特許拒絶査定不服審判
2021-010876
会葬礼状の提供システム
- 審判番号
- 2021-010876
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-022743外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月16日
- 審決日
- 2023年02月01日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社マコセエージェンシー
- 【請求人代理人】岩谷 龍
- 分類
- P18 .1 -Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第4項、特許法第17条の2、特許法第2条第1項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 22743「会葬礼状の提供システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-134954〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月12日を出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和2年12月21日 拒絶理由通知(起案日)
令和3年 3月 1日 意見書・手続補正書の提出
令和3年 5月25日 拒絶査定(起案日)
令和3年 8月16日 審判請求書・手続補正書の提出
第2 令和3年8月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年8月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所。請求人が付与した。)
「 【請求項1】 葬儀社から会葬礼状の注文を受けるステップと、上記注文で特定された遺族への電話による取材をするステップと、上記取材により知り得た事項をデータとして保存手段に保存するステップと、上記保存手段に保存したデータに基づいてオリジナルの文章を作成するステップと、作成した文章をデータとして保存手段に保存するステップと、保存手段に保存した文章のデータを取り出して文章を校正するステップと、校正済みの文章をデータとして保存手段に保存するステップと、校正済みの文章を葬儀社へ送信するステップと、葬儀社から校正済みの文章に対する承認を受けるステップと、承認された文章のデータを保存手段に保存した後に葬儀社へ送信するステップとを有する会葬礼状の提供システムにおいて、会葬礼状の注文は、取材のために必要な事項とともにオリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせて頂きますという内容が記載された取材用申込用紙を送信することにより行われ、電話による取材は、印象深いお姿や特別な思い出を含むオリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シートを用いて行われ、当該取材シートの裏面には宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む葬儀社共通のチェック事項が記載されており、オリジナルの文章を作成するステップは、取材シートによる取材により知り得た事項に基づいて、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項をチェックしつつ、お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む、葬儀社からの注意事項が記載された台紙により行われることを特徴とする会葬礼状の提供システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年3月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
葬儀社から会葬礼状の注文を受けるステップと、上記注文で特定された遺族への電話による取材をするステップと、上記取材により知り得た事項をデータとして保存手段に保存するステップと、上記保存手段に保存したデータに基づいてオリジナルの文章を作成するステップと、作成した文章をデータとして保存手段に保存するステップと、保存手段に保存した文章のデータを取り出して文章を校正するステップと、校正済みの文章をデータとして保存手段に保存するステップと、校正済みの文章を葬儀社へ送信するステップと、葬儀社から校正済みの文章に対する承認を受けるステップと、承認された文章のデータを保存手段に保存した後に葬儀社へ送信するステップとを有する会葬礼状の提供システムにおいて、会葬礼状の注文は、取材のために必要な事項が記載された取材用申込用紙を送信することにより行われ、電話による取材は、オリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シートを用いて行われ、当該取材シートの裏面には葬儀社共通のチェック事項が記載されており、オリジナルの文章を作成するステップは、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項をチェックしつつ、葬儀社からの注意事項が記載された台紙により行われることを特徴とする会葬礼状の提供システム。」
2 補正の適否
本件補正は、次の補正事項を含む。
(補正事項1)
本件補正前の請求項1の「取材のために必要な事項が記載された取材用申込用紙」を、本件補正により、「取材のために必要な事項とともにオリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせて頂きますという内容が記載された取材用申込用紙」と補正した。
(補正事項2)
本件補正前の請求項1の「オリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シート」を、本件補正により、「印象深いお姿や特別な思い出を含むオリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シート」と補正した。
(補正事項3)
本件補正前の請求項1の「当該取材シートの裏面には葬儀社共通のチェック事項が記載されており」を、本件補正により、「当該取材シートの裏面には宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む葬儀社共通のチェック事項が記載されており」と補正した。
(補正事項4)
本件補正前の請求項1の「オリジナルの文章を作成するステップは、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項をチェックしつつ、葬儀社からの注意事項が記載された台紙により行われる」を、本件補正により、「オリジナルの文章を作成するステップは、取材シートによる取材により知り得た事項に基づいて、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項をチェックしつつ、お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む、葬儀社からの注意事項が記載された台紙により行われる」と補正した。
なお、以下では、上記補正事項4のうち「取材シートによる取材により知り得た事項に基づいて」の文言を付加する補正事項を「補正事項4の1」、「お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む」の文言を付加する補正事項を「補正事項4の2」という。
このうち、補正事項4の1は、本件補正前の請求項1で、「上記注文で特定された遺族への電話による取材をするステップと、上記取材により知り得た事項をデータとして保存手段に保存するステップと、上記保存手段に保存したデータに基づいてオリジナルの文章を作成するステップと」、「電話による取材は、オリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シートを用いて行われ」と特定されている事項を、本件補正前より「オリジナルの文章を作成するステップ」が結局「取材シートによる取材により知り得た事項に基づいて」行われていることを改めて付加することで明確にしたものであるから、本件補正の前後で特許請求の範囲の発明特定事項に影響を与えるものではない。
上記補正事項1~3及び補正事項4の2は、本件補正後において、
「取材用申込用紙」の記載内容について「オリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせて頂きますという内容」、
「取材シート」の記載内容について「印象深いお姿や特別な思い出を含む(オリジナルの会葬礼状を作成するために必要な)項目」、
「取材シートの裏面」の記載内容について「宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む(葬儀社共通の)チェック事項」、
「台紙」の記載内容について「お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉」
を含むように、「取材用申込用紙」、「取材シート」、「取材シートの裏面」、「台紙」の記載内容を減縮するものであり、記載内容が減縮された取材シート及び台紙によりオリジナル文章を作成するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の限定的減縮を目的とし、補正事項1~3及び補正事項4の2は、いずれも、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合し、さらに、発明の特別な技術的特徴を変更する補正でもないことから、特許法第17条の2第4項の規定にも適合する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、次の「3」以降で、検討する。
3 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)で記載したとおりのものであって、次のように分説する。
【請求項1】
A1 葬儀社から会葬礼状の注文を受けるステップと、
B1 上記注文で特定された遺族への電話による取材をするステップと、
C 上記取材により知り得た事項をデータとして保存手段に保存するステップと、
D1 上記保存手段に保存したデータに基づいてオリジナルの文章を作成するステップと、
E 作成した文章をデータとして保存手段に保存するステップと、
F 保存手段に保存した文章のデータを取り出して文章を校正するステップと、
G 校正済みの文章をデータとして保存手段に保存するステップと、
H 校正済みの文章を葬儀社へ送信するステップと、
I 葬儀社から校正済みの文章に対する承認を受けるステップと、
J 承認された文章のデータを保存手段に保存した後に葬儀社へ送信するステップと
K を有する会葬礼状の提供システムにおいて、
A2 会葬礼状の注文は、取材のために必要な事項とともにオリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせて頂きますという内容が記載された取材用申込用紙を送信することにより行われ、
B2 電話による取材は、印象深いお姿や特別な思い出を含むオリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シートを用いて行われ、当該取材シートの裏面には宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む葬儀社共通のチェック事項が記載されており、
D2 オリジナルの文章を作成するステップは、取材シートによる取材により知り得た事項に基づいて、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項をチェックしつつ、お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む、葬儀社からの注意事項が記載された台紙により行われる
K ことを特徴とする会葬礼状の提供システム。
なお、「令状」は、「礼状」の誤記であると解釈して、以下の判断を行った。
4 特許法第29条第1項柱書(発明該当性)について
特許法で「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」(特許法第2条第1項)ことから、自然法則を利用していないもの、例えば、単なる精神活動、純然たる学問上の法則、人為的な取決めなどは、「発明」に該当しない。
そして、かかる「発明」は、一定の技術的課題の設定、その課題を解決するための技術的手段の採用、その技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されることからすると、特許請求の範囲(請求項)に記載された「特許を受けようとする発明」が上記「発明」に該当するか否かは、それが、特許請求の範囲の記載や願書に添付した明細書の記載及び図面に開示された、「特許を受けようとする発明」が前提とする技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成、その構成から導かれる効果等の技術的意義に照らして、全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するか否かによって判断すべきものである。
したがって、「特許を受けようとする発明」に何らかの技術的手段が提示されているとしても、全体として考察した結果、その発明の本質が、単なる精神活動、純然たる学問上の法則、人為的な取決めなど自体に向けられている場合には、上記「発明」に該当するとはいえない。
そこで、本件補正発明が、全体として「自然法則を利用した」技術的思想に該当するか否かについて、以下検討する。
5 発明の詳細な説明の記載内容
(1)発明が解決しようとする課題について
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1-3に記載された会葬礼状の文章は既存の定型のものであって、受け取る側に十分に感謝の気持ちが伝わらないことが多い。会葬礼状は故人に対する遺族の思いや、お世話になった方々への感謝の気持ちを伝えるという役目を有しているが、特許文献1-3に記載された会葬礼状は、その役目を果たしていない。また、各葬儀社からの要求には共通部分はあるものの、それぞれの葬儀社で注意点が異なっている。さらに、同じ葬儀社でも、仏式、神式、キリスト教式などで、それぞれに注意点が異なる。葬儀社の取り違えはもちろん許されることではなく、同じ葬儀社からの依頼であっても、遺族を取り違えると取り返しのつかない事態を招いてしまう。そこで、この発明の目的は、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることができるとともに、間違いなくそれぞれの依頼者(葬儀社)を経由して、間違いなくそれぞれの遺族に届けることができる世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状の提供システムを提供することにある。」
(2)課題を解決するための手段について
「【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の第一ないし第八の発明からなる。
(1)第一の発明は、葬儀社から会葬礼状の注文を受けるステップと、上記注文で特定された遺族への電話による取材をするステップと、上記取材により知り得た事項をデータとして保存手段に保存するステップと、上記保存手段に保存したデータに基づいてオリジナルの文章を作成するステップと、作成した文章をデータとして保存手段に保存するステップと、保存手段に保存した文章のデータを取り出して文章を校正するステップと、校正済みの文章をデータとして保存手段に保存するステップと、校正済みの文章を葬儀社へ送信するステップと、葬儀社から校正済みの文章に対する承認を受けるステップと、承認された文章のデータを保存手段に保存した後に葬儀社へ送信するステップとを有することを特徴とする会葬礼状の提供システムである。
【0009】
(2)第二の発明は、会葬礼状の注文は、取材のために必要な事項が記載された取材用申込用紙を送信することにより行われることを特徴とする(1)に記載の会葬礼状の提供システムである。
【0010】
(3)第三の発明は、電話による取材は、オリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シートを用いて行われることを特徴とする(1)又は(2)に記載の会葬礼状の提供システムである。
【0011】
(4)第四の発明は、文章を校正するステップが、一次校正ステップと二次校正ステップからなり、一次校正ステップはオリジナルの文章作成者と当該文章作成者以外の校正者とにより行われ、二次校正ステップはオリジナルの文章作成者以外であって且つ上記校正者以外の校正者により行われることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の会葬礼状の提供システムである。
【0012】
(5)第五の発明は、葬儀社へ送信した二次校正済みの文章に対する葬儀社からの修正指示があれば、保存手段に保存した二次校正済みの文章のデータを取り出して修正するステップと、修正後の最終原稿のデータを保存手段に保存した後にプリントアウトして修正後の最終原稿を保持するステップと、修正後の最終原稿を葬儀社へ送信するステップと、葬儀社から修正後の最終原稿に対する承認を受けるステップとを有することを特徴とする(4)に記載の会葬礼状の提供システムである。
【0013】
(6)第六の発明は、葬儀社から修正後の最終原稿に対する承認を受けた後、保存手段に保存した最新の文章のデータを取り出して最終チェックを行った後にPDFを作成するステップと、当該PDFと保持している修正後の最終原稿が同じであることを確認するステップと、さらに、宛先と件名と差出人と添付されているデータが承認された最終原稿のデータであることを確認するステップと、承認された最終原稿のデータを葬儀社へ送信するステップとを有することを特徴とする(5)に記載の会葬礼状の提供システムである。
【0014】
(7)第七の発明は、取材シートの裏面には葬儀社共通のチェック事項が記載されていることを特徴とする(3)ないし(6)のいずれかに記載の会葬礼状の提供システムである。
【0015】
(8)第八の発明は、オリジナルの文章を作成するステップは、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項をチェックしつつ、葬儀社からの注意事項が記載された台紙により行われることを特徴とする(7)に記載の会葬礼状の提供システムである。」
(3)効果について
「【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることができるとともに、間違いなくそれぞれの依頼者(葬儀社)を経由して、間違いなくそれぞれの遺族に届けることができる、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状の提供システムを提供することができる。特に、第二の発明によれば、間違いなく正確に取材することができる。特に、第三の発明によれば、世界でたった一つのオリジナリティを確実に発揮することができる。特に、第四、第五及び第六の発明によれば、誤りがなく、ほぼ完ぺきな文章を作成することができる。特に、第七の発明によれば、依頼者の意向に沿った満足のいく文章を作成することができる。特に、第八の発明によれば、比類なき正確さで、依頼者が満足できるオリジナリティにあふれた文章を作成することができる。」
(4)発明を実施するための形態について
「【0019】
(1)ステップ1-打ち合わせ-
葬儀社と会葬礼状の作成について打ち合せる。このとき、会葬礼状を作成するために、喪家の誰に、いつ取材をすればよいかを打ち合せる。
【0020】
(2)ステップ2-取材の申し込み-
打ち合せの後、図1に示す取材用申込用紙に取材のために必要な事項を記載して、FAXにより所定の宛先に送信する。
【0021】
(3)ステップ3-取材前に行うこと-
取材用申込用紙に不備がないかどうかを確認する。会葬礼状を作成するために、葬儀社からの注意事項が記載された台紙をサーバの最新礼状台紙(横長又は縦長)の中から選択して、パソコンのデスクトップにはりつける。」
「
[図:0001395681000001.jpg]
」(【図1】)
「【0022】
(4)ステップ4-取材-
葬儀社の指定の時間に指定の番号に電話をかけ、図2または図4に示す取材シートに基づいて、手際よく臨機応変に、遺族の率直な思いや遺族が特に伝えたい内容などの会葬礼状作成のポイントとなる事項は必ず聞き出すように取材をする。取材により知り得た事項をデータとしてパソコンに保存する。このとき、人数や年数、地域名、その他の耳慣れない固有名詞は、礼状の文章に使用する可能性が高いので、復唱して遺族に確認することが好ましい。また、必要に応じてインターネットで検索して、疑問点や勘違いや間違いがないようにする。」
「
[図:0001395681000002.jpg]
」(図2)
「
[図:0001395681000003.jpg]
」(【図4】)
【0023】
(5)ステップ5-礼状の文章作成-
図3又は図5のチェックシートのチェック事項をチェックしつつ、図6又は図7に示す、右側に葬儀社ごとの注意事項が記載された台紙を用いて、パソコンに保存した上記データに基づいて会葬礼状のオリジナルの文章を作成し、そのオリジナルの文章のデータをパソコンに保存する。このように各葬儀社のそれぞれの特徴(宗派や神式などによって細かい注意事項がある)に従って忠実に作業がなされ、各葬儀社のフォーマットで故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちが会葬礼状に記載され、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状を作成することができる。しかも、チェックシートでセルフチェックを行うことにより、依頼者の意向を漏らすことなく、依頼者に満足される文章を作成することができる。」
「
[図:0001395681000004.jpg]
」(【図3】)
「
[図:0001395681000005.jpg]
」(【図5】)
「
[図:0001395681000006.jpg]
」(【図6】)
「
[図:0001395681000007.jpg]
」(【図7】)
【0024】
(6)ステップ6-文章を校正するステップの一次校正-
パソコンに保存したオリジナルの文章のデータを取り出してプリントアウトし、オリジナルの文章作成者と文章作成者以外の校正者とが読み上げることにより、誤字や脱字がないか、チェックシートのチェック事項や葬儀社ごとの注意事項が守られているかについて、一次校正を行う。一次校正で修正があれば、修正後のものをパソコンに保存してプリントアウトする。プリントアウトしたものの修正箇所にマーカーを付して、オリジナルの文章作成者以外であって且つ校正者以外の者がチェックを行う。パソコンには常に最新の文章のデータを保存する。一次校正及び後記する二次校正においては、ミスを完全に避けて完璧を期すために、以下の5つのルールを順守する。
(1) 日付の確認は、必ずカレンダーで行う。
(2) 住所や名前は一文字ずつ、漢字は分解読みして読み合わせる。
(3) 続柄で家族構成を理解する。
(4) 文章は一文字ずつ消して読み合わせ、最後にもう一度文節読みを行う。
(5) FAX送信の前に、原稿とパソコンのモニター画面を2度確認する。
【0025】
この一次校正、後記する二次校正及び葬儀社との校正のやりとり後におけるデータの保存は、最新の文章のデータがパソコンに確実に保存されるように、校正後のものをパソコンに保存してからプリントアウトする。
【0026】
(7)ステップ7-文章を校正するステップの二次校正-
パソコンに保存した一次校正済みの文章のデータを取り出してプリントアウトし、一次校正済みの文章をオリジナルの文章作成者以外であって且つ一次校正者以外の校正者により、段落0024と同様の方法(誤字や脱字の有無、チェックシートのチェック事項や葬儀社ごとの注意事項の順守の確認)で二次校正を行う。二次校正で修正があれば、修正後のものをパソコンに保存してプリントアウトする。二次校正はミスを防ぐ最後の砦であるから、修正箇所及び前後の誤りの有無について、二次校正を行った校正者以外の者によるチェックを行う。そこで、プリントアウトしたものの修正箇所にマーカーを付してオリジナルの文章作成者を除いて二次校正を行った校正者以外の者がチェックを行う。」
「【0028】
(8)ステップ8-二次校正済み文章の葬儀社へのFAX-
葬儀社ごとのルール(例えば、FAX送信する前に電話で連絡することなど)に従って、二次校正済みの文章を葬儀社へFAX送信して、葬儀社に電話する。
【0029】
(9)ステップ9-葬儀社との校正のやりとり-
二次校正済み文章に対して葬儀社からの修正指示があれば、パソコンに保存した二次校正済みの文章のデータを取り出してプリントアウトし、二次校正済みの文章をオリジナルの文章作成者以外であって且つ上記校正者以外の校正者により、段落0024と同様の方法(誤字や脱字の有無、チェックシートのチェック事項や葬儀社ごとの注意事項の順守の確認)で葬儀社の修正指示にしたがって修正を行う。葬儀社の修正指示に対しては、万全を期すために、以下の3点を実施する。
(1) 修正内容を最終原稿に目立つように赤色のペンで記入する。
(2) 取材用申込用紙を必要に応じて修正する。
(3) 修正後の最終原稿のデータをパソコンに保存した後、プリントアウトし、修正後の最終原稿を保持する。
そして、修正後の最終原稿を葬儀社へFAX送信する。葬儀社からの修正指示があった場合は、記録保持のために、修正箇所にマーカーを付して修正者以外の者がチェックを行い、チェック後にチェック者が印章及びサインをして、修正後の最終原稿を修正前の原稿とともに保持する。
【0030】
(10)ステップ10-最終原稿データの送信-
葬儀社から最終原稿で承認する旨の電話連絡があれば、最新の文章のデータをパソコンより取り出して、修正箇所及び前後の誤りの有無について最終チェックを行った後、PDFを作成する。PDFが完成したら、外枠線の有無を確認した後、葬儀社からの全修正指示が反映されているかどうかについて指差しと声出しをすることにより、PDFと修正後の最終原稿が同じであることを確認する。さらに、承認された最終原稿のデータを葬儀社へ送信する前に、宛先、件名、差出人及び添付データが承認された最終原稿のデータであることを確認した後、その最終原稿のデータを葬儀社へ送信する。葬儀社において、受信した最終原稿のデータをプリントアウトすることによって、例えば、図8に示すような、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることができる、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状を得ることができる。」
6 当審の判断
(1)発明の詳細な説明に記載された技術的意義について
本願は、上記5(1)のとおり、会葬礼状の文章は既存の定型のものであって、受け取る側に十分に感謝の気持ちが伝わらないことが多く、各葬儀社からの要求には共通部分はあるものの、それぞれの葬儀社で注意点が異なっていることから、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることができるとともに、間違いなくそれぞれの依頼者(葬儀社)を経由して、間違いなくそれぞれの遺族に届けることができる世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状の提供システムを提供することを、発明が解決しようとする課題としている。
そして、上記課題を解決するために、上記5(2)のとおり、葬儀社から会葬礼状の注文を受けるステップと、上記注文で特定された遺族への電話による取材をするステップと、上記取材により知り得た事項をデータとして保存手段に保存するステップと、上記保存手段に保存したデータに基づいてオリジナルの文章を作成するステップと、作成した文章をデータとして保存手段に保存するステップと、保存手段に保存した文章のデータを取り出して文章を校正するステップと、校正済みの文章をデータとして保存手段に保存するステップと、校正済みの文章を葬儀社へ送信するステップと、葬儀社から校正済みの文章に対する承認を受けるステップと、承認された文章のデータを保存手段に保存した後に葬儀社へ送信するステップとを有し、会葬礼状の注文は、取材のために必要な事項が記載された取材用申込用紙を送信することにより行われ、電話による取材は、オリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シートを用いて行われ、取材シートの裏面には葬儀社共通のチェック事項が記載されており、オリジナルの文章を作成するステップは、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項をチェックしつつ、葬儀社からの注意事項が記載された台紙により行われる、との構成を採用するものである。
これにより、上記5(3)のとおり、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることができるとともに、間違いなくそれぞれの依頼者(葬儀社)を経由して、間違いなくそれぞれの遺族に届けることができる、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状の提供システムを提供することができるものであって、間違いなく正確に取材することができ、世界でたった一つのオリジナリティを確実に発揮することができ、比類なき正確さで、依頼者が満足できるオリジナリティにあふれた文章を作成することができる、との効果を奏するものである。
具体的には、上記5(4)のとおり、葬儀社と会葬礼状を作成するために、喪家の誰に、いつ取材をすればよいかを打ち合せ、「法人様用」、「個人様の生前のお話(お人柄・思い出)をお聞かせください(電話で約3分ほど)」、「当社スタッフが失礼のないようにお電話でお話を伺い、オリジナル会葬礼状文章制作の参考にさせていただきます。」と記載された取材用申込用紙(図1)に取材のために必要な事項を記載して、FAXにより所定の宛先に送信し、
葬儀社から注文を受けた側は、
取材前に、取材用申込用紙に不備がないかどうかを確認し、
葬儀社の指定の時間に指定の番号に電話をかけ、「お人柄・ご性格」、「お仕事」、「大切なご家族」、「ご趣味」、「印象深いお姿・思い出」、「軸となるエピソード」、「故人様へ贈る「最後の言葉」」等の事項が記載された取材シート(図2、図4)に基づいて、手際よく臨機応変に、遺族の率直な思いや遺族が特に伝えたい内容などの会葬礼状作成のポイントとなる事項は必ず聞き出すように取材をし、
取材により知り得た事項をデータとしてパソコンに保存し、
各社共通チェック事項(「□ 申込書は複数ないか(全て見比べる) □ □ □ 校正台紙は右上に記載されている葬儀社(会館)のものを使用しているか(縦型/横型/その他台紙タイプ)・・・」)が記載されたチェックシート(図3、図5)のチェック事項をチェックしつつ、葬儀社ごとの注意事項(「●●●葬儀社(短縮・●●●) ・・・<<校正「2」の確認事項>> □数字の「一」が入るときは、スペース入れる(住所、文中すべて)・・・」、「●●セレモニー・・・<<校正「2」の確認事項>> ←必ず徹底!読み方がついていないとご立腹です! □長い文章・難しい漢字はNG!・・・」等(当審注.「校正2」の「2」は丸数字であるが、ここでは「2」と表記した。以下、同じ。)が記載された台紙(図6、図7)を用いて、パソコンに保存した上記データに基づいて会葬礼状のオリジナルの文章を作成し、
そのオリジナルの文章のデータをパソコンに保存し、
パソコンに保存したオリジナルの文章のデータを取り出してプリントアウトし、誤字や脱字がないか、チェックシートのチェック事項や葬儀社ごとの注意事項が守られているかについて、一次校正、二次校正を行い、
二次校正済みの文章を葬儀社へFAX送信して、
二次校正済み文章に対して葬儀社からの修正指示があれば、葬儀社の修正指示にしたがって修正を行い、
葬儀社から最終原稿で承認する旨の電話連絡があれば、承認された最終原稿のデータを葬儀社へ送信する
ものである。
このように、本件補正発明の技術的意義は、葬儀社からの注文を受けた側のスタッフ(以下、「スタッフ」という。)が、遺族との電話による取材により得られた事項に基づいて、会葬礼状のためのオリジナルの文章(以下、「オリジナルの文章」という。)を作成し、葬儀社からの注文を受けた側の他のスタッフ(以下、「他のスタッフ」という。)により、作成されたオリジナルの文章の校正を行い、校正を行ったオリジナルの文章に対する葬儀社の承認を得て、葬儀社に承認を得たオリジナルの文章を送信することで、世界でたった一つのオリジナリティを確実に発揮することができ、比類なき正確さで、依頼者が満足できるオリジナリティにあふれた文章を作成することができる、というものである。
(2)本件補正発明の構成について
本件補正発明は、上記(1)のとおりの技術的意義を有するものであって、葬儀社からの会葬礼状の注文を受信すると、取材シートに基づいて遺族に対して電話による取材を行い、取材で知り得た事項を保存し、保存した取材で知り得た事項に基づき、オリジナルの文章を作成し、オリジナルの文章を保存し、保存したオリジナルの文章を、取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項、及び、台紙に記載された葬儀社からの注意事項に基づいて、作成したオリジナルの文章の校正を行い、校正したオリジナルの文章を葬儀社へ送信し、葬儀社から承認を受けると、承認されたオリジナルの文章を保存後、承認されたオリジナルの文章を葬儀社に送信するものである。
このように、本件補正発明は、スタッフ及び他のスタッフによる、オリジナルの文章を作成するための周辺業務の作業手順を特定するものである。
そして、取材シートには、「お人柄・ご性格」、「お仕事」、「大切なご家族」、「ご趣味」、「印象深いお姿・思い出」、「軸となるエピソード」、「故人様へ贈る「最後の言葉」」等の事項が記載されており、取材シートの裏面には、チェックシートとして、各社共通チェック事項である、「□ 申込書は複数ないか(全て見比べる) □ □ □ 校正台紙は右上に記載されている葬儀社(会館)のものを使用しているか(縦型/横型/その他台紙タイプ)・・・」等が記載され、台紙には、葬儀社ごとの注意事項である、「●●●葬儀社(短縮・●●●) ・・・<<校正「2」の確認事項>> □数字の「一」が入るときは、スペース入れる(住所、文中すべて)・・・」、「●●セレモニー・・・<<校正「2」の確認事項>> ←必ず徹底!読み方がついていないとご立腹です! □長い文章・難しい漢字はNG!・・・」等が記載されているものの、いずれの記載事項も、スタッフに対する注意・制限を意識させるものであって、スタッフ又は他のスタッフに、業務上の、注意事項や執るべき行動を把握させるという、専ら、人間の精神活動に向けられたものであり、オリジナルの文章の作成を技術的に支援するものではない。
また、構成要件Aの「注文を受ける」、構成要件Hの「校正済みの文章」を「送信する」、構成要件Iの「校正済みの文章に対する承認を受ける」、構成要件Jの「承認された文章のデータを送信する」ことは、何らかの通信手段により実現されるものであって、これらの通信手段と構成要件Bの「電話」について、オリジナルの文章を作成するための周辺作業としての、葬儀社、会葬礼状の作成を行う側、遺族との間の意思疎通を図るための手段であることが特定されるのみであって、これらの電話や何らかの通信手段は、オリジナルの文章の作成との間に技術的な関係はなく、業務上の手続のために使用されるという、専ら、人為的な取決めに向けられたものである。
さらに、保存手段も、取材により知り得た事項や、作成したオリジナルの文章、校正したオリジナルの文章、葬儀社の承認を得たオリジナルの文章を、業務上の「データ」として保存するための手段として特定するのみで、スタッフが取材により知り得た事項を備忘録又は業務報告等として保存したり、作成したオリジナルの文章をスタッフから他のスタッフへ引き渡すために保存したり、取り出したりする手段にすぎず、人間の精神活動又は人為的な取決めに向けられたものである。
このように、本件補正発明が、取材シート、台紙、何らかの通信手段、電話及び保存手段を利用することで、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状を提供可能にするものであるものの、取材シート、台紙、何らかの通信手段、電話及び保存手段は、「世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状」、「依頼者が満足できるオリジナリティにあふれた文章」を作成する、との効果との関係で、技術的意義があるとはいえない。
よって、本件補正発明は、スタッフ及び他のスタッフが行う業務内容それ自体を特定するものであって、人為的な取り決め、又は、人間の精神活動に該当するものであって、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、「発明」に該当しない。
(3)本件補正発明の各構成要件について
念のため、各構成要件について検討を行う。
ア 構成要件A1、A2について
構成要件A1は、「葬儀社」から「会葬礼状の注文」を「受ける」ことを特定するにとどまる。また、構成要件A2は、「会葬礼状の注文」は、「取材のために必要な事項とともにオリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせて頂きますという内容が記載された取材用申込用紙」を「送信する」ことを特定するにとどまる。
イ 構成要件B1、B2について
構成要件B1は、「上記注文で特定された遺族」への「電話による取材をする」ことを特定するにとどまる。また、構成要件B2は、「電話による取材」は、「印象深いお姿や特別な思い出を含むオリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された」「取材シートを用いて行われ」ること、このとき、「当該取材シートの裏面」には「宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む葬儀社共通のチェック事項」が「記載され」ることを特定するにとどまる。
ウ 構成要件Cについて
構成要件Cは、「上記取材により知り得た事項」を「データ」として「保存手段に保存する」ことを特定するにとどまる。
エ 構成要件D1、D2について
構成要件D1は、「上記保存手段に保存したデータ」に「基づいて」「オリジナルの文章を作成する」ことを特定するにとどまる。このとき、構成要件D2は、「オリジナルの文章を作成するステップ」が、「取材シートによる取材により知り得た事項」に「基づいて」、「取材シートの裏面に記載された葬儀社共通のチェック事項」を「チェックしつつ」、「お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む、葬儀社からの注意事項」が「記載された台紙」により「行われる」ことを特定するにとどまる。
オ 構成要件Eについて
構成要件Eは、「作成した文章」を「データ」として「保存手段に保存する」ことを特定するにとどまる。
カ 構成要件Fについて
構成要件Fは、「保存手段に保存した文章のデータ」を「取り出して」「文章を校正する」ことを特定するにとどまる。
キ 構成要件Gについて
構成要件Gは、「校正済みの文章」を「データ」として「保存手段に保存する」ことを特定するにとどまる。
ク 構成要件Hについて
構成要件Hは、「校正済みの文章」を「葬儀社」へ「送信する」ことを特定するにとどまる。
ケ 構成要件Iについて
構成要件Iは、「葬儀社」から「校正済みの文章」に対する「承認」を「受ける」ことを特定するにとどまる。
コ 構成要件Jについて
構成要件Jは、「承認された文章のデータ」を「保存手段に保存した後」に「葬儀社」へ「送信する」ことを特定するにとどまる。
サ 構成要件Kについて
構成要件Kは、構成要件A1~Jのステップ、並びに、A2、B2、D2の構成を有する「会葬礼状の提供システム」を特定するにとどまる。
シ 小括
そうすると、各構成要件について検討をしても、それぞれの構成要件は、業務内容を特定する人為的な取り決め、又は、スタッフ及び他のスタッフが参照することで、取材すべき事項、注意事項を理解するという人間の精神活動に該当する。このように、各構成要件を個別に検討した上で検討をしても、技術的なものに向けられている構成はないから、本件補正発明は、全体として、自然法則を利用したとはいえず、「発明」に該当しない。
(4)「コンピュータソフトウエア関連発明」の観点について
ア 本件補正発明は、「会葬礼状の提供システム」であって、「保存手段」、何らかの通信手段を有することから、「コンピュータソフトウエア関連発明」であることは明らかである。そこで、このコンピュータソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するかを検討する。
イ ソフトウエア関連発明のうちソフトウエアについては、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合は、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。
ウ 本件補正発明は、会葬礼状の提供システムが「保存手段」、何らかの通信手段を有することは記載されているものの、「会葬礼状の提供システム」において、上記(2)、(3)のとおり、保存手段が、取材により知り得た事項や、作成したオリジナルの文章、校正したオリジナルの文章、葬儀社の承認を得たオリジナルの文章を、業務上「データ」として保存すること、何らかの通信手段が、「注文を受ける」こと、「校正済みの文章」を「送信する」こと、「校正済みの文章に対する承認を受ける」こと、「承認された文章のデータを送信する」ことを実行することが特定されるのみである。
このように、本件補正発明は、具体的な情報処理内容を特定するものではなく、遺族との電話による取材により得られた事項に基づいて、オリジナルの文章を作成し、他のスタッフにより、作成されたオリジナルの文章の校正を行い、校正を行ったオリジナルの文章に対する葬儀社の承認を得て、葬儀社に承認を得たオリジナルの文章を送信することで、世界でたった一つのオリジナリティを確実に発揮することができ、比類なき正確さで、依頼者が満足できるオリジナリティにあふれた文章を作成することができる、というものである。
そうすると、会葬礼状の提供システムが有する保存手段及び何らかの通信手段は、単なる道具としての使用にとどまるから、本件補正発明は、全体として、人為的な取決め、又は、人間の精神活動にすぎない。
エ さらに念のため、本件補正発明を上記3のように分説したときの各構成要件について検討をしても、上記(3)のとおりであり、コンピュータによる情報処理は特定されていない。
オ そうすると、本件補正発明は、全体を見ても、各構成要件を見ても、情報処理は特定されているとはいえないから、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又は動作方法が構築されているとはいえない。
カ よって、本件補正発明は、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、コンピュータソフトウエア関連発明の観点で検討をしても、「発明」に該当しない。
7 請求人の主張について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において、特許法第29条第1項柱書について、以下のとおり主張している。
「このように、本件発明1の会葬礼状の提供システムは、構成要件Aに規定される「取材用申込用紙」と、構成要件Bに規定される「取材シート」と、構成要件Cに規定される「台紙」を、その技術的課題を解決するための技術的手段とするものです。」
「(a)本件発明1の会葬礼状の提供システムは、取材用申込用紙に関する構成(上記構成要件A)を採用したことにより、次のような効果を奏します。
取材用申込用紙には、オリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせていただきますと記載されていますので、取材される遺族には、その会葬礼状は故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いを反映させたものにしたいという強い動機付けが働きます。
(b)本件発明1の会葬礼状の提供システムは、取材シートに関する構成(上記構成要件B)を採用したことにより、次のような効果を奏します。
取材シートを通して印象深いお姿や特別な思い出が会葬礼状に反映されることにより、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いを反映させた会葬礼状を作成することができます。
また、取材シートには、宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む葬儀社共通のチェック事項が記載されていますので、依頼者の意に沿ったオリジナルの会葬礼状を作成することができます。
(c)本件発明1の会葬礼状の提供システムは、台紙に関する構成(上記構成要件C)を採用したことにより、次のような効果を奏します。
台紙には、お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む、葬儀社からの注意事項が記載されていますので、依頼者の意に沿ったオリジナルの会葬礼状を作成することができます。」
「このように、「取材用申込用紙」、「取材シート」及び「台紙」は単なる道具ではなく、上記課題を解決するために相互作用することにより、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることができる、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状を提供するという課題を解決することができます。」
以上の主張をまとめると、本件補正発明は、「取材用申込用紙」、「取材シート」及び「台紙」を用いることで、これらが相互作用し、故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えることができる、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状を提供するという課題を解決するというものであるといえる。
(2)請求人の主張の検討
請求項1の「取材のために必要な事項とともにオリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせて頂きますという内容が記載された取材用申込用紙」、「印象深いお姿や特別な思い出を含むオリジナルの会葬礼状を作成するために必要な項目が記載された取材シート」、「当該取材シートの裏面には宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む葬儀社共通のチェック事項が記載されており」、「お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む、葬儀社からの注意事項が記載された台紙」との記載から、「取材用申込用紙」、「取材シート」及び「台紙」は、人であるスタッフが行う業務の技術的な支援を行うものではなく、当該スタッフが、「取材用申込用紙」、「取材シート」及び「台紙」に記載されている内容を確認して、業務を遂行するという、専ら、人間の精神活動に向けられていることは明らかである。
より具体的には、「取材用申込用紙」は、そこに記載される「取材のために必要な事項」の内容からみて、葬儀社から注文を受けた側のスタッフが電話取材を行うための確認事項を葬儀社に送信し確認するためのものであって、上記取材用申込用紙を見たスタッフが、取材の日時や相手等を確認するという、専ら、人間の精神活動に向けられたものである。
「取材シート」は、その表(おもて)面に記載される「会葬礼状を作成するために必要な項目」の内容から見て、「取材シートに基づいて、手際よく臨機応変に、遺族の率直な思いや遺族が特に伝えたい内容などの会葬礼状作成のポイントとなる事項は必ず聞き出すように取材をする」ためのものであって、取材をするスタッフが、当該取材シートを見て会葬礼状作成のポイントとなる事項を必ず聞き出すという、専ら、人間の精神活動に向けられたものである。
さらに、「取材シート」は、その裏面に記載される「宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む葬儀社共通のチェック事項」の内容、及び、「台紙」は、そこに記載される「お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉を含む、葬儀社からの注意事項」の内容から見て、「右側に葬儀社ごとの注意事項が記載された台紙を用いて、・・・会葬礼状のオリジナルの文章を作成」するスタッフが、「各葬儀社のそれぞれの特徴(宗派や神式などによって細かい注意事項がある)に従って忠実に作業がなされ、各葬儀社のフォーマットで故人の生前の人柄や故人に対する遺族の思いやお世話になった方々への感謝の気持ちが会葬礼状に記載され、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状を作成することができ」、「チェックシートでセルフチェックを行うことにより、依頼者の意向を漏らすことなく、依頼者に満足される文章を作成することができる」という、専ら、人間の精神活動に向けられたものである。
以上のとおりであるから、「取材用申込用紙」、「取材シート」及び「台紙」自体が、スタッフによるオリジナルの文章を作成するための技術的支援を行うものではなく、「取材用申込用紙」、「取材シート」及び「台紙」に記載されている内容(コンテンツ)に基づき、人であるスタッフが、オリジナルの文章を作成するために必要な周辺業務を遂行するものであるから、上述したとおり、本件補正発明は、全体として自然法則を利用したものではなく、「発明」に該当しない。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
8 小括
したがって、本件補正発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
9 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159第条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年8月16日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~4に係る発明は、令和3年3月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2」[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
1.(発明該当性)この出願の請求項1~4に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:kanri、“月刊フューネラルビジネス7月号の「注目の葬儀支援企業レポート」にマコセが掲載されました。”、macose Blog Archive [ONLINE]、macose、2018年 6月22日、p.1~11、[検索日:2020/12/21]、<URL>https://www.macose.jp/information/?p=2382
3 当審の判断
事案に鑑み理由1(発明該当性)について検討する。
まず、上記「第2」の2で検討したとおり、補正事項4の1は、本件補正の前後で特許請求の範囲の特定事項に実質的に変わりがないから、補正事項4の1によって付加された構成が削除されたとしても、上記「第2」で行った、「本件補正発明が自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、「発明」に該当しない」との判断と同様に、本願発明も自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、「発明」に該当しない。
次に、補正事項1~3及び補正事項4の2で付加された構成がない本願発明について検討する。
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項である
「取材用申込用紙」の記載内容から「オリジナル会葬礼状の文章制作の参考にさせて頂きますという内容」(補正事項1)、
「取材シート」の記載内容から「印象深いお姿や特別な思い出を含む(オリジナルの会葬礼状を作成するために必要な)項目」(補正事項2)、
「取材シートの裏面」の記載内容から「宗派の違いが令状の内容に反映されているかを含む(葬儀社共通の)チェック事項」(補正事項3)、
「台紙」の記載内容から「お世話になった方々への感謝の気持ちを伝える言葉」、(補正事項4の2)
を、それぞれ削除した発明特定事項を含むものといえる。
そして、これらの本件補正により付加された発明特定事項が削除されたことによっても、本願発明は、取材シート、台紙、何らかの通信手段、電話及び保存手段を利用することで、世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状を提供可能にするものであるものの、取材シート、台紙、何らかの通信手段、電話及び保存手段は、「世界でたった一つのオリジナルの会葬礼状」、「依頼者が満足できるオリジナリティにあふれた文章」を作成する、との効果との関係で、技術的意義があるとはいえないことに変わりはない。
よって、本願発明は、スタッフ及び他のスタッフが行う業務内容それ自体を特定するものであって、人為的な取り決め、又は、人間の精神活動に該当するものであって、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、「発明」に該当しない。
第4 むすび
上記のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-010876