2021-013471
偏光板、液晶表示装置および有機エレクトロルミネッセンス表示装置
- 審判番号
- 2021-013471
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-128436外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月05日
- 審決日
- 2022年08月29日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続等の経緯
特願2020-128436号(以下「本件出願」という。)は、平成28年11月11日に出願した特願2017-550407号(先の出願に基づく優先権主張 平成27年11月13日、平成28年4月12日)の一部を令和2年7月29日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年10月5日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和3年6月4日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 偏光子と保護フィルムと粘着剤層とを有する偏光板であって、前記保護フィルムと前記偏光子と前記粘着剤層とがこの順で配置され、前記偏光子に前記粘着剤層が直接接触して積層され、前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(85℃)とし、前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(30℃)としたときに、前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値が0.02~0.11であり、前記偏光子が8μm以下の厚さを有する、偏光板。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 偏光子と保護フィルムと粘着剤層とを有する偏光板であって、前記保護フィルムと前記偏光子と前記粘着剤層とがこの順で配置され、前記偏光子に前記粘着剤層が直接接触して積層され、前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(85℃)とし、前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(30℃)としたときに、前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値が0.02~0.11であり、前記偏光子が8μm以下の厚さを有し、前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa~1MPaである、偏光板。」
(3)本件補正についての判断
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「粘着剤層」について、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0083】の記載に基づいて、「前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa~1MPaである」ことを挿入する補正をするものである。また、本件補正は、「粘着剤層」を「粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa~1MPaである」ことに限定することを目的としたものである。そして、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)の、産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は同一である(本件出願の明細書の【0001】、【0006】~【0010】)。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに、同条5項2号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、本件補正後発明が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
2 独立特許要件についての判断
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、最先の先の出願(以下、単に「先の出願」という。)前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2015-72385号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【0001】本発明は、前面板が一体化された前面側偏光板と、背面側偏光板とからなる偏光板のセット、及びこれらを液晶セルに貼合した前面板一体型液晶表示パネルに関するものである。・・・省略・・・【発明が解決しようとする課題】続きを表示(全18行)【0009】本発明の目的は、液晶表示パネルとした際に高温環境下での反り量が抑制される偏光板のセット、及びこの偏光板のセットを液晶セルに貼合してなる前面板一体型液晶表示パネルを提供することにある。【課題を解決するための手段】【0010】本発明は、以下に示す偏光板のセット及び前面板一体型液晶表示パネルを提供する。[1] 前面側偏光板及びその視認側に配置されるヤング率が2GPa以上の前面板から構成される、液晶セルの視認側に配置される前面板一体型偏光板と、前記液晶セルの背面側に配置される背面側偏光板とのセットであって、85℃にて100時間加熱したときの前記前面側偏光板における吸収軸方向及び透過軸方向の寸法変化率をそれぞれFa、Ftとし、85℃にて100時間加熱したときの前記背面側偏光板における吸収軸方向及び透過軸方向の寸法変化率をそれぞれRa、Rtとするとき、下記式:(Ra-Ft)<(Fa-Rt) [I]を満たす、偏光板のセット。・・・省略・・・【発明の効果】【0018】本発明によれば、高温環境下での反り量を効果的に抑制することができ、最終製品の筐体に容易に収めることのできる前面板一体型液晶表示パネルを提供することができる。」
イ 「【発明を実施するための形態】【0020】<偏光板のセット>図1は、本発明に係る偏光板のセットにおける好ましい層構成の例を概略断面図で示したものである。また図2は、図1に示される偏光板のセット(前面板一体型偏光板40及び背面側偏光板50)を液晶セル60に貼合してなる前面板一体型液晶表示パネル80を示したものである。図1を参照して、本発明の偏光板のセットは、前面板一体型偏光板40と背面側偏光板50から構成される。本発明の偏光板のセットを構成する前面板一体型偏光板40は、前面側偏光板30と、その視認側に配置される前面板10との一体化物である。図1の例において前面側偏光板30は、偏光子37;偏光子37の視認側の面に貼合される保護層35a;偏光子37の視認側とは反対側(液晶セル側)の面に貼合される保護層35bを含む。続きを表示(全41行)【0021】また背面側偏光板50は、偏光子57;偏光子57の視認側(液晶セル60側)の面に貼合される保護層55a;偏光子37の視認側とは反対側(背面側)の面に貼合される保護層55bを含む。【0022】(1)前面板前面板10は、液晶セル60の反りを抑制したり、液晶セル60を保護したりする役割を担うものであり、ヤング率が2GPa以上である透光性の(好ましくは光学的に透明な)板状体であることができる。前面板10は、上記ヤング率を満たす限り、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。・・・省略・・・【0028】(2)前面側偏光板及び背面側偏光板前面側偏光板30は、前面板10と一体化された前面板一体型偏光板40として、液晶セル60の視認側に配置される偏光板であり、少なくとも偏光子37を含む。前面側偏光板30は通常、偏光子37に加えて、その少なくとも一方の面に積層される保護層を備える。図1の例においては、偏光子37の両面に保護層35a,35bが貼合されている。図1の例に限らず、例えば保護層35bを省略するなど、偏光子37の一方の面のみに保護層を積層するようにしてもよい。【0029】背面側偏光板50は、液晶セル60の背面側(視認側とは反対側)に配置される偏光板であり、少なくとも偏光子57を含む。背面側偏光板50は通常、偏光子57に加えて、その少なくとも一方の面に積層される保護層を備える。図1の例においては、偏光子57の両面に保護層55a,55bが貼合されている。図1の例に限らず、例えば保護層55aを省略するなど、偏光子57の一方の面のみに保護層を積層するようにしてもよい。【0030】図3は、前面側偏光板30、及びその吸収軸30aと透過軸30bの軸角度を示す概略平面図であり、図4は、背面側偏光板50、及びその吸収軸50aと透過軸50bの軸角度を示す概略平面図である。図示されるように、前面側偏光板30及び背面側偏光板50の外形形状は、例えば、長辺と短辺を有する方形形状であることができる。そして、この場合において、前面側偏光板30(偏光子37)の吸収軸30aと前面側偏光板30の短辺(従って、前面側偏光板30が貼合される液晶セル60の短辺)とがなす角度は、通常±45度以内であり、好ましくは±10度以内である。前面側偏光板30の吸収軸30aと前面側偏光板30の短辺とは平行であるか、又は略平行(なす角度が±7度以内)であることがより好ましい。同様に、吸収軸30aに直交する透過軸30bと前面側偏光板30の長辺(従って、前面側偏光板30が貼合される液晶セル60の長辺)とがなす角度は、通常±45度以内であり、好ましくは±10度以内である。前面側偏光板30の透過軸30bと前面側偏光板30の長辺とは平行であるか、又は略平行(なす角度が±7度以内)であることがより好ましい。図3において、前面側偏光板30の吸収軸30aと前面側偏光板30の短辺とは平行であり、前面側偏光板30の透過軸30bと前面側偏光板30の長辺とは平行である。・・・省略・・・【0042】偏光子37は、例えば、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、最後に乾燥させて製造することができる。偏光子37の製造工程におけるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸、染色、ホウ酸処理、水洗工程、乾燥工程は、例えば特開2012-159778号公報に記載されている方法に準じて行ってもよい。当該文献に記載の方法においては、上記ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを用いるのではなく、基材フィルムへのポリビニルアルコール系樹脂のコーティングによって、偏光子となるポリビニルアルコール系樹脂層が形成され、これに保護層が積層された偏光板が製造される。【0043】偏光子37の厚みは、2~40μm程度であることができ、好ましくは3~30μm程度である。【0044】偏光子37,57の少なくとも一方の面に貼合される保護層は、透明樹脂からなる層であることができ、透明性や均一な光学特性、機械強度、熱安定性等に優れる樹脂からなることが好ましい。保護層を構成する透明樹脂の具体例は、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂を含む。・・・省略・・・【0049】偏光子と保護層との貼合は、接着剤又は粘着剤を用いることができる。接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を主成分として含む水系接着剤や、紫外線硬化型樹脂(エポキシ系樹脂等)のような光硬化型樹脂を含む光硬化型接着剤を用いることができる。粘着剤としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル等をベースポリマーとするものを用いることができる。偏光子への貼合に先立って、保護層の貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理を施してもよい。・・・省略・・・【0052】前面側偏光板30及び/又は背面側偏光板50は、偏光板とは異なる光学機能を示す、偏光子及び保護層以外の他の光学層を1層又は2層以上有することができる。他の光学層具体例は、例えば、反射層、半透過型反射層、位相差板、輝度向上フィルムを含む。例えば、前面側偏光板30及び/又は背面側偏光板50は、偏光子と保護層とを含む上述の偏光板に位相差板がさらに積層されている楕円偏光板又は円偏光板、1つの保護層が視野角補償フィルムである偏光板、偏光子と保護層とを含む上述の偏光板に輝度向上フィルムがさらに積層されている偏光板等であることができる。・・・省略・・・【0056】上記光学層は、粘着剤又は接着剤を用いて偏光板と一体化することができる。用いられる粘着剤又は接着剤は特に制限されるものではなく、適宜のものを選択して使用すればよい。接着作業の簡便性や光学歪の発生防止等の観点から、粘着剤を使用することが好ましい。粘着剤に特に制限はなく、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル等をベースポリマーとするものを用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、偏光板及び光学層との接着性にも優れ、さらには良好な耐熱性を有し、高温環境下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。・・・省略・・・【0059】<前面板一体型液晶表示パネル>本発明に係る前面板一体型液晶表示パネルは、上述の前面板一体型偏光板40及び背面側偏光板50を液晶セル60に貼合したものである。図2は、本発明に係る前面板一体型液晶表示パネルにおける好ましい層構成の例を示す概略断面図であり、図1に示される偏光板のセット(前面板一体型偏光板40及び背面側偏光板50)を液晶セル60に貼合してなる前面板一体型液晶表示パネル80を示したものである。【0060】図2に示されるように、前面板一体型偏光板40は、その前面板10を視認側にして、すなわち、その前面側偏光板30側で液晶セル60の視認側に貼合される。背面側偏光板50は、液晶セル60の背面側に貼合される。液晶セル60への前面板一体型偏光板40及び背面側偏光板50の貼合は、粘着剤を用いて行うことができる。粘着剤には、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル等をベースポリマーとするものを用いることができる。なかでも、光学的な透明性に優れ、良好な耐熱性を有し、高温環境下で浮きや剥がれ等の剥離問題が生じにくく、熱膨張差等による光学特性の低下防止や前面板一体型液晶表示パネルの反り抑制にも有利であるアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。【0061】通常、液晶セル60への偏光板の貼合に先立って、あらかじめ偏光板における液晶セル60側の最表面に、上記粘着剤からなる粘着剤層を積層しておく。この粘着剤層の外面は、その粘着剤層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的にセパレータにて仮着保護されることが好ましい。セパレータは、上記の保護層に準じた樹脂フィルム基材上に、必要に応じてシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブテン等の適宜な剥離剤による剥離コート層を設けたものであることができる。前面板一体型偏光板40及び背面側偏光板50は、それらの短辺が液晶セル60の短辺と平行になるように貼合される。」
ウ 「【実施例】【0064】以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量又は使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。【0065】続きを表示(全62行)<実施例1>図2に示される層構成の前面板一体型液晶表示パネルを次の手順で作製した。【0066】(1)前面側偏光板30の作製厚み60μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚み23μmの偏光子37を得た。【0067】次に、得られた偏光子37の片面に、水100部に対して、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した商品名「KL-318」〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)製の商品名「スミレーズレジン 650(30)」、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加した水系のエポキシ系接着剤を塗布し、保護層35aとして厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)製の商品名「KC4UY」〕を貼合し、偏光子37の反対側には、前記の接着剤を用いて、保護層35bとして厚み23μmのノルボルネン系樹脂からなる延伸されていないフィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZEONOR」〕を貼合した。【0068】(2)背面側偏光板50の作製厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された厚み11μmの偏光子57を得た。【0069】次に、得られた偏光子57に、前面側偏光板30と同様の方法で、上記と同じエポキシ系接着剤を用いて、上記厚み23μmの「ZEONOR」である保護層55a及び厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名「KC2UA」〕である保護層55bを貼合した。【0070】(3)前面板一体型液晶表示パネルの作製上記(1)で得られた前面側偏光板30の保護層35bの外面に、粘着剤〔リンテック(株)製の商品名「#KZ」、アクリル系粘着剤〕を塗布し、厚み20μmの粘着剤層を形成した。また、上記(2)で得られた背面側偏光板50の保護層55aの外面に、粘着剤〔リンテック(株)製の商品名「#KZ」、アクリル系粘着剤〕を塗布し、厚み20μmの粘着剤層を形成した。【0071】次に、粘着剤層を有する前面側偏光板30を、液晶セル60の短辺に対して偏光子37の吸収軸が平行になるように5インチサイズに裁断するとともに、粘着剤層を有する背面側偏光板50を、液晶セル60の長辺に対して偏光子57の吸収軸が平行になるように5インチサイズに裁断した。次いで、裁断した2つの偏光板を、それぞれの粘着剤層を介して、2つの偏光板の短辺が液晶セル60の短辺と平行になるように液晶セル60に貼り合わせた。【0072】次いで、前面側偏光板30の保護層35a側に紫外線硬化型光学弾性樹脂〔デクセリアス(株)製の商品名「Super View Resin」〕を塗布し、その上にヤング率が70GPaで、厚み0.55mmの前面板10〔コーニング社製の商品名「Gorilla」〕を積層した。その後、前面板10側から紫外線を照射して〔フュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」、積算光量1200mJ/cm2〕、前面板一体型液晶表示パネルを作製した。【0073】<実施例2>次の手順で前面板一体型液晶表示パネルを作製した。なお、以下の説明では図1及び図2に示される参照符号を用いているが、これらの図と異なり、本実施例で作製した背面側偏光板50は、液晶セル60側の保護層55aを有しておらず、また、背面側偏光板50に保護層55bの外面には輝度向上フィルムが積層されている。【0074】(1)前面側偏光板30の作製実施例1の(1)と同じ前面側偏光板30を作製した。【0075】(2)背面側偏光板50の作製平均重合度1100でケン化度99.5モル%のアセトアセチル基変性ポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)製の商品名「ゴーセファイマー Z-200」〕を95℃の熱水に溶解して、3%濃度の水溶液を調製した。この水溶液に架橋剤として、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂〔田岡化学工業(株)製の商品名「スミレーズレジン 650」、固形分濃度30%の水溶液〕を、ポリビニルアルコールの固形分6部あたり5部の割合で混合して、プライマー用塗工液とした。そして、基材フィルム(厚み110μm、融点163℃のポリプロピレンフィルム)にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に、プライマー用塗工液をマイクログラビアコーターを用いて塗工した。その後、80℃で10分間乾燥して、厚さ0.2μmのプライマー層を形成した。【0076】次に、平均重合度2400でケン化度98.0~99.0モル%のポリビニルアルコール粉末〔(株)クラレから入手した商品名「PVA124」)を95℃の熱水に溶解して、8%濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、上記基材フィルムのプライマー層上にリップコーターを用いて室温で塗工し、80℃で20分間乾燥して、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール層からなる積層フィルムを作製した。【0077】次いで、得られた積層フィルムを、温度160℃で5.8倍に自由端縦一軸延伸した。こうして得られた積層延伸フィルムの全体厚みは28.5μmであり、ポリビニルアルコール層の厚みは5.0μmであった。【0078】得られた積層延伸フィルムを、水/ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比が100/0.35/10の水溶液に26℃で90秒間浸漬して染色した後、10℃の純水で洗浄した。次に、この積層延伸フィルムを、水/ホウ酸/ヨウ化カリウムの重量比が100/9.5/5の水溶液に76℃で300秒間浸漬して、ポリビニルアルコールを架橋させた。引き続き、10℃の純水で10秒間洗浄し、最後に80℃で200秒間の乾燥処理を行った。以上の操作により、ポリプロピレン基材フィルム上に、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール層からなる偏光子57が形成されている偏光性積層フィルムを作製した。【0079】得られた偏光性積層フィルムの基材フィルムとは反対面(偏光子面)に、水100部に対して、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した商品名「KL-318」〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)製の商品名「スミレーズレジン 650(30)」、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加した水系のエポキシ系接着剤を塗布し、保護層55bとして厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名「KC2UA」〕を貼合し、基材フィルムのみを剥離することによって、保護層55b/偏光子57/プライマー層からなる偏光板を得た。【0080】その後、保護層55bの外面に、厚み5μmの粘着剤〔リンテック(株)製の商品名「#L2」、アクリル系粘着剤〕を貼合して、粘着剤層を形成した後、その上に厚み26μmの輝度向上フィルム〔3M社製の商品名「Advanced Polarized Film,Version 3」〕を貼合した。【0081】(3)前面板一体型液晶表示パネルの作製本実施例の上記(1)、(2)で得られた前面側偏光板30、背面側偏光板50を用いたこと以外は、実施例1と同様にして前面板一体型液晶表示パネルを作製した。【0082】<比較例1>前面側偏光板30として、実施例1の(2)で作製した背面側偏光板50を用い、背面側偏光板50として、実施例1の(1)で作製した前面側偏光板30を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前面板一体型液晶表示パネルを作製した。【0083】実施例1~2及び比較例1で作製した前面側偏光板30(前面板10と一体化されていない状態)における吸収軸方向及び透過軸方向の高温環境下での寸法変化率Fa、Ft、背面側偏光板50における吸収軸方向及び透過軸方向の高温環境下での寸法変化率Ra、Rt、並びに、前面板一体型液晶表示パネルの高温環境下での反り量を、以下の方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。【0084】(偏光板の寸法変化率)得られた偏光板から収縮量測定用の試験片を切り出した。試験片の形状は、対向する2辺が延伸方向(偏光子の吸収軸方向)と平行な正方形又は長方形であり、この延伸方向と平行な辺の長さは30~50mm、この辺と直交する辺の長さは20~50mmとした。この試験片を85℃の環境下で100時間静置した。85℃の環境下で100時間静置する前の吸収軸方向及びこれに直交する透過軸方向の長さL0と、静置した後の吸収軸方向及びこれに直交する透過軸方向の長さL1を、(株)ニコン製の二次元測定器「NEXIV VMR-12072」を用いて測定し、下記式:寸法変化率=[(L0-L1)/L0]×100 [II]に従って、寸法変化率Fa、Ft、Ra、Rtを求めた。【0085】(前面板一体型液晶表示パネルの反り量)前面板一体型液晶表示パネルを、85℃の環境下に240時間静置した後、前面板10を上にして(株)ニコン製の二次元測定器「NEXIV VMR-12072」の測定台上に置いた。次いで、測定台の表面に焦点を合わせ、そこを基準としたうえで、前面板一体型液晶表示パネルの4角部、4辺の各中央及び前面板一体型液晶表示パネル表面の中央(計9点)のそれぞれに焦点を合わせ、上記基準とした焦点からの距離を測定した後、測定台からの距離が絶対値で最も長い距離を反り量とした。【0086】【表1】[図:0001390263000001.jpg]」
エ 図1
[図:0001390263000002.jpg]
オ 図2
[図:0001390263000003.jpg]
カ 図3
[図:0001390263000004.jpg]
キ 図4
[図:0001390263000005.jpg]
(2)引用発明
ア 引用文献1において、【0081】の記載により、実施例2の前面板一体型液晶表示パネルの作製は、実施例2の(1)、(2)で得られた前面側偏光板30、背面偏光板50を用いたこと以外は、実施例1と同様である。そして、実施例2における背面偏光板50は、保護層55b/偏光子57/プライマー層からなるものであるから、【0070】の記載により、実施例2の前面板一体型液晶表示パネルは、背面偏光板50のプライマー層の外面に粘着剤層を形成したものである。以下、保護層55bの外面に形成した粘着剤層を「粘着剤層A」といい、プライマー層の外面に形成した粘着剤層を「粘着剤層B」という。
イ そうしてみると、引用文献1には、粘着剤層Bを形成した背面偏光板50について次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、参考のため、括弧内に、引用発明を認定する根拠となった箇所を示す。
「 基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール層からなる積層フィルムを作製し、次いで、得られた積層フィルムを、自由端縦一軸延伸し、こうして得られた積層延伸フィルムの全体厚みは28.5μmであり、ポリビニルアルコール層の厚みは5.0μmであり、得られた積層延伸フィルムを、染色した後、洗浄し、次に、この積層延伸フィルムを、水/ホウ酸/ヨウ化カリウムの水溶液に浸漬して、ポリビニルアルコールを架橋させ、引き続き、洗浄し、乾燥処理を行い、以上の操作により、基材フィルム上に、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール層からなる偏光子57が形成されている偏光性積層フィルムを作製し、(【0076】~【0078】)得られた偏光性積層フィルムの基材フィルムとは反対面(偏光子面)に、水系のエポキシ系接着剤を塗布し、保護層55bとして厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名「KC2UA」〕を貼合し、基材フィルムのみを剥離することによって、保護層55b/偏光子57/プライマー層からなる偏光板を得、(【0079】)その後、保護層55bの外面に粘着剤を貼合して、粘着剤層Aを形成した後、その上に輝度向上フィルムを貼合して背面側偏光板50を作製し、(【0080】)得られた背面側偏光板50のプライマー層の外面に、粘着剤を塗布し粘着剤層Bを形成した、粘着剤層Bを形成した背面側偏光板50。(上記ア)」
(3)対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 偏光子、保護フィルム、粘着剤層
引用発明の「粘着剤層Bを形成した背面側偏光板50」は、「保護層55b/偏光子57/プライマー層からなる偏光板を得」、「背面側偏光板50を作製し」「得られた背面側偏光板50のプライマー層の外面に、粘着剤を塗布し粘着剤層Bを形成した」ものである。
上記構成からみて、引用発明の「偏光子57」及び「粘着剤層B」は、それぞれ、本件補正後発明の「偏光子」及び「粘着剤層」に相当する。
また、引用発明の「保護層55b」は「トリアセチルフィルム」であることから、引用発明の「保護層55b」は、本件補正後発明の「保護フィルム」に相当する。
イ 偏光板
上記アの構成からみて、引用発明の「粘着剤層Bを形成した背面側偏光板50」は、本件補正後発明の「偏光板」に相当する。また、引用発明の「粘着剤層Bを形成した背面側偏光板50」は、本件補正後発明の「偏光板」の「偏光子と保護フィルムと粘着剤層とを有する」との要件を満たす。
また、上記アの構成からみて、引用発明において、「保護層55b」と「偏光子」と「粘着剤層B」とがこの順で配置されているといえる。そうしてみると、引用発明の「粘着剤層Bを形成した背面側偏光板50」は、本件補正後発明の「偏光板」の「前記保護フィルムと前記偏光子と前記粘着剤層とがこの順で配置され」との要件を満たす。
さらに、上記アの構成からみて、引用発明において、「偏光子57」に「粘着剤層B」が積層されているといえる。そうしてみると、引用発明の「粘着剤層Bを形成した背面側偏光板50」は、本件補正後発明の「偏光板」と、「前記偏光子に前記粘着剤層が」「積層され」るとの点で共通する。
(4)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 偏光子と保護フィルムと粘着剤層とを有する偏光板であって、前記保護フィルムと前記偏光子と前記粘着剤層とがこの順で配置され、前記偏光子に前記粘着剤層が積層される、偏光板。」
イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違するか、一応相違する。
<相違点1>
本件補正後発明は、「前記偏光子に前記粘着剤層が直接接触して積層され」るのに対して、引用発明は、「プライマー層の外面に」「粘着剤層Bを形成し」ているのであって、「偏光子57」に「粘着剤B」が直接接触して積層されていない点。
<相違点2>
「保護フィルム」が、本件補正後発明は、「前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(85℃)とし、前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(30℃)としたときに、前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値が0.02~0.11であ」るのに対して、引用発明の「保護層55b」の寸法変化率は明らかでなく、この点が一応明らかではない点。
<相違点3>
「偏光子」が、本件補正後発明は、「8μm以下の厚さを有し」ているのに対して、引用発明の「偏光子57」は、厚さが一応明らかではない点。
<相違点4>
「粘着剤層」が、本件補正後発明は、「23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa~1MPaである」のに対して、引用発明の「粘着剤層B」は、貯蔵弾性率が明らかではない点。
(5)判断
相違点についての判断は、以下のとおりである。
ア 相違点1について
プライマー層を用いずに基材フィルムにポリビニルアルコール層を形成し、偏光子に粘着剤層を直接接触して積層することは、原査定の拒絶の理由で周知技術として引用された、特開2012-247574号公報(以下「引用文献3」という。)の【請求項1】、【0115】、【0120】、【0120】、国際公開第2014/034630号(以下「引用文献4」という。)の[0137]、[0141]、[0142]、[請求項1]に記載されているように、偏光板の技術分野において、周知技術である。以下、「プライマー層を用いずに基材フィルムにポリビニルアルコール層を形成し、偏光子に粘着剤層を直接接触して積層すること」を「周知技術1」という。
ここで、引用発明の「プライマー層」は、引用文献1の実施例2(【0073】~【0081】)において、基材フィルムにポリビニルアルコール層を形成する際に、層間の密着力を向上させるというプライマー自体の有する機能を発揮すべく設けられたものである。そして、基材フィルムにポリビニルアルコール層を形成する際に、プライマー層を設けるか否かは、基材フィルムとの材質やポリビニルアルコール層の組成、これらの層間に求められる密着性等に応じて決定されることであって、当業者にとって適宜選択可能な設計事項である。
そうしてみると、引用発明において、周知技術1を採用して、プライマー層を用いずに基材フィルムにポリビニルアルコール層を形成し、偏光子に粘着剤層を直接接触して積層することは、当業者にとって何ら格別の困難性はない。
したがって、引用発明に周知技術1を適用して相違点1に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
引用発明において、保護層55bをどの方向で偏光子57に貼合したかは明らかではない。しかしながら、引用文献1の【0030】、【0031】、図3、図4において、偏光子の透過軸が長辺又は短辺に平行であることが記載されている。また、引用文献1の【0071】には、「次に、粘着剤層を有する前面側偏光板30を、液晶セル60の短辺に対して偏光子37の吸収軸が平行になるように5インチサイズに裁断するとともに、粘着剤層を有する背面側偏光板50を、液晶セル60の長辺に対して偏光子57の吸収軸が平行になるように5インチサイズに裁断した。次いで、裁断した2つの偏光板を、それぞれの粘着剤層を介して、2つの偏光板の短辺が液晶セル60の短辺と平行になるように液晶セル60に貼り合わせた。」と記載されている。そして、保護層55bを偏光子57に貼合する際に、保護層55bの幅を偏光子57の幅と合わせることが一般的であることから、保護層55bの幅を透過軸方向と平行な方向とすることは、当業者が当然なし得ることである。さらに、引用発明の「保護層55b」は、「25μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名「KC2UA」〕」であり、本件出願の明細書の【0091】、【0106】の【表1】に記載された「KC2UA」であることから、引用発明の「保護層55b」が、本件補正後発明の「保護フィルム」と同様の特性を有することは、明らかである。
そうしてみると、引用発明においては、偏光子に対し、本件補正後発明と同一の保護フィルムを、同一の方向に貼り合わせてたものであるから、その高温多湿条件下における寸法変化の差も、本件補正後発明において特定される数値範囲を満たす蓋然性が高い。
したがって、相違点2は、実質的な差異ではない。
仮に、相違するとしても、当業者にとって適宜選択可能な設計事項である。
ウ 相違点3について
引用発明の「積層延伸フィルム」における「ポリビニルアルコール層の厚みは5.0μmであ」る。その後、引用発明において、「得られた積層延伸フィルム」を「染色」、「洗浄」、「架橋」、「洗浄」、「乾燥」した後の作製された「偏光板」における「ポリビニルアルコール層」の厚みが相違点3に係る偏光子の厚みを上回ることは、考え難い。
したがって、相違点3は、実質的な差異ではない。
仮に、相違するとしても、偏光子の厚みを薄くすることは周知の課題(引用文献3の【0089】、引用文献4の[0111]参照。)であるので、当業者にとって適宜選択可能な設計事項である。
上述したとおりであるが、念のため以下に付言する。
引用文献3の【0115】には、「厚さ4μmのPVA層」、引用文献4の[0137]には、「厚さ4μmのPVA層」とそれぞれ記載されているように、プライマー層を用いずに基材フィルムにポリビニルアルコール層を形成した場合に偏光子を8μm以下の厚さとすることは、周知技術である。また、偏光子の厚みを薄くすることは周知の課題であることは、上述したとおりである。
したがって、引用発明に周知技術1を適用することによっても、相違点3についての判断に影響を及ぼすものではない。
エ 相違点4について
耐候性や耐久性を得るために粘着剤層の貯蔵弾性率を0.15MPa~1MPa程度の範囲とすることは、特開2009-109860号公報の【0001】、【0057】、【0071】~【0074】、特開2010-197681号公報の【0001】、【0055】、【0056】、【0060】、【0082】~【0088】に記載されているように周知技術である。以下、「粘着剤層の貯蔵弾性率を0.15MPa~1MPa程度の範囲とすること」を「周知技術2」という。
そうしてみると、耐候性や耐久性を得るために引用発明の「粘着剤層B」に周知技術2を適用して、相違点4に係る数値範囲とすることは、当業者にとって何ら格別の困難性はない。
したがって、引用発明に周知技術2を適用して相違点4に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(6)発明の効果について
本件補正後発明の効果に関して、本件出願の明細書の【0012】及び【0013】には、それぞれ、「本発明によれば、高温条件、多湿条件下であっても、偏光子に生じる割れおよびクラックが抑制され、耐久性に優れる偏光板が提供される。また、高温と低温とを繰り返すような環境下において、さらには結露が生じるような環境下であっても、本発明の偏光板は、光抜け、偏光子の割れなどを生じることなく良好な偏光特性を示すことができる。したがって、本発明の偏光板は、従来は適用できなかった高温条件、多湿条件などの様々な条件下においても、光抜け、割れなどを生じることなく使用できる。」及び「さらに、本発明によれば、偏光子を薄くでき、かつ、保護フィルムの表面にキズが発生した場合であっても偏光子の割れを抑制できる。したがって、本発明の偏光板は、薄型であり、かつ、強度、耐久性に優れた偏光板である。」と記載されている。
しかしながら、本件補正後発明の効果は、引用発明も奏する効果であるか、又は引用発明及び周知技術1~2から予測可能な範囲を超えるものではない。
(7)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術1~2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
3 引用文献及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、上記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明は、上記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明の「前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa~1MPaである」ことを削除するものであるから、本願発明の範囲には、本件補正後発明が含まれる。
ここで、本願発明の範囲に含まれる本件補正後発明は、上記「第2」[理由]2に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知技術1~2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明も、引用文献1に記載された発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-013471