2021-007299
仮想現実シーンにおいてパスワードを入力するための方法およびデバイス
- 審判番号
- 2021-007299
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-525010外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年06月04日
- 審決日
- 2022年02月16日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アドバンスド ニュー テクノロジーズ カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】飯田 雅人
- 【請求人代理人】▲高▼橋 史生
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2018年(平成30年)5月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年5月12日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は次のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年1月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特表2016-526237号公報
引用文献2 特表2008-527528号公報
引用文献3 特開2014-010663号公報
第3 本願発明
本願請求項1ないし17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明17」という。)は、令和2年11月9日に提出された手続補正書に係る手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は以下のとおりの発明である。
「 コンピュータに実装された方法であって、前記方法は、VRデバイスのユーザのために仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップであって、前記インタラクティブ入力インターフェースは全体入力のために使用される複数の入力ユニットを備え、前記複数の入力ユニットのうちの各入力ユニットは1つ以上の入力要素を備え、前記複数の入力ユニットのうちの少なくとも一部の前記入力ユニットは2つ以上の入力要素を備える、仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップと、前記VRシーン内のユーザシーン焦点が前記複数の入力ユニットのうちの選択された入力ユニット上にあると決定するステップと、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点の移動軌道が入力条件を満たすと決定するステップであって、前記移動軌道は円形軌道、正方形軌道、三角形軌道、および所定のグラフィックの少なくとも1つを含む、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点の移動軌道が入力条件を満たすと決定するステップと、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点の前記移動軌道が前記入力条件を満たすと決定したときに、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット内の前記入力要素の全てを入力パスワードの一部として使用するステップとを含む、コンピュータに実装された方法。」
なお、本願発明7は、本願発明1を「コンピュータ可読媒体」の発明として特定したものであり、本願発明13は、本願発明1を「システム」の発明として特定したものであり、本願発明2ないし6、本願発明8ないし12及び本願発明14ないし17はそれぞれ、本願発明1、本願発明7及び本願発明13を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0032】以下の実施形態は、頭部装着装置(HMD)上の画像の表示を管理するための方法、装置、システム、及びコンピュータプログラムを記述する。なお、本実施形態はこれらの特定の詳細の一部または全てがなくても実施できることは、明らかであろう。他の例において、周知のプロセスオペレーションは、不必要に本発明の実施形態を不明瞭にしないために詳細に記載されていない。」
「【0053】図3は、一実施形態によるユーザの凝視を追跡するための内側カメラ302、304を有するHMDを示している。一実施形態では、ユーザがHMD208におけるディスプレイ306を見ている間に、HMDは、ユーザの凝視を追跡するために1つまたは複数のカメラ(例えば302、304)を有している。1つの実施形態では、2つのカメラ302、304がユーザのビジョンを追跡し、各カメラが異なる目を追跡している。別の実施形態では、HMDのほぼ中心に位置している単一のカメラは、両目の画像を取得し、凝視を特定するために画像を分析している。」
「【0061】図5は、一実施形態に従って、凝視によるパスワードの入力を図示している。一実施形態では、ユーザに、頭部装着ディスプレイ上の特定の図形を凝視で追跡するための情報または指示を提供できる。ユーザが正しい図形を追跡した場合、ユーザは、入力として使用できる凝視パターンを作成する。凝視入力は、ユーザの検証、ゲームの入力、ユーザの識別、ゲームオブジェクトの選択など複数の目的のために使用できる。【0062】一実施形態では、凝視検出は、パスワード、名前、ID、コマンドなどを入力するために使用されている。一実施形態では、(標準的なキーボードのすべての文字、数字及び記号、またはそのサブセットを含む)仮想キーボードがディスプレイ上に提示されている。ユーザは、所望の文字上、凝視を一時停止することにより、各文字504を選択する。ユーザは所定の時間(例えば、1秒、2秒など)で凝視を文字上に一時停止すると、ユーザがその文字を選択したと仮定される。【0063】例えば、パスワードを入力するときに、ユーザは、順番に、パスワードの文字のそれぞれを選択することができ、すべての文字が入力された後、ユーザはパスワードが処理の準備ができたことを知らせるために、エンターキー、またはその他のコマンドを選択する。本明細書において、以下、凝視を介して入力されたパスワードを「gazeword」、「passgaze」、「passlook」または「gazepass」と呼ぶ。これらの用語を、図6を参照して以下でより詳細に説明するように、凝視シグネチャの入力を参照する場合にも使用できる。【0064】図5の例示的な実施形態では、ユーザは文字F、A、D及びEを順序に選択することで、パスワード「FADE」を入力する。その後、ユーザは、システムが入力されたパスワードを処理できることを示すために、エンターキー506を選択する。一実施形態では、ユーザが各文字を選択すると、インディケータはユーザに文字が入力されたことを知らせる。インディケータは、文字の色を変更する、文字を点滅する、音(例えば、ビープ音)を発生する、文字のサイズを大きくするなどから一つ以上であってもよい。別の実施形態(図示なし)では、ユーザが各文字を入力すると、形成される単語は、ディスプレイの別の領域に表示される。」
「【0097】図8は、本発明の実施形態を実行するために使用できるデバイスのアーキテクチャを示している。頭部装着ディスプレイは、計算装置であり、プロセッサ804、メモリ816(RAM、ROMなど)、1つまたは複数のバッテリ806あるいはその他の電源、及び永久記憶装置848(ハードディスクなど)などからなる通常の計算装置上に見られるモジュールを含む。」
「【図5】[図:0001382290000001.jpg]」
(2)引用発明
前記(1)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 頭部装着装置(HMD)上の画像の表示を管理するための方法であって、HMDは、ユーザの凝視を追跡するために1つまたは複数のカメラ(302、304)を有し、凝視によるパスワードの入力において、仮想キーボードがディスプレイ上に提示され、ユーザは、所望の文字上、凝視を一時停止することにより、各文字504を選択し、ユーザは所定の時間(例えば、1秒、2秒など)で凝視を文字上に一時停止すると、ユーザがその文字を選択したと仮定され、パスワードを入力するときに、ユーザは、順番に、パスワードの文字のそれぞれを選択することができ、すべての文字が入力された後、ユーザはパスワードが処理の準備ができたことを知らせるために、エンターキー、またはその他のコマンドを選択し、例示的な実施形態では、ユーザは文字F、A、D及びEを順序に選択することで、パスワード「FADE」を入力し、その後、センターキー506を選択し、頭部装着ディスプレイは、計算装置であり、プロセッサ804、メモリ816(などからなる通常の計算装置上に見られるモジュールを含む、方法。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0012】図1は、スタイラス・ペン入力を使用するPDAの一例を図示した図面である。」
「【0018】図3は、本発明のポインティング入力手段を通じて、一つの入力エリアに割り当てられた複数個の文字を区分するように入力する方法の一例を図示した図面である。【0019】現在の文字モードによって、例えば、図2aないし図2dに図示した文字配列のうち、いずれか一つの配列がディスプレイ部を通じて提供されると、ユーザーはこれらの配列を構成するキーのうち、いずれか一つのキーを選択して、図3に図示したような入力方法のうち、いずれか一つの方法を使用して希望する文字を選択して入力する。【0020】第1入力方法(310)は、当該キーに点をつけるようにタッチする方法で、第2入力方法(320)は一定長さ以上の線を引く方法である。そして第3入力方法(330)は二つの一定長さ以上の線を引くが、互いに一定角度以上を維持しながら連結された折り曲げた線を描く方法で、第4入力方法(340)は、全体的に丸い形態の円を描く方法である。第1入力方法(310)が使用されると、当該キーに割り当てられた複数個の文字のうち、一番目の文字が入力されたことを示し、第2入力方法(320)が使用されると、二番目の文字が入力されたことを示し、第3入力方法(330)が使用されると、三番目の文字が入力されたことを示し、第4入力方法(340)が使用されると、選択されたエリア別に文脈に合うように一つずつあらかじめ指定された文字を出力するか、あらかじめ設定された一つの命令を遂行する。」
「【図6】[図:0001382290000002.jpg]」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0013】図2は、本発明の一実施の形態に係るユーザ認証装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るユーザ認証装置10は、例えば、携帯電話機、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータなどにおけるユーザ認証に対して、防犯性及び操作性を向上させたものである。【0014】ユーザ認証装置10は、入力部11と、乱数発生部12と、制御部13と、表示部14と、ユーザ入力記憶部15と、パスワード記憶部16と、を備えている。続きを表示(全12行)【0015】入力部11は、選択手段の一具体例であり、ユーザが操作を行い、その操作に応じた入力情報を入力する機能を有している。入力部11は、例えば携帯端末のタッチパネル、キーボタン、スイッチ、マウスなどの任意の入力装置で構成されている。ユーザは、入力部11に、例えばユーザIDやパスワード情報などの任意の情報を入力することができる。入力部11は制御部13に接続されており、入力情報を制御部13に対して出力する。【0016】制御部13は、制御手段の一具体例であり、例えば入力部11から出力されたパスワード情報と、パスワード記憶部16に記憶された正規のパスワード情報と、を照合することでユーザ認証を行う。なお、制御部13は、例えば、制御処理、演算処理等と行うCPU(Central Processing Unit)、CPUによって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)、処理データ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等からなるマイクロコンピュータを、中心にしてハードウェア構成されている。CPU、ROM、及びRAMは、データバスなどを介して相互に接続されている。【0017】表示部14は、表示手段の一具体例であり、表示画面上に図形、文字、画像などの任意の情報を表示させる。表示部14は、例えば液晶ディスプレイ装置、有機又は無機ELディスプレイ装置により構成されている。【0018】表示部14は、例えば、表示画面上においてマトリックス状に、パスワードとして認識可能な複数のパスワード識別要素を表示させる。そして、入力部11は表示画面上のマトリックス情報において選択された行及び列上にあるパスワード識別要素を入力情報として入力する。」
「【0026】次に、図4を参照してパスワード情報の入力方法についてより具体的に説明する。図4に示す如く、表示部14の表示画面上において、行1、2、3、4と列A、B、C、Dとで構成された4×4のマトリックス情報が表示されている。各行及び列には、予め設定された4つのパスワード識別要素411が夫々配置されている。【0027】ユーザは、入力部11を介してマトリックス情報の行及び列を選択する。このとき、ユーザは、例えばマトリックス情報の各行及び列に沿った仮想線412、413をタッチし選択することで、マトリックス情報の各行及び列を選択できる。また、ユーザは、例えばマトリックス情報の各行及び列に沿った仮想線412、413の両端部に表示された選択ボタン414をタッチし選択することで、マトリックス情報の各行及び列を選択してもよい。この場合、下端の選択ボタン414が選択されると、その列に含まれる各パスワード識別情報411は下から上へというように方向性を持って選択される。同様に、ユーザは、例えばマトリックス情報の各列に沿った仮想線413を下から上へとなぞると、その列に含まれる各パスワード識別情報は下から上へというように方向性を持って選択される。なお、仮想線412、413は、表示画面上においてマトリックス情報の各行及び列に沿って実際に表示してもよい。【0028】このように、入力部11が表示部14に内蔵されたタッチセンサを有する場合、表示画面の仮想線412、413そのものをタッチすればその仮想線412、413の行又は列を選択したこととなり、選択する仮想線412、413を下から上へ指をなぞらせると、その仮想線412、413の行又は列を下から上という方向性をもって選択したこととなり、その操作性を高めることができる。」
以上より、引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「 ユーザ認証装置10は、例えば、携帯電話機、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータなどにおけるユーザ認証に対して、防犯性及び操作性を向上させたものであり、入力部11と、乱数発生部12と、制御部13と、表示部14と、ユーザ入力記憶部15と、パスワード記憶部16と、を備え、入力部11は、例えば携帯端末のタッチパネルなどの任意の入力装置で構成され、制御部13は、入力部11から出力されたパスワード情報と、パスワード記憶部16に記憶された正規のパスワード情報と、を照合することでユーザ認証を行い、表示部14は、例えば液晶ディスプレイ装置、有機又は無機ELディスプレイ装置により構成され、表示部14は、表示画面上においてマトリックス状に、パスワードとして認識可能な複数のパスワード識別要素を表示させ、入力部11は表示画面上のマトリックス情報において選択された行及び列上にあるパスワード識別要素を入力情報として入力し、パスワード情報の入力方法は、表示部14の表示画面上において、行1、2、3、4と列A、B、C、Dとで構成された4×4のマトリックス情報が表示され、各行及び列には、予め設定された4つのパスワード識別要素411が夫々配置され、ユーザは、マトリックス情報の各列に沿った仮想線413を下から上へとなぞると、その列に含まれる各パスワード識別情報は下から上へというように方向性を持って選択される、こと。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明において、「頭部装着ディスプレイ」(「頭部装着装置(HMD)」)は、「計算装置であり、プロセッサ804、メモリ816(などからなる通常の計算装置上に見られるモジュールを含む」ものであるから、引用発明の「頭部装着装置(HMD)上の画像の表示を管理するための方法」は、本願発明1の「コンピュータに実装された方法」に相当する。
イ 引用発明は、「凝視によるパスワードの入力において」「仮想キーボードがディスプレイ上に提示され」るものであるから、「頭部装着装置(HMD)」は、「仮想キーボード」をそのディスプレイに表示する処理を行うものといえる。
そして、「仮想キーボード」は、仮想的な3次元空間(本願発明1の「VRシーン」に相当する。)内の仮想的なオブジェクトであり、そのようなオブジェクトを表示するデバイスである「頭部装着装置(HMD)」は、本願発明1の「VRデバイス」に相当する。
また、引用発明の「仮想キーボード」は、「頭部装着装置(HMD)」を装着したユーザが「凝視」により「パスワード」を入力するためのものであるから、本願発明1の「インタラクティブ入力インターフェース」に相当する。
以上より、引用発明において、「仮想キーボード」を表示することは、本願発明1の「VRデバイスのユーザのために仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップ」に相当する。
ウ 引用発明の
「 ユーザは、所望の文字上、凝視を一時停止することにより、各文字504を選択し、ユーザは所定の時間(例えば、1秒、2秒など)で凝視を文字上に一時停止すると、ユーザがその文字を選択したと仮定され、パスワードを入力するときに、ユーザは、順番に、パスワードの文字のそれぞれを選択することができ、すべての文字が入力された後、ユーザはパスワードが処理の準備ができたことを知らせるために、エンターキー、またはその他のコマンドを選択し、例示的な実施形態では、ユーザは文字F、A、D及びEを順序に選択することで、パスワード「FADE」を入力し、その後、センターキー506を選択し、」
との構成において、前記イを参酌すれば、ユーザは、パスワード全体(「FADE」)を入力するために、「仮想キーボード」の「各文字504」を順次選択することにより、パスワードを構成する文字(「F」、「A」、「D」及び「E」)を順次入力するものであり、ここで、「各文字504」は、本願発明1の「入力ユニット」に相当し、「仮想キーボード」は、本願発明1の「複数の入力ユニット」を備えているといえる。
また、引用発明の「パスワード」全体の入力は、本願発明1の「全体入力」に相当する。
よって、引用発明の「仮想キーボード」は、本願発明1の「全体入力のために使用される複数の入力ユニット」を備えるものといえる。
また、引用発明の「各文字504」の選択により入力される文字は、本願発明1の「入力要素」に相当し、引用発明の「各文字504」は、1つの「入力要素」を備えているといえる。そして、「1つ」は、「1つ以上」に含まれるから、引用発明の「各文字504」(入力ユニット)は、本願発明1の「1つ以上の入力要素」を備えているといえる。
エ 前記イ及びウより、引用発明において、「仮想キーボード」を表示することと、本願発明1の「VRデバイスのユーザのために仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップであって、前記インタラクティブ入力インターフェースは全体入力のために使用される複数の入力ユニットを備え、前記複数の入力ユニットのうちの各入力ユニットは1つ以上の入力要素を備え、前記複数の入力ユニットのうちの少なくとも一部の前記入力ユニットは2つ以上の入力要素を備える、仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップ」とは、「VRデバイスのユーザのために仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップであって、前記インタラクティブ入力インターフェースは全体入力のために使用される複数の入力ユニットを備え、前記複数の入力ユニットのうちの各入力ユニットは1つ以上の入力要素を備える、仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップ」である点において共通する。
オ 引用発明は、「ユーザは、所望の文字上、凝視を一時停止することにより、各文字504を選択し、ユーザは所定の時間(例えば、1秒、2秒など)で凝視を文字上に一時停止すると、ユーザがその文字を選択したと仮定され」るため、「頭部装着装置(HMD)」は、ユーザの「凝視」が、「文字504」の文字上で所定の時間(例えば、1秒、2秒など)一時停止したことを決定しているといえる。ここで、前記イを参酌すれば、ユーザの「凝視」は、本願発明1の「VRシーン内のユーザシーン焦点」に相当し、前記ウを参酌すれば、ユーザの「凝視」の対象となる「文字504」は、本願発明1の「前記複数の入力ユニットのうちの選択された入力ユニット」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記VRシーン内のユーザシーン焦点が前記複数の入力ユニットのうちの選択された入力ユニット上にあると決定するステップ」を備えるといえる。
カ 前記オを参酌すれば、引用発明において、「頭部装着装置(HMD)」は、ユーザの「凝視」が「文字504」の文字上で所定の時間(例えば、1秒、2秒など)一時停止したという条件を満たすと決定する処理を行うものといえる。
ここで、当該条件は、「入力条件」といい得るものである。
よって、引用発明において、「頭部装着装置(HMD)」は、ユーザの「凝視」が「文字504」の文字上で所定の時間(例えば、1秒、2秒など)一時停止したという条件を満たすと決定する処理を行うものであり、当該処理と、本願発明1の「前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点の移動軌道が入力条件を満たすと決定するステップであって、前記移動軌道は円形軌道、正方形軌道、三角形軌道、および所定のグラフィックの少なくとも1つを含む、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点の移動軌道が入力条件を満たすと決定するステップ」とは、「前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点が入力条件を満たすと決定するステップであって、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点が入力条件を満たすと決定するステップ」である点において共通する。
キ 引用発明は、「すべての文字が入力された後、ユーザはパスワードが処理の準備ができたことを知らせるために、エンターキー、またはその他のコマンドを選択」するものであるから、「頭部装着装置(HMD)」は、パスワードを構成するすべての文字が入力され、エンターキーが押される等すると、入力された文字をパスワードとして処理するものであり、その過程において選択・入力された各文字は、パスワードの一部として使用されることが企図されているといえる。そして、引用発明において、「文字504」のすべての文字(入力要素)がパスワードに使用されている。
よって、前記カを参酌すれば、引用発明と、本願発明1の「前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点の前記移動軌道が前記入力条件を満たすと決定したときに、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット内の前記入力要素の全てを入力パスワードの一部として使用するステップ」とは、「前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点が前記入力条件を満たすと決定したときに、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット内の前記入力要素の全てを入力パスワードの一部として使用するステップ」との構成を備える点で共通する。
(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 コンピュータに実装された方法であって、前記方法は、VRデバイスのユーザのために仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップであって、前記インタラクティブ入力インターフェースは全体入力のために使用される複数の入力ユニットを備え、前記複数の入力ユニットのうちの各入力ユニットは1つ以上の入力要素を備える、仮想現実(VR)シーン内にインタラクティブ入力インターフェースを提示するステップと、前記VRシーン内のユーザシーン焦点が前記複数の入力ユニットのうちの選択された入力ユニット上にあると決定するステップと、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点が入力条件を満たすと決定するステップであって、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点が入力条件を満たすと決定するステップと、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット上の前記ユーザシーン焦点が前記入力条件を満たすと決定したときに、前記複数の入力ユニットのうちの前記選択された入力ユニット内の前記入力要素の全てを入力パスワードの一部として使用するステップとを含む、コンピュータに実装された方法。」
[相違点]
<相違点1>
本願発明1は、「前記複数の入力ユニットのうちの少なくとも一部の前記入力ユニットは2つ以上の入力要素を備える」という構成を備えるのに対し、引用発明の「文字504」の中で、2つ以上の文字を備えるものがあることが具体的に特定されていない点。
<相違点2>
「入力条件」が、本願発明1においては、「移動軌道」に関する条件であり、かつ、「移動軌道」が「円形軌道、正方形軌道、三角形軌道、および所定のグラフィックの少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、引用発明においては、ユーザの「凝視」が「文字504」の文字上で所定の時間(例えば、1秒、2秒など)一時停止したという条件である点。
(3)相違点についての判断
相違点1について検討する。
引用文献3記載事項に、
「パスワード情報の入力方法は、表示部14の表示画面上において、行1、2、3、4と列A、B、C、Dとで構成された4×4のマトリックス情報が表示され、各行及び列には、予め設定された4つのパスワード識別要素411が夫々配置され、ユーザは、マトリックス情報の各列に沿った仮想線413を下から上へとなぞると、その列に含まれる各パスワード識別情報は下から上へというように方向性を持って選択される、こと」
とあるように、各々が複数の「パスワード識別要素411」(入力要素)を含む複数の「行」及び複数の「列」(入力ユニット)からなるマトリックス情報を表示して、「列」に沿った仮想線413を下から上へとなぞる操作(所定のグラフィック)がなされたことを条件に当該「列」が選択されたと決定して、当該「列」に含まれる「パスワード入力要素411」のすべてをパスワードの一部として使用することは本願優先日前における周知技術といえる。
しかしながら、引用文献3記載事項は、「携帯端末のタッチパネルなどの任意の入力装置」において「なぞる」操作によりパスワードを入力する技術に関するものであるのに対し、引用発明は、「頭部装着装置(HMD)」において「凝視」によりパスワードを入力する技術に関するものであるから、引用発明と引用文献3記載事項に係る周知技術とは、前提とする技術分野(入力装置及び入力手法)が異なるため、当業者といえども、引用発明に引用文献3記載事項に係る周知技術を適用することを想起することは困難である。
加えて、仮に、引用発明に引用文献3記載事項に係る周知技術を適用したとしても、引用発明の「仮想キーボード」が、各「行」及び各「列」が隣接した「マトリックス」の形状となり、所望の「行」又は「列」を、隣接する他の「行」又は「列」とは区別して「凝視」によりなぞることには技術的な困難が伴うから、直ちには実施可能な構成とはならず、よって、相違点1に係る本願発明1の構成には到達しない。
また、引用文献2は、スタイラス・ペン入力を使用するPDAにおいて、一つのキーに割り当てられた複数の文字のうちの1つを、入力方法に応じて選択的に入力する技術に関するものであり、引用発明とは技術分野(入力装置、入力手法及)が異なるものであるから、引用文献2に記載された技術を引用発明に適用することを想起することは当業者であっても困難である。また、引用文献2に係る技術は、本願発明1の「前記選択された入力ユニット内の前記入力要素の全てを入力パスワードの一部として使用する」ことに対応する構成を備えないから、仮に、引用発明に適用し得るとしても、本願発明1の構成には到達しない。
また、相違点1に係る本願発明1の構成は、本願優先日前の周知技術ともいえない。
以上より、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び2の記載並びに本願優先日前の周知技術を参酌しても当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本願発明7ないし12について
本願発明7は、本願発明1を「コンピュータ可読媒体」の発明として特定したものであり、本願発明8ないし12は、本願発明7と同一の構成を含む発明であり、いずれも、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する技術的事項を備えるものである。
よって、本願発明7ないし12は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本願発明13ないし17について
本願発明13は、本願発明1を「システム」の発明として特定したものであり、本願発明14ないし17は、本願発明13と同一の構成を含む発明であり、いずれも、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する技術的事項を備えるものである。
よって、本願発明13ないし17は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし17は、当業者が引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-007299