特許無効審判
2020-800073
情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、端末装置およびその制御方法と制御プログラム
- 審判番号
- 2020-800073
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2018-047282
- 登録番号
- 6407464
- 請求日
- 2020年08月07日
- 審決日
- 2021年12月15日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ヴァイタス
- 【請求人代理人】飯田 秀郷
- 【請求人代理人】清水 紘武
- 【被請求人】株式会社 レイズ
- 【被請求人代理人】加藤 卓士
- 【被請求人代理人】永島 孝明
- 【被請求人代理人】安國 忠彦
- 審判長/審判官
- 審判長 渡邊 聡
- 審判官 松田 直也
- 審判官 古川 哲也
- 分類
- P1113.121-Z (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第134条の2第9項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第134条の2第1項第1号、特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第3項、特許法第123条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6407464号発明「情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、端末装置およびその制御方法と制御プログラム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6407464号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第6407464号についての手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成30年 3月14日 本件特許出願(特願2018-47282号)
(平成27年12月26日に出願された特願2015-255513号の一部を新たな特許出願としたもの)
平成30年 9月28日 設定登録
平成31年 4月15日 無効審判請求(無効2019-800034号)
令和 2年 4月28日 審決(請求不成立,起案日,審決取消訴訟令和2年(行ケ)10074号)
令和 2年 8月 7日 本件無効審判請求
令和 2年 8月26日 上申書(請求人)
令和 2年12月14日 答弁書
令和 3年 1月21日 審理事項通知書(起案日)
令和 3年 3月 3日 口頭審理陳述要領書(請求人)(以下,「請要領書」という。)
令和 3年 3月 3日 口頭審理陳述要領書(被請求人)(以下,「被要領書」という。)
令和 3年 3月18日 口頭審理,調書(両当事者確認済み)
令和 3年 3月24日 審決取消訴訟判決(令和2年(行ケ)第10074号,請求棄却)
令和 3年 3月31日 上申書(被請求人)
令和 3年 5月27日 審決の予告(起案日)
令和 3年 7月30日 訂正請求書
令和 3年 9月16日 訂正拒絶理由通知書(起案日)
令和 3年 9月16日 職権審理結果通知書(起案日)
令和 3年10月22日 意見書
令和 3年11月 4日 上申書(請求人)
なお,関連する侵害事件につき,下記の事件に対し上告受理の申立てがなされたが,令和3年9月24日に不受理とされ,当該事件の判決は確定した。
知的財産高等裁判所令和3年2月24日判決言渡 令和2年(ネ)第10050号
第2 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
請求人は,
特許第6407464号(以下,「本件特許」という。)の特許を無効とする,
審判費用は被請求人の負担とする,
との審決を求めている。
2 答弁の趣旨
被請求人は,
本件審判請求は成り立たない,
審判費用は請求人の負担とする,
との審決を求めている。
第3 本件発明
本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称する。また,まとめて「本件発明」ともいう。)は,特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(なお,A1,B1,C1…等の分説記号は,令和3年1月21日付け審理事項通知書で示した。)。
【請求項1】
A1 患者を識別するための第1患者識別情報を端末装置より取得する第1取得部と,
B1 前記第1患者識別情報と,患者を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部と,
C1 前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部と,
D1 前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
E1 前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部と,
F1 前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部と,
G1 を備える情報処理装置。
【請求項2】
H2 前記第1出力部は,前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者に対する処置の予定情報を,前記端末装置へ出力する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
I3 前記第1出力部は,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報および予定情報から生成された,前記患者に対する処置の経過および予定の少なくともいずれかを時系列に示すクリニカルパス画面を,さらに前記端末装置へ出力する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
J4 前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が看護師を識別する看護師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
K5 前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が医師を識別する医師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む医師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
A6 患者を識別するための第1患者識別情報を端末装置より取得する第1取得ステップと,
B6 前記第1患者識別情報と,患者を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定ステップと,
C6 前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力ステップと,
D6 前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップと,
E6 前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップと,
F6 前記第2判定ステップにおいて一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力ステップと,
L6 を含む情報処理方法。
【請求項7】
A7 患者を識別するための第1患者識別情報を端末装置より取得する第1取得ステップと,
B7 前記第1患者識別情報と,患者を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定ステップと,
C7 前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力ステップと,
D7 前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップと,
E7 前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップと,
F7 前記第2判定ステップにおいて一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力ステップと,
M7 をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【請求項8】
N8 患者を識別するための第1患者識別情報を取得する第1取得部と,
O8 前記第1取得部で取得した前記第1患者識別情報を情報処理装置に送信する第1送信部と,
P8 前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する第1表示部と,
Q8 前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得部と,
R8 前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部と,
S8 前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部と,
T8 を備える端末装置。
【請求項9】
N9 患者を識別するための第1患者識別情報を取得する第1取得ステップと,
O9 前記第1取得ステップにおいて取得した前記第1患者識別情報を情報処理装置に送信する第1送信ステップと,
P9 前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示部に表示する第1表示ステップと,
Q9 前記医療情報が前記表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得ステップと,
R9 前記第2取得ステップにおいて取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップと,
S9 前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,前記表示部に表示する第2表示ステップと,
U9 を含む端末装置の制御方法。
【請求項10】
N10 患者を識別するための第1患者識別情報を取得する第1取得ステップと,
O10 前記第1取得ステップにおいて取得した前記第1患者識別情報を情報処理装置に送信する第1送信ステップと,
P10 前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,端末装置に表示する第1表示ステップと,
Q10 前記医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得ステップと,
R10 前記第2取得ステップにおいて取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップと,
S10 前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示ステップと,
V10 をコンピュータに実行させる端末装置の制御プログラム。
第4 無効理由
請求人が主張する無効理由は,以下のとおりである。
理由番号は,令和3年1月21日付け審理事項通知書で示した番号である。
1 理由1
本件発明1は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
2 理由2
本件発明2は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
3 理由3
本件発明3は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
4 理由4
本件発明4は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
5 理由5
本件発明5は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証~甲第25号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
6 理由6
本件発明6は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
7 理由7
本件発明7は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
8 理由8
本件発明8は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第16号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,本件特許は無効とすべきものである。
9 理由9
本件発明9は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第16号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,本件特許は無効とすべきものである。
10 理由10
本件発明10は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証~甲第16号証及び甲第23号証に記載された技術常識に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当し,本件特許は無効とすべきものである。
第5 証拠方法
1 甲号証
甲第 1号証:特開2004-195006号公報
甲第 2号証:特開2004-201114号公報
甲第 3号証:特開平 10-323332号公報
甲第 4号証:特開2002-269238号公報
甲第 5号証:特開2003- 30323号公報
甲第 6号証:特開2003-337863号公報
甲第 7号証:特開2006-195669号公報
甲第 8号証:特開2006-350812号公報
甲第 9号証:特開2015- 73610号公報
甲第10号証:特開2012-118782号公報
甲第11号証:特開2002-169889号公報
甲第12号証:特開2006-172340号公報
甲第13号証:特開2014- 96065号公報
甲第14号証:特開2012- 81125号公報
甲第15号証:特開2005- 11187号公報
甲第16号証:特開2013-137675号公報
甲第17号証:特開2005-165987号公報
甲第18号証:特開2005-275607号公報
甲第19号証:特開2008- 59316号公報
甲第20号証:特開2011-138349号公報
甲第21号証:特開2014- 35701号公報
甲第22号証:小西得司「知っておきたい新しい医療・医学概論 クリニカルパス」(日本内科学会雑誌第96巻第10号205~209頁収録)
甲第23号証:弓削孟文「術前廻診で何を診るか?」(日本臨床麻酔学会誌第19巻第4号267~275頁収録)
甲第24号証:特開2013- 61923号公報
甲第25号証:渭原博「医療関連職種のための臨床検査概論」10~11頁
2 乙号証
乙第 1号証:特開2015- 18461号公報
乙第 2号証:「医療情報システムの完全管理に関するガイドライン(第4.2版)」(平成25年10月 厚生労働省発行)(抄本)
乙第 3号証:判決書(知的財産高等裁判所令和2年(ネ)第10050号)
第6 当事者の主張の概要
1 請求人の主張の概要
(1)理由1
ア 構成要件C1について
「 甲第1号証には,「第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態」において,…(途中省略)…(摘記1-m,【0029】)ことが記載されている。
「第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態」とは,甲第1号証の段落【0026】に,「患者チェック欄21に両者のバーコードデータが一致した旨を表わすチェックマークが付される」(摘記1-i)と記載されているとおり,ナースコール用パーソナルコンピュータ7が,「第1の患者が担持するバーコードに格納されているバーコードデータと,あらかじめ記憶された第1の患者のバーコードデータとが一致すると判定した場合」に他ならない。
また,「患者用カルテ,治療計画および食事制限などの患者情報」が「患者の医療情報」に相当することは明らかであり,液晶ナースコール子機2aの表示部に第1の患者に係る患者用カルテなどが表示されるのであるから,第1の患者の医療情報がナースコール用パーソナルコンピュータ7から端末装置に相当する液晶ナースコール子機2aに出力されることは明白である。」(請求書62~63頁)
イ 構成要件D1,E1について
「 以上のとおり,甲第1号証の段落【0031】には,第1の患者が担持するバーコードを子機用バーコードリーダ1aで読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして子機用バーコードリーダ1aで読取ると,看護師は,液晶ナースコール子機2aを使用して,第1の患者の体温や脈拍などを記録したり,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができることが記載されている(摘記1-n)。
そして,上記記載における「第1の患者が担持するバーコードを読取り」とは,読取られた第1の患者のバーコードに格納されたバーコードデータが,あらかじめ記憶されている「第1の患者のバーコードデータ」(「第2患者識別情報」に相当)と照合され,一致すると判定されることを意味しているから,本件特許発明1の発明特定事項D1が規定する「前記第1判定部で一致すると判定された場合(第1の患者が担持するバーコードに格納されたバーコードデータが,あらかじめ記憶された第1の患者のバーコードデータと一致すると判定された場合)」に相当する。
また,上記記載における「更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取る」とは,看護師が担持するバーコードをパスワードとして読取り,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に送信し,あらかじめ記憶部に記憶されている当該看護師の識別情報と照合され,一致すると判定されることを意味しており,子機用バーコードリーダ1aからナースコール用パーソナルコンピュータ7への読み取りデータの送信は,端末装置に相当する液晶ナースコール子機2aを介して行われるから,ナースコール用パーソナルコンピュータ7は,「看護師を識別するための第1医師等識別情報(看護師が担持するバーコードに格納されたバーコードデータ)を端末装置(液晶ナースコール子機2a)から取得する第2取得部」として機能することは明らかである。」(請求書66頁)
「 また,上述したとおり,上記記載における「看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取る」(摘記1-n,【0031】)とは,看護師が担持するバーコードをパスワードとして読取り,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に送信し,あらかじめ記憶部に記憶されている当該看護師の識別情報と照合され,一致すると判定されることを意味しており,このような照合,判定はナースコール用パーソナルコンピュータ7において実行される。」(請求書67頁)
「 甲1発明においては,看護師や医師が担持するバーコードは,看護師や医師を特定するものであるとともに,看護師や医師が担持するため,他人はそのバーコードを容易に手に入れることはできず,またバーコードであるためバーコードデータを目視で読み取ることもできない。このようなバーコードデータをバーコード読み取り機で読み取らせることは,これを担持する看護師や医師のみができる。そのため,これをアクセス権獲得のためのパスワードとして用いることができるのである。このように,パスワードとして利用できるからといって,看護師や医師が担持するバーコードが,看護師や医師を特定するための識別情報に当たらないなどとすることはできない。観点を変えてあえて述べれば,看護師や医師が担持するバーコードは,看護師又は医師がユーザとして情報端末を利用する際に用いられるユーザIDであるとともにパスワードでもあると理解することもできる。」(請要領書20頁)
ウ 構成要件F1について
「 甲第1号証のナースコール装置においては,上述したとおり,「更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機1aを使用することができる。」(摘記1-n,【0031】)とされている。
…(途中省略)…
読み取られた看護師のバーコードがあらかじめ記憶部に記憶されている当該看護師の識別情報と一致すると判定されたときとは,発明特定事項F1が規定する「前記第2判定部が一致すると判定した場合」に相当し,その場合に,看護師は,「液晶ナースコール装置2a(端末装置に相当)のテンキー操作部(不図示)などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができ,ひいては,第1の患者に係る記録データ」をナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送(摘記1-n,【0031】)することができるのである。
そして,液晶ナースコール子機2aを介して患者の体温や脈拍などのデータが入力され,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送される以上,液晶ナースコール子機2aの表示部に何らかの入力画面が表示されるのは当然であり,第1の患者の体温や脈拍などのデータが「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報」に相当するのは明らかであるから,甲第1号証のナースコール装置は,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報の入力を受け付ける表示画面」を液晶ナースコール子機2a(「端末装置」に相当)に出力する第2出力部を備えているといえる。」(請求書67~68頁)
エ 甲第1号証の「付加機能」について
「 付加機能の用語の意味についての解釈は,以下のとおりである
段落【0029】までに説明されている「ナースコール装置」を標準機能とするとき,段落【0030】~【0036】の記載にかかる機能は,この標準機能では備えていない機能として追加した機能を意味する。つまり,付加機能が追加された「ナースコール装置」は,標準機能を備え,さらに,当該付加機能を合わせもつものである。
…(途中省略)…
以上のとおり,付加機能第1は,看護師が病室液晶ナースコール子機2aを用いて記録したバイタルを転送する機能,付加機能第2は,看護師または医師がナースコール用パーソナルコンピュータ7を用いて院内ネットワークへのアクセス権を得る機能,付加機能第5は,手術室液晶ナースコール子機で患者名を表示し,これを用いて看護師または医師が電子カルテのデータを表示する機能であるから,それぞれ独立した機能であり,それぞれ単独であるいはこれらを組み合わせることができる機能である。付加機能第3は,病室子機用バーコードリーダ,手術室子機用バーコードリーダにより看護師又は医師が担持するバーコードが読み取られることにより,ナースステーション,各病室および手術室の何れかからでも院内ネットワークやナースコール用パーソナルコンピュータにアクセスすることができ,患者情報の閲覧や患者情報の変更や削除若しくは登録などを行なうことができるという機能を説明するものであるから,付加機能第1,付加機能第2,付加機能第4,付加機能第5に共通する機能である。
付加機能第4は,特定の病室などに対する人の入出管理を行なう機能であるから,付加機能第1,付加機能第2及び付加機能第5と独立した機能であるが,これらと組み合わせることもできる機能である。」(請要領書1~3頁)
オ 甲第1号証【0031】の「更に」について
「(前略)…従って,このような構成のナースコール装置によれば,【0031】の前段の処理,すなわち,第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ると,図2の画面が現れ,かつ,患者チェック欄にチェックマークが表示されるので,当該バーコードを担持する患者が第1の患者,すなわち,病室A内の第1のベッドに係る患者であることを確認することができる。
…(途中省略)…
そして,【0031】の後段冒頭の「更に」は,その前段の処理に基づく標準機能の処理がなされた後に,付加的機能第1の処理がなされることを意味している。
標準機能の処理の後,更に,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機1aを使用することができる。これにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部(不図示)などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができ,ひいては,第1の患者に係る記録データを前述の第1のバーコードデータと同様の経路を経由してナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができる。
このように,【0031】の「更に」は,標準機能により図2の画面を出現させ,これに加えた付加機能として,看護師が担持するバーコードを読み取らせることを示す意味で用いられていることは明らかである。」(請要領書3~5頁)
(2)理由2
「 甲1発明2の患者に対する治療とは,患者に対する処置に他ならず,計画とは,予定に他ならないから,甲1発明2の「治療計画」は,本件特許発明2の「患者に対する処置の予定情報」に相当する。
このため,本件特許発明2と甲1発明1とを対比すると,前記相違点1-1に追加すべき実質的な相違点はない。」(請求書75頁)
(3)理由3
「【相違点3-1】
本件特許発明3は,患者に対する処置の経過および予定の少なくともいずれかを時系列に示すクリニカルパス画面をさらに出力するものであるのに対し,甲1発明3は,患者に対する治療計画を出力するが,クリニカルパス画面であるとの特定がない点。」(請求書75頁)
「 上記甲第17号証~甲第22号証の記載から明らかなとおり,「クリニカルパス」とは「患者の治療計画表のようなもの」(摘記17-b)であり,「時間軸を横に,診断・検査・手術・投薬・食事・リハビリ・指導等を入院から退院まで縦軸にした医療スタッフおよび患者が情報を共有するためのシート」(摘記22-a)なのであるから,甲1発明1における第1出力部が端末装置(液晶ナースコール子機2a)へ出力する「治療計画」(発明特定事項c3)の代表的なものであるといえる。
また,「クリニカルパスは電子カルテシステムの根幹」(摘記17-a)であり,「多くの電子カルテシステムにおいてクリニカルパス機能が搭載されている」(摘記17-c)のであるから,「クリニカルパス」は,甲1発明1における第1出力部が端末装置(液晶ナースコール子機2a)へ出力する「患者用カルテ」(発明特定事項c3)にも当然に包含されるものであるといえる。
そして,「時間軸を横に,診断・検査・手術・投薬・食事・リハビリ・指導等を入院から退院まで縦軸にした医療スタッフおよび患者が情報を共有するためのシート」(摘記22-a)である以上,「クリニカルパス」が,患者の医療情報及び予定情報から生成されることは明白である。
したがって,甲1発明1において,第1出力部が病室液晶ナースコール子機2aへ出力する「患者用カルテや治療計画」の中には,当然に,クリニカルパスが含まれているといえる。
また,仮に,何らかの理由で,「患者用カルテや治療計画」にクリニカルパス画面が含まれているとまではいえないとしても,クリカルパスが,電子カルテなどの医療情報に含まれることは,甲第17号証~甲第22号証が示すように,当該技術分野における技術常識にすぎない。」(請求書77頁)
「 しかしながら,甲17~甲23は,端末装置に患者情報として「患者用カルテや治療計画」を出力するにあたり,「患者に対する処置の経過および予定の少なくともいずれかを時系列に示すクリニカルパス画面」を出力することが技術常識であったことを示すものである。本件特許発明3と甲1発明1との相違点3-1は,上記技術常識に基づき当業者が容易想到である。甲1発明に,端末装置に患者情報として「患者用カルテや治療計画」を出力するにあたり,「患者に対する処置の経過および予定の少なくともいずれかを時系列に示すクリニカルパス画面」を出力する技術常識を適用することによって,甲1発明における患者取り違え防止機能に何ら影響を及ぼすことはないから,本件特許発明の技術思想との関係で技術常識に該当しないなどとすることはできない。」(請要領書28頁)
「甲17~甲23は,本件特許発明3と甲1発明1との相違点3-1に関する容易想到性を裏付けるものである。甲1発明1において,第1出力部が病室液晶ナースコール子機2aへ出力する「患者用カルテや治療計画」の中には,甲17~甲23が示す技術常識のとおり,当然に,クリニカルパスが含まれている。甲1発明に甲17~甲23に示される技術常識を適用する動機付けを否定することはできない。」(請要領書30~31頁)
(4)理由4
「 【相違点4-1】
本件特許発明4は,患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面を出力するのに対し,甲1発明1は,患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を出力するとの特定がない点。」(請求書78頁)
「 甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証は,バイタル情報の変化情報を看護支援記録を含む看護師用画面とすることが技術常識であったことを示している。
したがって,バイタル情報の変化情報は,本件特許発明4の「患者の状態に関する状態情報の履歴」に相当し,バイタル情報を入力する画面を表示する甲1発明1に甲第3号証~甲第9号証に示されるバイタル情報の表示等に関する技術常識,及び,バイタル情報の変化情報の表示画面を看護師用画面とすることを技術常識であることを示す甲第23号証に記載された発明を適用することの動機付けがあり,この適用により相違点4-1は,当業者が容易に想到する。」(請求書79頁)
(5)理由5
「【相違点5-1】
本件特許発明5は,医師を識別する医師識別情報と判定した場合に,患者を撮像した検査画像を含む医師用画面を出力するのに対し,甲1発明1は,このような特定がない点。」(請求書80頁)
「 甲第24号証~甲第25号証に示されているとおり,患者を撮像した検査画像が患者の医療情報として医療スタッフに提供されることは,甲第24号証~甲第25号証に示されているとおり,本件特許出願日前の当業者の技術常識にすぎない。」(請求書80頁)
「 しかしながら,甲24及び甲25は,患者を撮像した検査画像が患者の医療情報として医療スタッフに提供されることが技術常識であったことを示すものである。本件特許発明5と甲1発明1との相違点5-1は,端末装置において医師の認証がなされたとき,医師向けの医療情報が表示されることは当業者の技術常識であって相違点1-1が容易想到である以上,医師向けの医療情報に患者を撮像した検査画像が含まれることも技術常識であったから,当業者に容易想到である。甲1発明において,医師の認証がなされたとき,医師向けの医療情報として患者の検査画像を表示するように構成することは,甲1発明における患者取り違え防止機能に何ら影響を及ぼすことはないから,本件特許発明の技術思想との関係で技術常識に該当しないなどとすることはできない。」(請要領書29頁)
「甲24・25は,本件特許発明5と甲1発明1との相違点5-1に関する容易想到性を裏付けるものである。端末装置において医師の認証がなされたとき,医師向けの医療情報が表示されることは当業者の技術常識であり,医師向けの医療情報に患者を撮像した検査画像が含まれることも技術常識であったから,同一の技術分野における甲24・甲25に示される技術常識を甲1発明に適用する動機付けを否定することはできない。」(請要領書31頁)
(6)理由6,7
ア 理由6について
「 本件特許発明6は,単に,本件特許発明1の発明特定事項A1~F1の末尾の「取得部」,「判定部」,及び「出力部」を,それぞれ「取得ステップ」,「判定ステップ」,及び「出力ステップ」に置き換え,発明のカテゴリーを「情報処理装置」(発明特定事項G1)から,「情報処理方法」(発明特定事項L6)に変更したにすぎない。」(請求書81頁)
イ 理由7について
「 甲第1号証に記載された発明は,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に関する装置発明だけではなく,以下のとおり,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に実行させる情報処理プログラムとしても認定することができる。」(請求書82頁)
(7)理由8~10
ア 請求項8について
「 以上のとおり,本件特許発明8は,本件特許発明1に係る情報処理装置と情報のやりとりをする相手として記載されている「端末装置」に係るものであり,本件特許発明8における発明特定事項は,本件特許発明1における発明特定事項を単に「端末装置」に即して表現しただけにすぎない。」(請求書84頁)
「 本件特許発明8と甲1発明8とを対比すると,以下の相違点がある。
【相違点8-1】
「看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する」条件について,本件特許発明8においては「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に」と規定しているのに対し,甲1発明8においては,「第1の患者が担持するバーコードに格納されているバーコードデータとあらかじめ記憶された第1の患者のバーコードデータとが一致すると判定した場合に」とするものである点。
【相違点8-2】
第2表示部が表示する画面について,本件特許発明8では,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」であるのに対し,甲1発明8では,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報(体温や脈拍など)の入力を受け付ける表示画面」である点。」(請求書85頁)
「 相違点8-1は,本件特許発明1が情報処理装置に関する発明であるのに対し,本件特許発明8がこれと情報を授受する端末装置に関する発明であることに由来する形式的な相違点にすぎない。
患者の認証により当該患者の医療情報が表示されること,また患者の認証後に看護師の認証が行われることが甲第1号証に開示されているから,甲第10号証ないし甲第16号証が示すように患者認証によって患者の医療情報を表示した上で,医療スタッフの識別情報を取得するように構成することは当業者の技術常識であるから,甲1発明8に甲第10号証~甲第16号証が示す技術常識を適用する強い動機付けがあるというべきであり,この技術常識の適用により,相違点8-1は,当業者が容易に想到することができたものである。」(請求書98頁)
「 相違点8-2は,実質的に,相違点1-1と同じであるから,本件特許発明1について述べたと同様の理由により,甲第3号証~甲第9号証及び甲第23号証に記載された発明(バイタル情報の表示等に関する技術常識)に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。」(請求書98頁)
「 しかしながら,甲10~甲16は,患者の医療情報が表示されてから,医療スタッフの識別情報を取得するように構成することが技術常識であったことを示すものである。本件特許発明8と甲1発明8との相違点8-1は,上記技術常識にすぎないから,実質的相違点ではなく,仮にそうではないとしても当業者が容易想到である。甲1発明に患者の医療情報が表示されてから,医療スタッフの識別情報を取得するような技術常識を適用することによって,甲1発明における患者取り違え防止機能に何ら影響を及ぼすことはないから,本件特許発明の技術思想との関係で技術常識に該当しないなどとすることはできない。
また,甲10~甲16は,いずれも第1判定で患者識別情報が一致したことに基づき患者の医療情報を表示することを条件に第2判定を行い,医療従事者に必要な医療情報を提供するものであって,患者IDの認証とその結果,及び医療従事者の認証とその結果は,前者が後者の条件となっており,被請求人がそれぞれ独立したものであると主張するのは誤りである。」(請要領書27~28頁)
「甲10~甲16の技術常識は,本件特許発明8と甲1発明8との相違点8-1が実質的相違点ではないこと,又は仮にそうではないとしても容易想到性を裏付けるものである。実質的相違点であるとしても,相違点8-1は,本件特許発明1が情報処理装置に関する発明であるのに対し,本件特許発明8がこれと情報を授受する端末装置に関する発明であることに由来する形式的な相違点にすぎないものであり,甲1には,患者の認証により当該患者の医療情報が表示されること,また患者の認証後に看護師の認証が行われることが開示されているから,同一の技術分野における甲10~甲16に示される技術常識を甲1発明に適用する動機付けを否定することはできない。」(請要領書30頁)
イ 理由9について
「 本件特許発明9は,単に,本件特許発明8に係る「端末装置」(発明特定事項T8)を,「端末装置の制御方法」(発明特定事項U9)に置き換え,発明のカテゴリーを装置から方法へと変更したにすぎないものである。」(請求書99頁)
ウ 理由10について
「 本件特許発明10は,本件特許発明9の「端末装置の制御方法」(発明特定事項U9)を「コンピュータに実行させる端末装置の制御プログラム」(発明特定事項V10)に置き換えたにすぎないものである。」(請求書101頁)
2 被請求人の主張の概要
(1)本件発明の意義について
「 したがって,本件発明1は,患者と医療従事者のそれぞれに対して必要十分な情報を提供しながら,煩雑な作業なしに,患者とベッドの対応付けの誤りによる患者の取り違えを防止することを目的とする技術なのである。…(途中省略)…すなわち,患者識別情報が正しいことを情報処理装置で確認してから,その患者の医療情報を,端末装置を用いて出力しているため,端末装置を利用する患者と,端末装置から出力される医療情報とを間違いなく確実に対応させることができるのである。」(答弁書8頁)
「 本件発明にかかる情報処理装置の主たる目的は,分説された請求項1の構成要件F1に記載されているとおり,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する」ことにあります。
そして,セキュリティを担保しつつ,患者の取り違えが起こらないように,「第1患者識別情報の取得」→「第1患者識別情報の判定」→「患者の医療情報の出力」→「第1医師等識別情報の取得」→「第1医師等識別情報の判定」という5つものステップを経て,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」を出力することを特徴としています。このように,セキュリティを担保するため,医師等向けの医療情報の表示画面の出力までに大きなハードルを用意しているのです。」(被要領書3頁,5頁(同旨),9頁(同旨))
「 そして,本件発明1によれば,患者と医療従事者とが同じ情報端末を共有し,患者にとって必要十分な情報と医療従事者にとって必要十分な情報とを,患者の取り違えを防止しつつ,タイミングよく提供することができる。また,たとえ寝たきりの患者や認知症の患者などの情報を知りたい場合であっても,医療従事者は,信頼できるセキュリティの下で正確に情報を取得し,更新することができる。
従来のように,端末IDを患者名に変換してから電子カルテシステムで患者名に対応する医療情報を引き出すという2段階のステップでは,表示された医療情報に含まれる患者名がそのベッドに寝ている患者と対応しているか,医療スタッフが毎回目視で確認しなければならず,それを怠ることによる人為的な事故が生じる可能性があった。しなしながら,本件発明1によれば,患者識別情報から直接に正確な医療情報を引き出すため,従来行われていた医療スタッフの目視による確認の必要がなく,かつ,患者の取り違えによる事故を確実に防止することができるのである。」(答弁書11~12頁)
(2)甲第1号証について
ア 「(前略)…甲第1号証の基本的な技術概念は,「バーコードをパスワードとして利用する」ことである。」(答弁書12頁)
イ パスワードとして利用される「バーコード」及びユーザIDについて
「 かかる記載から,第1のバーコードデータと,第1の患者のバーコードデータが一致すれば,下記に引用する図2に示す画面を表示することが理解されるが,…(途中省略)…ここで表示されるのはあくまでも患者名と担当医名とチェックマークのみである。…(途中省略)…
ここで表示されるチェックマークはもちろんのこと,患者名や担当医師名についても「患者の医療情報」には該当しない。特に,上記の段落【0026】には,バーコードが一致した場合にナースコール用パーソナルPC7からナースコール子機2a伝送されているのは,「一致信号」であると記載されているが,…(途中省略)…「一致信号」は患者の医療情報ではない。
」(答弁書14~15頁)
「(前略)…データベースには,「第1の患者のものとして登録されたバーコードデータ」だけではなく,「第2の患者のものとして登録されたバーコードデータ」,「第3の患者のものとして登録されたバーコードデータ」が登録されているはずである。…(途中省略)…常識的に考えて,ナースコール用PC7内のデータベースには,下図のように,ナースコール子機2aを識別する子機IDと,第1の患者のバーコードデータとが紐付けてあると考えるべきである。
[図:0001391279000001.jpg]
ナースコール子機2aからナースコール用PC7に送信されてきたバーコードデータについては,当然ながら,ナースコール子機2aの子機IDに紐付けられたバーコードデータ(これが,段落【0026】で急に登場した「第1の患者のバーコードデータ」)と比較するものである。…(途中省略)…ナースコール子機と患者名との対応関係が,ナースコール用PC7内のデータベースに登録されていることは,当然というべきである。
以上を踏まえて,甲第1号証の段落【0029】を検討するに,まず,同段落には以下の記載がある。…(途中省略)…
ナースコール子機2aと患者とは初めから(バーコードを読み取るまでもなく)紐付けられているが,患者のバーコードが読み取られて,チェックマークが付された状態で,看護師などが所定の操作を行えば,患者用カルテ,治療計画などといった「患者情報」が表示される。」(答弁書17~18頁)
「甲第1号証において患者バーコードの判定によって表示される情報は,あくまでも患者名や担当医師名であって,看護師による患者取り違えの防止を図るための確認を目的とする情報であり,本件発明における「患者の医療情報」とは,目的も内容も異なるものです。」(被要領書11頁)
「 次に,段落【0030】及び【0031】には,下記の記載がある。…(途中省略)…つまり,下図のように,患者が担持するバーコードが,「ユーザID」として用いられ,看護師が担持するバーコードが「パスワード」として用いられるのである。…(図省略)…
さらに,段落【0033】には下記の記載がある。…(途中省略)…段落【0033】においては,患者情報の閲覧のために,看護師や医師が担持するバーコードがナースコール用パーソナルコンピュータ7に送られることだけが記載されており,患者のバーコードの読取には一切触れられていない。このことから,甲1発明では,患者情報の閲覧のために,患者のバーコードが必要とは考えていないことが理解される。
加えて,段落【0032】,【0034】~【0036】においても,同様に,看護師,医師が担持するバーコードをパスワードとして用いるケースについて説明がなされているが,いずれも,患者識別情報の判定結果を条件として,看護師,医師が担持するバーコードの読取が行われるものではない。また,患者識別情報の判定後に患者の医療情報を提供するものでもない。」(答弁書19~21頁)
(3)理由1
ア 甲第1号証に記載された発明との相違点
「(前略)…本件特許発明1と甲1発明は,患者の取り違えを防止する技術としては共通しているが,本件特許発明1は患者と医療従事者のそれぞれに対して必要十分な情報を提供しながら,煩雑な作業なしに,患者とベッドの対応付けの誤りによる患者の取り違えを防止することを主たる目的とするものである一方,甲1発明は看護師がナースコール用子機を操作するにあたって患者の取り違えを防止するものであり,そもそも技術思想が異なる発明である。
また,甲1発明のナースコール用子機において表示される患者名が,ナースコール用子機のそばにいる患者の患者名となるのは,データデータに登録されたナースコール用子機のIDと患者名との対応関係が最新情報に更新されている場合のみである。…(途中省略)…
これに対し,本件特許発明1においては,端末装置を通じて取得された患者識別情報を情報処理装置に送って判定させ,さらに医師等識別情報の判定をさせるので,医師や看護師用の医療情報を提示したり,端末装置から患者の状態情報を取得したりする場合に,端末装置に提示される情報や端末装置から取得される情報が,端末装置に紐付けされた患者のものであると確実に信頼することができる。例えば,患者がベッド間を移動したり,端末装置がベッド間を移動したりした場合においても,患者識別情報そのものを認証するので,端末装置に表示されている医療情報が,その端末装置のそばにいる患者の医療情報であることが保証される。」(答弁書21~22頁)
「(1) 相違点A
甲1発明には,「前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部」(構成要件1C)が無い点。」(答弁書22頁。なお,丸数字は半角カッコ数字で表記した。以下同じ。)
「(前略)…甲第1号証において患者バーコードの判定によって表示される情報は,あくまでも患者名や担当医師名であって,看護師による患者取り違えの防止を図るための確認を目的とする情報であり,本件発明における「患者の医療情報」とは,目的も内容も異なるものです。」(被要領書11頁)
「(2) 相違点B
甲1発明には,「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第2識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」(構成要件1D)が無い点。
(3) 相違点C
「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」(構成要件1E)における,「前記第1医師等識別情報」が,「前記第1判定部で一致すると判定した場合」を条件として取得したものでない点。」(答弁書22~23頁,調書)
「(4) 相違点D
本件発明1において「前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」(構成要件F1)における「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報」を表示する条件として,「前記第2判定部が一致すると判定した場合」としているのに対し,甲1発明は,医療情報の表示にあたり,「第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行う」ことを条件としている点。」(被要領書16頁)
「 第2取得部における「看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する」条件について,本件発明は,「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,」取得するのに対し,甲第1号証のナースコール装置は,そのような条件はありません。したがって,「第2判定部」における「看護師または医師を識別する情報として予め記憶された第2医師等識別情報と」「一致するか否か判定する」「前記第1医師等識別情報」が,本件発明では,「第2取得部」で特定の条件下で取得された「第1医師等識別情報」であるのに対し,甲第1号証の「看護師のバーコードデータ」は,そのような条件で取得されたものではありません」(被要領書14頁)
イ 甲第1号証の「付加機能」について
「 被請求人は,段落【0031】~【0036】の「第1」から「第5」で説明される機能は,段落【0029】までに説明されている「ナースコール装置」とはそれぞれ独立した別の機能であり,かかる「ナースコール装置」とは別に付加される機能であると解釈しています。」(被要領書7頁)
ウ 甲第1号証【0031】の「更に」について
「 この部分は,文言通り,患者バーコードを読み取ったあとに連続的に看護師バーコードの読取を行うと解釈すべきです。患者が担持するバーコードの読取に関する記載は,段落【0025】,【0027】にありますが,双方,看護師が患者を確認するための読取であり,患者本人によるバーコードの読取ではありません。甲第1号証は,ナースコールの発明に関するものであるため,明細書中では一貫して,看護師が主体となっています。前記段落【0031】でも,看護師が,患者バーコードと看護師バーコードとを順番に連続して読み取ることを意味しています。ここは,段落【0031】の冒頭に記載されているとおり,あくまでも「看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合」についての説明であり,患者バーコードの認証は想定していません。看護師バーコードの認証を行うことは明確ですが,看護師は,通常,非常に多忙であるため,患者バーコードの読取と看護師バーコードの読取を連続的かつ迅速に行い,誰が誰の体温や脈拍などを記録したのかを,次から次へとデータベースに残していくのです。」(被要領書8頁)
「 また,甲第1号証には,「第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機1aを使用することができる。」(強調付加)(段落【0031】)との記載があるが,これは,患者バーコード及び看護師バーコード(パスワード)を続けて読み取ることで病室液晶ナースコール子機1aからナースコール用PCにログインして,患者用カルテを表示させることを意味しており,患者バーコードの一致を条件として看護師バーコードの読取を行っているわけではない。」(答弁書24頁)
(4)理由2~10
「本件特許について,請求人が主張する無効理由はいずれも理由が無いものであり,本件無効審判請求は成り立たない。」(答弁書28頁)
第7 甲号証の記載
1 甲第1号証
(1)本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証には,次の事項が記載されている。
「【請求項1】
病室などに設置された液晶ナースコール子機(2a,2b)の患者からの呼出に応じて,廊下に設置された集合廊下灯(3a,3b,3c,…),病院内に設置されたナースコール制御機(4)を介してナースステーションなどに設置されたナースコール親機(5)に呼出を報知/表示させ,前記ナースステーション内に設置されたナースコール用パーソナルコンピュータ(7)に予め記憶されている患者情報を報知/表示させるナースコール装置において,
前記液晶ナースコール子機は,前記患者情報と照合し前記患者の確認をするため前記患者によって担持され前記患者を特定するバーコードを読取る子機用バーコードリーダ(1a,b)を備えたことを特徴とするナースコール装置。」
「【請求項3】
前記患者によって担持され前記患者を特定するバーコードを前記子機用バーコードリーダで読取り,更に看護師によって担持され前記看護師を特定するバーコードをパスワードとして前記子機用バーコードリーダで読取ることにより前記液晶ナースコール子機で患者の体温,脈拍などの患者の状態を記録し,前記ナースコール用パーソナルコンピュータに転送することを特徴とする請求項1記載のナースコール装置。」
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,このような構成のナースコール装置においては,病室内の患者や手術室内の患者を特定する手段を備えていないことから,患者の確認を行なうことができず,ひいては患者をとり間違えたり,投薬ミスなどの医療過誤を誘発するおそれがあるという難点があった。
【0007】
本発明は,このようなナースコール装置の難点を解決するためになされたもので,バーコードを用いて患者の確認を行ない,また,バーコードをパスワードとして利用することにより患者情報などを閲覧することができ,ひいては患者をとり間違えたり,投薬ミスなどの医療過誤の誘発を防止することができるナースコール装置を提供することを目的とする。」
「【0009】
また,本発明のナースコール装置は,患者によって担持され患者を特定するバーコードを子機用バーコードリーダで読取ることにより液晶ナースコール子機で患者用カルテ,治療計画,食事制限などの患者情報を閲覧することができるように構成されている。
【0010】
また,本発明のナースコール装置は,患者によって担持され患者を特定するバーコードを子機用バーコードリーダで読取り,更に看護師によって担持され看護師を特定するバーコードをパスワードとして子機用バーコードリーダで読取ることにより液晶ナースコール子機で患者の体温,脈拍などの患者の状態を記録し,ナースコール用パーソナルコンピュータに転送することができるように構成されている。」
「【0016】
また,本発明のナースコール装置は,手術室内に,患者によって担持され患者を特定するバーコードを読取り,看護師,医師によって担持され看護師,医師を特定するバーコードをパスワードとして読取り院内ネットワークのアクセス権を得るための子機用バーコードリーダと,患者名を表示して患者の確認をするとともに,看護師,医師用カルテなどのデータを表示させる液晶ナースコール子機とを備えている。」
「【0018】
【発明の実態の形態】
以下,本発明のナースコール装置の好ましい実施の形態例について,図面を参照して説明する。ここで,図1は,本発明の一実施例におけるナースコール装置のシステム構成図を示している。
【0019】
同図において,本発明のナースコール装置は,各病室A,Bに設置され,子機用バーコードリーダ(以下「病室子機用バーコードリーダ」という。)1aを有する液晶ナースコール子機(以下「病室液晶ナースコール子機」という。)2aと,手術室ORに設置され,子機用バーコードリーダ(以下「手術室子機用バーコードリーダ」という。)1bを有する液晶ナースコール子機(以下「手術室液晶ナースコール子機」という。)2bと,廊下に設置された複数の集合廊下灯3a,3b,3c,…(以下,集合廊下灯3aを「第1の集合廊下灯3a」と,集合廊下灯3bを「第2の集合廊下灯3b」と,集合廊下灯3cを「第3の集合廊下灯3c」という。)と,病院内に設置されたナースコール制御機4と,ナースステーションNSなどに設置されたナースコール親機5と,ナースステーションNS内に設置され,親機用バーコードリーダ6を有するナースコール用パーソナルコンピュータ7と,病院内に構築された院内ネットワーク8と,電気錠9を有する出入口扉10と,電気錠9の開閉を制御する電気錠コントローラ11と,出入口用バーコードリーダ12を有するアダプタ13とを備えている。」
「【0021】
図2は,病室液晶ナースコール子機2aや手術室液晶ナースコール子機2bの液晶タッチパネルディスプレイなどの表示部(不図示)に現れる画面の一例を示している。同図において,表示部の画面の主要部には,患者の診療科目,患者の病室番号やベッド番号,患者の氏名,患者チェック欄21および担当医の氏名などが表示され,同画面の右側には,患者用カルテ,治療計画,食事制限などが表示されている。」
「【0024】
先ず,病室内の患者や看護師および医師などの院内関係者は,それぞれ自己を特定する専用のバーコードを所持し若しくは自己の身体の一部(腕部など)に取り付けている(以下,バーコードの所持若しくは身体への取付けを「バーコードの担持」という)。また,ナースコール用パーソナルコンピュータ7には,予め患者用カルテ,治療計画,食事制限などの患者情報が記憶されている。
【0025】
今,ある患者,例えば病室A内のあるベッド(以下「第1のベッド」という。)に係る患者(以下「第1の患者」という。)を確認するために,第1の患者が担持するバーコードを第1のベッドに係る病室子機用バーコードリーダ(以下「第1の病室子機用バーコードリーダ」という。)1aで読取ると,第1の病室子機用バーコードリーダ1aから第1の患者を特定するバーコードデータ(以下「第1のバーコードデータ」という。)が出力され,この第1のバーコードデータが第8の伝送路L8,第1のベッドに係る病室液晶ナースコール子機(以下「第1の液晶ナースコール子機」という。)2a,第4の伝送路L4,第1の集合廊下灯3a,第1の伝送路L1,ナースコール制御機4,第2の伝送路L2,ナースコール親機5および第6の伝送路L6を介してナースコール用パーソナルコンピュータ7へ伝送される。
【0026】
そうすると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7において,患者情報が照合され,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号(以下「一致信号」という。)が出力され,この一致信号が前述の第1のバーコードデータと逆の経路を経由して第1の病室液晶ナースコール子機2aへ伝送される。これにより,第1の液晶ナースコール子機2aの表示部に,図2に示すような画面が現れるとともに,当該画面の患者チェック欄21に両者のバーコードデータが一致した旨を表わすチェックマークが付される。従って,このような構成のナースコール装置によれば,当該バーコードを担持する患者が第1の患者,すなわち,病室A内の第1のベッドに係る患者であることを確認することができる。
【0027】
ここで,第1の患者と異なる患者,例えば病室A内の第1のベッドに隣接する他のベッドに係る患者(以下「第2の患者」という。)が担持するバーコードを第1の子機用バーコードリーダ1aで読取ると,第1の病室子機用バーコードリーダ1aから第2の患者を特定するバーコードデータ(以下「第2のバーコードデータ」という。)が出力され,この第2のバーコードデータが前述の第1のバーコードデータと同様の経路を経由してナースコール用パーソナルコンピュータ7へ伝送される。
【0028】
そうすると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7において,患者情報が照合され,第2のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致しない旨の信号(以下「不一致信号」という。)が出力され,この不一致信号が前述の一致信号と同様の経路を経由して第1の病室液晶ナースコール子機2aへ伝送される。これにより,第1の液晶ナースコール子機2aの表示部に,両者のバーコードデータが一致しない旨のエラーが表示される。従って,このような構成のナースコール装置によれば,患者をとり間違えるなどの医療過誤を防止することができる。
【0029】
一方,第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの患者情報(以下「第1の患者情報」という。)が読み出され,かかる第1の患者情報が前述の一致信号と同様の経路を経由して第1の病室液晶ナースコール子機2aへ伝送される。これにより,第1の液晶ナースコール子機2aの表示部に,図2に示すような第1の患者情報,すなわち第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの情報が表示される。従って,このような構成のナースコール装置によれば,第1のベッドサイドにおいて第1の患者情報を閲覧することができる。
【0030】
次に,本発明のナースコール装置の付加機能について説明する。
【0031】
第1に,看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合においては,当該看護師は病室液晶ナースコール子機2aを用いて患者に関する所定の記録データをナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができる。すなわち,第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機1aを使用することができる。これにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部(不図示)などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができ,ひいては,第1の患者に係る記録データを前述の第1のバーコードデータと同様の経路を経由してナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができる。」(なお,「第1の病室液晶ナースコール子機1a」は,「第1の病室液晶ナースコール子機2a」の誤記であることは明らかである。)
[図:0001391279000002.jpg]
【図2】
(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)から,甲第1号証には,次の発明(以下,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に関する発明を「甲1発明1」,病室液晶ナースコール子機2aに関する発明を「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
ア 甲1発明1
ナースステーションNS内に設置されたナースコール用パーソナルコンピュータ7であって(【0019】),
予め患者用カルテ,治療計画,食事制限などの患者情報が記憶されており,(【0024】),
第1の患者を特定する第1のバーコードデータを病室液晶ナースコール子機2aから取得し(【0025】),
第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号を,この一致信号が前述の第1のバーコードデータと逆の経路を経由して病室液晶ナースコール子機2aへ伝送し(【0026】),
第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの第1の患者情報を伝送し(【0029】),
付加機能として,看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合においては,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして読取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録し,第1の患者に係る記録データをナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができ(【0031】),
バーコードは,病室内の患者や看護師および医師などの院内関係者が担持する,それぞれ自己を特定する専用のバーコードである(【0024】),
ナースコール用パーソナルコンピュータ7。
イ 甲1発明2
各病室に設置され,病室子機用バーコードリーダ1aを有する病室液晶ナースコール子機2aであって(【0019】),
画面の主要部には,患者の診療科目,患者の病室番号やベッド番号,患者の氏名,患者チェック欄21および担当医の氏名などが表示され,同画面の右側には,患者用カルテ,治療計画,食事制限などが表示される表示部を有し(【0021】【図2】),
第1の患者が担持するバーコードをベッドに係る病室子機用バーコードリーダ1aで読取ると,病室子機用バーコードリーダ1aから第1の患者を特定する第1のバーコードデータをナースコール用パーソナルコンピュータ7へ伝送し(【0025】),
ナースコール用パーソナルコンピュータ7で患者情報が照合され,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号(以下「一致信号」という。)を受信し,表示部に表れる前記画面の患者チェック欄21に両者のバーコードデータが一致した旨を表わすチェックマークが付され(【0026】【図2】),
第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,表示部に,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの第1の患者情報が表示され(【0029】),
付加機能として,看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合においては,第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取り,第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などを操作することで,看護師は第1の患者の体温や脈拍などを記録することができ(【0031】),
バーコードは,病室内の患者や看護師および医師などの院内関係者が担持する,それぞれ自己を特定する専用のバーコードである(【0024】),
病室液晶ナースコール子機2a。
2 甲第17号証
(1)本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第17号証には,次の事項が記載されている。
「【0079】
看護支援システム200は,電子化された医療情報を保管する電子カルテサーバ210と,電子カルテサーバ内の医療情報を表示,または新たな看護情報を入力するための,PDA等を用いた看護支援端末230及びナースステーションや診療室に設置する電子カルテ端末220と,電子カルテサーバ210と看護支援端末230及び電子カルテ端末220との情報通信を可能とする院内LAN(Local Area Network)250及び無線LANアクセスポイント240と,から構成される。」
「【0082】
以上述べた院内LAN250及び無線LANアクセスポイント240を通じて,看護師は,看護支援端末230及び電子カルテ端末220から,電子カルテサーバ210内の情報にアクセスする。電子カルテ端末220には多くの場合,PC(Personal Computer)を用いており,少なくとも13インチのモニタ(198×264mm)で情報を表示するため,電子カルテシステムの根幹ともいえるクリニカルパスを表示するに際しても,一画面内で閲覧することが可能である。
【0083】
クリニカルパスとは,患者の治療計画表のようなものであり,横軸には日付を,縦軸には患者に施される各種処置(注射,検査,処方等)をとり,A3紙(297×420mm)程度の大きさにまとめられる。各疾患に対応するクリニカルパスが決められており,同じ疾患には同じ処置が施されるため,医療業務の均一化を図ることができる。ただし,患者の経過に応じてパス内容を書き換える場合もあり,同じ疾患であっても病院によって異なるパスを用いることが多く,現段階では,医療業務の均一化といっても病院単位に留まっているようである。
【0084】
クリニカルパスを使用することにより,1)インフォームドコンセントの充実,2)医療業務の均一化・効率化,3)在院日数の短縮,4)医療行為の見直しと改善,5)パスを中心とした連携の構築,6)コメディカルスタッフのより密接な関与,といった効果が得られるといわれており,多くの電子カルテシステムにおいてクリニカルパス機能を搭載している。」
(2)甲第17号証に記載された事項
上記(1)から,甲第17号証には,次の技術的事項(以下,「甲第17号証記載事項」という。)が記載されているといえる。
クリニカルパスとは,患者の治療計画表のようなものであり,横軸には日付を,縦軸には患者に施される各種処置(注射,検査,処方等)をとったものであって,看護支援端末230に表示されるもの。
3 甲第19号証
(1)本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第19号証には,次の事項が記載されている。
「【0009】
クリニカルパスとは,患者に対して日単位で医療関係者が行う医療行為の予定・計画や実施記録などを表現するものである。従来は紙に記載された表形式のクリニカルパスが使用されていたが,現在では電子化されたものが使用されている。医療行為は,注射,採血などの処置,検査などの他に,食事,入浴なども含む。
バリアンスとは,クリニカルパス上の予定・計画から外れることをいい,言い換えると,クリニカルパスのスケジュール外になることである。」
「【0052】
[3.2 クリニカルパスの運用処理]
次に,作成されたクリニカルパスを用いた運用について説明する。
作成されたクリニカルパスは医師以外の看護師,栄養士,薬剤師,検査技師,リハビリ師等の医療従事者が参照しながらその患者の業務に当たる。医療従事者が利用者端末230(他の利用者端末であってもよい)を用いてログイン及び患者の選択をすることで,クリニカルパスサーバ120にクリニカルパスの参照を要請する。クリニカルパスサーバ120が対象患者のクリニカルパスを読み出して,要請した利用者端末230に送信する。利用者端末230は受信した該当患者のクリニカルパスを表示する。なお,複数のクリニカルパスが該当患者に複数存在する場合には医療従事者が要請前に該当患者のクリニカルパスのリストから選択するか,全てのクリニカルパスを利用者端末230が受信して切替表示可能にする。利用者端末230では今日の日付を基準にクリニカルパスが表示される。基準となる日付を過去又は将来に移動させることもできる。また,クリニカルパスの表示期間も「3日間」,「1週間」,「2週間」と切替表示可能である。」
(2)甲第19号証に記載された事項
上記(1)から,甲第19号証には,次の技術的事項(以下,「甲第19号証記載事項」という。)が記載されているといえる。
クリニカルパスとは,患者に対して日単位で医療関係者が行う医療行為の予定・計画や実施記録などを表現するものであって,医師以外の看護師,栄養士,薬剤師,検査技師,リハビリ師等の医療従事者が,利用者端末230を用いて,クリニカルパスを参照しながらその患者の業務に当たるものであること。
4 甲第22号証
(1)本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第22号証には,次の事項が記載されている。
「クリニカルパス(以下パスと略す)の定義
パスとは,ある疾患で入院する場合に,時間軸を横に,診断・検査・手術?投薬・食事・リハビリ・指導等を入院から退院まで縦軸にした医療スタッフおよび患者が情報を共有するためのシート(図)で現在ほとんどの病院で取り入れられている.日本では1998年にクリティカルパス研究会が発足し,その後パスが急速に普及した時代背景は,1)患者と医療チームが診療プロセスを共有し,かつインフォームドコンセントを兼ねる,2)医師・看護師・薬剤師・栄養士等の多職種が係わるチーム医療の現場整理,3)医療の標準化と責任を明確化した安全管理,4)医療資源の投入と在院日数調整による経営管理,5)電子カルテの業務管理,6)病床一元化で専門外看護師でも診療に参加できる,7)病診連携のための地域連携パス等がある.現実はチーム医療における患者へのインフォームドコンセント,医師の指示や医療チームのチェック漏れ等によるミスや事故防止,在院日数調整や医療資源投資・報酬による経営管理が主たる目的となっている.」(第205頁)
(2)甲第22号証に記載されていた事項
上記(1)から,甲第22号証には,次の技術的事項(以下,「甲第22号証記載事項」という。)が記載されているといえる。
クリニカルパスとは,ある疾患で入院する場合に,時間軸を横に,診断・検査・手術・投薬・食事・リハビリ・指導等を入院から退院まで縦軸にした医療スタッフおよび患者が情報を共有するためのシート(図)で現在ほとんどの病院で取り入れられていること。
第8 訂正請求について
1 訂正事項の内容
令和3年7月30日に提出された訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の内容は,特許第6407464号の特許請求の範囲を,本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである。
訂正の内容は,次のとおりである。なお,下線は訂正箇所を示すものとして被請求人が付加したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部」と記載されているのを,「前記第1判定部が一致すると判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を,前記端末装置へ出力する第1出力部」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」,「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」及び「前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」と記載されているのを,「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を,前記患者用画面が表示された前記端末装置から取得する第2取得部」,「前記第1看護師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」及び「前記第2判定部が一致すると判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を前記端末装置から取得する第3取得部」,「前記第1医師識別情報と,医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致するか否か判定する第3判定部」及び「前記第3判定部が一致すると判定した場合に,医師専用画面を前記端末装置へ出力する第3出力部」を追加する。
特許請求の範囲の請求項4の「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が看護師を識別する看護師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」を,「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1看護師等識別情報が看護師を識別する看護師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項5の「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が医師を識別する医師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む医師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」を,「前記第3出力部は,前記第3判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む前記医師専用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項6~10について,請求項1と同様に訂正する。
(3)訂正事項1,2の訂正事項について
ア 訂正事項1
検討の便宜から,訂正事項1を,次のとおりに分割する。
<訂正事項1-1-1>
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1(以下,「訂正前請求項1」という。同様に,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~10を,それぞれ,「訂正前請求項2」,…,「訂正前請求項10」という。)に「前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1判定部が一致すると判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を,前記端末装置へ出力する第1出力部」に訂正する。
<訂正事項1-1-2>
訂正前請求項1に「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」,「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」及び「前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を,前記患者用画面が表示された前記端末装置から取得する第2取得部」,「前記第1看護師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」及び「前記第2判定部が一致すると判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」に訂正する。
<訂正事項1-1-3>
訂正前請求項1に「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を前記端末装置から取得する第3取得部と,
前記第1医師識別情報と,医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致するか否か判定する第3判定部と,
前記第3判定部が一致すると判定した場合に,医師専用画面を前記端末装置へ出力する第3出力部と,」を追加する。
<訂正事項1-4>
訂正前請求項4に「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が看護師を識別する看護師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1看護師等識別情報が看護師を識別する看護師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」に訂正する。
<訂正事項1-5>
訂正前請求項5に「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が医師を識別する医師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む医師用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第3出力部は,前記第3判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む前記医師専用画面を,前記端末装置へ出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。」に訂正する。
イ 訂正事項2について
検討の便宜から,訂正事項2を,訂正特許請求の範囲の請求項6~10(以下,それぞれ,「訂正後請求項6」,…,「訂正後請求項10」という。また,訂正特許請求の範囲の請求項1~5を,それぞれ,「訂正後請求項1」,…,「訂正後請求項5」という。)の記載に基づき,次のとおりに分割する。
(ア)請求項6について
<訂正事項2-6-1>
訂正前請求項6に「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を,前記端末装置へ出力する第1出力ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-6-2>
訂正前請求項6に「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップ」及び「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を,前記患者用画面が表示された前記端末装置から取得する第2取得ステップ」及び「前記第1看護師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2看護師識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-6-3>
訂正前請求項6に「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を前記端末装置から取得する第3取得ステップと,
前記第1医師識別情報と,医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致するか否か判定する第3判定ステップと,
前記第3判定ステップにおいて一致すると判定した場合に,医師専用画面を前記端末装置へ出力する第3出力ステップと,」を追加する。
(イ)請求項7について
<訂正事項2-7-1>
訂正前請求項7に「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を,前記端末装置へ出力する第1出力ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-7-2>
訂正前請求項7に「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得ステップ」及び「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を,前記患者用画面が表示された前記端末装置から取得する第2取得ステップ」及び「前記第1看護師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-7-3>
訂正前請求項7に「前記第1判定ステップにおいて一致すると判定された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を前記端末装置から取得する第3取得ステップと,
前記第1医師識別情報と,医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致するか否か判定する第3判定ステップと,
前記第3判定ステップにおいて一致すると判定した場合に,医師専用画面を前記端末装置へ出力する第3出力ステップと,」を追加する。
(ウ)請求項8について
<訂正事項2-8-1>
訂正前請求項8に「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する第1表示部」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第1表示部」に訂正する。
<訂正事項2-8-2>
訂正前請求項8に「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得部」,「前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部」及び「前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部」と記載されているのを,本件訂正により,「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を取得する第2取得部」,「前記第2取得部で取得した前記第1看護師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部」及び「前記第2取得部で取得した前記第1看護師等識別情報とあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部」に訂正する。
<訂正事項2-8-3>
訂正前請求項8に「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を取得する第3取得部と,
前記第3取得部で取得した前記第1医師識別情報を前記情報処理装置に送信する第3送信部と,
前記第3取得部で取得した前記第1医師識別情報とあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記医師が必要とする医療情報を含む医師専用画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第3表示部と」を追加する。
(エ)請求項9について
<訂正事項2-9-1>
訂正前請求項9に「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示部に表示する第1表示ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を前記情報処理装置から受信し,表示部に表示する第1表示ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-9-2>
訂正前請求項9に「前記医療情報が前記表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得ステップ」,「前記第2取得ステップにおいて取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップ」及び「前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,前記表示部に表示する第2表示ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記医療情報が前記表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を取得する第2取得ステップ」,「前記第2取得ステップにおいて取得した前記第1看護師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップ」及び「前記第1看護師等識別情報とあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,前記表示部に表示する第2表示ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-9-3>
訂正前請求項9に「前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を取得する第3取得ステップと,
前記第3取得ステップにおいて取得した前記第1医師識別情報を前記情報処理装置に送信する第3送信ステップと,
前記第3取得ステップにおいて取得した前記第1医師識別情報とあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記医師が必要とする医療情報を含む医師専用画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第3表示ステップと,」を追加する。
(オ)請求項10について
<訂正事項2-10-1>
訂正前請求項10に「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示部に表示する第1表示ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を前記情報処理装置から受信し,表示部に表示する第1表示ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-10-2>
訂正前請求項10に「前記医療情報が前記表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得ステップ」,「前記第2取得ステップにおいて取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップ」及び「前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,前記表示部に表示する第2表示ステップ」と記載されているのを,本件訂正により,「前記医療情報が前記表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を取得する第2取得ステップ」,「前記第2取得ステップにおいて取得した前記第1看護師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信ステップ」及び「前記第1看護師等識別情報とあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,前記表示部に表示する第2表示ステップ」に訂正する。
<訂正事項2-10-3>
訂正前請求項10に「前記患者の医療情報が前記表示部に表示された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を取得する第3取得ステップと,
前記第3取得ステップにおいて取得した前記第1医師識別情報を前記情報処理装置に送信する第3送信ステップと,
前記第3取得ステップにおいて取得した前記第1医師識別情報とあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記医師が必要とする医療情報を含む医師専用画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第3表示ステップと,」を追加する。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項2~5は,訂正前の請求項1を直接または間接的に引用する関係にあるから ,訂正前の請求項1~5は,一群の請求項に該当するものであり,特許法第134条の2第3項に適合する。
2 訂正拒絶理由通知
本件訂正請求について,当審は令和3年9月16日付けで訂正拒絶理由を通知した。訂正拒絶理由の概要は次のとおりである。
「1 訂正の請求の趣旨
(省略)
2 訂正事項の内容
(省略)
3 訂正の適否についての検討
(1)請求項1について
ア 訂正事項1-1-1について
訂正事項1-1-1は,訂正前請求項1の「前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部」という発明特定事項を,本件訂正により,概念的により下位の「前記第1判定部が一致すると判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報として前記患者の一日の予定,前記患者に対する注意メッセージ,リハビリ情報,投薬情報,検査情報,手術情報,及び処置情報の少なくともいずれか1つを前記患者が自ら確認するための患者用画面を,前記端末装置へ出力する第1出力部」にするものであるから,特許法第134条の2第1項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項1-1-2について
訂正事項1-1-2は,訂正前請求項1の「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」,「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」及び「前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」という発明特定事項を,本件訂正により,概念的により下位の「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を,前記患者用画面が表示された前記端末装置から取得する第2取得部」,「前記第1看護師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」及び「前記第2判定部が一致すると判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」にするものであるから,特許法第134条の2第1項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また,特許明細書等に記載した事項の範囲内であるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 訂正事項1-1-3について
(ア)訂正事項1-1-3は,訂正前請求項1の「情報処理装置」が,さらに,「前記第1判定部で一致すると判定された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を前記端末装置から取得する第3取得部」,「前記第1医師識別情報と,医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致するか否か判定する第3判定部」及び「前記第3判定部が一致すると判定した場合に,医師専用画面を前記端末装置へ出力する第3出力部」との構成を有するとするものである。
(イ)これにより,訂正後請求項1は,「第2取得部」で取得された第1看護師識別情報に基づき「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する」ことができ,「第3取得部」で取得された第1医師等識別情報に基づき,「医師専用画面を前記端末装置へ出力する」ことが含まれるものと解釈される。
他方,訂正後請求項1の記載では,「第2取得部」と「第3取得部」の異同関係が定かではないこと,第1看護師識別情報が「医師」の識別する情報を含むことから,(a)「第2取得部」が取得する識別情報が,「医師」の識別情報の場合,(b)上記(a)以外の場合,に分けて,当該訂正事項の訂正の適否を検討する。
(ウ)特許明細書等には次の記載がある。
「【0020】
以下では情報処理システムの詳細を説明する。図2は情報処理装置1,医療用サーバ2,端末装置3及び電子カルテサーバ4のハードウェア群を示すブロック図である。図2に示す情報処理装置1は,CPU(Central Processing Unit)11,記憶部12,RAM(記憶部)13,入力部14,表示部15,通信部16及び計時部17を備える。」
「【0026】
図2に示す端末装置3は,CPU31,記憶部32,RAM33,入力部34,表示部35,通信部36及び撮像部37を備える。端末装置3は,CPU31,RAM33及び表示部35の構成は,情報処理装置1のCPU11,RAM13及び表示部15の構成と同様であるため,簡潔のため記載を省略する。」
「【0046】
本実施形態では識別媒体としてリストバンドを用いたが,近距離通信を行う無線タグ又はIC(Integrated Circuit)チップを搭載したICカード等を識別媒体として用いてもよい。無線タグの使用方法は以下の通りである。患者が無線タグを端末装置3に近づける。無線タグは患者IDを含む無線信号を端末装置3へ送信する。CPU31は無線タグから無線信号を通信部36で受信し,通信部36で受信した無線信号に含まれる患者IDを取得する。ICカードの使用方法は以下の通りである。患者が端末装置3に付属したカードリーダ(図示せず)にICカードをタッチする。カードリーダはICチップに含まれる患者IDを読み取る。CPU31は読み取った患者IDをカードリーダから取得する。」
「【0065】
図11~12は本実施形態における情報処理システムの処理手順を示したフローチャートである。患者は端末装置3の撮像部37でバーコードを撮像する。CPU31は撮像部37で撮像されたバーコードを取得する(ステップS11)。CPU31は画像処理を用いて取得したバーコードを患者IDに変換する(ステップS12)。CPU31は患者IDを通信部36で医療用サーバ2へ出力する(ステップS13)。CPU21は患者IDを通信部26で端末装置3から取得する(ステップS14)。CPU21は取得した患者ID並びに記憶部22に記憶された医療情報DB221,予定情報DB222,検査情報DB223及び手術情報DB224を通信部26から情報処理装置1へ出力する(ステップS15)。CPU11は患者ID,医療情報DB221,予定情報DB222,検査情報DB223及び手術情報DB224を通信部16で医療用サーバ2から取得する(ステップS16)。CPU11は医療情報DB221を参照し,患者ID「001」が記憶されているか否かを判定する(ステップS17)。
【0066】
CPU11は取得した患者IDが医療情報DB221に記憶されていないと判定した場合(ステップS17:NO),処理を終了する。CPU21は取得した患者IDが医療情報DB221に記憶されていると判定した場合(ステップS17:YES),医療情報DB221及び予定情報DB222に基づいて患者用画面5を生成する(ステップS18)。CPU11は患者用画面5を通信部16から端末装置3へ出力する(ステップS19)。CPU31は患者用画面5を通信部36で情報処理装置1から取得する(ステップS20)。CPU31は患者用画面5を表示部35に表示する(ステップS21)。」
「【0088】
実施の形態2
実施の形態2は看護師が患者の医療情報を確認するための看護師専用画面9を表示部35に表示する実施の形態に関する。以下,特に説明する構成,作用以外の構成及び作用は実施の形態1と同等であり,簡潔のため記載を省略する。図17は情報処理装置1,医療用サーバ2,端末装置3及び電子カルテサーバ4のハードウェア群を示すブロック図である。図17に示すように,記憶部22はさらにID種類DB225及びバイタルDB226を備える。また記憶部32には端末装置3を識別するための端末IDが記憶されている。
【0089】~【0090】(省略)
【0091】
本実施形態における情報処理システムを説明する。CPU31が患者用画面5を表示部35に表示した後,看護師が自身のリストバンドに記載されたバーコードを撮像部37で撮像する。CPU31は撮像部37で撮像されたバーコードを取得する。CPU31はバーコードを看護師ID「N0001」に変換する。CPU31は看護師ID「N0001」を通信部36から医療用サーバ2へ出力する。
【0092】
CPU21は看護師ID「N0001」を通信部26で端末装置3から取得する。CPU21は取得した看護師ID「N0001」並びに記憶部22に記憶された医療情報DB221,予定情報DB222,検査情報DB223,手術情報DB224,ID種類DB225及びバイタルDB226を通信部26から情報処理装置1へ出力する。CPU11は看護師ID「N0001」,医療情報DB221,予定情報DB222,検査情報DB223,手術情報DB224,ID種類DB225及びバイタルDB226を通信部16で医療用サーバ2から取得する。なお,CPU11はRAM13に看護師IDを一時的に記憶している。また,CPU11は記憶部12に予め看護師IDを記憶してもよい。
【0093】
CPU11はID種類DB225を参照し,看護師ID「N0001」が記憶されているか否かを判定する。CPU11はID種類DB225に看護師ID「N0001」が記憶されていると判定する。CPU11はID種類DB225を参照し,看護師ID「N0001」のID種類が「看護師ID」であるか否かを判定する。CPU11はID「N0001」のID種類が「看護師ID」であると判定する。
【0094】
CPU11は看護師専用画面9を生成する。CPU11は看護師専用画面9を通信部16から端末装置3へ出力する。CPU31は看護師専用画面9を通信部36で情報処理装置1から取得する。CPU31は看護師専用画面9を表示部35に表示する。
【0095】(省略)
【0096】
看護支援記録ボタン91は患者のバイタルの変化を表示するための看護支援記録画面(変化画面)110を表示するためのボタンである。看護支援記録画面110は電子カルテ421を表示する場合に,一般的に用いられる画面である。看護師は看護支援記録画面110を用いることで見慣れた画面で作業をすることができるため,作業効率を上げることができる。バイタルボタン92は患者のバイタルを入力するためのバイタル画面(入力画面)10を表示するためのボタンである。切り替えボタン93はリハビリ,与薬,検査,手術及び処置ボタンを備える。
【0097】~【0110】(省略)
【0111】
図23~26は本実施形態における情報処理システムの処理手順を示したフローチャートである。ステップS11~S70の処理は上述の実施の形態1に係る情報処理システムと同様であるので,簡潔のため説明を省略する。CPU31がステップS21の処理を終了した後,看護師が自身の認証カードに記載されたバーコードを撮像部37で撮像する。CPU31は撮像部37で撮像されたバーコードを取得する(ステップS80)。CPU31はバーコードをIDに変換する(ステップS81)。CPU31はIDを通信部36から医療用サーバ2へ出力する(ステップS82)。CPU21はIDを通信部26で端末装置3から取得する(ステップS83)。
【0112】
CPU21は取得した看護師ID並びに記憶部22に記憶された医療情報DB221,予定情報DB222,検査情報DB223,手術情報DB224,ID種類DB225及びバイタルDB226を通信部26から情報処理装置1へ出力する(ステップS84)。CPU11は看護師ID,医療情報DB221,予定情報DB222,検査情報DB223,手術情報DB224,ID種類DB225及びバイタルDB226を通信部16で取得する(ステップS85)。
【0113】
CPU11はIDがID種類DB225に記憶されているか否かを判定する(ステップS86)。CPU11はIDがID種類DB225に記憶されていないと判定した場合(ステップS86:NO),処理を終了する。CPU11はIDがID種類DB225に記憶されていると判定した場合(ステップS86:YES),ID種類が看護師IDであるか否かを判定する(ステップS87)。【0114】
CPU11はIDの種類が看護師IDでないと判定した場合(ステップS87:NO),処理をステップS17に移す。CPU21はIDの種類が看護師IDであると判定した場合(ステップS87:YES),看護師専用画面9を生成する(ステップS88)。CPU11は看護師専用画面9を通信部16から端末装置3へ出力する(ステップS89)。CPU31は看護師専用画面9を通信部36で情報処理装置1から取得する(ステップS90)。CPU31は看護師専用画面9を表示部35に表示する(ステップS91)。
【0115】
CPU31はバイタルボタン92の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS92)。CPU31はバイタルボタン92の入力を受け付けなかったと判定した場合(ステップS92:NO),処理をステップS108に移す。CPU31はバイタルボタン92の入力を受け付けたと判定した場合(ステップS92:YES),バイタル画面10の出力要求を通信部36から情報処理装置1へ出力する(ステップS93)。
【0116】~【0122】(省略)
【0123】
一側面によれば,CPU31はバイタル画面10でバイタルの入力を受け付けることができる。このことにより,看護師又は医師が端末装置3で容易にバイタルの入力を行うことができる。
【0124】(省略)
【0125】
なお,本実施形態では看護師IDであると判定した場合,看護師専用画面9,バイタル画面10及び看護支援記録画面110を表示したが,医師IDであると判定した場合に看護師専用画面9,バイタル画面10及び看護支援記録画面110を表示してもよい。」
「【0143】
実施の形態4
実施の形態4は医師が患者の医療情報を確認するための医師専用画面30を表示部35に表示する実施の形態に関する。以下,特に説明する構成,作用以外の構成及び作用は実施の形態2と同等であり,簡潔のため記載を省略する。図33は情報処理装置1,医療用サーバ2,端末装置3及び電子カルテサーバ4のハードウェア群を示すブロック図である。記憶部22にはさらに画像データDB227が記憶されている。
【0144】
図34は画像データDB227に格納されているデータの一例を示す図である。画像データDB227はレントゲン画像,内視鏡画像,CT画像,BRI画像又は超音波画像等の画像データを記憶するデータベースである。画像データDB227は患者ID列,医療年月日列及び画像データ列等を備える。患者ID列には患者IDが記憶される。医療年月日列には医療年月日が記憶される。画像データ列には患者ID及び医療年月日に対応付けられた画像データが記憶される。
【0145】(省略)
【0146】
本実施形態における情報処理システムを説明する。CPU31が患者用画面5を表示部35に表示した後,医師が自身のICカードをカードリーダにタッチする。CPU31はICカードから医師ID「D0002」をカードリーダで取得する。CPU31は医師ID「D0002」を通信部36から医療用サーバ2へ出力する。
【0147】(省略)
【0148】
CPU11はID種類DB225を参照し,医師ID「D0002」が記憶されているか否かを判定する。図18に示すように,CPU11はID種類DB225に医師ID「D0002」が記憶されていると判定する。CPU11はID種類DB225を参照し,医師ID「D0002」のID種類が「医師ID」であるか否かを判定する。CPU11は医師ID「D0002」のID種類が「医師ID」であると判定する。
【0149】
CPU11は医師専用画面30を生成する。CPU11は医師専用画面30を通信部16から端末装置3へ出力する。CPU31は医師専用画面30を通信部36で情報処理装置1から取得する。CPU31は医師専用画面30を表示部35に表示する。
【0150】~【0155】(省略)
【0156】
図37~38は本実施形態における情報処理システムの処理手順を示したフローチャートである。ステップS11からステップS21の処理は実施の形態2と同様であり,簡潔のため記載を省略する。CPU31はステップS21を終了した後,ICカードからIDをカードリーダで取得し(ステップS150),処理をステップS82に移す。CPU11はステップS87がNOであった場合,取得したIDが医師IDであるか否かを判定する(ステップS151)。CPU11は取得したIDが医師IDでないと判定した場合(ステップS151:NO),処理をステップS17に移す。CPU11は取得したIDが医師IDであると判定した場合(ステップS151:YES),医師専用画面30を生成する(ステップS152)。CPU11は医師専用画面30を通信部16から端末装置3へ出力する(ステップS153)。CPU31は医師専用画面30を通信部36で情報処理装置1から取得する(ステップS154)。CPU31は医師専用画面30を表示部35に表示する(ステップS155)。
【0157】~【0160】(省略)
【0161】
なお,本実施形態では医師IDであると判定した場合,医師専用画面30及び画像選択画面40を表示したが,看護師IDであると判定した場合に医師専用画面30及び画像選択画面40を表示してもよい。また,IDの種類は患者,医師又は看護師IDに限られるものではなく,薬剤師ID又はレントゲン技師ID等の医療関係者を識別するIDにも用いることができる。
【0162】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって,制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は,上記した意味ではなく,特許請求の範囲によって示され,特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また,各実施の形態は,処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。」
(エ)上記(ウ)から,特許明細書等には,「実施の形態2」では,端末装置3の表示部35に患者用画面5を表示(ステップS21)した後,端末装置3は,撮像部37で撮像したバーコードを「N0001」に変換し,情報処理装置1のCPU11が「N0001」を通信部16で取得し,情報処理装置1のCPU11によって,「N0001」が看護師IDであると判定された場合,情報処理装置1の通信部16は,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」を端末装置3へ出力することが記載されており,さらに,看護師IDに代えて医師IDであると判定した場合であっても,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」を端末装置3へ出力してもよいと記載されている。また,「実施の形態4」では,端末装置3が表示部35に患者用画面5を表示(ステップS21)した後,端末装置3は,カードリーダで取得したものを「D0002」に変換し,情報処理装置1のCPU11が「D0002」を通信部16で取得し,情報処理装置1のCPU11によって,「D0002」が医師IDであると判定された場合,情報処理装置1の通信部16は,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」を端末装置3へ出力することが記載されており,さらに,IDの種類には,薬剤師ID又はレントゲン技師IDも含まれることが記載されている。
(オ)上記(エ)を訂正後請求項1に照らすと,訂正後請求項1の,第2取得部で識別情報を取得する場合の処理と,第3取得部で識別情報を取得する場合の処理は,それぞれ,特許明細書等の「実施の形態2」,「実施の形態4」に対応するものと考えることが自然である。
そして,「実施の形態2」,「実施の形態4」は,どちらも情報処理装置1のCPU11が「N0001」又は「D0002」を通信部16で取得することが記載されるのみであるから,訂正後請求項1の「第2取得部」と「第3取得部」は同一の取得部であると解釈される。
(カ)このため,訂正後請求項1は,上記(オ)のとおり「第2取得部」と「第3取得部」は同一の取得部であるから,「前記第2判定部が一致すると判定した場合」と「前記第3判定部が一致すると判定した場合に」も同一の判定処理を意味することになる。
(キ)以上を踏まえて,上記(a)及び(b)の場合について検討をする。
あ 上記(a)の場合について検討をする。
このとき,訂正後請求項1は,上記(カ)の判定処理によって医師を識別するための第2看護師識別情報であると判定された場合に,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」,及び,「医師専用画面」との2つの画面が「前記端末装置へ出力」されることとなる。
また,上記(a)の条件を,上記(エ)に当てはめると,実施の形態2では,端末装置3の表示部35に患者用画面5を表示(ステップS21)した後,情報処理装置1のCPU11が「N0001」を通信部16で取得し,情報処理装置1のCPU11によって,「N0001」が医師IDであると判定された場合,情報処理装置1の通信部16は,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」を端末装置3へ出力すること,実施の形態4では,端末装置3が表示部35に患者用画面5を表示(ステップS21)した後,情報処理装置1のCPU11が「D0002」を通信部16で取得し,情報処理装置1のCPU11によって,「D0002」が医師IDであると判定された場合,情報処理装置1の通信部16は,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」を端末装置3へ出力することになる。
これに対して,実施の形態2及び実施の形態4を含むものを1つの発明として把握した場合,端末装置3の表示部35に患者用画面5を表示部35に表示(ステップS21)した後,端末装置3が取得した医師IDであると情報処理装置1のCPU11で判定された場合に,情報処理装置1の通信部16が,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」及び医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」という2つの画面を端末装置に出力することとなる。しかしながら,このときの具体的な表示の態様の具体的な説明はなく,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」及び医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」は,選択的に表示されることが技術常識である。なお,実施の形態4においては,医師IDと判定された場合に端末装置3に出力される画面は,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」のみであって,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」と技術的に同じ画面であるということはできないから,特許明細書等の記載から,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」と医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」とが同じ画面であるとして,実施の形態2及び実施の形態4を含むものを1つの発明として把握できない。また,特許明細書等にはそのような発明の示唆もない。
そうすると,訂正後請求項1は,特許明細書等に記載されていない新たな技術的事項を導入するものであるから,訂正事項1-1-3は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。また,訂正前請求項1の「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面」を「前記端末装置へ出力」することを,訂正事項1-1-3により,「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面」及び「前記医療関係者向けの画面」の2つの画面を「前記端末装置へ出力」することに訂正することは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。
い 上記(b)の場合について検討をする。
このとき,訂正後請求項1は,上記(カ)の判定処理に用いられる識別情報が,看護師を識別するための第2看護師識別情報の場合には,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」が「前記端末装置へ出力」され,第2医師識別情報の場合には,「医師専用画面」が「前記端末装置へ出力」されるとする構成であり,訂正前請求項1の「情報処理装置」では,看護師を識別するための情報であると判定されない場合には,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」が「前記端末装置へ出力」されないとの構成を下位概念化するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,特許明細書等に記載された事項の範囲内であり,さらに,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(ク)以上より,訂正事項1-1-3は,訂正後請求項1について,上記(キ)「あ」のとおり,新規事項を追加するものであるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものではない。そして,このような新たな技術的事項を導入する訂正事項1-3は,特許請求の範囲の減縮その他,特許法第134条の2第1項第各号のいずれを目的とするものでもない。
(2)請求項2~5について
上記(1)ウのとおり,訂正事項1―1-3による訂正は認められないから,請求項1と共に一群の請求項を構成する請求項2~5に対する訂正も認められない。
(3)請求項6~10について
ア 訂正事項2-6-1,訂正事項2-7-1,訂正事項2-8-1,訂正事項2-9-1及び訂正事項2-10-1について
訂正事項2-6-1,訂正事項2-7-1,訂正事項2-8-1,訂正事項2-9-1及び訂正事項2-10-1は,訂正事項1-1-1と実質的に同じ訂正である。
よって,上記(1)アのとおりであるから,特許法第134条の2第1項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合し,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2-6-2及び訂正事項2-7-2について
訂正事項2-6-2,訂正事項2-7-2は,訂正事項1-1-2と実質的に同じ訂正である。
よって,上記(1)イのとおりであるから,特許法第134条の2第1項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合し,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 訂正事項2-6-3及び訂正事項2-7-3
訂正事項2-6-3及び訂正事項2-6-3は,訂正事項1-1-3と実質的に同じ訂正である。
よって,上記(1)ウのとおりであるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合しない。また,特許法第134条の2第1項第各号のいずれを目的とするものでもない。
エ 訂正事項2-8-2,訂正事項2-9-2及び訂正事項2-10-2について
(ア)訂正事項2-8-2は,訂正前請求項8の「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得部」,「前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部」及び「前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部」という発明特定事項を,本件訂正により,「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,看護師または医師を識別するための第1看護師等識別情報を取得する第2取得部」,「前記第2取得部で取得した前記第1看護師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部」及び「前記第2取得部で取得した前記第1看護師等識別情報とあらかじめ記憶された第2看護師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部」にするものであるから,特許法第134条の2第1項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(イ)同様の訂正をする訂正事項2-9-2及び訂正事項2-10-2も,特許法第134条の2第1項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
オ 訂正事項2-8-3について
(ア)訂正事項2-8-3は,「端末装置」が,さらに,「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合に,医師を識別するための第1医師識別情報を取得する第3取得部」,「前記第3取得部で取得した前記第1医師識別情報を前記情報処理装置に送信する第3送信部」及び「前記第3取得部で取得した前記第1医師識別情報とあらかじめ記憶された第2医師識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合に,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記医師が必要とする医療情報を含む医師専用画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第3表示部」を備える構成とするものである。
(イ)これにより,訂正後請求項8は,「第2取得部」で取得された第1看護師識別情報に基づき,「表示部」が「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」を表示し,「第3取得部」で取得された第1医師識別情報に基づき,「前記医師が必要とする医療情報を含む医師専用画面」を表示することができるものと解釈される。
訂正後請求項8の記載では,「第2取得部」と「第3取得部」の異同関係が定かではないこと,第1看護師識別情報が「医師」を識別する情報を含むことから,(c)「第2取得部」及び「第3取得部」が取得する識別情報が,「医師」を識別する情報の場合,(d)上記(c)以外の場合,に分けて,当該訂正事項の訂正の適否を検討する。
(ウ)特許明細書等には,上記(1)ウ(ウ)のとおりの記載があり,上記(1)ウ(エ)の事項が記載されているといえる。そして,上記(1)ウ(エ)のとおり,実施の形態2では,バーコードを撮像することで識別情報を取得すること,実施の形態4では,カードリーダで識別情報を取得することが記載されていることから,訂正後請求項8の「取得部2」と「取得部3」は異なる取得部であると解釈でき,他方,特許明細書等【0041】を考慮すると,「取得部2」と「取得部3」は同一の取得部である場合も含まれるとも解釈できる。
(エ)まず,「取得部2」と「取得部3」が同一の取得部のとき,上記(c)の場合は,上記(1)で検討したとおりであるから,訂正事項2-8-3は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。また,上記(d)の場合,訂正事項2-8-3は,特許請求の範囲の減縮を目的とし,特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許明細書等に記載した事項の範囲内である。
(オ)次に,訂正後請求項8の「取得部2」と「取得部3」は異なる取得部であると解釈した場合について検討をする。
あ 上記(c)の場合について
このとき,訂正後請求項8は,医師を識別する情報を,第2取得部に取得させることで,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」を,第3取得部に取得させることで,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」を,「前記端末装置へ出力」させる,すなわち,医師を識別する情報を,第2取得部と第3取得部のどちらで取得させるかという選択をすることで,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」及び医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」のどちらか一方を前記端末装置へ出力させることを可能にするものと解釈される。
これに対して,上記(1)ウ(キ)「あ」で検討したとおり,特許明細書等において,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」は,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」と技術的に同じ画面であるということはできない。また,一人の医師に対して,一つのIDが付与されることが一般的であって,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」及び医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」のそれぞれを,端末装置3の表示部35に表示させるために,一人の医師に対して複数の異なるIDを付与することは,特許明細書等には記載されておらず,技術常識でもない。
このため,実施の形態2及び実施の形態4を含むものを1つの発明として把握した場合,特許明細書等には,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」と,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」とを,「端末装置3の撮像部37で撮像した」医師IDであると情報処理装置1で判定された場合と,「端末装置3のカードリーダで取得した」医師IDであると情報処理装置1のCPU11で判定された場合とで,端末装置3の表示部35に,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」及び医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」のどちらか一方を選択的に表示させることが記載されているものと解釈される。このとき,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」と,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」とを表示させるための医師を識別する情報が,リストバンド又はICカードという,互いに異なる態様で医師,看護師,薬剤師及びレントゲン技師に与えられることを含むことになる。
そうすると,訂正後請求項8は,医師が,1つの医師を識別する情報である第1看護師識別情報及び第1医師識別情報をリストバンド及びICカードという互いに異なる態様で有しており,これを,医師が,第2取得部又は第3取得部で取得させることで,看護師または医師が必要とする医療情報を含む表示画面の対象となる患者の取り違えを防止することと,医師が必要とする医療情報を含む医師専用画面の取得対象となる患者の取り違えを防止することのどちらを行うかを,選択することができるという目的を有することとなる。これに対して,訂正前請求項8の目的は,看護師または医師が必要とする医療情報を含む表示画面の入力対象となる患者の取り違えを防止することであるから,訂正事項2-8-3により,訂正前後で請求項8の目的を変更することになる。そうすると,訂正事項2-8-3は,特許請求の範囲を拡張又は変更するものといえる。
い 上記(d)の場合について
取得される第1看護師識別情報が医師を識別する情報ではないことを除けば,上記「あ」と同じであるから,これらの場合においても,訂正後請求項8の「第1看護師識別情報」及び「第1医師識別情報」は,リストバンド又はICカードという,互いに異なる態様で医師又は看護師に与えられることを含むことになるものの,上記(d)の場合には,同一の者が複数の態様で識別する情報を有しないことになるため,訂正前請求項8の「端末装置」の,判定される第1看護師識別情報が,看護師を識別する情報の場合には,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」が表示部に表示されるとの構成に,訂正事項2-8-3により,判定される第1医師識別情報が,第2医師識別情報の場合には,「前記医師が必要とする医療情報を含む医師専用画面」が表示部に表示されるとの構成を追加することで,訂正前請求項8の「端末装置」を減縮するものであり,また,特許明細書等に記載された事項の範囲内であり,さらに,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(カ)以上より,訂正事項2-8-3は,上記(オ)「あ」のとおり,特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものではない。また,上記(ウ)のとおり,複数の発明を含むことになり,訂正後請求項8は,訂正前請求項8とは異なる範囲の発明をも含むものであって,上記(オ)「あ」のとおり,訂正後請求項8は,訂正前請求項8の目的とは異なる目的の発明を含むことから,特許法第134条の2第1項第各号のいずれを目的とするものでもない。
カ 訂正事項2-9-3及び訂正事項2-10-3について
訂正事項2-9-3及び訂正事項2-10-3は,訂正事項2-8-3と実質的に同じ訂正である。
よって,上記オのとおりであるから,特許法第134条の2第1項各号のいずれを目的とするものでもなく,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合しない。
(4)小括
以上のとおりであるから,令和3年7月30日付けの訂正請求書により請求された訂正後の請求項1~10についての訂正は,特許法第134条の2第1項各号のいずれを目的とするものでもなく,仮に,同項1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものではなく,又は,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものではない訂正事項を含むので,当該訂正を認めない。
4 むすび
よって,令和3年7月30日付けで請求された訂正特許請求の範囲の請求項1~10についての訂正を認めない。」
3 被請求人(訂正請求人)の主張の概要
被請求人(訂正請求人)(以下,訂正請求の検討においても,「被請求人」という。)が,令和3年10月22日に提出した意見書でする主張の概要は次のとおりである。
(1)主張1
「 (誤記について)
18頁27行目には,「そうすると,訂正後請求項1は,特許明細書等に記載されていない新たな技術的事項を導入するものであるから,訂正事項1-1-3は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においでしたものではない。また,訂正前請求項lの「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面」を「前記端末装置へ出力」することを,訂正事項1-1-3により,「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面」及び「前記医療関係者向けの画面」の2つの画面を「前記端末装置へ出力」することに訂正することは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。」
とありますが,上記は,本件無効審判における訂正請求とは無関係の記載であり,誤記として無視しました。」(2頁2行~13行)
(2)主張2
「本件の訂正拒絶理由には,『患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」』という表現が複数繰り返し登場しますが,図20に示される看護師専用画面9は,下記の通り,図21に示される「バイタル入力画面10」とは別物であり,バイタルの入力画面へ遷移するボタン以外の機能も有しています。「バイタル入力画面10」と勘違いして理解されているようにも感じますが,「患者のバイタルを入力するための」と繰り返し表現する意図が分かりません。明細書及び特許請求の範囲のいずれを見てもそのような限定的な解釈は成立しません。」(2頁14行~21行)
(3)主張3
「 21頁(ウ)には,「他方,特許明細書等【0041】を考慮すると,「取得部2」と「取得部3」は同一の取得部である場合も含まれるとも解釈できる。」とあるが,本件の特許明細書【0041】には,「手術説明フラグ,前日手術説明フラグ,当日手術説明フラグ,後日手術説明フラグおよび同意フラグは初期状態でFALSEに設定されている。なお,手術説明,前日手術説明,当日手術説明および後日手術説明はメッセージに限られず,画像または音声等でもよい。」と記載されており理解できません。また,「取得部2」「取得部3」が何を意味しているのかも定かではありません。いずれも誤記と思われます。
なお,「取得部2」「取得部3」という表現は他にも複数登場するが,本件明細書及び請求項のいずれにも記載はありません。」(3頁1行~10行)
(4)主張4
「(訂正が認められるべき理由)
上記訂正後の請求項1は,図37,図38にそのまま開示があります。以下に丁寧に説明させていただきます。…(途中省略)…
患者用画面が表示されると,段落【0156】に記載の通り「CPU31はステップS21を終了した後,ICカードからIDをカードリーダで取得し(ステップS150),処理をステップS82に移」します。
これにより,段落【0111】~【0114】に記載の通り,以下の処理が行われます。(途中省略)
このように,看護師IDについて判定を行い,看護師IDであれば,看護師専用画面9を表示します。
次に,図37に戻りますと,看護師IDでなければ,ステップS151に進むことが分かります。そして,段落【0156】に書かれているとおり,以下の処理が行われます。…(途中省略)…
以上の通り,図37,図38及びその説明を素直に読むと,患者IDを取得して患者用画面5を表示した後,看護師IDを取得すれば,看護師用画面9を表示し,一方,医師IDを取得すれば,医師専用画面30を表示することがいかなる当業者にも理解できます。
つまり,請求項1の記載に則して表現するとすると,以下の内容は明らかに図37,図38及びその説明から導かれます。…(途中省略)…
これに対し,更に明細書の段落【0125】には,「なお,本実施形態では看護師IDであると判定した場合,看護師専用画面9,バイタル画面10及び看護支援記録画面110を表示したが,医師IDであると判定した場合に看護師専用画面9,バイタル画面10及び看護支援記録画面110を表示してもよい。」
と記載されています。
つまり,看護師専用画面9,バイタル画面10及び看護支援記録画面110を表示する流れの中に,医師IDの取得,判定から進む場合があることを示しています。…(途中省略)…
さて,それでは,訂正後の請求項1のように構成すると,実際に,医師IDが入力された場合,どのような表示になるのかについては,この種のシステムを設計した経験のある当業者であれば,如何様にも想像できます。
例えば,以下のような「患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」と「医師専用画面」とを,医師IDの認証後に,それぞれ別の頁に表示させてもよいし,同じ頁に並べて表示させる設計でもよいと思います。繰り返しになりますが,当業者であれば,本明細書から十分に理解できるものです。…(途中省略)…
従いまして,訂正事項1-1-3は,間違いなく,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり,新規事項を追加するものではなく,特許請求の範囲を減縮するものです。すなわち,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものです。
これにより請求項2~10に対する訂正も,同様に認められるべきものです。」(4頁下から8行~9頁5行)
(5)主張5
「訂正拒絶理由通知においては,「(a)「第2取得部」が取得する識別情報が,「医師識別情報」の場合,(b)上記(a)以外の場合,に分けて,当該訂正事項の訂正の適否を検討する。」とし,(a)の場合は新規事項,(b)の場合は新規事項ではない,と判断していますが,同じ構成に入力される情報の種類によって,その構成が新規事項になったり,新規事項でなくなったりすることはありえません。この点においても新規事項の判断について根本的な誤謬があるものと思料いたします。」(9頁6行~12行)
4 本件訂正請求についての当審の判断
(1)被請求人の主張の検討
ア 主張1について
被請求人が誤記と主張する訂正拒絶理由通知の記載は,次のとおりである。
「 そうすると,訂正後請求項1は,特許明細書等に記載されていない新たな技術的事項を導入するものであるから,訂正事項1-1-3は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。また,訂正前請求項1の「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面」を「前記端末装置へ出力」することを,訂正事項1-1-3により,「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面」及び「前記医療関係者向けの画面」の2つの画面を「前記端末装置へ出力」することに訂正することは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。」
このうち,「訂正後請求項1は,特許明細書等に記載されていない新たな技術的事項を導入するものであるから,訂正事項1-1-3は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。」については,被請求人の主張する誤記は含まれておらず,これを無視するとの主張は失当である。
上記摘記の「また,」以降についても,訂正拒絶理由通知の3(1)ウ(イ)では,「(イ)これにより,訂正後請求項1は,「第2取得部」で取得された第1看護師識別情報に基づき「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する」ことができ,「第3取得部」で取得された第1医師等識別情報に基づき,「医師専用画面を前記端末装置へ出力する」ことが含まれるものと解釈される。」とし,さらに,「他方,訂正後請求項1の記載では,「第2取得部」と「第3取得部」の異同関係が定かではない」としていることから,訂正拒絶理由通知では,これらを踏まえて,訂正事項1-1-3の適否について検討をしていることは明らかである。そのため,訂正拒絶理由通知で意図するところは,訂正前請求項1の「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する」ことを,「訂正事項1-1-3により,「第2取得部」で取得された第1看護師識別情報に基づき「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する」ことができ,「第3取得部」で取得された第1医師等識別情報に基づき,「医師専用画面を前記端末装置へ出力する」ことに訂正することは,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。」であると,文脈から理解できるものであるから,被請求人が,一部の誤記のみを捉えて,その判断を無視するとする主張1は適切とはいえない。
イ 主張2について
訂正拒絶理由通知では,訂正事項1-1-3について,3(1)ウ(オ)のとおり,「訂正後請求項1の,第2取得部で識別情報を取得する場合の処理と,第3取得部で識別情報を取得する場合の処理は,それぞれ,特許明細書等の「実施の形態2」,「実施の形態4」に対応するものと考えることが自然である。」とし,続く同(カ)で,「訂正後請求項1は,上記(オ)のとおり「第2取得部」と「第3取得部」は同一の取得部であるから,「前記第2判定部が一致すると判定した場合」と「前記第3判定部が一致すると判定した場合に」も同一の判定処理を意味することになる。」とした上で,さらに続く(キ)のとおりの検討を行った。
そして,当該(キ)では,次のように述べている。
「(キ)以上を踏まえて,上記(a)及び(b)の場合について検討をする。
あ 上記(a)の場合について検討をする。
このとき,訂正後請求項1は,上記(カ)の判定処理によって医師を識別するための第2看護師識別情報であると判定された場合に,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」,及び,「医師専用画面」との2つの画面が「前記端末装置へ出力」されることとなる。
また,上記(a)の条件を,上記(エ)に当てはめると,実施の形態2では,端末装置3の表示部35に患者用画面5を表示(ステップS21)した後,情報処理装置1のCPU11が「N0001」を通信部16で取得し,情報処理装置1のCPU11によって,「N0001」が医師IDであると判定された場合,情報処理装置1の通信部16は,患者のバイタルを入力するための「看護師専用画面9」を端末装置3へ出力すること,実施の形態4では,端末装置3が表示部35に患者用画面5を表示(ステップS21)した後,情報処理装置1のCPU11が「D0002」を通信部16で取得し,情報処理装置1のCPU11によって,「D0002」が医師IDであると判定された場合,情報処理装置1の通信部16は,医師が患者の医療情報を確認するための「医師専用画面30」を端末装置3へ出力することになる。」
このように,「前記第2判定部が一致すると判定した場合」には,本件特許明細書における「看護師専用画面9」を端末装置が受信し表示すること,「前記第3判定部が一致すると判定した場合」には,本件特許明細書における「医師専用画面30」を端末装置が受信し表示するに対応することを説明している。
当該(キ)は,このように解釈した上で,訂正の適否を検討したのであるから,「患者のバイタルを入力するための『看護師専用画面9』」との記載があることで,結論を左右するものではない。また,本件特許明細書における「実施の形態2」は,訂正後請求項8における「前記第2判定部が一致すると判定した場合」に対応するものが,看護師IDであると判定した場合であって,これにより看護師専用画面9が表示され,看護師専用画面9中のバイタルボタン92を選択することでバイタル画面10が表示される実施の形態である。そして,当該(キ)の論点は,「看護師専用画面9」と「医師専用画面30」が同じ画面であるか否かであるから,このため,「患者のバイタルを入力するための『看護師専用画面9』」との記載が繰り返されているといえども,上述した論点が不明になるものではないことから,被請求人の主張2を考慮しても,判断に影響しない。
ウ 主張3について
訂正拒絶理由通知で考慮した本件特許明細書【0041】は,【0046】の誤りである。
しかしながら,訂正事項2-8-3について,訂正拒絶理由通知では,3(3)オ(イ)のとおり,「第2取得部」と「第3取得部」の異同関係が定かではないことから,同(ウ)のとおり,「第2取得部」と「第3取得部」が同一の取得部である場合と,同(オ)のとおり,「第2取得部」と「第3取得部」が異なる取得部である場合とに分けて,それぞれの場合について訂正の適否を検討したものである。このように,場合分けをして訂正の適否を検討することがここでの要点であって,「【0041】を考慮すると」としたことで,「第2取得部」と「第3取得部」が同一の取得部である場合があると仮定をして,判断することを妨げるものではなく,上述した要点に照らすと,被請求人の主張を考慮しても,それぞれの場合についての判断を左右するものではない。
また,被請求人は,「取得部2」,「取得部3」が何を意味しているかも定かではない旨主張するが,前後の文脈から,それぞれ,「第2取得部」,「第3取得部」の誤記であることは明らかであるから,このような誤記が判断を左右するものでもないことも明らかである。
よって,被請求人の主張3を考慮しても,判断に影響しない。
エ 主張4について
被請求人は,患者用画面が表示されるまでのステップ(ステップS21)の説明を割愛しているので,ICカードからIDをカードリーダで取得して(ステップS150)からの,ステップS82以降の処理を見てみる。
【0111】~【0114】及び【0156】には,概略,次の事項が記載されている。
ステップS83:医療用サーバ2のCPU21はIDを通信部26で端末装置3から取得する(ステップS84へ進む)。
ステップS84:CPU21は取得した看護師IDならびに記憶部22に記憶された医療情報DB221等を情報処理装置1へ出力する(ステップS85へ進む)。
ステップS85:情報処理装置1のCPU11は看護師ID,医療情報DB221等を取得する(ステップS86へ進む)。
ステップS86:CPU11はIDがID種類DB225に記憶されているか否かを判定する(記憶されていると判定した場合にはステップS87へ,記憶されていないと判定すると,処理を終了する。)。
ステップS87:ID種類が看護師IDであるか否かを判定する(看護師IDと判定した(YES)場合にはステップS88へ進み,看護師IDでないと判定した場合(NO)にはステップS151へ進む。)。
ステップS88:看護師専用画面9を生成する(ステップS89へ進む)。
ステップS89:CPU11は看護師専用画面9を通信部16から端末装置3へ出力する(ステップS90へ進む)。
ステップS90:端末装置3のCPU31は看護師専用画面9を情報処理装置1から取得する(ステップS91へ進む)。
ステップS91:CPU31は看護師専用画面9を表示する(以上,【0111】~【0114】の処理。以降,看護師専用画面9の操作。)。
ステップS151:取得したIDが医師IDであるか否かを判定する(医師IDでない(NO)と判定した場合,ステップS17で,患者IDが記憶されているか否かを判定する処理を実行し(【0065】),医師IDであると判定された場合(YES)にはステップS152へ進む。)。
ステップS152:医師専用画面30を生成する(ステップS153へ進む)。
ステップS153:CPU11は医師専用画面30を端末装置3へ出力する(ステップS154へ進む)。
ステップS154:CPU31は医師専用画面30を情報処理装置1から取得する(ステップS155へ進む)。
ステップS155:CPU31は医師専用画面30を表示する(以上,【0156】の処理。)。
また,本件特許明細書における「実施の形態2」の「医師IDであると判定した場合に看護師専用画面9,バイタル画面10及び看護支援記録画面110を表示してもよい。」(【0125】)との記載は,ステップS87の判定処理で,YESと判断した場合のことを説明していると解釈できる。
以上を踏まえて,被請求人の主張4を検討すると,ステップS150において,カードリーダで取得されたIDが「医師ID」である場合において,上述した処理への当て嵌めを行ってみる。
本件特許明細書【0125】を考慮しない場合,ステップS87の判定において「NO」と判定され,ステップS151へ行き,結果としてステップS155のとおり,端末装置3において,「医師専用画面30」を表示するものである(実施の形態4)。他方,本件特許明細書【0125】を考慮する場合,ステップS87の判定において「YES」と判定され,ステップS88へ行き,結果としてステップS91のとおり,端末装置3において,「看護師専用画面9」を表示するものである(実施の形態2)。
このように,実施の形態2において,本件特許明細書【0125】を考慮すると,カードリーダで取得されたIDが「医師ID」である場合に,ステップS87で「YES」と判定されるものであって,「YES」と判定されているにもかかわらず,ステップS87で「NO」と判定された場合のステップS155(実施の形態4)へ進むことは,本件特許明細書には記載されていない。すなわち,ステップS87の判定処理において,「YES」と判定された場合に進む処理と,「NO」と判定された場合に進む処理の,両方の処理に進むことは,本件特許明細書に記載されていない。
そうすると,訂正後請求項1の,医師を識別する識別情報であると判定した場合に,「看護師が必要とする医療情報を含む表示画面」及び「医師専用画面」という2つの画面を情報処理装置が端末装置に出力することを含む点について,本件特許明細書には,ステップS87において,YESと判定されると,端末装置3では「看護師専用画面9」が表示され,NOと判定されると,端末装置3では「医師専用画面30」を表示するという,選択的な画面の表示が行われるように,情報処理装置1が「看護師専用画面9」又は「医師専用画面30」のどちらか一方の画面を端末装置3に出力することが記載されるのみであって,ステップS87の判定処理結果に関係なく,医師IDが入力されることで,報処理装置が「看護師専用画面9」及び「医師専用画面30」を情端末装置に出力することは,本件特許明細書に記載された範囲を超えた事項であるから,新たな技術的な事項を追加するものである。
なお,被請求人の,2つの画面の表示のさせ方が本件特許明細書から十分に理解できるとの主張について,上述したように,実施の形態2のステップS88~ステップS91の処理と,実施の形態4のステップ152~ステップS155の処理を並列的に行うこと,すなわち,2つの画面を表示させることは本件特許明細書には記載されていないので,被請求人のこのような主張は,その前提を誤っている。
以上のとおりであるから,被請求人の主張4に理由はない。
オ 主張5について
本件訂正における訂正後請求項1には,上記エで摘記したとおりの記載がある。
このように,訂正後請求項1の第2取得部及び第3取得部は,共に「前記第1判定部で一致すると判定された場合」に,「医師」を識別するための識別情報を取得する点で,機能を共通にするものであり,第2取得部が「看護師」を識別するための識別情報をも取得する機能を有している点で,第3取得部と異なるものである。このため,「第2取得部」と「第3取得部」との異同関係が必ずしも明確であるとはいえず,訂正の適否を検討するために,訂正拒絶理由通知の3(1)ウ(イ)のとおりに場合分けをして検討したことには理由がある。
このため,場合分けごとに異なる結論に至ることがあることも自然なことである。
よって,被請求人の主張5を採用することはできない。
(2)小括
以上のとおり,被請求人の主張を検討しても,理由を解消するものではないため,本件訂正は,上記訂正拒絶理由通知で示したとおり,訂正事項1-1-3,訂正事項2-8-3,訂正事項2-9-3及び訂正事項2-10-3は,本件特許明細書等に記載されておらず,また,本件特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえないものであり,本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるから,願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとの理由を有するものである。このような新たな技術的事項を導入する訂正事項1-1-3,訂正事項2-8-3,訂正事項2-9-3及び訂正事項2-10-3は,特許請求の範囲の減縮その他,特許法第134条の2第1項第各号のいずれを目的とするものでもない。
なお,訂正事項2-8-3,訂正事項2-9-3及び訂正事項2-10-3について,訂正拒絶理由通知の3(3)オ(エ)において「(エ)まず,「取得部2」と「取得部3」が同一の取得部のとき,上記(c)の場合は,上記(1)で検討したとおりであるから,訂正事項2-8-3は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。」としたとおりであるから,願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとの理由を有することは明らかである。
また,本件訂正は,上記訂正拒絶理由通知で示したとおり,訂正事項2-8-3,訂正事項2-9-3及び訂正事項2-10-3は,訂正前後で,請求項8~10の目的を変更することになるので,特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるとの理由を有するものである。
以上のとおり,本件訂正に係る訂正請求は認められないから,本件発明は,上記「第3 本件発明」で摘記したとおりのものである。
第9 無効理由に対する当審の判断
1 理由1について
(1)本件発明1と甲1発明1との対比
ア 構成要件G1について
甲1発明1の「ナースコール用パーソナルコンピュータ7」は,後述する相違点は別にして,本件発明1の「情報処理装置」に相当する。
イ 構成要件A1について
甲1発明1は,第1の患者を特定する第1のバーコードデータを病室液晶ナースコール子機2aから取得する機能を有しており,甲1発明1の「第1の患者」,「第1の患者を特定する第1のバーコードデータ」,「病室液晶ナースコール子機2a」は,それぞれ,本件発明1の「患者」,「患者を識別するための第1患者識別情報」,「端末装置」に相当し,甲1発明1は第1のバーコードデータを取得するための手段を備えることは明らかであるから,甲1発明1の当該手段は,本件発明1の「患者を識別するための第1患者識別情報を端末装置より取得する第1取得部」に相当する。
ウ 構成要件B1について
甲1発明1のナースコール用パーソナルコンピュータ7は,第1の患者を特定する第1のバーコードデータを病室液晶ナースコール子機2aから取得すると,第1の患者のバーコードデータと照合する。このため,甲1発明1のナースコール用パーソナルコンピュータ7は,第1の患者のバーコードデータを予め記憶しておく必要があり,さらに,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータとを照合する手段を備えていることも明らかである。そうすると,甲1発明1の第1の患者のバーコードデータは,本件発明1の「患者を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2患者識別情報」に相当し,甲1発明1の当該照合する手段は,本件発明1の「前記第1患者識別情報と,患者を識別する情報としてあらかじめ記憶部に記憶された第2患者識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部」に相当する。
エ 構成要件C1について
本件発明1の構成要件C1の「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する」ことは,「前記第1判定部が一致すると判定した場合」に,何らかの処理を挟まずに,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する」ものであっても,何らかの処理を挟んで「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する」ものであってもよいことは明らかである。
甲1発明1の「第1の患者情報」は,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などであるから,本件発明1の「患者の医療情報」に相当し,甲1発明1は,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致し,第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの第1の患者情報を伝送する点で,甲1発明1のナースコール用パーソナルコンピュータ7は,第1の患者情報を伝送する手段を備えることは明らかであり,甲1発明1の当該第1の患者情報を伝送する手段と,本件発明1の「前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部」とは,第1の患者情報が第1のバーコードデータに対応しているか定かではない点で相違するものの,「前記第1判定部が一致すると判定した場合,患者を識別する情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部」で共通する。
オ 構成要件D1~F1について
(ア)甲1発明1のナースコール用パーソナルコンピュータ7は,看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合においては,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読み取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして読み取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができる機能を有している。
(イ)また,看護師が担持するバーコードは,自己を特定する専用のバーコードであって,パスワードとして読み取ったとしてもナースコール用パーソナルコンピュータ7で照合されることにより,当該看護師を特定することができるものであるから,看護師が担持するバーコードは看護師を識別する識別情報として機能することは明らかである。
そして,甲1発明1は,看護師が担持するバーコードをパスワードとしての読取りを経ることで,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができる点で,甲1発明1の「看護師が担持するバーコード」は,医師が担持するバーコードではないものの,本件発明1の「看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報」のうちの「看護師」「を識別するための第1医師等識別情報」に相当する。
(ウ)このとき,甲1発明1において,「第1の患者の体温や脈拍などを記録し,第1の患者に係る記録データをナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送する」ためには,ナースコール用パーソナルコンピュータ7へのアクセス許可のための照合が行われることは技術常識であり,そのために,ナースコール用パーソナルコンピュータ7は,病室液晶ナースコール子機2aから取得した看護師が担持するバーコードが正しいか否かを判定する手段,及び,判定するために照らし合わせる,看護師および医師などの院内関係者が担持するバーコードに対応する元となる情報を照合よりも前に記憶する記憶手段を備える必要がある。また,上記ウでみたとおり,甲1発明1は判定に必要な情報を記憶するものであり,甲1発明1の,判定するために照らし合わせる元となる看護師が担持するバーコードに対応する情報は,本件発明1の「看護師」「を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報」に相当する。そして,甲1発明1の看護師が担持する自己を特定する専用のバーコード(第1医師等識別情報)を判定する手段は,本件発明1の「前記第1医師等識別情報と,看護師」「を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部」(構成要件E1)に相当する。
(エ)そして,上記(ウ)のとおり,甲1発明1の看護師が担持するバーコードは,読み取りが行われるための条件は別にして,パスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取られ,上記照合のために,ナースコール用パーソナルコンピュータ7が取得する点で,ナースコール用パーソナルコンピュータ7は看護師が担持するバーコード(第1医師等識別情報)を取得する手段を有しているから,甲1発明1の当該取得手段は,本件発明1の「看護師」「を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部」(構成要件D1)に相当する。
(オ)また,甲1発明1は,看護師が担持するバーコードをパスワードとして読み取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができることから,上記(ウ)の甲1発明1の判定する手段により,看護師が担持するバーコード(第1医師等識別情報)が一致すると判定した場合に,看護師による第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録する画面を,病室液晶ナースコール子機2aに表示するために,ナースコール用パーソナルコンピュータ7が当該画面を送信する手段を有していることは明らかである。さらに,看護師が患者に対し何らかの処置を行うにあたり,必要な患者の医療情報を閲覧できることも明らかである。そうすると,甲1発明1における,第1の患者の体温や脈拍などを記録する画面は,本件発明1の「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」のうちの「前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面」に相当し,そして,甲1発明1の,当該画面を病室液晶ナースコール子機2aに送信する手段と,本件発明1の「前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」とは,「前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記患者を識別する情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部」(構成要件F1)で共通する。
カ 一致点及び相違点について
<一致点>
患者を識別するための第1患者識別情報を端末装置より取得する第1取得部と,
前記第1患者識別情報と,患者を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致するか否かを判定する第1判定部と,
前記第1判定部が一致すると判定した場合,患者を識別する情報に対応する患者の医療情報を,前記端末装置へ出力する第1出力部と,
看護師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する第2取得部と,
前記第1医師等識別情報と,看護師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判定部と,
前記第2判定部が一致すると判定した場合,前記患者を識別する情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する第2出力部と,
を備える情報処理装置。
<相違点1-1>
患者の医療情報に対応させられる患者を識別する情報が,本件発明1は,「第2患者識別情報」であり,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師が必要とする医療情報を含む表示画面を,前記端末装置へ出力する」のに対し,甲1発明1は,第1の患者のバーコードデータであるか定かではなく,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面に含まれる第1の患者の体温や脈拍などの患者情報が第1の患者のバーコードデータに対応しているか定かではない点。
<相違点1-2>
本件発明1は,第2取得部が看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を端末装置から取得する条件が,「前記第1判定部で一致すると判定された場合」であり,このような条件に基づき取得された第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定し,一致すると判定した場合,第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち看護師が必要とする医療情報を含む表示画面を,端末装置へ出力するのに対し,甲1発明1では,看護師が担持するバーコードをパスワードとして読み取る条件が,「前記第1判定部で一致すると判定された場合」であるか定かではない点。
(2)判断
ア 相違点1-1について
甲1発明1は,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号を,この一致信号が前述の第1のバーコードデータと逆の経路を経由して病室液晶ナースコール子機2aへ伝送し,第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの第1の患者情報を伝送するものである。
このように,甲1発明1における一致の判定は,第1の患者を特定する第1のバーコードデータと,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に記憶されている第1の患者のバーコードデータを用いて行われる点で,第1の患者のバーコードデータが「真」の値である。そして,「真」の値である第1の患者のバーコードデータで第1の患者情報を特定できるようにすることは技術常識である。そうすると,甲1発明1において,第1の患者情報に対応する患者を識別する情報を,第1の患者のバーコードデータとすること,そして,これにより,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面に含まれる第1の患者の体温や脈拍などの患者情報を第1の患者のバーコードデータに対応させることで,上記相違点1-1の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。
イ 相違点1-2について
(ア)バーコードの読取り順序について
甲1発明1は,「付加機能として,看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合においては,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして読取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録し,第1の患者に係る記録データをナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができ」るものである。
そうすると,甲1発明1の病室液晶ナースコール子機2aにおける「バーコードの読取り」の順番は,まず「第1の患者が担持するバーコード」が読み取られ,次に「看護師が担持するバーコード」が読み取られるものである。
(イ)第1の患者が担持するバーコードの読取り後の処理について
甲1発明1は,「第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号を,この一致信号が前述の第1のバーコードデータと逆の経路を経由して病室液晶ナースコール子機2aへ伝送」されるものである。
そして,その後の動作を説明する甲第1号証【0026】には,「ナースコール用パーソナルコンピュータ7において,患者情報が照合され,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号(以下「一致信号」という。)が出力され,この一致信号が前述の第1のバーコードデータと逆の経路を経由して第1の病室液晶ナースコール子機2aへ伝送される。これにより,第1の液晶ナースコール子機2aの表示部に,図2に示すような画面が現れるとともに,当該画面の患者チェック欄21に両者のバーコードデータが一致した旨を表わすチェックマークが付される。従って,このような構成のナースコール装置によれば,当該バーコードを担持する患者が第1の患者,すなわち,病室A内の第1のベッドに係る患者であることを確認することができる。」として,第1のベッドに係る患者であることが確認できるように,第1の液晶ナースコール子機2aの表示部に,甲第1号証の図2に示すような,患者名を含む,患者チェック欄21に両者のバーコードデータが一致した旨を表わすチェックマークが付された画面が現れるようにする構成が記載されている。
(ウ)上記(ア)と(イ)の関係について
甲第1号証の記載全体から見て,上記(イ)は,発明の全体構成を説明するものとして記載されているのに対し,上記(ア)は,上記全体構成を記載した後の「次に,本発明のナースコール装置の付加機能について説明する。」(【0030】)との記載のさらに後に記載されている【0031】に関するものであるから,上記(ア)は,上記(イ)の全体構成に対して付加した構成といえる。
すなわち,甲1発明1は,上記(イ)の全体構成としての,「第1の患者が担持するバーコードを読み取った後,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号を,この一致信号が前述の第1のバーコードデータと逆の経路を経由して病室液晶ナースコール子機2aへ伝送し,第1の液晶ナースコール子機2aの表示部に,甲第1号証の図2に示すような,患者名を含む,患者チェック欄21に両者のバーコードデータが一致した旨を表わすチェックマークが付された画面を表示する」という構成に加えて,上記aの「第1の患者が担持するバーコードを読み取った後,看護師が担持するバーコードを読み取り,看護師の識別を行う」との付加機能をともに有していると捉えることができる。
(エ)全体構成と付加機能をともに有する構成について
ここで,付加機能において,第1の患者の体温や脈拍などを記録するときに,患者を取り違えることは医療過誤につながる恐れがあることは当業者に自明の事項であり,患者が担持するバーコードを第1の病室液晶ナースコール子機2aの病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることは,患者の取り違えという医療過誤を防止するために行われるものであるといえるから,甲1発明1の「病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして読取る」ことを,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読み取ることで,患者を確認する画面を表示させて,患者の取り違えがないことを確認した後に,看護師が担持するバーコード(第1医師等識別情報)をパスワードとして読み取る,すなわち,看護師が担持するバーコード(第1医師等識別情報)をパスワードとして読み取るための条件を,「前記第1判定部が一致すると判定した場合」とすることは,当業者が容易になし得た事項であり,このとき,このような条件に基づいて取得された第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定し,一致すると判定した場合,第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち看護師が必要とする医療情報を含む表示画面を,端末装置へ出力する構成とすることも,当業者が容易になし得た事項である。
ウ 本件発明1の「第1医師等識別情報」について
本件発明1の「第1医師等識別情報」は,「看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報」であって,「看護師または医師」とあることから,どちらか一方を識別する識別情報であればよい。また,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」も同様に,「前記看護師または前記医師」とあることから,どちらか一方の表示画面であればよい。そのため,第1医師等識別情報が医師を識別するための識別情報である点,及び,医師が必要とする医療情報を含む表示画面の点は相違点ではないが,相違点であるとして,念のため検討をする。
甲1発明1において,「バーコードは,病室内の患者や看護師および医師などの院内関係者が担持する,それぞれ自己を特定する専用のバーコード」であり,医師についても専用のバーコードを所持することは明らかである。病室において入院患者に対して医師が診察をすることは一般的に行われるものであって,カルテ情報へのアクセス等について,看護師よりも多くの権限が付与されることが一般的である。
よって,甲1発明1において,看護師に加え医師も第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録できるようにすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎず,このとき,医師が必要とする医療情報を含む表示画面が表示されることは当然の事項である。
エ 効果について
上記相違点1-1及び相違点1-2により奏する,患者の取り違えにより患者に危害が及ぶことを防止する(セキュリティの向上)との効果は,当業者の予測し得る範囲内の事項にすぎない。
(3)被請求人の主張について
ア 本件発明の5つのステップについて
被請求人は,患者の状態情報を,患者の取り違えが起こらないように受け付けるため,「第1患者識別情報の取得」→「第1患者識別情報の判定」→「患者の医療情報の出力」→「第1医師等識別情報の取得」→「第1医師等識別情報の判定」という5つものステップを経て,「前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」を出力することを特徴とすること,本件発明1により,患者識別情報から直接に正確な医療情報を引き出すため,従来行われていた医療スタッフの目視による確認の必要がなく,かつ,患者の取り違えによる事故を確実に防止することができる旨主張する。
しかしながら,本件発明1は,上述のとおり,甲1発明1から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,甲1発明1において,5つのステップを実行する構成とすることに格別の困難性は見いだせず,その奏する効果も当業者の予測し得る範囲内であり,本件発明1のいずれの構成要件も,従来行われていた医療スタッフの目視による確認の必要がないことに関係するものとはいえず,被請求人の主張を採用することはできない。
イ 甲第1号証【0031】について
被請求人は,甲第1号証【0031】は,文言どおり,患者バーコードを読み取った後に連続的に看護師バーコードの読取を行うと解釈すべきであり,患者バーコード及び看護師バーコード(パスワード)を続けて読み取ることで病室液晶ナースコール子機1aからナースコール用PCにログインして,患者用カルテを表示させることを意味しており,患者バーコードの一致を条件として看護師バーコードの読取りを行っているわけではない旨主張する。
この主張について検討するに,甲第1号証【0031】の「第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取る」とは,文言上,第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取った後に,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることを意味するものであり,「更に」は,第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることと,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることの順番を特定する程度の意味を有するのみである。
そして,このように解釈をして行った,上記(2)における相違点1-2の判断のとおり,看護師が担持するバーコード(第1医師等識別情報)をパスワードとして読み取るための条件を,「前記第1判定部で一致すると判定された場合」とすることは,当業者が容易になし得た事項であるから,被請求人の主張を採用することはできない。
ウ 付加機能が別実施例であるとの主張について
被請求人は,甲第1号証【0031】~【0036】の「第1」から「第5」で説明される機能は,同【0029】までに説明されている「ナースコール装置」とはそれぞれ独立した別の機能である旨主張する。
以下,被請求人の主張について検討をする。
(ア)実施例について
甲第1号証の記載では,まず,【0019】~【0029】において,ナースコール装置のシステム構成,病室液晶ナースコール子機2aの構成,ナースコール用パーソナルコンピュータ7の構成,ナースコール装置の動作などについての記載があり,特に,第1の病室子機用バーコードリーダ1aから第1のバーコードデータをナースコール用パーソナルコンピュータ7へ伝送し,ナースコール用パーソナルコンピュータ7において,患者情報が照合され,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致するとき,第1の患者情報が,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から第1の液晶ナースコール子機2aへ伝送され,第1の液晶ナースコール子機2aの表示部に表示されることで,第1のベッドサイドにおいて第1の患者情報を閲覧することで,患者を確認することができる具体的な構成が開示されている。(上記【0019】~【0029】に係る実施例の構成を,以下「具体例」という。)
これに対して,【0030】及び【0031】には「次に,本発明のナースコール装置の付加機能について説明する。」(【0030】)
「第1に,看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合においては,当該看護師は病室液晶ナースコール子機2aを用いて患者に関する所定の記録データをナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができる。すなわち,第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機1aを使用することができる。これにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部(不図示)などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができ,ひいては,第1の患者に係る記録データを前述の第1のバーコードデータと同様の経路を経由してナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送することができる。」(【0031】。なお,「第1の病室液晶ナースコール子機1a」は,「第1の病室液晶ナースコール子機2a」の誤記であることは明らかである。)
との記載があるのみであって,対応する図面もない。
すなわち,「看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合(以下,「第1の場合」という)」についての具体的な構成は,当該記載しかなく,仮に,具体例と第1の場合とが,それぞれ,独立した実施例とした場合,第1の場合についての説明が簡略すぎて,不自然である。
一方,具体例と第1の場合の関係が,第1の場合は具体例を前提とした上で,さらに,第1の場合の構成を付加したものとすれば,両者共に「病室液晶ナースコール子機2a」,「ナースコール用バーソナルコンピュータ7」,「第1の病室子機用バーコードリーダ1a」を備え,また,動作も「第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取」ることを前提として,病室液晶ナースコール子機を利用可能とすることが共通していることから自然である。
さらに,甲第1号証の特許請求の範囲には以下のとおりの記載がある。
「【請求項1】
病室などに設置された液晶ナースコール子機(2a,2b)の患者からの呼出に応じて,廊下に設置された集合廊下灯(3a,3b,3c,…),病院内に設置されたナースコール制御機(4)を介してナースステーションなどに設置されたナースコール親機(5)に呼出を報知/表示させ,前記ナースステーション内に設置されたナースコール用パーソナルコンピュータ(7)に予め記憶されている患者情報を報知/表示させるナースコール装置において,
前記液晶ナースコール子機は,前記患者情報と照合し前記患者の確認をするため前記患者によって担持され前記患者を特定するバーコードを読取る子機用バーコードリーダ(1a,b)を備えたことを特徴とするナースコール装置。」
「【請求項3】
前記患者によって担持され前記患者を特定するバーコードを前記子機用バーコードリーダで読取り,更に看護師によって担持され前記看護師を特定するバーコードをパスワードとして前記子機用バーコードリーダで読取ることにより前記液晶ナースコール子機で患者の体温,脈拍などの患者の状態を記録し,前記ナースコール用パーソナルコンピュータに転送することを特徴とする請求項1記載のナースコール装置。」
以上の記載をみると,請求項1は,上記具体例の構成を特定しており,請求項3は第1の場合の構成を特定していると捉えることができる。
上記請求項の特定事項をみれば,第1の場合を実施する際には具体例の構成を前提としていることは明白である。
被請求人は,実施例として,例えばフローチャートなどで,具体例の構成と第1の場合の構成とが組み合わされた事項が記載されていないから,甲第1号証の記載から,具体例の構成と第1の場合の構成とが組み合わされた事項まで開示がないとも主張しているが,上述したように,両者共に「『病室液晶ナースコール子機』,『ナースコール用パーソナルコンピュータ』,『第1の病室子機用バーコードリーダ』を備え,また,動作も『第1の患者が担持するバーコードを第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読取』ることを前提として,病室液晶ナースコール子機を利用可能とすることが共通している」のであるから,当該共通する構成に,さらに,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aを使用可能とし,第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部(不図示)などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録可能とする構成を付加することは,甲第1号証の記載からみて当業者が普通に想定できたことであるといえる。
(ウ)看護師の業務について
上記具体例の構成は,看護師などが第1のベッドサイドにおいて第1の患者情報を閲覧する際に患者を確認することができるようにするためのものであり,第1の場合は,看護師が第1の患者の体温や脈拍などを記録する際に,患者及び看護師を確認するためのものであるといえる。
そして,看護師が,上記患者情報を閲覧することや患者の体温や脈拍などを記録することは共に日常的に生じる業務であり,これらは,シームレスに行われることが望ましいことは普通に知られているから,上記具体例の構成と第1の場合の構成とは共に組み合わせて利用されることを前提としていると考えることが自然である。
(エ)以上のとおりであるから,甲第1号証には,【0019】~【0029】に記載された具体例を説明する実施例と,【0031】~【0036】において,具体例に対して,それぞれ追加的に付加することのできる「第1」から「第5」の付加機能についての実施例が記載されているといえる。そして,甲1発明1及び甲1発明2は,このうち,具体例に対して「第1」の付加機能を追加した実施例に基づき認定したものである。
(オ)よって,具体例についての実施例と,付加機能に関する実施例が,それぞれ独立した別の実施例であるとの主張を採用することはできない。
(4)小括
以上によれば,本件発明1は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2 理由2について
理由2は,本件発明2に対する無効理由であって,本件発明2は本件発明1を引用する発明であり,本件発明1の「第1出力部」を「前記第1出力部は,前記第1判定部が一致すると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者に対する処置の予定情報を,前記端末装置へ出力する」と,更に限定するものである。
そこで,本件発明2と甲1発明1とを対比すると,上記1(1)の対比に加え,甲1発明1の「治療計画」は,本件発明2の「前記第2患者識別情報に対応する患者に対する処置の予定情報」に相当するものである。
そうすると,相違点は,上記1(1)カのとおりであり,当該相違点は,上記1(2)で検討したとおり,当業者が容易になし得た事項である。
よって,本件発明2は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 理由3について
(1)対比
理由3は,本件発明3に対する無効理由であって,本件発明3は本件発明2を引用する発明であり,本件発明2の「第1出力部」を「前記第1出力部は,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報および予定情報から生成された,前記患者に対する処置の経過および予定の少なくともいずれかを時系列に示すクリニカルパス画面を,さらに前記端末装置へ出力する」と,更に限定するものである。
そこで,本件発明3と甲1発明1とを対比すると,上記1(1)カ及び上記2の一致点並びに相違点1-1及び相違点1-2に加えて,さらに,次の点で相違する。
<相違点3-1>
本件発明3は,第1出力部が,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報および予定情報から生成された,前記患者に対する処置の経過および予定の少なくともいずれかを時系列に示すクリニカルパス画面を,さらに前記端末装置へ出力する」のに対し,甲1発明1は,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画及び食事制限などの第1の患者情報から,患者に対する処置の経過および予定の少なくともいずれかを時系列に示すクリニカルパス画面を,さらに病室液晶ナースコール子機2aへ出力することは,不明である点。
(2)判断
ア 相違点1-1及び相違点1-2について
上記1(1)カの相違点1-1及び相違点1-2は,上記1(2)で検討したとおり,当業者が容易になし得た事項である。
イ 相違点3-1について
患者に対して日単位で医療関係者が行う医療行為の予定・計画や実施記録などを表現する「クリニカルパス」は,甲第22号証記載事項のとおり,本件特許出願(遡及日)前に,医療現場において広く用いられており,上記甲第17号証記載事項及び甲第19号証記載事項にあるとおり,医療従事者が端末に表示される「クリニカルパス」を参照できることは周知技術である。
そして,甲1発明1と,上記周知技術は,患者の治療計画に関する情報を看護師等に閲覧可能にする点で機能を共通にするものであるから,甲1発明1に当該周知技術を適用して,甲1発明1のナースコール用パーソナルコンピュータ7が,治療計画等の第1の患者情報を,病室液晶ナースコール子機2aに送出する構成を,治療計画に基づき生成されたクリニカルパスを病室液晶ナースコール子機2aに送出する構成とすることで,上記相違点3-1の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。
(3)小括
よって,本件発明3は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第17号証及び甲第19号証に記載された周知技術に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
4 理由4について
(1)対比
理由4は,本件発明4に対する無効理由であって,本件発明4は本件発明1乃至3のいずれか1項を引用する発明であり,本件発明1の「第2出力部」を「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が看護師を識別する看護師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面を,前記端末装置へ出力する」と,更に限定するものである。
そこで,本件発明4と甲1発明1とを対比すると,上記1(1)の対比,上記2の対比及び3の対比に加え,次のとおりである。
本件特許明細書には次の記載がある。
「【0091】
本実施形態における情報処理システムを説明する。CPU31が患者用画面5を表示部35に表示した後,看護師が自身のリストバンドに記載されたバーコードを撮像部37で撮像する。CPU31は撮像部37で撮像されたバーコードを取得する。CPU31はバーコードを看護師ID「N0001」に変換する。CPU31は看護師ID「N0001」を通信部36から医療用サーバ2へ出力する。
【0092】【0093】(省略)
【0094】
CPU11は看護師専用画面9を生成する。CPU11は看護師専用画面9を通信部16から端末装置3へ出力する。CPU31は看護師専用画面9を通信部36で情報処理装置1から取得する。CPU31は看護師専用画面9を表示部35に表示する。
【0095】
図20は看護師専用画面9を説明する説明図である。看護師専用画面9は左部に設けられた看護支援記録ボタン91と,看護支援記録ボタン91の右上部に設けられたバイタルボタン92と,バイタルボタン92の右部に設けられた切り替えボタン93とを備える。
【0096】
看護支援記録ボタン91は患者のバイタルの変化を表示するための看護支援記録画面(変化画面)110を表示するためのボタンである。看護支援記録画面110は電子カルテ421を表示する場合に,一般的に用いられる画面である。看護師は看護支援記録画面110を用いることで見慣れた画面で作業をすることができるため,作業効率を上げることができる。バイタルボタン92は患者のバイタルを入力するためのバイタル画面(入力画面)10を表示するためのボタンである。切り替えボタン93はリハビリ,与薬,検査,手術及び処置ボタンを備える。」
本件特許明細書の「バイタル」は「患者の状態を表す情報」であり,「例えば,体温,呼吸数,最高血圧,最低血圧,脈拍数又は動脈内の酸素濃度等」であって,本件発明1の「患者の状態に関する状態情報」に対応するものであり,本件特許明細書の「看護師専用画面9」は,本件発明1の「前記患者の状態に関する状態情報の入力を受け付けるための入力画面」に対応するものである。
このことから,甲1発明1の「第1の患者の体温や脈拍」は,本件発明4の「患者の状態に関する状態情報」に相当する。
そうすると,本件発明4と甲1発明1とは,上記相違点1-1,相違点1-2及び相違点3-1に加え,さらに次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件発明4は,第2出力部が,「前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が看護師を識別する看護師識別情報であると判定した場合」,第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の「履歴である看護支援記録を含む看護師用画面」を,前記端末装置へ出力するのに対し,甲1発明1は,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読み取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして読み取ることで,看護師による第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面を,病室液晶ナースコール子機2aを表示するために,ナースコール用パーソナルコンピュータ7が当該画面を送信する点。
(2)判断
ア 相違点1-1,相違点1-2及び相違点3-1について
上記1(1)カの相違点1-1及び相違点1-2については,上記1(2)で検討したとおりであり,上記3(1)の相違点3-1については,上記3(2)イで検討したとおり,当業者が容易になし得た事項である。
イ 相違点4-1について
(ア)本件特許明細書には次の記載がある。
「【0107】
看護支援記録画面110の動作は以下の通りである。看護師が患者ID欄170の患者ID「001」を入力部34でタッチした場合,CPU31はバイタルグラフ120,体温欄130,脈拍数欄140,最高血圧欄150,最低血圧欄160および患者ID欄170を患者ID「001」に対応する看護支援記録画面110に切り替える。看護師が医療年月日欄180の医療年月日を入力部34で「2015年8月20日」に切り替えた場合,CPU31は「2015年8月20日」に対応する看護支援記録画面110に切り替える。CPU41は本日,電子カルテ421内に記憶されたバイタルに基づいて看護支援記録画面110を生成する。また,看護師が医療年月日「2015年8月18日」に切り替えた場合,CPU31は「2015年8月18日」に対応する看護支援記録画面110に切り替える。CPU41は過去に電子カルテ421内に記憶されたバイタルに基づいて看護支援記録画面110を生成する。このように,CPU31が医療年月日欄180の表示を切り替えることでCPU41は現在および過去に記録したバイタルの看護支援記録画面110を生成することができる。またCPU41はバイタル画面10で入力されたバイタルだけでなく,あらかじめ診察時等に電子カルテ421内に記録されたバイタルに基づいて看護支援記録画面110を生成してもよい。
【0108】
患者ID「001」に対応する看護支援記録画面110の生成方法は以下の通りである。CPU41はバイタルDB226を通信部46で医療用サーバ2から取得する。CPU41は取得したバイタルDB226に基づいて電子カルテ421を更新する。CPU41は電子カルテ421に記憶されたバイタルを参照し,体温欄130,脈拍数欄140,最高血圧欄150,最低血圧欄160および患者ID欄170に体温,脈拍数,最高血圧,最低血圧および患者IDを生成する。CPU11は体温,脈拍数,最高血圧および最低血圧の時系列のグラフをバイタルグラフ120に生成する。」
本件特許明細書の上記記載によれば,本件特許明細書の「現在又は過去に記録したバイタル」は,本件発明4の「状態情報の履歴」に対応する。
(イ)また,上記(1)で摘記した本件特許明細書【0091】~【0096】の記載によれば,本件特許明細書の「看護支援記録ボタン91」により表示される「患者のバイタルの変化を表示するための看護支援記録画面(変化画面)110」は,本件発明4の「看護師用画面」に対応する。
(ウ)一方,甲1発明1は,「看護師が担持するバーコードをパスワードとして利用する場合においては,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして読取ることにより,看護師が第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録」することができるものであって,第1の患者の体温や脈拍などは,患者用カルテに記録されることは技術常識である。そして,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができる状態において,患者用カルテを閲覧でき,現在及び過去に記録した体温や脈拍を含む画面があることも技術常識であるから,甲1発明1の当該画面は,本件発明4の「第2患者識別情報に対応する患者の状態に関する状態情報の履歴である看護支援記録を含む看護師用画面」に相当するものである。さらに,上記1(1)オ(オ)でみたとおり,甲1発明1は,ナースコール用パーソナルコンピュータ7が第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面を送信する手段を有していることは明らかである。そして,甲1発明1の当該画面を送信する手段が,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができる状態において,さらに,患者用カルテを閲覧でき,現在及び過去に記録した体温や脈拍を表示することのできる画面を送信する機能を備えさせることは当業者が適宜なし得た事項である。
そうすると,甲1発明1において,ナースコール用パーソナルコンピュータ7の第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面病室液晶ナースコール子機2aに送信する手段が,患者用カルテを閲覧でき,現在及び過去に記録した体温や脈拍を表示することのできる画面を,病室液晶ナースコール子機2aに送信する構成とすることで,上記相違点4-1の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎない。
(3)小括
よって,本件発明4は,本件特許出願(遡及日)前に公開された甲第1号証に記載された発明並びに甲第17号証及び甲第19号証に記載された周知技術に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
5 理由5について
(1)対比
理由5は,本件発明5に対する無効理由であって,本件発明5は本件発明1乃至3のいずれか1項を引用する発明であり,本件発明1の「第2出力部」を,「前記第2出力部は,前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が医師を識別する医師識別情報であると判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む医師用画面を,前記端末装置へ出力する」と,更に限定するものである。
そこで,本件発明5と甲1発明1とを対比すると,上記1(1)の対比,上記2の対比及び3の対比に加え,さらに,次の点で相違する。
<相違点5-1>
本件発明5は,第2出力部が,「前記第2判定部が前記第1医師等識別情報が医師を識別する医師識別情報であると判定した場合」に,「前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む医師用画面」を,端末装置へ出力するのに対し,甲1発明1は,病室液晶ナースコール子機2aにおいて,第1の患者が担持するバーコードを読み取り,更に看護師が担持するバーコードをパスワードとして読み取ることで,看護師による第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面を,病室液晶ナースコール子機2aを表示するために,ナースコール用パーソナルコンピュータ7が当該画面を送信するものであって,「前記第2患者識別情報に対応する患者を撮像した検査画像を含む医師用画面」を送信するか定かではない点。
(2)判断
ア 相違点1-1,相違点1-2及び相違点3-1について
上記1(1)カの相違点1-1及び相違点1-2については,上記1(2)で検討したとおりであり,上記3(1)の相違点3-1については,上記3(2)イで検討したとおり,当業者が容易になし得た事項である。
イ 相違点5-1について
上記1(2)ウで検討したとおり,甲1発明1において,看護師に加え医師も第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録できるようにすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎず,このとき,医師が必要とする医療情報を含む表示画面が表示されることは当然の事項である。そして,医師は,患者を診察するに当たり,患者を撮像した検査画像を閲覧することも一般的に行われている事項である。
そうすると,甲1発明1において,ナースコール用パーソナルコンピュータ7の第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面病室液晶ナースコール子機2aに送信する手段が,医師が担持するバーコードをパスワードとして読み取ることで,医師が閲覧可能な患者を撮像した検査画像を,病室液晶ナースコール子機2aに送信する構成とすることによって,上記相違点5-1の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎない。
(3)小括
よって,本件発明5は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明並びに甲第17号証及び甲第19号証に記載された周知技術に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
6 理由6及び理由7について
理由6は,本件発明6に対する無効理由であって,情報処理方法の発明である本件発明6は,情報処理装置の発明である本件発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。
また,理由7は,本件発明7に対する無効理由であって,情報処理プログラムの発明である本件発明7は,情報処理装置の発明である本件発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。
そして,甲第1号証に記載された甲1発明1としては,ナースコール用パーソナルコンピュータ7という物の発明だけではなく,方法の発明及びプログラムの発明としても認定することができる。
このようにして認定した甲第1号証に記載された方法及びプログラムの発明と,本件発明6及び7の一致点及び相違点は,実質的に上記1(1)カのとおりであるから,上記1(2)のとおり,本件発明6及び7は進歩性を有しない(理由6,理由7)。
よって,本件発明6及び7は,本件特許出願(遡及日)前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
7 理由8について
(1)本件発明8と甲1発明2との対比
ア 構成要件T8について
甲1発明2の「病室液晶ナースコール子機2a」は,後述する相違点は別にして,本件発明8の「端末装置」に相当する。
イ 構成要件N8,O8について
甲1発明2の「病室液晶ナースコール子機2a」は,「第1の患者が担持するバーコードをベッドに係る病室子機用バーコードリーダ1aで読取ると,病室子機用バーコードリーダ1aから第1の患者を特定する第1のバーコードデータをナースコール用パーソナルコンピュータ7へ伝送」する機能を有するものであって,甲1発明2の「第1の患者」,「第1の患者が担持するバーコードデータ」及び「ナースコール用パーソナルコンピュータ7」は,それぞれ,本件発明8の「患者」,「患者を識別するための第1患者識別情報」,「情報処理装置」に相当し,甲1発明2の「第1の患者が担持するバーコード」を読み取る「病室子機用バーコードリーダ1a」は,本件発明8の「患者を識別するための第1患者識別情報を取得する第1取得部」(構成要件N8)に相当し,甲1発明2の病室液晶ナースコール子機2aは,「病室子機用バーコードリーダ1aから第1の患者を特定する第1のバーコードデータをナースコール用パーソナルコンピュータ7へ伝送する機能」を有することから,第1のバーコードデータを送信する手段を備えていることは明らかであり,この送信する手段は,本件発明8の「前記第1取得部で取得した前記第1患者識別情報を情報処理装置に送信する第1送信部」(構成要件O8)に相当する。
ウ 構成要件P8について
本件発明8の「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する」ことは,「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合」に,何らかの処理を挟まずに,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する」ものであっても,何らかの処理を挟んで「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する」ものであってもよいことは明らかである。
一方,甲1発明2の「病室液晶ナースコール子機2a」は,「第1の患者が担持するバーコードをベッドに係る病室子機用バーコードリーダ1aで読取ると,病室子機用バーコードリーダ1aから第1の患者を特定する第1のバーコードデータをナースコール用パーソナルコンピュータ7へ伝送し」,「ナースコール用パーソナルコンピュータ7で第1の患者のバーコードデータ」と「照合」するものであるから,甲1発明2のナースコール用パーソナルコンピュータ7は,第1の患者のバーコードデータを予め記憶しておく必要があり,さらに,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータとを照合する手段を備えていることも明らかである。そうすると,甲1発明2の第1の患者のバーコードデータは,本件発明8の「あらかじめ記憶された第2患者識別情報」に相当し,甲1発明2の,「ナースコール用パーソナルコンピュータ7で患者情報が照合され,第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると」,との処理は,本件発明8の「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合」に相当する。
さらに甲1発明2の病室液晶ナースコール子機2aは,「ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号を受信し,表示部に表れる画面の患者チェック欄21に両者のバーコードデータが一致した旨を表わすチェックマークが付され,第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,表示部に,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの第1の患者情報が表示され」る機能を有しているところ,「第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの第1の患者情報」は,本件発明8の「患者の医療情報」に相当し,甲1発明2において,第1の患者情報は,「ナースコール用パーソナルコンピュータ7で患者情報」が,「第1のバーコードデータと第1の患者のバーコードデータが一致すると」とされた後,看護師などが所定の操作を行うと,第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部に表示されることから,甲1発明2の「表示部」と,本件発明8の「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する第1表示部」とは,第1の患者情報が第1のバーコードデータに対応しているか定かではない点で相違するものの,「前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,患者を識別する情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する第1表示部」で共通する。
エ 構成要件Q8について
甲1発明2の,病室液晶ナースコール子機2aの,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取る機能における看護師が担持するバーコードは,自己を特定する専用のバーコードであることから,このバーコードの読み取りが行われるための条件は別にして,看護師が担持するパスワードとして読み取ったとしてもナースコール用パーソナルコンピュータ7で照合されることにより,当該看護師を特定することができるものである。このため,看護師が担持するバーコードは,当該バーコードを担持する看護師を特定する識別情報として機能することは明らかである。
そして,甲1発明2は,看護師が担持するバーコードをパスワードとして読取りを経ることで,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができる点で,甲1発明2の「看護師が担持するバーコード」は,本件発明8の「看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報」のうちの「看護師」「を識別するための第1医師等識別情報」に相当する。
そうすると,甲1発明2の「看護師が担持するバーコードをパスワード」として読み取る「第1の病室子機用バーコードリーダ1a」は,本件発明8の「看護師」「を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得部」に相当する。
オ 構成要件R8について
また,上記ウのとおり,甲1発明2において,ナースコール用パーソナルコンピュータ7が患者情報を照合することから,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることにより行われる看護師の照合は,ナースコール用パーソナルコンピュータ7で行われることは技術常識であり,このとき,病室液晶ナースコール子機2aは,読み取られた看護師が担持するバーコードを,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に送信する手段を有することも明らかである。そうすると,甲1発明2の当該送信する手段は,本件発明8の「前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部」に相当する。
カ 構成要件S8について
(ア)甲1発明2において,第1の患者の体温や脈拍などを記録し,記録データをナースコール用パーソナルコンピュータ7に転送するためには,ナースコール用パーソナルコンピュータ7へのアクセス許可のための照合が行われることは技術常識であり,そのために,ナースコール用パーソナルコンピュータ7は,病室液晶ナースコール子機2aから取得した看護師が担持するバーコードが正しいか否かを判定するために照らし合わせる,看護師が担持するバーコードに対応する元となる情報を,照合よりも前に記憶する必要があるから,甲1発明2の,この判定するために照らし合わせる元となる看護師が担持するバーコードは,本件発明8の「看護師」「を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2医師等識別情報」に相当する。
(イ)また,甲1発明2は,看護師が担持するバーコードをパスワードとして読み取ることにより,看護師は第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録することができることから,看護師が担持するバーコード(第1医師等識別情報)が一致すると判定した場合に,看護師による第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面が,病室液晶ナースコール子機2aで表示されることは明らかであり,そうすると,甲1発明2における,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面と,本件発明8の「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師または前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面」のうちの,「前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面」とは,「前記患者を識別する情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面」で共通する。
(ウ)上記(イ)の甲1発明2における,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面は,上記(ア)のナースコール用パーソナルコンピュータ7の判定処理において,病室液晶ナースコール子機2aから取得した看護師が担持するバーコードが正しいとした場合に,病室液晶ナースコール子機2aに表示されるものであって,病室液晶ナースコール子機2aが当該画面を表示する手段を備えることは明らかであるから,甲1発明2の当該表示する手段と,本件発明8の「前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部」とは,「前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者を識別する情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部」で共通する。
キ 一致点及び相違点について
<一致点>
患者を識別するための第1患者識別情報を取得する第1取得部と,
前記第1取得部で取得した前記第1患者識別情報を情報処理装置に送信する第1送信部と,
前記第1患者識別情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,患者を識別する情報に対応する患者の医療情報を前記情報処理装置から受信し,表示する第1表示部と,
看護師を識別するための第1医師等識別情報を取得する第2取得部と,
前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報を前記情報処理装置に送信する第2送信部と,
前記第2取得部で取得した前記第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致すると前記情報処理装置が判定した場合,前記患者を識別する情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する第2表示部と,
を備える端末装置
<相違点8-1>
患者の医療情報に対応する患者を識別する情報が,本件発明8は,「第2患者識別情報」であり,「前記患者を識別する情報に対応する患者の医療情報のうち前記看護師」「が必要とする医療情報を含む表示画面を前記情報処理装置から受信し,表示する」のに対し,甲1発明2は,第1の患者のバーコードデータであることが定かではなく,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面に含まれる第1の患者の体温や脈拍などの患者情報が第1の患者のバーコードデータに対応しているか定かではない点。
<相違点8-2>
本件発明8は,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報を前記端末装置から取得する条件が,「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合」であり,このようにして取得された第1医師等識別情報を,情報処理装置に送信し,この第1医師等識別情報とあらかじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定し,一致すると判定した場合,第2患者識別情報に対応する患者の医療情報のうち看護師が必要とする医療情報を含む表示画面を,端末装置へ出力するのに対し,甲1発明2は,看護師が担持するバーコードをパスワードとして読み取る条件が,「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合」か定かではない点。
(2)判断
ア 相違点8-1について
甲1発明2は,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致すると,ナースコール用パーソナルコンピュータ7から両者のバーコードデータが一致した旨の信号を,この一致信号が前述の第1のバーコードデータと逆の経路を経由して病室液晶ナースコール子機2aへ伝送し,第1の病室液晶ナースコール子機2aの表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,第1の患者に係る患者用カルテ,治療計画および食事制限などの第1の患者情報を伝送するものである。
このように,甲1発明2における一致の判定は,第1の患者を特定する第1のバーコードデータと,ナースコール用パーソナルコンピュータ7に記憶されている第1の患者のバーコードデータを用いて行われる点で,第1の患者のバーコードデータが「真」の値である。そして,「真」の値である第1の患者のバーコードデータで第1の患者情報を特定できるようにすることは技術常識である。そうすると,甲1発明2において,第1の患者情報に対応する患者を識別する情報を,第1の患者のバーコードデータとすること,そして,これにより,第1の患者の体温や脈拍などが記録できる画面に含まれる第1の患者の体温や脈拍などの患者情報を第1の患者のバーコードデータに対応させることで,上記相違点8-1の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。
イ 相違点8-2について
(ア)本件発明8の構成要件Q8の「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合」の「患者の医療情報」について
本件特許明細書【0030】は,「患者の医療情報」について,次のように説明する。
「【0030】
図3は医療情報DB221に格納されているデータの一例を示す図である。医療情報DB221は医療情報等を記憶するデータベースである。医療情報とは例えば,後述するリハビリ情報,薬情報,検査情報,手術情報,処置情報,注意メッセージ,ピクトグラム,栄養指導及びバイタル等である。なお,医療情報とはこれらに限られず,医療に関する情報であれば含まれるものとする。医療情報DB221は患者ID列,リハビリ情報列,薬情報列,検査情報列,手術情報列,処置情報列,注意メッセージ列及びピクトグラム列等を備える。患者ID列には患者を識別するための患者IDが記憶される。リハビリ情報列には患者IDに対応づけて,リハビリ内容を示すリハビリ情報が記憶される。薬情報列には薬の内容を示す薬情報が記憶される。」
このように,本件特許明細書における具体的な「患者の医療情報」は,リハビリ情報,薬情報,検査情報,手術情報,処置情報,注意メッセージ,ピクトグラム,栄養指導及びバイタル等の医療に関する情報である。
また,上記4(1)で摘記した本件特許明細書【0091】には,「CPU31が患者用画面5を表示部35に表示した後,看護師が自身のリストバンドに記載されたバーコードを撮像部37で撮像する。」と記載されている。すなわち,看護師のバーコードの撮像は,端末装置3の表示部35に患者用画面5が表示された後に行われることが記載されている。
そして,「患者用画面5」は,次の図7に示されるとおり,患者名,「予定」,「注意」等の情報とともに,「リハ」,「投薬」,「検査」,「手術」,「処置」ボタンを含む画面であって,「リハ」,「投薬」,「検査」,「手術」,「処置」ボタンを選択することで,それぞれのボタンに対応する患者の医療情報が表示されるものである。そうすると,本件発明8の構成要件Q8の「前記患者の医療情報が前記第1表示部に表示された場合」の「患者の医療情報」は,リハビリ情報,薬情報,検査情報,手術情報,処置情報,注意メッセージ,ピクトグラム,栄養指導及びバイタル等の医療に関する情報であり,「患者名」とともに画面に表示されるものである。
そして,このような患者用画面5を表示することを条件に,看護師が自身のリストバンドに記載されたバーコードを撮像部37で撮像する構成とすることで,患者の取り違えを防止するものである。
[図:0001391279000003.jpg]
【図7】
(イ)相違点8-2の判断
甲1発明2においても,上記1(2)イ(ア)で検討したとおり,病室液晶ナースコール子機2aにおける「バーコードの読取り」の順番は,まず「第1の患者が担持するバーコード」が読み取られ,次に「看護師が担持するバーコード」が読み取られるものである。そして,「第1の患者が担持するバーコード」が読み取られると,「患者の診療科目,患者の病室番号やベッド番号,患者の氏名,患者チェック欄21および担当医の氏名など」を含む画面(甲第1号証の図2)が表示される。そして,この表示画面は患者の氏名を含むことから,患者の取り違えによる医療過誤の防止につながるものである。
さらに,甲1発明2の画面(甲第1号証の図2)は,「患者用カルテ」,「治療計画」,「食事制限」の表示を含み,表示部の患者チェック欄21にチェックマークが付された状態において,看護師などが所定の操作を行なうと,病室液晶ナースコール子機2aにおいて患者情報を閲覧できることから,操作者がこれらの表示を操作することで,操作に対応する第1の患者情報の「患者用カルテ」,「治療計画」,「食事制限」の具体的な内容を示す情報を表示させることができることは明らかである。
このように,甲1発明2において,患者の氏名を含む表示画面を表示させることで,看護師が,適切な患者であるか否かを目視でき,その後,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることにより,看護師は第1の患者の体温や脈拍などを記録することができるものであり,甲第1号証の図2における「患者用カルテ」,「治療計画」,「食事制限」の表示が第1の患者情報の具体的な内容を示す情報であるといえるか定かではないが,看護師が患者を確認することができる点で,本件発明8と甲1発明2との間に差異はない。
そして,甲1発明2においても,患者の氏名を含む表示画面において,看護師が,「患者用カルテ」,「治療計画」,「食事制限」の表示を操作することで,操作に対応する第1の患者情報の具体的な内容を示す情報を表示させることができるものであるところ,甲1発明2の病室液晶ナースコール子機において,一度患者のバーコードを確認した後に,看護師が,任意の時点で,テンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録可能とすることは普通に想定し得ることであるから,上記操作に対応する第1の患者情報の具体的な内容を示す情報を表示させた状態で,看護師が担持するバーコードをパスワードとして第1の病室子機用バーコードリーダ1aで読み取ることを可能とすることで,上記相違点8-2の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。
(ウ)本件発明8の「第1医師等識別情報」について
本件発明8の「第1医師等識別情報」は,「看護師または医師を識別するための第1医師等識別情報」であって,「看護師または医師」とあることから,どちらか一方を識別する識別情報であればよい。そのため,第1医師等識別情報が医師を識別するための識別情報である点,及び,医師が必要とする医療情報を含む表示画面の点は相違点ではないが,相違点であるとして,念のため検討をするに,実質的に上記1(2)ウのとおりであるから,甲1発明2において,医師も第1の病室液晶ナースコール子機2aのテンキー操作部などの操作により,第1の患者の体温や脈拍などを記録できるようにすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎず,このとき,医師が必要とする医療情報を含む表示画面が表示されることは当然の事項である。
(オ)効果について
上記相違点8-1及び相違点8-2により奏する,患者の取り違えにより患者に危害が及ぶことを防止する(セキュリティの向上)との効果は,当業者の予測し得る範囲内の事項にすぎない。
ウ 被請求人の主張について
本件発明1と同じ主張については,上記1(3)ア及びウのとおりである。また,上記1(3)イに関する主張については,上記相違点8-2の判断のとおりであるから,被請求人の主張を採用することはできない。
(3)小括
よって,本件発明8は,本件特許出願前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
8 理由9及び理由10について
理由9は,本件発明9に対する無効理由であって,端末装置の制御方法の発明である本件発明9は,端末装置の発明である本件発明8とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。
また,理由10は,本件発明10に対する無効理由であって,端末装置の制御プログラムの発明である本件発明10は,端末装置の発明である本件発明8とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。
そして,甲第1号証に記載された甲1発明2としては,病室液晶ナースコール子機2aという物の発明だけではなく,方法の発明及びプログラムの発明としても認定することができる。
このようにして認定した甲第1号証に記載された方法及びプログラム発明と,本件発明9及び10の相違点は,実質的に上記7(1)キのとおりであり,上記7(2)の判断と同様であるから,本件発明9及び10は進歩性を有しない(理由9,理由10)。
よって,本件発明9及び10は,本件特許出願前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて,その発明の属する分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第10 むすび
以上のとおり,請求項1ないし10に係る本件発明1ないし10は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,請求項1ないし10に係る本件特許は,特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-800073