特許異議申立
2020-700710
立体駐車装置の制御システムとこれを備える立体駐車装置、及び立体駐車装置の制御方法
- 審判番号
- 2020-700710
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-224165
- 登録番号
- 6674233
- 請求日
- 2020年09月17日
- 審決日
- 2021年11月26日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】新明和パークテック株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
- 【異議申立人】田中 清史
- 審判長/審判官
- 審判長 森次 顕
- 審判官 長井 真一
- 審判官 住田 秀弘
- 分類
- P1651.16 -YAA(E04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6674233号発明「立体駐車装置の制御システムとこれを備える立体駐車装置、及び立体駐車装置の制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6674233号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4、5〕について訂正することを認める。
特許第6674233号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6674233号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成27年11月16日にされたものであり、令和2年3月10日にその特許権の設定登録がされ、同年4月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年9月17日に特許異議申立人 田中清史(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされ、当審より同年12月7日付けで取消理由を通知したところ、令和3年2月8日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がされ、これに対し、同年3月23日に申立人より意見書が提出された。
その後、さらに当審より令和3年4月15日付けで期間を指定して取消理由(決定の予告)を通知したところ、その指定期間内である同年6月17日(受付)に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされた。そして、申立人に対し、期間を指定して、この意見書及び本件訂正請求に対して意見を述べる機会を与えたが、その指定期間内に何らの応答もなかった。)
なお、本件訂正請求がされたことにより、令和3年2月8日にされた訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6674233号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)一群の請求項1~3に係る訂正
ア 訂正事項
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「複数の可動式パレットと、開閉ゲートと、該開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤とを備えた立体駐車装置の制御システムであって、制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段と、システム制御部とを含み、前記システム制御部は、前記キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものであり、前記制御キーが、前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーであり、前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を、前記システム制御部に対して出力し、前記システム制御部は、前記キー識別手段から取得する前記挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止することを特徴とする立体駐車装置の制御システム。」と記載されているのを、
「複数の可動式パレットと、開閉ゲートと、該開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤とを備えた立体駐車装置の制御システムであって、制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段と、システム制御部とを含み、前記システム制御部は、前記キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものであり、前記制御キーが、前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーであり、前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を、前記システム制御部に対して出力し、前記システム制御部は、前記キー識別手段から取得する前記挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、前記キー識別手段が、前記物理的キーの半抜け防止手段を備えることを特徴とする立体駐車装置の制御システム。」に訂正する(請求項1の記載を直接的に引用する請求項2、3も同様に訂正する)。
(イ)訂正事項2
明細書の段落【0008】に「(2)上記(1)項において、前記制御キーが、前記キー識別手段に対して物理的に入出力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーであり、前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を、前記システム制御部に対して出力し、前記システム制御部は、前記キー識別手段から取得する前記挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止する立体駐車装置の制御システム(請求項1)。」と記載されているのを、
「(2)上記(1)項において、前記制御キーが、前記キー識別手段に対して物理的に入出力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーであり、前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を、前記システム制御部に対して出力し、前記システム制御部は、前記キー識別手段から取得する前記挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止する立体駐車装置の制御システム。」に訂正する。
(ウ)訂正事項3
明細書の段落【0011】に「(3)上記(2)項において、前記立体駐車装置は、前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作が、前記操作盤に対する、認証済みの使用者による電源投入操作から電源切断操作までの間に行われ、前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を検知すると共に、該検知結果に基づいて前記挿抜識別信号を出力するキー挿抜検知手段と、前記物理的キーの物理的入力の喪失を防止するようにロックを施すキーロック機構とを備え、前記システム制御部は、前記電源投入操作の直後と前記可動式パレットの呼び出し操作の直後と前記開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを解除し、前記開閉ゲートの閉操作の直後或いは前記電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを施す立体駐車装置の制御システム(請求項2)。」と記載されているのを、
「(3)上記(2)項において、前記キー識別手段が、前記物理的キー半抜け防止手段を備える立体駐車装置の制御システム(請求項1)。本項に記載の立体駐車装置の制御システムは、キー識別手段が物理的キーの半抜け防止手段を備えることで、物理的キーが半抜けの状態でキー識別手段に残されることを防止するため、操作盤から離れて車両の入出庫等を行う使用者に対して、物理的キーの所持をより確実に促すものとなる。」に訂正する。
(エ)訂正事項4
明細書の段落【0012】に「本項に記載の立体駐車装置の制御システムは、キー識別手段が、キー挿抜検知手段とキーロック機構とを備えるものである。キー挿抜検知手段は、認識可能な識別パターン部を有する物理的キーの物理的入力の有無、すなわち、正規の物理的キーであることを示す識別パターン部を有する物理的キーが、物理的に入力されているか否かを検知する。そして、キー挿抜検知手段は、その検知結果に基づいて、物理的キーが物理的に入力されているか否かを示す挿抜識別信号を出力する。一方、キーロック機構は、物理的キーによるキー識別手段に対しての物理的入力が喪失されることを防止するように、ロックを施すものである。又、キーロック機構は、例えばシステム制御部から制御信号を受信することで、システム制御部によりロックの動作が制御される。そして、システム制御部は、電源投入操作の直後と可動式パレットの呼び出し操作の直後と開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、キーロック機構のロックを解除し、開閉ゲートの閉操作の直後或いは電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、キーロック機構のロックを有効にする。」と記載されているのを、
「(4)上記(3)項において、前記立体駐車装置は、前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作が、前記操作盤に対する、認証済みの使用者による電源投入操作から電源切断操作までの間に行われ、前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を検知すると共に、該検知結果に基づいて前記挿抜識別信号を出力するキー挿抜検知手段と、前記物理的キーの物理的入力の喪失を防止するようにロックを施すキーロック機構とを備え、前記システム制御部は、前記電源投入操作の直後と前記可動式パレットの呼び出し操作の直後と前記開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを解除し、前記開閉ゲートの閉操作の直後或いは前記電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを施す立体駐車装置の制御システム(請求項2)。」に訂正する。
(オ)訂正事項5
明細書の段落【0013】に「ここで、本項に記載の立体駐車装置の制御システムが適用される立体駐車装置では、操作盤に対する電源投入操作が、例えば、立体駐車装置の使用者のみが所有する電源キー等を用いて行われることで、立体駐車装置の正規の使用者であることが認証された状態で行われる。従って、キーロック機構による物理的キーのロックは、立体駐車装置の使用者であることが認証された後で、解除されることになる。更に、開閉ゲートの閉操作や電源切断操作は、車両の入出庫等を終えた使用者が、開閉ゲートを閉じるために行う必要のある、キー識別手段に対する物理的キーの物理的な入力がなされた状態で、行われるものである。従って、キーロック機構による物理的キーのロックは、使用者による車両の入出庫等が終了した後に、施されることになる。これにより、使用者が物理的キーを所持した状態で車両の入出庫等を行っている期間を除き、キーロック機構によって物理的キーのロックが施されるため、立体駐車装置の使用者以外の人物が、キー識別手段から物理的キーを取り出すことが防止されるものである。」と記載されているのを、
「本項に記載の立体駐車装置の制御システムは、キー識別手段が、キー挿抜検知手段とキーロック機構とを備えるものである。キー挿抜検知手段は、認識可能な識別パターン部を有する物理的キーの物理的入力の有無、すなわち、正規の物理的キーであることを示す識別パターン部を有する物理的キーが、物理的に入力されているか否かを検知する。そして、キー挿抜検知手段は、その検知結果に基づいて、物理的キーが物理的に入力されているか否かを示す挿抜識別信号を出力する。一方、キーロック機構は、物理的キーによるキー識別手段に対しての物理的入力が喪失されることを防止するように、ロックを施すものである。又、キーロック機構は、例えばシステム制御部から制御信号を受信することで、システム制御部によりロックの動作が制御される。そして、システム制御部は、電源投入操作の直後と可動パレットの呼び出し操作の直後と開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、キーロック機構のロックを解除し、開閉ゲートの閉操作の直後或いは電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、キーロック機構のロックを有効にする。」に訂正する。
(カ)訂正事項6
明細書の段落【0014】に「(4)上記(2)(3)項において、前記キー識別手段が、前記物理的キーの半抜け防止手段を備える立体駐車装置の制御システム。本項に記載の立体駐車装置の制御システムは、キー識別手段が物理的キーの半抜け防止手段を備えることで、物理的キーが半抜けの状態でキー識別手段に残されることが防止されるため、操作盤から離れて車両の入出庫等を行う使用者に対して、物理的キーの所持をより確実に促すものとなる。」と記載されているのを、
「ここで、本項に記載の立体駐車装置の制御システムが適用される立体駐車装置では、操作盤に対する電源投入操作が、例えば、立体駐車装置の使用者のみが所有する電源キー等を用いて行われることで、立体駐車装置の正規の使用者であることが認証された状態で行われる。従って、キーロック機構による物理的キーのロックは、立体駐車装置の使用者であることが認証された後で、解除されることになる。更に、開閉ゲートの閉操作や電源切断操作は、車両の入出庫等を終えた使用者が、開閉ゲートを閉じるために行う必要のある、キー識別手段に対する物理的キーの物理的な入力がなされた状態で、行われるものである。従って、キーロック機構による物理的キーのロックは、使用者による車両の入出庫等が終了した後に、施されることになる。これにより、使用者が物理的キーを所持した状態で車両の入出庫等を行っている期間を除き、キーロック機構によって物理的キーのロックが施されるため、立体駐車装置の使用者以外の人物が、キー識別手段から物理的キーを取り出すことが防止されるものである。」に訂正する。
(2)一群の請求項4、5に係る訂正
ア 訂正事項
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4に「複数の可動式パレットと、開閉ゲートと、該開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤とを備えた立体駐車装置の制御方法であって、制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段を設置し、該キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、前記制御キーとして、前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーを用い、前記キー識別手段から、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を出力し、該挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止することを特徴とする立体駐車装置の制御方法。」と記載されているのを、
「複数の可動式パレットと、開閉ゲートと、該開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤とを備えた立体駐車装置の制御方法であって、制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段を設置し、該キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、前記制御キーとして、前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーを用い、前記キー識別手段から、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を出力し、該挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、前記キー識別手段に、前記物理的キーの半抜け防止手段を設けることを特徴とする立体駐車装置の制御方法。」に訂正する(請求項4の記載を直接的に引用する請求項5も同様に訂正する)。
(イ)訂正事項2
明細書の段落【0022】に「(10)上記(9)項において、前記制御キーとして、前記キー識別手段に対して物理的に入出力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーを用い、前記キー識別手段から、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を出力し、該挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止する立体駐車装置の制御方法(請求項4)。」と記載されているのを、
「(10)上記(9)項において、前記制御キーとして、前記キー識別手段に対して物理的に入出力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーを用い、前記キー識別手段から、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を出力し、該挿抜識別信号に基づいて、前記キ一識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止する立体駐車装置の制御方法。(11)上記(10)項において、前記キー識別手段に、前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける立体駐車装置の制御方法(請求項4)。」に訂正する。
(ウ)訂正事項3
明細書の段落【0023】に「(11)上記(10)項において、前記立体駐車装置は、前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を、前記操作盤に対する、認証済みの使用者による電源投入操作から電源切断操作までの間に受けるものであり、前記キー識別手段に、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を検知すると共に、該検知結果に基づいて前記挿抜識別信号を出力するキー挿抜検知手段と、前記物理的キーの物理的入力の喪失を防止するようにロックを施すキーロック機構とを設け、前記電源投入操作の直後と前記可動式パレットの呼び出し操作の直後と前記開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを解除し、前記開閉ゲートの閉操作の直後或いは前記電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを施す立体駐車装置の制御方法(請求項5)。(12)上記(10)(11)項において、前記キー識別手段に、前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける立体駐車装置の制御方法。」と記載されているのを、
「(12)上記(11)項において、前記立体駐車装置は、前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を、前記操作盤に対する、認証済みの使用者による電源投入操作から電源切断操作までの間に受けるものであり、前記キー識別手段に、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を検知すると共に、該検知結果に基づいて前記挿抜識別信号を出力するキー挿抜検知手段と、前記物理的キーの物理的入力の喪失を防止するようにロックを施すキーロック機構とを設け、前記電源投入操作の直後と前記可動式パレットの呼び出し操作の直後と前記開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを解除し、前記開閉ゲートの閉操作の直後或いは前記電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを施す立体駐車装置の制御方法(請求項5)。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)一群の請求項1~3に係る訂正について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キー」における「キー識別手段」とこれに入力される「物理的キー」との関係について、「前記キー識別手段」が「前記物理的キーの半抜け防止手段を備える」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものか
訂正事項1は、上記(ア)のとおり、「前記キー識別手段」が「前記物理的キーの半抜け防止手段を備える」ことを特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものか
本件明細書等の段落【0014】に「本項に記載の立体駐車装置の制御システムは、キー識別手段が物理的キーの半抜け防止手段を備えることで、物理的キーが半抜けの状態でキー識別手段に残されることが防止される」と記載されているから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
イ 訂正事項2
訂正事項2は、明細書の段落【0008】について、訂正前に請求項1に対応するものであったのを、訂正事項1により、請求項1の記載が訂正され、請求項1に対応するものでなくなったのに整合させるべく、訂正前に記載の「(請求項1)」を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 訂正事項3
訂正事項3は、明細書の段落【0011】について、訂正前に請求項2に対応するものであったのを、訂正事項1により、請求項1の記載が訂正されたのに伴い、訂正後の請求項1に対応させるようにしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3により、訂正後に明細書の段落【0011】に記載されることとなった事項は、本件明細書等の段落【0014】に「本項に記載の立体駐車装置の制御システムは、キー識別手段が物理的キーの半抜け防止手段を備えることで、物理的キーが半抜けの状態でキー識別手段に残されることが防止されるため、操作盤から離れて車両の入出庫等を行う使用者に対して、物理的キーの所持をより確実に促すものとなる。」と記載されているから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項4
訂正事項4は、明細書の段落【0012】について、訂正事項3により明細書の段落【0011】が訂正されたのに伴い、訂正前に同段落に記載されていた事項を記載することとしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4に係る事項は、本件明細書等の段落【0011】に記載されているから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項5
訂正事項5は、明細書の段落【0013】について、訂正事項4により明細書の段落【0012】が訂正されたのに伴い、訂正前に同段落に記載されていた事項を記載することとしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5に係る事項は、本件明細書等の段落【0012】に記載されているから、訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
カ 訂正事項6
訂正事項6は、明細書の段落【0014】について、訂正事項5により明細書の段落【0013】が訂正されたのに伴い、訂正前に同段落に記載されていた事項を記載することとしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項6に係る事項は、本件明細書等の段落【0013】に記載されたいるから、訂正事項6は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
キ 一群の請求項、明細書の訂正と関係する請求項の説明
訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし3は、一群の請求項である。
そして、訂正事項2ないし6は、一群の請求項1ないし3に関する訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条4項の規定に適合する。
ク 小括
したがって、訂正事項1ないし6は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、一群の請求項1~3について訂正することを認める。
(2)一群の請求項4、5に係る訂正について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項4に記載の「前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キー」における「キー識別手段」とこれに入力される「物理的キー」との関係について、「前記キー識別手段」に「前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものか
訂正事項1は、上記(ア)のとおり、「前記キー識別手段」に「前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける」ことを特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものか
本件明細書等の段落【0014】に「本項に記載の立体駐車装置の制御システムは、キー識別手段が物理的キーの半抜け防止手段を備えることで、物理的キーが半抜けの状態でキー識別手段に残されることが防止される」と記載されているから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
イ 訂正事項2
訂正事項2は、明細書の段落【0022】について、訂正事項1により、請求項4の記載が訂正されたのに整合させるべく、「(11)上記(10)項において、前記キー識別手段に、前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける立体駐車装置の制御方法(請求項4)。」との記載を挿入するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項2は、訂正事項1により、請求項4の記載が訂正されたのに伴い、明細書の記載をこれに整合させるようにしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 訂正事項3
訂正事項3は、明細書の段落【0023】について、訂正事項2により、明細書の段落【0022】に「(11)上記(10)項において、前記キー識別手段に、前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける立体駐車装置の制御方法(請求項4)。」との記載を挿入したことに伴い、括弧内の番号を繰り下げ、挿入した記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
エ 一群の請求項、明細書の訂正と関係する請求項の説明
訂正前の請求項4,5について、請求項5は、請求項4を直接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項4,5は、一群の請求項である。
そして、訂正事項2及び3は、一群の請求項4,5に関する訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条4項の規定に適合する。
オ 小括
したがって、訂正事項1ないし3は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、一群の請求項4、5について訂正することを認める。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による一群の請求項1~3及び一群の請求項4、5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4、5〕について訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2」で検討したとおり、本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(カテゴリが異なる請求項1及び4に便宜のために当審でそれぞれ分説A~H、A’~H’を付した。対応する分説には同じアルファベット記号を用いた。)
「【請求項1】
A 複数の可動式パレットと、開閉ゲートと、該開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤とを備えた立体駐車装置の制御システムであって、
B 制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段と、システム制御部とを含み、
C 前記システム制御部は、前記キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものであり、
D 前記制御キーが、前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーであり、
E 前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を、前記システム制御部に対して出力し、
F 前記システム制御部は、前記キー識別手段から取得する前記挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、
G 前記キー識別手段が、前記物理的キーの半抜け防止手段を備える
H ことを特徴とする立体駐車装置の制御システム。
【請求項2】
前記立体駐車装置は、前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作が、前記操作盤に対する、認証済みの使用者による電源投入操作から電源切断操作までの間に行われ、
前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を検知すると共に、該検知結果に基づいて前記挿抜識別信号を出力するキー挿抜検知手段と、前記物理的キーの物理的入力の喪失を防止するようにロックを施すキーロック機構とを備え、
前記システム制御部は、前記電源投入操作の直後と前記可動式パレットの呼び出し操作の直後と前記開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを解除し、前記開閉ゲートの閉操作の直後或いは前記電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを施すことを特徴とする請求項1記載の立体駐車装置の制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の立体駐車装置の制御システムを備えた立体駐車装置であって、
装置を制御する装置制御部を含み、前記システム制御部が前記装置制御部に組み込まれていることを特徴とする立体駐車装置。
【請求項4】
A’複数の可動式パレットと、開閉ゲートと、該開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤とを備えた立体駐車装置の制御方法であって、
B’制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段を設置し、
C’該キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、
D’前記制御キーとして、前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーを用い、
E’前記キー識別手段から、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を出力し、
F’該挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、
G’前記キー識別手段に、前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける
H’ことを特徴とする立体駐車装置の制御方法。
【請求項5】
前記立体駐車装置は、前記開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を、前記操作盤に対する、認証済みの使用者による電源投入操作から電源切断操作までの間に受けるものであり、
前記キー識別手段に、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を検知すると共に、該検知結果に基づいて前記挿抜識別信号を出力するキー挿抜検知手段と、前記物理的キーの物理的入力の喪失を防止するようにロックを施すキーロック機構とを設け、
前記電源投入操作の直後と前記可動式パレットの呼び出し操作の直後と前記開閉ゲートの開動作の直前との何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを解除し、前記開閉ゲートの閉操作の直後或いは前記電源切断操作の直後の何れかのタイミングで、前記キーロック機構のロックを施すことを特徴とする請求項4記載の立体駐車装置の制御方法。」
第4 当審より通知した取消理由(決定の予告を含む)の概要
当審より通知した令和2年12月7日付け取消理由、令和3年4月15日付け取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
1 令和2年12月7日付け取消理由通知
当審が令和2年12月7日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
「本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2014-151698号(特開2016-29238号)(甲第1号証。以下「甲1」という。)に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(以下「甲1発明」という。)と同一であり、しかも、本件特許に係る出願の発明者が甲1の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る出願の時において、その出願人が甲1の特許出願の出願人と同一でもない。
したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであるから、特許を受けることができないものである。」
2 令和3年4月15日付け取消理由通知(決定の予告)
上記「1」の取消理由通知後にされた令和3年2月8日にされた訂正の請求において請求項1、4が削除されたところ、当審が同年4月15日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
「本件発明2,3及び5は、甲1発明と同一(実質同一)であるから、特許法29条の2の規定に違反してされたものであり、請求項2,3,5に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。」
第5 当審の判断
1 甲1当初明細書等に記載された事項
(1)甲1当初明細書等の記載
特願2014-151698号(特開2016-29238号)(甲1)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲1当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
ア 「【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示すように、この実施形態の複数列多段式駐車装置1は、複数本の支柱2及び横梁3により枠組みされた枠組体5を骨格として構築され、上下に3段、左右に3列の格納スペースが形成されている。上段は高車高車HWの格納が可能な上段格納スペース6、中段は高車高車HWの格納が可能な中段格納スペース7、下段は低車高車LWを格納する下段格納スペース8となっている。これら格納スペース6~8のうち、上段格納スペース6及び中段格納スペース7は地上に設けられ、下段格納スペース8は地下に掘削して形成されたピット9内に設けられている。
【0039】
上記上段格納スペース6には3台の上段パレット10が横方向に並設され、上記下段格納スペース8には3台の下段パレット11が横方向に並設され、上記中段格納スペース7には1台少ない2台の中段パレット12が左行横行位置で横方向に並設されている。・・・
【0040】
地上階の中段格納スペース7が乗入れ部20となっており、入出庫車両である高車高車HW及び低車高車LWは、この乗入れ部20から中段格納スペース7に位置する各パレット10~12に入出庫される。
【0041】
この乗入れ部20の前部には、前面フェンス21が上下方向に開閉可能に設けられている。この前面フェンス21の開閉動作により、中段格納スペース7と乗入れ床22とが連通又は遮断されるようになっている。前面フェンス21は、支柱2の上部に設けられたフェンス開閉駆動部25によって駆動するバランスチェーン26によって開閉させられる。このバランスチェーン26の端部には、カウンタウエイト27が設けられている。
【0042】
そして、上記枠組体5の乗入れ部20側における右側の支柱2には、操作盤30が配設されており、この操作盤30に操作禁止媒体50が設けられている。
【0043】
次に、図2に基づいて、上記前面フェンス21を有する駐車装置1の操作盤30に設けられた操作禁止媒体50と、その操作禁止媒体50を備えた操作禁止装置70について説明する。
【0044】
図2(a)に示すように、操作盤30には、電源キー31を差し込む部分と、フェンス開ボタン32、フェンス閉ボタン33、スタートボタン34、及びテンキーボタン35とが設けられている。テンキーボタン35の上方にはパレット呼び番号を表示する表示部36が設けられている。
【0045】
そして、この第1実施形態では、操作盤30に利用者が抜き差し可能な操作禁止媒体50としての操作禁止キー51が設けられている。この操作禁止キー51は、図2(b)に示すように差し込んだ状態から、図2(c)に示すように抜き取り可能となっている。
【0046】
次に、このような操作禁止キー51が設けられた操作禁止装置70による駐車装置1の機械動作の禁止について詳細に説明する。
【0047】
前面フェンス21がある場合、まず、前面フェンス21が閉まった状態で呼び操作をする。この呼び操作としては、前面フェンス21が閉まった待機状態で電源キー31を差して電源を入れる。電源キー31は、利用者が携帯するものであり、駐車装置1の運転操作を許可するための認証手段である。認証手段としては、電源キー31以外に、暗証番号、運転リモコン、認証カードなどによる認証としてもよい。また、複数の認証手段によって認証するようにしてもよい。この認証は、制御装置60によって確認される。その後、テンキーボタン35で呼び番号を押し、スタートボタン34を押す。これにより、駐車装置1が動作して呼び番号のパレットに車両を格納するための準備が行われる。呼び番号のパレットが入庫位置に配置されると、フェンス開ボタン32を押して前面フェンス21を開ける。
【0048】
そして、利用者は、操作盤30から操作禁止キー51を抜き取り、その操作禁止キー51を持って駐車装置1の中に入って入庫作業を行う。この操作禁止キー51は、電源キー31を差し込まないと抜くことができない。このように操作禁止キー51を抜き取ることにより、制御装置60によって、操作盤30による入出庫のための機械動作の操作が無効となる。これにより、他の利用者による操作盤30の操作による 駐車装置1の機械動作を禁止することができる。この実施形態では、入出庫のための機械動作の操作として、フェンス閉ボタン33、スタートボタン34、テンキーボタン35のいずれか又は複数の操作が無効となり、他の利用者によるフェンス閉操作やパレット呼び操作を禁止している。
【0049】
なお、利用者が操作禁止キー51を必ず抜くようにするために、操作禁止キー51を差した状態ではフェンス開ボタン32による操作を無効にして操作不可とし、操作禁止キー51を抜くことでフェンス開ボタン32の操作が有効となるようにしてもよい。
・・・
【0051】
一方、駐車装置1が待機中で電源キー31が「入」の状態になるまでは、操作禁止キー51が抜けないようにロック装置・・・で操作禁止キー51をロックしてもよい。このロック装置としては、電磁ソレノイド、電子ロックなどを用いることができる。この場合、呼び操作による搬出/格納準備動作の完了、又は前面フェンス21の開放のいずれかの信号に基づいてロックが解除され、操作禁止キー51が抜けるようにできる。このようにすることで、いたずら等で利用者以外が操作禁止キー51を抜いたり、誤操作で操作禁止キー51が抜かれることを防ぐことができる。このロック装置の制御は、制御装置60によって行なえばよい。また、複数の認証条件を設定してもよい。例えば、電源キー31の「入」操作と、暗証番号の入力等でもよい。
・・・
【0053】
そして、利用者が車両を入出庫した後、駐車装置1から出て操作盤30の位置に戻り、操作禁止キー51を元の位置に差す。これにより、フェンス閉ボタン33の操作が可能となり、前面フェンス21を閉めることができる。そして、電源キー31を抜いて駐車装置1の電源を切る。」
イ 図2は、次のものである。
「【図2】
[図:0001382355000001.jpg]
」
図2(c)からは、「操作禁止キー51」の先端部に凹凸が形成されていることが看取される。
(2)甲1発明
上記(1)で摘記又は看取した事項によれば、甲1当初明細書等には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「【甲1発明】
複数列多段式駐車装置1は、複数本の支柱2及び横梁3により枠組みされた枠組体5を骨格として構築され、地上階の中段格納スペース7が乗入れ部20となっており、乗入れ部20の前部には、前面フェンス21が上下方向に開閉可能に設けられ、上記枠組体5の乗入れ部20側における右側の支柱2に配設された操作盤30には、フェンス開ボタン32、フェンス閉ボタン33、スタートボタン34、及びテンキーボタン35とが設けられ、テンキーボタン35で呼び番号を押し、スタートボタン34を押すことで呼び番号のパレットが入庫位置に配置されると、フェンス開ボタン32を押して前面フェンス21を開け、フェンス閉ボタン33の操作により、前面フェンス21を閉めることができ、
操作盤30に利用者が抜き差し可能な操作禁止キー51が設けられており、
駐車装置1が待機中で電源キー31が「入」の状態になるまでは、操作禁止キー51が抜けないようにロック装置で操作禁止キー51をロックし、
操作禁止キー51が設けられた操作禁止装置70による駐車装置1の機械動作の禁止について、
操作禁止キー51を抜くことでフェンス開ボタン32の操作が有効となり、操作禁止キー51を抜き取ることにより、制御装置60によって、フェンス閉ボタン33の操作が無効となり、他の利用者によるフェンス閉操作を禁止し、利用者が車両を入出庫した後、駐車装置1から出て操作盤30の位置に戻り、操作禁止キー51を元の位置に差すことにより、フェンス閉ボタン33の操作が可能となり、前面フェンス21を閉めることができる、
複数列多段式駐車装置1。」
2 本件発明1について
(1)対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 構成Aについて
甲1発明は、「呼び番号のパレットが入庫位置に配置される」ものであるから、本件発明1の『複数の可動式パレット』の存在を前提にしている。甲1発明において、「乗入れ部20の前部」に「上下方向に開閉可能に設けられ」た「前面フェンス21」は、本件発明1の『開閉ゲート』に相当する。
甲1発明における「操作盤30」は、「フェンス開ボタン32」を押すことで「前面フェンス21を開ける」ことができ、「フェンス閉ボタン33」の操作により「前面フェンス21を閉める」ことができるから、本件発明1の『該開閉ゲートの開閉操作』を行うための『操作盤』に相当する。
甲1発明における「操作盤30」は、「テンキーボタン35」で呼び番号を押し、「スタートボタン34」を押すことで「呼び番号のパレット(『可動式パレット』に相当)」が「入庫位置に配置される」から、本件発明1の『前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤』に相当する。
甲1発明における「複数列多段式駐車装置1」は、本件発明1の『立体駐車装置』に相当するところ、甲1発明は、「操作盤30」における操作により、「前面フェンス21」の開閉操作や「呼び番号のパレット」の呼び出し操作を行うことができるから、甲1発明が、本件発明1の『立体駐車装置の制御システム』に相当する構成を有することは明らかである。
以上から、甲1発明は、本件発明1の構成A(『複数の可動式パレットと、開閉ゲートと、該開閉ゲートの開閉操作及び前記可動式パレットの呼び出し操作を行うための操作盤とを備えた立体駐車装置の制御システムであって、』)に相当する構成を有している。
イ 構成B及びCについて
甲1発明の「操作盤30」に設けられた「利用者が抜き差し可能な操作禁止キー51」は、本件発明1の『制御キー』に相当するところ、甲1発明は、「操作禁止キー51を抜き取る」ことにより「フェンス閉ボタン33の操作が無効」となるから、その前提として、甲1発明は、「操作盤30」から「操作禁止キー52」が抜き取られたことを識別する機能を有しているといえる。したがって、甲1発明の「操作盤30」は、本件発明1の『制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段』に相当する構成を有している。
また、甲1発明は、「操作盤30」から「操作禁止キー51を抜き取ることにより、制御装置60によって、フェンス閉ボタン33の操作が無効とな」るから、甲1発明の「制御装置60」は、本件発明1における『前記キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止する』『システム制御部』を構成するものといえる。
以上から、甲1発明は、本件発明1の構成B(『制御キーの入力の有無を識別するキー識別手段と、システム制御部とを含み、』)及び構成C(『前記システム制御部は、前記キー識別手段による前記制御キーの入力の有無に応じて、少なくとも前記開閉ゲートの閉動作を抑止するものであり、』)に相当する構成を有している。
ウ 構成D及びEについて
甲1発明において、「操作禁止キー51」は「操作盤30に利用者が抜き差し可能」であり、上記イのとおり、甲1発明の「操作盤30」は、本件発明1の『キー識別手段』に相当する構成を有しているから、甲1発明において「操作禁止キー51」が「(操作盤30の)元の位置に差」されるキーであることは、本件発明1の『前記制御キーが、前記キー識別手段に対して物理的に入力される』『物理的キー』であることに相当する。そして、甲1発明の「操作禁止キー51」が「抜き取」られることにより、「制御装置60」によって、「フェンス閉ボタン33の操作が無効」とされる以上、その前提として、甲1発明の「操作禁止キー51」が、本件発明1の『前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部』に相当する構成を有していることは明らかである。
また、上記イのとおり、甲1発明の「操作盤30」は、本件発明1の『キー識別手段』に相当する構成を有しているところ、甲1発明の「操作禁止キー51」が「抜き取」られることにより、「制御装置60」によって、「フェンス閉ボタン33の操作が無効」とされるから、その前提として、甲1発明の「操作盤30」が有している、本件発明1の『キー識別手段』に相当する構成が、本件発明1の『システム制御部』を構成する「制御装置60」に対して、甲1発明の「操作禁止キー51」が「抜き取」られたことを示す信号、すなわち、本件発明1の『認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号』に相当する信号を『出力』するものであることも明らかである。
以上から、甲1発明は、本件発明1の構成D(『前記制御キーが、前記キー識別手段に対して物理的に入力されると共に、前記キー識別手段により認識される固有の識別パターン部を備えた物理的キーであり、』)及び構成E(『前記キー識別手段は、認識可能な識別パターン部を有する前記物理的キーの物理的入力の有無を示す挿抜識別信号を、前記システム制御部に対して出力し、』)に相当する構成を有している。
エ 構成Fについて
甲1発明は、「操作禁止キー51を抜くことでフェンス開ボタン32の操作が有効とな」るから、本件発明1の『システム制御部』を構成する「制御装置60」は、甲1発明の「操作盤30」が有する、本件発明1の『キー識別手段』に相当する構成から「操作禁止キー51」が「抜き取」られたことを示す、本件発明1の『挿抜識別信号』に相当する信号に基づいて、「操作禁止キー51」が「抜き取」られた(『前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失された』)と判定するまで、「フェンス開ボタン32の操作」を「有効」としないことで、前面フェンス21を開く動作(『前記開閉ゲートの開動作』)を抑止しているといえる。
また、甲1発明は、「操作禁止キー51を元の位置に差すことにより、フェンス閉ボタン33の操作が可能となり、前面フェンス21を閉めることができる」から、本件発明1の『システム制御部』を構成する「制御装置60」は、甲1発明の「操作盤30」が有する、本件発明1の『キー識別手段』に相当する構成の「元の位置」に対して「操作禁止キー51」が「差」された(『前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力された』)と判定するまで、前面フェンス21を閉める動作(『前記開閉ゲートの閉動作』)を抑止しているといえる。
以上から、甲1発明は、本件発明1の構成F(『前記システム制御部は、前記キー識別手段から取得する前記挿抜識別信号に基づいて、前記キー識別手段から前記物理的キーの物理的入力が喪失されたと判定するまで、前記開閉ゲートの開動作を抑止すると共に、前記キー識別手段に対して前記物理的キーが物理的に入力されたと判定するまで、前記開閉ゲートの閉動作を抑止し、』)に相当する構成を有している。
オ 構成Hについて
上記アのとおり、甲1発明は、構成Aに相当する構成を有しているから、構成Hに相当する構成を当然に有している。
上記の対比によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
【相違点1】
本件発明1は、「前記キー識別手段が、前記物理的キーの半抜け防止手段を備える」(構成G)のに対し、
甲1発明は、「駐車装置1が待機中で電源キー31が「入」の状態になるまでは、操作禁止キー51が抜けないようにロック装置で操作禁止キー51をロック」するものであり、操作禁止キー51の「半抜け」を防止することの特定がない点。
相違点1について判断する。
甲1発明は、操作禁止キー51が抜けないようにロックするものであるが、甲1当初明細書等にも、操作禁止キー51の「半抜け」を防止することは記載も示唆もされていない。
また、本件発明1における「前記物理的キーの半抜け防止手段」は、明細書の段落【0011】(訂正前の段落【0014】)の記載によれば、使用者が操作盤から離れて車両の入出庫等を行う際、すなわち、電源投入後に機能させることを想定しているところ、甲1発明における操作禁止キー51のロックは、電源キー31が「入」の状態になるまでロックするもので、両者は、目的、機能が異なる。そして、本件発明1は、「前記物理的キーの半抜け防止手段」を備えることで、「物理的キーが半抜けの状態でキー識別手段に残されることが防止されるため、操作盤から離れて車両の入出庫等を行う使用者に対して、物理的キーの所持をより確実に促す」という上記段落に記載の効果を奏するものと認められる。
そうすると、上記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。
(2)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明と実質同一ではなく、特許法29条の2の規定に違反してされたものではない。
3 本件発明2及び3について
(1)対比・判断
本件発明2及び3は、本件発明1の構成をすべて有しているから、本件発明1と甲1発明との相違点1と同様の相違点を有している。
そして、上記相違点1は、上記「2」で検討したとおり、課題解決のための具体化手段における微差ということはできないものである。
(2)小括
したがって、本件発明2及び3は、甲1発明と実質同一ではなく、特許法29条の2の規定に違反してされたものではない。
4 本件発明4について
(1)対比・判断
本件発明4は「立体駐車装置の制御方法」の発明であり、本件発明1の「立体駐車装置の制御システム」の発明とは、カテゴリーが異なるのみで、本件発明4と甲1発明とを対比すると、上記「2」において、本件発明1と甲1発明とを対比したのと同様の理由により、本件発明4と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点1’】
本件発明4は、「前記キー識別手段に、前記物理的キーの半抜け防止手段を設ける」(構成G’)のに対し、
甲1発明は、「駐車装置1が待機中で電源キー31が「入」の状態になるまでは、操作禁止キー51が抜けないようにロック装置で操作禁止キー51をロック」するものであり、操作禁止キー51の「半抜け」を防止することの特定がない点。
相違点1’は相違点1と実質的に同じであるから、上記「2」において、相違点1について判断したのと同様の理由により、相違点1’は、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。
(2)小括
したがって、本件発明4は、甲1発明と実質同一ではなく、特許法29条の2の規定に違反してされたものではない。
5 本件発明5について
(1)対比・判断
本件発明5は、本件発明4の構成をすべて有しているから、本件発明4と甲1発明との相違点1’と同様の相違点を有している。
そして、上記相違点1’は、上記「4」で述べたとおり、課題解決のための具体化手段における微差ということはできないものである。
(2)小括
したがって、本件発明5は、甲1発明と実質同一ではなく、特許法29条の2の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一ではなく、請求項1ないし5に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものではない。
そして、特許異議申立書に記載した理由は、上記「第5」で検討した甲1を証拠とする特許法29条の2の規定違反のみであるから、請求項1ないし5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
さらに、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700710