特許拒絶査定不服審判
2021-007285
書類
- 審判番号
- 2021-007285
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-210375外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年06月03日
- 審決日
- 2022年04月04日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .1 -Z (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第1項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第1項、特許法第36条第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第2条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-210375「書類」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月27日出願公開、特開2021-82303〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年11月22日に出願された特願2019-211333号の一部を、令和2年2月28日に新たな特許出願とした特願2020-32836号の一部を、さらに令和2年12月18日に新たな特許出願としたものであって、その後の経緯は以下のとおりである。
令和 2年12月24日付け:特許法50条の2の通知を伴う拒絶理由通知
令和 3年 2月15日 :意見書の提出
令和 3年 3月 4日付け:拒絶査定(原査定)
令和 3年 6月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月4日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
・理由1(特許法第29条第1項柱書)
この出願の請求項1、2に記載されたものは、情報の単なる提示であって、特許法における発明に該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
・理由2(特許法第36条第6項第2号)
請求項1に記載された「前記情報処理装置の表示部に表示された第1のオブジェクトが選択されたことによって前記情報処理装置の色付け部によって前記文言にはそれぞれ自動で異なる色が付されており」との構成が、他の発明特定事項とどのように技術的に関連するといえるのかが不明であり、そのため、請求項1、2に係る発明は明確でないから、この出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第3 本件補正について
1 本件補正の内容
(1)令和3年6月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1、2は、以下のとおりである。
【請求項1】
情報処理装置によって作成される書類であって、
特許請求の範囲と、明細書と、を含み、
前記特許請求の範囲には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、前記文言にはそれぞれ異なる色が付されており、
前記明細書には、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、前記記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されている、
書類。
【請求項2】
請求項1に記載の書類において、
設定された記号で囲まれたコメントが含まれる、
書類。
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、2は、以下のとおりである。
【請求項1】
情報処理装置によって作成される書類であって、
特許請求の範囲と、明細書と、を含み、
前記特許請求の範囲には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、前記情報処理装置の表示部に表示された第1のオブジェクトが選択されたことによって前記情報処理装置の色付け部によって前記文言にはそれぞれ自動で異なる色が付されており、
前記明細書には、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、前記記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されている、
書類。
【請求項2】
請求項1に記載の書類において、
設定された記号で囲まれたコメントが含まれる、
書類。
2 本件補正の適否
本件補正は、原査定における理由2(特許法第36条第6項第2号)を解消する目的で、本件補正前の請求項1の「前記特許請求の範囲には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、前記情報処理装置の表示部に表示された第1のオブジェクトが選択されたことによって前記情報処理装置の色付け部によって前記文言にはそれぞれ自動で異なる色が付されており」という記載を「前記特許請求の範囲には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、前記文言にはそれぞれ異なる色が付されており」という記載に補正するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び同第4項に規定する要件に違反するものではないことは明らかである。
したがって、本件補正は、適法になされたものである。
第4 当審の判断
1 本願発明について
(1)本願発明
本願の特許請求の範囲の記載は、前記第3の1(1)のとおりであり、そのうち請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の「書類」は次のとおりのものである。なお、A~Eは、当審で付与したものであり、A~Eで特定される事項を、それぞれ以下「構成A」などという。
A 情報処理装置によって作成される書類であって、
B 特許請求の範囲と、明細書と、を含み、
C 前記特許請求の範囲には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、前記文言にはそれぞれ異なる色が付されており、
D 前記明細書には、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、前記記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されている、
E 書類。
(2)本願明細書の記載
本願明細書には、図面とともに以下の記載がある。
ア 背景技術
「【0002】
書類の作成を支援するソフトウェアがある。
特許文献1には、特許明細書の作成を支援する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-80279号公報」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0004】
しかし、特許文献1の技術は、特許明細書等の書類の作成の支援を目的としており、作成された書類の読みやすさ等のための支援は目的とされておらず、作成された書類が読み辛い等の問題があった。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0005】
本発明の一態様によれば、情報処理装置によって作成される書類が提供される。この書類は、特許請求の範囲と、明細書と、を含む。特許請求の範囲には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、情報処理装置の表示部に表示された第1のオブジェクトが選択されたことによって情報処理装置の色付け部によって文言にはそれぞれ自動で異なる色が付されており、明細書には、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されている。」
エ 発明を実施するための形態
「【0010】
<実施形態1>
1.システム構成
図1は、情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。
図1に示されるように、情報処理システムは、情報処理装置100と、サーバ装置110と、を含む。情報処理装置100と、サーバ装置110とは、ネットワーク120を介して通信可能に接続されている。
サーバ装置110は、ユーザが所属している団体(例えば、企業、特許事務所、特許業務法人等)が管理している書類データを保存している。ユーザは、情報処理装置100を用いて、サーバ装置110にアクセスして担当する書類データ等の作成、修正等を行う。
【0011】
2.ハードウェア構成
図2は、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示されるように、情報処理装置100は、ハードウェア構成として、制御部201と、記憶部202と、入力部203と、表示部204と、通信部205と、を含む。制御部201は、情報処理装置100の全体を制御する。制御部201が、記憶部202に記憶されたプログラムに基づき処理を実行することにより、後述する図3に示す情報処理装置100の機能構成、図4に示すアクティビティ図、図5-図11に示す画面遷移に関する制御等が実現される。記憶部202は、プログラム及び制御部201がプログラムに基づき処理を実行する際に用いるデータ等を記憶する。入力部203は、キーボート及びマウス等を用いたユーザの操作情報を入力する。表示部204は、ディスプレイ等であって、制御部201における処理の結果等を表示する。通信部205は、情報処理装置100をネットワーク120に接続し、情報処理装置100と外部装置との通信を司る。
【0012】
3.機能構成
図3は、情報処理装置100の機能構成の一例を示す図である。
図3に示されるように、情報処理装置100は、機能構成として、表示制御部301と、色付け部302と、変更部303と、抽出部304と、削除部305と、を含む。表示制御部301は、パレットを表示する。パレットにはオートボタンが含まれる。ここで、パレットは、操作画面の一例である。また、オートボタンは、第1のオブジェクトの一例である。パレット及びオートボタンの詳細は、後述する図5を用いて説明する。
オートボタンが選択された場合、色付け部302は、特許請求の範囲に含まれる始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧とで囲まれた(特定のマークで囲われた)請求項という言葉にそれぞれ異なる色を付ける。特許請求の範囲は、書類の一例である。始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧とで囲まれた請求項という言葉は、設定された言葉の一例である。色付け部302による色付けの詳細は、後述する図5及び図6を用いて説明する。
情報処理装置100が表示制御部301と色付け部302とを有することによって、オートボタンが選択された場合、書類(例えば、特許請求の範囲)に含まれる設定された言葉(例えば、請求項1、請求項2、・・・)にそれぞれ異なる色が付けられるので、書類を見慣れない人であっても、視覚的に書類に設定された言葉がいくつあるか把握することができ、読みやすい書類の作成を支援する技術を提供することができる。」
「【0014】
4.情報処理及び画面例
図4は、情報処理装置100による請求項の色付けに関する情報処理の一例を示すアクティビティ図である。図5は、パレットの一例を示す図である。表示制御部301は、図5に示されるように、文書作成アプリケーションの画面に表示されるツールバーセットにパレットボタン501を表示する。
A401において、表示制御部301は、パレットボタン501が選択されたか否かを判定する。パレットボタン501が選択されたと判定すると、表示制御部301は、A402の処理に進む。パレットボタン501が選択されなかったと判定すると、表示制御部301は、A401の処理を繰り返す。
【0015】
A402において、表示制御部301は、図5に示されるように表示部204にパレット502を表示する。上述したようにパレット502は、操作画面の一例である。
A403において、色付け部302は、オートボタン503が選択されたか否かを判定する。色付け部302は、オートボタン503が選択されたと判定した場合、A404の処理に進む。色付け部302は、オートボタン503が選択されていないと判定した場合、A403の処理を繰り返す。なお、図5に示されるように、パレット502には、メインタブ505と、色付けタブ504と、が含まれる。色付けタブ504が選択された場合、パレット502には、オートボタン503が含まれる操作領域が表示される。
A404において、色付け部302は、特許請求の範囲に含まれる始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧とで囲まれた請求項という言葉にそれぞれ異なる色を自動で付ける。図6は、色付け部302によって色が付けられた特許請求の範囲の一例を示す図である。601は、例えば、黄色である。602は、例えば、緑色である。603は、例えば、空色である。604は、例えば、薄ピンク色である。605は、例えば、薄橙色である。特許請求の範囲を見慣れない人であっても、視覚的に特許請求の範囲に請求項がいくつあるか把握することができ、読みやすい書類の作成を支援することができる。」
「【0018】
5.請求項抽出
図8及び図9を用いて請求項の抽出について説明する。図8は、パレットの一例を示す図である。図8に示されるように、パレット502には、メインタブ505と、色付けタブ504と、が含まれる。メインタブ505が選択された場合、パレット502には、請求項抽出ボタン801が含まれる操作領域が表示される。請求項抽出ボタンは、第2のオブジェクトの一例である。
ユーザが入力部203等を操作して請求項抽出ボタン801を選択すると、抽出部304は、対応する始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧とで囲まれた請求項と同じ色を付して請求項の記載を特許請求の範囲より抽出する。より具体的に説明すると、ユーザが入力部203等を操作して請求項抽出ボタン801を選択すると、抽出部304は、対応する始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧とで囲まれた請求項と同じ色を付して請求項の記載を特許請求の範囲より抽出し、ファイルに出力する。(略)
【0019】
ユーザは、特許請求の範囲を記載したあと、図5のオートボタン503を選択し、請求項に色を付ける。その後、ユーザは、図8の請求項抽出ボタン801を選択して請求項と同じ色が付された請求項の記載をファイルからコピーして、明細書を記載する。
即ち、本実施形態の文書作成アプリケーションで作成された書類データをプリンタ等の複合機で印刷すると、特許請求の範囲と、明細書と、を含む、書類が作成される。書類は、特許庁への出願用の書類である。特許請求の範囲は、始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧で囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、文言にはそれぞれ異なる色が付された特許請求の範囲である。また、明細書は、対応する始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧で囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付された明細書である。
このような明細書等によれば、各請求項と明細書の各記載とが色で対応付けられているため、書類をチェックする人は、各請求項のサポートが明細書中のどこでなされているかすぐに把握することができる。また、明細書を作成する人にとっては、特許請求の範囲の最低限のサポートを明細書に記載することができる。」
(3)明細書の記載に基づく本願発明の課題と作用効果について
本願明細書の前記記載によれば、本願発明は、従来の特許明細書の作成を支援する装置においては作成された書類が読みづらい等の問題があった(【0004】)ことを課題とし、本願発明の「書類」の特許請求の範囲は、請求項1、請求項2、・・・にそれぞれ異なる色が付けられるので、書類を見慣れない人であっても、視覚的に書類に設定された言葉がいくつあるか把握することができ、読みやすく(【0012】)、本願発明の「書類」の明細書は、各請求項と明細書の各記載とが色で対応付けられているため、書類をチェックする人は、各請求項のサポートが明細書中のどこでなされているかすぐに把握することができる(【0019】)という作用効果を奏するものである。
2 本願発明が自然法則を利用した技術的思想の創作であるか否かについて
(1)特許法第2条第1項は、「発明」について、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」をいうと規定し、同法第29条第1項柱書は、「産業上利用することができる発明をしたものは、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定する。したがって、特許法第2条第1項に規定する「発明」といえないものは、同法第29条第1項柱書に規定する要件を満たさないから、特許を受けることができない。
ここで、請求項に記載された特許を受けようとする発明が、特許法第2条第1項に規定する「発明」といえるか否かは、前提とする技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かによって判断すべきものである。
そして、請求項に記載された特許を受けようとする発明に何らかの技術的手段が提示されているとしても、その技術的意義に照らして全体として考察した結果、その課題解決に当たって、専ら、人の精神活動、意思決定、抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体に向けられ、「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえない場合には、同法2条1項の「発明」に該当するとはいえないから、これを前提として、本願発明が全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるか否かについて以下検討する。
(2)本願発明の構成について
ア 構成Aについて
構成Aに記載された「情報処理装置」は、本願明細書に記載された「情報処理装置」のことであり、ユーザが、該「情報処理装置」を操作し、特許請求の範囲を記載したあと、オートボタン503を選択し、特許請求の範囲に含まれる始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧とで囲まれた請求項という言葉にそれぞれ異なる色を自動で付け(【0015】)、その後、請求項抽出ボタン801を選択して対応する始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧とで囲まれた請求項と同じ色を付して請求項の記載を特許請求の範囲より抽出し、ファイルに出力し(【0018】)、請求項と同じ色が付された請求項の記載をファイルからコピーして、明細書を記載する(【0019】)という操作により、始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧で囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、文言にはそれぞれ異なる色が付された特許請求の範囲が作成され、対応する始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧で囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付された明細書(【0019】)が作成される。
しかしながら、本願発明には、上記特許請求の範囲及び明細書を作成するための情報処理装置の特徴や、ユーザが該情報処理装置を用いて前記特許請求の範囲及び明細書を作成するための操作については何ら特定されていないことから、「書類」について「情報処理装置により作成される」との特定事項は、「書類」を技術的に特定するものとはいえない。
さらに、例えば、上記情報処理装置により作成された「書類」を単に複写したものである「許請求の範囲」及び「明細書」は、「すみつき括弧と終わりすみつき括弧で囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、文言にはそれぞれ異なる色が付された特許請求の範囲」、及び、「対応する始めすみつき括弧と終わりすみつき括弧で囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付された明細書」といえるから、この点からみても、「書類」について「情報処理装置により作成される」との特定事項は、「書類」を技術的に特定するものではなく、「作成された書類が読みづらい等の問題があった」という課題を解決するための技術的手段とはいえない。
イ 構成Bについて
構成Bより、本願発明の「書類」は、「特許請求の範囲」と「明細書」とを含む。
ここで、本願発明の「書類」は、明細書の記載によると「特許庁への出願用の書類」(【0019】)であるところ、特許法第36条第1項には、「特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。」と規定され、同条第2項には、「願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。」と規定されている。
そうすると、「書類」が「特許請求の範囲」と「明細書」とを含むことは、「書類」の形式として法律の規定、すなわち、人為的な取決めに従って、「特許請求の範囲」及び「明細書」という情報を提示するものといえるが、この点は、「作成された書類が読みづらい等の問題があった」という課題を解決するための技術的手段とはいえない。
ウ 構成Cについて
構成Cの「特定のマーク」は、発明の詳細な説明では「始めすみつき括弧」と「終わりすみつき括弧」のこと(【0019】)であり、さらに、「特許請求の範囲」の記載要領に関する特許法施行規則様式第29の2の備考欄14のホには、「請求項に付す番号は、「【請求項1】」、「【請求項2】」のように記載する。」と規定されている。
よって、構成Cの「前記特許請求の範囲には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ」という「特許請求の範囲」の形式は、法令の規定に従うものである。
そのうえで、構成Cは、さらに「特許請求の範囲」の「前記文言」、すなわち「特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)」「にはそれぞれ異なる色が付されて」いる点について特定しているところ、単に異なる事項に異なる色を付すことは人為的な取決めといえ、これにより、視覚的に書類に設定された請求項がいくつあるか把握することができ、読みやすくなるという一定の効果が認められるものの、そのような提示形態自体は、何ら自然法則を利用した技術的手段を伴うものではなく、情報の単なる提示の域を超えるものではない。
エ 構成Dについて
特許法第36条第3項には、「前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。」と規定され、「次に掲げる事項」として同項第3号には、「発明の詳細な説明」が掲げられ、同条第6項第1号には、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定されているから、特許庁への出願用の書類である「明細書」には、特許を受けようとする発明をサポートする記載を含む必要がある。
したがって、構成Dの「前記明細書には、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ」という「明細書」の形式は、法律の規定に従うものである。
そのうえで、構成Dは、さらに「明細書」の「対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、前記記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されている」点について特定しているところ、単に特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載に対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色を付すことは人為的な取決めといえ、これにより、各請求項と明細書の各記載とが色で対応付けられているため、書類をチェックする人は、各請求項のサポートが明細書中のどこでなされているかをすぐに把握することができるという一定の効果が認められるものの、そのような提示形態自体は、何ら自然法則を利用した技術的手段を伴うものではなく、情報の単なる提示の域を超えるものではない。
(3)本願発明が全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるか否かについて
本願発明の「書類」は、従来の特許明細書の作成を支援する装置で作成された書類が読みづらい等の問題があったという課題を解決するためのものであるところ、前記「書類」は専ら人に提示するものであるから、結局、前記「書類」が人にとって読みづらいものであるという人の心理現象を課題とするものである。そして、本願発明は、当該課題を解決するために、上記(2)のとおり、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)にそれぞれ異なる色が付されている特許請求の範囲についての人為的な取決めに基づく情報と、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、前記記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されている明細書についての人為的な取決めに基づく情報の提示により、「書類をチェックする人は、各請求項のサポートが明細書中のどこでなされているかすぐに把握することができ」るという作用効果を奏するものといえる。
ここで、人が書類にマーキングペンなどを用いて、注目すべき文言や文章にマーキング、すなわち色付けすることにより書類を見やすくする行為は、ごく普通に行われていることであり、一般的には、色付けされた書類を見た人は、互いに異なる色が付けられた文言や文章は、何らかの点で互いに異なる事項を表すと理解し、同じ色が付けられた文言や文章は、何らかの点で互いに関連する事項を表すと理解するものといえ、これは、心理学的な法則(認知のメカニズム)を利用するものである。そして、特定の波長の色の使用や特定の色の並びなど、人の視覚の認識能力を利用したものでない以上、このような心理学的な法則により、色付けされた文言や文章の関係を理解することは、専ら人の精神活動に基づくものである。
したがって、本願発明における「特許請求の範囲」を見た人が、請求項1、請求項2、・・・にそれぞれ異なる色が付けられていると、請求項1、請求項2、・・・がそれぞれ異なるものを表すと理解し、「明細書」を見た人が、各請求項と明細書の各記載に同じ色が付けられていると、明細書の各記載は、同じ色を付けられた各請求項に対応する記載、すなわちサポートする記載と理解することは、専ら人の精神活動に向けられたものであるから、本願発明の奏する作用効果は、自然法則を利用したものとはいえない。
よって、本願発明は、従来の「書類」が人にとって読みづらいものであるという人の心理現象を課題とし、人に対する、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)にそれぞれ異なる色が付されているという特許請求の範囲についての人為的な取決めに基づく情報と、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、前記記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されているという明細書についての人為的な取決めに基づく情報の提示により、書類をチェックする人は、各請求項のサポートが明細書中のどこでなされているかすぐに把握することができるという人の精神活動に基づく作用効果を奏するものといえるから、本願発明が解決しようとする課題、本願発明の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義を総合して検討しても、本願発明は、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということはできない。
(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、請求の理由において、以下のとおり主張する。
「 本願に係る「書類」は、「特許請求の範囲」と「明細書」を含みます。
「特許請求の範囲」には、特定のマークで囲われた請求項n(nは1以上の自然数)の文言が含まれ、前記文言にはそれぞれ異なる色が付されています。例えば、請求項1の文言には黄色、請求項2の文言には、緑色、請求項3の文言には、水色等の色が付されています。
また、「明細書」には、対応する特定のマークで囲われた請求項をサポートする記載が含まれ、サポートする記載にはそれぞれ対応する特定のマークで囲われた請求項と同じ色が付されています。例えば、請求項1のサポート箇所には黄色が付されます。請求項2のサポート箇所には緑色が付されます。請求項3のサポート箇所には水色が付されます。
このように、特許請求の範囲の各請求項に付された色と、明細書の各請求項に対応するサポートの記載の色とは一対一に対応し、互いに関連付けられております。即ち、例えば、特許請求の範囲の請求項1に付された色(黄色)と、明細書の実施形態における請求項1のサポート箇所の色(黄色)と、は一対一に対応し、色(黄色)によって互いに関連付けられております。同様に、特許請求の範囲の請求項2に付された色(緑色)と、明細書の実施形態における請求項2のサポート箇所の色(緑色)と、は一対一に対応し、色(緑色)によって互いに関連付けられております。したがって、特許請求の範囲における各請求項のサポートが明細書において、ちゃんとなされているか、また、明細書の何処で、どのようになされているかを分かりやすくすることができます。このように、本願に係る「書類」は、特許請求の範囲の各請求項と、明細書の実施形態における各請求項のサポート箇所との関係が具体的になっており、「書類をチェックする人に、各請求項のサポートが明細書中のどこでなされているかすぐに把握可能にする。」という目的を達成するための具体的手段であって実際に利用できるものといえます。
したがって、本願に係る書類は、情報の単なる提示ではなく、技術的思想の創作であり、発明であるので、特許法第29条第1項柱書の要件を満たしていると思料致します。
なお、付言すると、例えば、特許第6304704号、特許第3616083号、特許第5465858号、特許第5589161号、特許第3822418号等、権利化されており、これらと同様、本願も発明に該当するものと思料致します。」
請求人の上記主張について検討すると、本願発明の「書類」は、上記(3)のとおり全体として自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえない。そして、書類をチェックする者が特許法第36条第6項第1号に規定されたサポート要件を満たすか否かを判断する際には、単に形式的に「特許請求の範囲」の請求項に記載された事項が「明細書」に記載されているかを判断するのではなく、「明細書」に実質的に請求項に係る発明がサポートされているかを判断する必要があるところ、本願発明の「書類」は、形式的に、特許請求の範囲の各請求項と、明細書の実施形態における各請求項のサポート箇所との関係が把握できるにすぎず、単に互いに関連する事項に同じ色を付して見やすくするという、ごく普通に行われている提示形態を超える意味を有するものとはいえない。
また、審判請求人の挙げる各特許と本願発明とは、別個に判断すべきものであり、他の特許の存在が本願発明について特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていることの理由とはならない。
よって、審判請求人の主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第2条で定義される「発明」に該当せず、同法第29条第1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しないから、特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項2について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-007285