審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-008491

文具

審判番号
2021-008491
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-043047外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年06月28日
審決日
2022年09月27日
公報発行日
2022年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B65H) / P18 .57 -Z (B65H) / P18 .575-Z (B65H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017- 43047「文具」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日出願公開、特開2018-144973〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は,平成29年3月7日に特許出願としたものであって,令和2年12月22日付けで拒絶理由が通知され,これに対して,令和3年3月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年4月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し,同年6月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和3年6月28日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和3年6月28日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲を全文にわたって補正をするとともに,合わせて明細書の記載について補正をするものであるところ,特許請求の範囲について,下記(1)に示す本件補正前の(すなわち,令和3年3月4日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至9を,下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至9へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。) (1)本件補正前の特許請求の範囲 「 【請求項1】 文具本体を吸盤により被吸着面に吸着させることができる文具であって, 前記被吸着面と前記吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるための連通路と,この連通路を開閉する開閉手段とを備え, 前記文具本体が,前記吸盤を保持する基体と,この基体に対して一定のストロークだけ進退可能な可動体とを備えたものであり,前記可動体を引き上げることにより外気が前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入される文具。 【請求項2】 前記文具本体が,巻装状態のテープを保持するテープ保持手段と,このテープ保持手段側から順次引き出されるテープの先端側を切り離すためのテープ切断手段とを有するテープカッター本体である請求項1記載の文具。 【請求項3】 前記開閉手段が,弁座と,この弁座に密着して前記連通路を遮断する閉止位置から前記弁座から離れて前記連通路を開通させる開き位置までの間で進退可能な吸盤弁とを備えたものであり,前記可動体が一定の方向に操作された場合に前記吸盤弁が閉止位置から開き位置に応動するように構成されている請求項1又は2記載の文具。 【請求項4】 前記弁座と,この弁座に接離する前記吸盤弁の弁体とを,ともに同一素材による弾性体により構成している請求項3記載の文具。 【請求項5】 文具本体を吸盤により被吸着面に吸着させることができる文具であって, 前記被吸着面と前記吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるための連通路と,この連通路を開閉する開閉手段とを備え, 前記文具本体が,前記吸盤を保持する基体と,この基体に対して一定のストロークだけ進退可能な可動体とを備えたものであり, 前記開閉手段が,弁座と,この弁座に密着して前記連通路を遮断する閉止位置から前記弁座から離れて前記連通路を開通させる開き位置までの間で進退可能な吸盤弁とを備えたものであり,前記可動体が一定の方向に操作された場合に前記吸盤弁が閉止位置から開き位置に応動するように構成されており, 前記可動体と前記吸盤弁との間に,前記可動体の初期微動を吸収して前記吸盤弁に伝達されるのを防止する遊び部分が設けられている文具。 【請求項6】 前記文具本体が,巻装状態のテープを保持するテープ保持手段と,このテープ保持手段側から順次引き出されるテープの先端側を切り離すためのテープ切断手段とを有するテープカッター本体であり,前記テープカッター本体が,底面側に前記吸盤を保持した前記基体と,この基体に対して上下方向に進退可能に設けられた前記可動体とを備えてなり,前記基体に,テープ切断手段を構成する刃物と,前記巻装状態のテープを回転可能に支持する前記テープ保持手段たるテープ保持軸とが設けられている請求項3,4又は5記載の文具。 【請求項7】 前記文具本体の底面に前記吸盤を保持したものであって, 前記文具本体の底面における前記テープ切断手段を配した側の端縁と前記吸盤の軸心との間の距離が,前記吸盤の半径よりも大きく設定されている請求項2又は6記載の文具。 【請求項8】 前記文具本体が,前記吸盤に対して当該吸盤の軸心周りに旋回し得るように構成されている請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の文具。 【請求項9】 前記吸盤を水平な被吸着面に吸着させて使用される文具であって, 前記文具本体が,その重心を前記吸盤の軸心上に位置させるための重心設定用の重りを備えたものである請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の文具。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「 【請求項1】 文具本体を吸盤により被吸着面に吸着させることができる文具であって, 前記被吸着面と前記吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるための連通路と,この連通路を開閉する開閉手段とを備え, 前記文具本体が,前記吸盤を保持する基体と,この基体に対して一定のストロークだけ進退可能な可動体とを備えたものであり,前記可動体を引き上げることにより吸盤が被吸着面に吸着する状態で外気が前記連通路を通して前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入される文具。 【請求項2】 前記文具本体が,巻装状態のテープを保持するテープ保持手段と,このテープ保持手段側から順次引き出されるテープの先端側を切り離すためのテープ切断手段とを有するテープカッター本体である請求項1記載の文具。 【請求項3】 前記開閉手段が,弁座と,この弁座に密着して前記連通路を遮断する閉止位置から前記弁座から離れて前記連通路を開通させる開き位置までの間で進退可能な吸盤弁とを備えたものであり,前記可動体が一定の方向に操作された場合に前記吸盤弁が閉止位置から開き位置に応動するように構成されている請求項1又は2記載の文具。 【請求項4】 前記弁座と,この弁座に接離する前記吸盤弁の弁体とを,ともに同一素材による弾性体により構成している請求項3記載の文具。 【請求項5】 文具本体を吸盤により被吸着面に吸着させることができる文具であって, 前記被吸着面と前記吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるための連通路と,この連通路を開閉する開閉手段とを備え, 前記文具本体が,前記吸盤を保持する基体と,この基体に対して一定のストロークだけ進退可能な可動体とを備えたものであり, 前記開閉手段が,弁座と,この弁座に密着して前記連通路を遮断する閉止位置から前記弁座から離れて前記連通路を開通させる開き位置までの間で進退可能な吸盤弁とを備えたものであり,前記可動体が一定の方向に操作された場合に吸盤が被吸着面に吸着する状態で前記吸盤弁が閉止位置から開き位置に応動し外気が前記連通路を通して前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入されるように構成されており, 前記可動体と前記吸盤弁との間に,前記可動体の初期微動を吸収して前記吸盤弁に伝達されるのを防止する遊び部分が設けられている文具。 【請求項6】 前記文具本体が,巻装状態のテープを保持するテープ保持手段と,このテープ保持手段側から順次引き出されるテープの先端側を切り離すためのテープ切断手段とを有するテープカッター本体であり,前記テープカッター本体が,底面側に前記吸盤を保持した前記基体と,この基体に対して上下方向に進退可能に設けられた前記可動体とを備えてなり,前記基体に,テープ切断手段を構成する刃物と,前記巻装状態のテープを回転可能に支持する前記テープ保持手段たるテープ保持軸とが設けられている請求項3,4又は5記載の文具。 【請求項7】 前記文具本体の底面に前記吸盤を保持したものであって, 前記文具本体の底面における前記テープ切断手段を配した側の端縁と前記吸盤の軸心との間の距離が,前記吸盤の半径よりも大きく設定されている請求項2又は6記載の文具。 【請求項8】 前記文具本体が,前記吸盤に対して当該吸盤の軸心周りに旋回し得るように構成されている請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の文具。 【請求項9】 前記吸盤を水平な被吸着面に吸着させて使用される文具であって, 前記文具本体が,その重心を前記吸盤の軸心上に位置させるための重心設定用の重りを備えたものである請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の文具。」 2 補正の適否について (1)本件補正事項 本件補正は,本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項3の記載を本件補正後の請求項1を引用する請求項3の記載のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。 本件補正事項は,本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項3の「文具」の発明特定事項である「可動体を引き上げることにより」「吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入される」「外気」について,「吸盤が被吸着面に吸着する状態で」「前記連通路を通して」と特定するものである。 (2)補正目的について 特許法第17条の2第5項の規定によれば,拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は,請求項の削除(第1号),特許請求の範囲の減縮(第2号),誤記の訂正(第3号),明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。 そこで,本件補正事項について,以下,検討する。 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項3には,「前記被吸着面と前記吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるための連通路と,この連通路を開閉する開閉手段とを備え,」と記載されている。 上記記載からすると,「被吸着面と吸盤との間に形成される空間」は「連通路」を通して外気に連通する,すなわち,吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入される外気は“連通路を通して”導入されるものと解することができる。 また,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項3には,「前記文具本体が,前記吸盤を保持する基体と,この基体に対して一定のストロークだけ進退可能な可動体とを備えたものであり,前記可動体を引き上げることにより外気が前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入される」と記載されている。 上記記載からすると,「可動体を引き上げる」ことにより「外気が吸盤と被吸着面との間の空間に導入される」ことになるのであるから,「可動体を引き上げる」までは,「外気が吸盤と被吸着面との間の空間に導入」されていない状態であって,「可動体を引き上げる」ことによって,「吸盤と被吸着面との間の空間」に外気が導入されるものと解することができる。 そうすると,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項3においても,「可動体を引き上げる」までは,「外気が吸盤と被吸着面との間の空間に導入」されていない状態,すなわち,“吸盤が被吸着面に吸着する状態”であると理解でき,また,「可動体を引き上げる」ことによって,“連通路を通して”「吸盤と被吸着面との間の空間」に外気が導入されるものと理解することができる。 そうすると,本件補正事項である「前記可動体を引き上げることにより吸盤が被吸着面に吸着する状態で外気が前記連通路を通して前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入される」は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項3に既に記載されていたものと認められる。 そうすると,本件補正事項は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項3に記載された発明特定事項をさらに限定するものとはいえないのであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 また,本件補正事項が,同項第1,3,4の各号に掲げられた,いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。 してみると,本件補正事項は,同項第1号ないし4号に掲げられたいずれを目的とするものにも該当しない。 よって,本件補正事項を含む本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではない。 3 むすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 4 独立特許要件について 上記のとおり,本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項3に係る補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないが,念のため,本件補正後の請求項1の記載を引用する請求項3に係る補正が限定的減縮であると仮定して,本件補正後の請求項1の記載を引用する請求項3に係る発明(令和3年6月28日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される,上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の請求項3に係る発明(以下,「本願補正発明」という。))が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について,以下に検討する。 (1)本願補正発明 本件補正発明は,上記「1 (2)」に示した本件補正後の請求項3に記載された事項により特定されるものと認められる。 (2)引用例 ア 引用例1 本願の出願前に頒布された公開公報である特開平10-29757号公報(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は,ロール状の粘着テープを引き出す時に,テープカッター本体が移動しないように底部に吸盤を設けたテープカッターに関するものである。」 (イ)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 イ.重たいため,小さな子供には扱いづらく,特に片手で持った場合,落下させケガをする危険があった。 ロ.また,本体底部に吸盤を設けたのみでは,テープカッターを異なる場所に設置したい時に吸盤を吸着面より取り外すのに時間を要す。 本発明は,これらの欠点を解決するために発明されたものである。」 (ウ)「【0007】 【実施例】以下,実施例を示す図面に基づいて本発明を説明する。図1は本発明のテープカッターの斜視図を示し,このテープカッターは,本体(1)と,支持具(6)と,当該支持具(6)の上部に設けた持ちやすくするための取っ手(2)を備える。そして,本体(1)の底面には,図7に示すように,吸盤(3)と,吸盤(3)を取り付けるための底蓋(16)とを備える。また,本体内部には,図3および図4に示すように,連結板(4)を備える。 【0008】本体(1)は,図1と図2に示すように粘着テープ(5)を切断するための切刃(10)と,凹部(9)と,溝(8)で構成する。また,支持具(6)は,下向き開口状のコの字形をしており,当該支持具(6)の内寸法は本体(1)の長さよりわずかに長い。さらに,その下方両端部付近にはボルト(7)がねじ込まれている。 【0009】ところで,本体(1)には粘着テープ(5)の巻きだし方向の前側面と後側面に垂直方向に長い溝(8)が設けられており,上述のボルト(7)の先端を溝(8)に挿入することで,本体(1)より支持具(6)が外れることがない。 【0010】次に,図3に示すように,吸盤(3)は段付部(3a)が底蓋(16)の穴(19)に挿入されており,底蓋(16)は本体(1)の下部内側に挿入接着されている。このとき,吸盤(3)の吸着面は本体(1)の下部面よりわずかに飛び出るように底蓋の取り付け位置を設定する。これにより,支持具(6)の上部に手を下向きに軽く押し付けることで吸盤(3)が,設置面に吸着する。 【0011】さらに,吸盤(3)の外周上部に形成した突起部(11)は,連結板(4)とピン(14)で連結する。連結板(4)は,その中央部に長穴部(15)を形成させる。なお,図3と図6に示すように,本体(1)の下部内面には,連結板(4)の外形寸法より大きい空間(17)が形成されており,連結板(4)の後述の上下動を妨げない。 【0012】前述のボルト(7)は,図6に示すように,溝(8)を通して長穴部(15)に挿入する。なお,図3に示すように,支持具(6)を持ち上げないとき溝(8)の最上部高さは,長穴部(15)の最上部高さより高く,また溝(8)と長穴部(15)の最下部高さは,ボルト(7)の上下動範囲の最下部高さより低い。さらに,溝(8)と長穴部(15)の水平方向の幅寸法は,ボルト(7)の外径寸法よりわずかに大きい。 【0013】このように構成したため,支持具(6)を持ち上げたときボルト(7)は,最初に溝(8)の最上部でなく長穴部(15)の最上部に接触し,連結板(4)を上方に動かす。これにより吸盤(3)の突起部(11)も上方に動く。すなわち,吸盤(3)に通気部(18)が設けられ,容易に吸着を解除でき,軽い力でテープカッターを持ち上げることができる。」 (エ)上記(ウ)の「連結板(4)を上方に動かす。これにより吸盤(3)の突起部(11)も上方に動く。すなわち,吸盤(3)に通気部(18)が設けられ,容易に吸着を解除でき,軽い力でテープカッターを持ち上げることができる」との記載から,引用文献1のテープカッターは,本体(1)が備える連結板(4)を上方に動かすことにより,連結板(4)とピン(14)で連結し,吸盤(3)の外周上部に形成した突起部(11)が上方に動き,吸盤(3)に通気部(18)が設けられ,容易に設置面との吸着を解除する機能を備えたものと認められる。 そうすると,上記記載事項(ア)乃至(ウ)及び認定事項(エ)より,引用例1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「本体(1)と,支持具(6)と,当該支持具(6)の上部に設けた持ちやすくするための取っ手(2)を備え,本体(1)の底面には,吸盤(3)と,吸盤(3)を取り付けるための底蓋(16)とを備えるテープカッターであって, 本体(1)が備える連結板(4)を上方に動かすことにより,連結板(4)とピン(14)で連結し,吸盤(3)の外周上部に形成した突起部(11)が上方に動き,吸盤(3)に通気部(18)が設けられ,容易に設置面との吸着を解除する機能を備えた,テープカッター。」 イ 引用例2 本願の出願前に頒布された公開公報である特開2000-104724号公報(以下「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,平面壁などに吸着させて,様々な物品を吊り下げたり,保持することの出来る吸着盤に関する。」 (イ)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら,このような従来の吸着盤は,取り外すときに吸盤部1aの端部を変形させるなどして,密閉空間5内に空気を入れなければならない。このため,吸盤部1aの端部を引っ張り上げるなど,取り外しがやや面倒である。 【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的は,従来の吸着盤に若干の追加工を施すだけで,取り付け,取り外しを簡単に行うことの出来る吸着盤を提供することにある。」 (ウ)「【0020】次に,幾つかの付勢手段を用いて,平板を通気孔に押圧する種々の実施の形態を説明する。図4は,本発明の第2の実施の形態の付勢手段の構成部品図であり,図5(a)は,図4の付勢手段を用いた吸着盤を平面壁に吸着させる状態,(b)は,平面壁から取り外す状態を示す断面図である。付勢手段11は,筒状支持枠13とこの中に収納される圧縮コイルバネ15とを有しており,閉塞手段は腕部17a,17bを備えた板部材17によって構成されている。支持枠13には,円周の対称位置の2カ所に開口窓13aが設けられている。この開口窓13aの大きさは,板部材17を支持枠13の深さ方向に若干移動させることの出来る程度に開口されている。そして,コイルバネ15を支持枠13の奥部に入れた後,板部材17の腕部17a,17bがそれぞれの開口窓13aより突き出るようにして,支持枠13に挿入する。これによって,付勢手段11は,コイルバネ15によって,板部材17が,開口窓13aの許容範囲内で,図の下方に,すなわち深さ方向へ押圧されるように構成される。 【0021】このような付勢手段11を用いた吸着盤の動作について図5(a),(b)を用いて説明する。同図(a)のように,付勢手段11を吸着盤1の摘み1bのくびれ部1dに係止すると,コイルバネ15が板部材17を押圧して吸着盤1の通気孔1eが塞がれるので,従来の吸着盤と同様な方法で吸着盤1を平面壁3に吸着させることが出来る。吸着盤1を取り外すときは,同図(b)のように,支持枠13の開口窓より突出された板部材17の腕部17a,17bを持って図の上方へ引けば,通気孔1eが開口され密閉空間5内に空気が入り,吸着盤1を取り外すことが出来る。」 (エ)上記(ウ)より,吸着盤1の摘み1bのくびれ部1dに係止する付勢手段11は,筒状支持枠13とこの中に収納される圧縮コイルバネ15と,腕部17a,17bを備えた板部材17からなる閉塞手段によって構成され,支持枠13には,円周の対称位置の2カ所に開口窓13aが設けられ,この開口窓13aの大きさは,板部材17を支持枠13の深さ方向に若干移動させることの出来る程度に開口され,コイルバネ15を支持枠13の奥部に入れた後,板部材17の腕部17a,17bがそれぞれの開口窓13aより突き出るようにして,支持枠13に挿入され,コイルバネ15によって,板部材17が,開口窓13aの許容範囲内で,深さ方向へ押圧されるように構成される,付勢手段11が記載されているものと認められる。 そうすると,上記記載事項(ア)乃至(ウ)及び認定事項(エ)より,引用例2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「物品を保持することの出来る吸着盤1であって, 吸着盤1の摘み1bのくびれ部1dには,付勢手段11が係止され, 付勢手段11は,筒状支持枠13とこの中に収納される圧縮コイルバネ15と,腕部17a,17bを備えた板部材17からなる閉塞手段によって構成され,支持枠13には,円周の対称位置の2カ所に開口窓13aが設けられ,この開口窓13aの大きさは,板部材17を支持枠13の深さ方向に若干移動させることの出来る程度に開口され,コイルバネ15を支持枠13の奥部に入れた後,板部材17の腕部17a,17bがそれぞれの開口窓13aより突き出るようにして,支持枠13に挿入され,コイルバネ15によって,板部材17が,開口窓13aの許容範囲内で,深さ方向へ押圧されるように構成され, 平面壁3に吸着した吸着盤1を取り外すときは,支持枠13の開口窓より突出された板部材17の腕部17a,17bを持って上方へ引けば,通気孔1eが開口され密閉空間5内に空気が入り,吸着盤1を取り外すことが出来る, 吸着盤1。」 (3)当審の判断 ア 本件補正発明と引用発明1との対比 (ア)後者の「本体(1)」,「吸盤(3)」,「設置面」,「テープカッター」及び「通気部(18)」は,それぞれ,前者の「文具本体」,「吸盤」,「被吸着面」,「文具」及び「連通路」に相当する。 (イ)後者の「テープカッター」は,吸盤(3)により設置面と吸着するものであるから,前者の「文具」と後者の「テープカッター」とは,「文具本体を吸盤により被吸着面に吸着させることができる文具」との概念で一致する。 (ウ)後者の「テープカッター」は,「通気部(18)」が設けられることにより,設置面との吸着を解除する機能が奏されるものであることから,前者の「文具」における「連通路」と,後者の「テープカッター」における「通気部(18)」とは,「被吸着面と吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるため」のものとの概念で一致する。 (エ)後者の「底蓋(16)」は,「本体(1)」の底面であって,吸盤(3)が取り付けられるものであるから,前者の「基体」と,後者の底蓋(16)とは,吸盤を保持する機能を備える点で一致する。 イ 本件補正発明と引用発明1の一致点と相違点について 上記アの対比を踏まえると,本件補正発明と引用発明1とは,つぎの一致点で一致し,相違点において相違する。 [一致点] 「文具本体を吸盤により被吸着面に吸着させることができる文具であって, 前記被吸着面と前記吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるための連通路と,を備え,前記文具本体が,前記吸盤を保持する基体とを備えたものである文具。」 [相違点] 本件補正発明の「文具」が,「連通路を開閉する開閉手段」を備え,文具本体が,「この基体に対して一定のストロークだけ進退可能な可動体とを備えたものであり,前記可動体を引き上げることにより吸盤が被吸着面に吸着する状態で外気が前記連通路を通して前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入され」,「前記開閉手段が,弁座と,この弁座に密着して前記連通路を遮断する閉止位置から前記弁座から離れて前記連通路を開通させる開き位置までの間で進退可能な吸盤弁とを備えたものであり,前記可動体が一定の方向に操作された場合に前記吸盤弁が閉止位置から開き位置に応動する」ものであるのに対し,引用発明1の「テープカッター」は,上方に動かすことにより,吸盤(3)に通気部(18)を設ける「連結板(4)」を備える点。 ウ 上記相違点についての検討 (ア)引用発明2の「通気孔1e」,「板部材17」,「吸着盤1」,「平面壁3」,「空気」及び「密閉空間5」は,それぞれ,本件補正発明の「連通路」,「可動体」,「吸盤」,「被吸着面」,「外気」及び「吸盤と被吸着面との間の空間」に相当する。 (イ)引用発明2の「吸着盤1」は,板部材17の腕部17a,17bを持って上方へ引けば,通気孔1eが開口され密閉空間5内に空気が入るから,板部材17は,通気孔1eを開閉する機能を備えるといえるから,本件補正発明の「開閉手段」と引用手段2の「板部材17」とは,「連通路を開閉する」機能を備える点で一致する。 (ウ)引用発明2の「板部材17」は,開口窓13aの許容範囲内で移動するものであるから,本件補正発明の「可動体」と引用発明2の「板部材17」とは,「基体に対して一定のストロークだけ進退可能な」ものとの概念で一致する。 (エ)上記(イ)及び(ウ)の検討から,引用発明2の「板部材17」は,通気孔1eを開閉する機能を備えるのであるから,本件補正発明の「開閉手段」と引用手段2の「板部材17」とは,「弁座と,この弁座に密着して連通路を遮断する閉止位置から前記弁座から離れて前記連通路を開通させる開き位置までの間で進退可能な吸盤弁」を備える点で一致する。 (オ)引用発明2の「吸着盤1」は,板部材17の腕部17a,17bを持って上方へ引けば,通気孔1eが開口され密閉空間5内に空気が入るものであるところからすると,板部材17の腕部17a,17bを持って上方へ引くまでは,吸着盤1が平面壁3に吸着する状態であって,板部材17の腕部17a,17bを持って上方へ引くことによって,空気が通気孔1eを通して吸着盤1が平面壁3との間に導入されるものと認められる。 してみると,本件補正発明の「可動体」と引用発明2の「板部材17」とは,「引き上げることにより吸盤が被吸着面に吸着する状態で外気が連通路を通して前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入」する機能を備えるとともに,「可動体が一定の方向に操作された場合に吸盤弁が閉止位置から開き位置に応動する」機能を備える点で一致する。 (カ)そうすると,上記相違点に係る構成は,引用発明2に記載されているといえる。 (キ)ここで,引用発明1は,底部に吸盤を設けたテープカッターに関する技術分野に属し,引用発明2は,様々な物品を吊り下げたり,保持することの出来る吸着盤に関する技術分野に属し,いずれも,吸盤(吸着盤)に関する技術分野に属する点で共通する。 また,引用発明1は,テープカッターを異なる場所に設置したい時に吸盤を吸着面より取り外すのに時間を要することを課題とし,引用発明2は,取り付け,取り外しを簡単に行うことの出来る吸着盤を提供することを課題とし,両者は,取り外しを簡単に行うことの出来る吸盤(吸着盤)を提供することを課題とする点で共通する。 してみると,引用発明1に,引用発明2を適用する動機付けがあるといえる。 (ク)そうすると,引用発明2の吸着盤1及び吸着盤1の摘み1bのくびれ部1dに係止された付勢手段11を,引用発明1の吸盤(3)に替えて設けることにより,本件補正発明とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。 エ 小括 上記で検討したとおり,本件補正発明は,引用発明1に引用発明2を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)独立特許要件についての検討のまとめ 以上検討したように,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって,本件補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正前の請求項3に係る補正が限定的減縮であるとしても,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 5 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり,本件補正は,上記において検討したように,本件補正事項は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,仮に,同法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するとしても,本件補正発明は同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項3に係る発明は,令和3年3月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 文具本体を吸盤により被吸着面に吸着させることができる文具であって, 前記被吸着面と前記吸盤との間に形成される空間を外気に連通させるための連通路と,この連通路を開閉する開閉手段とを備え, 前記文具本体が,前記吸盤を保持する基体と,この基体に対して一定のストロークだけ進退可能な可動体とを備えたものであり,前記可動体を引き上げることにより外気が前記吸盤と前記被吸着面との間の空間に導入される文具。 【請求項3】 前記開閉手段が,弁座と,この弁座に密着して前記連通路を遮断する閉止位置から前記弁座から離れて前記連通路を開通させる開き位置までの間で進退可能な吸盤弁とを備えたものであり,前記可動体が一定の方向に操作された場合に前記吸盤弁が閉止位置から開き位置に応動するように構成されている請求項1又は2記載の文具。」(以下「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は,令和2年12月22日付けの拒絶理由通知書により通知された次に示すものを含むものである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 3 ・引用文献等 1-2 <引用文献等一覧> 1.特開平10-29757号公報 2.特開2000-104724号公報 3 引用例 令和2年12月22日付けの拒絶理由通知に引用された引用例,及び,その記載内容は上記「第2 4 (2)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 (1)対比 本願発明は,実質的に,本願補正発明の「吸盤が被吸着面に吸着する状態で」及び「前記連通路を通して」との限定を省くものである。 そうすると,本願発明と引用発明1とを対比すると,上記「第2 4 (3)イ」での検討を勘案すると,両者は,上記[相違点]で相違するのみである。 してみると,上記「第2 4 (3)ウ」における検討内容を踏まえれば,上記と同様の理由により,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-008491

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決90件(コクヨ株式会社)
  • 2025-004394拒絶査定不服審判 / 2026-05-11 / 原査定取消(特許/登録すべき)ブース、一対の間仕切り家具
    同じ当事者: コクヨ株式会社
  • 2024-019846拒絶査定不服審判 / 2026-05-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)リベット
    同じ当事者: コクヨ株式会社
  • 2024-016065拒絶査定不服審判 / 2025-10-28 / 請求不成立筆記具
    同じ当事者: コクヨ株式会社
  • 2023-003158拒絶査定不服審判 / 2025-08-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)ハイテーブル
    同じ当事者: コクヨ株式会社
  • 2024-009265拒絶査定不服審判 / 2025-07-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)テーブル
    同じ当事者: コクヨ株式会社
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2018-000407拒絶査定不服審判 / 2018-08-17 / 請求不成立光ファイバ巻取用ボビン、光ファイバ巻取方法、およびボビン巻き光ファイバ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-009355拒絶査定不服審判 / 2024-06-07 / 請求不成立媒体積載装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-020434拒絶査定不服審判 / 2024-03-26 / 請求不成立ローラー、分離装置、画像読取装置及び記録装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-011949拒絶査定不服審判 / 2023-07-11 / 請求不成立樹脂フィルムの繰出し方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2020-017367拒絶査定不服審判 / 2021-11-24 / 請求不成立印刷装置および印刷装置の制御方法
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)159件(121・B65H、575・B65H、57・B65H)
  • 2018-000407拒絶査定不服審判 / 2018-08-17 / 請求不成立光ファイバ巻取用ボビン、光ファイバ巻取方法、およびボビン巻き光ファイバ
    共通の審決分類: 121・B65H、575・B65H、57・B65H
  • 2024-000347拒絶査定不服審判 / 2024-12-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)フィルム矯正装置、デジタル印刷機、及びプラスチックフィルム印刷物の製造方法
    共通の審決分類: 121・B65H、57・B65H
  • 2023-006821拒絶査定不服審判 / 2024-10-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)二軸配向ポリエステルフィルムロール
    共通の審決分類: 121・B65H、57・B65H
  • 2023-009355拒絶査定不服審判 / 2024-06-07 / 請求不成立媒体積載装置
    共通の審決分類: 121・B65H、575・B65H
  • 2022-020434拒絶査定不服審判 / 2024-03-26 / 請求不成立ローラー、分離装置、画像読取装置及び記録装置
    共通の審決分類: 121・B65H、575・B65H

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存