2021-011289
組織間文書情報共有システム
- 審判番号
- 2021-011289
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-190588外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月25日
- 審決日
- 2022年01月24日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社医療情報技術研究所
- 【請求人代理人】大野 浩司
- 分類
- P18 .113-WY (G16H) / P18 .121-WY (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
本願は、令和2年11月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年6月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2013-65216号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審より令和3年10月27日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 理由1(新規性)
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 理由2(進歩性)
本願請求項1-5、7-10に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2002-366656号公報
2.特開2002-99561号公報
3.特開2015-114896号公報
4.特開2010-286881号公報
第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和3年12月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は、次のとおりである。
「【請求項1】必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有において、汎用的な送受信書式を定義する送受信書式定義手段、送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段、受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段を備え、前記送受信書式定義手段は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの定義であり、前記送受信書式において、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段を有し、前記記述項目複数代入手段において、各々の記述項目に、当該記述項目が記録されている文書が作成された日時記録を同時に代入する日時付き記述項目複数代入手段を有し、前記日時付き記述項目複数代入手段において、代入された各々の日時付き記述項目の内容を、受信側マップに基づき指定された受信側文書カテゴリーにおいて、日時記録ごとに文書を作成し、指定された受信側記述項目に各々の代入された記述項目内容を記録する日時付き記述項目複数記録手段を有することを特徴とする組織間文書情報共有システム。」
なお、本願発明2-7は、本願発明1を減縮した発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載事項と引用発明
折りたたみ中(クリックで表示)
当審拒絶理由で引用した引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審で付与した。)
「【請求項1】医療機関のカルテデータを別の医療機関に電送する際に、カルテデータを正確に、効率よく、過不足なく電送するためのXMLフォーマットとDTD、および、PC上でのカルテ情報表示装置。」
「【請求項2】医療機関に電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータを別の医療機関に電送する際に 患者の情報を正確に、効率よく、過不足ない形式で表現するために、カルテデータに含まれる各種情報の種類に合わせて階層構造で表現されたXMLフォーマットとDTD、および、PCでのカルテ情報表示装置。」
「【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、電子カルテ内の患者データを交換するフォーマットおよび装置に係る。【0002】【従来の技術】カルテ情報は、処置処方、主訴、観察、所見に加え、手書きの絵、X線や超音波エコーなどの画像、各種検査の結果、などの形態の異なるデータがお互いに関係付けられて含まれている。データの種類が多様でかつ関係付けが複雑であるため、特定の電子カルテ装置の中ではカルテ情報を表現できていたとしても、その装置外で普遍性のあるデータ形式を使って表現することができなかった。このため、特定の電子カルテ装置で作成されたカルテ情報を、他機種の電子カルテ装置に移管することができず、また、当該データが作成された電子カルテ装置を保有していない医療機関においてカルテ情報を電子的に参照することができなかった。続きを表示(全18行)【0003】【発明が解決しようとする課題】別の医療機関の患者カルテデータをそのままの形で再現するデータ表現が存在しなかったため、電子カルテを導入していてもあくまで紙のカルテの代用にすぎず、過去の患者情報の再利用がしにくいという課題があった。【0004】【課題を解決するための手段】一人の患者の一来院の患者データ(病歴、診察履歴、薬歴等)を最小単位にして、指定した患者の指定来院日の情報をXML形式でテキストファイル形式で電子カルテ外部に出力する。これを電子メール等でこの患者情報を参照したい医療機関に送信し、受け取った医療機関はこのテキストファイルを電子カルテに取り込むことにより患者カルテデータを電子カルテ上で参照することができる。【0005】【発明の実施の形態】以下、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。【0006】図1は、本発明が適用される電子カルテ参照装置の構成図である。本実施形態の電子カルテ参照装置1は、患者データ格納部110と、外部データ入出力機能部120と、外部にXMLフォーマットとDTDを備えた交換用患者データ格納部130と、診察結果入出力機能部140とを備えている。このような本実施形態の電子カルテ参照装置1は、例えば、米国マイクロソフト社製のOS(Operating System)である「Winsows2000(製品名)」を搭載するパーソナル・コンピュータ装置において、アプリケーション・プログラムによって実現し、本発明の方法及び装置を適用することができる。【0007】図2は交換用患者データ格納部に格納されている患者データの相関関係を示したモデル図である。【0008】患者データ230の下には以下の情報が格納される。1.頭書き情報2402.住所情報2503.保険情報2604.経過情報2705.処方情報280」
「【0011】図4は図2の頭書き情報240の詳細である。患者についての基本情報が格納されている。」
「[図:0001387131000001.jpg]」(図4)
「【0026】本発明を適用したXMLファイルのフォーマットの構造を定義したDTD(Document Type Definition)は以下のようになる。(中略)<!-- 頭書き情報 --><!ELEMENT ATAMAGAKI (PID,KAN,NAM?,INI?,BTH?,PRL?,SEX?,PNO,REN?,SHK?,BUN?,MIS?,VIS?,KIN?,SEC?,LNG?,PTA?)>(中略)【0027】ここで、本発明を適用した電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータを交換する方法を説明する。図24はそれぞれの医療機関には本発明を適用した電子カルテ参照装置とその交換方法を示したものである。【0028】まず、医療機関Aの患者情報格納部161に格納されている患者Cのデータを外部データ入出力機能162を利用して交換用患者データ交換部153に保存する。医療機関は交換用患者データ交換部163に保存されているXML化された患者CのデータをE-MAILなどで医療機関Bに送信する。患者のプライバシーを考慮するとこのデータは暗号化されていることが望ましい。【0029】医療機関Bでは受信したデータは交換用患者データ交換部164に保存され、外部データ入出力機能165を通じて医療機関Bの患者情報格納部166に格納される。この時点で患者Cのデータは医療機関Bにもともと格納されていた他の患者情報と同じに扱うことができ、診察結果入出力機能部167を通して医療機関Bの医師が編集、参照することが可能になる。」
「[図:0001387131000002.jpg]」(図24)
段落【0027】より、図24は、「電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータを交換する方法」を説明するものであるから、図24に記載された医療機関Aと、医療機関Bと、両者を接続する通信路とを合わせて、「医療機関AとBの間である患者Cのデータを交換するシステム」と捉えることができる。
また、段落【0006】の「患者データ格納部」と段落【0028】、【0029】、図24の「患者情報格納部」は、同じものであることが明らかであるから、表記を「患者データ格納部」に統一する。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータ、すなわち、電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータを交換するシステム(請求項2、【0027】、図24)であって、
電子カルテ参照装置は、患者データ格納部と、外部データ入出力機能部と、外部にXMLフォーマットとDTDを備えた交換用患者データ格納部と、診察結果入出力機能部とを備え(【0006】)、
医療機関Aは、患者データ格納部に格納されている患者Cのデータを外部データ入出力機能を利用して交換用患者データ交換部に保存し、交換用患者データ交換部に保存されているXML化された患者CのデータをE-MAILなどで医療機関Bに送信し(【0028】)、
医療機関Bは、受信したデータを交換用患者データ交換部に保存し、外部データ入出力機能を通じて医療機関Bの患者データ格納部に格納するものであり、この時点で、患者Cのデータは医療機関Bにもともと格納されていた他の患者情報と同じに扱うことができ(【0029】)、
XMLフォーマットとDTDは、患者の情報を正確に、効率よく、過不足ない形式で表現するために、カルテデータに含まれる各種情報の種類に合わせて階層構造で表現されたものであり(請求項2)、
前記DTDは、XMLファイルのフォーマットの構造を定義したものであり(【0026】)、
交換用患者データ格納部に格納されている患者データの下には、頭書き情報、住所情報、保険情報、経過情報、処方情報が格納され(【0007】、【0008】)、
例えば、頭書き情報である、患者についての基本情報は、次のXMLフォーマットを有する、
[図:0001387131000003.jpg]
(【0011】、図4)
システム。
2 引用文献2の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
当審拒絶理由で引用した引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0045】すなわち、フォーム変換部113は、まず、マッピングルール記憶部112から該当するマッピングルールを読み込む(ステップS201)。次いで、フォーム変換部113は、マッピングルールに定義された変換元データの項目名を元に、変換元データからそれに属するデータ項目を検索し、その値を変換元データから取得する(ステップS202)。【0046】例えば、図2(d)のXMLデータが変換元の場合には、マッピングルールに定義された変換元データの項目名に対応するタグが検索され、そのタグに対応する位置のデータ値が取得されることになる。また図2(a)の帳票データが変換元の場合には、マッピングルールに定義された変換元データの項目名に対応する入力フィールドが検索され、その入力フィールド内のデータ値が取得される。【0047】そして、フォーム変換部113は、マッピングルールに定義された変換先の項目名に従い、変換元から取得したデータ値をマッピングルールで指定される変換先の該当する項目名の位置にセットする(ステップS203)。ステップS202,203の処理は、マッピングルール内の全定義分だけ繰り返し実行される。これにより、変換元データの内容を変換先データの形式に変換して出力することが可能となる。」
3 引用文献3について
当審拒絶理由で引用した引用文献3には、XML形式で文書データが記録されている文書データファイルの例として次の事項が記載されている。
「[図:0001387131000004.jpg]」(図9)
4 引用文献4について
当審拒絶理由で引用した引用文献4には、異なる医療機関の間で異なる表現が採用された医療情報を交換可能とする(【0010】)ための次の事項が記載されている。
「第1の医療システムは、入力した医療情報について、第1の変換表に従って、該第1の医療システムで通用する前記医療情報の表現である第1の表現を中間情報に変換して第2の医療システムに出力し(請求項1、2)、第2の医療システムは、前記中間情報について、第2の変換表に従って、該第2の医療システムで通用する前記医療情報の表現である第2の表現に変換すること(請求項3)。」
さらに、引用文献4(第2の実施形態(【0048】-【0057】、図6))には、医療機関が他の医療機関にオンラインデータベースを経由して医療情報を送信することが記載されている。
5 引用文献Aの記載事項と引用発明A
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定の理由で引用された引用文献Aには、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【0001】本発明は複数の異なる施設内で作成、編集、参照される電子的な文書群を、共通のソフトウェアで一元的に管理し、サーバー資源の最小化、ソフトウェアの開発保守費用の低減、さらには必要に応じて施設間の情報共有を円滑化する文書管理サーバーシステムに関する。」
「【0031】一個の文書管理サーバーシステムで、性格の異なる複数の施設の文書を管理するためには、(1)夫々の施設で用いられる文書カテゴリーのリストおよび各文書カテゴリーの項目建ての管理手段、(2)各々の施設で用いられる様々なカテゴリーの文書とその項目を処理するための文書処理手段、(3)作成された種々の文書を記録・参照する文書データ記録手段、(4)アクセスしてきたユーザーを認証し、許可された範囲でのみ文書閲覧や作成・編集を可能とする、ユーザー認証、ユーザー毎の文書アクセス権限管理手段、の各手段群が必要である。(略)」
「【0035】次に、様々な項目構成を持つ種々の文書カテゴリーの文書データを記録する文書データ記録手段につき説明する。ここでは医療機関における患者基本情報と薬剤処方という2種類の文書カテゴリーの文書データを例に取る。図5は、夫々の文書データを、リレーショナルデータベースの形式で表現したものである。リレーショナルデータベースでは、個々の項目は固定長データとして記録され、それによる高速処理が可能となっている。その反面、項目建てが異なれば、同一の表(リレーション)として扱うことは困難であるので、別々のリレーションとなる。【0036】図6、図7は、図5の各々のリレーションのデータを、XMLおよびJSONと呼ばれる形式で表現したものである。XML形式およびJSON形式では、データはテキストファイルとなり、ファイルの長さは異なってくる。項目建ては、XML形式では、<>で示されるタグで表現される。JSON形式では、"タグ名":"データ"の形式で表現される。部門ごとのデータ項目建てが異なっていても、一つの文書の全データ項目は、一つのXML形式ないしJSON形式のデータファイルに変換できる。たとえ、項目建てや記載形式が異なっていても、XMLファイル化ないしJSONファイル化してしまえば、全て一つの可変長テキストファイルに過ぎない。従って、リレーションの一つの枡目に、XML文書データないしJSON文書データの記録場所を指し示す固定長のアドレスを格納すればよい。」
「【0044】図12は、図9の文書処理手段部分を詳細化したものである。文書処理手段では、前記文書データ記録手段(データファイル)から文書データを読み出す、読み出した文書データを読みやすい形に表示する、文書データを編集して書き込む、或いは新規文書を作成したり、不要に文書をなった削除したりする等などの処理を行う。図3、図4に示したように、多種多様な文書カテゴリーと項目構成があるため、複数の施設毎の文書カテゴリー定義手段、前記文書カテゴリー毎の項目定義手段を備えている。文書カテゴリー毎に、前述のように端末PCと文書データの送受信を行うウェブサービスのソケットを設けている。また、後述するように、認証されたユーザー毎のアクセスコントロールテーブル(Access Control Table)を用いた、ユーザーごとのアクセス管理手段を備えている。サーバーにはクライアントからのアクセスを識別し、ユーザー毎の文書アクセス管理手段で、どの文書カテゴリーにどこまでアクセス可能かを識別する。アクセスしてきたクライアントに応じてアクセス可能なデータファイルに対して、当該文書カテゴリーの構成項目情報を提供し、当該文書に対する文書処理手段(プログラム)を適用したデータ処理を行う機能が備えられている。【0045】端末PCから文書データ送受信の要求があった場合、先ずIDやパスワード入力、或いは生体認証などでユーザーの認証を行う。次いで、当該ユーザーのアクセスコントロールテーブルを検索し、当該する患者および文書カテゴリーに対して、当該アクセス要求が許可されているかを確認する。もし許可されてなければ、その旨のエラーメッセージを送信し、以降の処理は行わない。当該文書カテゴリーの参照要求が許可されているならば、当該文書データを前記文書データ記録手段から読み出し、当該文書カテゴリー定義手段および文書カテゴリー毎の項目定義手段の定義情報を併用して、文書の表示体裁を整えた後、端末PCに送信する。書き込み要求が許可されているならば、必要に応じ当該文書カテゴリー定義手段および文書カテゴリー毎の項目定義手段の定義情報を併用して受信した文書データの整合性を確認した後、文書データ記録手段に記録する。」
上記記載からみて、引用文献Aには、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されているといえる。
(引用発明A)
複数の異なる施設内で作成、編集、参照される電子的な文書群を、共通のソフトウェアで一元的に管理し、必要に応じて施設間の情報共有を円滑化する文書管理サーバーシステム(【0001】)において、
(1)夫々の施設で用いられる文書カテゴリーのリストおよび各文書カテゴリーの項目建ての管理手段、(2)各々の施設で用いられる様々なカテゴリーの文書とその項目を処理するための文書処理手段、(3)作成された種々の文書を記録・参照する文書データ記録手段、(4)アクセスしてきたユーザーを認証し、許可された範囲でのみ文書閲覧や作成・編集を可能とする、ユーザー認証、ユーザー毎の文書アクセス権限管理手段を有し(【0031】)、
文書データ記録手段は、様々な項目構成を持つ種々の文書カテゴリーの文書データを記録するものであり(【0035】)、データは、XMLおよびJSONと呼ばれる形式で表現したものであり、項目建ては、XML形式では、<>で示されるタグで表現され、JSON形式では、"タグ名":"データ"の形式で表現され、部門ごとのデータ項目建てが異なっていても、一つの文書の全データ項目は、一つのXML形式ないしJSON形式のデータファイルに変換でき(【0036】)、
文書処理手段では、多種多様な文書カテゴリーと項目構成があるため、複数の施設毎の文書カテゴリー定義手段、前記文書カテゴリー毎の項目定義手段を備えており(【0044】)、
端末PCから文書データ送受信の要求があった場合、当該文書データを前記文書データ記録手段から読み出し、当該文書カテゴリー定義手段および文書カテゴリー毎の項目定義手段の定義情報を併用して、文書の表示体裁を整えた後、端末PCに送信し、また、当該文書カテゴリー定義手段および文書カテゴリー毎の項目定義手段の定義情報を併用して受信した文書データの整合性を確認した後、文書データ記録手段に記録する(【0045】)
文書管理サーバーシステム。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のことがいえる。
ア 引用発明の「電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータ」は、本願発明1の「電子カルテ」に相当する。そして、引用発明の「医療機関A」及び「医療機関B」の「患者カルテデータ(患者Cのデータ)」は、それぞれ本願発明1の「送信側電子カルテ」及び「受信側電子カルテ」に相当する。
そして、一般に、カルテ情報は、複数の文書からなることが技術常識であるところ、引用発明の医療機関Aと医療機関Bの患者カルテデータ(カルテ情報)は、引用文献1の段落【0002】のとおり、「カルテ情報は、処置処方、主訴、観察、所見に加え、手書きの絵、X線や超音波エコーなどの画像、各種検査の結果、などの形態の異なるデータがお互いに関係付けられて含まれて」おり、「データの種類が多様でかつ関係付けが複雑であるため、特定の電子カルテ装置の中ではカルテ情報を表現できていたとしても、その装置外で普遍性のあるデータ形式を使って表現することができず、このため、特定の電子カルテ装置で作成されたカルテ情報を、他機種の電子カルテ装置に移管することができず、また、当該データが作成された電子カルテ装置を保有していない医療機関においてカルテ情報を電子的に参照することができな」い状況にある、すなわち、引用発明の医療機関Aと医療機関Bの患者カルテデータは、文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の患者カルテデータといえる。
そうすると、引用発明の「電子カルテ参照装置を持つ二つの医療機関AとBの間である患者Cのデータ、すなわち、電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータを交換するシステム」は、本願発明1と同様の「必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有」をするものといえる。
イ 引用発明の「XMLフォーマット」は本願発明1の「汎用的な送受信書式」に相当し、引用発明の「交換用データ格納部」が備える「DTD」は、「XMLファイルのフォーマットの構造を定義した」ものである点で、本願発明1の「送受信書式定義手段」に相当する。
ウ 引用発明の医療機関Aが患者カルテデータを、「カルテデータに含まれる各種情報の種類に合わせて階層構造で表現された」「XMLフォーマット」で交換用患者データ格納部に格納することは、「患者カルテデータ」の各記述項目から、「頭書き情報、住所情報、保険情報、経過情報、処方情報」という情報の種類に対応するデータを抽出して、XMLフォーマットに代入することといえ、さらに、医療機関Aは、「交換用患者データ交換部に保存されているXML化された患者Cのデータ(患者カルテデータ)をE-MAILなどで医療機関Bに送信する」ものであるから、引用発明の医療機関Aは、本願発明1の「送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段」という構成を備えるといえる。
エ 引用発明の医療機関Bは、「受信したデータを交換用患者データ交換部に保存し、外部データ入出力機能を通じて医療機関Bの患者データ格納部に格納する」ものであるところ、医療機関Bの患者データ格納部には、患者カルテデータは、医療機関B用の電子カルテ形態で保存されているから、受信したデータ(患者カルテデータ)を医療機関B用の電子カルテ形態で患者データ格納部に格納することは、受信した患者カルテデータの各情報を、医療機関Bの電子カルテに対応して患者データ格納部に格納するものといえ、これにより患者Cのデータは医療機関Bにもともと格納されていた他の患者情報と同じに扱うことができる。そうすると、医療機関Bは、本願発明1の「受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段」という構成を備えるといえる。
オ 引用発明の患者カルテデータのうちの頭書き情報は、DTDで(引用文献1の段落【0026】)で定義され、図4のような記述項目のタグのリストとしてXMLフォーマットに過不足なく変換されるものであり、医療機関Aが医療機関Bに送信する情報に過不足がないことは、上記タグのリストは共有に必要な記述項目を示すものといえる。そうすると、引用発明は、本願発明1の「前記送受信書式定義手段は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの定義である」という構成を備えるといえる。
カ 引用発明の「システム」は、上記アないしオからみて、本願発明1と同様の「組織間文書情報共有システム」であるといえる。
上記アないしカより、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有において、
汎用的な送受信書式を定義する送受信書式定義手段、
送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段、
受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段を備え、
前記送受信書式定義手段は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの定義である
組織間文書情報共有システム。
<相違点>
本願発明1は、「前記送受信書式において、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段」、「前記記述項目複数代入手段において、各々の記述項目に、当該記述項目が記録されている文書が作成された日時記録を同時に代入する日時付き記述項目複数代入手段」及び「前記日時付き記述項目複数代入手段において、代入された各々の日時付き記述項目の内容を、受信側マップに基づき指定された受信側文書カテゴリーにおいて、日時記録ごとに文書を作成し、指定された受信側記述項目に各々の代入された記述項目内容を記録する日時付き記述項目複数記録手段」を有するのに対し、引用発明はこれらの手段を有しない点。
(2)判断
ア 新規性について
本願発明1と引用発明とは、上記相違点を有するから、両発明は同一ではない。
イ 進歩性について
上記相違点について検討する。
引用文献2には、上記第5の2のとおり、変換元データの内容を変換先データの形式に変換して出力するために、マッピングルールに定義された変換先の項目名に従い、変換元から取得したデータ値をマッピングルールで指定される変換先の該当する項目名の位置にセットすることが記載されている。
また、引用文献3には、上記第5の3のとおり、XML形式で文書データが記録されている文書ファイルとして、「病名」のタグの内容に、病名情報と日付情報という複数の内容を含む例が記載されている。
そうすると、引用発明において、引用文献3のように、「XML化された患者Cのデータ」が、1つのタグの内容に、日付情報を含む複数の内容の代入を許容する構成を備えることや、引用文献2のように、医療機関Bにおいて、受信したXMLフォーマットのデータを、マッピングルールに基づいて、患者データ格納部に格納される電子カルテ形態で保存されている患者カルテデータに変換する構成を備えることまでは、当業者が想到し得るものといえるが、本願発明1は、さらに、「前記日時付き記述項目複数代入手段において、代入された各々の日時付き記述項目の内容を、受信側マップに基づき指定された受信側文書カテゴリーにおいて、日時記録ごとに文書を作成し、指定された受信側記述項目に各々の代入された記述項目内容を記録する日時付き記述項目複数記録手段」を備えるものであって、特に、「日時付き記述項目複数記録手段」の、「代入された各々の日時付き記述項目の内容を、」「日時記録ごとに文書を作成し、指定された受信側記述項目に各々の代入された記述項目内容を記録する」機能は、引用文献2、3及び引用文献4には記載されておらず、当業者にとって自明なものでもない。
そして、本願発明1は、前記機能を有する「日時付き記述項目複数記録手段」を備えることで、送信側電子カルテの時系列文書群を、受信側の電子カルテで再現できる」(本願明細書の段落【0038】)という効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明と引用文献2、3及び4の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2-7について
本願発明2-7は、本願発明1を減縮した発明であって、上記相違点に係る「前記日時付き記述項目複数代入手段において、代入された各々の日時付き記述項目の内容を、受信側マップに基づき指定された受信側文書カテゴリーにおいて、日時記録ごとに文書を作成し、指定された受信側記述項目に各々の代入された記述項目内容を記録する日時付き記述項目複数記録手段」という構成を備えるから、本願発明1に対する理由(上記1(2)イ)と同様の理由により、引用発明と引用文献2、3及び4の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和3年12月11日にされた手続補正により、補正後の請求項1-7は、「前記日時付き記述項目複数代入手段において、代入された各々の日時付き記述項目の内容を、受信側マップに基づき指定された受信側文書カテゴリーにおいて、日時記録ごとに文書を作成し、指定された受信側記述項目に各々の代入された記述項目内容を記録する日時付き記述項目複数記録手段」という技術的事項を有するものとなった。
そして、原査定の理由で引用された引用文献Aには、上記第5の5のとおりの引用発明Aが記載されているところ、引用発明Aは、上記技術的事項を備えておらず、当該技術的事項は本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1と、該本願発明1を減縮した発明である本願発明2-7は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-011289