特許異議申立
2020-700739
メタクリレート単位を含有するエラストマーを含むゴム組成物
- 審判番号
- 2020-700739
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-575740
- 登録番号
- 6674912
- 請求日
- 2020年09月28日
- 審決日
- 2023年02月07日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
- 【権利者代理人】須田 洋之
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】市川 さつき
- 【権利者代理人】服部 博信
- 【権利者代理人】松田 七重
- 【異議申立人】登山 恵美子
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 杉江 渉
- 審判官 海老原 えい子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第127条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6674912号発明「メタクリレート単位を含有するエラストマーを含むゴム組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6674912号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔14~22〕について訂正することを認める。
特許第6674912号の請求項14~22に係る特許を維持する。
特許第6674912号の請求項1~8、10~13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許異議申立の経緯
特許第6674912号(請求項の数14。以下、「本件特許」という。)は、平成27年6月25日を国際出願日(優先日:平成26年7月1日、フランス)とする出願(特願2016-575740号)に係るものであって、令和2年3月11日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年4月1日である)。
その後、令和2年9月28日に、本件特許の請求項1~8、10~14に係る特許に対して、特許異議申立人である登山恵美子(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされた。
以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和2年12月24日付け 取消理由通知書
令和3年 4月 5日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 4月19日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年 5月20日 意見書(申立人)
同年 9月29日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年12月22日 上申書(特許権者)
同年12月27日付け 通知書(特許権者宛て)
令和4年 2月 3日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 3月 7日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年 7月 7日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年10月 7日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年11月 1日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
なお、令和3年12月22日提出の上申書は、同年9月29日付け取消理由通知において審判長が指定した期間の延長を求めるものであり、同年12月27日付け通知書において職権により当該期間を90日から120日に延長した。
令和4年10月7日提出の訂正請求書による訂正請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和3年4月5日提出の訂正請求書による訂正請求及び令和4年2月3日提出の訂正請求書による訂正請求は、取り下げられたものとみなされた。
申立人からは、令和4年3月7日付け通知書及び同年11月1日付け通知書に対する意見書は、いずれも提出されなかった。
2.証拠方法
(1)申立人が、特許異議申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2009/099113号
甲第2号証:特開2008-56939号公報
(以下、甲第1号証、甲第2号証を、それぞれ、「甲1」、「甲2」という。)
(2)特許権者が、令和3年4月6日提出の意見書に添付した証拠は、以下のとおりである。
文献1:Seok H. Hong et al., “REVIEW OF PREPARATION AND PROPERTIES OF POLYMERS FROM COPOLYMERIZATION OF APROTIC ACRYLIC MONOMERS WITH PROTIC ACRYLIC MONOMERS”,July 1998, pp. 7-8
(3)申立人が、令和3年5月21日提出の意見書に添付した証拠は、以下のとおりである。
参考資料1:特開2000-80136号公報
参考資料2:特開2015-21051号公報
参考資料3:特開2019-196415号公報
参考資料4:J.Brandrup et al.,Polymer Handbook-4th edition,1999,p.203
(4)当審が職権調査で発見したに技術常識を示す証拠は、以下のとおりである。
引用文献A:「第7章 コポリマーの原料基礎命名法(1985)」, [online],高分子学会,pp.147-164,特にpp.149-150,[令和3年9月9日検索],
インターネット<URL: https://main.spsj.or.jp/c19/nomenclature_koukai.php>及び<URL: https://main.spsj.or.jp/c19/7.pdf>
引用文献B:上垣外 正己・佐藤 浩太郎著,「ラジカル重合」,ネットワークポリマー,Vol.30,No.5,2009,pp.234-249
(5)特許権者が、令和4年2月3日提出の意見書に添付した証拠は、以下のとおりである。
乙第2号証:Rodney J.Andrews, Eric A.Grulke,“Glass Transition Temperatures of Polymers”,Handbook of Polymers,目次,VI/202頁
乙第3号証:Bryan Ellis, Ray Smith,Polymers “A Property Database (2nd Edition),CRC Press,2020,p.767
乙第4号証:“Reference: Polymer Properties”, Polymer Products from Aldrich, p52
乙第5号証:“Emulsion polymerization of butadiene:a kinetic study”,1990.01.01,Eindhoven University of Technology,インターネット<URL: https://doi.org/10.6100/IR332572>
乙第6号証:“Styrene-Butadiene Rubber: A Complete Technical Guide”,インターネット<URL: https://omnexus.specialchem.com/selection-guide/styrene-butadiene-rubber-sbr-guide>
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和4年10月7日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~22について訂正することを求めた(以下、「本件訂正」という。また、設定登録時及び本件訂正後の、本件特許の明細書を、それぞれ「本件訂正前明細書」及び「本件明細書」という。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1~13を削除する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項14の
「請求項13に記載の半製品を含むタイヤ。」
との記載を、
「ゴム組成物であって、
-補強用充填剤、
-架橋系、
-架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスであって、エラストマーマトリックスが、エラストマーAの少なくとも20mol%のモノマー単位を表す第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位を含むエラストマーAを含んでおり、エラストマーAが、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含み、前記モノマー単位は1,3-ジエンである第2のモノマーであり、エラストマーマトリックス中のエラストマーAの含量は、少なくとも50phrであり、ただし、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まない、
エラストマーAが数種のモノマーのポリマーである場合には、エラストマーAは統計コポリマーである、前記エラストマーマトリックスをベースとする、前記ゴム組成物
を含むゴムでできている半製品を含むタイヤ。」
と訂正する。
(3)訂正事項3
以下のとおり、新たに請求項15~22を追加する。
ア 訂正事項3-1
請求項15として、「第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位が、エラストマーAの少なくとも30mol%のモノマー単位を表す、請求項14に記載のタイヤ。」を追加する。
イ 訂正事項3-2
請求項16として、「第1のメタクリル酸エステルが、式(I)に対応する、請求項14又は15に記載のタイヤ
CH2=C(CH3)-COO-Z (I)
(式中、Zは、1個以上のヘテロ原子によって置換されてよく、中断されてもよい、少なくとも2個の炭素原子を含む炭素ベース鎖である。ただし、式(I)のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まない)。」を追加する。
ウ 訂正事項3-3
請求項17として、「Zが炭化水素ベース鎖である、請求項16に記載のタイヤ。」を追加する。
エ 訂正事項3-4
請求項18として、「第1のメタクリル酸エステルが脂肪族化合物である、請求項14~17のいずれか1項に記載のタイヤ。」を追加する。
オ 訂正事項3-5
請求項19として、「エラストマーマトリックスが第2のエラストマーであるエラストマーBを含み、エラトマーBが架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含む、請求項14に記載のタイヤ。」を追加する。
カ 訂正事項3-6
請求項20として、「エラストマーBがジエンエラストマーである、請求項19に記載のタイヤ。」を追加する。
キ 訂正事項3-7
請求項21として、「補強用充填剤が無機充填剤を含む、請求項14~20のいずれか1項に記載のタイヤ。」を追加する。
ク 訂正事項3-8
請求項22として、「補強用充填剤がカーボンブラックを含む、請求項14~21のいずれか1項に記載のタイヤ。」を追加する。
(4)訂正事項4
本件訂正前明細書の段落【0004】及び【0008】に記載の「ランダムコポリマー」を「統計コポリマー」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前明細書の段落【0008】に記載の「ランダムに」を「統計的に」に訂正する。
(6)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、請求項1が訂正されるのに伴い訂正されるから、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の〔1~14〕について請求されたものである。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1~13を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、明らかに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、
(ア)本件訂正前の、請求項1を引用する請求項13を引用する請求項14を、他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下、「訂正事項2-1」という。)と、
(イ)「エラストマーAが、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含み、前記モノマー単位は1,3-ジエンである第2のモノマーであり」という事項を追加する訂正(以下、「訂正事項2-2」という。)と、
(ウ)「エラストマーAは統計ランダムコポリマーである」との記載を「エラストマーAは統計コポリマーである」とする訂正(以下、「訂正事項2-3」という。)と、
(エ)「ただし、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まない、」という事項を追加する訂正(以下、「訂正事項2-4」という。)
とを組み合わせたものといえる。
そこで、これらの訂正事項ごとに、以下に訂正の適否の判断を示す。
イ 訂正事項2-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項2-2は、本件訂正前明細書の段落【0013】及び【0015】の記載に基づいて発明特定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項2-3は、本件特許に係る国際出願日における国際出願の請求の範囲の請求項1に記載の「
[図:0001397150000001.jpg]
」について、訂正前の請求項1では、「統計ランダムコポリマー」と誤って翻訳され、その結果、高分子分野の一般的な技術用語である「統計コポリマー」と「ランダムコポリマー」のいずれを意図したものか不明瞭であったものを、正確な翻訳である「統計コポリマー」に訂正することで前者の意味であることを明瞭にしたものであるから、誤訳の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許に係る国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した範囲内でしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項2-4は、令和2年12月24日付け取消理由通知書において、本件訂正前の請求項1の「第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位」は、任意のメタクリル酸エステルを含有する一般の意味と、本件訂正前明細書【0006】の「1つ以上のエポキシド官能を含むメタクリル酸エステルと異なる」との意味のどちらと解するのか不明であるとの取消理由に対応して、上記「第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位」を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2-4は、本件訂正前明細書の段落【0006】の「本発明の特定の実施態様によれば、第1のメタクリル酸エステルは、1つ以上のエポキシド官能を含むメタクリル酸エステルと異なる。」との記載に基づき、「第1のメタクリル酸エステル」がエポキシド基を有するメタクリル酸を含まないことを明確にするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3(訂正事項3-1~3-8)について
ア 訂正事項3-1は、訂正前の請求項2を引用する請求項13を引用する請求項14について、訂正事項2による訂正後の請求項14の記載を引用した新たな請求項15として増項したものであり、これは、訂正前の請求項14において引用する請求項を限定した訂正といえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項3-2は、訂正前の請求項3を引用する請求項14について、(i)訂正事項2による訂正後の請求項14又は訂正事項3-1による訂正後の請求項15の記載を引用して新たな請求項16として増項するとともに、(ii)「(ただし式(I)のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まない。)」という事項を追加したものである。
上記(i)は、訂正前の請求項14において引用する請求項を限定した訂正といえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記(ii)は、上記(2)オで検討した訂正事項2-4と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、上記(2)オのとおり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3-3~3-8については、上記アと同様に、訂正前の4、5、7、8、11及び12のいずれかを引用する請求項13を引用する請求項14について、新たな請求項17~22として増項したものであり、これは、訂正前の請求項14において引用する請求項を限定した訂正といえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件特許に係る国際出願日における国際出願の明細書2頁2行及び3頁最下行に記載の「
[図:0001397150000002.jpg]
」について、本件訂正前明細書の段落【0004】及び【0008】では、「統計ランダムコポリマー」と誤って翻訳され、その結果、高分子分野の一般的な技術用語である「統計コポリマー」と「ランダムコポリマー」のいずれを意図したものか不明瞭であったものを、正確な翻訳である「統計コポリマー」に訂正することで前者の意味であることを明瞭にしたものであるから、誤訳の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許に係る国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した範囲内でしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、本件特許に係る国際出願日における国際出願の明細書4頁2行に記載の「statistique」について、本件訂正前明細書の段落【0008】では「ランダムに」と誤って翻訳されていたものを、正確な翻訳である「統計的に」に訂正するものであるから、誤訳の訂正を目的とするものであり、本件特許に係る国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した範囲内でしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)独立特許要件の規定について
本件訂正前の請求項9について特許異議の申立てがされていないが、本件訂正により請求項9は削除されたので、独立特許要件について検討すべき請求項は存在しない。
したがって、本件訂正後の請求項に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第127条第7項の独立特許要件は課されない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~4号に掲げる目的に適合し、また、同法第184条の19の規定によって読み替える、同法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6674912号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~22に記載される以下のとおりのものである。
「
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】
ゴム組成物であって、
-補強用充填剤、
-架橋系、
-架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスであって、エラストマーマトリックスが、エラストマーAの少なくとも20mol%のモノマー単位を表す第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位を含むエラストマーAを含んでおり、エラストマーAが、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含み、前記モノマー単位は1,3-ジエンである第2のモノマーであり、エラストマーマトリックス中のエラストマーAの含量は、少なくとも50phrであり、ただし、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まない、
エラストマーAが数種のモノマーのポリマーである場合には、エラストマーAは統計コポリマーである、前記エラストマーマトリックス
をベースとする、前記ゴム組成物
を含むゴムでできている半製品を含むタイヤ。
【請求項15】
第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位が、エラストマーAの少なくとも30mol%のモノマー単位を表す、請求項14に記載のタイヤ。
【請求項16】
第1のメタクリル酸エステルが、式(I)に対応する、請求項14又は15に記載のタイヤ
CH2=C(CH3)-COO-Z (I)
(式中、Zは、1個以上のヘテロ原子によって置換されてよく、中断されてもよい、少なくとも2個の炭素原子を含む炭素ベース鎖である。ただし、式(I)のメタクリル酸エステルは、エポキシドを有するメタクリル酸エステルを含まない)。
【請求項17】
Zが炭化水素ベース鎖である、請求項16に記載のタイヤ。
【請求項18】
第1のメタクリル酸エステルが脂肪族化合物である、請求項14~17のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項19】
エラストマーマトリックスが第2のエラストマーであるエラストマーBを含み、エラトマーBが架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含む、請求項14に記載のタイヤ。
【請求項20】
エラストマーBがジエンエラストマーである、請求項19に記載のタイヤ。
【請求項21】
補強用充填剤が無機充填剤を含む、請求項14~20のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項22】
補強用充填剤がカーボンブラックを含む、請求項14~21のいずれか1項に記載のタイヤ。」
第4 特許異議申立理由および取消理由の概要
1 特許異議申立書の申立理由
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~6、10~12に係る発明は、甲1に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項7、8、13及び14に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2の記載に基づいて、又は、甲2に記載された発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(以下、申立理由2のうち、甲1を主引例とするものを「申立理由2A」といい、甲2を主引例とするものを「申立理由2B」という)。
2 令和2年12月24日付け取消理由通知で通知した取消理由
(1)取消理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~6、10~12に係る発明は、甲1に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由A」という)。
(2)取消理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1~6、10~13に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由B」という)。
(3)取消理由3(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由C」という)。
記
本件訂正前の請求項1に係る発明の「第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位」を、一般的な理解に基づき、「メタクリル酸エステル」のあらゆるモノマー単位が包含されると解するのか、【0006】の記載のとおりに「1つ以上のエポキシド官能を含むメタクリル酸エステルと異なる」として解するのか、不明であるから、当該請求項1及びこれを直接又は間接的に引用する請求項2~3、5~8、10~14に関し、特許を受けようとする発明が不明確である。
3 令和3年9月29日付け取消理由通知で通知した取消理由
令和3年9月29日付け取消理由通知(決定の予告)では、令和3年4月5日提出の訂正請求書による訂正請求(以下、「訂正請求1」という。)8を認めた上で、以下の取消理由を通知した。
(1)取消理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由D」という)。
記
訂正請求1で訂正された特許請求の範囲の請求項1~8、10~14において、「統計ランダムコポリマー」がどのようなものであるかが理解できず、明確でない。
(2)取消理由2(新規性)
訂正請求1で訂正された請求項1~6、10~12に係る発明は、甲1に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由E」という)。
(3)取消理由2(進歩性)
訂正請求1により訂正された請求項1~6、10~13に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由F」という)。
4 令和4年7月7日付け取消理由通知で通知した取消理由
令和4年7月7日付け取消理由通知(決定の予告)では、令和4年2月3日提出の訂正請求書による訂正請求(以下、「訂正請求2」という。)を認めた上で、以下の取消理由を通知した。
(1)取消理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由G」という)。
記
訂正請求2により訂正された請求項21には、「エラストマーA中に存在する第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位が、エラストマーAの100mol%のモノマー単位を表す」と記載される一方、請求項21が間接的に引用する請求項14では、エラストマーAは第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位だけでなく第2のモノマーであるモノマー単位を含むことが特定されているから、請求項21は明確でない。
請求項21を引用する請求項22及び23も、同様に明確でない。
第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、特に車両用のタイヤの製造に使用される、補強用充填剤によって補強されたゴム組成物である。
【背景技術】
【0002】
タイヤに必要とされている要求の1つは、道路上で、特に濡れた地面上で最適グリップを備えることである。濡れた地面上でグリップを高めたタイヤを得る1つの方法は、そのトレッドにゴム組成物を使用することであり、それの組成物は幅広いヒステリシス可能性を有する。
しかし同時に、タイヤトレッドは、タイヤの転がり抵抗に対してその寄与を最小限にしなければならない。即ち可能な最も低いヒステリシスを有しなければならない。従って、トレッドのゴム組成物は、2つの競合する要求を満たさなければならない。即ちグリップの要求を満たすために最大のヒステリシス可能性を有し且つ転がり抵抗の要求を満たすためにできるだけ低いヒステリシスを有しなければならない。
グリップ、特に濡れた地面での要求と、転がり抵抗の両方の要求を満たすことは、依然としてタイヤ製造業者の恒常的な関心である。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
出願人は、その研究中にタイヤトレッドの構成成分ゴム組成物にメタクリル酸エステルモノマー単位を含むある種のエラストマーを導入することがウェットグリップ性能を大幅に向上させることを可能にすることを発見した。
・・・
【発明を実施するための形態】
・・・
【0008】
エラストマーAが数種のモノマーのポリマーである場合、エラストマーAは統計コポリマーである。例えば、エラストマーAがn-オクチルメタクリレートと2-エチルヘキシルメタクリレートのモノマー単位を含む場合、モノマー単位はポリマー鎖において統計的に分配される。
・・・
エラストマーマトリックスは、架橋系に対して反応性である。この本質的な特徴は、エラストマーマトリックスが架橋系に対して反応性である部位を有することを意味する。言い換えれば、エラストマーマトリックスは、架橋系に対して反応性である部位を有する少なくとも1種のエラストマーを含む。
【0009】
本発明の実施態様によれば、架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスの部位は、共有結合を形成することによって架橋系と反応することができる。この実施態様は、本発明の実施態様のいずれの一つにも適用し得る。
本発明の1つの実施態様によれば、エラストマーマトリックスは、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含む。言い換えれば、エラストマーマトリックスの反応部位は、エラストマーマトリックスのモノマー単位である。この実施態様によれば、エラストマーマトリックスは、エラストマーマトリックスのエラストマーの少なくとも1種に存在し且つ架橋系に対して反応性であるモノマー単位によって架橋系と反応する。モノマー単位が架橋系に対して反応性であるエラストマーは、エラストマーAであり得る。エラストマーAが架橋系に対して反応性であるモノマー単位を有しない場合には、エラストマーマトリックスは架橋系に対して反応性であるモノマー単位を有する第2のエラストマーBを含む。
本発明の1つの実施態様によれば、エラストマーマトリックス中のエラストマーAの含量は、少なくとも20phr、好ましくは少なくとも40phr、より好ましくは少なくとも50phrである。この実施態様がその好ましい形であってもなくても、本発明の実施態様のいずれの一つにも適用し得る。
本発明の第1の変形によれば、エラストマーマトリックスは(1種以上の)第2のエラストマー、エラストマーBを含み、それは架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含んでいる。
好ましくは、エラストマーBは、ジエンエラストマーである。
・・・
【0013】
・・・
本発明の第2の変形によれば、エラストマーAは、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含む。
好ましくは、エラストマーAは(1種以上の)第2のモノマーのモノマー単位を含み、そのモノマー単位は架橋系に対して反応性である。エラストマーAにおける第2のモノマーのモノマー単位の割合は、架橋系に対する第2のモノマーのモノマー単位の反応性、更に、ゴム組成物の標的架橋度の関数として当業者によって調整される。
【0014】
第2のモノマーのモノマー単位は、架橋系の反応性の関数として当業者によって適切に選択される。架橋系が少なくとも2個の求核基を有する化合物を含む場合、第2のモノマーのモノマー単位は求電子性である。即ち第2のモノマーのモノマー単位は求電子性基を担持する;逆もまた同じであり、架橋系が少なくとも2個の求電子性基を有する化合物を含む場合、第2のモノマーのモノマー単位は好ましくは求核性である。即ち第2のモノマーのモノマー単位は求核基を担持する。求電子性基として、例えば、イミド基、エポキシ基又はカーボネート基が適切である;求核基として、NH2基又はOH基、特にアルコール又はカルボン酸のものを挙げることができる。架橋系が硫黄、ペルオキシド又はビスマレイミドをベースとする場合、第2のモノマーのモノマー単位は、特に架橋系とラジカル経路によって反応する少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有することができる。従って、第2のモノマーのモノマー単位は、例えば少なくとも1個のNH2基、OH基、イミド基、カーボネート基若しくはエポキシ基又は炭素-炭素二重結合を含有する。
より好ましくは、エラストマーAは、第1のメタクリル酸エステルと第2のモノマーのコポリマーであることが好ましい。言い換えれば、エラストマーAを構成するモノマー単位は、第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位及び第2のモノマーのモノマー単位からなる。
【0015】
少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有するモノマー単位を有する第2のモノマーとして、1,3-ジエン、特に1,3-ブタジエン及びイソプレンを挙げることができる。典型的には、エラストマーAにおける1,3-ジエンモノマー単位の割合は、エラストマーAの100モルのモノマー単位当たり少なくとも2モルであり、例えば、それはエラストマーAの100モルのモノマー単位当たり2~80モルに及ぶ範囲内で変動する。
・・・
【0016】
・・・
本発明に従うゴム組成物の本質的な特徴は、それが架橋系を含むことである。
架橋系の選択は、上記のように、エラストマーマトリックスが担持する反応部位の化学構造の関数として行われる。ゴム組成物に導入される架橋系を構成する化合物(1種以上)の含量は、ゴム組成物の標的架橋度及び架橋系の化学的性質の関数として当業者によって調整される。この架橋含量は架橋状態でのゴム組成物の望ましい剛性に従って定義され、この剛性はゴム組成物の想定された適用に応じて変動する。・・・
【0028】
II.本発明の例示的実施態様
・・・
【0041】
II.2-エラストマーの調製:
II.2-1 エラストマーE1の合成:1,3-ブタジエン/2-エチルヘキシルメタクリレートコポリマー:
反応は、100リットルの反応器内で行う。0.7kg(5phr)のステアリン酸ナトリウムを27リットルの脱イオン水に溶解する。6.29gのtert-ドデシルメルカプタン(過硫酸カリウムに対して0.05当量の移動剤)、3.01kgのブタジエン及び11kgの2-エチルヘキシルメタクリレートを反応媒体に添加する。反応器を80rpmの撹拌速度で50℃に加熱した後、0.168kg(1.2phr)の過硫酸カリウムを導入する。95分間の重合反応後、モノマーのコポリマーへの61%転化率を達成する。次に0.42kg(3phr)のレゾルシノールを添加して反応を停止する。次に、溶融状態で調製し、水と界面活性剤(ステアリン酸ナトリウム)、(0.5phr)で希釈した4,4’-メチレンビス(2,6-tert-ブチルフェノール)及びN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(20質量%/80質量%)の酸化防止剤の混合物をコポリマーラテックスに添加する。次に抗酸化ラテックスをストリッピングカラムに移し、ストリッピングの間、エマルジョンの発泡を防止するために0.2phrのFoamaster消泡剤を添加する。ストリッピング工程を100℃で実施する。ストリッピングされたポリマー溶液を、100rpmで撹拌しつつ、水中硫酸アルミニウム(ポリマーに対して14phrの脱安定化剤)の溶液に徐々に添加する。撹拌を停止させるとすぐに表面に生じるポリマー粒子が形成する。pHが7の値に達するまでこれらの粒子を洗浄する。ポリマー粒子を回収し、100℃より高い温度でスクリューにより乾燥する。ブタジエン及び2-エチルヘキシルメタクリレートをベースとする8.4kgのコポリマーを0.5%未満の揮発分で回収する。
得られたコポリマーは、下記の特性を有する:
Tg=-53℃
Mn=254 100g/mol(PSキャリブレーション)及びPI=3.4
モル%(2-エチルヘキシルメタクリレートモノマー単位)=45.5 モル%(ブタジエンモノマー単位)=54.5
【0042】
II.2-2 エラストマーE2の合成:1,3-ブタジエン/スチレンコポリマー:
・・・
【0043】
II.2-3 エラストマーE3の合成:スチレン/1,3-ブタジエン/グリシジルメタクリレートターポリマー:
・・・
【0044】
II.2-4 エラストマーE4の合成:グリシジルメタクリレート/n-オクチルメタクリレートコポリマー:
・・・
【0047】
II.2-5 エラストマーE5及びE6の調製:それぞれポリ(2-エチルヘキシルメタクリレート)及びポリ(n-オクチルメタクリレート): エラストマーE5及びE6、それぞれポリ(2-エチルヘキシルメタクリレート)及びポリ(n-オクチルメタクリレート)は、トルエン中の溶液でScientific Polymer Products社によって供給される。
・・・
【0048】
II.3-ゴム組成物の調製:
組成物C0~C4の配合物(phr)を表I、III及びVに記載する。
組成物C1、C4、C5及びC6は、本発明に従う;組成物C0、C2、C3及びCrは、本発明に従わない組成物である。組成物Crは、濡れた地面及び乾いた地面での制動に関して参照とされる「Primacy HP」タイヤのトレッドの加硫された組成物Trに対応する。
組成物C1、C4、C5及びC6は、すべて、メタクリル酸エステルの少なくとも20mol%のモノマー単位を含むエラストマーを含有する。組成物C1及びC4のそれぞれのエラストマーマトリックスは、単一のエラストマー、それぞれE1及びE4からなる。組成物C5及びC6のそれぞれのエラストマーマトリックスは、SBR E2とそれぞれのエラストマーE5及びE6の混合物からなる。
架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスの部位は、
-組成物C1中のエラストマーE1の1,3-ブタジエンモノマー単位; -組成物C4中のエラストマーE4のグリシジルメタクリレートモノマー単位;
-組成物C5及びC6中のSBRの1,3-ブタジエンモノマー単位によって担持される。
・・・
【0050】
II.4-ゴム組成物及びタイヤの特性:
組成物C0~C7の特性を、表II、IV及びVIにおいてCrに対するベース100に相対して示す。
【0051】
II.4-1 架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスの部位がエラストマーA(この場合E1)によって担持されている実施例:(表I及びII)
組成物C0及びC1をラジアルカーカス乗用車タイヤ用のトレッドとして用い、それぞれT0(本発明に従わないタイヤ)及びT1(本発明に従うタイヤ)によって示され、205/55R16の寸法は、慣例的に製造され、そのトレッドを形成するゴム組成物を除いて、「Primacy HP」タイヤとすべての点で同一である。「Primacy HP」タイヤは、ウェット制動及びドライ制動に関しての参照タイヤである。T1の性能をベース100に相対する「Primacy HP」参照タイヤTrと比較し、結果を表IIに記録する。
タイヤT1は25℃で129のウェット性能指数を有し、それはタイヤTrと比較して著しく短縮した制動距離に対応する。ウェット制動性能のこの大きな改善は、ドライ制動性能を犠牲にして達成されない。実際に、T1の性能指数は、Trに対してさえわずかに改善される。更にまた、驚くべきことに、わずか5%である転がり抵抗の増大が見られ、制動性能の改善とみなされる。
【0052】
組成物C1からなり20℃で測定した試験片の摩擦係数は、組成物Crに相対して29%だけ増加する。23℃においてタイヤにより実施されるグリップ係数の測定は、匹敵する結果、即ち28%の改善を示す。これらの摩擦係数とグリップ係数の結果は、ウェット制動において測定されたほぼ30%の増加と非常に良好に一致している。
試験片で生成されたゴム組成物のμ実験室摩擦係数を測定する方法が、ここでは、トレッドがこのゴム組成物から製造されるタイヤのウェットグリップ性能を表すことが留意される。それがトレッド材料のウェット制動性能の良好なデスクリプターを得ることを可能にする。
その一方で、本発明に従わない実施例に関して(それぞれ組成物C0及びタイヤT0)、参照(それぞれCr及びTr)に対する摩擦係数の改善もグリップ係数も改善も見られない:係数の値は、参照より低いままである。 これらの結果は、予想外に、ジエンエラストマーへの少なくとも20mol%の2-エチルヘキシルメタクリレートモノマー単位の組み込みが、ドライグリップと転がり抵抗の間の良好な性能妥協を保持しつつ、トレッドがこのエラストマーを含有するタイヤのウェットグリップ性能を非常に大幅に向上させることを可能にすることを証明している。
・・・
【0055】
表I
[図:0001397150000003.jpg]
(1)SBR 1500、Tg -50℃
(2)1,3-ブタジエン/2-エチルヘキシルメタクリレートコポリマー(II.2-1項を参照のこと)
(3)シリカ:RhodiaからのZeosil 1165 MP(HDSタイプ)
(4)トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート
(5)N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、Flexsysから
(6)TESPT(DegussaからのSi69)
(7)ポリリモネン樹脂、DRTからのDercolyte L120
(8)ジフェニルグアニジン(FlexsysからのPerkacit DPG)
(9)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(FlexsysからのSantocure CBS)」
2 甲1に記載された事項
(1)甲1に記載された事項と甲1に記載された発明
甲1には、以下の事項が記載されている。
ア
「[請求項1]
アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、メタクリル酸アルキルエステル10~100質量部と、架橋席モノマー0.5~4質量部とを共重合させて得られることを特徴とするアクリルゴム。
[請求項2]
メタクリル酸アルキルエステルが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびn-ブチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアクリルゴム。
・・・
[請求項8]
さらに、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、老化防止剤、安定剤、およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる一種以上を含有することを特徴とする請求項7に記載のアクリルゴム組成物。
[請求項9]
請求項7または8に記載のアクリルゴム組成物を加硫して得られることを特徴とする加硫物。
[請求項10]
請求項9に記載の加硫物を用いたホース部品。
[請求項11]
請求項9に記載の加硫物を用いたシール部品。
[請求項12]
請求項9に記載の加硫物を用いた防振ゴム部品。」
イ
「[0001]本発明は、アクリルゴムに関する。より詳しくは、耐熱性を向上させたアクリルゴム、およびアクリルゴム組成物に関する。
背景技術
[0002]アクリルゴム組成物やその加硫物は、耐熱性、耐油性、機械的特性、圧縮永久歪み特性等の物性に優れているため、自動車のエンジンルーム内のホース部材やシール部材、防振ゴム部材などの材料として多く使用されている。
[0003]これら部材については、近年の排ガス対策やエンジンの高出力化等の影響を受け、より耐熱性を有するものが望まれている。
・・・
発明が解決しようとする課題
[0006]本発明は、加硫物とした際に、常態物性を損なわず、特に熱老化前後の引張強度の残留率と切断時伸びの変化率の少ないアクリルゴム組成物とその加硫物とを提供することを主な課題とする。
・・・
発明の効果
[0014]本発明のアクリルゴムから得られるアクリルゴム組成物は、加硫物とした際に、常態物性を損なわず、特に熱老化前後の引張強度の残留率と切断時伸びの変化率が少なく、ホース部品、シール部品、防振ゴム部品として有用である。」
ウ
「[0018]アクリルゴムは熱空気などの影響により、その主鎖が酸化劣化によって切断し、引張強さ、破断伸びなどの機械的特性が急激に低下してしまうものである。これを一般的に熱老化という。
メタクリル酸アルキルエステルは、アクリルゴムの主鎖に共重合させておくことにより、アクリルゴムが熱老化した際にその主鎖の切断を抑制し、アクリルゴムの引張強さ、破断伸びなどの機械的強度を維持させるために用いる。
メタクリル酸アルキルエステルは、単体だけでなく2種類以上のものを併用してもよい。メタクリル酸アルキルエステルの配合量を調整することにより、得られるアクリルゴムの主鎖の切断による機械的強度低下の抑制を調整できる。
[0019]メタクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定するものではないが、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、n-ラウリルメタクリレート、n-オクタデシルメタクリレートなどである。これらの中でも、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびn-ブチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが、熱老化後の引張強さの残留率、および伸びの残留率を維持できるため好ましい。
さらに、メタクリル酸アルキルエステルは耐熱性を付与させるために共重合させることができる。
[0020]メタクリル酸アルキルエステルの配合量は、アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、10~100質量部の範囲、好ましくは10~80質量部の範囲である。メタクリル酸アルキルエステルの配合量が10質量部以下であると、アクリルゴムの主鎖切断抑制効果が得られず、機械的特性の低下を抑制できない。また、配合量が100質量部を超えると、アクリルゴムが硬化してゴム弾性を失う。
[0021]架橋席モノマーは、アクリルゴム組成物を加硫物とする際に、アクリルゴムの主鎖同士を架橋させるために配合するものである。
架橋席モノマーとしては、エポキシ基を含有するもの、活性塩素基、カルボキシル基、エポキシ基とカルボキシル基の両方を含有するもの等が挙げられる。
[0022]架橋席モノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、2-クロルエチルビニルエーテル、2-クロルエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロルアセテート、アリルクロルアセテートなどの活性塩素基を有するものが挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ブテン酸モノブチルエステル、桂皮酸などのカルボキシル基を含有するものが挙げられる。さらに、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を含有するものが挙げられる。
[0023]上記の化合物のなかでも、カルボキシル基を有する架橋席モノマーとして、ブテン酸モノ-n-ブチルエステルを用いた場合、およびエポキシ基を有する架橋席モノマーとして、グリシジルメタクリレートなどを用いた場合は、その他の化合物を用いた場合に比べて、より耐熱性が向上したアクリルゴムおよびアクリルゴム組成物の加硫物が得られるため好ましい。
・・・
[0028]本発明のアクリルゴム組成物は、さらに、加硫剤や加硫促進剤を添加して加硫させることにより、加硫ゴム(加硫物ということもある。)とすることができる。
[0029]加硫剤は、アクリルゴム組成物の加硫に通常用いられるものであればよく、特に限定するものではない。例えば、架橋席モノマーとしてカルボキシル基を有するモノマーを使用する場合は、加硫剤としてはポリアミン化合物が適当であり、特にグアニジン系化合物を加えた加硫系が好適に用いられる。また、架橋席モノマーとしてエポキシ基を有するモノマーを使用する場合は、加硫剤としてはイミダゾール化合物が好適に用いられる。
・・・
[0037]本発明のアクリルゴム組成物は、実用に供するに際し、その目的に応じ、上記のアクリルゴムと、充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、老化防止剤、安定剤、およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる一種以上とを含有してもよい。
[0038]充填剤、および補強剤としては、通常のゴム用途に使用されている充填剤および補強剤を添加することができ、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどである。これら添加剤の添加量は、合計で、アクリルゴム100質量部に対して20~100質量部の範囲が好ましい。
・・・
[0040]本発明のアクリルゴム組成物及びその加硫物は、特に、ゴムホース;ガスケット、パッキング等のシール部品;防振ゴム部品;などとして好適に用いられる。
[0041]ゴムホースとしては、例えば、自動車、建設機械、油圧機器等のトランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、エアダクトホース、ターボインタークーラーホース、ホットエアーホース、ラジエターホース、パワーステアリングホース、燃料系統用ホース、ドレイン系統用ホース等がある。
・・・
[0043]シール部品としては、例えば、エンジンヘッドカバーガスケット、オイルパンガスケット、オイルシール、リップシールパッキン、O-リング、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフト、カムシャフトシールガスケット、バルブステム、パワーステアリングシールベルトカバーシール、等速ジョイント用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ材等がある。
[0044]防振ゴム部品としては、例えば、ダンパープーリー、センターサポートクッション、サスペンションブッシュ等がある。
エ
「実施例
[0045]
・・・
<アクリルゴムの製造>
(実施例1)
内容積40リットルの反応容器に、グリシジルメタクリレート120g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、および酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。槽内上部の空気を窒素で置換した後、槽内を55℃に保持し、その後、別途注入口よりエチルアクリレート6.16kg、n-ブチルアクリレート3.92kg、メチルメタクリレート1.12kg、およびt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25質量%水溶液)2.9kgを別々に投入して重合を開始させた。反応中、槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応を終了した。生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液(3質量%水溶液)10kgを添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行ってアクリルゴムを得た。このアクリルゴムは、グリシジルメタクリレート単量体単位1.2質量部と、エチルアクリレート単量体単位61.1質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位38.9質量部と、メチルメタクリレート単量体単位11.1質量部の共重合体組成であった。
各モノマーに由来する単量体単位は、得られた重合体の核磁気共鳴スペクトルを測定して定量した。
(実施例2)
エチルアクリレートの投入量を2.24kg、n-ブチルアクリレートの投入量を6.72kg、メチルメタクリレートの投入量を2.24kgにした以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはグリシジルメタクリレート単量体単位1.4質量部と、エチルアクリレート単量体単位25.0質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位75.0質量部と、メチルメタクリレート単量体単位25.0質量部の共重合体組成であった。
・・・
[0049](実施例5)
エチルアクリレート、およびメチルメタクリレートを投入せず、n-ブチルアクリレートを8.06kg、およびエチルメタクリレート3.14kg投入すること以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはグリシジルメタクリレート単量体単位1.5質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位100.0質量部と、エチルメタクリレート単量体単位38.9質量部の共重合体組成であった。
・・・
[0052](実施例8)
エチルアクリレート、およびメチルメタクリレートを投入せず、n-ブチルアクリレートを6.50kg、およびn-ブチルメタクリレートを4.70kg投入すること以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはグリシジルメタクリレート単量体単位1.9質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位100.0質量部と、n-ブチルメタクリレート単量体単位72.4質量部の共重合体組成であった。
・・・
[0055](実施例11)
エチルアクリレート、およびメチルメタクリレートを投入せず、メチルアクリレートを1.68kg、n-ブチルアクリレートを7.28kg、およびエチルメタクリレートを2.24kg投入すること以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはグリシジルメタクリレート単量体単位1.4質量部と、メチルアクリレート単量体単位18.8質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位81.3質量部と、エチルメタクリレート単量体単位25.0質量部の共重合体組成であった。
・・・
[0065]上記の実施例および比較例で得られたアクリルゴムに、表1~表3に示した各材料を、8インチオープンロールを用いて混練し、アクリルゴム組成物を得た。
[0066]各実施例、および各比較例において、加硫剤には、オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイド、トリメチルチオ尿素及び1-ベンジル-2-メチルイミダゾールを用いた。
また、充填剤として用いたカーボンブラックは東海カーボン社製のシースト116を、滑剤として用いた流動パラフィンはカネダ社製のハイコールK-230を、滑剤として用いたステアリルアミンは花王社製のファーミン80である。さらに、老化防止剤としては白石カルシウム社製のナウガード445を、滑剤としてのステアリン酸は花王社製ルナックS-90を用いた。その他の試薬は市販品を使用した。
[0067]アクリルゴム組成物を、スチーム加熱式の熱プレスにて170℃で20分間加熱処理して一次加硫物とした後、熱空気(ギヤーオーブン)にて170℃で4時間加熱処理してアクリルゴム組成物の加硫物を得た。
[0068]得られたアクリルゴム組成物の加硫物について、引張強さ、破断時伸び、硬さ、耐寒性、および耐熱老化性を以下の条件で評価した。
[0069]
(1)引張強さ・破断時伸び
JIS K6251に準拠して測定した。
(2)硬さ
JIS K6253に準拠してデュロメータ硬さ計を用いて測定した。
(3)耐寒性試験
JIS K6261に準拠してT100の温度を測定した。ここで、T100とは、23℃における加硫物の比モジュラスの値が100倍の値を示す温度である。
(4)耐熱老化性試験
JIS K6257に準拠し、190℃で288時間の熱処理を行った後の試験片の引張強さと切断時伸びを測定した。このような評価条件下での引っ張り強度の残留率と切断時伸びの残留率の値が大きいと耐熱性が優れているといえる。
また、一般式(数1)を用いてそれぞれの残留率を求めた。残留率は、その値が100に近いほど耐熱試験前後での変化がなく耐熱老化性が良いことを示す。
[0070][数1]
[図:0001397150000004.jpg]
[0071]
[図:0001397150000005.jpg]
[図:0001397150000006.jpg]
・・・
[0074]実施例と比較例の比較から、本発明のアクリルゴム組成物の加硫物は、耐熱老化性、特に熱老化後の引っ張り強度の残留率と切断時伸びの残留率に優れていることがわかる。」
(2)甲1に記載された発明
(1)エで摘記した実施例2、5、8及び11に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
ア 甲1発明1
「内容積40リットルの反応容器に、グリシジルメタクリレート120g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、および酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製し、槽内上部の空気を窒素で置換した後、槽内を55℃に保持し、その後、別途注入口よりエチルアクリレート2.24kg、n-ブチルアクリレート6.72kg、メチルメタクリレート2.24kg、およびt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25質量%水溶液)2.9kgを別々に投入して重合を開始させ、反応中、槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応を終了し、生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液(3質量%水溶液)10kgを添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行って得られた、グリシジルメタクリレート単量体単位1.4質量部と、エチルアクリレート単量体単位25.0質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位75.0質量部と、メチルメタクリレート単量体単位25.0質量部の共重合体組成であるアクリルゴム100質量部に対して、ステアリン酸を1質量部、ナウガード445を1質量部、シースト#116を50質量部、流動パラフィンを1質量部、トリメチルチオ尿素を0.5質量部、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールを1.6質量部、オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイドを0.5質量部を、8インチオープンロールを用いて混練して得たアクリルゴム組成物」
イ.甲1発明3
「内容積40リットルの反応容器に、グリシジルメタクリレート120g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、および酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製し、槽内上部の空気を窒素で置換した後、槽内を55℃に保持し、その後、別途注入口よりn-ブチルアクリレート8.06kg、エチルメタクリレート3.14.kg、およびt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25質量%水溶液)2.9kgを別々に投入して重合を開始させ、反応中、槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応を終了し、生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液(3質量%水溶液)10kgを添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行って得られた、グリシジルメタクリレート単量体単位1.5質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位100.0質量部と、エチルメタクリレート単量体単位38.9質量部の共重合体組成であるアクリルゴム100質量部に対して、ステアリン酸を1質量部、ナウガード445を1質量部、シースト#116を50質量部、流動パラフィンを1質量部、トリメチルチオ尿素を0.5質量部、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールを1.6質量部、オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイドを0.5質量部を、8インチオープンロールを用いて混練して得たアクリルゴム組成物」
ウ.甲1発明5
「内容積40リットルの反応容器に、グリシジルメタクリレート120g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、および酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製し、槽内上部の空気を窒素で置換した後、槽内を55℃に保持し、その後、別途注入口よりn-ブチルアクリレート6.50kg、n-ブチルメタクリレート4.70kg、およびt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25質量%水溶液)2.9kgを別々に投入して重合を開始させ、反応中、槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応を終了し、生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液(3質量%水溶液)10kgを添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行って得られた、グリシジルメタクリレート単量体単位1.9質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位100.0質量部と、n-ブチルメタクリレート単量体単位72.4質量部の共重合体組成であるアクリルゴム100質量部に対して、ステアリン酸を1質量部、ナウガード445を1質量部、シースト#116を50質量部、流動パラフィンを1質量部、トリメチルチオ尿素を0.5質量部、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールを1.6質量部、オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイドを0.5質量部を、8インチオープンロールを用いて混練して得たアクリルゴム組成物」
エ 甲1発明7
「内容積40リットルの反応容器に、グリシジルメタクリレート120g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、および酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製し、槽内上部の空気を窒素で置換した後、槽内を55℃に保持し、その後、別途注入口よりメチルアクリレート1.68kg、n-ブチルアクリレート7.28kg、エチルメタクリレート2.24kg、およびt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25質量%水溶液)2.9kgを別々に投入して重合を開始させ、反応中、槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応を終了し、生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液(3質量%水溶液)10kgを添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行って得られた、グリシジルメタクリレート単量体単位1.4質量部と、メチルアクリレート単量体単位18.8質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位81.3質量部と、エチルメタクリレート単量体単位25.0質量部の共重合体組成であるアクリルゴム100質量部に対して、ステアリン酸を1質量部、ナウガード445を1質量部、シースト#116を50質量部、流動パラフィンを1質量部、トリメチルチオ尿素を0.5質量部、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールを1.6質量部、オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイドを0.5質量部を、8インチオープンロールを用いて混練して得たアクリルゴム組成物」
3 甲2に記載された事項と甲2に記載された発明
(1)甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア
「【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、更には耐油性を必要とする分野に使用されるゴム/金属複合体製品の製造を可能とする、金属との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性(高耐セット性)および高耐熱性を有するゴム組成物であって、ベルト、タイヤ、ロール、型物等の製品に好適に使用することができるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ベルト、タイヤ、ロール、型物等の多くのゴム製品は、高温加圧下で、更には加熱された油とともに、長時間使用されるようになっており、このような状態でのゴム製品の劣化は常に重要な問題となってきている。ゴム製品の劣化が激しければ保守や交換に非常に大きな時間と労力が必要であるし、時には大事故を引き起こす原因となるからである。
このような高温(約120~150℃程度)環境下で連続使用に耐え得るポリマーとしては、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エチレン-アクリル酸エステル共重合ゴム(AEM)、エチレン-アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合ゴム(ER)、エチレン-酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)の共役ジエン部分を水素添加して得られる水素化アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(HNBR)等が知られている。
【0003】
一般に、ゴム組成物としては、加硫時に硫黄を使用する硫黄加硫ゴム組成物に比べて、有機過酸化物を使用する有機過酸化物架橋ゴム組成物の方が耐熱性に優れることが知られている。
ところが、有機過酸化物架橋ゴム組成物は、金属と接着反応する硫黄を一般に含まないため、金属との接着性が悪く、金属表面にメッキ処理される真鍮と接着しない。従って、そのような有機過酸化物架橋ゴム組成物と真鍮メッキ鋼板等の金属とを組み合わせたゴム製品は、ゴム層と真鍮メッキ層との界面ではく離が発生し、それに起因した製品の破壊が起こる等の欠点を有する。
【0004】
即ち、ゴム製品に汎用されているジエン系ゴムは、通常量の硫黄を架橋剤とし、また、更に金属との接着性向上のために接着性付与剤が配合される場合には、金属との接着性には優れるものの、耐熱性に優れたものとならない。また、耐熱性向上のために、接着付与剤を配合せず、硫黄の配合量を通常量より少なくし、硫黄供与体等の加硫促進剤を併用する場合には、耐熱性は向上するものの、金属との接着性は低下し、接着性を損なう結果となる。また、更に耐熱性向上のために架橋剤として有機過酸化物を用いると、耐熱性は優れるものの、金属との接着性に劣る。
【0005】
一方、非ジエン系ゴムは、硫黄による加硫は困難となり、使用に際し、有機過酸化物等によって架橋することが必要となる。即ち、金属との接着性が良好な硫黄を架橋剤として用いることができないため、非ジエン系ゴムを直接金属と接着させることは極めて困難であり、接着性を発現させる処方に関し、多くの検討がなされている。
・・・
即ち、ジエン系ゴムであると非ジエン系ゴムであるとを問わず、上記のような問題を解決し、金属との接着性および耐熱性の両者を満足するゴムが求められている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属(真鍮)との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性および高耐熱性を有するため、ベルト、タイヤ、ロール、型物等のゴムと金属の複合体に好適に用いることのできるゴム組成物を提供することを課題とする。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、原料ゴム100重量部、下記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジン0.1~15重量部および前記原料ゴムと架橋可能なエポキシ基を有するポリマー1~100重量部を含有するゴム組成物を提供する。
【0009】
【化1】
[図:0001397150000007.jpg]
・・・
【0020】
また、本発明は、エポキシ基を有する原料ゴム100重量部および下記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジン0.1~15重量部を含有するゴム組成物を提供する。
【化1】
[図:0001397150000008.jpg]
・・・
【発明の効果】
【0024】
本発明のゴム組成物は、金属との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性および高耐熱性を有するため、ベルト、タイヤ、ロール、型物等のゴムと金属の複合体に用いることができる。また、本発明のゴム組成物は、銅または銅を含む合金との接着性が特に高いため、真鍮(黄銅)、青銅メッキ鋼板との複合ゴム製品に好適に用いることができる。」
イ「【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の態様は、原料ゴム100重量部、上記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジン0.1~15重量部および前記原料ゴムと架橋可能なエポキシ基を有するポリマー1~100重量部を含有するゴム組成物である。
・・・
【0031】
本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーは、有機過酸化物または硫黄により原料ゴムと架橋させることが可能なものであって、更にエポキシ基を有するものである。ビスフェノールA型等のエポキシ樹脂は、有機過酸化物または硫黄による架橋が起こりにくいので、本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーに含まれない。本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーの代わりにエポキシ樹脂を用いると、原料ゴムとの結合が少ないため、ゴム組成物と金属との接着性が不十分となる。
本発明の第一の態様のゴム組成物におけるエポキシ基を有するポリマーの含有量は、有するエポキシ基の量等にもよるが、一般に原料ゴム100重量部に対して1~100重量部、好ましくは5~50重量部である。1重量部未満であると、ゴム組成物と金属との接着性が不十分になる場合がある。100重量部を超えると、ゴム組成物と金属との接着性および耐熱性が低下する場合がある。5~50重量部であると、ゴム組成物と金属との接着性、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性のバランスがより良好となる。
【0032】
本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーは、特に限定されず、原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には、有機過酸化物により原料ゴムと反応するものであればよく、原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には、硫黄により原料ゴムと架橋するものであればよい。
ゴム組成物と金属との接着性を考慮すると、エポキシ基を有するポリマーの好適例として、グラフト共重合体であって、主鎖が原料ゴムと架橋可能であり、グラフト鎖の少なくとも1つがエポキシ基を有するものが挙げられる。
【0033】
グラフト共重合体の主鎖は、特に限定されないが、原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には、エチレン系ポリマーが好ましく、原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には、ジエン系ポリマーが好ましい。
エチレン系ポリマーは、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(例えば、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA))、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。
ジエン系ポリマーは、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレン(IR)が挙げられる。
グラフト鎖の単量体としては、グリシジルメタクリレート(GMA)等が好適に用いられる。
主鎖およびグラフト鎖は、それぞれ1種類の単量体から得られたものでもよく、2種類以上の単量体から得られたものでもよい。
グラフト共重合体は、主鎖にグラフト鎖が分岐して結合した構造であり、主鎖と原料ゴムとが架橋によって、かつ、グラフト鎖であるエポキシ基が上記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンと反応し、グラフト共重合体を介して、原料ゴムと金属と接着すると考えられる。
原料ゴムとグラフト共重合体であるエポキシ基を有するポリマーの組み合わせの好適例として、CMとEMA-g-GMA(主鎖がEMAでグラフト鎖がGMAであるグラフト共重合体)、EPMとEMA-g-GMA、AEMとEMA-g-GMA、NBRとEMA-g-GMA、EPDMとEMA-g-GMA、NBRとBR-g-GMA(主鎖がBRでグラフト鎖がGMAであるグラフト共重合体)が挙げられる。
・・・
【0035】
これに対し本発明の第一の態様は、一般的に金属との接着性に大きく寄与していると考えられているエポキシ樹脂ではなく、これ以外のエポキシ基を有するポリマーを用いることにより、接着性が向上することを知見したものである。この理由は解明されていないが、一般のエポキシ樹脂はラジカル反応性に乏しく水素引き抜きが起こりにくく、また、主鎖に芳香環以外の二重結合を持たないためエポキシ基以外での架橋反応が起こりにくいのに対し、本発明の第一の態様のゴム組成物に用いられるエポキシ基を有するポリマーは、例えば、エチレン等、メチレン連鎖のラジカル反応性が高く、または、主鎖に芳香環以外の二重結合等の架橋反応に寄与する部分を有するため、原料ゴムとの結合が効果的に生じ、同時に、2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンは、メルカプト基を介して金属と結合し、同一分子内の他のメルカプト基を介してエポキシ基の開環反応によるエポキシ基を有するポリマーとの結合を生成するからであると考えられる。 即ち、原料ゴムとエポキシ基を有するポリマーの結合、エポキシ基を有するポリマーと上記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンの結合および上記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンと金属中の銅との結合が同時に起こるので、本発明の第一の態様のゴム組成物および金属が結合して一体となる。また、エポキシ基を有するポリマーには、金属と反応して結合するものもあり、そのようなエポキシ基を有するポリマーを選択する場合には、本発明のゴム組成物と金属との結合がより強固なものとなる。
【0036】
本発明の第一の態様のゴム組成物は、架橋剤として、原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には有機過酸化物、原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には硫黄を含有するのが好ましい。
・・・
【0037】
本発明の第一の態様のゴム組成物は、上記成分以外にも、金属との接着性、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性を損なわない範囲において、必要に応じて、架橋助剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤等の添加剤を配合することができる。
・・・
【0039】
充填剤は、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
・・・
【0044】
本発明の第二の態様は、エポキシ基を有する原料ゴム100重量部および上記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジン0.1~15重量部を含有するゴム組成物である。
【0045】
本発明の第二の態様に用いられる原料ゴムは、エポキシ基を有するゴムであれば、特に限定されない。エポキシ基を有するゴムは、例えば、エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られる共重合ゴム、グラフト共重合体であって該グラフト共重合体のグラフト鎖の少なくとも1つがエポキシ基を有するもの、ジエン系ゴムの主鎖中の不飽和結合をエポキシ化して得られるもの、これらを組み合わせたものが挙げられる。
エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られる共重合ゴムは、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘキサヒドロベンジル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-3,5-ジメチルベンジル(メタ)アクリレート、2-(4´-グリシジルオキシフェニル)-2-〔4´-(メタ)アクリロキシエチルオキシフェニル〕プロパン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸グリシジルエステル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸グリシジルエステル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルテレフタル酸グリシジルエステル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロテレフタル酸グリシジルエステル、3,4-エポキシヘキサヒドロベンジル(メタ)アクリルアミド、4-グリシジルオキシ-3,5-ジメチルベンジル(メタ)アクリルアミド等のエポキシ基を有するモノマーの少なくとも1つを共重合成分とするアクリルゴム;グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート等を共重合成分とするエチレン-アクリル酸エステル系共重合ゴム(例えば、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート共重合ゴム、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート共重合ゴム、エチレン-アクリル酸エステル-酢酸ビニル-グリシジルメタクリレート共重合ゴム等)が挙げられる。
グラフト共重合体であって該グラフト共重合体のグラフト鎖の少なくとも1つがエポキシ基を有するものは、例えば、EVA、AEM、EPM、BR等にグリシジルメタクリレート(GMA)等をグラフト共重合したものが挙げられる。
ジエン系ゴムの主鎖中の不飽和結合をエポキシ化して得られるものは、例えば、天然ゴムのイソプレン単位を好ましくは25~75%エポキシ化して得られるエポキシ化天然ゴムが挙げられる。
エポキシ基を有する原料ゴムは、有機過酸化物架橋可能なゴム、硫黄架橋可能なゴム、その他の加硫系を用いるゴム等のいずれも用いられ、また、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムのいずれも用いられる。
・・・
【0048】
本発明の第二の態様のゴム組成物は、架橋剤として、エポキシ基を有する原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には有機過酸化物、エポキシ基を有する原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には硫黄、その他の加硫系で架橋可能な原料ゴムである場合には適切な加硫系を含有するのが好ましい。
有機過酸化物および硫黄ならびにゴム組成物におけるこれらの含有量は、上述した本発明の第一の態様の場合と同様である。また、例えば、アクリルゴム等、原料ゴムによって適切な加硫系がある場合には、適切な加硫系を適正量含有するのが好ましい。
【0049】
本発明の第二の態様のゴム組成物は、上記成分以外にも、金属との接着性、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性を損なわない範囲において、必要に応じて、架橋助剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤等の添加剤を配合することができる。
架橋助剤、充填剤、老化防止剤および軟化剤は、本発明の第一の態様の場合と同様のものを用いることができる。
【0050】
本発明の第二の態様のゴム組成物に用いられる2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンは、メルカプト基を介して金属と結合し、同一分子内の他のメルカプト基を介してエポキシ基を有する原料ゴムと結合する。
即ち、エポキシ基を有する原料ゴムと上記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンの結合および上記式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンと金属の結合が同時に起こるので、本発明の第二の態様のゴム組成物および金属が結合して一体となる。また、エポキシ基を有する原料ゴムには、金属と反応して結合するものもあり、そのようなエポキシ基を有する原料ゴムを選択する場合には、本発明のゴム組成物と金属との結合がより強固なものとなる。
【0051】
本発明のゴム組成物は、金属との接着性が高く、高モジュラス、耐圧縮永久歪性(耐セット性)および高耐熱性を有するので、ゴムと金属の複合体に関し、ベルト、タイヤ、ロール、型物等広範な用途に用いることができる。特に銅または銅を含む合金との接着性が高いので、真鍮(黄銅)、青銅メッキ鋼板との複合ゴム製品に極めて好適に用いることができる。」
ウ「【実施例】
【0052】
・・・
<ゴム組成物の調製>
以下に示される原料をそれぞれ第1表~第3表に示される量用いて、第1表~第3表に示される各ゴム組成物を得た。
(1)原料ゴム
・CM(塩素化ポリエチレン):エラスレン301A、昭和電工社製
・EPM(エチレン-プロピレン共重合ゴム):JSR EP11、日本合成ゴム社製
・EMA-AA(エチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合ゴム):ベーマックG、三井デュポン・ポリケミカル社製
・EMA(エチレン-アクリル酸エステル共重合ゴム):エスプレンEMA-2152、住友化学工業社製
・NBR(アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム):Nipol1042AL、日本ゼオン社製
・EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム):三井EPT4070、三井化学社製
【0053】
(2)エポキシ基を有する原料ゴム
・ACM(エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られるACM):AR31、日本ゼオン社製
・EMA-GMA(エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート共重合ゴム):エスプレンEMA-2752、住友化学工業社製
【0054】
(3)エポキシ基を有するポリマー
・BR-g-GMA(GMAをグラフト重合したポリブタジエンゴム) ・E-MA-GMA(エチレン、アクリル酸メチル、GMAの共重合体):ボンドファースト7L、住友化学工業社製
・ACM(エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られるACM):AR31、日本ゼオン社製
【0055】
(4)配合剤
SRF級カーボンブラック:旭#50、旭カーボン社製
シリカ:ニップシールVN3、日本シリカ社製
酸化亜鉛(ZnO)
ステアリン酸
老化防止剤
・ノンフレックスOD-3、精工化学社製
・ノクラックMBZ、大内新興化学社製
ワックス(WAX):サンワックス171P、三洋化成社製
2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン:ZISNET-F、三協化成社製
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)
ジアリルフタレート(DAP)
【0056】
(5)架橋剤
・1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン:パーカドックス14/40(40重量%品)、化薬アクゾ社製
・硫黄
【0057】
(6)架橋促進剤
・メチレンジアニリン(MDA)
・ジ-o-トリルグアニジン(DT)
・テトラメチルチウラムジサルファイド(TT)
・テトラメチルチウラムモノサルファイド(TS)
・N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)
・イソシアヌル酸
・オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイド
・ジフェニルウレア
【0058】
上記のようにして得られたゴム組成物について以下の試験を行った。
<接着性試験>
接着性試験は、JIS K6256「金属片と加硫ゴムの90度はく離試験」の規定に準拠して行った。
得られた各ゴム組成物をラボ用ロールにより厚み2.5mmのシートを成形し、真鍮板と組み合わせ、圧着した。但し、はく離時にチャックでつかむ部分には、セロハン紙を配し、上下両層が接着しないようにした。その後、ラボ用プレス成形機を用いて、160℃で60分間、面圧3.0MPaで加圧加硫し、一体化して、真鍮とゴムの複合体である試験片を得た。試験片を室温に24時間放置した後、2.54cm幅に切り出し、ゴム組成物と真鍮板との間をはく離させるはく離試験を行った。はく離強さの測定は、JIS K6256「金属片と加硫ゴムの90度はく離試験」の規定に準拠し、JIS K6256に規定されている引張試験機を用い、引張速さ50mm/minの条件で行った。はく離強さの値が150N/25mm以上のときを接着性が良好であるとした。
【0059】
<引張応力(モジュラス)試験>
得られた各ゴム組成物を160℃で60分間、加圧加硫し、厚さ2mmをシートに成形した。JIS K6251の規定に準拠して、このシートからダンベル状3号形試験片を打ち抜き、JIS K6251の規定に準拠して100%モジュラス(M100)の測定を行った。
【0060】
<耐圧縮永久歪性試験>
得られた各ゴム組成物を160℃で60分間、加圧加硫し、JIS K6262「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」の5項「圧縮永久ひずみ試験方法」の規定に準拠して、JIS K6262の5.3.1に規定されている大型試験片を成形した。この試験片について、JIS K6262「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」の規定に準拠して、25%の圧縮を加え、150℃、72時間の老化条件で、圧縮永久ひずみを測定した。
【0061】
<耐熱性試験>
得られた各ゴム組成物を160℃で60分間、加圧加硫し、厚さ2mmのシートを成形した。JIS K6257「加硫ゴムの老化試験方法」の4項「空気加熱老化試験(ノーマルオーブン法)」の規定に準拠して、このシートからダンベル状3号形試験片を打ち抜き、JIS K6257の規定に準拠して、150℃、168時間の条件で空気加熱老化処理を行い、該処理前後における破断伸びを測定し、処理による破断伸びの変化率(ΔEB)を算出した。
【0062】
結果を第1表~第3表に示す。
本発明の第一の態様のゴム組成物(実施例1~21)は、金属との高い接着性を示し、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性にも優れることが分かる。これに対して、上記式1で表される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンおよびエポキシ基を有するポリマーを欠く場合(比較例1、3、5、7、9、11および13)は金属と全く接着せず、後者のみを欠く場合(比較例2、4、6、8、10、12および14)は接着するものの接着力は極めて弱く、モジュラス等の物性にも劣る。
トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートを含有する場合には、その含有量に応じてモジュラスが更に向上し、シリカを含有する場合には、金属との接着性およびモジュラス等の物性が更に向上することが分かる(実施例7および11~16ならびに17~21)。
【0063】
本発明の第二の態様のゴム組成物(実施例22および23)は、金属との高い接着性を示し、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性にも優れることが分かる。これに対して、上記式1で表される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンを欠く場合(比較例15および16)は金属と全く接着しない。
・・・
【0067】
【表4】
[図:0001397150000009.jpg]
・・・
【0069】
【表6】
[図:0001397150000010.jpg]
」
(2)甲2に記載された発明
(1)ウで摘記した実施例17、23に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されている。
ア 甲2発明1
「NBR(アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム)を100.0重量部、Br-g-GMA(GMAをグラフト重合したポリブタジエンゴム)を10.0重量部、SRF級カーボンブラックを95.0重量部、シリカを5.0重量部、酸化亜鉛(ZnO)を5.0重量部、ステアリン酸を1.0重量部、ノンフレックスOD-3を1.0重量部、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン(ZISNET-F)を1.0重量部、硫黄を1.0重量部、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TS)を1.0重量部用いたゴム組成物。」
イ 甲2発明2
「EMA-GMA(エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート共重合ゴム)を100.0重量部、SRF級カーボンブラックを95.0重量部、 酸化亜鉛(ZnO)を2.0重量部、ステアリン酸を1.0重量部、ノクラックMBZを1.5重量部、ワックス(WAX)を1.0重量部、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン(ZISNET-F)を1.0重量部、イソシアヌル酸を0.6重量部、オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイドを1.8重量部、ジフェニルウレアを1.3重量部を用いたゴム組成物。」
第6 当審の判断
取消理由及び申立理由について判断するにあたり、以下では、まず、明確性要件に関する取消理由C、D及びGについて検討し(後記1)、次に、甲1を主引例とする新規性又は進歩性に関する申立理由1、2A、取消理由A、B、E、Fについて検討し(後記2)、最後に、甲2を主引例とする進歩性に関する取消理由2Bについて検討する(後記3)。
1 取消理由C、D及びG(明確性)について
(1)取消理由Cについて
取消理由Cは、第4の2(3)のとおり、本件訂正前の請求項1に記載の「第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位」を、一般的な理解に基づき、「メタクリル酸エステル」のあらゆるモノマー単位が包含されると解するのか、本件明細書の段落【0006】の記載のとおりに「1つ以上のエポキシド官能を含むメタクリル酸エステルと異なる」として解するのか、不明であることに基づく。
これに対して、訂正事項2-4により、請求項14において、「第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まない」ことが特定された。
そして、請求項15~22は、いずれも請求項14を直接的又は間接的に引用する。
そうすると、請求項14~22において、「第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位」が、「1つ以上のエポキシド官能を含むメタクリル酸エステルと異なる」ものであることが明確になったといえる。
よって、取消理由Cは、理由がない。
(2)取消理由Dについて
取消理由2は、第4の3(1)のとおり、本件訂正前の請求項1に記載の「統計ランダムコポリマー」がどのようなものであるかが理解できないことに基づく。
これに対して、訂正事項2-3により、請求項14において、「統計ランダムコポリマー」は、「統計コポリマー」に訂正され、これは、上記第2の2(2)エのとおり、本件特許に係る国際出願日における国際出願の請求の範囲の請求項1に記載の「
[図:0001397150000011.jpg]
」の訳語であり、高分子分野の一般的な技術用語であり、明確である。
そして、請求項15~22は、いずれも請求項14を直接的又は間接的に引用する。
よって、取消理由Dは、理由がない。
(3)取消理由Gについて
取消理由Gは、上記第4の4(1)のとおり、令和4年2月3日提出の訂正請求書による訂正請求により訂正された請求項21には、「エラストマーA中に存在する第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位が、エラストマーAの100mol%のモノマー単位を表す」と記載される一方、請求項21が間接的に引用する請求項14では、エラストマーAは第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位だけでなく第2のモノマーであるモノマー単位を含むことが特定されているから、請求項21及びこれを引用する請求項22及び23は明確でないというものである。
これに対して、上記第1の1のとおり、上記令和4年2月3日提出の訂正請求書による訂正請求は取り下げられたものとみなされた。また、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項14~22には、上記のとおり明確でないとされた、令和4年2月3日提出の訂正請求書による訂正請求により訂正された請求項21~23に対応する請求項はない。
よって、取消理由Gは、理由がない。
(4)小括
以上のとおりであるから、取消理由C、D及びGは、いずれも理由がない。
2 申立理由1、2A、取消理由A、B、E、F(甲1を主引例とする新規性、進歩性)について
(1)対比
ア 本件発明14と甲1発明1を対比する。
(ア)甲1発明1の「シースト#116」はカーボンブラックであり(甲1摘記エ[0066])、これは「充填剤、および補強剤」とであるから(甲1摘記ウ[0038])、「補強用充填剤」である。
(イ)甲1発明1の「オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイド」、「トリメチルチオ尿素」、及び「1-ベンジル-2-メチルイミダゾール」は、加硫剤であるから(甲1摘記エ[0066])、「架橋系」である。
(ウ)甲1発明1の「グリシジルメタクリレート単量体単位1.4質量部と、エチルアクリレート単量体単位25.0質量部と、n-ブチルアクリレート単量体単位75.0質量部と、メチルメタクリレート単量体単位25.0質量部の共重合体組成であるアクリルゴム」は、エラストマーであるところ、当該「アクリルゴム」は、甲1発明1の組成物における唯一のエラストマーであるから、その含量は、エラストマーマトリックス中100phrであり、これがベースとなり、甲1発明1の組成物を形成しているといえる。また、甲1発明1の組成物は、ゴム組成物であるといえる。
さらに、上記アクリルゴムを構成する「グリシジルメタクリレート単量体単位」は、アクリルゴム組成物を加硫物とする際に、アクリルゴムの主鎖同士を架橋させるために配合される架橋席モノマーであるから(甲1摘記ウ[0021]、[0022])、「架橋系」である加硫剤(上記(イ))に対して反応性であるモノマー単位であり、このようなモノマー単位を含むアクリルゴムは、「架橋系」である加硫剤に対して反応性である。
さらにまた、上記アクリルゴムを構成する「メチルメタクリレート単量体単位」は、メタクリル酸エステルのモノマー単位であって、エポキシド基を有さない。また、上記アクリルゴムにおけるメチルメタクリレート単量体単位の「1.4質量部」との割合をmol分率に換算すると、22.8mol%となる。
(エ)上記(ア)~(ウ)より、本件発明14と甲1発明1とは、
「ゴム組成物であって、
-補強用充填剤、
-架橋系、
-架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスであって、エラストマーマトリックスが、エラストマーAの少なくとも20mol%のモノマー単位を表す第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位を含むエラストマーAを含んでおり、エラストマーAが、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含み、エラストマーマトリックス中のエラストマーAの含量は、少なくとも50phrであり、ただし、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まない、
前記エラストマーマトリックスをベースとする、前記ゴム組成物」
の点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】
本件発明14では、「エラストマーAが数種のモノマーのポリマーである場合には、エラストマーAは統計コポリマーである」と規定されるのに対し、甲1発明1において、アクリルゴムは複数モノマーのポリマーであるが、「統計コポリマー」であるか不明である点。
【相違点2】
「架橋系に対して反応性であるモノマー単位」に関して、本件発明14では「1,3-ジエンである第2のモノマー」であるのに対して、甲1発明1では、「グリシジルメタクリレート単量体単位」である点。
【相違点3】
本件発明14は、「ゴム組成物を含むゴムでできている半製品を含むタイヤ」であるのに対して、甲1発明1は、「ゴム組成物」である点。
イ 本件発明14と、甲1発明3、5及び7とを、上記アと同様に対比すると、いずれの場合も、上記相違点1~3と同様の相違点で相違する。
(2)判断
ア 新規性(申立理由1、取消理由A、E)について
(ア)上記(1)ア及びイのとおり、本件発明14と甲1発明は相違点1~3で相違し、本件発明14と甲1発明1、3、5又は7も、相違点1~3と同様の点で相違する。そして、このうち、少なくとも相違点2及び3は、実質的な相違点であるから、本件発明14は、甲1発明1、3、5及び7のいずれでもない。
よって、本件発明14は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)本件発明15~22は、いずれも本件発明14を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明14が甲1に記載された発明でない以上、本件発明15~22も、甲1に記載された発明ではない。
イ 進歩性(申立理由2A、取消理由B、F)について
(ア)事案に鑑み、まず、相違点3に係る事項を当業者が容易に想到し得たかについて検討する。
甲1は、アクリルゴム組成物やその加硫物は、耐熱性、耐油性、機械的特性、圧縮永久歪み特性等の物性に優れているため、自動車のエンジンルーム内のホース部材やシール部材、防振ゴム部材などの材料として多く使用されているところ、これら部材については、近年の排ガス対策やエンジンの高出力化等の影響を受け、より耐熱性を有するものが望まれていることを踏まえ、加硫物とした際に、常態物性を損なわず、特に熱老化前後の引張強度の残留率と切断時伸びの変化率の少ないアクリルゴム組成物とその加硫物とを提供することを主な課題としたものである(甲1摘記イ[0002][0003]、[0006])。
そして、実際に、甲1に記載されたアクリルゴムの加硫物が、耐熱老化性に優れることが記載され(甲1摘記エ[表1]、[表2]、[0074])、アクリルゴム組成物及びその加硫物の用途として、ゴムホース、ガスケット、パッキング等のシール部品、防振ゴム部品が記載されている(甲1摘記ウ([0040]、[0041]、[0043]、[0044])が、タイヤに関しては、記載も示唆もされていない。
そうすると、当業者は、甲1発明1、3、5、又は7のアクリルゴム組成物の用途として、ゴムホース、ガスケット、パッキング等のシール部品、防振ゴム部品があることを理解するにとどまり、当該アクリルゴムをタイヤの用途に用いることについて、何ら動機付けられたとはいえない。
よって、相違点3に係る事項は、当業者が容易に想到し得た事項ではない。
(イ)a 上記(ア)のとおり、相違点3に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明14は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、甲2の記載をみても、本件発明14が、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとするに足りる根拠は見いだせないから、本件発明14は、甲1に記載された発明及び甲1~2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
b 本件発明15~22は、本件発明14を直接的又は間接的に引用するものであるところ、本件発明14が、甲1に記載された発明及び甲1~2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明15~22も、甲1に記載された発明及び甲1~2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、申立理由2Aに関し、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、以下のとおり主張する。
ア 申立人の主張
甲2は、ゴム組成物に係る発明を開示し、当該組成物はタイヤを得るために用いられるものである。
そして、甲2の段落【0045】には、「エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られる共重合ゴム」と、「ジエン系ゴムの主鎖中の不飽和結合をエポキシ化して得られるもの」とを組み合わせて用いることができると記載され、「エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られる共重合ゴム」の具体例として「グリシジルアクリレート等を共重合成分とするエチレン-アクリル酸エステル系共重合ゴム」が、「ジエン系ゴムの主鎖中の不飽和結合をエポキシ化して得られるもの」の具体例として開示された「天然ゴムのイソプレン単位を好ましくは25~75%エポキシ化して得られるエポキシ化天然ゴム」が開示されるところ、前者は、本件発明の「エラストマーA」に相当し、後者は、本件発明の「エラストマーB」に相当するから、甲2には、本件発明の「エラストマーA」に相当するエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムと、「エラストマーB」に相当するエポキシ化天然ゴムとの組み合わせが開示されている。
そして、甲2は、金属との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性(高耐セット性)及び高耐熱性を有するゴム組成物に係る技術であり、一方で、甲1発明は、耐熱性を向上させたアクリルゴム及びアクリルゴム組成物に関する技術であり、両者は、耐熱性の向上という観点より課題を同一とするものであり、本件発明の「エラストマーA」に相当するエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムを用いる点でも一致する。
そのため、甲1に記載された発明において甲2の開示を参酌し、甲2に開示された技術を採用することは容易である(申立書23頁24行~27頁15行)。
イ 申立人の上記主張は、要するに、甲1と甲2は、耐熱性の向上という課題が共通すること、及び、いずれもエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムを用いる点で一致することから、甲1に記載された発明において、甲2に開示された、「エラストマーB」に相当する「エポキシ化天然ゴム」、及び、「タイヤ」という用途を採用することは当業者にとって容易であるというものである。
しかしながら、そもそも、本件訂正により、本件発明の「エラストマーA」は、少なくとも20mol%のモノマー単位を表す第1のメタクリル酸エステルのモノマー単位と、1,3-ジエンである、架橋系に対して反応性である第2のモノマーを含み、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まないものとなったところ、このような構造を有する「エラストマーA」は、甲1及び甲2の何れの箇所にも記載されていないから、甲1に記載された発明に甲2に開示されたいかなる事項を採用しても、本件発明には到達しない。
また、甲1は、自動車のエンジンルーム内のホース部材やシール部材、防振ゴム部材などの材料としての用途を想定して、常態物性を損なわず、特に熱老化前後の引張強度の残留率と切断時伸びの変化率の少ないアクリルゴム組成物とその加硫物とを提供することを課題としたものである(甲1摘記イ[0006]、摘記ウ[0040]、[0041]、[0043]、[0044])のに対して、甲2は、ベルト、タイヤ、ロール、型物等の、ゴム/金属複合体製品に使用されることを想定して、金属(真鍮)との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性および高耐熱性を有するため、金属の複合体に好適に用いることのできるゴム組成物を提供することを課題としており(甲2摘記ア【0001】、【0007】)、両者は想定される用途が異なり、課題についても、耐熱性という一部の課題が重複するにとどまる。 そうすると、仮に甲1と甲2とで、耐熱性の向上という課題が共通し、いずれもエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムを用いる点で一致したとしても、これらのことのみによって、ただちに、甲1に記載された発明において、甲2に開示された事項を採用することが動機付けられるということにもならない。
なお、上記のとおり、本件訂正により、本件発明の「エラストマーA」は特定の構造のものとなったから、甲2に「エラストマーA」に想到するエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムと、「エラストマーB」に想到するエポキシ化天然ゴムとの組み合わせが開示されているとはいえないし、仮に当該組み合わせが開示されていたとしても、これにより、甲1に記載された発明において、甲2に開示された事項を採用することが動機づけられるということにもならない。
よって、上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由1、2A、取消理由A、B、E、Fはいずれも理由がない。
3 取消理由2B(甲2を主引例とする進歩性)について
(1)対比
ア 本件発明14と甲2発明1を対比する。
(ア)甲2発明1の、「SRF級カーボンブラック」は、充填剤である(甲2摘記イの【0039】)。
(イ)甲2発明1の、「硫黄」及び「テトラメチルチウラムモノサルファイド(TS)」は、「架橋剤」又は「架橋促進剤」であるから(甲2摘記ウ【0056】、【0057】、第2表(その1))、「架橋系」である。
(ウ)甲2発明1の、Br-g-GMA(GMAをグラフト重合したポリブタジエンゴム)は、エラストマーであるところ、これは、有機過酸化物または硫黄により原料ゴムと架橋させることが可能な、エポキシ基を有するポリマーであり(甲2摘記イ【0031】~【0033】)、上記架橋は、エポキシ基を有するモノマー単位であるグリシジルメタクリレート単位のエポキシ基が「架橋系」(上記(イ))により架橋せしめられることにより行われることは明らかである。また、グリシジルメタクリレート単位はメタクリル酸エステルのモノマー単位でもある。
さらに、甲2発明1の、Br-g-GMA(GMAをグラフト重合したポリブタジエンゴム)は、NBR(アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム)とともに、エラストマーマトリックスを形成し、これらをベースとしてゴム組成物が形成されているものといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)より、本件発明14と甲2発明1は、
「ゴム組成物であって、
-充填剤、
-架橋系、
-架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスであって、メタクリル酸エステルのモノマー単位を含むエラストマーAを含んでおり、エラストマーマトリックス中のエラストマーAが、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含む、エラストマーマトリックスをベースとする、前記ゴム組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点4】
充填剤に関し、本件発明14は「補強用」であるが、甲2発明1ではその旨の特定がない点。
【相違点5】
エラストマーAに関し、本件発明14では、メタクリル酸エステルのモノマー単位が「少なくとも20mol%」含まれ、「ただし、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含ま」ず、架橋系に対して反応性であるモノマー単位が「1,3-ジエンである第2のモノマー」であるのに対して、甲2発明1では、Br-g-GMA(GMAをグラフト重合したポリブタジエンゴム)中のメタクリル酸エステルのモノマー単位であるグリシジルメタクリレートの含有量が不明であり、グリシジルメタクリレートは、エポシキド基を有するメタクリル酸エステルであり、架橋系に対して反応性であるモノマー単位も、グリシジルメタクリレートである点。
【相違点6】
本件発明14では、エラストマーマトリックス中のエラストマーAの含量は、少なくとも50phrであるのに対して、甲2発明1では、Br-g-GMA(GMAをグラフト重合したポリブタジエンゴム)の、エラストマーマトリックス中の含有割合は、9.1重量%(=(10/(100+10))×100)である点。
【相違点7】
本件発明14は、「ゴム組成物を含むゴムでできている半製品を含むタイヤ」であるのに対して、甲2発明1は、「ゴム組成物」である点。
イ 本件発明14と甲2発明2を対比する。
(ア)甲2発明2の、「SRF級カーボンブラック」は、充填剤である(甲2摘記イの【0039】)。
(イ)甲2発明2の、「イソシアヌル酸」「オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイド」及び「ジフェニルウレア」は、「架橋剤」または「架橋促進剤」であるから(甲2摘記ウ【0057】の第3表)、「架橋系」である。
(ウ)甲2発明2の、EMA-GMA(エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート共重合ゴム)は、エラストマーであるところ、これは、エポキシ基を有する、架橋可能なゴムであり(甲2摘記イの【0045】)、上記架橋は、グリシジルメタクリレート単位のエポキシ基が「架橋系」(上記(イ))により架橋せしめられることにより行われることは明らかである。また、グリシジルメタクリレート単位はメタクリル酸エステルのモノマー単位でもある。
さらに、甲2発明2の、EMA-GMA(エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート共重合ゴム)は、エラストマーマトリックスを形成し、これをベースとしてゴム組成物が形成されているものといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)より、本件発明14と甲2発明2は、
「ゴム組成物であって、
-充填剤、
-架橋系、
-架橋系に対して反応性であるエラストマーマトリックスであって、メタクリル酸エステルのモノマー単位を含むエラストマーAを含んでおり、エラストマーマトリックス中のエラストマーAが、架橋系に対して反応性であるモノマー単位を含み、エラストマーマトリックス中のエラストマーAの含量は、少なくとも50phrであり、エストマーマトリックスをベースとする、前記ゴム組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点8】
充填剤に関し、本件発明14は「補強用」であるが、甲2発明2ではその旨の特定がない点。
【相違点9】
エラストマーAに関し、本件発明14では、メタクリル酸エステルのモノマー単位が「少なくとも20mol%」含まれ、「ただし、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含ま」ず、架橋系に対して反応性であるモノマー単位が「1,3-ジエンである第2のモノマー」であるのに対して、甲2発明2では、EMA-GMA中のメタクリル酸エステルのモノマー単位であるグリシジルメタクリレートの含有量が不明であり、グリシジルメタクリレートは、エポシキド基を有するメタクリル酸エステルであり、架橋系に対して反応性であるモノマー単位も、グリシジルメタクリレートである点。
【相違点10】
本件発明14は、「ゴム組成物を含むゴムでできている半製品を含むタイヤ」であるのに対して、甲2発明2は、「ゴム組成物」である点。
(2)判断
ア 上記(1)アのとおり、本件発明14と甲2発明1とは、相違点4~7で相違する。
(ア)事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。
甲2は、原料ゴムと、式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンとエポキシ基を有するポリマーを特定量で含有するゴム組成物(第一の態様)及び、エポキシ基を有する原料ゴムと式1で示される2,4-ジメルカプト-6-置換-1,3,5-トリアジンを含有するゴム組成物(第二の態様)を開示する(甲2摘記ア【0008】、【0020】、摘記ウ【0025】、【0044】)。
そして、甲2発明1の組成物は第一の態様であり、「BR-g-GMA」は、「エポキシ基を有するポリマー」として用いられたものである(甲2摘記ウ【0054】、【0062】、第2表(その1))。
しかるに、甲2には、「エポキシ基を有するポリマー」として、本件発明の「エラストマーA」の構造を有するものを用いることなど記載も示唆もされていないから、甲2発明1において、「BR-g-GMA」にかえて、本件発明のエラストマーAと同一の構造、すなわち、メタクリル酸エステルのモノマー単位である第1のメタクリル酸エステルを少なくとも20mol%含み、第1のメタクリル酸エステルは、エポキシド基を有するメタクリル酸エステルを含まず、架橋系に対して反応性であるモノマー単位が1,3-ジエンである第2のモノマーであるエラストマーを使用することなど、何ら動機付けられない。
よって、相違点5に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。
(イ)上記(ア)のとおり、相違点5に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は、甲2発明1及び甲2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 上記(1)イのとおり、本件発明14と甲2発明2とは、相違点8~10で相違する。
(ア)事案に鑑み、まず、相違点9について検討する。
上記アのとおり、甲2は、第一の態様及び第二の態様を開示するところ、甲2発明2の組成物は第二の態様であり、「EMA-GMA」は、「エポキシ基を有する原料ゴム」として用いられたものである(甲2摘記ウ【0053】、【0063】、第3表)。
しかるに、甲2には、「エポキシ基を有する原料ゴム」として、本件発明のエラストマーAの構造を有するものを用いることなど記載も示唆もされていないから、甲2発明2において、「EMA-GMA」にかえて、本件発明のエラストマーAと同一の構造のものを使用することなど何ら動機付けられない。
よって、相違点9に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。
(イ)上記(ア)のとおり、相違点9に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は、甲2発明2及び甲2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 上記ア及びイのとおりであるから、本件発明14は、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、甲1の記載をみても、本件発明14が、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとするに足りる記載はない。
よって、本件発明14は、甲2に記載された発明及び甲1~2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明15~22は、本件発明14を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明14が、甲2に記載された発明及び甲1~2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明15~22も、甲2に記載された発明及び甲1~2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、申立理由2Bに関し、申立書において、以下のとおり主張する。
ア 上記2(3)アのとおり、甲2には、本件発明の「エラストマーA」に相当するエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムと、本件発明の「エラストマーB」に相当するエポキシ化天然ゴムとの組み合わせが開示されている。
そして、甲2は、金属との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性(高耐セット性)及び高耐熱性を有するゴム組成物に係る技術であり、一方で、甲1発明は、耐熱性を向上させたアクリルゴム及びアクリルゴム組成物に関する技術であり、両者は、耐熱性の向上という観点より課題を同一とするものであり、本件発明の「エラストマーA」に相当するエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムを用いる点でも一致する。
そのため、甲2に記載された発明において、甲1の開示を参酌し、甲1に開示された技術を採用することは容易である(申立書27頁17行~30頁6行)。
イ しかしながら、上記2(3)イのとおり、本件訂正により、特定された「エラストマーA」について、甲2及び甲1の何れの箇所にも記載されていないのだから、甲2に記載された発明において、甲1に開示されたいかなる事項を採用したとしても、本件発明には到達しない。
また、上記2(3)イのとおり、甲2と甲1とでは、想定される用途が異なり、課題についても、耐熱性という一部の課題が重複するにとどまるのだから、仮に甲2と甲1とで、耐熱性の向上という課題が共通し、いずれもエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムを用いる点で一致したとしても、これらのことのみによって、ただちに、甲2に記載された発明において、甲1に開示された事項を採用することが動機付けられるということにもならない。
そして、このことは、甲2に、エポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムと、エポキシ化天然ゴムとの組み合わせが開示されていることに何ら左右されない。
なお、甲2に「エラストマーA」に想到するエポキシ基を含有するアクリル系共重合ゴムと、「エラストマーB」に想到するエポキシ化天然ゴムとの組み合わせが開示されているとはいえないことは、上記2(3)イのとおりであるし、仮に当該組み合わせが開示されていたとしても、これにより、甲2に記載された発明において、甲1に開示された事項を採用することが動機づけられるということにもならない。
よって、上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、取消理由2Bは理由がない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項14~22に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項14~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1~8、10~13に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除され、これにより請求項1~8、10~13に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700739