特許拒絶査定不服審判
2021-005126
メッセージングアプリケーションにおけるオプションの表示、通知の割り当て、メッセージの無視、及びユーザインタフェースの同時表示
- 審判番号
- 2021-005126
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-031966外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年04月21日
- 審決日
- 2021年12月14日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .537-WY (G06F) / P18 .55 -WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 31966「メッセージングアプリケーションにおけるオプションの表示、通知の割り当て、メッセージの無視、及びユーザインタフェースの同時表示」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月11日出願公開、特開2019-114281、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)4月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年4月29日 米国、2014年6月1日 米国)を国際出願日とする出願である特願2016-569073号の一部を新たな出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成31年 3月 7日 :翻訳文、手続補正書の提出
令和 2年 4月22日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年12月17日付け:拒絶査定(原査定)
令和 3年 4月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和2年12月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
[理由1]サポート要件
本願請求項1ないし11に係る発明は、以下の点で発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1に記載の「前記第1の接触の動きが前記閾値基準を超えないという判別に従って、前記第1の接触の動きがあった前記一方向とは反対の方向に、前記第1のコンポジションインタフェースを前記第1の位置までスライドする処理」(以下、「本件補正前本願発明1スライド処理」という。)は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項8に記載の「前記第1の接触の動きが前記第2の閾値基準を超えないという判別に従って、前記第1の接触の動きがあった前記一方向とは反対の方向に、前記第2のコンポジションインタフェースを前記ディスプレイ上の前記第4の位置までスライドする処理」(以下、「本願発明8スライド処理」という。)は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
[理由2]新規事項
請求項1又は請求項8についてする補正は、以下の点で外国語書面の翻訳文(以下、単に「翻訳文」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1に記載の本件補正前本願発明1スライド処理は、翻訳文に記載した事項の範囲内のものではない。
(2)請求項8に記載の本願発明8スライド処理は、翻訳文に記載した事項の範囲内のものではない。
第3 本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、令和3年4月21日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1、7及び8は、以下のとおりの発明である。なお、下線は、補正された箇所を示す。
[本願発明1]
「 タッチ感知面及びディスプレイを有する電子デバイスにおいて実行される方法であって、
メッセージアプリケーションにおいて、複数のメッセージグラフィカルオブジェクトを表示させる処理と、
前記複数のメッセージグラフィカルオブジェクトを表示しながら、新たなメニューメッセージを構成するためのアクションを受信する処理と、
前記新たなメニューメッセージを構成するための前記アクションを受信することに応答して、第1の位置において第1のコンポジションインタフェースを表示する処理であって、前記第1のコンポジションインタフェースは、前記複数のメッセージグラフィカルオブジェクトの表示を少なくとも部分的に置き換える当該処理と、
前記第1の位置において前記第1のコンポジションインタフェースを表示しながら、前記第1のコンポジションインタフェースに対応した或る位置で、前記タッチ感知面上の一方向における第1の接触の動きを含んだ第1ジェスチャを検出する処理と、
前記第1ジェスチャの検出に応答して、前記第1の接触の動きがある前記一方向における前記第1のコンポジションインタフェースを、前記ディスプレイ上の第2の位置へスライドする処理と、
前記第1ジェスチャの終了を検出した後、
前記第1の接触の動きが閾値基準を満たすか又は超えたという判別に従って、前記第1の接触の動きがある前記一方向における前記第1のコンポジションインタフェースを更に、前記ディスプレイ上の第3の位置へスライドする処理であって、前記第3の位置でスライドしながら、前記第1のコンポジションインタフェースの少なくとも一部は前記ディスプレイ上で表示されない当該処理と、
前記第1の接触の動きが前記閾値基準を超えないという判別に従って、前記第1のコンポジションインタフェースを前記ディスプレイ上の前記第1の位置まで戻すようスライドする処理と、
を含む方法。」
[本願発明7]
「 前記第3の位置に前記第1のコンポジションインタフェースを表示しながら、第2のメッセージを構成するためのアクションを受信する処理と、
前記第2のメッセージを構成するための前記アクションを受信することに応答して、第4の位置において第2のコンポジションインタフェースを表示する処理であって、前記第2のコンポジションインタフェースは、前記複数のメッセージグラフィカルオブジェクトの表示を少なくとも部分的に置き換える当該処理と、を更に含む、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
[本願発明8]
「 前記第4の位置において前記第2のコンポジションインタフェースを表示しながら、前記第2のコンポジションインタフェースに対応した或る位置で、前記第1の接触の動きの前記一方向における前記タッチ感知面上の第2の接触の連続した動きを含む第2ジェスチャを検出する処理と、
前記第2ジェスチャの検出に応答して、前記第1の接触の動きがある前記一方向における前記第2のコンポジションインタフェースを、前記ディスプレイ上の第5の位置へスライドする処理と、
前記第2の接触の動きが第2の閾値基準を満たすか又は超えたという判別に従って、
前記第1の接触の動きがある前記一方向における前記第2のコンポジションインタフェースを更に、前記ディスプレイ上の第6の位置へスライドする処理であって、前記第6の位置でスライドしながら、前記第1のコンポジションインタフェースの少なくとも一部は前記ディスプレイ上で表示されない当該処理と、
前記第2のコンポジションインタフェースのヘッダーの端を、前記第1の接触の動きがある前記一方向における前記ディスプレイの端にスナップする処理と、
前記第1の接触の動きが前記第2の閾値基準を超えないという判別に従って、前記第1の接触の動きがあった前記一方向とは反対の方向に、前記第2のコンポジションインタフェースを前記ディスプレイ上の前記第4の位置までスライドする処理と、を更に含む、請求項7に記載の方法。」
第4 当審の判断
本件補正前本願発明1スライド処理は、本件補正により、「前記第1の接触の動きが前記閾値基準を超えないという判別に従って、前記第1のコンポジションインタフェースを前記ディスプレイ上の前記第1の位置まで戻すようスライドする処理」(以下、「本願発明1スライド処理」という。)と補正された。
そうすると、本件補正前本願発明1スライド処理についての原査定の判断の適否に関しては、本件補正前本願発明1スライド処理に対応する本願発明1スライド処理が、原査定の理由1(サポート要件)及び理由2(新規事項)に適合するか否かについて検討すれば足りる。
1 理由1(サポート要件)について
(1)法規範
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁大合議判決(平成17年(行ケ)第10042号))。
以下、上記法規範に従って、原査定の理由1(サポート要件)が維持できるか否かについて検討する。(以降において、下線は、強調のため当審が付与した。)
(2)本願の課題
本願明細書には、以下の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
ポータブル電子デバイスがよりコンパクトになり、デバイスの機能が増大するにつれて、ユーザが容易に多機能デバイスと対話することを可能にするユーザインタフェースを設計することは、ますます困難になりつつある。この課題は、デスクトップコンピュータ又はラップトップコンピュータよりもはるかに小さい画面を有するハンドヘルド型ポータブルデバイスについて特に重大である。ユーザインタフェースは、ユーザがこれを介してコンテンツを受信するだけでなく、デバイスの機構、ツール及び機能にアクセスするユーザの試みを含めて、ユーザのアクション又は行動に対する応答もまた受信する出入口であるため、この状況は不利である。
【0003】
ポータブル電子デバイスとのユーザ対話を改善するために、いくつかのポータブルデバイスは、ユーザがデバイスの種々の機能にアクセスすることを可能にするために、特定の機能とそれぞれ関連付けられたより多くのプッシュボタンを含むか、複数の機能を各プッシュボタンに割り当てるか、又は、複雑なメニューシステムを使用する。これらの従来のユーザインタフェースはしばしば、結果的に、ユーザが記憶しなければならないキーシーケンス及びメニュー階層を複雑にする。
【発明の概要】
【0004】
タッチ感知面及びディスプレイを備える電子デバイスは、メッセージングアプリケーションを実行することができる。メッセージングアプリケーションにおいてスワイプオプションを表示するための方法は、電子メールメッセージに対応する情報のリストを表示することを含む。電子デバイスのタッチ感知面上で接触を検出し、複数の電子メールメッセージのうちのメッセージに対応するディスプレイ上の場所で、タッチ感知面との接触を中断しない、第1の方向における接触の連続移動を検出する。接触の移動の1つ以上のパラメータを判定し、移動のパラメータが第1の基準を満たすという判定に従って、電子メールメッセージに対してとられるアクションを表すユーザインタフェース要素を表示する。パラメータとしては、距離、速度及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ、第1及び第2の基準は、閾値距離、閾値速度又はそれらの任意の組み合わせであり得る。アクションを表すユーザインタフェース要素を選択することができ、選択されたユーザインタフェース要素に対応するアクションは、電子メールメッセージ、その電子メールメッセージの後続の受信電子メールメッセージ、その電子メールメッセージと関連付けられた電子メールスレッド、又はそれらの任意の組合せに適用される。ユーザインタフェース要素は、電子メールメッセージの側部から視覚的にスライドアウトすることによって、表示することができる。移動のパラメータが、第1の基準とは異なる第2の基準を満たすという判定に従って、電子メールメッセージに対してデフォルトアクションを実行する。」
明細書には、本願が解決しようとする課題を明記していないものの、上記の記載からすると、本願の課題は、多くのプッシュボタンや複雑なメニューシステムを備え、ユーザが記憶しなければならないキーシーケンス及びメニュー階層を複雑にするという従来のシステムにおける問題を解決し、小さいタッチ感知面及びディスプレイを備え、メッセージングアプリケーションを実行するポータブル電子デバイスにおいて、ユーザとの対話を改善することと認められる。
(3)本願発明1スライド処理について
ア 明細書及び図面の記載
審判請求書の全趣旨からして、請求人は、本願発明1スライド処理及び本願発明8スライド処理は、明細書の【0124】、【0125】、【0136】及び【0187】、図面の図5、図6及び図19にサポートされているため、理由1(サポート要件)及び理由2(新規事項)に該当しない旨主張していると認められるので、以下では、これらの記載を中心に検討することとする。
上記【0187】において言及のある図5に係る実施例に関し、明細書の【0124】及び【0125】には、次のように記載されている。
「【0124】
表示ジェスチャの完了後、あるいは、閾値距離又はしきい値速度に達した後、スワイプオプション528などのユーザインタフェース要素が、メッセージ部分506Bの片側(例えば、左側、右側)に表示される。一実施形態では、スワイプオプション528は、連続的に、及び/又は接触526が達した距離若しくは正規化距離に比例してスライドアウトする。したがって、接触526が、閾値距離の半分に達した場合、スワイプオプション528の半分が、例えば、図5Dの進行中のスワイプにより示されるように、メッセージ部分506Bの右側に表示される。接触526が、閾値距離の半分に達した場合、閾値距離の半分は、スワイプオプション528の長さの4分の1に等しくなり得、次いで、スワイプオプション528の1/4のみが、メッセージ部分506Bの右側に表示される。別の実施形態では、スワイプオプション528は、接触526が閾値距離に達し、次いで、所定の位置にスナップするまで、スライドアウトしないか、又は表示されない。表示ジェスチャが閾値速度を含む実施形態では、スワイプオプション528は、接触526の横断の速度に比例する速度でスライドアウトする。
【0125】
接触526が維持されるにつれてスワイプオプション528が部分的に表示される実施形態では、閾値距離に達するまで接触526が維持されない及び/又は接触526が中断される場合には、スワイプオプション528は、メッセージ部分506Bの元のビューまでビューから「ラバーバンド」するか、跳ね返るか、又はスライドし、スワイプオプション528を非表示にする。」
また、上記【0124】及び【0125】に対応する図面【図5C】ないし【図5E】は、以下のとおりである。
「【図5C】
[図:0001380854000001.jpg]
」
「【図5D】
[図:0001380854000002.jpg]
」
「【図5E】
[図:0001380854000003.jpg]
」
以上より、明細書には、図5に係る実施例に関して、「接触526」を左側へ移動するジェスチャをすると、「接触526」が達した距離に比例して「メッセージ部分506B」が左側にスライドすることにより、「スワイプオプション528」が、「メッセージ部分506B」の右側から連続的にスライドアウトし、「接触526」が「閾値距離」(又は閾値速度)に達した場合には、「スワイプオプション528」が「メッセージ部分506B」の右側に表示された状態となり、一方、「接触526」が「閾値距離」に達しない場合は、「メッセージ部分506B」は元の位置にスライドして「スワイプオプション528」が非表示になることが記載されているといえる。
なお、明細書の【0136】(摘記は省略)には【図6】の実施例に係る「拡張スワイプオプション628」について、前記【0125】と同様の記載がある。
一方、明細書の【0187】(令和2年7月27日に提出された手続補正書により補正されたもの)には、【図19】に係る実施例に関して、次のように記載されている。(下線は、補正された箇所を示す。)
「【0187】
最小化ジェスチャの完了後、あるいは閾値距離又は速度に達した後、メールアプリケーションビュー504の上に表示されたドラフトUI1900は、図19Eに示すように、ドラフトセクション1902へと最小化又はドロップダウンされる。一実施形態では、ドラフトUI1900は、ドラフトセクション1902へと最小化又はドロップダウンし、ドラフトセクション1902へのドラフトUI1900の移動は、連続しているか、及び/又は、図5、図6及び図7において説明した閾値距離及び閾値速度と同様に、接触1926が達した距離若しくは正規化距離に比例しているか、又は一定の速度である。接触1926が維持されるにつれてドラフトUI1900が部分的に表示される実施形態では、閾値距離に達するまで接触1926が維持されない、及び/又は接触1926が中断される場合には、ドラフトUI1900の一部分が依然として見えており、メールアプリケーションビュー504の上に表示することができる。別の実施形態では、ドラフトUI1900は、接触1926が閾値を超えた後に、ドラフトセクション1902に「ラバーバンド」又はスナップすることができる。」
また、上記【0187】に対応する図面【図19D】及び【図19E】は以下のとおりである。
「【図19D】
[図:0001380854000004.jpg]
」
「【図19E】
[図:0001380854000005.jpg]
」
以上より、明細書には、図19に係る実施例に関して、「接触1926」を下方向へ移動するジェスチャをすると、「ドラフトUI1900」が下方向の「ドラフトセクション1902」へ閾値距離に比例して移動し、「接触1926」が、「閾値距離」(又は閾値速度)に達した場合、「ドラフトUI1900」を「ドラフトセクション1902」へと最小化又はドロップダウンした状態で表示し、一方、「接触1926」が、「閾値距離」に達しない場合には、「ドラフトUI1900」の一部分が依然として見えていることが記載されているといえる。
ここで、明細書の記載において、図19に係る実施例においては、「接触1926」が、「閾値距離」に達しない場合には、「ドラフトUI1900」の一部分が依然として見えているという状態のみを特定するにとどまり、その際の具体的な処理は何ら特定されていないものの、図5に係る実施例では、「接触526」が「閾値距離」に達しない場合は、「メッセージ部分506B」が元の位置にスライドして「スワイプオプション528」が非表示になることにより、「ユーザとの対話を改善する」という本願の課題を解決しているといえ、また、図19に係る実施例について記載された【0187】には「図5、図6及び図7において説明した閾値距離及び閾値速度と同様に」と記載され、図5に係る実施例と同様の手法を採用することについて示唆がある。加えて、電子メールアプリケーションにおいて、新規メッセージを作成するために表示されるUIオブジェクトの表示位置を自動的に移動することが不可能であることは本願優先日前の技術常識とはいえない。
よって、図19に係る実施例において、「接触1926」が「閾値距離」に達しない場合には、図5に係る実施例において「接触26」が「閾値距離」に達しない場合に「接触26」により移動する対象を元の位置に戻す処理と同様の処理を行うこと、すなわち、図19に係る実施例において「接触1926」により移動する「ドラフトUI1900」を元の表示位置に戻すように処理することにより本願の課題を解決することは、明細書に記載された図5に係る実施例及び本願優先日前の技術常識を参酌することにより当業者が想起し得ることである。
イ 本願発明1スライド処理の技術的意義
本願発明1の「前記新たなメニューメッセージを構成するための前記アクションを受信することに応答して、第1の位置において第1のコンポジションインタフェースを表示する」からすると、「第1の位置」は、「新たなメニューメッセージ」を構成するためのアクションに応答して、「第1のコンポジションインタフェース」が最初に表示される位置である。
そして、本願発明1の「前記第1の接触の動きが前記閾値基準を超えないという判別に従って、前記第1のコンポジションインタフェースを前記ディスプレイ上の前記第1の位置まで戻すようスライドする処理」(本願発明1スライド処理)は、「第1の接触の動き」が「閾値基準」を越えないと判別された場合に、「第1のコンポジションインタフェース」を「第1の位置」すなわち、最初に表示される位置まで戻すようにスライドする処理と理解することができる。
ウ 本願発明1スライド処理と明細書との対応関係
本願発明1の「新たなメニューメッセージ」は、明細書には記載がないものの、「新たな」及び「メッセージ」という語に着目すれば、図19の「ドラフトUI1900A」の表題に記載されている「新規メッセージ」に対応し、また、本願発明1の「第1のコンポジションインタフェース」は、図19の「ドラフトUI1900A」に対応したものといえるから、本願発明1は、明細書の図19に係る実施例に対応したものと認められる。
そして、前記アで述べたように、図19に係る実施例において、「接触1926」が「閾値距離」に達しない場合には、「ドラフトUI1900」を元の表示位置に戻すように処理することにより本願の課題を解決することは、明細書に記載された図5に係る実施例及び本願優先日前の技術常識を参酌することにより当業者が想起し得ることであるから、本願発明1スライド処理は、明細書の記載において、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本願発明1スライド処理は、明細書に記載された実施例を拡張ないし一般化できる範囲を超えるものではなく、明細書及び図面の記載にサポートされているといえる。
(4)本願発明8スライド処理について
請求項8が引用する本願発明7の「前記第2のメッセージを構成するための前記アクションを受信することに応答して、第4の位置において第2のコンポジションインタフェースを表示する」を参酌すると、本願発明8スライド処理は、「第1の接触の動き」が「第2の閾値基準」を越えないと判別された場合に、「第2のコンポジションインタフェース」を最初に表示される「第4の位置」まで、「第1の接触の動き」の方向とは反対の方向にスライドする処理と理解することができ、これは、本願発明1スライド処理の「第1の位置」、「第1のコンポジションインタフェース」及び「閾値基準」のそれぞれを、「第4の位置」、「第2のコンポジションインタフェース」及び「第2の閾値基準」に置き換えたものにすぎない。また、「第2のコンポジションインタフェース」は、図19に係る実施例の「ドラフトUI1900B」に対応している。
そうすると、前記(3)アないしウを参酌すれば、本願発明8スライド処理は、本願発明1スライド処理と同様に、明細書に記載された実施例を拡張ないし一般化できる範囲を超えるものではなく、明細書及び図面の記載にサポートされているといえる。
(5)小括
以上より、本願発明1スライド処理及び本願発明8スライド処理は、いずれもサポート要件を満たしているから、これらの処理によって、本願発明1ないし11が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
したがって、原査定の理由1(サポート要件)を維持することはできない。
2 理由2(新規事項)について
(1)本願発明1スライド処理について
(令和2年7月27日に提出された手続補正書により補正される前の)翻訳文明細書の【0187】の記載は、次のとおりである。
「【0187】
最小化ジェスチャの完了後、あるいは閾値距離又は速度に達した後、メールアプリケーションビュー504の上に表示されたドラフトUI1900は、図19Eに示すように、
ドラフトセクション1902へと最小化又はドロップダウンされる。一実施形態では、ドラフトUI1900は、ドラフトセクション1902へと最小化又はドロップダウンし、ドラフトセクション1902へのドラフトUI1900の移動は、連続しているか、及び/又は、図5、図6及び図7において説明した閾値距離及び閾値速度と同様に、接触1926が達した距離若しくは正規化距離に比例しているか、又は一定の速度である。接触1926が維持されている際にドラフトUI1900が部分的に表示される実施形態では、閾値距離に達する、及び/又は接触1926が中断されるまで接触1926が維持される場合、ドラフトUI1900の一部分が依然として見えており、メールアプリケーションビュー504の上に表示することができる。別の実施形態では、ドラフトUI1900は、接触1926が閾値を超えた後に、ドラフトセクション1902に「ラバーバンド」又はスナップすることができる。」
翻訳文明細書の【0187】に記載の「接触1926が維持されている際にドラフトUI1900が部分的に表示される実施形態では、閾値距離に達する、及び/又は接触1926が中断されるまで接触1926が維持される場合、ドラフトUI1900の一部分が依然として見えており、メールアプリケーションビュー504の上に表示することができる。」と、令和2年7月27日に提出された手続補正書により補正された後の【0187】に記載の「接触1926が維持されるにつれてドラフトUI1900が部分的に表示される実施形態では、閾値距離に達するまで接触1926が維持されない、及び/又は接触1926が中断される場合には、ドラフトUI1900の一部分が依然として見えており、メールアプリケーションビュー504の上に表示することができる。」は、翻訳文明細書の上記記載をより明確にしたものであり、技術的な意味に相違はない。
そうすると、前記1(理由1(サポート要件)について)(3)で述べたように、本願発明1スライド処理は、明細書及び図面の記載にサポートされている以上、本願発明1スライド処理を付加する本件補正は、翻訳文明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
(2)本願発明8スライド処理について
前記1(理由1(サポート要件)について)(4)で述べたように、本願発明8スライド処理は、明細書及び図面の記載にサポートされている以上、本願発明8スライド処理を付加する本件補正は、翻訳文明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
(3)小括
以上より、本願発明1スライド処理及び本願発明8スライド処理を付加する本件補正は、特許法第17条の2第3項に適合しないとはいえない。
したがって、原査定の理由2(新規事項)を維持することはできない。
第5 原査定について
以上のとおりであるから、原査定の理由を維持することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-005126