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特許拒絶査定不服審判

2025-000814

有機EL表示装置、およびその製造方法

審判番号
2025-000814
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-175432
請求日
2025年01月21日
審決日
2025年11月07日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】artience株式会社
  • 【請求人】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 神谷 健一
  • 審判官 川村 大輔
分類
P18 .113-Z (H05B) / P18 .121-Z (H05B) / P18 .575-Z (H05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-175432「有機EL表示装置、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月 2日出願公開、特開2022- 66859〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2020-175432号(以下「本件出願」という。)は、令和2年10月19日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 令和6年 1月23日付け:拒絶理由通知 令和6年 3月19日 :意見書・手続補正書の提出 令和6年 6月11日付け:拒絶理由通知(最後の拒絶理由) 令和6年 8月 7日 :意見書・手続補正書の提出 令和6年11月 1日付け:補正の却下の決定及び拒絶査定(以下、この 拒絶査定を「原査定」という。) 令和7年 1月21日 :審判請求書・手続補正書の提出 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和7年1月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の(令和6年3月19日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 基板上に少なくとも赤色、緑色、および青色を表示する有機EL素子を有する有機EL表示装置であって、 前記赤色を表示する有機EL素子の上部に、赤色着色層を有し、 前記緑色を表示する有機EL素子の上部に、緑色着色層を有し、 前記青色を表示する有機EL素子の上部に、青色着色層を有し、 赤色を表示する有機EL素子の発光極大波長が600~650nmであり、 緑色を表示する有機EL素子の発光極大波長が500~550nmであり、 青色を表示する有機EL素子の発光極大波長が430~480nmであり、 波長400~700nmの範囲における光透過率において、 赤色着色層の最大光透過率の半値を超える波長範囲が600nm以上であり、 緑色着色層の最大光透過率波長が500~550nmであり、 青色着色層の最大光透過率波長が430~480nmであり、 赤色着色層の600~700nmの波長における光透過率の最小値が70%以上であることを特徴とする有機EL表示装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 基板上に少なくとも赤色、緑色、および青色を表示する有機EL素子を有する有機EL表示装置であって、 前記赤色を表示する有機EL素子の上部に、赤色着色層を有し、 前記緑色を表示する有機EL素子の上部に、緑色着色層を有し、 前記青色を表示する有機EL素子の上部に、青色着色層を有し、 赤色を表示する有機EL素子の発光極大波長が600~650nmであり、 緑色を表示する有機EL素子の発光極大波長が500~550nmであり、 青色を表示する有機EL素子の発光極大波長が430~480nmであり、 波長400~700nmの範囲における光透過率において、 赤色着色層の最大光透過率の半値を超える波長範囲が600nm以上であり、 緑色着色層の最大光透過率波長が500~550nmであり、 青色着色層の最大光透過率波長が430~480nmであり、 さらに赤色着色層の600~700nmの波長における光透過率の最小値が70%以上であり、 赤色着色層に含まれる着色剤(A)が、PR254と、化学式(8)~(10)で表される群から選ばれる少なくとも1種のキノフタロン顔料とを含有することを特徴とする有機EL表示装置。 化学式(8) 【化1】 [図:0001430930000001.jpg] 化学式(9) [図:0001430930000002.jpg] 【化2】 化学式(10) 【化3】 [図:0001430930000003.jpg] 」 (3)本件補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「赤色着色層」を、「PR254と、化学式(8)~(10)で表される群から選ばれる少なくとも1種のキノフタロン顔料とを含有する」着色剤(A)を含むものに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 2 独立特許要件についての判断(進歩性) (1)引用文献1の記載 引用文献1(原査定の拒絶の理由において引用された引用文献11、特開2009-186657号公報)は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで設けられた赤色着色層、緑色着色層及び青色着色層とを有し、前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含み、前記青色着色層が染料色素を含むことを特徴とする染料顔料複合型カラーフィルタ。 …省略… 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項に記載の染料顔料複合型カラーフィルタと、少なくとも赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層を有する有機EL発光体とを貼り合わせてなる有機ELディスプレイであって、前記有機EL発光体が3色塗り分け方式で作製されたものであることを特徴とする有機ELディスプレイ。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、染料顔料複合型カラーフィルタ及び有機ELディスプレイに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、次世代型のディスプレイとして、エレクトロルミネッセンス(以下EL)素子で構成されたELディスプレイが期待されている。EL素子には無機EL素子と有機EL素子とがあり、いずれのEL素子も自己発光性であるために視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れるとともに取り扱いが容易であるという利点がある。このため、グラフィックディスプレイの画素やテレビ画像表示装置の画素、あるいは面光源等としての研究開発及び実用化が進められている。 …省略… 【0004】 有機EL素子におけるカラー表示の方式としては、(1)青色、赤色、緑色等の各色の発光材料を成膜する3色塗り分け方式、(2)青色発光する発光層と、青→緑及び青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組合せて3色を発色させるCCM方式、(3)白色発光する発光層と、青色、赤色、緑色等のカラーフィルタとを組み合わせる方式、等が挙げられる。このうち、発光効率の点からは、(1)の3色塗り分け方式が最も有力であり、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等に実用化されている。 …省略… 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 ところで、上記のパネル構成の観点から、特に3色塗りわけ方式の有機EL素子とカラーフィルタとの組み合わせを見た場合、上記した青色光を可能な限り減衰しないようにしたカラーフィルタを用いることができれば、緑色発光体や赤色発光体に比べて寿命が短いとされる青色発光体の使用可能期間を長くすることができ、長寿命化を実現できる。そのため、青色画素におけるカラーフィルタの透過率を高くすることが望ましいと言える。 【0010】 しかし、青色画素については、現在使用可能な顔料系で最も透過率に優れる顔料を適用しても、十分な透過率が確保できているとは言えないものであった。 …省略… 【0013】 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、色純度に優れる3色塗り分け方式の有機EL素子を備えた有機ELディスプレイの長寿命化と製造コストの低減を実現できる、透過率が高く、色純度に優れた染料顔料複合型カラーフィルタを提供することにある。また、その染料顔料複合型カラーフィルタを備えた有機ELディスプレイを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0014】 上記課題を解決するための本発明の染料顔料複合型カラーフィルタは、透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで設けられた赤色着色層、緑色着色層及び青色着色層とを有し、前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含み、前記青色着色層が染料色素を含むことを特徴とする。 【0015】 この発明によれば、所定のパターンで設けられた着色層のうち、赤色着色層及び緑色着色層が顔料色素を含み、青色着色層が染料色素を含むようにしたので、青色着色層の透過率を高くすることができる。このカラーフィルタを色純度に優れる3色塗り分け方式の有機EL発光体と組み合わせて有機ELディスプレイを構成した場合に、有機EL発光体が備える青色発光層の電流値を高くしなくても十分な輝度が得られるので、青色発光層の寿命を延ばすことができ、有機ELディスプレイの安定した色調を長期間保持することができる。」 ウ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0024】 …省略… 【0041】 赤色着色層3Rを構成する顔料色素は特に限定されず、各種のものを用いることができる。例えば、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などを挙げることができる。また、色調調整のため、黄色顔料としてイソインドリノン系顔料、ニッケルアゾ錯体系顔料を混合することもできる。緑色着色層3Gを構成する顔料色素も特に限定されず、各種のものを用いることができる。例えば、フタロシアニン系顔料を挙げることができる。緑色着色層においても同様に色調調整のため、黄色顔料としてイソインドリノン系顔料、ニッケルアゾ錯体系顔料を混合することもできる。これら赤色着色層3Rと緑色着色層3Gを構成する他の成分であるバインダー樹脂、分散剤、溶剤、界面活性剤、光重合開始剤等についても、上記青色着色層3Bと同様のもの、又は従来公知のものを配合することができる。 …省略… 【0055】 [有機ELディスプレイ] 図3は、本発明の有機ELディスプレイの一例を示す模式的な断面図である。図3に示す本発明の有機ELディスプレイ50は、赤色着色層3R、緑色着色層3G及び青色着色層3Bを有する本発明のカラーフィルタ10と、少なくとも赤色発光層23R、緑色発光層23G及び青色発光層23Bを有した3色塗り分け方式の有機EL発光体20とを貼り合わせてなるものである。この有機ELディスプレイ50は、特に青色光41Bの透過性がよい青色着色層3Bを有する上記本発明のカラーフィルタ10を、色純度に優れる3色塗り分け方式の有機EL発光体20と組み合わせて構成している。こうした有機ELディスプレイ50は、有機EL発光体20が備える青色発光層23Bの電流値を高くしなくても十分な輝度が得られるので、青色発光層23Bの寿命を延ばすことができ、有機ELディスプレイ50の安定した色調を長期間保持することができる。」 エ 「【実施例】 【0068】 以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。 【0069】 [実施例1] <染料顔料複合型カラーフィルタの作製> 最初に、染料顔料複合型カラーフィルタを作製した。基材1としてガラス基板(コーニング社製、1737材)を準備し、洗浄処理を施した後のガラス基板上に、先ず、厚さが1.2μmで、平面視で縦横が格子状のパターンとなるようにブラックマトリクス層2を形成した。このブラックマトリクス層2は、下記のブラックマトリクス層用フォトレジストをスピンコート法で塗布し、90℃・3分間の条件でプリベーク(予備焼成)し、所定のパターンに形成されたマスクを用いて露光(100mJ/cm2)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃・60分間ポストベーク(焼成)することによって形成した。 【0070】 (ブラックマトリクス層用フォトレジスト) ・黒顔料(大日精化工業(株)製、TMブラック#9550)…14.0重量部 ・分散剤(ビックケミー(株)製、Disperbyk111)…1.2重量部 ・ポリマー(昭和高分子(株)製、VR60)…2.8重量部 ・モノマー(サートマー(株)製、SR399)…3.5重量部 ・添加剤(綜研化学(株)製、L-20)…0.7重量部 ・開始剤(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1)…1.6重量部 ・開始剤1(4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン)…0.3重量部 ・開始剤2(2,4-ジエチルチオキサントン)…0.1重量部 ・溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル)…75.8重量部 ・上記の黒顔料、分散剤及び溶剤からなる分散液組成物にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、上記のポリマー、モノマー、添加剤、開始剤1~3及び溶剤からなるクリアレジスト組成物とを混合し、顔料分散型のブラックマトリクス層用フォトレジストを調整した。なお、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた(以下の各色パターン形成用フォトレジストにおいて同じ。) 【0071】 次に、着色層3を形成した。この着色層3は、下記赤色、緑色、青色の各色パターン形成用のフォトレジストを調整した後、先ず、赤色パターン形成用の顔料分散型フォトレジストをブラックマトリクス層2が形成された透明基材1上にスピンコート法で塗布し、80℃・5分間の条件でプリベーク(予備焼成)し、赤色の色パターンに応じた所定の着色パターン用フォトマスクを用いて、紫外線露光(300mJ/cm2)した。次いで、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃・60分間ポストベーク(焼成)し、ブラックマトリクス層2の形成パターンに対して所定の位置に、膜厚1.1μmの赤色着色層3Rを短冊状パターンで形成した。 【0072】 引き続き、緑色パターン形成用の顔料分散型フォトレジストを用いて同様の手法を繰り返し、所定のパターンで形成されたブラックマトリクス層2及び赤色着色層3Rの形成パターンに対して所定の位置に、膜厚1.1μmの緑色着色層3Gを短冊状パターンで形成し、さらに引き続き、青色パターン形成用の染料フォトレジストを用い且つポストベーク条件を170℃・30分に変更した以外は、上記赤色着色層3R及び緑色着色層3Gと同様な手法により、膜厚1.7μmの青色着色層3Bを短冊状パターンで形成した。 【0073】 (赤色パターン形成用の顔料分散型フォトレジスト) ・赤顔料(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPPRedBP))…4.8重量部 ・黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))…1.2重量部 ・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)…3.0重量部 ・モノマー(サートマー(株)製、SR399)…4.0重量部 ・ポリマー1…5.0重量部・開始剤1(チバガイギー社製、イルガキュア907)…1.4重量部 ・開始剤2(2、2’-ビス(o-クロロフェニル)-4、5、4’、5’-テトラフェニル-1、2’-ビイミダゾール)…0.6重量部 ・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部 ・上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2-ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である ・上記の赤顔料、黄顔料、分散剤及び溶剤からなる分散液組成物にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、上記のポリマー、モノマー、添加剤、開始剤1、2及び溶剤からなるクリアレジスト組成物とを混合し、顔料分散型の赤色パターン形成用のフォトレジストを調整した。 【0074】 (緑色パターン形成用の顔料分散型フォトレジスト) ・緑顔料(C.I.PG7(大日精化製、セイカファストグリーン5316P))…3.7重量部 ・黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))…2.3重量部 ・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)…3.0重量部 ・モノマー(サートマー(株)製、SR399)…4.0重量部 ・ポリマー1…5.0重量部 ・開始剤1(チバガイギー社製、イルガキュア907)…1.4重量部 ・開始剤2(2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール)…0.6重量部 ・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部 ・上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2-ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である ・上記の緑顔料、黄顔料、分散剤及び溶剤からなる分散液組成物にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、上記のポリマー、モノマー、添加剤、開始剤1,2及び溶剤からなるクリアレジスト組成物とを混合し、顔料分散型の緑色パターン形成用のフォトレジストを調整した。 【0075】 (青色パターン形成用の染料フォトレジスト) ・青染料(BASF社製のトリアリールメタン系色素、BasonylBlue636)…6.0重量部 ・モノマー(サートマー(株)製、SR399)…4.0重量部 ・ポリマー1…5.0重量部 ・開始剤1(チバガイギー社製、イルガキュア907)…1.4重量部 ・開始剤2(2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール)…0.6重量部 ・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部 ・上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2-ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である ・上記の各材料を混合し溶解して青色層用の染料型フォトレジストを調整した。 【0076】 次に、赤、緑、青の各着色層3とブラックマトリクス層2が形成された透明基材1の、各着色層3上に、透明保護層4を設けた。この透明保護層4としては、紫外線硬化型樹脂であるフォトレジスト(JSR社製、商品名:JNPC80)を用い、各着色層上に塗布した後に紫外線を照射して厚さ1.5μmとなるように成膜した。この透明保護膜4は、着色層3に対して酸素を遮断し、かつ接着剤、粘着剤からの活性成分による染料分子へのアタックを防止するという保護作用を有している。 【0077】 次に、透明基材1の各着色層3側とは反対側の面に、紫外線透過防止層5を設けた。この紫外線透過防止層5は、ノルボルネン系フィルムであるアートン(商品名、JSR社製、厚さ40μm)を用い、透明基板1の表面に貼り合わせた。なお、ここでは、紫外線透過防止層5を、後述の有機ELパネルに貼り合わせる前にカラーフィルタに貼り合わせているが、この紫外線透過防止層5は、有機ELパネルとカラーフィルタとを貼り合わせた後に設けてもよい。こうして、染料顔料複合型カラーフィルタを作製した。 【0078】 <有機EL発光体の作製> 次に、有機EL発光体を作製した。基材21として、スイッチング素子としてのTFTを有する厚さ1.7mmの無アルカリガラス基板を準備した。その無アルカリガラス基板の上に、ITO(20nm)/Ag(100nm)/ITO(20nm)の積層構造からなる厚さ140nmの反射型陽極22を所定のパターンで形成した。次いで、ポジレジストからなる隔壁24を各発光層23の区分けのために形成し、引き続き、所定パターンからなる各色の発光層23(23R、23G、23B)を順に形成した後、さらに、MgAgからなる厚さ10nmの半透明な陰極25と、SiONからなる厚さ100nmの保護膜26とをその順番にベタ製膜して積層し、3色塗り分けタイプの発光層23を備えた有機EL発光体を作製した。 …省略… 【0080】 図4は、各発光層から発光した発光輝度を、各色のピークトップの値に対して示した分光データである。各色のピークトップは、青色発光層23Bが445nmで、緑色発光層23Gが510nmで、赤色発光層23Rが625nmである。なお、発光輝度の測定は、トプコン社製の分光放射計(型名:SR-2)を用いて行った。 【0081】 <有機ELディスプレイの作製> 得られた染料顔料複合型カラーフィルタと、得られた有機EL発光体とを接着剤(商品名:NT-01UV、日東電工社製)を介して貼り合わせ、実施例1の有機ELディスプレイ50を構成した。 …省略… 【0088】 [評価試験] 図5は、実施例1及び比較例1の有機ELディスプレイを構成するカラーフィルタの各着色層についての分光特性を示すグラフである。この分光特性は、オリンパス社製の顕微分光測色機(型名:OSP-SP200)を用い、2.5cm×7.5cmに切断した測定用サンプルの測定結果である。図示の結果からわかるように、450nm前後の青色着色層の透過率は、顔料色素で青色着色層を構成した比較例1の有機ELディスプレイを構成する顔料分散型カラーフィルタに比べ、染料色素で青色着色層を構成した実施例1の有機ELディスプレイを構成する染料顔料複合型カラーフィルタの方が高い値(例えば450nmで6.4%高かった。)を示しており、優れた色純度を示すことがわかる。なお、緑色着色層と赤色着色層については、同じである。 …省略… 【0092】 図6は、実施例1及び比較例2,3の有機ELディスプレイを構成するカラーフィルタの青色着色層についての分光特性を示すグラフである。この分光特性は、上記と同様、オリンパス社製の顕微分光測色機(型名:OSP-SP200)を用い、2.5cm×7.5cmに切断した測定用サンプルの測定結果である。図示の結果からわかるように、同じ染料色素を用いた青色着色層であってもその透過率は異なっており、例えば実施例1で用いたトリアリールメタン系の染料色素は、短波長側では410nm~480nmの透過率が高く、長波長側においては650nm付近から透過率が立ち上がるという特徴があり、比較例2,3で用いたフタロシアニン系の染料色素は、短波長側では440nm~510nmの透過率が高く、長波長側においては670nm付近から透過率が立ち上がるという特徴があった。実施例1で用いたトリアリールメタン系染料色素(符号A、ピークトップ435nm)の410nm~480nmでの透過率が高いという特徴は、広い色再現領域を可能にする有機EL発光体の青色発光のピークトップ波長と一致しており、青色の発光エネルギーが効率的に透過するので、そうした特徴がない比較例2で用いたフタロシアニン系染料色素(符号B、ピークトップ480nm)及び比較例3で用いたフタロシアニン系染料色素(符号C、ピークトップ470nm)に比べて、透過率の点で好ましく、本発明の有機ELディスプレイを構成するカラーフィルタの青色着色層の染料色素として好ましい。なお、この結果から、本発明において、カラーフィルタの青色着色層を構成する染料色素は、ピークトップが420nm~460nmの範囲であること、透過率が80%以上の領域が75nm連続する部分を有すること、等の特徴を有していることが好ましいと言える。」 オ 図面 「【図3】 [図:0001430930000004.jpg] 【図4】 [図:0001430930000005.jpg] 【図5】 [図:0001430930000006.jpg] 【図6】 [図:0001430930000007.jpg] 」 (2)引用発明1 ア 引用文献1の【0055】には、「図3は、本発明の有機ELディスプレイの一例を示す模式的な断面図である。図3に示す本発明の有機ELディスプレイ50は、赤色着色層3R、緑色着色層3G及び青色着色層3Bを有する本発明のカラーフィルタ10と、少なくとも赤色発光層23R、緑色発光層23G及び青色発光層23Bを有した3色塗り分け方式の有機EL発光体20とを貼り合わせてなるものである。」との記載がある。 イ また、引用文献1の【図3】より、本発明の有機ELディスプレイは、赤色発光層23R、緑色発光層23G及び青色発光層23Bのそれぞれの上部に、赤色着色層3R、緑色着色層3G及び青色着色層3Bを有するものと認められる。 ウ そして、引用文献1に記載された実施例1の「有機ELディスプレイ」は、「本発明」の具体例であるから、上記ア及びイを踏まえると、実施例1の上記「有機ELディスプレイ」は、赤色発光層23R、緑色発光層23G及び青色発光層23Bのそれぞれの上部に、赤色着色層3R、緑色着色層3G及び青色着色層3Bを有するものといえる。 エ さらに、引用文献1の【図5】、【図6】、【0088】及び【0092】からは、実施例1の上記「有機ELディスプレイ」における赤色着色層3Rの透過率は、約560nmから立ち上がり、約600nmにおいて少なくとも90%を超え、700nmに至るまで同程度の透過率を示すこと、青色着色層3B及び緑色着色層3Gの透過率は、それぞれ、約435nm及び約540nmにピークを有することが看取できる。 オ 上記(1)(特に【0069】~【0078】、【0080】~【0081】、【0088】の記載及び上記ウ及びエで認定した事項を総合すると、引用文献1には、実施例1として、次の「有機ELディスプレイ」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (当合議体注:引用発明1における括弧内の記載は、引用発明1の認定の根拠となった箇所等を参考のために示したものである。) 「ガラス基板上に、平面視で縦横が格子状のパターンとなるようにブラックマトリクス層2を形成し、(【0069】) 次に、着色層3を形成し、この着色層3は、下記赤色、緑色、青色の各色パターン形成用のフォトレジストを調整した後、赤色パターン形成用の顔料分散型フォトレジストを、ブラックマトリクス層2が形成された透明基材1上にスピンコート法で塗布し、プリベーク(予備焼成)し、赤色の色パターンに応じた所定の着色パターン用フォトマスクを用いて、紫外線露光し、スプレー現像を行った後、ポストベーク(焼成)し、ブラックマトリクス層2の形成パターンに対して所定の位置に、赤色着色層3Rを短冊状パターンで形成し、(【0071】) 緑色パターン形成用の顔料分散型フォトレジストを用いて、所定のパターンで形成されたブラックマトリクス層2及び赤色着色層3Rの形成パターンに対して所定の位置に、緑色着色層3Gを短冊状パターンで形成し、さらに引き続き、青色パターン形成用の染料フォトレジストを用い、青色着色層3Bを短冊状パターンで形成したものであり、(【0072】) (赤色パターン形成用の顔料分散型フォトレジスト) ・赤顔料(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPPRedBP))…4.8重量部 ・黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))…1.2重量部 ・分散剤(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)…3.0重量部 ・モノマー(サートマー(株)製、SR399)…4.0重量部 ・ポリマー1…5.0重量部 ・開始剤1(チバガイギー社製、イルガキュア907)…1.4重量部 ・開始剤2(2、2’-ビス(o-クロロフェニル)-4、5、4’、5’-テトラフェニル-1、2’-ビイミダゾール)…0.6重量部 ・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部 ・上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2-ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である(【0073】) 次に、赤、緑、青の各着色層3とブラックマトリクス層2が形成された透明基材1の、各着色層3上に、透明保護層4を設け、(【0076】) 次に、透明基材1の各着色層3側とは反対側の面に、紫外線透過防止層5を設け、染料顔料複合型カラーフィルタを作製し、(【0077】) 次に、基材21として無アルカリガラス基板を準備し、無アルカリガラス基板の上に、反射型陽極22を所定のパターンで形成し、隔壁24を各発光層23の区分けのために形成し、所定パターンからなる各色の発光層23(23R、23G、23B)を順に形成した後、半透明な陰極25と、保護膜26とをその順番にベタ製膜して積層し、3色塗り分けタイプの発光層23を備えた有機EL発光体を作製し、(【0078】) 次に、得られた染料顔料複合型カラーフィルタと、得られた有機EL発光体とを接着剤を介して貼り合わせ構成した、有機ELディスプレイ50であって、(【0081】) 各発光層の各色のピークトップは、青色発光層23Bが445nmで、緑色発光層23Gが510nmで、赤色発光層23Rが625nmであり、(【0080】) 赤色発光層23R、緑色発光層23G及び青色発光層23Bのそれぞれの上部に、赤色着色層3R、緑色着色層3G及び青色着色層3Bを有し、(上記ウ) 赤色着色層3Rの透過率は、約560nmから立ち上がり約600nmにおいて少なくとも90%を超え、700nmに至るまで同程度の透過率を示し、青色着色層3B及び緑色着色層3Gの透過率は、それぞれ、約435nm及び約540nmにピークを有する、(上記エ) 有機ELディスプレイ50。」 (3)対比 本件補正後発明と引用発明1を対比する。 ア 基板 引用発明1の「基材21」は、本件補正後発明の「基板」に相当する。 イ 赤色着色層、緑色着色層、青色着色層 引用発明1の「赤色着色層3R」、「緑色着色層3G」及び「青色着色層3B」は、技術的にみて、本件補正後発明の「赤色着色層」、「緑色着色層」及び「青色着色層」にそれぞれ相当する。 ウ 有機EL素子、有機EL表示装置 引用発明1は、「赤色発光層23R、緑色発光層23G及び青色発光層23Bのそれぞれの上部に、赤色着色層3R、緑色着色層3G及び青色着色層3Bを有」するものであるから、引用発明1の「有機ELディスプレイ」は、赤色発光層23Rの上に赤色着色層3Rが、緑色発光層23Gの上に緑色着色層3Gが、青色発光層23Bの上に青色着色層3Bが、それぞれ配置された構成を具備する。 ディスプレイの上記全体構成からみて、引用発明1の「有機ELディスプレイ50」は、本件補正後発明の「有機EL表示装置」に相当する。 また、引用発明1の「有機EL発光体」は、「基材21として無アルカリガラス基板を準備し、無アルカリガラス基板の上に、反射型陽極22を所定のパターンで形成し、隔壁24を各発光層23の区分けのために形成し、所定パターンからなる各色の発光層23(23R、23G、23B)を順に形成した後、半透明な陰極25と、保護膜26とをその順番にベタ製膜して積層し、3色塗り分けタイプの発光層23を備え」る。 ここで、いわゆる有機EL素子とは、2つの電極(陽極と陰極)の間に発光層を含む有機層が形成された積層構造を備えた素子を意味することは技術常識であるから、引用発明1の「有機EL発光体」のうち「基材21」を除いた部分が、本件補正後発明の「有機EL素子」に相当する。 上記対比結果及び上記ア~イによれば、引用発明1の「有機ELディスプレイ50」は、本件補正後発明の「有機EL表示装置」における、「基板上に少なくとも赤色、緑色、および青色を表示する有機EL素子を有する」及び「前記赤色を表示する有機EL素子の上部に、赤色着色層を有し、前記緑色を表示する有機EL素子の上部に、緑色着色層を有し、前記青色を表示する有機EL素子の上部に、青色着色層を有する」という要件を満たす。 エ 有機EL素子の発光極大波長 引用発明1の「各発光層の各色のピークトップは、青色発光層23Bが445nmで、緑色発光層23Gが510nmで、赤色発光層23Rが625nmであ」る。 したがって、引用発明1は、本件補正後発明の「赤色を表示する有機EL素子の発光極大波長が600~650nmであり、緑色を表示する有機EL素子の発光極大波長が500~550nmであり、青色を表示する有機EL素子の発光極大波長が430~480nmであ」るという要件を満たす。 オ 着色層の光透過率(ア)緑色着色層及び青色着色層について 引用発明1の「青色着色層3B及び緑色着色層3Gの透過率は、それぞれ、約435nm及び約540nmにピークを有する」ものである。 したがって、引用発明1の「青色着色層3B」及び「緑色着色層3G」は、本件補正後発明の「緑色着色層」の「最大光透過率波長が500~550nmであ」るという要件及び「青色着色層」の「最大光透過率波長が430~480nmであ」るという要件を満たす。 (イ)赤色着色層について a 「波長400~700nmの範囲における光透過率において、赤色着色層の最大光透過率の半値を超える波長範囲が600nm以上である」という要件(以下「本件半値要件」という。)の解釈 (a) 本件半値要件は、文理解釈上、波長400~700nmの範囲における赤色着色層の最大光透過率の半値を超える波長が、600nm以上に限定されており、波長400~600nm未満の波長範囲において光透過率が最大光透過率の半値を超えることはない、と解する余地がある。 そこで、赤色着色層の光透過率について、本件補正後発明と引用発明1とを対比するに先立ち、本件半値要件の解釈について検討しておく。 当合議体は、本件半値要件と「赤色着色層の600~700nmの波長における光透過率の最小値が70%以上である」という要件(以下「本件最小値要件」という。)との関係及び本件補正後発明に対応する本件明細書の実施例についての開示内容に照らせば、本件半値要件を上記のように解釈する余地はないと判断する。その理由は、以下に示すとおりである。 i 本件最小値要件との関係に基づく検討 本件補正後発明は、本件半値要件に加えて、本件最小値要件も満たすものである。そして、本件最小値要件は、文字通り、赤色着色層の波長600nmにおける光透過率が70%を下回ることがないことを意味する。このことと、光透過率の最大値が100%(半値は50%)を超えることがないことを併せ考慮すると、本件最小値要件を満たす赤色着色層において、波長400~600nm未満の波長範囲内であって600nmのごく近傍の波長域の光透過率が50%を下回ることは通常想定できない。したがって、本件半値要件を上記下線部のように解釈すると、本件半値要件及び本件最小値要件をともに満たす発明が事実上想定できないこととなり、不合理な結果となるからである。 ii 本件明細書の実施例の開示内容に基づく検討 請求人が、本件補正後発明の「有機EL表示装置」に対応する実施例と主張する実施例49の「赤色着色層R-4」の光透過率からみても、上記解釈の余地はない。なぜなら、本件明細書の【図2】(実線)によれば、当該赤色着色層R-4の波長400~700nmの範囲における赤色着色層の最大光透過率(波長620付近において約90%)の半値(約45%)を超える波長は600nm未満(約580nm)であると看取されることから、上記のように解すると、上記「赤色着色層R-4」は本件半値要件を満たさなくなり、実施例49が本件補正後発明に対応する実施例に該当しなくなるからである。 (b) 上記(a)の検討によれば、本件半値要件は、「(波長400~600nm未満の波長範囲における光透過率にかかわらず、)波長400~700nmの範囲における光透過率において、600~700nmの波長における光透過率が、赤色着色層の最大光透過率の半値を超える、という要件(以下、改めて「本願赤色着色層透過率半値要件」という。)を意味すると解するのが相当である。 b 本願赤色着色層透過率半値要件について 引用発明1の「赤色着色層3Rの透過率は、約560nmから立ち上がり、約600nmにおいて少なくとも90%を超え、700nmに至るまで同程度の透過率を示」す。そうすると、引用発明1の「赤色着色層」の最大光透過率は少なくとも90%超であり、その半値は少なくとも45%超といえる。ここで、引用発明1の上記「約560nmから立ち上がり、約560nmから立ち上がり約600nmにおいて少なくとも90%を超え、700nmに至るまで同程度の透過率を示」すという透過率の立ち上がり特性に照らせば、引用発明1の「赤色着色層3R」が、本件半値要件を満たすことは、上記a(b)に示した本願赤色着色層透過率半値要件を踏まえれば明らかである。 c 赤色着色層の光透過率の最小値について 引用発明1の「赤色着色層3Rの透過率は、約560nmから立ち上がり約600nmにおいて少なくとも90%を超え、700nmに至るまで同程度の透過率を示」す。 上記光透過率の立ち上がり特性によれば、引用発明1の「赤色着色層3R」は、本件最小値要件、すなわち、本件補正後発明の「赤色着色層の600~700nmの波長における光透過率の最小値が70%以上であり」との要件を満たす。 d 赤色着色層に含まれる着色剤(A)について 引用発明1の「赤色着色層3R」は、「赤色パターン形成用の顔料分散型フォトレジスト」を用いて形成したものであるところ、「赤色パターン形成用の顔料分散型フォトレジスト」は、「赤顔料(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPPRedBP))」を含有するものである。 ここで、引用発明1の「赤顔料(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPPRedBP))」は、技術的にみて、着色剤であって、本件補正後発明の「PR254」に相当する。 してみると、本件補正後発明の「赤色着色層」と引用発明1の「赤色着色層3R」は、「赤色着色層に含まれる着色剤(A)が、PR254を含有する点で共通する。 (4)一致点及び相違点 ア 一致点 本件補正後発明と引用発明1は、次の点で一致する。 「基板上に少なくとも赤色、緑色、および青色を表示する有機EL素子を有する有機EL表示装置であって、 前記赤色を表示する有機EL素子の上部に、赤色着色層を有し、 前記緑色を表示する有機EL素子の上部に、緑色着色層を有し、 前記青色を表示する有機EL素子の上部に、青色着色層を有し、 赤色を表示する有機EL素子の発光極大波長が600~650nmであり、 緑色を表示する有機EL素子の発光極大波長が500~550nmであり、 青色を表示する有機EL素子の発光極大波長が430~480nmであり、 波長400~700nmの範囲における光透過率において、 赤色着色層の最大光透過率の半値を超える波長範囲が600nm以上であり、 緑色着色層の最大光透過率波長が500~550nmであり、 青色着色層の最大光透過率波長が430~480nmであり、 さらに赤色着色層の600~700nmの波長における光透過率の最小値が70%以上であり、 赤色着色層に含まれる着色剤(A)が、PR254を含有する、有機EL表示装置。」 イ 相違点 本件補正後発明と引用発明1は、以下の点で相違する。 (相違点) 本件補正後発明では、「赤色着色層に含まれる着色剤(A)」が、「PR254」と、「化学式(8)~(10)で表される群から選ばれる少なくとも1種のキノフタロン顔料」であるのに対し、引用発明1では、赤色着色層3Rに含まれる着色剤が、「PR254」と「黄顔料(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))」(以下「PY139」という。)である点。 (5)判断 カラーフィルターを構成する赤色着色層において、表示装置の高色再現性を実現するために赤色着色剤であるPR254とともに用いられる黄色着色剤として、本願補正後発明の化学式(8)~(10)で表される群から選ばれるキノフタロン顔料(以下「本願キノフタロン顔料」という。)を用いることは、本願の出願前における周知技術である(必要であれば、特開2017-151344号公報(【請求項1】、【0018】、【0035】、実施例1等)、韓国公開特許第10-2018-0026034号公報([0022]、[0146]~[0147](実施例1)等)、韓国公開特許第10-2016-0115282号公報([0004]~[0005]、[0151]~[0156]、[0169]~[0170](実施例1)等)を参照。)。 ここで、引用文献1の【0041】における「赤色着色層を構成する顔料色素は特に限定されず、各種のものを用いることができる。」との記載、【0009】における「特に3色塗りわけ方式の有機EL素子とカラーフィルタとの組み合わせを見た場合、上記した青色光を可能な限り減衰しないようにしたカラーフィルタを用いることができれば、緑色発光体や赤色発光体に比べて寿命が短いとされる青色発光体の使用可能期間を長くすることができ、長寿命化を実現できる。そのため、青色画素におけるカラーフィルタの透過率を高くすることが望ましいと言える。」との記載、【0014】~【0015】における「本発明の染料顔料複合型カラーフィルタは、透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで設けられた赤色着色層、緑色着色層及び青色着色層とを有し、前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含み、前記青色着色層が染料色素を含むことを特徴とする。」及び「所定のパターンで設けられた着色層のうち、赤色着色層及び緑色着色層が顔料色素を含み、青色着色層が染料色素を含むようにしたので、青色着色層の透過率を高くすることができる。」等の記載から把握される引用発明1の課題とその解決手段に照らせば、青色着色層の着色剤(青色染料)とは異なり、赤色着色層として使用する顔料は、当業者が所望する分光特性等に応じて適宜選択し得る設計的事項といえる。 したがって、引用発明1において、赤色着色層に含まれる黄色顔料として、PY139に換えて、あるいは、これに加えて、本願の出願前に周知である、本願キノフタロン顔料を用いた構成は、当業者が通常の創作能力を発揮することによって容易に想到し得たことである。 そして、キノフタロン顔料の光透過率は、一般的に、PY139と同様、600nm以上の波長領域では少なくとも90%超であるから、引用発明1において、PY139に代えて、あるいは、これに加えて本願キノフタロン顔料を採用してなる発明が、引用発明1と同様に、本件補正後発明の本願赤色着色層透過率半値要件及び「赤色着色層」における「600~700nmの波長における光透過率の最小値が70%以上であ」るとの要件を依然として満たすといえる。 (6)発明の効果について 引用発明1においては、赤色着色層においてPR254及びPY139が用いられているところ、本件明細書【実施例】には、実施例2として、赤色着色層に含まれる顔料の組み合わせが、引用発明1の上記組み合わせと同一である「感光性着色組成物RR-2」を用いて形成された「着色層R-2」が記載されている。 ここで、本件明細書の【0170】の【表2】、【0188】の【表3】、【0198】の【表6】及び【0209】の【表9】には、上記「着色層R-2」は、PR254及び本願キノフタロン顔料を用いた感光性着色組成物から形成した、実施例2~16の着色層R-3~10、14~16と比較して、薬品耐性及び現像線幅の評価が略同等あるいはそれ以上であることが示されている。そして、本件明細書の他の箇所を参酌しても、PR254と組み合わせて使用する黄色顔料として、PY139を用いた場合と本願キノフタロン顔料を用いた場合において、いずれの黄色顔料を用いた方が有利な効果(例えば、表示装置としての色再現性(DCIカバー率等)が高くなる等の効果)が期待できるかは一概にはいえない。 したがって、本件補正後発明において、赤色着色層の着色剤としてPY139に代えて、あるいはこれに加えて本願キノフタロン顔料を用いたことよる予測できない格別顕著な効果は認められない。 (7)請求人の主張について ア 請求人は、審判請求書において、引用発明1には本件補正後発明の特徴である、赤色着色層がPR254と、本願キノフタロン顔料とを含有することについて記載も示唆もない旨主張する。 しかしながら、上記(5)及び(6)で述べたとおり、引用発明1のPY139を、本願キノフタロン顔料に変更することは、周知技術の付加ないし置換に過ぎない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 イ さらに、請求人は審判請求書において、「赤色着色層に含まれる着色剤(A)が、PR254と、化学式(8)~(10)で表される群から選ばれる少なくとも1種のキノフタロン顔料とを含有する実施例4(赤色着色層R-4)は97%の高い最大光透過率TMAXを有しつつ、化学式(8)~(10)で表される群から選ばれる少なくとも1種のキノフタロン顔料を含有しない参考例1(赤色着色層R-1)と比較し優れた外光反射率を両立し」、「実施例4を有する実施例49は、赤色着色層の明度RYは24.5であり、参考例1を有する参考例(旧実施例)48の22.2と比べて高い明度を有し」、「実施例49のDCIカバー率は98%であり、参考例48(旧実施例)の92%より優れ、かつ、比較例2の96%よりもさらに高い性能を有し」、「高い明度と高いDCIカバー率とを両立する効果が得られる」旨主張する。 しかしながら、前記参考例1の赤色着色層R-1は、赤色顔料であるPR254及びPR177を含有し、黄色顔料を含有しないものであるから、上記相違点とは直接関係しないことから、上記(5)及び(6)の判断を左右しない。また、請求人が主張する、本件補正後発明の「有機EL表示装置」が奏する効果は、高い明度とDCIカバー率の両立である。ここで、DCIカバー率については、CIE表色系における色度図上の標準化された赤、緑、青により囲まれる面積に対する比率で定義されるところ、当該定義から明らかなとおり、DCIカバー率は、赤色着色層のみでは決まらず、これと組み合わせて用られる青色着色層及び緑色着色層(の材料)が特定されてはじめて決まる評価指標であるから、着色剤が何ら特定されていない青色着色層及び緑色着色層を発明特定事項とする本件補正後発明について、請求人が主張する効果は請求項の記載に基づかないものであるから参酌できない。 以上より、請求人の上記主張は採用できない。 (8) 小括 本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 補正の却下の決定のむすび 本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、[A]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(上記第2 2(1)と同様、原査定で引用された「引用文献11」を改めて「引用文献1」という。)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、[B]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献の記載及び引用発明 引用文献1の記載及び引用発明1は、前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。 4 対比及び判断 本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、前記「第2」[理由]1(3)で述べた限定事項を除いたものであって、当該限定事項は上記「第2 2(5)」で検討した相違点そのものである。 してみると、本願発明と引用発明1には相違点は存在しない。 したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、少なくとも引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-000814

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