特許拒絶査定不服審判
2021-001076
生成装置、生成方法及び生成プログラム
- 審判番号
- 2021-001076
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-043242
- 請求日
- 2021年01月26日
- 審決日
- 2021年10月15日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤフー株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 田中 秀人
- 審判官 石井 茂和
- 審判官 須田 勝巳
- 分類
- P18 .121-Z (G06F) / P18 .561-Z (G06F) / P18 .571-Z (G06F) / P18 .572-Z (G06F) / P18 .573-Z (G06F) / P18 .574-Z (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 43242「生成装置,生成方法及び生成プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日出願公開,特開2018-147327〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成29年3月7日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 3月17日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 5月21日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年10月20日付け:拒絶査定
令和 3年 1月26日 :審判請求書,手続補正書の提出
第2 令和3年1月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年1月26日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線は,補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
「 【請求項1】
第1手段において用いられるユーザを認証するための第1種別の認証情報と、第2手段において用いられるユーザを認証するための第2種別の認証情報とを取得する取得部と、
前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と、前記取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された第1種別の認証情報及び第2種別の認証情報とを含む抽象情報を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された抽象情報を用いて前記ユーザを認証するサーバに対して、当該抽象情報を送信する送信部と、
を備えたことを特徴とする生成装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和2年5月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
ユーザの認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報を取得する取得部と、
前記取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された抽象情報を用いて前記ユーザを認証するサーバに対して、当該抽象情報を送信する送信部と、
を備えたことを特徴とする生成装置。」
(3)補正事項
本件補正は以下の補正事項を含むものである。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1の
「ユーザの認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報を取得する取得部と」
を,本件補正後の請求項1の
「第1手段において用いられるユーザを認証するための第1種別の認証情報と、第2手段において用いられるユーザを認証するための第2種別の認証情報とを取得する取得部と」
とする補正。
イ 補正事項2
本件補正前の請求項1の
「前記取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する生成部と」
を,本件補正後の請求項1の
「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と、前記取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された第1種別の認証情報及び第2種別の認証情報とを含む抽象情報を生成する生成部と」
とする補正。
2 補正の適否
(1)補正事項1について
ア 上記補正事項1では,取得部が「第1手段において用いられるユーザを認証するための第1種別の認証情報と、第2手段において用いられるユーザを認証するための第2種別の認証情報とを取得する」ことが特定されているところ,認証情報の取得に関連して,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には,以下のような記載がある。(下線は関連する箇所を示すために当審で付したものである。)
(ア)「【0025】
まず、図1に示す例において、ユーザ端末10は、認証に関する各種情報を取得する(ステップS01)。具体的には、ユーザ端末10は、ユーザの認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報を取得する。
【0026】
例えば、ユーザ端末10は、ユーザU01から入力を受け付けることにより、ユーザU01が設定したパスワードを取得する。また、ユーザ端末10は、別の手段として、指紋認証機能を起動した場合には、ユーザU01から指紋データを取得する。また、ユーザ端末10は、ユーザU01に関するコンテキスト情報を取得する。」
イ 上記(ア)の段落【0025】の「ユーザ端末10は、ユーザの認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報を取得する」との記載,段落【0026】の「ユーザ端末10は、ユーザU01から入力を受け付けることにより、ユーザU01が設定したパスワードを取得する。また、ユーザ端末10は、別の手段として、指紋認証機能を起動した場合には、ユーザU01から指紋データを取得する。また、ユーザ端末10は、ユーザU01に関するコンテキスト情報を取得する」との記載からすると,
当初明細書等には,「複数の認証機能(手段)において用いられる複数の種別の認証情報を取得し,例えば,パスワード認証機能において用いられるパスワード,及び,指紋認証機能において用いられる指紋データを取得する」ことが記載されているといえる。
ウ 以上のことから,当初明細書等には,「第1手段において用いられるユーザを認証するための第1種別の認証情報と、第2手段において用いられるユーザを認証するための第2種別の認証情報とを取得する」ことが記載されているため,上記補正事項1は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
エ また,上記補正事項1は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ユーザの認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報」を,「第1手段において用いられるユーザを認証するための第1種別の認証情報と、第2手段において用いられるユーザを認証するための第2種別の認証情報と」と限定するものであるから,同発明を特定するために必要な事項を限定するものと認められる。
オ よって,上記補正事項1は,特許法17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たす適法なものである。
(2)補正事項2について
ア 新規事項について
(ア)上記補正事項2では,生成部が,「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と」を含む「抽象情報を生成する」ことが特定されているところ,抽象情報の生成に関連して,当初明細書等には,以下のa~gのような記載がある。(下線は関連する箇所を示すために当審で付したものである。)
a 「【0012】
〔1.生成処理の一例〕
まず、図1を用いて、実施形態に係る生成処理の一例について説明する。図1は、実施形態に係る生成処理の一例を示す図である。図1では、本願に係る生成装置に対応するユーザ端末10によって、ユーザの認証に用いるための情報が生成される生成処理の一例を示す。」
b 「【0014】
実施形態では、認証サーバ100は、ユーザU01の認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報に基づいてユーザU01を認証する、いわゆる多要素認証を行う。一例として、認証サーバ100は、パスワードや生体情報などのクレデンシャル情報(Credential Information)を用いて、ユーザU01の認証を行う。また、認証サーバ100は、ユーザ端末10から送信される、ユーザU01のコンテキスト(context)に関する各種情報に基づいて認証を行う。実施形態においてコンテキストとは、ユーザ端末10が利用されている状況や、ユーザ端末10を利用するユーザU01の状況のことをいう。認証サーバ100は、クレデンシャル情報やコンテキストに関する情報(以下、「コンテキスト情報」と表記する)といった複数の情報を用いてユーザU01の認証を行うことで、認証の安全性を向上させる。なお、コンテキスト情報を用いた認証(以下、「コンテキスト認証」と表記する)であれば、ユーザU01は、パスワード等を入力するような作業を行わずとも、日常的にユーザ端末10によって取得される行動情報を用いて認証を行わせることができる。」
c 「【0024】
以上を前提として、実施形態に係るユーザ端末10は、本願に係る生成処理によって、認証サーバ100に送信する内容が容易には特定されない情報(以下に説明するように、かかる情報を「抽出情報」と称する)を生成する。具体的には、ユーザ端末10は、多要素認証にあたって種々の手段から認証情報を取得したうえで、その手段や情報量が特定されないような抽象化された情報を生成する。そして、ユーザ端末10は、生成した抽象情報を認証サーバ100に送信して認証を行わせる。これにより、ユーザ端末10は、不正ユーザがモデルと仕様書を参照したとしても、当該ユーザの認証においてどのような素性が認証に用いられているかを、一見わからなくすることができる。また、ユーザ端末10は、不正ユーザがユーザ端末10から送信される情報を参照したとしても、どの素性の重みが高いか、あるいは、どのような手段によって取得された情報なのかを推定することを困難にさせることができる。かかる処理により、ユーザ端末10は、認証の利便性を確保しつつ、認証の安全性を高めることができる。以下、図1を用いて、ユーザ端末10による生成処理の一例について、流れに沿って説明する。」
d 「【0031】
ここで、ユーザ端末10は、取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する(ステップS02)。
【0032】
ユーザ端末10は、抽象情報の一例として、所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、取得元の手段及び情報量に関わらず、共通する形式を有する情報を生成する。この場合、所定時間とは、例えば、前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる抽象情報が生成されるまでの時間を示す。なお、所定時間は、例示した時間長に限らず、任意の時間長がユーザ端末10や認証サーバ100によって設定されてもよい。
【0033】
例えば、ユーザ端末10は、手段をインデックスとし、手段によって取得された認証情報が細分化されたデータが当該インデックスに属する形式となるよう、抽象情報を生成する。具体的には、ユーザ端末10は、図1に示すように、パスワードという手段のインデックスを「1」とし、指紋という手段のインデックスを「2」とする。そして、ユーザ端末10は、各々のインデックスに属する形式で、各々の手段によって取得された認証情報を付与する。
【0034】
ここで、ユーザ端末10は、所定時間内に取得された複数の種別の認証情報のうち、所定の条件に該当する種別の認証情報には、偽装した情報を用いて抽象情報を生成する。例えば、ユーザ端末10は、今回の抽象情報を生成するにあたり、取得されなかった認証情報や、所定の閾値よりも情報量が少なくなった認証情報について、偽装した情報を用いて抽象情報を生成する。
【0035】
上記のように、ユーザ端末10は、認証のタイミングによっては、全ての手段から認証情報を取得しない場合がある。このような場合であっても、ユーザ端末10は、偽装した情報(ダミー情報)を追加し、常に手段や情報量が共通するようなデータ形式を示す抽象情報を生成する。
【0036】
また、ユーザ端末10は、手段によって情報量に差がある場合には、その差を埋めて情報量を共通化させるために、偽装した情報を追加するようにしてもよい。一般に、パスワードを示す認証情報よりも、指紋データを示す認証情報の方が情報量は多くなる。この場合、ユーザ端末10は、パスワードを示す認証情報にダミーとなる情報を追加することで、各手段による情報量の差をなくすようにしてもよい。
【0037】
さらに、ユーザ端末10は、各インデックスに属する情報を細分化する。例えば、ユーザ端末10は、「2-1」や「2-2」のようなインデックスを作成し、各インデックスに属する情報を細分化する。そして、ユーザ端末10は、各インデックスに属するように作成された情報(これは、1つのパケットと読み替えてもよい)の情報量や形式を共通化させる。概念的に説明すると、ユーザ端末10は、指紋データを示す情報として「aaaabbbb・・・」といった情報を取得した場合に、「aaaa」や「bbbb」といった具合に、情報量が共通となるよう細分化する。
【0038】
また、ユーザ端末10は、他の手段から取得された情報についても、同じ情報量や形式となるよう情報を細分化する。なお、ユーザ端末10は、手段ごとに取得された情報の情報量が異なる場合には、上記のように偽装した情報を追加し、各情報を共通化する。すなわち、ユーザ端末10は、各インデックスに含まれる情報を共通化することで、どのインデックスにどのような認証情報が含まれているかが、一見わからないよう曖昧化する。なお、ユーザ端末10は、情報量のみならず、各手段に対応するインデックスの数自体を共通化させるようにしてもよい。この場合も、ユーザ端末10は、情報量が異なる情報については、偽装した情報(インデックス)を適宜追加する。
【0039】
このようにして、ユーザ端末10は、各々が異なる手段によって取得された複数の種別の認証情報を、取得した手段や情報量に関わらず共通化されたデータ形式の情報である、抽象情報を生成する。そして、ユーザ端末10は、抽象情報を認証サーバ100に送信する(ステップS03)。すなわち、ユーザ端末10は、認証サーバ100に送信する情報として、取得できなかった認証情報や、取得した情報量が少ない認証情報が混在していたとしても、常に略同一の情報量となる情報を送信する。」
e 「【0048】
〔3.ユーザ端末の構成〕
次に、図3を用いて、実施形態に係るユーザ端末10の構成について説明する。図3は、実施形態に係るユーザ端末10の構成例を示す図である。図3に示すように、ユーザ端末10は、通信部11と、入力部12と、表示部13と、検知部14と、記憶部15と、制御部16とを有する。」
f 「【0059】
図3に示すように、制御部16は、取得部161と、認証制御部162と、受付部163と、生成部164と、送信部165とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部16の内部構成は、図3に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。」
g 「【0070】
(生成部164について)
生成部164は、取得部161によって取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する。
【0071】
例えば、生成部164は、取得部161によって所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、取得元の手段及び情報量に関わらず共通する形式を有する抽象情報を生成する。
【0072】
具体的には、生成部164は、手段をインデックスとし、手段によって取得された認証情報が細分化されたデータがインデックスに属する形式で抽象情報を生成する。例えば、受付部163によって指紋データが受け付けられた場合には、生成部164は、指紋という手段をインデックスとし、実際の指紋データ(例えば、入力された指紋の状態を示すバイナリデータ)がインデックスに属する形式で、抽象情報を生成する。」
(イ)上記aの「本願に係る生成装置に対応するユーザ端末10によって、ユーザの認証に用いるための情報が生成される」との記載,
上記bの「認証サーバ100は、パスワードや生体情報などのクレデンシャル情報(Credential Information)を用いて、ユーザU01の認証を行う。また、認証サーバ100は、ユーザ端末10から送信される、ユーザU01のコンテキスト(context)に関する各種情報に基づいて認証を行う。実施形態においてコンテキストとは、ユーザ端末10が利用されている状況や、ユーザ端末10を利用するユーザU01の状況のことをいう。認証サーバ100は、クレデンシャル情報やコンテキストに関する情報(以下、「コンテキスト情報」と表記する)といった複数の情報を用いてユーザU01の認証を行うことで、認証の安全性を向上させる。」との記載,
上記cの「ユーザ端末10は、多要素認証にあたって種々の手段から認証情報を取得したうえで、その手段や情報量が特定されないような抽象化された情報を生成する。そして、ユーザ端末10は、生成した抽象情報を認証サーバ100に送信して認証を行わせる。」との記載,
上記dの段落【0031】の「ユーザ端末10は、取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する」,段落【0032】の「ユーザ端末10は、抽象情報の一例として、所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、取得元の手段及び情報量に関わらず、共通する形式を有する情報を生成する」,段落【0033】の「ユーザ端末10は、手段をインデックスとし、手段によって取得された認証情報が細分化されたデータが当該インデックスに属する形式となるよう、抽象情報を生成する。具体的には、ユーザ端末10は、図1に示すように、パスワードという手段のインデックスを「1」とし、指紋という手段のインデックスを「2」とする。そして、ユーザ端末10は、各々のインデックスに属する形式で、各々の手段によって取得された認証情報を付与する」,段落【0034】の「ユーザ端末10は、所定時間内に取得された複数の種別の認証情報のうち、所定の条件に該当する種別の認証情報には、偽装した情報を用いて抽象情報を生成する。例えば、ユーザ端末10は、今回の抽象情報を生成するにあたり、取得されなかった認証情報や、所定の閾値よりも情報量が少なくなった認証情報について、偽装した情報を用いて抽象情報を生成する」,段落【0035】の「ユーザ端末10は、認証のタイミングによっては、全ての手段から認証情報を取得しない場合がある。このような場合であっても、ユーザ端末10は、偽装した情報(ダミー情報)を追加し、常に手段や情報量が共通するようなデータ形式を示す抽象情報を生成する」,段落【0036】の「ユーザ端末10は、手段によって情報量に差がある場合には、その差を埋めて情報量を共通化させるために、偽装した情報を追加するようにしてもよい。一般に、パスワードを示す認証情報よりも、指紋データを示す認証情報の方が情報量は多くなる。この場合、ユーザ端末10は、パスワードを示す認証情報にダミーとなる情報を追加することで、各手段による情報量の差をなくすようにしてもよい」,段落【0037】の「ユーザ端末10は、各インデックスに属する情報を細分化する。例えば、ユーザ端末10は、「2-1」や「2-2」のようなインデックスを作成し、各インデックスに属する情報を細分化する。そして、ユーザ端末10は、各インデックスに属するように作成された情報(これは、1つのパケットと読み替えてもよい)の情報量や形式を共通化させる。概念的に説明すると、ユーザ端末10は、指紋データを示す情報として「aaaabbbb・・・」といった情報を取得した場合に、「aaaa」や「bbbb」といった具合に、情報量が共通となるよう細分化する」,段落【0038】の「ユーザ端末10は、他の手段から取得された情報についても、同じ情報量や形式となるよう情報を細分化する。なお、ユーザ端末10は、手段ごとに取得された情報の情報量が異なる場合には、上記のように偽装した情報を追加し、各情報を共通化する。すなわち、ユーザ端末10は、各インデックスに含まれる情報を共通化することで、どのインデックスにどのような認証情報が含まれているかが、一見わからないよう曖昧化する」,及び段落【0039】の「ユーザ端末10は、各々が異なる手段によって取得された複数の種別の認証情報を、取得した手段や情報量に関わらず共通化されたデータ形式の情報である、抽象情報を生成する」との記載,
上記eの「ユーザ端末10は、通信部11と、入力部12と、表示部13と、検知部14と、記憶部15と、制御部16とを有する」との記載,
上記fの「制御部16は、取得部161と、認証制御部162と、受付部163と、生成部164と、送信部165とを有し」との記載,
上記gの段落【0070】の「生成部164は、取得部161によって取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する」,段落【0071】の「生成部164は、取得部161によって所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、取得元の手段及び情報量に関わらず共通する形式を有する抽象情報を生成する」,及び段落【0072】の「生成部164は、手段をインデックスとし、手段によって取得された認証情報が細分化されたデータがインデックスに属する形式で抽象情報を生成する。例えば、受付部163によって指紋データが受け付けられた場合には、生成部164は、指紋という手段をインデックスとし、実際の指紋データ(例えば、入力された指紋の状態を示すバイナリデータ)がインデックスに属する形式で、抽象情報を生成する」との記載からすると,
当初明細書等には,「生成装置の生成部が,取得部によって取得された複数の種別の認証情報を,取得元の手段を示すインデックス属する形式としたうえで,各インデックスに属する認証情報を,取得元の手段及び情報量にかかわらず共通する形式となるように細分化した抽象情報を生成する」ことが記載されているといえる。
(ウ)そうしてみると,当初明細書等に記載された「インデックス」は,認証情報と取得元の手段との対応関係を示す,「索引。見出し。」(出典:デジタル大辞泉)を意味するものであると認められる。なお,「インデックス」という語は,一般に,「索引。見出し。」のほかに,「指数。指標。」又は「添え字」(「数学で、同じ文字を用いて複数の変数を表すとき、それらを区別するために、文字のわきの上または下に添える小さな文字や数字。」)(出典:デジタル大辞泉)との意味も有するものであるが,ここでいう「指数」は,「統計で,物価・賃金・生産高など同種のものの時間的変動を示す数値」(出典:デジタル大辞泉)との意味と認められるところ,当初明細書等に記載された「インデックス」は,この意味での「指数」(又は「指標」)に当たるものとはいえず,また,上記の意味での「添え字」にも当たらない。
(エ)以上のことから,当初明細書等には,認証情報の取得元の手段を示す「インデックス」(「索引。見出し。」)を含む抽象情報を生成することは記載されているものの,「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数」のような「指数」(「ある数・文字の右肩に記して,それを何度掛け合わせるかを示す数字・文字」,又は,「統計で,物価・賃金・生産高など同種のものの時間的変動を示す数値」(出典:デジタル大辞泉))を含む「抽象情報を生成」することが記載されているとはいえない。
また,当初明細書等のその他の記載をみても,「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と」を含む「抽象情報を生成する」ことについては記載も示唆もされていない。
してみれば,請求項1を「生成部」が「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と」を含む「抽象情報を生成する」と補正する補正事項2は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであって,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
(オ)なお,この点に関して,審判請求人は審判請求書において,以下のとおり主張している。
『(1)補正の根拠の明示
上記の拒絶理由を解消すべく、審判請求書と同日付けで手続補正書を提出し、本願の特許請求の範囲を補正しました。
補正の根拠について説明しますと、補正後の請求項1に係る「第1手段において用いられるユーザを認証するための第1種別の認証情報と、第2手段において用いられるユーザを認証するための第2種別の認証情報とを取得する取得部と、
前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と、前記取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された第1種別の認証情報及び第2種別の認証情報とを含む抽象情報を生成する生成部」とする補正事項は、出願当初明細書の段落0033、段落0037、補正前の請求項3等の記載に基づくものです。』
しかしながら,上記主張で補正の根拠とされている段落【0033】及び【0037】は,上記(イ)及び(ウ)で検討したように,「指数」ではなく「インデックス」について記載したものであって,「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と」を含む「抽象情報を生成する」ことを記載したものではない。
また,上記主張で補正の根拠とされている本件補正前の請求項3の「前記手段をインデックスとし、当該手段によって取得された認証情報が細分化されたデータが当該インデックスに属する形式で前記抽象情報を生成する」との記載も,同様に,「指数」ではなく「インデックス」について記載したものであって,「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と」を含む「抽象情報を生成する」ことを記載したものではない。
そうすると,審判請求人が補正の根拠として主張している記載は,いずれも,「前記第1手段に対応する第1指数及び前記第2手段に対応する第2指数と」を含む「抽象情報を生成する」ことを記載したものではないから,審判請求人の審判請求書における主張は採用することができない。
(カ)上記(ア)ないし(オ)のとおり,上記補正事項2は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではないから,上記補正事項2を含む本件補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
イ 目的外補正について
(ア)上記補正事項2は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する生成部」について,「抽象情報」が「各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である」という限定を取り除くものであるから,同発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。また,上記補正事項2は,請求項の削除,誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しない。
したがって,上記補正事項2は特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものではない。
(イ)なお,この点に関して,審判請求人は審判請求書において,以下のとおり主張している。
「本審判請求書と同日付けの手続補正書における補正事項は、第1手段において用いられるユーザを認証するための第1種別の認証情報と、第2手段において用いられるユーザを認証するための第2種別の認証情報とを取得する点と、第1手段に対応する第1指数及び第2手段に対応する第2指数と、前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された第1種別の認証情報及び第2種別の認証情報とを含む抽象情報を生成する点とを限定するものであり、限定的減縮に該当すると思料致します。」
しかしながら,上記(ア)のとおり,「抽象情報」について「各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である」という限定を取り除くことは本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく,限定的減縮を目的とした補正とは認められないから,審判請求人の審判請求書における主張を採用することはできない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおり,上記補正事項2は,特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
3 補正却下の決定についてのむすび
上記2(2)のとおり,本件補正は,特許法17条の2第3項及び同条第5項の規定する要件を満たしていない上記補正事項2を含むものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年1月26日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年5月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「ユーザの認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報を取得する取得部と、
前記取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された抽象情報を用いて前記ユーザを認証するサーバに対して、当該抽象情報を送信する送信部と、
を備えたことを特徴とする生成装置。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献1:特開2017-37529号公報
引用文献2:特開2002-99511号公報
3 引用文献及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2017-37529号公報(平成29年2月16日公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(なお,下線部は当審で付与した。以下,同じ。)
ア 「【0011】
〔1.認証処理の一例〕
まず、図1を用いて、実施形態に係る認証処理の一例について説明する。図1は、実施形態に係る認証処理の一例を示す図である。図1では、本願に係る認証装置100によって、複数の端末を利用するユーザの認証処理が行われる例を示す。
【0012】
認証装置100は、端末から送信される情報を取得し、取得した情報に基づいてユーザの認証を行うサーバ装置である。認証装置100が取得する情報とは、端末の利用状況であり、例えば、端末がユーザによって操作された履歴(ログ)や、端末内のセンサ等によって取得されるデータや、端末が行う通信に関する情報等が含まれる。
【0013】
認証装置100は、ユーザに関連付けられる複数の端末から情報を取得する。ユーザに関連付けられる端末(以下、「ユーザ端末10」と表記する)とは、例えば、ユーザが所有する端末や、ユーザが利用する端末等をいい、携帯可能なモバイル端末であっても、所定の場所に設置された端末であってもよい。そして、認証装置100は、複数のユーザ端末10から取得される利用状況の組合せに基づいて、ユーザの認証を行う。以下、認証装置100によって行われる認証処理の一例を流れに沿って説明する。
【0014】
図1では、ユーザU1の置かれている状況と、その状況の際にユーザU1が利用可能な複数のユーザ端末10を示している。例えば図1では、ユーザU1が「自宅」にいるときには、ユーザ端末10として、スマートフォン20や、眼鏡型端末30や、時計型端末40や、デスクトップパソコン50を利用できることを示している。また、ユーザU1が「移動中」のときには、ユーザ端末10として、スマートフォン20や、眼鏡型端末30や、時計型端末40を利用できることを示している。また、ユーザU1が「会社」にいるときには、ユーザ端末10として、スマートフォン20や、眼鏡型端末30や、時計型端末40や、ノート型パソコン60を利用できることを示している。また、ユーザU1が「別荘」にいるときには、ユーザ端末10として、スマートフォン20や、眼鏡型端末30や、時計型端末40や、タブレット端末70を利用できることを示している。なお、以下では、各端末を区別する必要のないときは、スマートフォン20などの端末を総称して、ユーザ端末10と表記する場合がある。
【0015】
各ユーザ端末10は、認証装置100に送信する情報を所定時間毎に取得し、あるいは、特定のイベント(ユーザによる操作など)が発生したタイミングで情報を記録し、所定時間保持する。そして、所定のタイミングで、ユーザ端末10は、保持した情報を認証装置100に送信する。認証装置100は、各ユーザ端末10から送信された情報を取得し、保持する。図1に示す例では、認証装置100は、所定期間(例えば、直近数カ月など)において、ユーザU1に関連付けられた複数のユーザ端末10から利用状況の履歴を取得しているものとする。なお、認証装置100は、ユーザ端末10からの送信によらず、所定時間置きにユーザ端末10をクロール(crawl)することにより、利用状況を取得してもよい。」
イ 「【図1】
[図:0001380712000001.jpg]
」
ウ 「【0033】
ユーザ端末10は、ユーザによる操作や、ユーザ端末10が有する機能に応じて、端末が利用されたことを示す利用状況を記憶する。例えば、ユーザ端末10は、電源のON/OFFや、画面のON/OFFを切り替えた情報(例えば、スリープ状態を解除する操作など)を記憶する。また、ユーザ端末10には、種々のセンサが内蔵される。例えば、ユーザ端末10には、位置、加速度、温度、重力、回転(角速度)、照度、地磁気、圧力、近接、湿度、回転ベクトルといった、種々の物理量を測定するセンサが含まれる。ユーザ端末10は、ユーザの利用状況に応じて、種々のセンサにより測定される情報を取得する。また、ユーザ端末10は、上述したGPSシステムなどの外部システムと通信を行うことによって各種情報を取得してもよい。そして、ユーザ端末10は、取得した情報を認証装置100に送信する。」
エ 「【0068】
また、取得部131は、所定の時間内における複数のユーザ端末10の利用状況を取得してもよい。例えば、取得部131は、所定の時間として、認証処理がユーザから試みられた時点から直近1時間の利用状況を取得する。また、取得部131は、認証処理が試みられた時点と対応する所定の時間における利用状況をさらに取得してもよい。例えば、取得部131は、認証処理が試みられた時点が「月曜日」の「8時00分」である場合には、その一週間前の「月曜日」の「8時」における、各ユーザ端末10の利用状況を取得する。このように、取得部131が、対応する時間帯同士の利用状況を取得することにより、後述する認証部133は、対応する時間帯同士で利用状況の比較を行うといった認証処理を行うことが可能となる。」
(2)引用発明
引用文献1に記載されている事項について検討する。
ア 上記(1)アの段落【0012】の「認証装置100は、端末から送信される情報を取得し、取得した情報に基づいてユーザの認証を行うサーバ装置である。認証装置100が取得する情報とは、端末の利用状況であり、例えば、端末がユーザによって操作された履歴(ログ)や、端末内のセンサ等によって取得されるデータや、端末が行う通信に関する情報等が含まれる。」との記載,上記(1)ウの「ユーザ端末10は、ユーザによる操作や、ユーザ端末10が有する機能に応じて、端末が利用されたことを示す利用状況を記憶する。例えば、ユーザ端末10は、電源のON/OFFや、画面のON/OFFを切り替えた情報(例えば、スリープ状態を解除する操作など)を記憶する。また、ユーザ端末10には、種々のセンサが内蔵される。例えば、ユーザ端末10には、位置、加速度、温度、重力、回転(角速度)、照度、地磁気、圧力、近接、湿度、回転ベクトルといった、種々の物理量を測定するセンサが含まれる。ユーザ端末10は、ユーザの利用状況に応じて、種々のセンサにより測定される情報を取得する。また、ユーザ端末10は、上述したGPSシステムなどの外部システムと通信を行うことによって各種情報を取得してもよい。」との記載から,引用文献1には,
ユーザ端末が,"ユーザの認証に用いられる情報であって,ユーザ端末がユーザによって操作された履歴(ログ),ユーザ端末内のセンサ等によって取得されるデータ,ユーザ端末がGPSシステム等の外部システムと通信を行うことによって取得する情報を取得"することが記載されていると認められる。
ここで,引用文献1において,「ユーザ端末」が,「ユーザ端末がユーザによって操作された履歴(ログ)」,「ユーザ端末内のセンサ等によって取得されるデータ」,「ユーザ端末がGPSシステム等の外部システムと通信を行うことによって取得する情報」を,各々が異なる手段(ログを取得するための手段,センサ等,外部システムとの通信のための手段等)によって取得しており,それらの情報はそれぞれが異なる複数の種別の情報であること,及び,「ユーザ端末」が,それらの手段によって取得された情報を,認証サーバに送信するために取得(集約)する手段を備えていることは当業者にとって明らかである。
以上から,引用文献1には,
ユーザ端末が,"ユーザの認証に用いられる情報であって,ユーザ端末がユーザによって操作された履歴(ログ),ユーザ端末内のセンサ等によって取得されるデータ,ユーザ端末がGPSシステム等の外部システムと通信を行うことによって取得する情報を各々が異なる手段によって取得される複数の種別の情報として取得"することが記載されていると認められる。
イ 上記(ア)の段落【0012】の「認証装置100は、端末から送信される情報を取得し、取得した情報に基づいてユーザの認証を行うサーバ装置である。認証装置100が取得する情報とは、端末の利用状況であり、例えば、端末がユーザによって操作された履歴(ログ)や、端末内のセンサ等によって取得されるデータや、端末が行う通信に関する情報等が含まれる。」,及び段落【0015】の「各ユーザ端末10は、認証装置100に送信する情報を所定時間毎に取得し、あるいは、特定のイベント(ユーザによる操作など)が発生したタイミングで情報を記録し、所定時間保持する。そして、所定のタイミングで、ユーザ端末10は、保持した情報を認証装置100に送信する。」との記載から,引用文献1には,
ユーザ端末が,"ユーザ端末が取得した情報を所定時間保持し,所定のタイミングで,当該保持した情報を,当該情報に基づいてユーザの認証を行う認証装置に送信する"ことが記載されていると認められる。
ウ まとめ
上記ア及びイの検討から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお,引用発明の各構成を,それぞれに付した符号(a)~(c)により,以下,構成a~構成cと称する。
(引用発明)
(a)ユーザの認証に用いられる情報であって,ユーザ端末がユーザによって操作された履歴(ログ),ユーザ端末内のセンサ等によって取得されるデータ,ユーザ端末がGPSシステム等の外部システムと通信を行うことによって取得する情報を各々が異なる手段によって取得される複数の種別の情報として取得し,
(b)ユーザ端末が取得した前記情報を所定時間保持し,所定のタイミングで,当該保持した情報を,当該情報に基づいてユーザの認証を行う認証装置に送信する,
(c)ユーザ端末。
(3)引用文献2の記載事項
ア 同じく原査定に引用され,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-99511号公報(2002年4月5日公開。以下,「引用文献2」という。)には,次の記載がある。
「【0015】
即ち、インターネット2を介して接続されるサーバ3および端末4を用い、該端末4側からの要求に応じてサーバ3側で所定の業務処理を実行すると共に、サーバ3側から返送された処理結果を端末4側で表示および印刷するにあたり、前記サーバ3側に、業務処理に必要な情報が蓄積されるメインデータベース6を設ける一方、端末4側に、個人情報が蓄積されるローカルデータベース8を設け、さらに端末側では、サーバ3側から返送された処理結果と、ローカルデータベース8内の対応する個人情報とを合成して表示または印刷するようにしたため、インターネット2上に個人情報に流すことなく業務処理を行うことが可能になる。従って、インターネット2を介して接続したサーバ3・端末4間でも個人情報の漏洩を危惧することなく業務処理を行うことができ、その結果、機密性の高い個人情報を扱う介護保険業務処理サービスをASPで提供することが可能になる許りでなく、保護条例で個人情報を外部に出すことを禁止している自治体でもASPの利用が可能になる。
【0016】
ところで、サーバ3もしくは端末4から複数の項目データ(処理結果、入力データ等)をインターネット2上に送出する場合、本実施形態では、各項目データの桁数を、予めサーバ3と端末4との間で取決めした桁数に統一することにより、桁数による項目データの解読を困難にしている。つまり、「項目1(2桁)、項目2(3桁)、項目3(8桁)、項目4(1桁)、項目5(10桁)・・・」の様な項目データを送出する場合には、「項目1(3桁)、項目2(3桁)、項目3(10桁)、項目4(3桁)、項目5(10桁)・・・」の様に桁数を統一(例えば3桁と10桁の2種類)すべく、各データの末尾に所定のダミーデータ(例えば0)を追加している。」
イ 上記記載から,引用文献2には,次の事項が記載されていると認められる。
「サーバもしくは端末から複数の項目データをインターネット上に送出する場合,各項目データの桁数を,予めサーバと端末との間で取決めした桁数に統一することにより,桁数による項目データの解読を困難にすること。」
4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)構成a,bによれば,引用発明の「ユーザ端末」は,ユーザの認証に用いられる情報を取得し,ユーザの認証を行う認証装置に送信するものであるから,本願発明の「生成装置」に対応する。そして,引用発明の「認証装置」は,ユーザ端末から送信される情報に基づいてユーザの認証を行うものであるから,本願発明の「サーバ」に相当する。
(2)構成aによれば,引用発明の「各々が異なる手段によって取得される複数の種別の情報」である「ユーザ端末がユーザによって操作された履歴(ログ),ユーザ端末内のセンサ等によって取得されるデータ,ユーザ端末がGPSシステム等の外部システムと通信を行うことによって取得する情報」は,"ユーザの認証に用いられる認証情報であって、各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報"に相当する。
そうすると,上記(1)の検討も踏まえると,本願発明と引用発明とは,生成装置が,"ユーザの認証に用いられる認証情報であって,各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報を取得する取得部"を備える点で一致する。
(3)構成a,bによれば,引用発明の「ユーザ端末」が,認証装置に送信する情報は,認証装置が"ユーザの認証に用いる情報"である。また,本願発明の「生成装置」が,サーバに送信する抽象情報も,サーバにおいて"ユーザの認証に用いる情報"である。
そして,引用発明の「ユーザ端末」が,当該"ユーザの認証に用いる情報"を認証装置に送信するための何らかの手段(本願発明の「送信部」に相当)を備えていることは明らかである。
してみると,上記(1)の検討も踏まえると,本願発明と引用発明とは,生成装置が,"ユーザを認証するサーバに対して,ユーザの認証に用いる情報を送信する送信部"を備える点で一致する。
(4)一致点・相違点
したがって,本願発明と引用発明とは,次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
ユーザの認証に用いられる認証情報であって,各々が異なる手段によって取得される複数の種別の認証情報を取得する取得部と,
ユーザを認証するサーバに対して,ユーザの認証に用いる情報を送信する送信部と,
を備えた,生成装置。
[相違点1]
本願発明では,生成装置が,「取得部によって前回の認証が行われたタイミングから、今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された複数の種別の認証情報から、各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報を生成する生成部」を備えるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。
[相違点2]
「サーバ」あるいは「認証装置」に送信する"ユーザの認証に用いる情報"に関し,本願発明では,「生成部によって生成された抽象情報」であるのに対し,引用発明は,ユーザ端末が取得した情報である点。
(6)当審の判断
ア 相違点1について
上記(3)イのとおり,引用文献2には,「サーバもしくは端末から複数の項目データをインターネット上に送出する場合,各項目データの桁数を,予めサーバと端末との間で取決めした桁数に統一することにより,桁数による項目データの解読を困難にすること。」が記載されている。
引用発明と,上記引用文献2に記載された事項とは,いずれもサーバと端末装置との間でインターネット等のネットワークを通じてデータの送受信を行うものである点で共通しており,このようなネットワークを通じたデータの送受信に際してデータの解読を困難にすることは周知の課題であるから,引用発明において,当該課題を解決するために上記引用文献2に記載された事項を適用し,「生成装置」が,「所定時間内に取得された複数の種別の認証情報」の桁数を,あらかじめ「サーバ」と「生成装置」との間で取決めした桁数に統一することにより,桁数による項目データの解読を困難にした情報,すなわち,「各々の認証情報の取得元となった手段および各々の認証情報の情報量が特定されない情報である抽象情報」を生成する構成を備えることは,当業者が容易に想到し得たことである。
また,その際に,抽象情報に含める「認証情報」をどのようなものとするかは当業者が適宜に決定すべきことであり,引用発明において,生成装置が取得した情報を保持する時間を適宜設定することにより,「前回の認証が行われたタイミングから,今回認証で用いる情報が生成されるまでの時間を示す所定時間内に取得された」ものとすることは,当業者が適宜なし得たことである。
イ 相違点2について
引用発明は,生成装置が「サーバ」あるいは「認証装置」に"ユーザの認証に用いる情報"を送信するものであるため,上記アのように,引用発明において,データの解読を困難にするために「認証情報」から「抽象情報」を生成するようにした場合に,生成装置から「サーバ」あるいは「認証装置」に送信する情報を,「認証情報」に代えて生成された「抽象情報」とすることは当業者が当然行うことにすぎない。
ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2に記載された事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-001076