜設定することができ、かつ、(C)導電性フィラーが安定的に分散するように(F)分散剤の種類や量を調整することができると思量いたします。さらに審判官殿が指摘されている比較例2において残留歪みが15%以下とならない理由は、(B)硬化剤の種類が原因ではなく、(A)樹脂が硬化しなかったことが大きな要因になっています。また、この点について、(A)樹脂を適切に硬化させる硬化剤を選択することが、当業者にとってそれほど困難であるとは考えられません。また、実施例1、実施例8および実施例11における残留ひずみの差異についてのご指摘ですが、確かにこれらの実施例を見ると(D)界面活性剤や(F)分散剤も多少は残留歪みに影響を与えることはあることは推察されますが、その影響はさほど大きくはなく、本発明が目的としている「残留歪みが15%以下」に影響を及ぼすほどではありません。これらの副成分より、主成分である(A)樹脂が残留ひずみの調整に大きく貢献していることは、上述の通り、比較例1、比較例3、比較例5などと、各実施例の樹脂組成物を比較すれば明らかに理解できると思量いたします。」と主張している。
しかしながら、上記(3)ウ及びエで述べたとおり、(B)硬化剤、(D)界面活性剤、(F)分散剤及びカップリング剤は、副成分であるが、各実施例及び比較例の結果から、副成分の違いによって残留ひずみの値が9%から30%まで最大21%も変動するのであるから、(A)樹脂以外の副成分によって、「25%伸長後の残留ひずみ」が15%を超えることもあると当業者は理解するといえるのであって、「多少は残留歪みに影響を与えることはあることは推察されますが、その影響はさほど大きくはなく、本発明が目的としている「残留歪みが15%以下」に影響を及ぼすほどでは」ないという上記主張に根拠はない。
また、比較例2について、「(A)樹脂が硬化しなかったことが大きな要因」であると主張しているが、比較例2は(B)硬化剤として「D2000」を2.7質量部含有することが段落【0069】の【表1】に示されており、どうして比較例2だけ「(A)樹脂が硬化しなかった」といえるのかが、本願の発明の詳細な説明の記載からは把握することができない。
なお、段落【0071】には、「本発明の(B)硬化剤を使用しなかった比較例2」と記載されていることから、段落【0069】の【表1】の比較例2についての表記は誤りで、比較例2は(B)硬化剤を含有しない導電性硬化性組成物であるとも解されるが、たとえそうであったとしても、実施例1と実施例4を比較すると、(C)導電性フィラーの種類及び量の違いがあるものの、(B)硬化剤の種類及び量の違いによって、25%伸長後の残留ひずみが6%も差が出ており、(B)硬化剤の種類及び配合量が25%伸長後の残留ひずみに影響を及ぼすと推察されることに変わりがないから、このことが上記(3)の判断に影響を与えるものではない。
イ 審判請求人は、上記意見書において、
「本発明の樹脂組成物において、残留ひずみをコントロールするために配合されている主な成分は請求項1に規定される(A)樹脂であり、そのことは、比較例1、比較例3、比較例5などと、各実施例の樹脂組成物を比較すれば、当業者であれば理解できると思われます。」と主張するとともに、「本発明にとって、残留ひずみを15%以下にするためには、「官能基を有し、官能基当量400g/eq以上で10000g/eq以下であり、且つ、Tgまたは軟化点が40℃以下、あるいは30℃での弾性率が1.0GPa未満であり、かつ、エポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂のうち少なくとも1つを含有する樹脂」を(A)樹脂として用いることであることは、当業者であれば本願明細書における発明の詳細な説明の記載から理解できると考えます。」と主張している。
しかしながら、上記(3)アで述べたとおり、(A)樹脂を含むことにより、「その硬化物において、25%伸長後の残留ひずみが15%以下」になることは、本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていないし、本願明細書の記載から理解できないから、当業者といえども、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、「官能基を有し、官能基当量400g/eq以上で10000g/eq以下であり、且つ、Tgまたは軟化点が40℃以下、あるいは30℃での弾性率が1.0GPa未満であり、かつ、エポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂のうち少なくとも1つを含有する樹脂」を(A)樹脂として用いさえすれば、「その硬化物において、25%伸長後の残留ひずみが15%以下」である導電性樹脂組成物が得られるとは理解することができない。
また、比較例1、3及び5は、本願発明に係る(A)樹脂以外の樹脂を用いたものであるが、実施例1ないし11とは、樹脂成分以外に含有する成分も相違しており、さらに、実施例1ないし11からは、(A)樹脂以外の成分の違いによって「25%伸長後の残留ひずみ」の値が変わることも確認できることから、実施例1ないし11と比較例1、3及び5の結果を比較しても、「官能基を有し、官能基当量400g/eq以上で10000g/eq以下であり、且つ、Tgまたは軟化点が40℃以下、あるいは30℃での弾性率が1.0GPa未満であり、かつ、エポキシ変性アクリル酸エステル樹脂又はヒドロキシル基変性アクリル酸エステル樹脂のうち少なくとも1つを含有する樹脂」を(A)樹脂として用いさえすれば、「その硬化物において、25%伸長後の残留ひずみが15%以下」である導電性樹脂組成物が得られるとは、当業者といえども直ちに理解することができない。
ウ まとめ
上記ア及びイのとおりであるから、審判請求人の上記各主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、令和5年4月13日付け拒絶理由通知に記載した理由2は妥当なものであり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014505