特許拒絶査定不服審判
2024-016065
筆記具
- 審判番号
- 2024-016065
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-114452
- 請求日
- 2024年10月07日
- 審決日
- 2025年10月28日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コクヨ株式会社
- 【請求人代理人】大西 雅直
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 門 良成
- 審判官 殿川 雅也
- 分類
- P18 .121-WZ (B43K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-114452「筆記具」拒絶査定不服審判事件〔令和4年1月17日出願公開、特開2022-12550〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年7月1日の出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和6年 1月30日付け:拒絶理由通知書
同年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同月 9日付け:拒絶理由通知書
同年 6月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月24日付け:拒絶査定
同月30日 :原査定の謄本の送達
同年10月 7日 :審判請求書の提出
令和7年 4月 9日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」と
いう。)
同年 6月13日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和7年6月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されたものであるところ、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項2】
第1線幅で筆記する第1筆記機能と、前記第1線幅よりも幅が狭い第2線幅で筆記する第2筆記機能と、を備える筆記具であって、
前記第1筆記機能用の第1インクと前記第2筆記機能用の第2インクとが同系色であり、
前記第2インクの明度が、前記第1インクの明度よりも低く、
前記第2インクの彩度が、前記第1インクの彩度よりも低い、
ことを特徴とする、筆記具。」
なお、本願発明は、令和7年4月9日付けで通知した拒絶の理由の対象である、令和6年6月24日付けで提出された手続補正書に記載された請求項4に係る発明に対応する。
第3 当審における拒絶の理由
当審拒絶理由は、次の理由を含むものである。
(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:「香り付きマーカーで女子力上げながら勉強・仕事しちゃいましょっ」,[online],2015年5月14日,[2024年1月29日検索],
インターネット<URL:https://kakakumag.com/houseware/?id=8055>
引用文献2:「トーンの意味とパーソナルカラーフォーシーズンの関係&色の濃淡」,[online],2016年5月27日,[2025年3月21日検索],
インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20160625062935/http://iroirona.com:80/blog-tone/>(インターネット・アーカイブ ウェイバック・マシン(Internet Archive Wayback Machine)の保存日:2016年6月25日)(周知技術を示す文献)
第4 引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1記載事項
本願の出願前である2015年(平成27年)5月14日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「香り付きマーカーで女子力上げながら勉強・仕事しちゃいましょっ」,[online],2015年5月14日,[2024年1月29日検索],インターネット<URL:https://kakakumag.com/houseware/?id=8055>(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同じ。)。
ア 「
[図:0001430778000001.jpg]
」
イ 「筆者が今回購入したのは、「キラリーナ・ツイン(Kirarina・2win)香り付き」。ラインマーカー用と文字書き用の2種類のペン先と、同系色ながら濃淡の違う2色のカラーが1本になったツインマーカーです。書いた文字にラインを引いたり、ラインをフチどりしたりということが1本ですべて完結します。しかも香り付き♪」
ウ 「
[図:0001430778000002.jpg]
」
エ 「
[図:0001430778000003.jpg]
」
上記引用文献1記載事項から、次の技術事項を認定できる。
オ 上記ウの写真より、「軸筒の一方端にラインマーカー用ペン先を、他方端に文字書き用ペン先を備え」たツインマーカーを看取できる。
カ 上記アの説明書き及び上記イの記載から分かるように、「筆者」はピーチのマーカーを購入したことを踏まえると、上記エの写真より、淡いピーチ色のマーキングと「(チャン・ラックン)」等のように濃いピーチ色の文章が重ねて描かれているので、ツインマーカーが、「淡いピーチ色のマーキングと濃いピーチ色の文字の重ね書きに使用」されることが看取できる。
(2)引用発明
上記(1)アないしエの記載事項並びに上記(1)オ及びカの認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
ラインマーカー用と文字書き用の2種類のペン先と、同系色ながら濃淡の違う2色のカラーが1本になっており(イ)、
ラインマーカー用ペン先は4mmであり、文字書き用ペン先は0.5mmであり(ウ)、
軸筒の一方端にラインマーカー用ペン先を、他方端に文字書き用ペン先を備え(オ)、
淡いピーチのマーキングと濃いピーチの文字の重ね書きに使用される(カ)、
ツインマーカー(イ)。
2 引用文献2
(1)引用文献2記載事項
本願の出願前である2016年(平成28年)5月27日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「トーンの意味とパーソナルカラーフォーシーズンの関係&色の濃淡」,[online],2016年5月27日,[2025年3月21日検索],
インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20160625062935/http://iroirona.com:80/blog-tone/>(インターネット・アーカイブ ウェイバック・マシン(Internet Archive Wayback Machine)の保存日:2016年6月25日)(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「トーンとは?
明度と彩度の組み合わせをトーンといいます。・・・PCCS(色彩研究所の系統色名)では12種類のトーンに分けています。いわゆる純色と言われるものがトーンで言うとヴィヴィッド(v)です。純色(v)に白を混ぜていくほど明度は高くなり、彩度は低くなります(b→lt→p)。これを明清色といいます。逆に黒を混ぜていくほど明度は低くなり、彩度も低くなります(dp→dk→dkg)。これを暗清色といいます。」
イ 「色の濃淡とトーン
色の濃淡は明度・彩度の複合要素(トーン)が決めるというのが持論です。前記事「色の三属性とは?色相・明度・彩度と濃淡の違い」で、色の濃淡の認識は「白に近ければ淡く、遠ければ濃い」という説を書きました。一般的には明度の方を重視している気がしますが、明度と彩度では濃さの性質に違いがあります。明度目線での濃いは、「より暗い方が濃い」彩度目線での濃いは、「より鮮やかで発色が良い方が濃い」となります。濃いグレーと聞いてより黒い暗いグレーを想像する人は多いと思いますが、濃い赤と聞いてより黒に近い暗い赤を想像する人は多くないと思います。この様に明度だけ、彩度だけでは濃さを決めることはできません。白に近い(高明度・低彩度)ほど淡い(薄い)色と言えます。図で表現すると下図のようになります。」
ウ 「
[図:0001430778000004.jpg]
」
上記引用文献2記載事項から、次の技術事項を認定できる。
エ 上記イの「明度目線での濃いは、「より暗い方が濃い」彩度目線での濃いは、「より鮮やかで発色が良い方が濃い」となります。」との記載を踏まえると、上記ウに、高彩度かつ低明度の領域の「濃」から低彩度かつ高明度の領域の「淡」に向けて矢印が記載されていることから、「高彩度かつ低明度だと色が濃く、低彩度かつ高明度だと色が淡い傾向」があることが看取できる。
(2)引用文献2記載の一般常識
上記(1)アないしウの記載事項及び上記(1)エの認定事項から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2記載の一般常識」という。)が記載されている。
[引用文献2記載の一般常識]
明度目線では明度がより暗い方が色が濃く、彩度目線では彩度がより鮮やかで発色が良い方が色が濃く、高彩度かつ低明度だと色が濃く、低彩度かつ高明度だと色が淡い傾向があること。
第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「ツインマーカー」は、後述の相違点を除き本願発明の「筆記具」に相当する。
イ 引用発明の「ツインマーカー」は、ラインマーカー用のペン先が4mmであって、文字書き用のペン先が0.5mmであって、ラインマーカー用のペン先で書く線幅よりも、文字書き用のペン先で書く線幅の方が狭いので、引用発明の「『ラインマーカー用ペン先』で『マーキング』すること」及び「『文字書き用ペン先』で『文字』を書くこと」は、本願発明の「第1線幅で筆記する第1筆記機能」及び「第2線幅で筆記する第2筆記機能」に相当し、引用発明の「文字書き用ペン先」の線幅(「第2線幅」))は、「ラインマーカー用ペン先」の線幅(「第1線幅」)より狭い。
ウ 上記イを踏まえると、本願発明の「筆記具」と引用発明1の「ツインマーカー」は「第1線幅で筆記する第1筆記機能と、前記第1線幅よりも幅が狭い第2線幅で筆記する第2筆記機能と、を備える」「筆記具」である点で一致する。
エ 引用発明の「ツインマーカー」は、「同系色ながら濃淡の違う」「淡いピーチのマーキングと濃いピーチの文字の重ね書きに使用される」ので、そのラインマーカー用のペン先のインクと文字書き用のペン先のインクは同系色であるから、本願発明の「筆記具」と引用発明の「ツインマーカー」は、「前記第1筆記機能用の第1インクと前記第2筆記機能用の第2インクとが同系色」の「筆記具」である点で一致する。
(2)そうすると、本願発明と引用発明は、
[一致点]
「第1線幅で筆記する第1筆記機能と、前記第1線幅よりも幅が狭い第2線幅で筆記する第2筆記機能と、を備える筆記具であって、
前記第1筆記機能用の第1インクと前記第2筆記機能用の第2インクとが同系色である、
筆記具。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本願発明の「筆記具」は「前記第2インクの明度が、前記第1インクの明度よりも低く」、「前記第2インクの彩度が、前記第1インクの彩度よりも低い」のに対し、引用発明の「ツインマーカー」は、文字書き用ペン先とラインマーカー用ペン先の間で用いられるインクの色が同系色ながら濃淡の違う2色のカラーが1本になっているものの、各々のペン先のインクの彩度及び明度について明示されていない点。
2 判断
引用発明は、文字(第2線幅)を描くインクとラインマーカ(第1線幅)を描くインクの間で濃淡を変更する発明である。
そして、上記引用文献2記載の一般常識を踏まえれば、インクの濃淡の変化をつけるために明度及び彩度を変化させることは常識の範疇である。そうすると、文字書き用ペン先(第2線幅)のインクを濃いピーチにしてラインマーカー用ペン先(第1線幅)のインクを淡いピーチにした引用発明のツインマーカーにおいて、文字書き用ペン先のインクをラインマーカー用ペン先のインクに比して濃いピンクにするために、文字書き用のペン先のインクをラインマーカー用ペン先のインクに比して濃く感じる程度に明度をより暗く(低く)すると同時に彩度を低くすること、すなわち、文字書き用ペン先に対応するインクをラインマーカー用ペン先に対応するインクよりも明度を低くかつ彩度を低くすることによりペン先のインクの濃淡を変化させて文字書き用ペン先をラインマーカー用ペン先のインクに比して濃い色として相違点に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
3 小括
本願発明は、引用文献2記載の一般常識を踏まえれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第6 令和7年6月13日に提出された意見書について
1 審判請求人の主張
審判請求人は、令和7年6月13日に意見書を提出して、第2の発明(本願発明)について概略以下のように主張している。
[主張]
拒絶理由通知の「2 引用文献2(1)引用文献2記載事項エ」の欄の記載によれば、引用文献2の記載から、濃度を濃くするためには、彩度が高く明度が低い組み合わせが示唆され、濃度を淡くするためには、彩度が低く明度が高い組み合わせが示唆される。
すなわち、第2の発明(本願発明)では、第2インクの明度を低くすると濃度が高くなり、第2インクの彩度を低くすると濃度が低くなるものなので、第2の発明は、明度及び彩度を変化させると濃度が逆に振れるため、結果的に第2インク(ペン)が第1インク(マーカー)に対して濃淡いずれの方向に変化するかわからないものである。
つまり、第2の発明は、インクの濃淡の変化をつけるために明度及び彩度を変化させているものでないことは明らかだから、引用発明1に引用文献2の記載事項を適用する論理付けにおいて、引用文献1は主引例適格性を欠いており、引用文献2を適用しても本願発明に想到し得ないことは明白である(「(3)本願発明が特許されて然るべき理由」の「3-1」~「3-3」を参照)。
2 審判請求人の主張に対する検討
(1)上記引用文献2記載の一般常識から、明度がより暗い方が色が濃い傾向があるので、文字書き用ペン先をラインマーカー用ペン先のインクに比して濃いピンクにするために、文字書き用のペン先のインクをラインマーカー用ペン先のインクに比して濃く感じる程度に明度をより暗く(低く)すると同時に彩度を低くすることが当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないことは、上記第5の2で既述したとおりである。
(2)そして、審判請求人が上記1において主張するように、本願発明は、第2インクの明度を低くすると濃度が高くなり、第2インクの彩度を低くすると濃度が低くなるものなので、明度及び彩度を変化させると濃度が逆に振れるため、結果的に第2インク(ペン)が第1インク(マーカー)に対して濃淡いずれの方向に変化するか確定されていないものではある。
しかしながら、このことは、本願発明が、第2インク(ペン)が第1インク(マーカー)に対して濃い色になる変化をも包含していることになるから、相違点に係る構成は、上記引用文献2記載の一般常識を踏まえれば、上記第5の2で検討したインクを採用することにより当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、これを妨げる事情も認められない。よって、審判請求人が主張するように、引用文献1が主引例適格性を欠いているとみることはできない。
(3)したがって、審判請求人の上記1の主張は採用できない。
第7 むすび
上記のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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