特許拒絶査定不服審判
2021-013465
発信制御装置、電話システム、発信制御方法、及び発信制御プログラム
- 審判番号
- 2021-013465
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-190901外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月05日
- 審決日
- 2022年09月15日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】NECプラットフォームズ株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 分類
- P18 .121-WZ (H04M) / P18 .537-WZ (H04M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-190901「発信制御装置、電話システム、発信制御方法、及び発信制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月30日出願公開、特開2021- 68942〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年10月18日を出願日とする特願2019-190901号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和2年 9月17日付け:拒絶理由通知書
令和2年11月19日 :意見書及び手続補正書の提出
令和2年12月 3日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和3年 2月12日 :意見書の提出
令和3年 7月 1日付け:拒絶査定
令和3年10月 5日 :審判請求書の提出
令和4年 4月27日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明は、令和4年7月7日に提出された手続補正書に係る手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
構内交換機に収容される複数の電話機のいずれかからの発信を制御する発信制御装置であって、
前記複数の電話機を備える電話システムのユーザー全員について、当該ユーザーの電話番号と、当該ユーザーの属性を特定する3以上の属性値とを対応付けて電話帳データとして記憶する、電話帳データ記憶手段と、
発信元からの音声に含まれる発信先を示す第1の属性値を取得する第1の属性値取得手段と、
前記第1の属性値取得手段により取得された第1の属性値に基づいて前記電話帳データを検索した結果、複数のユーザーが対応する場合に、当該複数のユーザーについて前記第1の属性値以外の属性値であって複数のユーザー間で互いに異なる第2の属性値を抽出し、当該第2の属性値を要求する音声応答を前記発信元に送信する、応答情報送信手段と、
前記音声応答に対応して、前記発信元から受信した音声に含まれる前記第2の属性値を取得する第2の属性値取得手段と、
前記第1の属性値取得手段及び前記第2の属性値取得手段により取得された前記第1および第2の属性値に基づいて、前記発信元からの通話を転送する発信処理制御手段と、
を備える発信制御装置。」
第3 拒絶の理由
令和4年4月27日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうちの理由2は、次のとおりのものである。
この出願の請求項1、2及び5~10に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、また、請求項3及び4に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された周知技術並びに引用文献4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2003-158579号公報
引用文献2:特開2018-45593号公報
引用文献3:特開2004-213373号公報
引用文献4:特開2001-346236号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2003-158579号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は、強調のため当審で付した。以下同じ。)。
「【0002】
【従来の技術】現代の企業活動において、電話は情報伝達及び意思の疎通において最重要なツールとして使用されている。一方、コンピュータ環境の整備、及び関連技術の急速な進歩に伴って、音声認識技術、あるいは音声データを基調とした話者認識技術は長足の進歩を遂げており、かかる技術を利用した自動電話応答装置についても多様な形態で開発されているのが現状である。
【0003】従来の自動電話応答装置においては、例えば部署Aのメンバである従業者Bが発呼者として“すずきさん”へ電話をかけた場合、該当する対話相手候補を文字列「すずき」をキー情報として、社員データベース等を参照することにより、「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答を返すことになる。従業員Bは、候補者が多数の場合には、さらに絞り込むために部署名等の情報を音声データとして入力することになる。」
「【0055】以上のような電話応答支援装置及び方法は、様々なアプリケーションに応用することができる。例えば、自動電話応答転送装置として、電話の転送サービス、及び転送相手不在の場合に電子メール等を活用した伝言メッセージサービスを付加した自動電話応答転送装置に応用することも考えられる。」
(2)引用発明
前記(1)において、「従業者B」と「従業員B」は同一の人を指すものと解される。
したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 音声認識技術、あるいは音声データを基調とした話者認識技術を利用した自動電話応答装置についても多様な形態で開発され(【0002】)、
従来の自動電話応答装置においては(【0003】)、
例えば部署Aのメンバである従業者Bが発呼者として“すずきさん”へ電話をかけた場合、該当する対話相手候補を文字列「すずき」をキー情報として、社員データベース等を参照することにより、「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答を返し(【0003】)、
従業者Bは、候補者が多数の場合には、さらに絞り込むために部署名等の情報を音声データとして入力することになる(【0003】)、
自動電話応答装置。」
2 引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2(特開2018-45593号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0025】
通信端末1を装着したユーザは、上記人物との会話データをマイク11から取得してサーバ2に送信する。会話データを受信したサーバ2は、会話データ中に含まれるキーワードに基づいて、サーバ2に一又は複数の人物の個人情報が記録された記録部から上記人物の候補者を抽出し、当該候補者の個人情報を通信端末1に送信する。」
「【0030】
サーバ2は、記録部21、制御部22及び通信部23を備える。記録部21は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びHDD(Hard Disk Drive)を備える。RAMには、例えば、通信端末1から受信した音声データ、当該音声データから抽出されたキーワード、対話相手の候補者などが記録される。ROMには、例えば、制御部22が実行するプログラムが記録されている。HDDには、例えば、一又は複数の人物それぞれの個人情報が記録されている。
【0031】
図3は、個人情報として登録される情報が示された表である。表において、第1列には情報の属性が記され、第2列には各属性がどのような情報を含んでいるかが記されている。個人情報には、例えば、個人の名前、所属、経歴、SNS(Social Networking Service)等のアップデート情報、過去にしたチャットのテキスト情報、ユーザとの共通点、過去にユーザと接触した場所、日時、機会、ユーザと会話をした日時及び頻度などが記録されている。」
「【0033】
制御部22は、記録部21に記録されたプログラムを実行することによって、データ変換部201、キーワード抽出部202、属性特定部203、人物抽出部204、絞り込み情報特定部205、人物情報出力部206、ばらつき度合い算出部207及び対話相手設定部208として機能する。」
「【0038】
人物抽出部204は、個人情報を検索し、上記キーワードを含む情報が記録されている人物を抽出する。人物抽出部204は、個人情報のうち、会話の属性と一致する情報から検索を開始して人物を抽出してもよい。こうすると、サーバ2は、会話の相手を特定する計算コストを節約することができる。」
「【0041】
人物抽出部204は、既に通信端末1に複数の対話相手の候補者を出力している場合、上記候補者の中から、キーワード抽出部202から取得したキーワードを個人情報に含む人物を抽出する。ユーザは会話を続けることにより、対話相手を特定するためのキーワードを取得し、対話相手の候補者を絞り込むことができる。人物抽出部204は、抽出した人物を絞り込み情報特定部205及び人物情報出力部206に送信する。
【0042】
絞り込み情報特定部205は、人物抽出部204が抽出した対話相手の候補者を絞り込むために必要な絞り込み情報を特定する。以下に図4を参照しながら、絞り込み情報特定部205が特定する絞り込み情報について説明する。
【0043】
図4は、複数の人物の個人情報が記された表である。人物抽出部204が対話相手の候補者として、麻生G郎、東野T郎及び加藤A作の3名を抽出したとする。絞り込み情報特定部205は、上記3人の個人情報を参照して、対話相手を特定するために必要な情報を特定する。
【0044】
例えば、ユーザが上記3人と出会った機会は、それぞれ、共同研究、OB会、国際会議であるため、対話相手と過去に出会った機会を知ることができれば、対話相手が誰であるかを特定することができる。つまり、「機会」は絞り込み情報となる。一方、上記3人は全員所属がA研究所であるため、「所属」は、対話相手を特定するための情報にはならない。
【0045】
絞り込み情報特定部205は、個人情報のばらつき度合いが大きい属性の情報を絞り込み情報に特定してもよい。ばらつき度合い算出部207は、個人情報の属性ごとに個人間の情報のばらつき度合いを算出する。再度図4の表を参照しながら、個人情報のばらづき度合いについて説明する。図4では、麻生G郎、東野T郎、加藤A作それぞれの所属は、全員A研究所であり、同一である。したがって、「所属」という属性の情報はばらついていない。
【0046】
一方、「共通点」という属性の情報を参照すると、一人は「人工知能」であるが、他の二人は「子供二人」である。したがって、「共通点」という属性の情報は、ばらついており、対話相手が人工知能に興味を持っていることを聞き出せれば、ユーザは対話相手が麻生G郎であることを特定できる。
【0047】
また、「機会」という属性の情報を参照すると、それぞれ、「共同研究」、「OB会」、「国際会議」である。したがって、「機会」という属性の情報は「共通点」という属性の情報よりさらにばらついている。それ故、対話相手から過去に出会った際の機会を聞き出せれば、ユーザは対話相手を特定することができる。
【0048】
ばらつき度合い算出部207が算出するばらつき度合いは、例えば、属性に関する情報の種類を、個人情報を比較する人数で除した値である。例えば、「所属」のばらづき度合いは1/3であり、「共通点」のばらづき度合いは2/3であり、「機会」のばらづき度合いは3/3(即ち、1)である。つまり、上記例では、ばらつき度合いをVとすると、0≦V≦1であり、Vが大きいほどばらついている。続いて、絞り込み情報特定部205が特定する特定ワードについて図4を参照しながら説明する。」
「【0050】
人物情報出力部206は、抽出した人物に関する情報を、通信端末1に出力する。人物情報出力部206は、例えば、人物抽出部204から受信した対話相手の候補者、候補者を絞り込むために必要な絞り込み情報及び特定ワードを通信端末1に出力する。」
「【0068】
サーバ2は、人物を絞り込むために必要な絞り込み情報を特定し、絞り込み情報を通信端末1に出力してもよい。こうすると、ユーザはどのような会話をすれば対話相手を特定することができるのかを把握することができ、会話を長く続けなくとも対話相手を特定する情報を入手することができる。」
「【図3】
[図:0001391572000001.jpg]
【図4】
[図:0001391572000002.jpg]
」
したがって、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「 サーバ2は、通信端末1から受信した会話データ中に含まれるキーワードに基づいて、サーバ2に一又は複数の人物の個人情報が記録された記録部から個人情報を検索し、上記キーワードを含む情報が記録されている人物の候補者を抽出し(【0025】、【0038】)、
抽出した対話相手の候補者の個人情報を参照して、個人情報のばらつき度合いが大きい属性の情報を、候補者を絞り込むために必要な絞り込み情報に特定し(【0042】、【0043】、【0045】)、
ばらつき度合いは、個人情報の属性ごとに、属性に関する情報の種類を、個人情報を比較する人数で除した値であり(【0045】、【0048】)、
候補者を絞り込むために必要な絞り込み情報を通信端末1に出力する(【0050】、【0068】)」技術
3 引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3(特開2004-213373号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の一態様としての情報検索システムは、利用者が使用する利用者端末と、マルチメディアデータ、該マルチメディアデータとその対象物に関する複数の属性データ、及び前記対象物に関する目的情報が互いに関連付けられて格納されている情報検索データベースと、ネットワークを介して前記利用者端末から受信したマルチメディアデータに関連する目的情報を、前記情報検索データベースから検索する情報検索サーバと、を備える情報検索システムであって、
前記情報検索サーバは、
前記検索により前記受信したマルチメディアデータに関連する目的情報が1つに特定できなかった場合に、前記複数の属性データから前記目的情報を特定するために有効な属性データを決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された属性データの入力を前記利用者端末に要求する要求手段と、を含んでいる。
【0020】
すなわち、本発明では、ネットワークを介して利用者端末から受信したマルチメディアデータに関連する目的情報を、マルチメディアデータ、該マルチメディアデータとその対象物に関する複数の属性データ、及び対象物に関する目的情報が互いに関連付けられて格納されている情報検索データベースから検索する際に、検索により受信したマルチメディアデータに関連する目的情報が1つに特定できなかった場合に、複数の属性データから目的情報を特定するために有効な属性データを決定し、決定された属性データの入力を利用者端末に要求する。
【0021】
このようにすると、情報検索データベースからマルチメディアデータの検索を行う際に、検索対象のマルチメディアデータに関連する目的情報が1つに特定できなかった場合に、効率的に絞り込みを行うために有効な属性データの入力要求が利用者端末に対して行われるので、利用者が要求された属性データを入力することにより、効率的な検索が行われる。」
「【0024】
また、決定手段は、予め定められた優先順位に従って、有効な属性データを決定する、又は、検索により前記受信したマルチメディアデータに関連する目的情報に対する複数の候補が特定された場合、決定手段は、複数の候補に関連する属性データの中で、ばらつきの大きなものを前記有効な属性データとして決定する、更には検索結果に応じていずれかに従って決定するよう構成されているのがよい。
【0025】
予め定められた優先順位に従って、有効な属性データを決定するようにすると、決定するまでの時間が短くて済み、そのためレスポンス時間が短くなる。また、検索により前記受信したマルチメディアデータに関連する目的情報に対する複数の候補が特定された場合、決定手段は、複数の候補に関連する属性データの中で、ばらつきの大きなものを前記有効な属性データとして決定するようにすると、要求する属性データを決定するまでの処理に時間を要するが、利用者は決定された属性データを入力すれば直ちに目的情報を得られる可能性が高くなるため、全体としてのレスポンス時間が短くなる。」
したがって、引用文献3には、以下の技術(以下、「引用文献3記載技術」)が記載されていると認められる。
「 利用者が使用する利用者端末と、マルチメディアデータ、該マルチメディアデータとその対象物に関する複数の属性データ、及び前記対象物に関する目的情報が互いに関連付けられて格納されている情報検索データベースと、ネットワークを介して前記利用者端末から受信したマルチメディアデータに関連する目的情報を、前記情報検索データベースから検索する情報検索サーバと、を備える情報検索システムであって(【0019】)、
前記情報検索サーバは(【0019】)、
前記検索により前記受信したマルチメディアデータに関連する目的情報が1つに特定できなかった場合に、前記複数の属性データから前記目的情報を特定するために有効な属性データを決定する決定手段と(【0019】)、
前記決定手段によって決定された属性データの入力を前記利用者端末に要求する要求手段と、を含み(【0019】)、
決定手段は、検索により前記受信したマルチメディアデータに関連する目的情報に対する複数の候補が特定された場合、複数の候補に関連する属性データの中で、ばらつきの大きなものを前記有効な属性データとして決定する(【0024】)」技術
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 「構内交換機に収容される複数の電話機のいずれかからの発信を制御する発信制御装置」について
引用発明の「自動電話応答装置」は、自動で電話応答する装置であるから、本願発明の「電話機」「からの発信を制御」する「発信制御装置」とは、「電話」に関する「装置」である点で共通するといえる。
2 「前記複数の電話機を備える電話システムのユーザー全員について、当該ユーザーの電話番号と、当該ユーザーの属性を特定する3以上の属性値とを対応付けて電話帳データとして記憶する、電話帳データ記憶手段」について
引用発明では、「すずき」をキー情報として「社員データベース」を参照し、候補者を絞り込むために「部署名等の情報」が入力されているから、引用発明の「社員データベース」は、少なくとも社員の氏名と「部署名」の情報を記憶していると認められる。
社員の氏名や「部署名」は、社員の特徴・性質を示す属性といえるものであるから、引用発明の「社員データベース」に記憶される社員の氏名や「部署名」に関する個々の情報は属性値といえる。
引用発明では、「従業者B」が「“すずきさん”」に電話をかけようとすることからして、「従業者B」を含む社員が2以上の電話機からなる電話システムを利用していることは明らかであって、社員は電話システムのユーザーともいうことができ、また、「社員データベース」が全社員分の情報を記憶することは技術常識であることにも鑑みれば、引用発明の「社員データベース」は、複数の電話機を備える電話システムのユーザー全員についての情報を記憶しているといえる。
そして、本願発明の「電話帳データ」は、検索可能に記憶された「属性値」というデータの集合であるという点でデータベースといえるものであって、「電話帳データ」は「3以上」の「属性値」を記憶するのに対し、引用発明の「社員データベース」は、「属性値」である少なくとも社員の氏名と「部署名」の情報を記憶しているから、本願発明と引用発明とは、「複数の電話機を備える電話システムのユーザー全員について」、「当該ユーザーの属性を特定する」少なくとも2つの「属性値」がデータベースに記憶される点で共通するといえる。
3 「発信元からの音声に含まれる発信先を示す第1の属性値を取得する第1の属性値取得手段」について
引用発明における「従業者B」は「発呼者」、すなわち電話を発信する側であり、「“すずきさん”」で示される対話相手は電話の相手先であるから、それぞれ本願発明の「発信元」、「発信先」に相当する。
引用発明は、「音声認識技術」を利用する「自動電話応答装置」であり、「候補者が多数の場合には、さらに絞り込むために部署名等の情報を音声データとして入力することになる」ことからして、「“すずきさん”」も電話機から音声データとして入力され、音声認識技術を利用して音声データから対話相手を示す「すずき」という氏名の情報、すなわち「属性値」を取得しているものと認められる。
してみると、本願発明と引用発明とは、「発信元からの音声に含まれる発信先を示す第1の属性値を取得する第1の属性値取得手段」を備える点で共通するといえる。
4 「前記第1の属性値取得手段により取得された第1の属性値に基づいて前記電話帳データを検索した結果、複数のユーザーが対応する場合に、当該複数のユーザーについて前記第1の属性値以外の属性値であって複数のユーザー間で互いに異なる第2の属性値を抽出し、当該第2の属性値を要求する音声応答を前記発信元に送信する、応答情報送信手段」について
引用発明における応答「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」のうち、「すずきは256人おりますが」は、「“すずきさん”」から取得した「すずき」をキー情報として「社員データベース」を検索した結果、該当する社員(候補者)が256人存在したことを示し、「どちらのすずきでしょうか。」は、該当する256人の社員からさらに絞り込むための、「すずき」以外の対話相手についての情報を「従業者B」に要求する「応答」であって、「応答を返す」ことは、電話をかけてきた「従業者B」に「応答」を送信することといえる。
してみると、本願発明と引用発明とは「前記第1の属性値取得手段により取得された第1の属性値に基づいて」前記データベースを「検索した結果、複数のユーザーが対応する場合に、当該複数のユーザーについて前記第1の属性値以外の」「第2の属性値を要求する」「応答」を「前記発信元に送信する応答情報送信手段」を備える点で共通するといえる。
5 「前記音声応答に対応して、前記発信元から受信した音声に含まれる前記第2の属性値を取得する第2の属性値取得手段」について
引用発明では、「従業者B」から「音声データ」として入力された対話相手の「部署名等の情報」を取得するから、本願発明と引用発明とは、前記「応答」に対応して、「前記発信元から受信した音声に含まれる前記第2の属性値を取得する第2の属性値取得手段」を備える点で共通するといえる。
6 「前記第1の属性値取得手段及び前記第2の属性値取得手段により取得された前記第1および第2の属性値に基づいて、前記発信元からの通話を転送する発信処理制御手段」について
引用発明では、取得した「部署名等の情報」を用いて256人の候補者から絞り込みを行うことは明らかであり、この候補者の絞り込みは、最初に取得した「すずき」と「部署名等の情報」に基づく処理といえる。
そして、本願発明の「第1及び第2の属性値に基づいて、発信元からの通話を転送する発信処理制御」も、「第1及び第2の属性値に基づ」く処理といえるから、本願発明と引用発明は、「前記第1の属性値取得手段及び前記第2の属性値取得手段により取得された前記第1及び第2の属性値に基づいて」、処理を行う手段を備える点で共通するといえる。
7 上記1~6で対比した事項を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「電話に関する装置であって、
複数の電話機を備える電話システムのユーザー全員について、当該ユーザーの属性を特定する少なくとも2つの属性値がデータベースに記憶され、
発信元からの音声に含まれる発信先を示す第1の属性値を取得する第1の属性値取得手段と、
前記第1の属性値取得手段により取得された第1の属性値に基づいて前記データベースを検索した結果、複数のユーザーが対応する場合に、当該複数のユーザーについて前記第1の属性値以外の第2の属性値を要求する応答を前記発信元に送信する応答情報送信手段と、
前記応答に対応して、前記発信元から受信した音声に含まれる前記第2の属性値を取得する第2の属性値取得手段と、
前記第1の属性値取得手段及び前記第2の属性値取得手段により取得された前記第1及び第2の属性値に基づいて、処理を行う手段と、
を備える装置。」
<相違点>
(相違点1)
「電話に関する装置」について、本願発明は、「構内交換機に収容される複数の電話機のいずれかからの発信を制御する発信制御装置」であるのに対し、引用発明の「自動電話応答装置」は、構内交換機に収容される複数の電話機のいずれかからの発信を制御するものか明らかでない点。
(相違点2)
相違点1に付随して、「取得された第1及び第2の属性値に基づ」く処理として、本願発明は、「発信元からの通話を転送する発信処理制御」を行うのに対し、引用発明では、候補者を絞り込んだ後の処理が明らかでない点。
(相違点3)
「属性値がデータベースに記憶され」ることについて、本願発明は「電話帳データ」として、ユーザーの属性を特定する「属性値」を「ユーザーの電話番号」と対応付けて、「発信制御装置」に記憶するものであるのに対し、引用発明の「社員データベース」は、社員の情報を社員の電話番号と対応付けて記憶するのか明らかではなく、また、自動電話応答装置に記憶されるのか明らかでない点。
(相違点4)
本願発明の「電話帳データ」は、ユーザーの属性を特定する「3以上」の「属性値」を記憶するのに対し、引用発明の「社員データベース」が、社員の氏名と「部署名」以外の情報を記憶することの明示がない点。
(相違点5)
本願発明における「応答」は「音声応答」であるのに対し、引用発明における「応答」は音声応答であるのか明らかでない点。
(相違点6)
第1の属性値に基づいて検索した結果、複数のユーザーが対応し、第2の属性値を要求するにあたり、本願発明は、「当該複数のユーザーについて前記第1の属性値以外の属性値であって複数のユーザー間で互いに異なる」ものを「抽出」しているのに対し、引用発明では、係る抽出をすることは特定されていない点。
第6 判断
1 相違点についての判断
事案に鑑み、はじめに、相違点1~3についてまとめて検討し、次に、相違点4、相違点5及び相違点6について検討する。
(1)相違点1、2及び3について
ア 従業員や部署が多い企業等において、従業員間の情報伝達のために、構内交換機と該構内交換機に収容される複数の電話機からなる電話システムを用いることは常套手段であるところ、「社員データベース」に「すずき」に対応する社員が256人も存在すること等に鑑みれば、引用発明が利用する電話システムは、構内交換機と「構内交換機に収容される複数の電話機」からなる電話システムであると解するのが自然である。また、仮に、そのように解するのが自然であるとは言えないとしても、電話システムを、構内交換機と「構内交換機に収容される複数の電話機」からなる電話システムとすることは、単なる設計事項である。
イ 引用文献1の【0055】にも記載されているように、自動電話応答装置を電話の転送サービスに用いることは、本願出願時における周知技術であって、引用発明に周知技術を採用し、引用発明の「自動電話応答装置」を転送サービスに用いることで、氏名や部署名等の情報から絞り込んだ対話相手に、発呼者から発信された通話を転送するように発信制御を行う構成にすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。また、その場合の「自動電話応答装置」を「発信制御装置」と称することは任意である。
そして、引用発明を転送サービスに用いるにあたり、自動電話応答装置が、転送先である対話相手の電話番号を取得する必要があることは明白であるところ、社員データベースに各社員の氏名等と連絡先の内線番号等の電話番号を対応付けて記憶することが周知慣用の事項であることにも鑑みれば、引用発明における「社員データベース」を、社員の氏名等の情報と上記電話番号とを対応付けたものとすることは、当業者が当然になし得た設計事項である。そして、当該「社員データベース」を「自動電話応答装置」内に記憶するか、サーバー等の他の装置に記憶された「社員データベース」にアクセスする方式とするかは、当業者が適宜選択すべき事項である。
ウ 上記ア及びイのとおり、引用発明を相違点1、2及び3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点4について
本願の出願前に頒布された特開2002-196963号公報(以下、「周知文献1」という。)には、特に【0005】を参照すると、「社員DBシステム12」に蓄積される「各社員の個人情報を内容とする社員レコード」には、「氏名コード、氏名、組織コード、役職、口座情報、メールアドレス、電話番号といったデータ」が格納されることが記載されている。
また、本願出願前に頒布された特開2003-46650号公報(以下、「周知文献2」という。)には、特に【0018】を参照すると、企業では、「社員番号、所属、職級、勤務地、直通電話番号、職域、e-mailアドレスなど」を、社員情報として社員に公開するための「データベース」が作成され、企業別社員情報DB170にはこのような各企業により既に作成された「データベース」が利用されることが記載され、また、【0026】を参照すると、異なる企業の「企業別社員情報DB170」の二つの例として、以下の【図2】(a)(b)が示されている。
「【図2】
[図:0001391572000003.jpg]
」
【図2】(a)(b)の記載によれば、【0027】、【0028】を参照すると、「企業別社員情報DB170」には、「社員番号」、「名前」、「所属部」、「所属課」、「職級」、「電話番号」などが格納されている。そして、「企業別社員情報DB170」は、各企業により既に作成された「データベース」が利用されるから、各企業が作成した「データベース」には、「社員番号」、「名前」、「所属部」、「所属課」、「職級」、「電話番号」などが格納されているといえる。
そして、上記周知文献1及び2によれば、社員情報を格納するデータベースに、社員の氏名、所属、役職、電話番号などの情報が格納されることは、本願出願時の周知技術といえる。
さらに、引用発明は、「すずき」をキー情報として「社員データベース」を検索した結果、256人の「すずき」が該当し、その256人の「すずき」をさらに絞り込むために「部署名等」の情報を入力するものであり、このことは、引用発明の「社員データベース」には「氏名」、「部署名」以外の情報も格納されていることを示唆するものといえる。
以上を踏まえると、引用発明の「社員データベース」には、「氏名」、「部署名」の情報に加え、例えば、「役職」といった社員に関する別の情報も格納されていると解するのが妥当である。
そうすると、引用発明2の「社員データベース」は「3以上」の「属性値」を記憶するといえるから、相違点4は、実質的な相違点ではない。
(3)相違点5について
発呼者への応答を音声で返す自動電話応答装置は周知慣用のものであるから、引用発明の「自動電話応答装置」も、「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答を音声で返しているものと解するのが自然である。
したがって、相違点5は、実質的な相違点ではない。
(4)相違点6について
ア 引用文献2記載技術は、「サーバ2は、通信端末から受信した会話データ中に含まれるキーワードに基づいて、サーバ2に一又は複数の人物の個人情報が記録された記録部から個人情報を検索し、上記キーワードを含む情報が記録されている人物の候補者を抽出し、抽出した対話相手の候補者の個人情報を参照して、個人情報のばらつき度合いが大きい属性の情報を、候補者を絞り込むために必要な絞り込み情報に特定し、ばらつき度合いは、個人情報の属性ごとに、属性に関する情報の種類を、個人情報を比較する人数で除した値であり、候補者を絞り込むために必要な絞り込み情報を通信端末1に出力する」技術である。
引用文献2記載技術において、サーバ2が、候補者を絞り込むために必要な絞り込み情報(ばらつき度合いが大きい属性の情報)を通信端末1に出力するのは、候補者を絞り込むために、ばらつき度合いが大きい属性の情報を端末装置に要求することといえる。
また、引用文献2の【0068】における「ユーザはどのような会話をすれば対話相手を特定することができるのかを把握することができ、会話を長く続けなくとも対話相手を特定する情報を入手することができる。」との記載を参酌すると、上記引用文献2記載技術は、複数の候補を効率よく絞り込むための技術といえる。
イ 引用文献3記載技術は、「利用者が使用する利用者端末と、マルチメディアデータ、該マルチメディアデータとその対象物に関する複数の属性データ、及び前記対象物に関する目的情報が互いに関連付けられて格納されている情報検索データベースと、ネットワークを介して前記利用者端末から受信したマルチメディアデータに関連する目的情報を、前記情報検索データベースから検索する情報検索サーバと、を備える情報検索システムであって、前記情報検索サーバは、前記検索により前記受信したマルチメディアデータに関連する目的情報が1つに特定できなかった場合に、前記複数の属性データから前記目的情報を特定するために有効な属性データを決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された属性データの入力を前記利用者端末に要求する要求手段と、を含み、決定手段は、検索により前記受信したマルチメディアデータに関連する目的情報に対する複数の候補が特定された場合、複数の候補に関連する属性データの中で、ばらつきの大きなものを前記有効な属性データとして決定する」技術である。
そして、上記引用文献3記載技術は、【0025】を参照すると、「決定された属性データを入力すれば直ちに目的情報を得られる可能性が高くなるため、全体としてのレスポンス時間が短くなる」という効果を奏するものであるから、上記引用文献3記載技術は、複数の候補を効率よく絞り込むための技術といえる。
ウ 上記アの引用文献2記載技術、上記イの引用文献3記載技術が示すとおり、「複数の候補を効率よく絞り込むために、検索により複数の候補が特定された場合、当該複数の候補の属性値のうち、ばらつきが大きい属性値を特定し、候補の絞り込みのために要求する」技術は、本願出願時における周知技術であるといえる。
エ そして、候補を効率よく絞り込むという課題は、検索技術分野における周知の課題であるところ、引用発明は、候補者が多数の場合の絞り込みを行うものであるから、当該周知の課題を当然に内包しているといえる。
したがって、引用発明において、当該周知の課題を解決すべく、上記ウで示した周知技術を採用し、当該複数の候補者の属性値のうち、ばらつきの大きい属性値を特定(抽出)して発呼者に要求する構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、その際、ばらつきが最大である、複数の候補者で相互に異なる属性値を用いることは、当業者が当然に採用し得た事項に過ぎない。
2 請求人の主張について
請求人は、令和4年7月7日に提出した意見書において、概ね以下の主張をしている。
(1)主張1
審判官殿は、拒絶理由通知中の(相違点4)(当審注:本審決の相違点6に対応)を認定する際に、引用発明はどのように第2の属性値を「抽出」しているのか不明であると認定しておられます。しかし、引用発明は、以下に説明しますように、第2の属性値を「抽出」するものではないと思われます。
引用文献1の段落0003を参照すると、従業員の名前と所属(例:部署名)をデータベースに登録しておりますので、データベースが2つの属性値を含むことが記載されています。この場合、名前(例:すずき)を音声から取得し、通話相手を特定できなかった場合、取得すべき2つ目の属性値は所属に決まってしまいます。実際に、引用発明では、「どちらのすずきでしょうか」と所属を確認するための応答を行っています。つまり、引用発明では、第2の属性値を「抽出」する(複数の属性値の中から選ぶ)余地がありません。会社などの組織では所属と名前という2つの属性の組合せで個人を特定することがよく行われていることを考慮すると、引用発明は、最初に名前を取得し、必要であれば、次に所属を取得するというように構成されていると思われます。
…(中略)…
しかし、引用文献1には、複数の属性値の中から第2の属性値を選択することは記載されていません。データベースが所属と名前という2つの属性値を記憶する場合、上述の通り、第2の属性値を「抽出」するように構成することはできません。(意見書第1頁下から3行目~第2頁第15行)
(2)主張2
言い換えると、引用発明には「通話の発信先を効率的に絞りこむ」という課題が存在せず、候補を効率的に絞り込む技術(例:引用文献2、引用文献3)を適用する動機付けがありません。したがって、引用文献1と、引用文献2や引用文献3を組み合わせることは困難です。引用文献1の技術分野(電話)と引用文献2、引用文献3の技術分野(グラスディスプレイ、マルチメディアデータの検索)が異なっていることを考慮すると、引用文献1と、引用文献2や3とを組み合わせることはさらに困難です。(意見書第2頁第16行~第2頁第22頁)。
ア 主張1について
(ア)請求人の主張1は、引用発明の社員データベースは、名前と所属(部署名)という2つの属性値を含むものであるから、引用発明は、第2の属性値を「抽出」し得ないものであることを主張しているものと解される。
(イ)しかしながら、上記「1 相違点についての判断 (2)相違点4について」で示したとおり、引用発明は、「すずき」をキー情報として「社員データベース」を検索した結果、256人の「すずき」が該当し、その256人の「すずき」をさらに絞り込むために「部署名等」の情報を入力するものであり、このことは、引用発明の「社員データベース」には「氏名」、「部署名」以外の情報も格納されていることを示唆するものである。
(ウ)加えて、引用発明の「「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答」の「どちら」という語について、「広辞苑 第六版 DVD-ROM版」には、次のとおり掲載されている。
どち-ら【何方】
《代》
(1)定められない方向を指す語。不定・疑問を表す。
▽口語では「どっち」よりも丁寧な言い方。「-へ行かれますか」
(2)定められない場所・人・事・物。
▽多く、二つの中から一つを選ぶ時に使う。「どれ」を丁寧に表現する場合にも使う。狂言、布施無経ふせないきょう「-をぞ非時にすればようござるに」。「-様」「-がお好きですか」「-でも結構です」
引用発明の「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答の「どちら」が、上記(2)の意味で用いられていることは明らかであり、「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」は、「すずき」の部署を確認しているのではなく、256の「すずき」のうちの一人の「すずき」についての情報を従業者Bに要求しているとものと解され、上記応答の後の「従業者Bは、候補者が多数の場合には、さらに絞り込むために部署名等の情報を音声データとして入力することになる。」の「部署名等」との事項とも整合するものである。
仮に、請求人が主張するように、引用発明の「社員データベース」が名前と所属の2つの属性しか格納しないものであるとすると、「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答に対し、部署名以外の情報(例えば、役職)が従業者Bから入力された場合に、候補者の絞り込み(検索)ができないことは明らかであるから、「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答ではなく、「すずきは256人おりますが、どちらの部署のすずきでしょうか。」等というように、部署名を要求していることが従業者Bに伝わる応答とするはずである。
つまり、引用発明において、「すずきは256人おりますが、どちらのすずきでしょうか。」という応答を返していることは、むしろ、引用発明の「社員データベース」に、「氏名」、「部署名」以外の情報が格納されていることを示唆するものといえる。
(エ)そして、上記「1 相違点についての判断 (2)相違点4について」で示したとおり、社員情報を格納するデータベースに、社員の氏名、所属、役職、電話番号などの情報が格納されることが、本願出願時の周知技術であったことにも鑑みれば、引用発明の「社員データベース」には、氏名、所属以外の情報(属性値)も含まれていると解するのが妥当であり、「社員データベース」には氏名、所属の2つの属性値のみが含まれることを前提とした請求人の主張1は採用することができない。
そして、上記「1 相違点についての判断 (6)相違点(6)について」で示したとおり、引用発明に、候補を効率よく絞り込むための検索技術分野の周知技術を採用し、「第2の属性値」を「抽出」する構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。
なお、当審拒絶理由通知の「(相違点4)「第2の属性値」として、・・・引用発明は、どのように抽出しているのか不明である点。」としている点が、引用発明が「第2の属性値」を「抽出」していることを認定したものでないことは、当審拒絶理由通知の「(2)対比 (エ)」の記載や、一致点での「…(略)…前記第1の属性値取得手段により取得された第1の属性値に基づいて前記データベースを検索した結果、複数のユーザーが対応する場合に、当該複数のユーザーについて前記第1の属性値以外の第2の属性値を要求する応答を前記発信元に送信する応答情報送信手段と、…(略)…」の記載から明らかである。
イ 主張2について
請求人の主張2は、引用発明の「社員データベース」に氏名、所属の2つの属性値のみ含まれるという主張1に付随するものであって、引用発明には「通話の発信先を効率的に絞りこむ」という課題が存在しないから、候補を効率的に絞り込む技術を適用する動機付けがないというものである。
しかしながら、主張1を採用し得ないことは、上記アに示したとおりである。
そして、引用発明が、請求人の主張する「通話の発信先を効率的に絞りこむ」という課題を明示するものでないとしても、当該課題を内包することが明白であることは、上記「1 相違点についての判断 (4)相違点6について ウ」で示したとおりであるから、引用文献2及び3で示される候補を効率よく絞り込むための検索技術分野における周知技術を適用する動機付けは、存在するといえる。
また、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
第7 むすび
よって、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-013465