特許拒絶査定不服審判
2021-008197
構造体をキャリアの主表面領域から剥離するためのデバイス及び方法
- 審判番号
- 2021-008197
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-130834
- 請求日
- 2021年06月22日
- 審決日
- 2022年01月05日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
- 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
- 審判長/審判官
- 審判長 辻本 泰隆
- 審判官 ▲吉▼澤 雅博
- 審判官 小田 浩
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-130834「構造体をキャリアの主表面領域から剥離するためのデバイス及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月13日出願公開,特開2020- 25090,請求項の数(14)〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2019年(令和 1年) 7月16日(パリ条約による優先権主張 2018年 7月18日 欧州特許庁)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年11月13日 :翻訳文の提出
令和 2年 9月10日付け:拒絶理由通知
令和 2年11月 6日 :意見書,手続補正書の提出
令和 3年 4月15日付け:拒絶査定
令和 3年 6月22日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 3年11月 8日 :上申書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和 3年 4月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1,4-10,12-14に係る発明は,以下の引用文献1-3に基いて,本願請求項2,3に係る発明は,以下の引用文献1-4に基いて,本願請求項11に係る発明は,以下の引用文献1-3,5に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2003-324142号公報
引用文献2 特開2009-088397号公報
引用文献3 特開2013-168616号公報
引用文献4 特開平11-045934号公報
引用文献5 特開2016-181613号公報
第3 本願発明
本願請求項1-14に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は,令和 2年11月 6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,10は,以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
構造体(110)をキャリア(120)の主表面領域から剥離するためのデバイス(100)であって,
前記構造体(110)に貼り合わせるためのテープ(130)と,
張力を保って前記テープ(130)を架け渡す第1の保持部(140)及び第2の保持部(142)であって,少なくとも前記第2の保持部(142)が,前記キャリア(120)の前記主表面領域に対して垂直方向のずれ(146)を有する持上げ位置(144)に移動可能である,第1の保持部(140)及び第2の保持部(142)と,
前記第1の保持部(140)と前記第2の保持部(142)との間に配置される偏向線(152)を提供し,前記持上げ位置(144)への前記第2の保持部(142)の移動に応答して前記テープ(130)を偏向させるための偏向要素(150)とを備え,
前記偏向要素(150)が,前記偏向線(152)を前記キャリア(120)に平行に移動させ,前記テープ(130)に貼り合わされた前記構造体(110)を前記キャリア(120)から剥離するために,前記キャリア(120)に平行に移動可能であるように配置される,
デバイス(100)。」
「 【請求項10】
構造体(110)をキャリア(120)の主表面領域から剥離するための方法(200)であって,
テープ(130)を前記構造体(110)に貼り合わせるステップ(210)と,
第1の保持部(140)と第2の保持部(142)との間に張力を保つようにして前記テープ(130)を架け渡すステップ(220)と,
前記第2の保持部(142)を,前記キャリア(120)の前記主表面領域に対して垂直方向のずれ(146)を有する持上げ位置(144)に移動させるステップ(230)と,
前記テープ(130)上で前記構造体(110)の第1の端部に向けて偏向要素(150)を設定するステップ(240)であって,前記第1の保持部(140)と前記第2の保持部(142)との間に配置される偏向線(152)を提供し,前記持上げ位置(144)への前記第2の保持部(142)の移動に応答して前記テープ(130)を偏向させるステップ(240)と,
前記偏向要素(150)を前記キャリア(120)に平行に前記構造体(110)の前記第1の端部から前記構造体(110)の第2の端部に移動させて,前記偏向線(152)を前記キャリア(120)に平行に移動させるステップ(250)であって,それによって,前記テープ(130)に貼り合わされた前記構造体(110)が前記キャリア(120)から剥離されるステップ(250)と,
を含む方法(200)。」
なお,本願発明2-9,14は本願発明1の,本願発明11-13は本願発明10の,すべての構成要素を備えた発明である。
第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,剥離可能な両面粘着テープを介して支持基板に固定された半導体ウエハを,所定の加工を行った後,該支持基板から剥離する処理方法およびそのための半導体ウエハの転写装置に関する。」
「【0025】そして,このように調製した半導体ウエハWを,図1のステップS2で示したように,支持基板16に貼り付けて,ワーク10を構成する。すなわち,図2に示したように,両面粘着テープ14の粘着剤層18,20を介して,半導体ウエハWを,支持基板16に支持固定する。このようにすることによって,図2で示したように,本発明の半導体ウエハの処理方法におけるワーク10は,半導体ウエハWと,両面粘着テープ14と,支持基板16とから構成されており,両面粘着テープ14の粘着剤層18,20を介して,半導体ウエハWが,支持基板16に支持固定された状態となっている。」
「【0032】次に,図1のステップS4に示したように,固定テーブル22上に固定されたワーク10の支持基板16上に貼り付けられた半導体ウエハWの表面に,本発明の転写装置30によって,転写テープTを貼り付ける。そして,図1のステップS4に示したように,支持基板16から半導体ウエハWを剥離して,転写テープT側に転写する。
【0033】すなわち,固定テーブルに固定されたワーク10の支持基板16から半導体ウエハWを剥離して,支持基板16から転写テープTに転写する。この場合,両面粘着テープ14は,支持基板16に残着していてもよいし,ウエハWに付着した状態で転写してもよい。両面粘着テープ14がウエハWに付着した状態で転写した場合は,転写の後,両面粘着テープ14をウエハWより剥離する。なお,図3~図7では,支持基板16に両面粘着テープ14が残着する場合を記載している。
【0034】図3は,このような剥離,転写を実施するために用いる本発明の転写装置30の第1の実施例を示す概略図である。図3に示したように,転写装置30は,前後方向(図中,左右方向)に図示しない駆動機構によって移動可能に構成した固定テーブル32(搬送手段)と,この固定テーブル32の上方に,一定間隔離間して配置された貼り付け部材を構成する貼り付けローラ34(貼付手段)を備えている。
【0035】なお,この場合,固定テーブル32は,上記の固定テーブル22をそのまま用いてもよいが,別の固定テーブル22上と同様な構成の固定テーブル32上に,ワーク10を移載するように構成してもよい。そして,この貼り付けローラ34と一定間隔前方方向に離間して,ガイド部材36が配置されている。このガイド部材36は,この実施例では,ドラムローラから構成されている。そして,貼り付けローラ34と,ガイド部材36の間には,転写テープTが,図示しない送り出し装置から送り出されて架け渡される。
【0036】図3に示したように,ガイド部材36の一部が湾曲し,転写テープTを,固定テーブル32に固定されたワーク10の支持基板16に対して,離間する方向に案内する案内面38(半導体ウエハ案内手段)を構成している。この案内面38は,半導体ウエハを破損しない程度の曲率半径rを有するのが好ましい。このような曲率半径rとしては,半導体ウエハWの材質,大きさ,厚さにもよるが,20cm以上,好ましくは,50cm以上に設定するのが望ましい。
【0037】また,本発明に使用する転写テープTとしては,基材の片面に粘着剤層が設けられている構成からなる。この場合,基材も粘着剤層も前述の両面粘着テープ14と同様のものが使用できる。また,後述するように,転写テープをダイシングテープとして使用する場合,市販のダイシングテープを転写テープTとしてもよい。また,転写テープTは,半導体ウエハWの全面に貼着できるように,ウエハ径よりも大きめの幅を有するものが好ましい。
【0038】このように構成される本発明の転写装置30では,以下のように作動する。先ず,図3に示したように,ワーク10の支持基板16側を,固定テーブル32上に固定した状態に配置する。その後,図4に示したように,転写テープTをA方向に進行させるとともに,この転写テープTの進行に伴って,固定テーブル32を,前方方向(B方向)に搬送する。これによって,貼り付けローラ34によって,転写テープTが支持基板16上の半導体ウエハWの表面に押圧されて,半導体ウエハWの全面に転写テープTが貼り付けられる。
【0039】このように半導体ウエハWの全面に転写テープTが貼り付けられた後,さらに固定テーブル32を,前方方向(B方向)に搬送することによって,図5に示したように,半導体ウエハWの上面の先端部W1が,ガイド部材36の案内面38の剥離開始位置Pに至り,転写テープTが貼着されたワーク10が,ガイド部材36と,固定テーブル32の間に挟持される。
【0040】そして,固定テーブル32を,前方方向(B方向)にさらに搬送することによって,図6に示したように,半導体ウエハWの上面の先端部W1が,ガイド部材36の案内面38の剥離開始位置Pから,転写テープTを,固定テーブル32に固定されたワーク10の支持基板16に対して,離間する方向に案内する案内面38に沿って,半導体ウエハWが湾曲される(図6中,W1参照)。この湾曲によって,半導体ウエハWが,固定テーブル32に固定されたワーク10の支持基板16から剥離して,支持基板16から転写テープT側への剥離,転写が開始される。
【0041】そして,固定テーブル32を,前方方向(B方向)にさらに搬送することによって,図7に示したように,半導体ウエハWが,ガイド部材36の案内面38に沿って,転写テープTとともに湾曲して,固定テーブル32に固定されたワーク10の支持基板16に対して,離間する方向に案内されて,支持基板16から転写テープT側への剥離,転写が促進される。そして,ついには,図8に示したように,完全に支持基板16から転写テープT側への剥離,転写が行われる。
【0042】すなわち,この場合,例えば,100~50μm程度まで薄い半導体ウエハWが,転写の際に,ガイド部材36の案内面38に沿って湾曲しながら追随して,固定テーブル32に固定されたワーク10の支持基板16から剥離して,支持基板16から転写テープTに転写されることになる。この際,曲げに対して許容できるひずみは,半導体ウエハWが上記のように薄厚であれば比較的大きくなっているので,半導体ウエハWの破損(破壊)を伴わずに,容易に支持基板16から半導体ウエハWを剥離して,転写テープT側に転写するこことができる。
【0043】従って,このように,100~50μm程度まで薄い半導体ウエハであっても,転写テープTを,剥離可能な両面粘着テープ14を介して支持基板16に支持された半導体ウエハWに貼り付けて,この転写テープTを介して,半導体ウエハを支持基板から転写テープT側に転写するので,半導体ウエハWと接触するのは,転写テープTだけでであるため,半導体ウエハWの回路面を破損することがない。
【0044】このように,固定テーブルに固定されたワーク10の支持基板16から半導体ウエハWを剥離して,転写テープTに転写した後,転写テープT側に転写された半導体ウエハWは,図1のステップS5で示したように,この転写テープTをダイシングテープとして利用して,ウエハWをダイシングし,チップ化が行われる。その後,図1のステップS6に示したように,個々のチップをピックアップして,ダイボンディングすることによって半導体部品として使用する。」
「
[図:0001381585000001.jpg]
」
「
[図:0001381585000002.jpg]
」
「
[図:0001381585000003.jpg]
」
「
[図:0001381585000004.jpg]
」
「
[図:0001381585000005.jpg]
」
「
[図:0001381585000006.jpg]
」
(2)ここで,引用文献1に記載されている事項を検討する。
ア 段落0001,0032-0033の記載から,引用文献1の「転写装置30」は,「支持基板16から半導体ウエハWを剥離」するものである。
イ 段落0038及び図4の記載から,引用文献1の「転写装置30」は,「半導体ウエハWの全面に」「貼り付けられる」「転写テープT」を備えているといえる。
ウ 段落0034-0035及び図3から,引用文献1の「転写装置30」は,「ガイド部材36」及び「貼り付けローラ34」を備えているといえる。
また,段落0040及び図3-8を参酌すると,「転写テープT」は「ガイド部材36」の「案内面38」に沿って,支持基板16に対して離間する方向である図面上方のA方向に案内されているから,引用文献1の「転写装置30」は,図面上方のA方向の先に何らかの「保持部材」を備えていることは明らかである。
エ 段落0035には,引用文献1の「転写装置30」において,「貼り付けローラ34と,ガイド部材36の間には,転写テープTが,図示しない送り出し装置から送り出されて架け渡される」点が記載されており,ここで,引用文献1の図3-8において「転写テープT」に弛みがないことから,「転写テープT」は「貼り付けローラ34」と,「ガイド部材36」との間において,張力を保って架け渡されていると認められる。
また,引用文献1の図3-8において「転写テープT」は,「ガイド部材36」の「案内面38」に沿って,支持基板16に対して離間する方向に案内され,ここで,「転写テープT」に弛みがないことから,「転写テープT」は,「ガイド部材36」と「保持部材」との間においても,張力を保って架け渡されていると認められる。
以上から,「転写テープT」は,「貼り付けローラ34」と「保持部材」との間に,張力を保って架け渡されているといえる。
オ 段落0036及び図4-8の記載から,引用文献1の「ガイド部材36」は,「転写テープTを,」「支持基板16に対して,離間する方向に案内する案内面38」を構成しており,また,段落0039-0040及び図4-8の記載から「案内面38」には「剥離開始位置P」が備わっているといえる。
ここで,図4-8の記載も参酌すると,「剥離開始位置P」は,「貼り付けローラ34」と上記ウの「保持部材」との間に配置されていると認められる。
(3)以上から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 支持基板16から半導体ウエハWを剥離する転写装置30であって,
半導体ウエハWの全面に貼り付けられる転写テープTと,
ガイド部材36,貼り付けローラ34及び保持部材とを備え,
転写テープTは,貼り付けローラ34と保持部材との間に張力を保って架け渡されており,
ガイド部材36は,転写テープTを,支持基板16に対して,離間する方向に案内する案内面38を構成し,案内面38は剥離開始位置Pを備え,剥離開始位置Pは,貼り付けローラ34と保持部材との間に配置されている
転写装置30。」
2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由において周知技術として引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0023】
次に,本実施形態におけるシート剥離装置10によるシート剥離方法について,図3をも参照しながら説明する。なお,剥離用シートPSを接着シートSに貼付する方法は,前記保持部30が剥離用シートPSを保持する構成を除き,前記特願2007-170011号に開示されたものと実質的に同一であり,従って,以下では,図3(A)に示されるように,所定長さに切断された剥離用シートPSの一端側が被保持部PS1として上下チャック30A,30Bよって保持されているものとし,その後の剥離工程について説明する。
【0024】
先ず,図3(A)に示されるように,剥離用シートPS及び接着シートS上にプレスローラが位置するようにセットされる。この状態で,直動モータMが作動して保持部30を被着面すなわちウエハWの面に沿う外側に引張力Frで剥離用シートPSを引っ張る。
【0025】
次いで,前記引張力Frを加えた状態のまま図3(B)に示されるように,所定位置,すなわち,プレスローラ40の下点を中心軸Pとしてロボット35の第6アーム36Fが矢印Rの方向に回動する。この動作によってウエハWと接着シートSとの端部に剥離きっかけ部Cが形成されることとなる。剥離きっかけ部Cの剥離角度θ1は限りなく0度に近い剥離角度で剥離が開始されることとなる。
【0026】
そして,図3(C)に示されるように,ロボット35の回動が進むと剥離角度はθ2へと徐々に広角となり,最終的に図3(C)中二点鎖線で示されるように,剥離用シートPSと接着シートSとがプレスローラ40に巻き掛けられた状態となる。ここで,図3(A)~(C)において,剥離角度θが大きくなるに連れてプレスローラ40によって当該プレスローラ40から被保持部PS1までの距離が縮小するが,図5に概略的に示されるように,引張力Frを所定値に保つように直動モータMの出力軸37が伸びることによってそれを吸収するようになっている。
【0027】
その後,図3(D)に示されるように,ロボット35が保持部30を同図中左側に向かって移動させるときに,プレスローラ40も同期回転して左側に移動し,テーブルTは同期して右側に移動する。これにより,接着シートSがウエハWから完全に剥離されることとなる。」
「【0031】
例えば,図4(A)に示されるように,保持手段13に代えて,巻取手段50としての巻取ローラ52を採用して当該巻取ローラ52に引張手段16を接続することもできる。この場合,感圧接着性の接着シートである剥離用シートPSを繰出可能に支持する供給ローラ51を設け,前記巻取ローラ52を引張手段16を構成する直動モータMの出力軸37にブラケット53を介して図示しないモータによって回転駆動可能に支持させるとともに,これら供給ローラ51と巻取ローラ52との間に延びる剥離用シートPSを貼付手段12としてのプレスローラ40で押圧して接着シートSに貼付できるように構成されている(図4(B)参照)。
【0032】
この構成においては,図4(C)に示されるように,プレスローラ40によって剥離用シートPSを接着シートSの径方向所定長さに亘って貼付する。その後,前記供給ローラ51と巻取ローラ52との回転を規制した状態で,直動モータMが作動して巻取ローラ52をウエハWの面に沿う外側に引張力Frで剥離用シートPSを引っ張る。そして,プレスローラ40の下点を中心軸Pとして,ロボット35の第6アーム36Fが矢印Rの方向に回動する。この動作によってウエハWと接着シートSとの端部に剥離きっかけ部Cが形成されるとともに,プレスローラ40に剥離用シートSが巻き掛けられた状態となる。そして,テーブルTを右側に相対移動させる動作に同期して,供給ローラ51と巻取ローラ52とが回転することで剥離シートPSをウエハWから剥離することができる。この場合,プレスローラ40は剥離補助手段15としても機能することとなる。そして,剥離が完了したときに,プレスローラ40及び巻取ローラ52を初期位置に復帰させながら剥離用シートPSの繰り出しと巻き取りとを行うことによって,次の剥離に備えて待機することができる。」
「
[図:0001381585000007.jpg]
」
「
[図:0001381585000008.jpg]
」
3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由において周知技術として引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0016】
以下では,図1に示した保護テープ剥離装置1を用いてウェーハWの表面W1から保護テープ10を剥離する場合の手順について説明する。」
「【0025】
(5-1)第1の保護テープ剥離工程
上記ウェーハ判別工程において,ウェーハWの表面W1に凹凸がある形成されていると判断した場合は,図5に示すように,掴持部30がはみだし部110を掴持した状態で,掴持部30が斜め上方に移動してウェーハWの表面W1から離れる方向に動作することにより,剥離テープ11とともに保護テープ10を上方に持ち上げる。保護テープ10を持ち上げる角度は,ウェーハWの表面W1に対して略垂直な方向である。
【0027】
ウェーハWの表面W1にデバイスDが形成され凹凸がある場合において,保護テープ10を水平方向や斜め方向に剥離すると,凹部に埋め込まれていた糊がデバイスDの角等に引っかかって糊が付着したままになることがあるが,本工程では保護テープ10をウェーハWの表面W1に対して垂直な方向(図示の例では真上)に引き上げるため,糊が引っかかることなく保護テープ10を表面W1から剥離することができる。」
「
[図:0001381585000009.jpg]
」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「半導体ウエハW」,「支持基板16」が,本願発明1の「構造体(110)」,「キャリア(120)」に相当する。
そして,引用発明の「転写装置30」は,「支持基板16から半導体ウエハWを剥離する」ものであるから,本願発明1の「デバイス(100)」と「構造体(110)をキャリア(120)の主表面領域から剥離する」ものである点で一致する。
イ 引用発明の「半導体ウエハWの全面に貼り付けられる転写テープT」は,本願発明1の「前記構造体(110)に貼り合わせるためのテープ(130)」に相当することは明らかである。
ウ 引用発明の「転写テープT」は,「貼り付けローラ34」及び「保持部材」との間に「張力を保って架け渡」されるから,引用発明の「貼り付けローラ34」及び「保持部材」は,それぞれ,本願発明1の「第1の保持部(140)」及び「第2の保持部(142)」に対応する。
エ 引用発明の「ガイド部材36」は,「転写テープTを,支持基板16に対して,離間する方向に案内する案内面38を構成する」ものであるから,本願発明1の「前記テープ(130)を偏向させるための偏向要素(150)」に対応する。
オ 引用発明の「ガイド部材36」の「案内面38」が提供する「剥離開始位置P」は,「転写テープT」の幅方向に渡って線状に「剥離開始位置P」を提供するものであることは明らかであるから,本願発明1の「偏向線(152)」に対応する。
ここで,引用発明の「剥離開始位置P」は,「貼り付けローラ34と保持部材との間に配置されている」から,本願発明1の「偏向線(152)」と,「前記第1の保持部(140)と前記第2の保持部(142)との間に配置される」点で共通する。
カ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「構造体(110)をキャリア(120)の主表面領域から剥離するためのデバイス(100)であって,
前記構造体(110)に貼り合わせるためのテープ(130)と,
張力を保って前記テープ(130)を架け渡す第1の保持部(140)及び第2の保持部(142)と,
前記第1の保持部(140)と前記第2の保持部(142)との間に配置される偏向線(152)を提供し,前記テープ(130)を偏向させるための偏向要素(150)とを備える,
デバイス(100)。」
(相違点)
(相違点1)「第2の保持部(142)」に関して,本願発明1は,「少なくとも前記第2の保持部(142)が,前記キャリア(120)の前記主表面領域に対して垂直方向のずれ(146)を有する持上げ位置(144)に移動可能」であるのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。
(相違点2)「偏向要素(150)」に関して,本願発明1は,「前記持上げ位置(144)への前記第2の保持部(142)の移動に応答して」前記テープ(130)を偏向させるものであり,かつ,「前記偏向線(152)を前記キャリア(120)に平行に移動させ,前記テープ(130)に貼り合わされた前記構造体(110)を前記キャリア(120)から剥離するために,前記キャリア(120)に平行に移動可能であるように配置される」のに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用発明において「保持部材」は,上記第4の1(2)ウで検討したように,支持基板16に対して離間する方向である図面上方のA方向に存在する,すなわち,「前記キャリア(120)の前記主表面領域に対して垂直方向のずれ(146)を有する持上げ位置(144)」に位置すると認められるから,引用発明において,「保持部材」を「前記キャリア(120)の前記主表面領域に対して垂直方向のずれ(146)を有する持上げ位置(144)に移動可能」とする動機はない。
ここで,引用文献2には,「プレスローラ40の下点を中心軸Pとして,ロボット35の第6アーム36Fが矢印Rの方向に回動」し,「テーブルTを右側に相対移動させる動作に同期して,供給ローラ51と巻取ローラ52とが回転することで剥離シートPSをウエハWから剥離する」シート剥離装置が記載されている。
また,引用文献3には,「掴持部30がはみだし部110を掴持した状態で,掴持部30が斜め上方に移動してウェーハWの表面W1から離れる方向に動作することにより,剥離テープ11とともに保護テープ10を上方に持ち上げ」「保護テープ10を表面W1から剥離する」保護テープ剥離装置が記載されている。
しかしながら,引用文献2-3は,どちらも,「ウエハ」から「テープ」を剥離する装置であり,引用発明の「支持基板」から「半導体ウエハW」を剥離する装置ではなく,その技術分野が異なり,引用発明に引用文献2-3を適用する動機もない。
そして,上記相違点1に係る本願発明1の構成は,本願の優先日前に周知技術であったともいえない。
イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2-9,14について
本願発明2-9,14は,本願発明1のすべての構成要素を備えた発明であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-5記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
3 本願発明10について
本願発明10は,「前記第2の保持部(142)を,前記キャリア(120)の前記主表面領域に対して垂直方向のずれ(146)を有する持上げ位置(144)に移動させるステップ(230)」と,上記相違点1に係る構成を方法に置き換えた構成を有するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
4 本願発明11-13について
本願発明11-13は,本願発明10のすべての構成要素を備えた発明であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり,本願発明1-14は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-5記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-008197