審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-005389

電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ

審判番号
2021-005389
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-503819外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月26日
審決日
2022年01月20日
公報発行日
2022年07月29日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H05B) / P18 .575-Z (H05B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-503819「電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日国際公開、WO2016/162498、平成30年 8月 2日国内公表、特表2018-521487〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年4月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年4月10日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。 令和2年 2月20日付け 拒絶理由通知 令和2年 8月25日 意見書及び手続補正書の提出 令和2年12月18日付け 拒絶査定 令和3年 4月26日 審判請求書、同時に手続補正書の提出 令和3年 5月25日 手続補正書(請求の理由)の提出 令和3年12月28日 上申書の提出 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年4月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。 「【請求項1】 所定の励起周波数でのマイクロ波放射に応じてRFアンテナ信号を生成するための、所定の同調周波数を有するマイクロ波アンテナと、 所定の信号制限特性に従って、RFアンテナ信号の信号波形のピーククリッピングによって、またはRFアンテナ信号の自動利得制御によって、前記RFアンテナ信号の振幅を制限し、制限されたRFアンテナ信号を生じさせるための、前記RFアンテナ信号に連結されたRFパワーリミッタと、 前記制限されたRFアンテナ信号に連結され、前記制限されたRFアンテナ信号を整流して、電源電圧を生じさせるように構成された直流電源回路と、 前記電源電圧に接続され、電子レンジ庫内での加熱下にある食品の物理的または化学的特性を測定するように構成されたセンサと、 を備える、電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の令和2年8月25日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 所定の励起周波数でのマイクロ波放射に応じてRFアンテナ信号を生成するための、所定の同調周波数を有するマイクロ波アンテナと、 所定の信号制限特性に従って前記RFアンテナ信号の振幅または電力を制限し、制限されたRFアンテナ信号を生じさせるための、前記RFアンテナ信号に連結されたRFパワーリミッタと、 前記制限されたRFアンテナ信号に連結され、前記制限されたRFアンテナ信号を整流して、電源電圧を生じさせるように構成された直流電源回路と、 前記電源電圧に接続され、電子レンジ庫内での加熱下にある食品の物理的または化学的特性を測定するように構成されたセンサと、 を備える、電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1を特定するために必要な事項である「RFパワーリミッタ」によって、「RFアンテナ信号の振幅を制限」する手法について、「RFアンテナ信号の信号波形のピーククリッピングによって、またはRFアンテナ信号の自動利得制御によって」との限定を新たに付加するとともに、「PFパワーリミッタ」で「RFアンテナ信号」について制限されるのが振幅または電力」であったのを、「振幅」のみとする限定を行った補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用例の記載事項 ア 引用例1 原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である、実願昭58-43596号(実開昭59-144441号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、「電子レンジの温度検知器」に関して図面とともに以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下、同様。)。 (ア)引用例1の記載 「本考案はこのような従前のものに於ける欠点に着眼して発明されたものであり、マグネトロンより出力されるマイクロ波を感熱針より臨出させたアンテナにて受信し、これを電気エネルギーに変換して電池に換る電源として利用する温度検知器に於ける電力供給方法を提供しようとするものである。」(明細書第3頁第9行-第15行) 「第1図は本考案に係る温度検知器を備えた電子レンジにて食品を加熱している状態の断面図であり、図中、1はオーブンにして、モータ2にて回転されるターンテーブル3を備え、このターンテーブル3上に載置された食品Fを加熱するマグネトロン4を天井壁に設けている。 5は本考案に係る温度検知器にして、感熱針と呼称され食品Fに挿入される金属製保護容器6よりアンテナ7を臨出し、このアンテナ7にて受信したマイクロ波を電気エネルギーに変換すると共にこのエネルギーを、感熱素子を始め種々の部品の電源として作用させ送信器から超音波へ光、又は電波等の搬送波を発信させるものであり、その詳細は後程述べる。」(明細書第3頁第18行-第4頁第11行) 「当該図に於いて、11は電力発生回路にして、これは第3図に示す如き構成を呈している。 即ち、これは上記アンテナ7を含みこのアンテナ7で受信したマイクロ波を電気エネルギーに変換し、マイクロ波電圧(電流)V1(第4図(イ)参照)を出力する電気エネルギー発生回路部12と、このマイクロ波電圧V1を第4図(ロ)のような波形信号に包絡線検波する検波回路部13と、この検波回路部13より出力される検波電圧V2を平滑(第4図(ハ)のV3)すると共にこれを第4図(ニ)の如き、定電圧V4の波形に補正して出力する定電圧発生回路部14とより構成されている。」(明細書第5頁第6行-第17行) 「再度、第2図に戻って、15は上記保護容器6の先端に収容されたサーミスタの如き感熱素子にして、食品Fの温度変化に基づいて抵抗値を変化させ、それに応じた電気信号P1を出力する、所謂、温度-電気変換手段である。 16はこの感熱素子15からの電気信号P1を変換し次段の送信器17に供給する変換器にして、この送信器17が出力する搬送波P3の種類(超音波、電波或いは光等)によって、それに応じた信号P2を出力する構成に成っている。 そして斯る構成に於いて、これら感熱素子15、変換器16、及び送信器17には上記電力発生回路11から電力V4が供給され、又、送信器17より出力される搬送波P3は上記受信器8に受信され、ここで適当な温度情報としての電気信号P4に変換されると共に、制御回路9に導入されるべく成っている。」(明細書第5頁第18行-第6頁第14行) 「又、この第5図に於いて、保護容器6の尖端に内蔵しているのが、感熱素子15であり、又、他端に位置するのが搬送波P3を出力する為の送信器17であって、これには感熱素子15より出力される電気信号P1を適宜な信号P2を出力する上記変換器16も含んでいる。 このように構成される温度検知器5をオーブン1内に於いて、食品Fにその尖端部より差し込みマグネトロン4よりマイクロ波を照射すると、斯るマイクロ波はアンテナ7にて受信され、これに基づいて、電気エネルギー発生回路部12からはマイクロ波電圧V1が出力される。この電圧V1は検波回路部13を経て定電圧発生回路部14から電気発生回路11の出力として定電圧V4の形で出力される。 そして、この出力された電力は感熱素子15、変換器16、送信器17の駆動電圧となり、従って、感熱素子15は食品Fの温度変化に伴って抵抗値を変え、電気信号P1を出力する。」(明細書第12頁第20行-第13頁第18行) 「 [図:0001385798000001.jpg] 」 「 [図:0001385798000002.jpg] 」 「 [図:0001385798000003.jpg] 」 「 [図:0001385798000004.jpg] 」 (イ)上記(ア)から分かること 1a)明細書第5頁第6行-第17行、明細書第12頁第20行-第13頁第18行、第3図及び第4図の記載から、アンテナ7がマイクロ波照射に応じてマイクロ波電圧V1を生成し、マイクロ波電圧V1に連結される検波回路部13及び定電圧発生回路部14がマイクロ波電圧V1を包絡線検波して、平滑すると共に補正して定電圧V4を生じさせていることが分かる。 1b)明細書第5頁第6行-第17行には、電力発生回路11は電気エネルギー発生回路部12と検波回路部13と定電圧発生回路部14とにより構成されていることが記載されており、また、明細書第5頁第18行-第6頁第14行には、感熱素子15は電力発生回路11から電力V4が供給されていることが記載されているので、感熱素子15は定電圧発生回路部14に接続されていることが分かる。 1c)第1図をみると、温度検知器5が電子レンジのオーブン1内に設けられていることが、第5図には感熱素子15が温度検知器5内に設けられていることがそれぞれ分かり、また、明細書第5頁第18行-第6頁第14行には、感熱素子15は食品Fの温度変化に基づいて抵抗値を変化して、それに応じた電気信号P1を出力することが記載されているので、感熱素子15は、電子レンジのオーブン1内での加熱下にある食品Fの温度変化を測定していることが分かる。 1d)第5図をみると、温度検出器5は、アンテナ7と、検波回路部13、定電圧発生回路部14、感熱素子15を備えていることが分かる。 (ウ)引用発明 上記(ア)及び(イ)からみて、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「マイクロ波照射に応じてマイクロ波電圧V1を生成するための、アンテナ7と、マイクロ波電圧V1に連結され、マイクロ波電圧V1を包絡線検波して、平滑すると共に補正して、定電圧V4を生じさせるように構成された、検波回路部13及び定電圧発生回路部14と、前記定電圧発生回路部14に接続され、電子レンジのオーブン1内での加熱下にある食品Fの温度変化を測定するように構成された感熱素子15と、を備える、電子レンジの温度検知器5」 イ 引用例2 原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2006-166522号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (ア)引用例2の記載 「【0035】 図2(a)において、マイクロ波変換手段2及び電気的要素6の回路構成は、例えば中空円筒状又はロッド状の導体より形成され、電子レンジ1内のマイクロ波を検知するアンテナコイル20と、検知されたマイクロ波に基づき発生した高周波電流(共振電流)を整流する検波ダイオード11と、直流電流(直流電力)の供給を受けて発光するLED12と、の直列回路よりなる。 【0036】 なお、例えば、アンテナコイル20として、その展開長がマイクロ波の波長の約1/4のヘリカルアンテナを採用することができる。これにより、共振電流を増加させることができる。また、検波ダイオード11として、ショットキーダイオード(ショットキーバリアダイオード)を採用することができる。これにより、高周波整流を適切に行うことができ、逆回復(リカバリ)特性を良好なものにすることができる。一方で、共振電流が大きすぎる場合には、電気的要素6が破壊される可能性がある。これを防ぐために、例えば、アンテナコイル20をセラミックなどの不導体で覆うことができる。また、回路中にサージ保護回路や過電流保護回路を介在させることもできる。このようにして、共振電流を低く抑えることで、所望の電流を取り出すことができる。」 「 [図:0001385798000005.jpg] 」 (イ)上記(ア)から分かること 2a)段落【0035】には、アンテナコイル20で電子レンジ1内のマイクロ波を検知すること、検波ダイオード11で検知されたマイクロ波に基づき発生した高周波電流(共振電流)を整流すること及び整流した直流電流(直流電力)を供給してLED12を発光させることが記載されており、当該段落【0035】及び図2の記載から、検知されたマイクロ波に基づき発生した高周波電流(共振電流)を整流して、直流電流(直流電力)を供給する回路が構成されていることが分かる。 2b)段落【0036】には、回路中にサージ保護回路や過電流保護回路を介在させることが記載されている。 (ウ)引用例2に記載された技術 上記(ア)及び(イ)からみて、引用例2には、以下の技術(以下、「引用例2技術」という。)が記載されている。 「検知されたマイクロ波に基づき発生した高周波電流(共振電流)を整流して、直流電流(直流電力)を供給する回路において、サージ保護回路や過電流保護回路を介在させること。」 (3)対比・判断 引用発明における「マイクロ波照射」は本願補正発明における「マイクロ波放射」に相当し、以下同様に、「アンテナ7」は「マイクロ波アンテナ」に、「検波回路部13及び定電圧発生回路部14」は「直流電源回路」に、「電子レンジのオーブン1内」は、「電子レンジ庫内」に、「食品F」は「食品」に、「温度変化」は「物理的または化学的特性」に、「感熱素子15」は「センサ」に、「電子レンジの温度検知器5」は「電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「マイクロ波電圧V1」は、本願補正発明における「RFアンテナ信号」と、「アンテナ信号」という限りにおいて一致し、引用発明の「マイクロ波電圧V1を包絡線検波して、平滑すると共に補正して、定電圧V4を生じさせる」は、本願補正発明における「RFアンテナ信号を整流して、電源電圧を生じさせる」と「アンテナ信号から電源電圧を生じさせる」という限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「マイクロ波放射に応じてアンテナ信号を生成するための、マイクロ波アンテナと、アンテナ信号に連結され、前記アンテナ信号から電源電圧を生じさせるように構成された直流電源回路と、前記電源電圧に接続され、電子レンジ庫内での加熱下にある食品の物理的または化学的特性を測定するように構成されたセンサと、を備える、電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ」 [相違点1] 「アンテナ信号」に関して、本願補正発明においては、アンテナ信号が「RF」信号であるのに対し、引用発明における「マイクロ波電圧V1」が「RF」信号であるのか特定されていない点。 [相違点2] 本願補正発明においては、「マイクロ波放射」が「所定の励起周波数」を有していると共に、「マイクロ波アンテナ」が「所定の同調周波数」を有しているのに対して、引用発明における「マイクロ波照射」が「所定の励起周波数」を有していると共に、「アンテナ7」が「所定の同調周波数」を有しているのか否か特定されていない点。 [相違点3] 「アンテナ信号から電源電圧を生じさせる」ことに関して、本願補正発明においては「RFアンテナ信号を整流して、電源電圧を生じさせる」のに対して、引用発明においては、「マイクロ波電圧V1を包絡線検波して、平滑すると共に補正して、定電圧V4を生じさせる」ものの、「マイクロ波電圧V1」から「定電圧V4」を生じさせる際に、「整流」しているのか否か特定されていない点。 [相違点4] 本願補正発明における「電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ」は、「所定の信号制限特性に従って、RFアンテナ信号の信号波形のピーククリッピングによって、またはRFアンテナ信号の自動利得制御によって、前記RFアンテナ信号の振幅を制限し、制限されたRFアンテナ信号を生じさせるための、前記RFアンテナ信号に連結されたRFパワーリミッタ」を備えており、「RFパワーリミッタ」によって「制限されたRFアンテナ信号」を、直流電源回路が整流して電源電圧を生じさせるのに対して、引用発明における電子レンジの温度検知器5は、「RFパワーリミッタ」を備えているか否か及び「RFパワーリミッタ」によって「制限されたRFアンテナ信号」を、検波回路部13及び定電圧発生回路部14が整流して電源電圧を生じさせているのか否か特定されていない点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1について] マイクロ波は高周波の電波、電磁波等のことを意味することは技術常識であるので、マイクロ波電圧V1はRF(radio frequency)信号であることは明らかである。 よって、「RF」信号について、両者は実質的に相違するものではない。 [相違点2について] 電子レンジにおいてはマグネトロンが食品加熱等に必要な所定の励起周波数でマイクロ波を放射することは技術常識であり、また、アンテナでマイクロ波放射に応じた信号を生成するためには、アンテナが所定の同調周波数を有していることが必要なことは技術常識である。 そして、引用例1の明細書第12頁第20行-第13頁第18行には、マグネトロン4が照射したマイクロ波をアンテナ7で受信することが記載されているので、引用発明における「マイクロ波照射」は「所定の励起周波数」を有していると共に、「アンテナ7」は「所定の同調周波数」を有していることは明らかである。 よって、「所定の励起周波数」、「所定の同調周波数」について、両者は実質的に相違するものではない。 [相違点3について] 整流とは正と負の振幅を有する波を正の振幅のみを有する波に変換(例えば、交流を直流に変換)することを意味することは技術常識である。 そして、引用例1の明細書第5頁第6行-第17行、第3図及び第4図の記載から、正と負の振幅を有するマイクロ波電圧V1が検波回路部13によって包絡線検波されることで、正の振幅のみを有するV2に変換されていることが分かることから、引用発明は検波回路部13によって整流していると認められる。 また、整流が単に正と負の振幅を有する波を正の振幅のみを有する波に変換するだけでなく、平滑して振幅が一定の波(例えば直流)に変換することまでも意味するものであったとしても、引用例1の明細書第5頁第6行-第17行、第3図及び第4図の記載から、当該V2を平滑して補正して、振幅が一定のV4に変換していることが分かることから、この場合においても、引用発明は検波回路部13及び定電圧発生回路部14によって、マイクロ波電圧V1を整流していると認められる。 よって、「整流」について、両者は実質的に相違するものではない。 [相違点4について] 電子レンジのマイクロ波はその振幅が変動すること及び定電圧生成回路において、過電圧や過電流が生じると負荷や回路素子が破壊されてしまうことは、それぞれ技術常識である。 そして、引用発明は、電子レンジのマイクロ波を感熱素子15の駆動電源とするための回路を備えたものであるので、過電圧や過電流による負荷や回路素子の破壊を防止するとの課題を内在するものである。 また、引用例2技術は、高周波電流(共振電流)を整流する回路において、サージ保護回路や過電流保護回路を介在させるものであるので、高周波電流が流れる回路において過電圧や過電流を防止するものであり、RFパワーリミッタであることは明らかである。 そうしてみると、引用発明において、回路素子や負荷の破壊の防止のために、引用例2技術を適用して、アンテナ7と検波回路部13との間にRFパワーリミッタを設けるように構成することは、当業者が容易になし得たことであり、また、「整流」については、上記[相違点3について]に記載したとおりである。 また、整流回路の前段に、高電圧をカットするピーククリッピングに基づくRFパワーリミッタを設けることは周知技術であり(例えば、特開2010-108486号公報の段落【0037】、図2及び特開2004-222285号公報の段落【0023】-【0026】、図1参照。以下、「周知技術1」という。)、また、整流回路の前段に、出力に対する入力の値を調整する自動利得制御に基づくRFパワーリミッタを設けることも周知技術である(例えば、特開2013-250985号公報の段落【0005】-【0009】、【0030】-【0033】、図1及び特開平10-145987号公報の段落【0024】、図4参照。以下、「周知技術2」という。)。 そうしてみると、引用発明に、引用例2技術を適用する際に、周知技術1又は周知技術2を参酌して、RFパワーリミッタの適用にあたって、ピーククリッピングに基づくRFパワーリミッタ又は自動利得制御に基づくRFパワーリミッタの何れかのパワーリミッタを採用することは、それぞれ当業者が適宜選択し得た設計的事項である。 そして、本願補正発明は、引用発明及び引用例2技術並びに周知技術1又は周知技術2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 審判請求人は、令和3年4月26日提出の審判請求書の手続補正書(令和3年5月25日提出)において、次のとおり主張している。 「(ハ)まず、引用文献2の技術的課題は、本発明や引用文献1のそれとは異なるものである。引用文献2は、LEDや蛍光ランプ、超音波振動子等の電気的要素6(負荷)に対する電力供給方法を開示しているに過ぎず、センサ(特に加熱されている食品の物理的又は化学的特性を測定するセンサ)に対する電力供給は、開示も示唆もしていない。引用文献2の技術的課題は、代替的な電力供給回路(すなわち「マイクロ波変換手段」)であり、「積層乾電池等を特に購入しなくても、マイクロ波から、アンテナ,ショットキーダイオードを介して電流を作り出すことができ、例えば家庭用電子レンジなどのマイクロ波照射装置を用いて簡便にLEDを発光させることができる」とされている(引用文献2の段落[0018])。さらに、引用文献2の図1に示されるように、電気的要素6(負荷)は、リード線等によってマイクロ波変換手段2と電気的に接続されており、切り離し可能な別個の要素である。 (ニ)また、仮に当業者が引用文献1と引用文献2を組み合わせるとしても、補正された請求項1のRFパワーリミッタの機能やマイクロ波駆動センサアセンブリの電気回路構成を得ることはないと思料する。引用文献2の段落[0036]に記載される「サージ保護回路や過電流保護回路」は、補正された請求項1のRFパワーリミッタとは全く異なるものであり、さらに、『RFアンテナ信号の信号波形のピーククリッピングによって、またはRFアンテナ信号の自動利得制御によって、前記RFアンテナ信号の振幅を制限』する特徴も有していない。補正された請求項1の『RFアンテナ信号の信号波形』は、引用文献2のような整流された直流供給電圧とは異なり、マイクロ波アンテナから直接的に無線周波信号(RF)(例えば2.45GHz)を制限するものである。 (ホ)引用文献2は、RFアンテナ信号を『RFアンテナ信号の信号波形のピーククリッピングによって、またはRFアンテナ信号の自動利得制御によって』制限することについて、一切の記載が無い。また、引用文献2の段落[0036]に記載される「サージ保護回路や過電流保護回路」は、RFアンテナ信号を制限するものではない。引用文献2の図2(a)(b)には、「サージ保護回路や過電流保護回路」が接続された態様は記載されていない。 (ヘ)引用文献2の図2(a)(b)にはいかなる回路ノードも記載されていない。このため、仮に当業者が、引用文献2の段落[0036]に記載される「一方で、共振電流が大きすぎる場合には、電気的要素6が破壊される可能性がある。これを防ぐために、・ ・・また、回路中にサージ保護回路や過電流保護回路を介在させることもできる。」を検討した場合、これらの回路は、直流電源電位で動作するように考えると思われる。この場合、例えば以下の図アの配置が考えられる。 [図ア] [図:0001385798000006.jpg] 図中、符号Lは新たに追加した「サージ保護回路」または「過電流保護回路」を示している。このように、「サージ保護回路」または「過電流保護回路」は、直流電源回路である電気的要素6(負荷)の直前かつ検波ダイオード11(整流要素)の後ろに配置することで、電気的要素6を過電流から保護することができる。しかしながらこの場合、検波ダイオード11を保護することはできず、また、「サージ保護回路」または「過電流保護回路」は、本願請求項1の「RFパワーリミッタ」のように、RFアンテナ信号と連結して制限されたRFアンテナ信号を生成するようには構成されていない。 (ト)本願請求項1のような「RFパワーリミッタ」を引用文献2の図2(a)に追加する場合、以下の図イのような配置が考えられる。 [図イ] [図:0001385798000007.jpg] 図中、符号Lは新たに追加した「RFパワーリミッタ」を示している。このように、「RFパワーリミッタ」は検波ダイオード11の直前かつアンテナコイル20の後ろに配置され、検波ダイオード11を過電流から保護することができる。 (チ)本発明が引用文献2の「サージ保護回路」または「過電流保護回路」と大きく異なる点は、本発明では、直流電源供給回路に加えて、壊れやすいRF検波ダイオード(引用文献2の図2aの検波ダイオードのようなRFショットキーダイオード)を過電流等から保護可能なことにある。引用文献2の「サージ保護回路」または「過電流保護回路」は、段落[0036]には電気的要素6の保護が可能であると記載されているに過ぎず、検波ダイオード11を保護することは記載されていない。」 上記(ハ)の主張について、引用例2技術は引用発明と同様に、駆動電源圧を生成する回路に係る技術であり、また、上記[相違点4について]で記載したとおり、引用発明は、過電圧や過電流による負荷や回路素子の破壊を防止するとの課題を内在するものである。 そうしてみると、引用発明に引用例2技術を適用する動機は存在すると認められ、引用発明への引用例2技術の適用が妨げられるとも認められない。 また、上記(ニ)、(ホ)の主張について、「RFアンテナ信号の信号波形のピーククリッピング」、「RFアンテナ信号の自動利得制御」によって振幅を制限するRFパワーリミッタは、上記[相違点4について]で記載したとおり、それぞれ周知技術であるので、引用発明におけるRFパワーリミッタの適用にあたって、何れかのパワーリミッタを採用することは、それぞれ当業者が適宜選択し得た設計的事項である。 また、上記(ヘ)~(チ)の主張について、上記[相違点4について]で記載したとおり、引用発明は、過電圧や過電流による負荷や回路素子の破壊を防止するとの課題を内在するものである。 そして、具体的に保護する対象に応じて保護回路の場所を選択することは、当業者が通常のなし得る設計的事項であるので、RFパワーリミッタを整流回路の前段に設けて、整流回路の保護も行うように構成することは、当業者が適宜設定し得た設計的事項に過ぎない。 よって、審判請求人の上記主張は採用できない。 また、令和3年12月28日に提出された上申書においても、上記審判請求書の手続補正書(令和3年5月25日提出)と同様の主張を行っているが、上述したように当該上申書における主張も採用できない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2技術並びに周知技術1又は周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、令和2年8月25日提出の手続補正書により補正された請求項1ないし18に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし18に係る発明は、本願の出願日(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 ・請求項1ないし18に対して、引用例1ないし5 <引用例一覧> 1.実願昭58-43596号(実開昭59-144441号)のマイクロフィルム 2.特開2006-166522号公報 3.特開2004-222285号公報 4.実願平5-17127号(実開平6-76835号)のCD-ROM 5.実願昭51-138517号(実開昭53-56153号)のマイクロフィルム 3 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、引用例2の記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は前記第2 2で検討した本願補正発明から、「RFパワーリミッタ」によって、「RFアンテナ信号の振幅を制限」する手法についての「RFアンテナ信号の信号波形のピーククリッピングによって、またはRFアンテナ信号の自動利得制御によって」との限定を省くとともに、「PFパワーリミッタ」で「RFアンテナ信号」について制限される対象を、「RFアンテナ信号の振幅」から、「振幅または電力」としたものである。 そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、上記第2 2(3)で検討した[相違点1]ないし[相違点3]、及び、以下の[相違点4’]において相違し、その余の点で一致する。 [相違点4’] 本願発明における「電子レンジ用マイクロ波駆動センサアセンブリ」は、「所定の信号制限特性に従って前記RFアンテナ信号の振幅または電力を制限し、制限されたRFアンテナ信号を生じさせるための、前記RFアンテナ信号に連結されたRFパワーリミッタ」を備えており、「RFパワーリミッタ」によって「制限されたRFアンテナ信号」を、直流電源回路が整流して電源電圧を生じさせるのに対して、引用発明における電子レンジの温度検知器5は、「RFパワーリミッタ」を備えているか否か及び「RFパワーリミッタ」によって「制限されたRFアンテナ信号」を、検波回路部13及び定電圧発生回路部14が整流して電源電圧を生じさせているのか否か特定されていない点。 以下、相違点4’について検討する。 上記[相違点4について]で記載したとおり、電子レンジのマイクロ波はその振幅が変動すること及び定電圧生成回路において、過電圧や過電流が生じると負荷や回路素子が破壊されてしまうことは、それぞれ技術常識であり、引用発明は、電子レンジのマイクロ波を感熱素子15の駆動電源とするための回路を備えたものであるので、過電圧や過電流による負荷や回路素子の破壊を防止するとの課題を内在するものである。 また、引用例2技術は、高周波電流(共振電流)を整流する回路において、サージ保護回路や過電流保護回路を介在させるものであるので、高周波電流が流れる回路において過電圧や過電流を防止するものであり、RFパワーリミッタであることは明らかである。 そうしてみると、引用発明において、回路素子や負荷の破壊の防止のために、引用例2技術を適用して、アンテナ7と検波回路部13との間にRFパワーリミッタを設けるように構成することは、当業者が容易になし得たことであり、また、「整流」については、上記[相違点3について]に記載したとおりである。 そして、相違点1ないし3については、上記[相違点1について]ないし[相違点3について]において検討したとおりであり、相違点4’については、以上のとおりなので、本願発明は、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定による特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-005389

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2023-004129拒絶査定不服審判 / 2024-01-05 / 請求不成立鋼板用誘導加熱装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-011968拒絶査定不服審判 / 2023-05-22 / 請求不成立ヒーター
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2021-008230拒絶査定不服審判 / 2022-03-17 / 請求不成立集積ヒーターおよび製造方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2020-010193拒絶査定不服審判 / 2021-03-05 / 請求不成立延長された寿命を有する高解像低消費電力OLEDディスプレイ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2020-006493拒絶査定不服審判 / 2021-01-28 / 請求不成立長寿命および低消費電力のRGBW OLEDディスプレイ
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)409件(121・H05B、575・H05B)
  • 2025-000814拒絶査定不服審判 / 2025-11-07 / 請求不成立有機EL表示装置、およびその製造方法
    共通の審決分類: 121・H05B、575・H05B
  • 2023-011135拒絶査定不服審判 / 2024-06-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・H05B、575・H05B
  • 2023-004129拒絶査定不服審判 / 2024-01-05 / 請求不成立鋼板用誘導加熱装置
    共通の審決分類: 121・H05B、575・H05B
  • 2022-011968拒絶査定不服審判 / 2023-05-22 / 請求不成立ヒーター
    共通の審決分類: 121・H05B、575・H05B
  • 2022-008585拒絶査定不服審判 / 2023-01-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)被加熱体の加熱領域制御方法、化学反応方法、及びマイクロ波照射システム
    共通の審決分類: 121・H05B、575・H05B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存