2021-000885
ワイヤボンドを有するパワーオーバーレイ構造体およびその製造方法
- 審判番号
- 2021-000885
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-198983外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年01月22日
- 審決日
- 2022年02月21日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】関口 一哉
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 18項目
第1 手続の経緯
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本願は,本願は,平成27年10月7日(パリ条約による優先権主張2014年10月13日,米国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1~17に係る発明は,令和3年11月9日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】少なくとも1つの上部コンタクトパッド(44,46,48,50,52,54)をその上面(56,58,60)に配置されて有するパワーデバイスと,前記パワーデバイスの前記上面(56,58,60)に結合された誘電体層(74),前記誘電体層(74)を貫通して形成されたビア(78)を通って延在する金属相互接続部(84,86)を有し,前記パワーデバイスの前記少なくとも1つの上部コンタクトパッド(44,46,48,50,52,54)に電気的に結合された金属被覆層(80),および続きを表示(全12行)前記金属相互接続部(84)に結合された銅のワイヤボンド(100)を含むパワーオーバーレイ(POL)相互接続層(88)と,前記金属被覆層(80)に直接結合された少なくとも2つの銅のワイヤボンド(96,98)とを備え,前記金属相互接続部(86)が,前記少なくとも2つの銅のワイヤボンド(96,98)のそれぞれの銅のワイヤボンドと,前記少なくとも1つの上部コンタクトパッドのうちの1つの上部コンタクトパッド(46)の間に電流に対する並行経路を形成し,前記2つの銅のワイヤボンド(96,98)の各接触表面(130,132)の下のPOL相互接続層(88)の部分(122,124)がそれぞれ,少なくとも2つの金属相互接続部(86)の部分を含み,前記2つの銅のワイヤボンド(96,98)は前記銅のワイヤボンド(100)よりも厚肉で提供される,POL構造体(90,92,94)。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審による令和3年8月4日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由のうち理由1(以下「当審拒絶理由」という)は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1~3に記載された発明に基づいて,また,請求項2~12,17~18,20~21に係る発明は,下記の引用例1~6に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用例1.特開2006-165515号公報
引用例2.特開2013-118310号公報
引用例3.特開2013-243166号公報
引用例4.特開2014-99606号公報
引用例5.特開2002-76190号公報
引用例6.特開2005-79462号公報
第4 引用例の記載と引用発明1
1.引用例1の記載
当審拒絶理由で引用された刊行物である引用例1(特開2006-165515号公報)には,次の記載がある。(下線は当審による。以下同じ。)
「【0016】以下,添付図面を参照しつつ,本発明の実施例を説明する。(第1の実施形態)図1(a)は本発明の第1の実施例による半導体装置H1を模式的に示す図である。また,図1(b)は,図1(a)の破線で囲ったA部の拡大図で,第1の実施例の作用を示す図である。【0017】半導体装置H1は,シリコン基板1に形成された複数のパワー素子ユニットセル,例えばLDMOS(Lateral Diffused MOS)ユニットセルにおいては,ゲート,ソース,ドレインそれぞれを独立に引き出し,並列接続することにより構成されている。図1(a)に示すように,複数のユニットセルのソース,ドレインのそれぞれからコンタクト孔を介して接続する引き出し配線2が設けられている。このソース,ドレインのそれぞれに接続された引き出し配線2は,層間絶縁層3に形成したヴィア孔を介してソース,ドレインのそれぞれ並列接続された集電電極4が設けられている。尚,図1(a)では,ソースもしくはドレインのどちらか一方の引き出し線2同士を並列する集電電極4が,模式的に示されている。【0018】集電電極4上には層間保護膜5が形成されている。層間保護膜5には,複数個の開口部5kが隣接して配置され,隣接する開口部5k間には層間保護膜5による衝撃吸収梁5hが形成されている。また,層間保護膜5上には,集電電極4と同一材料からなり,複数個の開口部5kを介して,集電電極4に接続する厚膜電極6が設けられている。さらに,電極6を被覆する最終保護膜7がシリコン基板1上の最表面に形成され,前記厚膜電極6へボンディングワイヤ9を接続するために,複数個の開口部5kの上方において,最終保護膜7が開口されている。最終保護膜7はポリイミド樹脂膜からなり,最終保護膜7の膜厚は,厚膜電極6の膜厚より厚いことが望ましい。」
「【0022】上記ように,本発明により半導体装置H1によれば,ボンディングワイヤ9の接続時に,集電電極4より下層にあるパワー素子形成領域へのボンディング衝撃の伝播が抑止され,パワー素子領域での不具合発生を抑止することができる。また,上記半導体装置H1における構造は,厚膜電極6が最終保護膜7で被覆され,ボンディングを行うのに必要な最終保護膜7の領域が開口されてなる構造である。このため,プローブ動作時の接蝕性に関わる問題もなく,また,ボンディング時にボンディングワイヤ9と厚膜電極6表面が直接接着するため接合強度の劣化も生じない。加えて,衝撃吸収梁5hを厚膜電極6と集電電極4により包み込む構造となっているため,ボンディング衝撃を緩和・吸収する際に前記衝撃吸収梁5hが破損したとしても,厚膜電極6と集電電極4は初期から電気的に接続されており,電極間短絡等の不具合は発生しないフェールセーフ的な構造となっている。」
引用例1の図1として,以下の図面が示されている。
[図:0001386708000001.jpg]
2.摘記の整理
以上の摘記によれば,引用例1には次の事項が記載されているものと理解できる。
ア シリコン基板1に形成された複数のパワー素子ユニットセルのゲート,ソース,ドレインそれぞれを独立に引き出し,並列接続することにより構成されている半導体装置H1。(段落0017)
イ シリコン基板1上に,複数のパワー素子ユニットセルのソース,ドレインのそれぞれに接続された引き出し配線2が設けられ,引き出し配線2上に層間絶縁膜3が設けられること。(段落0017,図1(a))
ウ 層間絶縁膜3に形成したヴィア孔を介して上記ソース,ドレインのそれぞれの引き出し配線2同士を並列接続する集電電極4が設けられること。(段落0017,図1)
エ 集電電極4上に,層間保護膜5が形成され,層間保護膜5には,複数個の開口部5kが隣接して配置されること。(段落0018,図1(a))
オ 層間保護膜5上に,複数個の開口部5kを介して集電電極4に接続する厚膜電極6が設けられること。(段落0018,図1(a),(b))
カ 集電電極4よりも下層にパワー素子領域を有すること。(段落0022)
キ 上記イ~ウから,上記カの「パワー素子領域」は,「シリコン基板1に形成された複数のパワー素子ユニットセル」,「引き出し配線2」及び「層間絶縁膜3」から構成されていることが理解できる。
ク 図1(a)(b)から,厚膜電極6の一部が複数の開口部5kを充填していること,厚膜電極6にボンディングワイヤ9が2本接続されていること,厚膜電極6とボンディングワイヤ9の接触面が複数個の開口部5kを含んでいることが見て取れる。
3.引用発明1
上記2.ア~クの事項から,引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「シリコン基板1に形成された複数のパワー素子ユニットセルのゲート,ソース,ドレインそれぞれを独立に引き出し,並列接続することにより構成されている半導体装置H1であって,シリコン基板1上に,複数のパワー素子ユニットセルのソース,ドレインのそれぞれに接続された引き出し配線2が設けられ,引き出し配線2上に層間絶縁膜3が設けられ,上記複数のパワー素子ユニットセル,引き出し配線2及び層間絶縁膜3によりパワー素子領域が構成され,続きを表示(全11行)層間絶縁膜3に形成したヴィア孔を介して上記ソース,ドレインのそれぞれの引き出し配線2同士を並列接続する集電電極4が設けられ,集電電極4上に,複数個の開口部5kが隣接して配置された層間保護膜が形成され,層間保護膜5上に,複数個の開口部5kを介して集電電極4に接続する厚膜電極6が設けられ,厚膜電極6の一部は複数の開口部5kを充填しており,厚膜電極6にはボンディングワイヤ9が2本接続されており,厚膜電極6とボンディングワイヤ9の接触面が複数個の開口部5kを含んでいる,半導体装置H1。」
4.引用例2~3の記載と周知技術1
(1)引用例2の記載
当審拒絶理由で引用された刊行物である引用例2(特開2013-118310号公報)には,次の記載がある。
「【0002】例えば,1アンペア程度以上の大電流を流すパワーデバイスなどの半導体装置について,その半導体装置が含むチップと半導体装置が有する外部端子との接続は,アセンブリ製造コストが安く,構造的な自由度が高いことから,ワイヤボンディング接続がよく用いられている。チップが有するチップパッドの材としては,アルミニウム(以下アルミまたはAlと表記することあり)または銅(以下Cuと表記することあり)が用いられるのが一般的である。チップパッドの主材がアルミの場合,チップパッド上に更に銅の金属膜を施し,その銅の金属膜の上に,アルミまたは銅(好ましくは銅)のワイヤでワイヤボンディングする構造が使用されている。他方,チップパッドの主材が銅である場合,その層の金属膜の上に,銅のワイヤでボンディングする。つまり,チップパッドの材およびワイヤボンディングの材は,一般的にCuが主成分として使われている。【0003】Cuは,他の金属と比べ,電気抵抗率が例えばアルミよりも低く,大電流(1アンペア以上)または大消費電力(≧1~100W)を流すことも可能で,更にコストが安いというメリットがあるからである。」
(2)引用例3の記載
当審拒絶理由で引用された刊行物である引用例3(特開2013-243166号公報)には,次の記載がある
「【0001】本発明は半導体装置及びその製造方法,特にパワー半導体素子等で銅線を用いてワイヤボンディングする半導体装置に関する。」
「【0004】一方,近年,非特許文献1に示されるように,熱伝導率,電気伝導率等において有利となる銅線を用いてワイヤボンディングすることが提案され,半導体素子の電極表面に形成されたアルミニウム材や銅材に対して銅線を接続することが行われる。一般的に,この銅線には,細径線と太径線があり,細径線の場合は75μm未満の銅線を用いて,ボールボンディング技術によって配線され,このときの半導体素子の電極表面にはアルミニウム材が使用される。また,太径線の場合は75μm以上の銅線を用いて,ウエッジボンディング技術によって配線され,このときの半導体素子の電極表面には銅材が適用される。」
(3)周知技術1
上記(1)(2)によれば,本願の優先日前に次の技術(以下「周知技術1」という)が周知であったものと認められる。
(周知技術1)パワーデバイスにおいて銅のボンディングワイヤを用いること。
第5 対比
1.本願発明1と引用発明1の対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると次のようになる。
ア 本願明細書の段落0020によれば,本願発明1の「上部コンタクトパッド(44,46,48,50,52,54)」は,「各半導体デバイス38,40,42内の内部接点への導電経路を提供する」ものである。
一方,引用発明1の「集電電極4」は,「シリコン基板1上に形成された複数のパワー素子ユニットセル」のソース,ドレインのそれぞれに接続された「引き出し配線2同士を並列接続する」ものであり,「引き出し配線2上に設けられた層間絶縁膜に形成したヴィア孔を介して」上記「引き出し配線2」と接続されるものである。
そうすると,引用発明1の「集電電極4」は本願発明1の「上部コンタクトパッド(46)」に相当する。
イ 引用発明1の「集電電極4」は「層間絶縁膜3に形成したヴィア孔を介して」「引き出し配線2」と接続されるものであり,当該「層間絶縁膜3」は「複数のパワー素子ユニットセル」及び「引き出し配線2」上にあってそれらと共に「パワー素子領域」を構成するものであるから,引用発明1の「集電電極4」は「パワー素子領域」の上面に配置されていると理解できる。
そうすると,引用発明1における「パワー素子領域」は本願発明1における「パワーデバイス」に相当し,両者は「少なくとも1つの上部コンタクトパッド(46)をその上面(56)に配置されて有するパワーデバイス」を備える点で共通する。
ウ 引用発明1の「層間保護膜5」は,「集電電極4」上に形成されたものであり,上記イのとおり,当該「集電電極4」は「パワー素子領域」上面に配置されている。そうすると,引用発明1における「層間保護膜5」は本願発明1の「誘電体層(74)」に相当し,両者は共に「前記パワーデバイスの前記上面(56)に結合された誘電体層(74)」である点で共通する。
エ 引用発明1の「厚膜電極6」は,「層間保護膜5」に形成された「複数個の開口部5kを介して集電電極4に接続」するものであり,上記「厚膜電極6」の一部が「複数の開口部5kを充填」するものである。そうすると,引用発明1における「厚膜電極6」及び「複数の開口部5k」は本願発明1における「金属被覆層(80)」及び「ビア(78)」に相当し,引用発明1における「厚膜電極6」のうち「複数の開口部5kを充填」している部分が,本願発明1における「金属相互接続部(86)」に相当する。そして,本願発明1と引用発明1は,「前記誘電体層(74)を貫通して形成されたビア(78)を通って延在する金属相互接続部(86)を有し,前記パワーデバイスの前記少なくとも1つの上部コンタクトパッド(46)に電気的に結合された金属被覆層(80)」を有する点で共通する。
オ 上記ウ,エによれば,本願発明1と引用発明1は,「前記パワーデバイスの前記上面(56)に結合された誘電体層(74)」及び「前記誘電体層(74)を貫通して形成されたビア(78)を通って延在する金属相互接続部(86)を有し,前記パワーデバイスの前記少なくとも1つの上部コンタクトパッド(46)に電気的に結合された金属被覆層(80)」を含む「パワーオーバーレイ(POL)相互接続層(88)」を有する点で共通する。
カ 引用発明1における「厚膜電極6」には「ボンディングワイヤ9が2本接続」されているから,本願発明1と引用発明1は,「前記金属被覆層(80)に直接結合された少なくとも2つのワイヤボンド(96,98)」を有する点で共通する。
キ 引用発明1は,「厚膜電極6」と「集電電極4」が「複数の開口部5k」に充填された「厚膜電極6の一部」により接続され,厚膜電極6にはボンディングワイヤ9が2本接続」されているものであるから,本願発明1と引用発明1は,「前記金属相互接続部(86)が,前記少なくとも2つのワイヤボンド(96,98)のそれぞれのワイヤボンドと,前記少なくとも1つの上部コンタクトパッドのうちの1つの上部コンタクトパッド(46)の間に電流に対する並行経路を形成」している点で共通する。
ク 引用発明1は「厚膜電極6とボンディングワイヤ9の接触面が複数個の開口部5kを含んでいる」ものであるから,本願発明1と引用発明1は,「前記2つのワイヤボンド(96,98)の各接触表面(130,132)の下のPOL相互接続層(88)の部分(122,124)がそれぞれ,少なくとも2つの金属相互接続部(86)の部分を含み」との点で共通する。
ケ 上記ア~クを総合すると,引用発明1の「半導体装置H1」は本願発明1の「POL構造体(90)」に対応する。
2.一致点及び相違点
上記1.ア~ケによれば,本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「少なくとも1つの上部コンタクトパッド(46)をその上面(56)に配置されて有するパワーデバイスと,前記パワーデバイスの前記上面(56)に結合された誘電体層(74),前記誘電体層(74)を貫通して形成されたビア(78)を通って延在する金属相互接続部(86)を有し,前記パワーデバイスの前記少なくとも1つの上部コンタクトパッド(46)に電気的に結合された金属被覆層(80)を含むパワーオーバーレイ(POL)相互接続層(88)と,前記金属被覆層(80)に直接結合された少なくとも2つのワイヤボンド(96,98)とを備え,前記金属相互接続部(86)が,前記少なくとも2つのワイヤボンド(96,98)のそれぞれのワイヤボンドと,前記少なくとも1つの上部コンタクトパッドのうちの1つの上部コンタクトパッド(46)の間に電流に対する並行経路を形成し,前記2つのワイヤボンド(96,98)の各接触表面(130,132)の下のPOL相互接続層(88)の部分(122,124)がそれぞれ,少なくとも2つの金属相互接続部(86)の部分を含む,POL構造体(90)。」
<相違点1>
本願発明1では,「前記金属被覆層(80)に直接結合された少なくとも2つのワイヤボンド(96,98)」が「銅のワイヤボンド」であるのに対し,引用発明1ではそのように特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1では,「前記誘電体層(74)を貫通して形成されたビア(78)を通って延在する金属相互接続部(84)を有し,前記パワーデバイスの前記少なくとも1つの上部コンタクトパッド(44)に電気的に結合された金属被覆層(80)」及び「前記金属相互接続部(84)に結合された銅のワイヤボンド(100)」を備えるのに対し,引用発明1では,それらを備えることが特定されていない点。
<相違点3>
本願発明1では,「前記2つの銅のワイヤボンド(96,98)は前記銅のワイヤボンド(100)よりも厚肉で提供される」のに対し,引用発明1では,ワイヤボンドの肉厚について特定されていない点。
<相違点4>
本願発明1では,「上部コンタクトパッド(48,50,52,54)」及び「パワーデバイスの上面(58,60)」を備える「POL構造体(92,94)」が特定されているのに対し,引用発明1では,「POL構造体(90)」に対応する1つの半導体装置H1しか特定されておらず,上記のような複数の構造体が特定されていない点。
第6 相違点についての判断
1.相違点1について
上記第4の4.(3)に周知技術1として示したとおり,パワーデバイスにおいて銅のボンディングワイヤを用いることは当業者の周知技術であるから,引用発明1において上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
2.相違点2について
引用発明1の「半導体装置H1」は「シリコン基板1に形成された複数のパワー素子ユニットセルのゲート,ソース,ドレインそれぞれを独立に引き出し,並列接続することにより構成されている半導体装置H1」であり,引用発明1の「ゲート」についても「ソース,ドレイン」と同様の構成,すなわち,ゲートのそれぞれに接続された引き出し配線,引き出し配線上に設けられた層間絶縁膜,層間絶縁膜に形成したヴィア孔を介してゲートのそれぞれの引き出し配線同士を並列接続する集電電極が設けられていると理解できる。
また,ゲートをソース,ドレインと同様にワイヤボンディングにより引き出すことは慣用手段であるから,ゲートについてもソース,ドレインと同様に,ボンディング衝撃の下層への伝播抑止のため,集電電極上に層間保護膜が形成され,層間保護膜の開口部を介して集電電極に接続する厚膜電極が設けられ,厚膜電極にボンディングワイヤが接続された構成を有することが示唆されているといえる。その際,ゲートのボンディングワイヤに銅のボンディングワイヤを用いることは,上記周知技術1に照らし当業者が適宜なし得たことである。
そうすると,引用発明1において上記相違点2に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
3.相違点3について
ソース,ドレインに接続するボンディングワイヤをゲートに接続するボンディングワイヤよりも太くすることは,以下の周知例1~3に示すように,パワー半導体デバイスの技術分野における当業者の周知技術であるから,引用発明1において上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることは,上記周知技術に照らし当業者が容易になし得たことである。
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記周知例1には,次の記載がある。
「【0023】本実施形態1では,本発明を縦型パワートランジスタ(半導体装置)1に適用した例について説明する。即ち,第1電極としてドレイン(D)電極,第2電極としてソース(S)電極,制御電極としてゲート(G)電極となる電界効果トランジスタを組み込んだ半導体チップが,半導体装置1に組み込まれている。・・・【0027】ゲートリード6のリードポスト6aとゲート電極パッド12を接続するワイヤ15は直径が,例えば,125μmと細いAl線である。ソースリード5のリードポスト5aとソース電極パッド11は複数本のワイヤ14で接続されている。図では2本になっているが,オン抵抗を低減するためにさらに多くてもよい。このワイヤ14は直径が300~500μm程度,例えば500μmとなり,ワイヤ15に比較して太い。このワイヤ15もAl線である。また,オン抵抗の低減を図るため,ワイヤ14の接続長さは5mm以内となっている。また,いずれのワイヤも超音波によくこすり付けによって接続される。従って,半導体チップ7の主面の電極パッドにワイヤボンディングを行うときは,ワイヤを保持するボンディングツールが一段高い位置にあるリードポストに接触しないようにして行う必要がある。」
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記周知例2には,次の記載がある。
【0006】
限られた資源・エネルギーを効率的に活用するため電子装置(半導体装置)の低消費電力化が求められ,パワーデバイスとしてSi(シリコン)より低損失な炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等のワイドギャップ半導体の開発が進んでいる。・・・(以下略)・・・」
「【0114】半導体パッケージ24の組み立てのワイヤボンディング工程では,まず,SiCチップ1の主面1aの最表面がNi/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されたソース電極2と,Agめっき27が施されたソースリード9のソースボンドパッド8間を,AgワイヤもしくはAg膜等の貴金属めっき膜が施された太い銅ワイヤ25を用いて,超音波ボンディングによって結線する。【0115】さらに,最表面がNi/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されたゲート電極3と,Agめっき27が施されたゲートリード11のゲートボンドパッド10間を,AgワイヤもしくはAg膜等の貴金属めっき膜が施された,銅ワイヤ25より細い銅ワイヤ26を用いて,超音波ボンディングによって結線する。」
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記周知例3には,次の記載がある。
「【0031】ここで,MOSFETのゲート電流は,パワーMOSFETと言えどもソース電流に比較すると電流量が十分に小さいため,ゲート用内側ワイヤ41及びゲート用外側ワイヤ43は,第1ボンディングワイヤ31,第2ボンディングワイヤ33,第3ボンディングワイヤ35及び第4ボンディングワイヤ37よりも線径が細くても良い。例えば直径20~200μmのアルミニウム(Al)線又は金(Au)線を,ゲート用内側ワイヤ41及びゲート用外側ワイヤ43として用いることが可能である。・・・【0032】これに対して,パワーMOSFETのソース電流は,大きな電流が流れるため配線材としても電流容量の大きいことが要求される。そこで,本発明の第1の実施の形態では,上記の通り,半導体チップ5のソース用第1及び第2チップ側パッド51,52とソース用第1及び第2リード側パッド61,63との間を4本のボンディングワイヤ31,33,35,37により接続している。・・・また,この4本のボンディングワイヤ31,33,35,37は,定格電流20AクラスのパワーMOSFETの場合は,例えば,その直径が200μm~400μmのアルミニウム線又は20?60μmの金線を用いることが好ましい。・・・(以下略)・・・」
4.相違点4について
基板上に同一パターンの構造を複数形成した後,個片に切断して複数個の構造体を得ることは,半導体デバイスの技術分野における慣用手段であるから,引用発明1において上記相違点4に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が普通に行うことである。
5.小括
したがって,本願発明1は,引用例2~3及び周知例1~3に示される周知技術に照らし,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第7 結言
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-000885