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特許拒絶査定不服審判

2021-013670

リガーゼ支援核酸環状化および増幅

審判番号
2021-013670
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-521575外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年10月07日
審決日
2022年12月06日
公報発行日
2023年05月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (C12Q) / P18 .121-Z (C12Q)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-521575「リガーゼ支援核酸環状化および増幅」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月11日国際公開、WO2017/079114、平成31年 1月17日国内公表、特表2019-500852〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)11月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年11月5日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和3年5月26日付けで拒絶査定がなされ、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和3年10月7日付け手続補正についての補正却下の決定 [結論] 令和3年10月7日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 令和3年10月7日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に、 (補正前)「【請求項1】 核酸増幅のための方法であって、前記方法が、 (a)線状染色体DNAを準備する工程と; (b)一本鎖DNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲーションの可能なリガーゼとともに前記線状染色体DNAをインキュベートして一本鎖DNA環を生成する工程と; (c)ランダムプライマー混合物を使用するローリングサークル増幅によって前記一本鎖DNA環を増幅して増幅DNA産物を形成する工程とを含み、 前記ランダムプライマー混合物が、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチド配列を含み、かつ 前記方法の前記工程の全てが、介在する単離および精製工程を含まずに、単一の反応器で実施される、 方法。」とあったものを、 (補正後)「【請求項1】 核酸増幅のための方法であって、前記方法が、 (a)線状染色体DNAを準備する工程と、 (b)一本鎖DNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲーションの可能なリガーゼとともに前記線状染色体DNAをインキュベートして一本鎖DNA環を生成する工程と、 (c)ランダムプライマー混合物を使用するローリングサークル増幅によって前記一本鎖DNA環を増幅して増幅DNA産物を形成する工程と を含み、 前記ランダムプライマー混合物が、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチド配列を含み、 前記方法の前記工程の全てが、介在する単離又は精製工程を含まずに、単一の反応器で実施され、 前記方法が、前記増幅DNA産物を配列決定することをさらに含む、 方法。」とする補正事項を含むものである。 なお、下線は補正された部分である。 2.本件補正の目的 本件補正により、補正前の請求項1に、補正前の請求項21に記載されていた「前記増幅DNA産物を配列決定することをさらに含む」ことが追加されたので、補正前の方法が限定された。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものを含むと認められる。 そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)(以下、「独立特許要件」という。)について、以下で検討する。 3.独立特許要件の検討 (1)引用文献1の記載 拒絶査定において引用文献1として引用された、本願の優先日(2015年(平成27年)11月5日)より前の2015年1月29日に公知となった国際公開第2015/013604号には、次の事項が記載されている。 なお、引用文献1は、英文であるから、引用文献1のパテントファミリーである特表2016-525360号公報の記載事項を翻訳文として使用する。また、下線は当審で付したものである。 引1ア. 「請求の範囲 1.線状DNAから一本鎖DNA環を生成するための方法であって、 (a)線状DNAを準備する工程と、 (b)線状DNAをリン酸供与体の存在下でポリヌクレオチドキナーゼとともにインキュベートして、5’末端にリン酸基を有し、3’末端にヒドロキシル基を有するライゲーション可能なDNA配列を生成する工程と、 (c)ライゲーション可能なDNA配列を、一本鎖DNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲーションが可能なリガーゼとともにインキュベートして、一本鎖DNA環を生成する工程と を含んでおり、当該方法の工程の全てが、単離もしくは精製工程を介さずに単一の反応器で実施される、方法。 ・・・ 14.等温条件下で一本鎖DNA環を増幅する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。 15.一本鎖DNA環が、ローリングサークル増幅を介して増幅される、請求項14に記載の方法。 16.ローリングサークル増幅が、ヌクレアーゼ耐性プライマーを用いて実施される、請求項15に記載の方法。 17.ヌクレアーゼ耐性プライマーが、1以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項16に記載の方法。 18.一本鎖DNA環が、ランダムプライマー混合物を用いて増幅される、請求項15に記載の方法。」(特許請求の範囲) 引1イ. 「技術分野 [0001] 本発明は、一般に、鋳型非依存性一本鎖DNAライゲーションによって一本鎖もしくは二本鎖線状DNAから一本鎖DNA環を生成することを伴う核酸アッセイに関する。それはさらに、ローリングサークル増幅による一本鎖DNA環の増幅及び/又は検出に関する。一本鎖DNA環の生成及びその後のDNA増幅は、単離及び/又は精製工程を介さずに単一の反応器で実施される。これらの方法を実施するためのキットも提供される。」 引1ウ. 「[0025] 本明細書において、用語「ヌクレオチド類似体」とは、天然に存在するヌクレオチドに構造的に類似する化合物をさす。ヌクレオチド類似体は、変更されたリン酸主鎖、糖部分、ヌクレオベース、又はその組合せを有してよい。ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチド、合成ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又は代替置換部分(例えば、イノシン)であってよい。一般に、変更されたヌクレオベースをもつヌクレオチド類似体は、とりわけ、異なる塩基対形成及び塩基スタッキング特性を付与する。本明細書において、用語「LNA(ロックド核酸)ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの糖部分がリボ核酸(RNA)を模倣する糖コンホメーションにロックされた二環式フラノース単位を含有するヌクレオチド類似体をさす。デオキシリボヌクレオチド(又はリボヌクレオチド)からLNAヌクレオチドへの構造変化は、化学的見地から限られている、つまり、2’位と4’位の炭素原子間のさらなる結合の導入である(例えば、2’-C,4’-C-オキシメチレン結合、例えば、Singh,S.K.,et.al.,Chem.Comm.,4,455-456,1998、又はKoshkin,A.A.,et.al.,Tetrahedron,54,3607-3630,1998参照)。LNAヌクレオチドにおいてフラノ-ス単位の2’位及び4’位は、O-メチレン(例えば、オキシ-LNA:2’-O、4’-C-メチレン-β-D-リボフラノシルヌクレオチド)、S-メチレン(チオ-LNA)、又はNH-メチレン部分(アミノ-LNA)、及び同類のものによって結合されてよい。そのような結合は、フラノ-ス環のコンホメ-ションの自由度を制限する。LNAオリゴヌクレオチドは、相補的一本鎖RNA、及び相補的一本鎖もしくは二本鎖DNAに対するハイブリダイゼ-ション親和性の向上を示す。LNAオリゴヌクレオチドは、A型(RNA様)の二重鎖コンホメ-ションを誘導することができる。改変されたリン酸塩-糖骨格(例えば、PNA、LNA)を有するヌクレオチド類似体は、多くの場合、とりわけ、二次構造形成などの鎖の性質を修飾する。文字呼称の前の星(*)記号は、その文字で指定されるヌクレオチドがホスホロチオエ-ト修飾ヌクレオチドであることを示す。例えば、*Nは、ホスホロチオエ-ト修飾ランダムヌクレオチドを表す。文字呼称の前のプラス(+)記号は、その文字で指定されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを示す。例えば、+Aは、アデノシンLNAヌクレオチドを表し、+Nは、ロックドランダムヌクレオチド(すなわちランダムLNAヌクレオチド)を表す。 ・・・ [0028] 本明細書において、用語「ランダムプライマ-」とは、オリゴヌクレオチド配列の任意の所与位置で、該所与位置が可能性のあるヌクレオチド又はそれらの類似体のいずれからも構成されうるような方法(完全ランダム化)でヌクレオチドをランダム化することによって生成されたプライマ-配列の混合物をさす。従ってランダムプライマ-は、配列内のヌクレオチドのあらゆる可能性のある組合せからなる、オリゴヌクレオチド配列のランダムな混合物である。例えば、六量体のランダムプライマ-は、配列NNNNNN又は(N)6で表すことができる。六量体ランダムDNAプライマ-は、4つのDNAヌクレオチド、A、C、G及びTのあらゆる可能性のある六量体の組合せからなり、結果として46(4,096)の特有の六量体DNAオリゴヌクレオチド配列を含むランダム混合物となる。ランダムプライマ-は、標的核酸の配列が不明である場合か、又は全ゲノム増幅反応のために、核酸合成反応を開始させるために効果的に使用することができる。」 引1エ. 「[0037] 線状DNAは、天然もしくは合成起源の二本鎖又は一本鎖DNAであってよい。DNAは、生体試料から得てもよいし(例えば、生物学的被験体から得た試料)、或いは、インビボ又はインビトロで未知の物体から見出してもよい(例えば、法医学調査中に得たDNA) 例えば、それは、限定されるものではないが、生物学的被験体の体液(例えば、血液、血漿、血清、尿、乳、脳脊髄液、胸腔内液、リンパ液、涙、痰、唾液、便、肺吸引液、咽頭もしくは生殖器スワブ)、器官、組織、細胞培養、細胞分画、切片(例えば、器官又は組織の断面部分)或いは生物学的被験体から、又は特定領域(例えば、疾患細胞、又は血中循環腫瘍細胞を含有する領域)から単離した細胞から得ることができる。標的線状DNA(すなわち目的の線状DNA)を含有するか含有すると思われる生体試料は、真核生物起源、原核生物起源、ウイルス起源又はバクテリオファ-ジ起源の試料であってよい。例えば、標的線状DNAは、昆虫、原虫、鳥類、魚類、爬虫類、哺乳類(例えば、ラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット、又はウサギ)、又は霊長類(例えば、チンパンジ-又はヒト)から得ることができる。線状DNAは、ゲノムDNA又はcDNA(相補DNA)であってよい。cDNAは、逆転写酵素を用いてRNA鋳型(例えば、mRNA、リボソ-ムRNA)から生成することができる。線状DNAは、断片化されたDNAであってよく、ライゲ-ションできない末端ヌクレオチドを有してよい。例えば、線状DNAは、DNAリガ-ゼが分子内ライゲ-ション反応を実施することができないように、5’ヒドロキシル基及び/又は3’リン酸基を含むことがある。線状DNAは、溶液中に分散させてもよいし、固相支持体、例えばブロット、アッセイ、アレイ、スライドガラス、マイクロタイタ-プレ-ト又はELISAプレ-トの上に固定化されていてもよい。例えば、線状DNAは、プライマ-を通じて基板の上に固定化されていてよく、その後環状化され増幅されてよい。」 引1オ. 「[0042] ライゲ-ション反応混合物中のssDNA環は、ロ-リングサ-クル増幅(RCA)方法によって等温条件下で増幅させることができる。DNAポリメラ-ゼ、プライマ-及びdNTPを含む増幅試薬を同じ反応器に添加して増幅反応混合物を生成し、RCA反応を開始させてよい。増幅反応混合物には、一本鎖DNA結合タンパク質などの試薬及び/又は適した増幅反応緩衝液がさらに含まれてよい。ssDNA環の増幅は、ライゲ-ションが実施されている同じ反応器で実施される。ssDNA環の単離又は精製及び/又はリガ-ゼの除去は、増幅反応の前に必要ではない。増幅されたDNAは、DNA検出のための現在公知の方法のいずれかによって検出されてよい。 [0043] RCAは、Phi29DNAポリメラ-ゼなどの当技術分野で公知のDNAポリメラ-ゼのいずれかを使用することによって実施されてよい。それは、ランダムプライマ-混合物を用いて、又は特異的プライマ-を用いることにより実施されてよい。一部の実施形態では、ランダムプライマ-がRCA反応に使用される。1又は複数のヌクレオチド類似体(例えば、LNAヌクレオチド、2-アミノ-A、又は2-チオT修飾)を含むプライマ-配列を使用してもよい。・・・ [0044] ・・・環状化及び増幅反応は、ともに中間の精製もしくは単離工程を含まずに単一の反応器で実施することができ、それにより汚染の機会を減らし、増幅ワ-クフロ-を単純化することができる。リガ-ゼ支援全ゲノム増幅法は、限定されるものではないが、循環血漿DNA、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料から単離された断片化されたDNA、環境条件にさらされた法医学DNA試料又は非常に古いDNA試料を分析するために用いることができる。増幅されたライブラリ-は、qPCR又は塩基配列決定法によって、増幅された配列の標的検出にさらに使用することができる。」 引1カ. 「[0058] 実施例1:血漿由来の循環核酸の全ゲノム増幅: [0059] Wako DNA抽出器SPキット(和光純薬株式会社)を用いて、明らかに健康な個体の、クエン酸塩-リン酸塩-デキストロ-ス(CPD)で安定化させた血漿から循環DNAを単離した。約1.3ngを、TBE緩衝液を用いる2%アガロ-スゲルによる電気泳動により分析し、SYBR Goldで染色し、Typhoonイメ-ジャで可視化した。図2に示されるように、循環DNAの大部分は約180bpの長さであった。さらなるそれよりも少ない量の配列は約370bpの長さであり、さらにそれよりもかなり少ない量のそれよりも高分子量の配列があった。 [0060] 350pgの血漿由来の循環DNAを95℃で加熱して鋳型を変性させた。次に、変性した一本鎖DNA鋳型をRNA又はDNAリガ-ゼで処理して一本鎖DNA環を生成した。ATP依存性T4 DNAリガ-ゼ、細胞にコ-ドされたNAD依存性大腸菌DNAリガ-ゼ又は熱安定性RNAリガ-ゼ(CircLigase II)をライゲ-ション反応に使用した。次に、100pgのDNAを連結した一本鎖DNA環を、Phi29DNAポリメラ-ゼを用いるGenomiPhiキット(GE Healthcare社)を用いる全ゲノム増幅に供した。「at N」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*Nを用いて増幅を実施した。リアルタイム増幅は、少量のSYBRグリ-ンIを増幅混合物に添加し、Tecanプレ-トリ-ダ-(Tecan SNiPer,Amersham-Pharmacia Biotech)で経時的に蛍光シグナル増加をモニタ-することによって実施した。比較のために、当量濃度の未処理ゲノムDNA、未処理血漿DNA、及びDNA鋳型を含まない(鋳型増幅のない)試料を含めた。 [0061] 図3に示されるように、同等量の高分子量ゲノムDNAと比較した場合に、未処理の断片化された血漿DNAの増幅速度は、はるかに低く、増幅の欠陥を示した。しかし、断片化された血漿DNAが前処理され、CircLigase II(商標)を用いて一本鎖DNA環に変換された場合、急速な増幅速度が実現された(図3A)。ATP依存性T4 DNAリガ-ゼ(図3B)及び細胞にコ-ドされたNAD依存性大腸菌DNAリガ-ゼ(図3C)を含むリガ-ゼも効果的であったが、断片化された血漿DNAの増幅速度を回復させるには効率が低かった。これらの実施例では、増幅速度の相対的な増加は、一本鎖DNA鋳型の分子内ライゲ-ションを促進する際のリガ-ゼの各々の有効性を示す。」 (2) 引用発明 引用文献1の請求の範囲1には、 「(a)線状DNAを準備する工程と、 (b)線状DNAをリン酸供与体の存在下でポリヌクレオチドキナ-ゼとともにインキュベ-トして、5’末端にリン酸基を有し、3’末端にヒドロキシル基を有するライゲ-ション可能なDNA配列を生成する工程と、 (c)ライゲ-ション可能なDNA配列を、一本鎖DNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲ-ションが可能なリガ-ゼとともにインキュベ-トして、一本鎖DNA環を生成する工程と を含」み、「当該方法の工程の全てが、単離もしくは精製工程を介さずに単一の反応器で実施される、方法。」が記載されており、同請求の範囲14には、一本鎖DNA環を生成する工程の後に「等温条件下で一本鎖DNA環を増幅する工程をさらに含」むこと、同請求の範囲15には、かかる増幅は、「ロ-リングサ-クル増幅を介して増幅され」ること、同請求項16~18には、「ロ-リングサ-クル増幅が、ヌクレア-ゼ耐性プライマ-を用いて実施され」、「ヌクレア-ゼ耐性プライマ-が、1以上の修飾ヌクレオチドを含」む「ランダムプライマ-混合物」であることが記載されている(引1ア)。 また、引用文献1の[0001]には、「一本鎖DNA環の生成及びその後のDNA増幅は、単離及び/又は精製工程を介さずに単一の反応器で実施される。」(引1イ)、[0044]には、「環状化及び増幅反応は、ともに中間の精製もしくは単離工程を含まずに単一の反応器で実施することができ、それにより汚染の機会を減らし、増幅ワ-クフロ-を単純化することができる。」ことが記載されている(引1オ)。 そして、上記の事項を裏付けるものとして、引用文献1の実施例1には、「一本鎖DNA鋳型をRNA又はDNAリガ-ゼで処理して一本鎖DNA環を生成した」こと、「ATP依存性T4 DNAリガ-ゼ、細胞にコ-ドされたNAD依存性大腸菌DNAリガ-ゼ又は熱安定性RNAリガ-ゼ(CircLigase II)をライゲ-ション反応に使用した」こと、「DNAを連結した一本鎖DNA環を、Phi29DNAポリメラ-ゼを用いるGenomiPhiキット(GE Healthcare社)を用いる全ゲノム増幅に供した」こと、「「at N」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*Nを用いて増幅を実施した」こと(引1カ)、引用文献1の[0025]には、「文字呼称の前のプラス(+)記号は、その文字で指定されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであること」や「文字呼称の前の星(*)記号は、その文字で指定されるヌクレオチドがホスホロチオエ-ト修飾ヌクレオチドであること」(引1ウ)が記載されている。 そうすると、引用文献1の以上の記載からすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「線状DNAから一本鎖DNA環を生成し、一本鎖DNA環を増幅する方法であって、 (a)線状DNAを準備する工程、 (b)線状DNAをリン酸供与体の存在下でポリヌクレオチドキナ-ゼとともにインキュベ-トして、5’末端にリン酸基を有し、3’末端にヒドロキシル基を有するライゲ-ション可能なDNA配列を生成する工程、 (c)ライゲ-ション可能なDNA配列を、一本鎖DNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲ-ションが可能なリガ-ゼとともにインキュベ-トして、一本鎖DNA環を生成する工程、 (d)等温条件下で、修飾ヌクレオチドを含むランダムプライマ-混合物である、「「at N」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*N」を用いて、ロ-リングサ-クル増幅を介して一本鎖DNA環を増幅する工程を含み、 一本鎖DNA環の生成及びその後のDNA環の増幅は、単離及び/又は精製工程を介さずに単一の反応器で実施される、方法。」 (3)対比 補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「線状DNA」と補正発明の「線状染色体DNA」は、「線状DNA」である限りにおいて一致する。 引用発明の(c)工程は、補正発明の(b)工程に相当する。 引用発明の(d)工程と補正発明の(c)工程は、ランダムプライマ-混合物を使用するロ-リングサ-クル増幅によって一本鎖DNA環を増幅して増幅DNA産物を形成する限りにおいて一致する。 引用発明の「一本鎖DNA環の生成及びその後のDNA環の増幅は、単離及び/又は精製工程を介さずに単一の反応器で実施される」ことは、補正発明の「前記方法の前記工程の全てが、介在する単離又は精製工程を含まずに、単一の反応器で実施され」ることに相当する。 なお、補正後の請求項19によれば、補正発明は、「線状染色体DNAを前記リガ-ゼとともにインキュベ-トする前に、前記線状染色体DNAをリン酸供与体の存在下でポリヌクレオチドキナ-ゼで処理して、リン酸基を5’末端に有しヒドロキシル基を3’末端に有するライゲ-ション可能なDNA配列を生成する」態様を含むものであるから、引用発明が(b)工程を含むことは、補正発明との相違点にならない。 したがって、補正発明と引用発明は、 「核酸増幅のための方法であって、前記方法が、 (a)線状DNAを準備する工程と、 (b)一本鎖DNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲ-ションの可能なリガ-ゼとともに前記線状染色体DNAをインキュベ-トして一本鎖DNA環を生成する工程と、 (c)ランダムプライマ-混合物を使用するロ-リングサ-クル増幅によって前記一本鎖DNA環を増幅して増幅DNA産物を形成する工程と を含み、 前記方法の前記工程の全てが、介在する単離又は精製工程を含まずに、単一の反応器で実施される方法。」で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 補正発明では、一本鎖DNA環の原料が「線状染色体DNA」であるのに対して、 引用発明では、「線状DNA」である点。 (相違点2) 補正発明では、ランダムプライマ-混合物が、「少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチド配列を含」むものであるのに対して、 引用発明では、修飾ヌクレオチドを含むランダムプライマ-混合物である、「「at N」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*N」である点。 (相違点3) 補正発明では、「増幅DNA産物を配列決定することをさらに含む」のに対して、 引用発明では、増幅DNA産物を配列決定することが特定されていない点。 (4)判断 ア.相違点1について 本願明細書の【0026】には、「線状DNAは、ゲノムDNA(例えば、線状染色体DNA)」と記載されるところ、引用文献1の[0037]には、「線状DNAは、天然もしくは合成起源の二本鎖又は一本鎖DNAであってよい。DNAは、生体試料から得てもよい」とされ、「線状DNAは、ゲノムDNA・・・であってよい。」と記載されているので(引1エ)、補正発明の「線状染色体DNA」が、引用発明の「線状DNA」に含まれる一般的なDNAであることは明らかである。 したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 イ.相違点2について 本願明細書の実施例1及び8では、補正発明の「少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチド配列を含」む「ランダムプライマ-混合物」を具体化したものとして、「(at N)」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なGおよび正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*N」及び「「at N」が2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なGおよび正常なCを含有するランダム混合物を表す、配列+N+N(at N)(at N)(at N)*N(ATランダム六量体)を有するランダムプライマ-混合物」(これらは同じランダムプライマ-混合物を異なる表現で言い換えたものである。)が記載されている。 一方、引用発明で使用されているプライマ-混合物は、「「at N」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*N」というものであり、星(*)記号及びプラス(+)記号の定義は本願明細書(【0012】)と引用文献1([0025]、引1ウ)で同じであるから、引用発明のプライマ-混合物と本願明細書の実施例1及び8で使用されているプライマ-混合物は同じものである。 そうすると、補正発明の「少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチド配列を含」む「ランダムプライマ-混合物」は、引用発明の「修飾ヌクレオチドを含むランダムプライマ-混合物である、「「at N」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*N」を上位概念化して表現したものであり、相違点2は実質的な相違点ではない。 ウ.相違点3について 引用文献1の[0042]には、「増幅されたDNAはDNA検出のための現在公知の方法のいずれかによって検出されてよい」ことが記載されている(引1オ)。 一方、[0044]には、塩基配列決定法等により増幅された配列の検出を行うことが記載されるところ(引1オ)、増幅したDNA産物の塩基配列を決定すること自体は、引用文献1の[0044]の記載に限らず、当業者がごく一般的に行うものである。 してみると、相違点3は実質的な相違点とはいえない。 なお、相違点1~3が実質的な相違点であったとしても、引用文献1の記載によれば、相違点1~3として挙げた補正発明の発明特定事項に至ることは当業者が容易になし得ることである。 エ.小括 以上のとおり、補正発明は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、本願明細書の実施例8の段落【0072】及び図14には、本願発明の顕著な効果が示されている旨を主張し、また、審判請求人は、令和4年4月18日付け上申書において、現在の請求項1に現在の請求項7の記載に基づき「前記ランダムプライマ-混合物が、一般構造+N+N(at N)(at N)(at N)*Nを有するオリゴヌクレオチド配列を含む六量体である」という記載を追加する補正案を示し、補正案の発明は進歩性を有する旨を主張する。 そこで、以下、上記の審判請求人の主張について、検討する。 本願明細書の実施例8及び図14には、血漿DNAを単離し、変性した一本鎖DNAをリガ-ゼで処理して一本鎖DNA環とし、+N+N(at N)(at N)(at N)*N六量体のランダムプライマ-混合物(ATランダム六量体プライマ-混合物)を用いたロ-リングサ-クル増幅を行ったことが記載され、標準的なランダム六量体プライマ-混合物を用いた場合と比較して、ATランダム六量体プライマ-混合物を用いた場合の方が、増幅速度が速く、増幅産物収率が高いことが示されている。また、実施例9、表2及び図16には、標準的なランダム六量体プライマ-混合物を用いた場合と比較して、ATランダム六量体プライマ-混合物を用いた場合の方が、カバレッジが高いことが示されている。 しかるところ、引用発明の「修飾ヌクレオチドを含むランダムプライマ-混合物である、「「at N」が、2-アミノ dA、2-チオ-dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマ-混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*N」は、上記の3(4)イで示したとおり、実施例8で使用されている「+N+N(at N)(at N)(at N)*N六量体のランダムプライマ-混合物」と同じものであり、引用文献1の[0061]によると、引用発明のランダムプライマ-混合物は急速な増幅速度に寄与するものであるから(引1カ)、引用発明は、補正発明と同様に、標準的なランダム六量体プライマ-混合物を用いた場合と比べ、増幅速度が速い、増幅産物収率が高い、カバレッジが高いという効果を備えるものと認められる。 もっとも、引用発明が、これらの効果を備えていない場合には、これらの効果は、補正発明の発明特定事項以外の技術的事項に基づき奏されるものといえ、当該効果が、補正発明の全体に亘り奏される効果であるとは認められない。 また、補正案で示された、一般構造N+N(at N)(at N)(at N)*Nを有するオリゴヌクレオチド配列を含む六量体であるランダムプライマ-混合物は、引用発明のランダムプライマ-混合物と同じものであるから、補正案の発明が新規性、進歩性を有するとは認められない。 したがって、審判請求人の主張は、いずれも理由がない。 5.小活 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願に係る発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~29に係る発明は、平成30年 6月18日に提出された請求の範囲の翻訳文の請求項1~29に記載の事項により特定されるものであると認める。 2.原査定の理由 令和3年5月26日付け拒絶査定は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない、との理由を含むものである。 3.当審の判断 本願の請求項1に係る発明は、上記第2の1.に(補正前)として記載したものであり、本願の請求項1に係る発明は、上記第2の3(3)において(相違点1)(相違点2)とした相違点を含み、(相違点3)とした相違点を含まないものと認められる。 そうすると、本願の請求項1に係る発明は、補正発明について述べた上記の3(4)ア、イと同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-013670

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