2020-700123
化粧品
- 審判番号
- 2020-700123
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-536762外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年02月27日
- 審決日
- 2021年03月03日
- 公報発行日
- 2021年07月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社タイキ
- 【権利者代理人】赤松 善弘
- 【異議申立人】株式会社 レクレアル
- 【異議申立人代理人】松浦 孝
- 分類
- P1651.537-YAA(A45D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続等の経緯
特許第6614679号の請求項1~請求項6に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」~「本件特許6」といい、総称して「本件特許」という。)についての出願は、2016年(平成28年)8月16日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年8月21日)を国際出願日とする特許出願であって、令和元年11月15日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和元年12月4日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和2年2月27日に、特許異議申立人 株式会社レクレアル(以下「特許異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた(異議2020-700123号、以下「本件事件」という。)。
本件事件についての、その後の手続等の概要は以下のとおりである。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
令和2年9月30日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6614679号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「複合繊維および合成繊維を10/90~100/0の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」
と記載されているのを、
「複合繊維および合成繊維を10/90~80/20の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」
に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された、請求項2~6も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいるウェブシート」
と記載されているのを、
「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいるウェブシート」
に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された、請求項2~6も同様に訂正する。)。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1による訂正について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいるウェブシートが用いられている」との記載において、「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が」との記載があることから、請求項1に係る発明は、構成繊維として複合繊維および合成繊維の双方の繊維が含有されていることを前提としており、また、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4には、「合成繊維がポリエステル繊維またはポリアミド繊維である」との記載があり、かかる記載は合成繊維に対してポリエステル繊維またはポリアミド繊維であることの限定を付加するものであるから、訂正前の請求項4に係る発明は、これが引用する訂正前の請求項1に係る発明において構成繊維に合成繊維が含有されることが前提として、合成繊維がポリエステル繊維またはポリアミド繊維であることが特定されていることが明らかである。
一方、訂正前の請求項1には、「構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~100/0の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」との記載があり、かかる記載によれば、構成繊維として複合繊維および合成繊維を100/0の質量比(複合繊維/合成繊維)、すなわち、構成繊維に合成繊維を含有しないものも含まれる。
そうすると、訂正前の「構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~100/0の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」との記載は、訂正前の請求項1における他の記載、及び、訂正前の請求項4における記載との関係で不合理が生じており、明瞭でない記載である。
そして、訂正後の請求項1においては、訂正前の「構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~100/0の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」との記載が、「構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~80/20の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」とされることにより、構成繊維に合成繊維を含有しないものも含まれないこととなり、訂正前に生じていた不合理が解消され、明瞭な記載となった。
したがって、訂正事項1により、明瞭でない記載が明瞭となったから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないこと
訂正事項1により、複合繊維および合成繊維の質量比の範囲が「10/90~100/0」から「10/90~80/20」に減縮された。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0050】に「複合繊維と合成繊維との質量比(複合繊維/合成繊維) は、・・・(中略)・・・10/90~100/0であることが好ましく、30/70~80/20であることがより好ましい。」との記載があることから、複合繊維と合成繊維との質量比の好ましい範囲における複合繊維の比率の上限値であり、合成繊維の比率の下限値となる「80/20」が示されている。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(2)訂正事項2による訂正について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1には、「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいるウェブシートが用いられている」との記載があるが、ここにいう「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいる」とは、厚さ方向にどのように並んでいるのか不明であり、明瞭でない記載である。
そして、訂正後の請求項1においては、訂正前の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいるウェブシートが用いられている」との記載が、「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいるウェブシートが用いられている」とされることにより、複合繊維および合成繊維の双方がどのように並んでいるか、明瞭な記載となった。
したがって、訂正事項2により、明瞭でない記載が明瞭となったから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないこと
訂正前の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいるウェブシートが用いられている」との記載によれば、複合繊維および合成繊維の双方の繊維の並び方について特定がなかったものに対して、訂正事項2により、複合繊維および合成繊維の双方の繊維の並び方について厚さ方向に向くように並んでいることが特定されたから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0052】ないし【0058】及び図1(a)ないし(d)には、化粧料保持用弾性体を製造する際に用いられるウェブシートを製造する方法の一実施態様が記載されており、これらの記載によれば、その製造方法は、(ア)複合繊維および合成繊維をそれぞれ解繊し、両者を所定の比率となるように秤量し、両者を均一な組成となるように混繊することによってウェブ1を形成し、(イ)ウェブ1を2枚の平板間に挟み、必要により、当該ウェブ1を所定の厚さとなるように押圧し、その状態でウェブ1に含まれている複合繊維を構成している樹脂Aの溶融温度以上の温度でかつ複合繊維を構成している樹脂Bおよび合成繊維の溶融温度よりも低い温度でウェブ1を加熱し、樹脂Aを溶融させ、複合繊維および合成繊維を含有する構成繊維同士の接触部を溶融した樹脂Aによって融着一体化させることにより、ウェブシート2を得、(ウ)前記(イ)で得られたウェブシート2を図1(c)の矢印Bで示されるように垂直方向に裁断し、(エ)図1(d)に示されるように、裁断されたウェブシート3は、裁断面が上面または下面となるように配置される、というものである。ここで、特に、段落【0058】には、「なお、複合繊維および合成繊維を混合する際、複合繊維および合成繊維の双方の繊維を繊維の長さ方向に並行するように並べて積層させることによってウェブシート3を製造した場合には、当該ウェブシート3を図1(d)の矢印Cに示されるように引き伸ばしたとき、複合繊維および合成繊維の双方の繊維が並行していることを示す縞が現れる。」との記載があり、また、願書に添付した明細書の段落【0087】~【0110】に記載された実施例1~実施例11のものは、いずれも、ウェブは複合繊維及び合成繊維を混合したものであるところ、各繊維が並行となるように混紡されたものである。そして、上記(ア)の工程において、段落【0058】に記載されているように複合繊維および合成繊維の双方の繊維を繊維の長さ方向に並行するように並べて積層させて、(エ)の工程で得られるウェブシート3は、複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んだものとなることは明らかである。
さらに、(ア)~(エ)の工程で得られたウェブシート3は、各繊維が厚さ方向に向くように並んでいることで、ウェブシート3の上面からの圧力に対して反発が大きくなり、へたりに対する抵抗性が優れていることとなり、段落【0064】の「使用時におけるへたりを防止する観点から、点接合された複合繊維および合成繊維の双方の繊維は、図1(d)に示されるように、ウェブシート3の厚さ方向に並んでいることが好ましい。」の「ウェブシート3の厚さ方向に並んでいること」が「ウェブシート3の厚さ方向に向くように並んでいること」を意味することとも整合する。
そうすると、訂正事項2の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいるウェブシート」は、願書に添付した明細書及び図面の記載から自明の事項であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(3)一群の請求項について
訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は直接的または間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、全て、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。また、同訂正は、同法同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6614679号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、これらの発明をまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】化粧料を保持するために用いられる化粧料保持用弾性体であって、構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~80/20の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し、当該複合繊維が樹脂Aおよび当該樹脂Aよりも溶融温度が高い樹脂Bを含有し、構成繊維同士の接触部が複合繊維の樹脂Aによって一体化されており、複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいるウェブシートが用いられていることを特徴とする化粧料保持用弾性体。【請求項2】複合繊維を構成する樹脂Aの溶融温度が130~220℃であり、複合繊維を構成する樹脂Bの溶融温度が150~270℃であり、樹脂Bの溶融温度が樹脂Aの溶融温度よりも20℃以上高い請求項1に記載の化粧料保持用弾性体。続きを表示(全12行)【請求項3】樹脂Aがポリエステルまたはポリエステル系エラストマーであり、樹脂Bが熱可塑性ポリエステルである請求項1または2に記載の化粧料保持用弾性体。【請求項4】合成繊維がポリエステル繊維またはポリアミド繊維である請求項1~3のいずれかに記載の化粧料保持用弾性体。【請求項5】請求項1~4のいずれかに記載の化粧料保持用弾性体に化粧料を含有する化粧料含有弾性体。【請求項6】請求項5に記載の化粧料含有弾性体を有する化粧品。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 当審が通知した取消しの理由
当審において、訂正前の請求項1~6に係る特許に対して令和2年8月12日付けの取消理由通知により特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記理由1及び理由2の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由1 請求項1には、「構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~100/0の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」との記載があるが、当該記載は、請求項1における他の記載及び請求項4における記載との関係で矛盾することとなるから、請求項1に係る発明は明確でない。請求項1を引用する請求項2ないし6に係る発明も同様である。
理由2 請求項1には、「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいるウェブシートが用いられている」との記載があるが、ここにいう「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいる」とは、厚さ方向にどのように並んでいるのか不明である。
したがって、請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2ないし6に係る発明は明確でない。
2 当審の判断
(1)理由1について
訂正後の請求項1においては、訂正前の「構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~100/0の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」との記載が、「構成繊維として複合繊維および合成繊維を10/90~80/20の質量比(複合繊維/合成繊維)で含有し」とされることにより、構成繊維に合成繊維を含有しないものが含まれないこととなり、明瞭な記載となったため、理由1による取消理由は解消された。
(2)理由2について
訂正後の請求項1においては、訂正前の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に並んでいるウェブシートが用いられている」との記載が、「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいるウェブシートが用いられている」とされることにより、複合繊維および合成繊維の双方がどのように並んでいるか、明瞭な記載となったため、理由2による取消理由は解消された。
(3)取消理由通知に記載した取消理由についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおり、理由1及び理由2による取消理由は解消されたから、本件特許発明が明確でないとはいえない。
よって、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号により取り消すことはできない。
第5 異議申立人の主張について
特許異議申立人の令和2年12月24日付けの意見書において、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない旨主張する。
しかしながら、上記「第2 3(2)ウ」に記載したとおり、訂正事項2の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいるウェブシート」は、願書に添付した明細書及び図面の記載から自明の事項であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許異議申立人のかかる主張は採用できない。
また、同意見書において、特許異議申立人は、訂正事項2の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいるウェブシート」の記載が不明瞭であり、訂正後の発明の範囲が不明確である旨主張している。
しかしながら、願書に添付した明細書の段落【0058】には、「なお、複合繊維および合成繊維を混合する際、複合繊維および合成繊維の双方の繊維を繊維の長さ方向に並行するように並べて積層させることによってウェブシート3を製造した場合には、当該ウェブシート3を図1(d)の矢印Cに示されるように引き伸ばしたとき、複合繊維および合成繊維の双方の繊維が並行していることを示す縞が現れる。」との記載があり、ウェブの積層工程において、複合繊維および合成繊維の双方の繊維を繊維の長さ方向に並行するように並べて積層する際に、多少の向きの違いや曲がりが生じた繊維が含まれることは明らかであるところ、本件特許発明の「複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向くように並んでいる」とは、ウェブの積層工程において、複合繊維および合成繊維の双方の繊維を繊維の長さ方向に並行するように並べて積層した結果得られる程度に複合繊維および合成繊維の双方の繊維が厚さ方向に向いて並んでいることを意味していることが明確に把握できる。
したがって、本件特許発明が不明確であるとの特許異議申立人の主張は採用できない。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許1~6は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1~6を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700123