特許拒絶査定不服審判
2021-008230
集積ヒーターおよび製造方法
- 審判番号
- 2021-008230
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-540333
- 請求日
- 2021年06月23日
- 審決日
- 2022年03月17日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ワトロー エレクトリック マニュファクチュアリング カンパニー
- 【請求人代理人】伊藤 茂
- 【請求人代理人】海老 裕介
- 審判長/審判官
- 審判長 林 茂樹
- 審判官 平城 俊雅
- 審判官 河内 誠
- 分類
- P18 .121-Z (H05B) / P18 .575-Z (H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-540333「集積ヒーターおよび製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月31日国際公開、WO2019/103959、令和 3年 2月15日国内公表、特表2021-504924〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年11月21日、アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、令和2年11月5日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年2月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年2月18日付け(発送日:令和3年2月24日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和3年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和3年6月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年6月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年2月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
一枚の基板を用意するステップ、
該基板に少なくとも1つのトレンチを形成するステップ、
機能材料を該基板上および該少なくとも1つのトレンチ内にろう付けリフロープロセスを使用して堆積するステップ、
該機能材料を該基板の該少なくとも1つのトレンチ内に残して機能素子を形成するために該基板から過剰な機能材料を除去するステップ、及び
該機能素子と接触する端子を設けるステップ、
を有する、ヒーターを作る方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
一枚の基板を用意するステップ、
該基板に少なくとも1つのトレンチを形成するステップ、
機能材料を該基板上および該少なくとも1つのトレンチ内にろう付けリフロープロセスを使用して堆積するステップであって、該ろう付けリフロープロセスが、該機能材料を該基板の上に配置して該機能材料を溶融し、溶融した機能材料が該少なくとも1つのトレンチに充填されるようにすることを含む、ステップ、
該機能材料を該基板の該少なくとも1つのトレンチ内に残して抵抗加熱素子を形成するために該基板から過剰な機能材料を除去するステップ、及び
該抵抗加熱素子と接触する端子を設けるステップ、
を有する、ヒーターを作る方法。」
2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ろう付けリフロープロセスを使用して堆積するステップ」に関して、「該ろう付けリフロープロセスが、該機能材料を該基板の上に配置して該機能材料を溶融し、溶融した機能材料が該少なくとも1つのトレンチに充填されるようにすることを含む、ステップ」と限定するとともに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「機能素子」に関して、「抵抗加熱素子」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)引用例1
原査定において引用文献1として引用された特開2012-9337号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付したものである。「・・・」は記載の省略を意味するものである。)。
(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、発熱体の幅と厚みを所定の設計値に限りなく近づけることができ、半導体製造装置や液晶製造装置用として要求される均一な温度分布を達成することが可能なセラミックスヒータ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、近年加工制御性が飛躍的に向上したレーザー加工法を用いた。
すなわち、本発明が提供するセラミックスヒータは、絶縁性セラミックスより成る基体表面上に所定の深さの溝を形成し、この溝に、導電性の抵抗発熱部材ペーストを充填、または成膜し、焼成固化し、さらに、固化された抵抗発熱部材を基体表面を基準として研磨して、焼成固化した充填物の厚さを均一化した後、前記基体の表面に絶縁性被膜を形成してなるものであることを特徴とする。
【0011】
前記発熱抵抗部材のパターンの通電方向における断面積のバラツキが1%以下であることが好ましく、前記絶縁性セラミックス基板の材質が、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化イットリュームの少なくとも一種類を含有するセラミックスであること、前記発熱抵抗部材が、タングステン、モリブデン、銀、パラジウム、銅、白金、ニッケル、クロム、珪素、炭素のうち少なくとも1つを主成分とするものであること、前記絶縁性被膜が、前記基体の材質と主成分を同じくするものであること、が、それぞれ好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターン化される発熱体の厚みを均一化することが確実にでき、均一な温度分布を有するセラミックスヒータを提供することができる。本発明のセラミックスヒータを用いることにより、CVD装置、コーターデベロッパー装置、Low-k焼成装置などの半導体製造装置や液晶製造装置に要求されている均熱性を達成することができる。」
(1-b)「【0016】
かかる本発明のセラミックスヒータについて、図を参照して、説明する。
本発明が提供するセラミックスヒータは、図1に示すように、少なくとも抵抗発熱部材を形成する表面の平坦度が予め所定のものに確保された発熱抵抗基体1を用意し、
発熱抵抗基体1の表面に、レーザ加工によって発熱抵抗部材ペースト3を充填するためのヒーターパターンに対応した溝2を正確に形成し、
さらに、この平面に形成された溝2に、スクリーン印刷等の手法により、発熱抵抗部材ペースト3を充填し、焼成固化し、
発熱抵抗基体表面を研磨して、焼成固化した充填物の厚さを均一化し、
発熱抵抗基体の表面に絶縁性被膜を形成する、
ことによって得られる。
なお、図2は、図1(b)の工程状態における平面図であり、図3は、図2のA-A線における断面図である。図2において斜線を施した部分は、例えばレーザー加工によって形成された、ヒーターパターンに対応した溝2であり、図3において斜線を施した部分は、図2のA?A線で仮想的に切断された発熱抵抗基体1である。
【0017】
ここでスクリーン印刷法を用いる理由は、本来必要な領域のみに発熱抵抗体部材ペーストを充填塗布することが可能となるからである。白金等の貴金属からなる部材の場合、原料が特に高価であるために、この方法は有用である。
しかし、発熱抵抗部材の加工性が良い物では、全域を塗布しても、所望部分の除去が容易であるから、何ら問題となるものではない。発熱部の回路設計によっては、むしろ全域に塗布領域が及んでいることが好ましい場合もある。
この工程では、レーザ加工した溝に必要十分な量の抵抗発熱部材ペーストを充填し、焼成等に伴う収縮に対しても、考慮した厚さを確保しておくことが重要である。
・・・
【0019】
前記の、セラミックス製の発熱抵抗基体の表面上に発熱抵抗部材を形成する方法は、例示したスクリーン印刷の他に、ローラーコート法、スピンコート法でもよく、さらに、CVD等を用いて導電性の物質を成膜してもかまわない。
【実施例】
【0020】
[実施例1]
縦横それぞれ50mm、厚み1mmのAlNからなる発熱抵抗基体を用意した。セラミックス製の発熱抵抗基体上に、YVO4レーザを用いて、ビーム径を40μmとし、スキャン速度100mm/sec、ビーム間隔5μmとして、図1に示す、セラミックスヒータの発熱部となる発熱抵抗部材ペースト3が形成され易くなる様に溝2を、深さ24μmを目標に、加工した。
さらに、この発熱部パターンより若干塗布面積を大きく設定したスクリーン(図示せず)を用いて、Wペーストを30μm程度の厚さに成る条件で印刷塗布した。
Wペーストを印刷し自然乾燥させた後、真空加熱炉にセットし、約900℃で加熱して焼成後、室温まで冷却し取り出した。
取り出し後の、固化・焼成されたWペーストが溝よりはみ出した部分を除去するためラップ盤を用いて研磨し、当初の基板面の表面から1?2μm程度除去するところまで研磨した。
【0021】
さらに、基体を真空加熱炉にセットし、1000℃まで加熱し、AlCl3を200℃以上に加熱してガス化させ、1g/minで供給し、NH3ガスを1SLMで供給し、圧力30PaでAlN膜を2.5hrで約100μm堆積させた。なお、発熱抵抗部材に給電する端子部分は、事前に耐熱性の部材、例えばpBNで作製した部材を用いてマスキングしておいた。
作製されたヒータに通電し、800℃を目標に加熱試験をしたところ、端子部分から離れた部分の温度分布は、795℃?807℃と±1%以下と良好な結果が得られた。」
(1-c)「
【図1】
[図:0001387965000001.jpg]
」
(1-d)段落【0016】には、「この平面に形成された溝2に、スクリーン印刷等の手法により、発熱抵抗部材ペースト3を充填」することが記載され、段落【0017】には、スクリーン印刷法に関して「発熱抵抗部材の加工性が良い物では、全域を塗布しても、所望部分の除去が容易であるから、何ら問題となるものではない。発熱部の回路設計によっては、むしろ全域に塗布領域が及んでいることが好ましい場合もある。」と記載されているから、引用例1には、「スクリーン印刷等の手法により、この平面に形成された溝2に、発熱抵抗部材ペースト3を充填するとともに、発熱抵抗部材ペースト3を発熱抵抗基体1の全域に塗布」することが記載されているといえる。
上記(1-a)~(1-d)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「少なくとも抵抗発熱部材を形成する表面の平坦度が予め所定のものに確保された発熱抵抗基体1を用意し、
発熱抵抗基体1の表面に、レーザ加工によって発熱抵抗部材ペースト3を充填するためのヒーターパターンに対応した溝2を正確に形成し、
さらに、スクリーン印刷等の手法により、この平面に形成された溝2に、発熱抵抗部材ペースト3を充填するとともに、発熱抵抗部材ペースト3を発熱抵抗基体1の全域に塗布し、焼成固化し、
発熱抵抗基体表面を研磨して、焼成固化した充填物の厚さを均一化し、
発熱抵抗基体の表面に絶縁性被膜を形成する、
セラミックヒータを作る方法。」
(2)引用例2
原査定において一般的な技術として示した特開2013-77631号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2-a)「【0036】
次に、溝部12の内壁面を含む基体11の一面11aに、所定の厚みのバリア層(バリアメタル)13を形成する(図3(a)参照:バリア層形成工程)。バリア層(バリアメタル)13は、例えば、Ta、Ti、W、Ru、V、Co、Nbのうちの少なくとも1種を含む材料を用いて形成する。バリア層13の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0037】
バリア層(バリアメタル)13は、スパッタリング法によって形成される。例えば、図4に示すスパッタリング装置(成膜装置)1を用いて、溝部12の内壁面を覆うように成膜する。バリア層(バリアメタル)13は、厚みt1が例えば1nm~5nm程度になるように形成される。
【0038】
次に、バリア層(バリアメタル)13を覆うようにシード層16を形成する(図3(b)参照)。このシード層16は、次工程においてリフローされ、溝部12に埋め込まれる導電材料となる。シード層16は、Cuから構成される。シード層16は、例えば厚みが3nm~8nm程度になるように形成される。
【0039】
このようなシード層16の形成にあたって、基体11の一面11a、即ち溝部12の頂面がエッチングカバー層14によって覆われて角部が肩崩れしていないので、溝部12の開口面付近にシード層16が過剰に堆積して溝部12の開口面付近を狭めたり閉塞してしまう懸念が無い。従って、溝部12の内部にほぼ均一な厚みでシード層16の形成することが可能になる。
【0040】
次に、シード層16を形成した基体11を、シード層16の溶融温度以上に加熱してリフローを行う(図3(c)参照:埋込工程)。これにより、シード層16は溶融して溝部12の内側、即ちバリア層(バリアメタル)13の内側領域がCuからなる導電材料Mによって埋め込まれる。
【0041】
このような埋込工程において、エッチングカバー層14によってシード層16が溝部12の内部にほぼ均一な厚みで形成されているため、溶融した導電材料Mの内部に空洞が残留することが無く、溝部12の内部に隙間無く導電材料Mを埋め込むことができる。
【0042】
この後、溝部12を除いた基体11の一面11aに積層されているエッチングカバー層14、バリア層13および導電材料Mを除去する(図3(d)参照)。これによって、それぞれの溝部12ごとに、溝部12を埋め込む導電体15、即ち回路配線が形成される。」
(2-b)「【図3】
[図:0001387965000002.jpg]
」
(3)引用例3
原査定において一般的な技術として示した国際公開第2013/047323号には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(3-a)「[0028] 次に、バリア層13を覆うようにシード層15を形成する(図3 (a)参照:シード層形成工程)。このシード層15は、次工程においてリフローされ、溝部12に埋め込まれる導電材料となる。シード層15は、Cuから構成される。シード層15は、上述したバリア層13と同様に、スパッタリング法を用いて形成される。シード層15は、例えば厚みが15 nm~55 nm程度になるように形成される。
[0029] スパッタリング装置(成膜装置)1を用いたシード層15の形成方法について説明する。
まず、基板ホルダ7上に基体11を配置した状態で、真空排気系9により真空槽2内部を真空排気し、真空排気しながらガス供給系4からスパッタガスと、化学構造中に窒素又は酸素を含む反応ガスを導入し(例えば反応ガスが酸素の場合、流量が0.1sccm以上5sccm以下)、真空槽2内部に大気圧よりも低い成膜雰囲気(例えば全圧が10-4 Pa以上10-1Pa以下)を形成する。
[0030] スパッタガスを導入し、真空槽2内が所定の圧力(例えば4.0×10-2Paの圧力)に安定した後、スパッタ電源8を起動して、カソード電極(図示略)に負電圧を印加することにより、放電が開始され、ターゲット5をCuとして、ターゲット5の表面近傍にプラズマを発生させる。
そして、スパッタリングによる成膜を所定時間行い、バリア層13を覆うように銅薄膜を形成した後、真空槽2から基体11を搬出する。
[0031] なお、上述のスパッタリング装置1の基板ホルダ7内には温度調節手段(図示略)が設けられており、銅薄膜を形成する際、基体11の温度を所定の温度に調節しておく(例えば-20℃)。
[0032] スパッタリング装置1では、磁界形成手段3がターゲット5表面と平行に移動・回転できるように構成されており、ターゲット5表面のスパッタされる領域(エロージョン領域)をターゲット上の任意の位置に形成させることができる。
[0033] 次に、シード層15を形成した基体11を、シード層15の溶融温度以上に加熱してリフローを行う(図3 (b)参照:シード層溶融工程)。これにより、シード層15は溶融して溝部12の内側、即ちバリア層13の内側領域がC uからなる導電材料Mによって埋め込まれる。
シード層15の溶融温度を、例えば、100℃以上、400℃以下とする。」
(3-b)「[図3]
[図:0001387965000003.jpg]
(4)引用例4
原査定において一般的な技術として示した特開平10-74760号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(4-a)「【0009】アルミニウムを接続孔内部に埋め込む接続孔内配線形成技術として、従来より知られている技術に、リフロー法がある。図7に示したようにオーバーングを起こした接続孔1を有するウェハ(シリコンウェハ等)に対し、ウェハ全体に熱処理を加え、たとえば400℃以上の熱を加えて、図12に示すごとくアルミニウム(配線形成材料2)の流動特性を向上させ、図13のごとく接続孔1を埋め込むのが、熱リフロー法である。
図12の矢印Iは、リフロー中のアルミニウムの流動を示すものである。以上の手法により、アスペクト比が2程度の接続孔の埋め込みが可能となる。」
(4-b)
「【図12】
[図:0001387965000004.jpg]
【図13】
[図:0001387965000005.jpg]
」
(5)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「発熱抵抗基体1」は、本願補正発明の「基板」に相当する。
よって、引用発明の「少なくとも抵抗発熱部材を形成する表面の平坦度が予め所定のものに確保された発熱抵抗基体1を用意」する点は、本願補正発明の「一枚の基板を用意するステップ」に相当する。
イ 引用発明の「溝2」は、本願補正発明の「トレンチ」に相当する。
よって、引用発明の「発熱抵抗基体1の表面に、レーザ加工によって発熱抵抗部材ペースト3を充填するためのヒーターパターンに対応した溝2を正確に形成」する点は、本願補正発明の「該基板に少なくとも1つのトレンチを形成するステップ」に相当する。
ウ 引用発明の「発熱抵抗部材ペースト3」は、本願補正発明の「機能性材料」に相当する。また、引用発明の「溝2に、発熱抵抗部材ペースト3を充填するとともに、発熱抵抗部材ペースト3を発熱抵抗基体1の全域に塗布」する点は、本願補正発明の「機能材料を該基板上および該少なくとも1つのトレンチ内に」「堆積する」点に相当する。
よって、引用発明の「スクリーン印刷等の手法により、この平面に形成された溝2に、発熱抵抗部材ペースト3を充填するとともに、発熱抵抗部材ペースト3を発熱抵抗基体1の全域に塗布し、焼成固化」する点と、本願補正発明の「機能材料を該基板上および該少なくとも1つのトレンチ内にろう付けリフロープロセスを使用して堆積するステップであって、該ろう付けリフロープロセスが、該機能材料を該基板の上に配置して該機能材料を溶融し、溶融した機能材料が該少なくとも1つのトレンチに充填されるようにすることを含む、ステップ」とは、「機能材料を該基板上および該少なくとも1つのトレンチ内に堆積するステップ」である点で共通する。
エ 引用発明の「発熱抵抗基体表面を研磨して、焼成固化した充填物の厚さを均一化」することは、過剰な充填物(発熱抵抗部材ペースト3)を除去するものであることは明らかである。
よって、引用発明の「発熱抵抗基体表面を研磨して、焼成固化した充填物の厚さを均一化」する点は、本願補正発明の「該機能材料を該基板の該少なくとも1つのトレンチ内に残して抵抗加熱素子を形成するために該基板から過剰な機能材料を除去するステップ」に相当する。
オ 引用発明の「セラミックヒータを作る方法」は、本願補正発明の「ヒーターを作る方法」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「一枚の基板を用意するステップ、
該基板に少なくとも1つのトレンチを形成するステップ、
機能材料を該基板上および該少なくとも1つのトレンチ内に堆積するステップ、
該機能材料を該基板の該少なくとも1つのトレンチ内に残して抵抗加熱素子を形成するために該基板から過剰な機能材料を除去するステップ、
を有する、ヒーターを作る方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点1]
機能材料を該基板上および該少なくとも1つのトレンチ内に堆積するステップに関して、本願補正発明では、「ろう付けリフロープロセスを使用して堆積する」ものであり、「該ろう付けリフロープロセスが、該機能材料を該基板の上に配置して該機能材料を溶融し、溶融した機能材料が該少なくとも1つのトレンチに充填されるようにすることを含む」のに対し、引用発明では、「スクリーン印刷等の手法により、この平面に形成された溝2に、発熱抵抗部材ペースト3を充填するとともに、発熱抵抗部材ペースト3を発熱抵抗基体1の全域に塗布し、焼成(固化)」する点。
[相違点2]
本願補正発明は、「抵抗加熱素子と接触する端子を設けるステップ」を有するのに対し、引用発明は、そのようなステップを有するか不明である点。
(6)判断
ア 上記[相違点1]について検討する。
金属材料を溝内に堆積させる際に、金属材料を基板上に配置してその材料を溶融し、溶融した材料を溝内に充填させる(ろう付け)リフロープロセスを用いることは、例えば引用例2~4に示すように一般的に広く知られた周知の技術である。
一方、引用例1の段落【0019】には「セラミックス製の発熱抵抗基体の表面上に発熱抵抗部材を形成する方法は、例示したスクリーン印刷の他に、ローラーコート法、スピンコート法でもよく、さらに、CVD等を用いて導電性の物質を成膜してもかまわない。」と記載されており、スクリーン印刷以外の方法でもよいことが示唆されている。さらに、段落【0017】には「ここでスクリーン印刷法を用いる理由は、本来必要な領域のみに発熱抵抗体部材ペーストを充填塗布することが可能となるからである。白金等の貴金属からなる部材の場合、原料が特に高価であるために、この方法は有用である。」と記載されており、スクリーン印刷は、特に貴金属の場合に有効であることが記載されている。
また、引用例1の段落【0011】には「発熱抵抗部材が、タングステン、モリブデン、銀、パラジウム、銅、白金、ニッケル、クロム、珪素、炭素のうち少なくとも1つを主成分とするものである」と記載されており、引用発明の発熱抵抗部材の材料には、周知の技術として示した引用例2、3の(ろう付け)リフロープロセスを用いて溝に充填する材料である銅を主成分とするものが含まれている。
そして、引用発明と周知の技術とは、共に基板上の溝に金属材料を充填する技術である点において共通し、さらに、金属材料を溶融(焼成)するものである点において共通するから、引用発明において、溝2に発熱抵抗部材ペースト3を充填、焼成固化する際に、周知の技術の(ろう付け)リフロープロセスを採用して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
イ 上記[相違点2]について検討する。
引用例1の段落【0021】には、「なお、発熱抵抗部材に給電する端子部分は、事前に耐熱性の部材、例えばpBNで作製した部材を用いてマスキングしておいた。」と記載されており、当該記載は、セラミックヒータの製造工程において発熱抵抗部材に端子部分を設けるステップを有することを示唆している。
よって、引用発明において、「抵抗加熱素子と接触する端子を設けるステップ」を有するように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
ウ 本願補正発明が奏する効果について
引用例1の段落【0012】には、発明の効果として「本発明によれば、パターン化される発熱体の厚みを均一化することが確実にでき、均一な温度分布を有するセラミックスヒータを提供することができる。」と記載されており、この効果は、本願明細書の段落【0051】に記載された「本発明の方法100、200によって製造された電気ヒーター10は、埋め込まれた加熱回路および埋め込まれた経路回路、ならびに基板全体にわたってより平坦な複数の機能層を有する。したがって、電気ヒーターは、より均一な構造およびより均一な加熱性能を有することができる。」という効果と同様のものである。
よって、本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「このように拒絶査定において追加的に引用された米国特許第6514389号、特開平10-74760号、特開2000-34485号、特開2009-105289号、特開2013-171940号、特開2013-77631号、及び国際公開第2013/047323号におきましても、機能材料を基板の上に配置して機能材料を溶融し、溶融した機能材料が少なくとも1つのトレンチに充填されるようにすることを含むろう付けリフロープロセスにより機能材料をトレンチ内に堆積させ、過剰な機能材料を除去することにより抵抗加熱素子を形成することによって、ヒーターを作ることは開示も示唆もされていません。
以上より、何れの引用文献にも本願発明の上記特徴的構成、特にろう付けリフロープロセスを使用して抵抗加熱素子を形成してヒーターを作ることは、記載も示唆もされていませんので、これら引用文献に基づいて本願発明を容易想到とすることはできないと考えます。」(「(d)本願発明と引用発明との対比」)と主張する。
しかしながら、上記(6)アで指摘したとおり、金属材料を溝内に堆積させる際に、金属材料を基板上に配置してその材料を溶融し、溶融した材料を溝内に充填させる(ろう付け)リフロープロセスを用いることは、一般的に広く知られた周知の技術であるから、引用発明のセラミックヒータを作る方法においても、金属材料を溝内に充填させる技術として採用することは当業者であれば容易になし得たものといえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(7)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~16に係る発明は、令和3年2月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2012-9337号公報
3 引用例
引用例1及びその記載事項は、前記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「該ろう付けリフロープロセスが、該機能材料を該基板の上に配置して該機能材料を溶融し、溶融した機能材料が該少なくとも1つのトレンチに充填されるようにすることを含む、ステップ」との限定を削除するとともに、「抵抗加熱素子」との限定を削除して「機能素子」に戻すものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]3(6)、(7)に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-008230